JP5772884B2 - 燃料噴射弁駆動システム - Google Patents
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Description
本発明は、内燃機関に設けられる燃料噴射弁を開閉動作させる燃料噴射弁駆動システムに関する。
燃料噴射弁駆動システムとして、バッテリの電圧を昇圧する昇圧回路と、同昇圧回路によって昇圧された電圧によって充電されるコンデンサとを備えるものが知られている。こうした駆動システムでは、燃料噴射弁の電源としてコンデンサとバッテリとを使い分けている。
例えば特許文献1には、通電開始時点から所定時間が経過するまではバッテリよりも高い電圧を印加できるコンデンサから燃料噴射弁に電力を供給させ、それ以降ではバッテリから燃料噴射弁に電力を供給させることが開示されている。また、同文献1には、電源がコンデンサからバッテリに切り替った場合、バッテリから供給される電力によってコンデンサへの充電を行い、燃料噴射弁への電力の供給によって低下した同コンデンサの電圧を回復させることも開示されている。
複数の燃料噴射弁から順次燃料を噴射させるに際し、今回燃料を噴射させる燃料噴射弁への通電開始時点と、今回の燃料噴射の直前に燃料噴射を開始した他の燃料噴射弁への通電開始時点との間隔が非常に短いときには、コンデンサの電圧がコンデンサの容量に応じて決まる上限電圧よりも低い状態で通電が開始されることがある。
すなわち、通電開始の間隔が非常に短いときには、コンデンサから燃料噴射弁への給電が、コンデンサから他の燃料噴射弁への給電が実行されている最中やバッテリによるコンデンサへの充電によって同コンデンサの電圧が回復している途中で開始されることがある。この場合にはコンデンサの電圧が上限電圧よりも低い状態で通電が開始されることになるため、コンデンサの電圧が上限電圧と等しい水準にあるときに燃料噴射弁への通電が開始される場合と比較して、燃料噴射弁のソレノイドを流れる励磁電流の上昇速度が緩やかになり、燃料噴射弁の開弁に遅れが生じ、燃料の噴射量が少なくなることがある。
こうした燃料噴射弁の開弁遅れに起因する燃料の噴射量の減少を抑制する方法としては、コンデンサの電圧をセンサなどの検出系を用いて監視し、同検出系によって検出される電圧の検出値に基づいて燃料噴射弁に対する通電時間を設定する方法が考えられる。この方法によれば、検出系によって検出された電圧の検出値が低いほど燃料噴射弁に対する通電時間を長くすることにより、燃料の噴射量の減少の抑制を図ることができる。
しかしながら、コンデンサからの燃料噴射弁への給電時や充電によるコンデンサの回復時におけるコンデンサの電圧の変化速度は非常に速く、こうしたコンデンサの電圧の変化を上記の検出系では監視しきれないことがある。例えば、コンデンサからの燃料噴射弁への給電時にあっては、検出系によるコンデンサの電圧の検出に遅れが生じるため、検出系によって検出される電圧の検出値は、コンデンサの実際の電圧よりも大きい値になりやすい。このように実際の電圧よりも大きな値を示す検出値を用いて設定した通電時間は、コンデンサの実際の電圧に応じた通電時間よりも短くなる。そのため、電圧の検出値を用いて設定した通電時間に基づき燃料噴射弁を制御した場合には、同燃料噴射弁からは要求噴射量に見合った適量の燃料を噴射させることができないおそれがある。
本発明の目的は、燃料噴射弁に対する通電時間を、通電開始時点におけるコンデンサの実際の電圧に見合った長さに近づけることにより、要求噴射量に見合った適量の燃料を噴射させることができる燃料噴射弁駆動システムを提供することにある。
上記課題を解決するための燃料噴射弁駆動システムは、バッテリから供給される電力により充電されるコンデンサと、バッテリとコンデンサとを電源として使い分け、バッテリ又はコンデンサから燃料噴射弁への給電を制御することにより、燃料噴射弁を開閉動作させる駆動制御部と、同駆動制御部を制御し、複数の燃料噴射弁から燃料を噴射させる制御装置と、を備えている。そして、各燃料噴射弁から順次燃料を噴射させるに際し、先に通電が開始された他の燃料噴射弁への通電開始時点を第1の通電開始時点とし、同他の燃料噴射弁のソレノイドに流れる励磁電流が、同他の燃料噴射弁の燃料噴射時に設定されているピーク電流値に達した時点をピーク到達時点とし、同他の燃料噴射弁の次に通電が開始される燃料噴射弁への通電開始時点を第2の通電開始時点としたとする。この場合、制御装置は、第2の通電開始時点から通電が開始される燃料噴射弁に対する通電時間を、第1の通電開始時点から第2の通電開始時点までの間隔である通電開始間隔が第1の通電開始時点からピーク到達時点までの間隔であるピーク到達間隔以上であるときには同通電開始間隔が短いほど長くし、通電開始間隔がピーク到達間隔未満であるときには同通電開始間隔が短いほど短くする。
燃料噴射弁への通電時には、バッテリよりも高い電圧を印加できるコンデンサからの給電によって燃料噴射弁が開弁され、同燃料噴射弁の開弁後はバッテリからの給電によって同燃料噴射弁の開弁が保持される。
また、コンデンサから燃料噴射弁への給電が終了されると、バッテリから供給される電力による充電によって同コンデンサの電圧が回復される。したがって、第1の通電開始時点と第2の通電開始時点との間隔である通電開始間隔が第1の通電開始時点からピーク到達時点までの間隔であるピーク到達間隔以上である場合、通電開始間隔が短いほど、コンデンサの電圧を回復させることのできる時間が短くなる。そのため、通電開始間隔がピーク到達間隔以上である場合、第2の通電開始時点におけるコンデンサの電圧は、通電開始間隔が短いほど低いと推定することができる。
また、各燃料噴射弁の噴射態様によっては、通電開始間隔が非常に短いために、通電開始間隔がピーク到達間隔未満となることがある。すなわち、コンデンサから燃料噴射弁に未だ給電している最中に、コンデンサから次に燃料噴射を行う燃料噴射弁への給電が開始されることがある。この場合、次に燃料噴射を行う燃料噴射弁へのコンデンサからの給電が、充電によるコンデンサの電圧の回復の開始を待つことなく開始されることとなる。そのため、通電開始間隔がピーク到達間隔未満である場合、第2の通電開始時点におけるコンデンサの電圧は、上記通電開始間隔が長いほど低いと推定することができる。
そこで、上記構成では、第2の通電開始時点から通電が開始される燃料噴射弁に対する通電時間を、通電開始間隔がピーク到達間隔以上であるときには通電開始間隔が短いほど長くするようにした。また、第2の通電開始時点から通電が開始される燃料噴射弁に対する通電時間を、通電開始間隔がピーク到達間隔未満であるときには通電開始間隔が短いほど短くするようにした。このように通電開始間隔とピーク到達間隔との関係を加味することにより、第2の通電開始時点から通電が開始される燃料噴射弁に対する通電時間を、上記他の燃料噴射弁への通電開始時点である第1の通電開始時点からのコンデンサの電圧の実際の低下態様を加味して設定することができる。すなわち、センサなどの検出系によって検出されるコンデンサの電圧の検出値に基づいて通電時間を設定する場合とは異なり、コンデンサの電圧の実際の変化速度と、検出系によって検出される電圧の検出値の変化速度との乖離による影響を受けることなく通電時間を設定することができる。そのため、上記通電開始間隔とピーク到達間隔とに基づいて通電時間を設定することにより、通電時間を、第2の通電開始時点におけるコンデンサの実際の電圧に見合った時間に近づけることができる。そして、こうした通電時間に基づいて燃料噴射弁を制御することにより、燃料噴射弁から要求噴射量に見合った適量の燃料を噴射させることができるようになる。
上記燃料噴射弁駆動システムにおいて、制御装置は、通電開始間隔がピーク到達間隔以上であるときには、同通電開始間隔が短いほど第2の通電開始時点におけるコンデンサの電圧の推定値を小さくする一方、通電開始間隔がピーク到達間隔未満であるときには、同通電開始間隔が短いほど第2の通電開始時点におけるコンデンサの電圧の推定値を大きくしてもよい。この場合、制御装置は、第2の通電開始時点から通電が開始される燃料噴射弁に対する通電時間を、第2の通電開始時点におけるコンデンサの電圧の推定値が小さいほど長くすることが好ましい。
通電開始間隔がピーク到達間隔以上である場合、コンデンサによる燃料噴射弁への給電は、上記他の燃料噴射弁への給電が終了した後に開始される。そのため、ピーク到達時点から第2の通電開始時点までの間に、バッテリから供給された電力による充電によって、コンデンサの電圧を回復させることができる。このとき、コンデンサの電圧を回復させることのできる時間は、通電開始間隔が短いほど短くなる。よって、第2の通電開始時点におけるコンデンサの電圧は、コンデンサの電圧を回復させることのできる時間が短いほど、すなわち通電開始間隔が短いほど低いと推定することができる。そこで、上記構成では、通電開始間隔がピーク到達間隔以上であるときには、同通電開始間隔が短いほど第2の通電開始時点におけるコンデンサの電圧の推定値を低くするようにした。これにより、通電開始間隔がピーク到達間隔以上であるときには、充電によってコンデンサの電圧が回復することを考慮して、第2の通電開始時点におけるコンデンサの電圧の推定値を算出することができるようになる。
一方、通電開始間隔がピーク到達間隔未満である場合、コンデンサによる燃料噴射弁への給電は、上記他の燃料噴射弁へのコンデンサからの給電が行われている最中に開始される。コンデンサから上記他の燃料噴射弁への給電が行われている場合にあっては、第1の通電開始時点から時間が経過するに連れてコンデンサの電圧が低くなる。よって、第2の通電開始時点におけるコンデンサの電圧は、通電開始間隔が短いほど高いと推定することができる。そこで、上記構成では、通電開始間隔がピーク到達間隔未満であるときには、同通電開始間隔が短いほど第2の通電開始時点におけるコンデンサの電圧の推定値を高くするようにした。これにより、通電開始間隔がピーク到達間隔未満であるときには、通電開始間隔が長くなるほど電圧が低下することを考慮して、第2の通電開始時点におけるコンデンサの電圧の推定値を算出することができるようになる。
そして、上記のように算出したコンデンサの電圧の推定値に基づき、第2の通電開始時点から通電が開始される燃料噴射弁に対する通電時間を設定することにより、当該燃料噴射弁からの燃料噴射量を適切に調整することができるようになる。
ところで、第1の通電開始時点からピーク到達時点までにおけるコンデンサから上記他の燃料噴射弁への給電による同コンデンサの電圧の低下量を電圧低下量とし、バッテリから供給される電力による充電によって同コンデンサの電圧が回復される際における同電圧の回復速度をコンデンサ電圧上昇速度としたとする。この場合、上記燃料噴射弁駆動システムでは、通電開始間隔がピーク到達間隔以上であるときには、第1の通電開始時点におけるコンデンサの電圧の値から電圧低下量を減じた差と、通電開始間隔の値にコンデンサ電圧上昇速度を乗じた積とを加算することにより、第2の通電開始時点におけるコンデンサの電圧の推定値を算出するようにしてもよい。電圧低下量は、第1の通電開始時点からピーク到達時点までの間に上記他の燃料噴射弁のソレノイドにコンデンサから供給された電荷の量に相当し、通電開始間隔の値にコンデンサ電圧上昇速度を乗じた積は、第1の通電開始時点から第2の通電開始時点までの間にバッテリからコンデンサに蓄えられた電荷の量に相当している。そのため、通電開始間隔がピーク到達間隔以上である場合には、電圧低下量と上記積とを加算する算出処理を行うことにより、ピーク到達時点までの電圧低下量とそれ以降の充電による電圧の回復との双方を考慮して、第2の通電開始時点におけるコンデンサの電圧の推定値を算出することができるようになる。
一方、上述したように、通電開始間隔がピーク到達間隔未満である場合、コンデンサから燃料噴射弁への給電が行われている最中に、コンデンサから次に燃料噴射を行う燃料噴射弁への給電が開始されることとなる。すなわち、第1の通電開始時点と第2の通電開始時点との間ではコンデンサの電圧が回復される期間が設けられない。そのため、第1の通電開始時点から第2の通電開始時点までの間にコンデンサから放電される電荷の量又はこの量に相当する値を推定することができれば、第2の通電開始時点におけるコンデンサの電圧を推定することができる。つまり、第1の通電開始時点から第2の通電開始時点までの間にコンデンサから放電される電荷の量又はこの量に相当する値が小さいほど、第2の通電開始時点におけるコンデンサの電圧が高いと推定することができる。
そこで、上記燃料噴射弁駆動システムでは、通電開始間隔がピーク到達間隔未満であるときには、通電開始間隔の値をピーク到達間隔の値で除算した商に電圧低下量を乗じ、この積が大きいほど第2の通電開始時点におけるコンデンサの電圧の推定値を小さくするようにしてもよい。この場合、上記積が、第1の通電開始時点から第2の通電開始時点までの間にコンデンサから燃料噴射弁に供給される電荷の量に相当する値となる。そのため、通電開始間隔がピーク到達間隔未満である場合には、こうした上記積に基づく算出処理を行うことにより、第1の通電開始時点から第2の通電開始時点までの間にコンデンサから放電される電荷の量に応じた電圧の低下量を加味して、第2の通電開始時点におけるコンデンサの電圧の推定値を算出することができるようになる。
なお、ピーク到達間隔が長いほどコンデンサから燃料噴射弁に給電している時間が長くなるため、コンデンサから燃料噴射弁への給電が終了されるピーク到達時点では、コンデンサの電圧が低くなっていると推定することができる。そこで、上記構成では、ピーク到達間隔に基づいて電圧低下量を算出し、ピーク到達間隔が長いほど電圧低下量を大きくするようにしてもよい。このように電圧低下量を算出することにより、ピーク到達間隔の長さによる影響を加味して、電圧低下量を算出することができるようになる。
また、上記他の燃料噴射弁による燃料噴射に対して設定されたピーク電流値が大きいほど、同他の燃料噴射弁のソレノイドには大きい電流が流れることとなるため、コンデンサから同他の燃料噴射弁に供給される電荷の量は多くなる。このようにコンデンサから上記他の燃料噴射弁に供給される電荷の量が多いほど、電圧低下量は大きくなる。そこで、上記構成では、上記他の燃料噴射弁からの燃料噴射に対して設定されたピーク電流値に基づいて電圧低下量を算出し、上記他の燃料噴射弁からの燃料噴射に対して設定されたピーク電流値が大きいほど電圧低下量を大きくするようにしてもよい。このように電圧低下量を算出することにより、ピーク電流値の大きさによる影響を加味して、電圧低下量を算出することができるようになる。
また、同等の抵抗値を有する対象物に対してコンデンサから一定量の電荷を供給する場合、容量の少ないコンデンサの電圧は、容量の多いコンデンサの電圧よりも低くなりやすい。そのため、電圧低下量は、燃料噴射弁に給電を行うコンデンサの容量によっても変わりうる。そこで、上記構成では、コンデンサの容量に基づいて電圧低下量を算出し、コンデンサの容量が少ないほど電圧低下量を大きくするようにしてもよい。このように電圧低下量を算出することにより、コンデンサの容量による影響を加味して、電圧低下量を算出することができるようになる。
燃料噴射弁のソレノイドに流れる励磁電流の上昇速度は、その時点のソレノイドの抵抗値などによって変わりうる。そして、ソレノイドの抵抗値が高いほど励磁電流の上昇速度が遅くなるため、ピーク到達間隔は長くなりやすい。そこで、上記他の燃料噴射弁のソレノイドに流れる励磁電流が上昇する過程で、同励磁電流がピーク電流値よりも小さい規定電流値を上回る時点を立ち上がり検出時点としたとする。この場合、上記燃料噴射弁駆動システムでは、第1の通電開始時点から立ち上がり検出時点までの時間に基づいてピーク到達間隔を算出し、第1の通電開始時点から立ち上がり検出時点までの時間が長いほど、励磁電流の上昇速度が遅くなると推定できるため、ピーク到達間隔の値を大きくするようにしてもよい。このようにピーク到達間隔を算出することにより、そのときの励磁電流の上昇速度を加味して、ピーク到達間隔を算出することができるようになる。
また、ピーク電流値が大きいほど、燃料噴射弁のソレノイドに流れる励磁電流がピーク電流値に達するまでの時間が長くなりやすい。すなわち、ピーク到達間隔は、燃料噴射弁による燃料噴射に対して設定されたピーク電流値の大きさに基づいて推定することができる。そこで、上記燃料噴射弁駆動システムでは、ピーク電流値に基づいてピーク到達間隔を算出し、ピーク電流値が大きいほどピーク到達間隔の値を大きくするようにしてもよい。このようにピーク到達間隔を算出することにより、燃料噴射弁による燃料噴射に対して設定されたピーク電流値の大きさの影響を加味して、ピーク到達間隔を算出することができるようになる。
コンデンサの特性上、コンデンサの容量が少ないほど同コンデンサの電圧は変動しやすい。そこで、上記燃料噴射弁駆動システムでは、コンデンサの容量に基づいてコンデンサ電圧上昇速度を算出し、コンデンサの容量が少ないほどコンデンサ電圧上昇速度を大きくするようにしてもよい。このように算出したコンデンサ電圧上昇速度を用いることにより、コンデンサの容量の変化による影響を加味して、第2の通電開始時点におけるコンデンサの電圧を精度良く推定することができるようになる。
また、コンデンサを充電する際にあっては、電源となるバッテリの電圧が高いほどコンデンサの充電を速やかに終了させることができる。そのため、バッテリの電圧が高いほど、コンデンサ電圧上昇速度が速いと推定することができる。そこで、上記燃料噴射弁駆動システムでは、バッテリの電圧に基づいてコンデンサ電圧上昇速度を算出し、バッテリの電圧が高いほどコンデンサ電圧上昇速度を大きくするようにしてもよい。このように算出したコンデンサ電圧上昇速度を用いることにより、バッテリの電圧による影響を加味して、第2の通電開始時点におけるコンデンサの電圧を精度良く推定することができるようになる。
ところで、コンデンサから同等の抵抗値を有する対象物に対して同量の電荷を供給する場合、容量の少ないコンデンサの電圧は、容量の多いコンデンサの電圧よりも低くなりやすい。そのため、コンデンサの容量は、コンデンサから燃料噴射弁に給電を行っているときにおける同コンデンサの電圧の低下速度に基づいて推定することができる。
なお、センサなどの検出系によって検出される電圧の検出値の低下速度は、実際の電圧の低下速度よりも遅くなりやすいものの、コンデンサの容量に応じて変化する。すなわち、電圧の検出値の低下速度を用いることにより、コンデンサの容量が多いか少ないかの傾向を検出することができる。
そこで、上記燃料噴射弁駆動システムは、コンデンサの容量を学習する学習部を備えることが好ましい。そして、この学習部は、コンデンサから燃料噴射弁に給電を行っているときのコンデンサの電圧の検出値の低下速度が速いほどコンデンサの容量の学習値を小さくするようにしてもよい。これにより、その時点のコンデンサの容量を推定することができる。そして、こうしたコンデンサの容量を用いることにより、コンデンサの容量を加味して、第2の通電開始時点におけるコンデンサの電圧を精度良く推定することができるようになる。
ちなみに、燃料噴射弁が実際に開弁するタイミングは、燃料噴射弁に供給される燃料が貯留されるデリバリパイプ内の燃料圧力が高いほど遅くなりやすい。そのため、デリバリパイプ内の燃料圧力が高い状態で、通電開始間隔がピーク到達間隔未満であるときには、第2の通電開始時点で上記他の燃料噴射弁が未だ開弁していないことがある。
また、通電開始間隔がピーク到達間隔未満である場合には、コンデンサから燃料噴射弁への給電が行われている最中に、コンデンサから次に燃料噴射が行われる燃料噴射弁への給電が開始されることとなる。この場合、コンデンサは複数の燃料噴射弁に対して給電することとなるため、第2の通電開始時点以降において燃料噴射弁のソレノイドに流れる励磁電流の上昇速度は、第2の通電開始時点以前における励磁電流の上昇速度よりも遅くなる。そのため、デリバリパイプ内の燃料圧力が高いために上記他の燃料噴射弁が第2の通電開始時点で未だ開弁していない場合、燃料噴射弁への通電開始に起因して上記他の燃料噴射弁の開弁に遅れが生じうる。
そこで、上記燃料噴射弁駆動システムでは、通電開始間隔がピーク到達間隔未満であるときには、デリバリパイプ内の燃料圧力が高いほど上記他の燃料噴射弁に対する通電時間を長くすることが好ましい。これにより、第2の通電開始時点を前後しての上記他の燃料噴射弁のソレノイドに流れる励磁電流の上昇速度の変化、及びデリバリパイプ内の燃料圧力を加味して同他の燃料噴射弁に対する通電時間を補正することができる。そして、このように補正した通電時間に基づいて上記他の燃料噴射弁を制御することにより、上記他の燃料噴射弁から適量の燃料を噴射させることができるようになる。
また、上述したような燃料噴射弁への通電開始に起因した上記他の燃料噴射弁の開弁遅れは、通電開始間隔が短いほど生じやすい。そこで、上記燃料噴射弁駆動システムでは、通電開始間隔がピーク到達間隔未満であるときには、通電開始間隔が短いほど上記他の燃料噴射弁に対する通電時間を長くするようにしてもよい。これにより、通電開始間隔が短いために上記他の燃料噴射弁が未だ開弁していないときに、コンデンサによる燃料噴射弁への給電が開始された場合であっても、上記他の燃料噴射弁に対する通電時間を通電開始間隔に基づいて補正し、この補正後の通電時間に基づいて上記他の燃料噴射弁を制御することにより、同他の燃料噴射弁から適量の燃料を噴射させることができるようになる。
以下、図1〜図20を参照して、内燃機関に設けられる燃料噴射弁を開閉動作させる燃料噴射弁駆動システムを具体化した一実施形態について説明する。
図1には、本実施形態の燃料噴射弁駆動システム10と、燃料噴射弁駆動システム10に制御される複数(ここでは4つ)の燃料噴射弁20とが示されている。これら各燃料噴射弁20は、内燃機関の燃焼室内に燃料を直接噴射する筒内噴射用の噴射弁である。
図1には、本実施形態の燃料噴射弁駆動システム10と、燃料噴射弁駆動システム10に制御される複数(ここでは4つ)の燃料噴射弁20とが示されている。これら各燃料噴射弁20は、内燃機関の燃焼室内に燃料を直接噴射する筒内噴射用の噴射弁である。
図1に示すように、燃料噴射弁駆動システム10は、車両に設けられているバッテリ30の電圧を昇圧する昇圧回路11と、昇圧回路11によって昇圧された電圧によって充電されるコンデンサ12と、駆動制御部としての駆動回路13とを備えている。この駆動回路13は、制御装置及び学習部としての機能も有する電子制御装置(以下、「ECU」という。)14の制御によって、電源としてコンデンサ12とバッテリ30とを使い分けて燃料噴射弁20を駆動させるようになっている。
ECU14は、CPU、ROM及びRAMなどで構築されるマイクロコンピュータを有している。ROMには、CPUが実行する各種制御プログラムなどが予め記憶されており、RAMには、適宜更新される情報が記憶されるようになっている。
また、ECU14には、電圧センサ41、電流検出回路42及び燃圧センサ43などの各種検出系が電気的に接続されている。電圧センサ41は、コンデンサ12の電圧であるコンデンサ電圧Vcを検出するものである。また、電流検出回路42は、燃料噴射弁20のソレノイド21に流れる励磁電流Iinjを検出するものであって、燃料噴射弁20毎に設けられている。また、燃圧センサ43は、燃料噴射弁20への燃料供給系に設けられているデリバリパイプ内の燃料圧力を検出するためのものである。そして、ECU14を備える燃料噴射弁駆動システム10は、各種検出系によって検出される情報に基づいて、各燃料噴射弁20を制御するようになっている。
次に、図2を参照して、燃料噴射弁20に燃料を供給する燃料供給系50について説明する。
図2に示すように、燃料供給系50には、燃料が貯留される燃料タンク51から燃料を汲み上げる低圧燃料ポンプ52と、低圧燃料ポンプ52から吐出された燃料を昇圧して吐出させる高圧燃料ポンプ53と、高圧燃料ポンプ53から吐出された高圧の燃料が貯留されるデリバリパイプ54とが設けられている。そして、このデリバリパイプ54内の燃料が燃料噴射弁20に供給される。
図2に示すように、燃料供給系50には、燃料が貯留される燃料タンク51から燃料を汲み上げる低圧燃料ポンプ52と、低圧燃料ポンプ52から吐出された燃料を昇圧して吐出させる高圧燃料ポンプ53と、高圧燃料ポンプ53から吐出された高圧の燃料が貯留されるデリバリパイプ54とが設けられている。そして、このデリバリパイプ54内の燃料が燃料噴射弁20に供給される。
次に、図3を参照して、燃料噴射弁20に対する給電態様について説明する。
図3(a),(b),(c)に示すように、ECU14から駆動回路13に出力される通電信号のレベルが「Low」から「High」になると、燃料噴射弁20のソレノイド21に励磁電流Iinjが流れ始める。すなわち、通電信号のレベルが「Low」から「High」となる第1のタイミングt11から、通電信号のレベルが「High」から「Low」になる第4のタイミングt14までが、燃料噴射弁20が通電される通電時間TIである。
図3(a),(b),(c)に示すように、ECU14から駆動回路13に出力される通電信号のレベルが「Low」から「High」になると、燃料噴射弁20のソレノイド21に励磁電流Iinjが流れ始める。すなわち、通電信号のレベルが「Low」から「High」となる第1のタイミングt11から、通電信号のレベルが「High」から「Low」になる第4のタイミングt14までが、燃料噴射弁20が通電される通電時間TIである。
燃料噴射弁20への通電が開始される通電開始時点である第1のタイミングt11では燃料噴射弁20は閉弁している。ここでは、燃料噴射弁20を開弁させるために、バッテリ30よりも高い電圧を印加できるコンデンサ12を電源として給電が行われる。この場合、ソレノイド21に流れる励磁電流Iinjが次第に上昇するため、ソレノイド21で発生する電磁力もまた次第に大きくなる。そして、励磁電流Iinjの上昇途中の第2のタイミングt12で、燃料噴射弁20が開弁し、同燃料噴射弁20から燃料が噴射されるようになる。
なお、第1のタイミングt11から第2のタイミングt12までの時間が、燃料噴射弁20への通電が開始されても同燃料噴射弁20から未だ燃料が噴射されない無効噴射時間TAとされる。また、第2のタイミングt12から燃料噴射弁20への通電が終了される第4のタイミングt14までの時間が、燃料噴射弁20から燃料が実際に噴射される有効噴射時間TBとされる。
第2のタイミングt12以降の第3のタイミングt13で、ソレノイド21に流れる励磁電流Iinjが、燃料噴射弁を確実に開弁させるための電流値として設定されているピーク電流値Ipに達すると、燃料噴射弁20を開弁させるための開弁期間TOが終了し、燃料噴射弁20の開弁状態を保持させるための保持期間THが始まる。すると、駆動回路13によって電源がコンデンサ12からバッテリ30に切り替えられ、燃料噴射弁20のソレノイド21に印加される電圧が低くなるため、励磁電流Iinjが急激に低下する。このときの励磁電流Iinjの低下速度は、励磁電流Iinjがピーク電流値Ipに向けて上昇する際の上昇速度と比較して非常に速い。すなわち、励磁電流Iinjがピーク電流値Ipから低下するときには、その変化が急峻である。
そして、ピーク電流値Ipから低下する励磁電流Iinjは、燃料噴射弁20の開弁状態を保持できる程度の電磁力をソレノイド21から発生させるように、所定の保持電流値Ih近傍で調整される。その後、第4のタイミングt14で通電信号が「High」から「Low」に切り替ると、燃料噴射弁20への通電が終了され、同燃料噴射弁20が閉弁する。
通電時間TIは一回の燃料噴射に対して設定される要求噴射量によって決定されるため、要求噴射量が少ない場合ほど通電時間TIが短くされる。すなわち、要求噴射量が少ない場合には、コンデンサ12から燃料噴射弁20に通電されている開弁期間TO中に、同燃料噴射弁20への通電が終了されることもある。
ところで、本実施形態の燃料噴射弁駆動システム10にあっては、各燃料噴射弁20から燃料を順次噴射させるようになっている。このとき、燃料を順次噴射する燃料噴射弁20のうち、先に燃料噴射を開始する燃料噴射弁とこれに続いて次に燃料噴射を開始する燃料噴射弁との関係においては、内燃機関の運転態様によっては、先に燃料噴射を開始する燃料噴射弁への通電開始時点と、同燃料噴射弁の次に燃料噴射を開始する燃料噴射弁への通電開始時点との間隔である通電開始間隔TRPWが短くなることがある。すなわち、複数の燃料噴射弁から順次燃料を噴射させるに際し、これから燃料噴射を開始する燃料噴射弁への通電が開始される直前に通電が開始された他の燃料噴射弁への通電の開始時点と、これから燃料噴射を開始する燃料噴射弁への通電の開始時点との間隔である通電開始間隔TRPWが短くなることがある。
なお、以下の説明においては、燃料を順次噴射する燃料噴射弁20のうち、これから燃料を噴射する燃料噴射弁20の直前に燃料噴射を開始した他の燃料噴射弁20、すなわち先に燃料噴射を開始する燃料噴射弁20の通電開始時点を「第1の通電開始時点」という。また、燃料を順次噴射する燃料噴射弁20のうち、これから燃料を噴射する燃料噴射弁20、すなわち上記他の燃料噴射弁に続いて次に燃料噴射を開始する燃料噴射弁20の通電開始時点を「第2の通電開始時点」という。また、第1の通電開始時点から給電が開始される燃料噴射弁20のソレノイド21に流れる励磁電流Iinjがピーク電流値Ipに達する時点を「ピーク到達時点」とし、第1の通電開始時点からピーク到達時点までの間隔を「ピーク到達間隔TRPK」というものとする。
次に、図4を参照して、ピーク到達間隔TRPKよりも通電開始間隔TRPWが長い場合について説明する。
図4(a),(b),(c)に示すように、第1の通電開始時点である第1のタイミングt21では、燃料を順次噴射する燃料噴射弁20のうち、先に燃料噴射を開始する先の燃料噴射弁20へのコンデンサ12からの給電が開始される。すると、コンデンサ電圧Vcが次第に低下するようになる。そして、ピーク到達時点である第2のタイミングt22になると、先の燃料噴射弁20に電力を供給する電源がコンデンサ12からバッテリ30に切り替る。この第2のタイミングt22では、先の燃料噴射弁20の次に燃料噴射を開始する次の燃料噴射弁20へのコンデンサ12からの給電が未だ開始されないため、バッテリ30からの充電によって、コンデンサ電圧Vcが次第に回復する。すなわち、コンデンサ電圧Vcは、その時点のコンデンサ12の容量に応じた上限電圧Vc_Maxに向けて上昇する。
図4(a),(b),(c)に示すように、第1の通電開始時点である第1のタイミングt21では、燃料を順次噴射する燃料噴射弁20のうち、先に燃料噴射を開始する先の燃料噴射弁20へのコンデンサ12からの給電が開始される。すると、コンデンサ電圧Vcが次第に低下するようになる。そして、ピーク到達時点である第2のタイミングt22になると、先の燃料噴射弁20に電力を供給する電源がコンデンサ12からバッテリ30に切り替る。この第2のタイミングt22では、先の燃料噴射弁20の次に燃料噴射を開始する次の燃料噴射弁20へのコンデンサ12からの給電が未だ開始されないため、バッテリ30からの充電によって、コンデンサ電圧Vcが次第に回復する。すなわち、コンデンサ電圧Vcは、その時点のコンデンサ12の容量に応じた上限電圧Vc_Maxに向けて上昇する。
なお、バッテリ30によるコンデンサ12の充電は、コンデンサ12から何れの燃料噴射弁20への給電も行われていないときに限らず、コンデンサ12から何れかの燃料噴射弁20への給電が行われているときにも行われている。しかし、コンデンサ12から燃料噴射弁20への給電時には、バッテリ30からコンデンサ12に供給される電荷の量よりも、コンデンサ12から燃料噴射弁20に放出される電荷の量のほうが多い。そのため、コンデンサ12から燃料噴射弁20への給電時には、バッテリ30によって充電が行われていても、コンデンサ電圧Vcが低下する。
そして、コンデンサ電圧Vcの回復途中の第3のタイミングt23では、コンデンサ12から次の燃料噴射弁20への給電が開始される。すなわち、この第3のタイミングt23が第2の通電開始時点となる。この場合、コンデンサ12は次の燃料噴射弁20に電力を供給する電源として機能することとなるため、第3のタイミングt23からはコンデンサ電圧Vcが次第に低下する。
その後、第4のタイミングt24で次の燃料噴射弁20のソレノイド21に流れる励磁電流Iinjがピーク電流値Ipに達すると、次の燃料噴射弁20に電力を供給する電源がコンデンサ12からバッテリ30に切り替る。そのため、第4のタイミングt24からは、バッテリ30によるコンデンサ12の充電によって、コンデンサ電圧Vcが上限電圧Vc_Maxに向けて次第に回復する。
なお、第1の通電開始時点である第1のタイミングt21では、コンデンサ電圧Vcがその時点のコンデンサ12の容量に応じた上限電圧Vc_Maxであるのに対し、第2の通電開始時点である第3のタイミングt23では、コンデンサ電圧Vcは上限電圧Vc_Maxよりも低い。そのため、各燃料噴射弁20に対する要求噴射量が同等である場合、次の燃料噴射弁20のソレノイド21に流れる励磁電流Iinjの上昇速度は、先の燃料噴射弁20のソレノイド21に流れる励磁電流Iinjの上昇速度よりも遅くなりやすい。すなわち、次の燃料噴射弁20の無効噴射時間TAが、先の燃料噴射弁20の無効噴射時間TAよりも長くなる。よって、各燃料噴射弁20に対する要求噴射量が同等であるからといって、次の燃料噴射弁20に対する通電時間TI2を先の燃料噴射弁20に対する通電時間TI1と等しくしてしまうと、次の燃料噴射弁20から実際に噴射される燃料の量が、要求噴射量よりも少なくなるおそれがある。そこで、各燃料噴射弁20に対する要求噴射量が同等である場合、次の燃料噴射弁20に対する通電時間TI2を先の燃料噴射弁20に対する通電時間TI1よりも長くすることにより、次の燃料噴射弁20から噴射される燃料の量を、要求噴射量に見合った量にすることが好ましい。
これに対して、本実施形態の燃料噴射弁駆動システム10にあっては、これから燃料噴射を開始する燃料噴射弁20に対する通電時間TIを設定する際に、その燃料噴射弁20に対する通電を開始する時点、すなわち第2の通電開始時点のコンデンサ電圧の推定値Vc_Estを算出している。そして、この算出したコンデンサ電圧の推定値Vc_Estが小さいほど通電時間TIを長くするようにしている。
次に、図5を参照して、ピーク到達間隔TRPKよりも通電開始間隔TRPWが短い場合について説明する。
図5(a),(b),(c)に示すように、第1の通電開始時点である第1のタイミングt31でコンデンサ12から先の燃料噴射弁20に給電が開始されるため、第1のタイミングt31からはコンデンサ電圧Vcが次第に低下する。そして、コンデンサ12から先の燃料噴射弁20に給電が行われている最中の第3のタイミングt33でコンデンサ12から次の燃料噴射弁20への給電が開始される。この場合、この第3のタイミングt33が第2の通電開始時点となる。コンデンサ12は、第3のタイミングt33以前では先の燃料噴射弁20にのみ給電していたのに対し、第3のタイミングt33からは先の燃料噴射弁20に加えて次の燃料噴射弁20にも給電することとなる。そのため、第3のタイミングt33からは、第3のタイミングt33以前と比較して、コンデンサ12を電源として駆動する燃料噴射弁20の数が増える分、コンデンサ電圧Vcの低下速度が速くなる。
図5(a),(b),(c)に示すように、第1の通電開始時点である第1のタイミングt31でコンデンサ12から先の燃料噴射弁20に給電が開始されるため、第1のタイミングt31からはコンデンサ電圧Vcが次第に低下する。そして、コンデンサ12から先の燃料噴射弁20に給電が行われている最中の第3のタイミングt33でコンデンサ12から次の燃料噴射弁20への給電が開始される。この場合、この第3のタイミングt33が第2の通電開始時点となる。コンデンサ12は、第3のタイミングt33以前では先の燃料噴射弁20にのみ給電していたのに対し、第3のタイミングt33からは先の燃料噴射弁20に加えて次の燃料噴射弁20にも給電することとなる。そのため、第3のタイミングt33からは、第3のタイミングt33以前と比較して、コンデンサ12を電源として駆動する燃料噴射弁20の数が増える分、コンデンサ電圧Vcの低下速度が速くなる。
また、次の燃料噴射弁20にもコンデンサ12から給電が行われることにより、先の燃料噴射弁20のソレノイド21に流れる励磁電流Iinjの上昇速度は、第3のタイミングt33以前よりも遅くなる。その結果、先の燃料噴射弁20のソレノイド21に流れる励磁電流Iinjがピーク電流値Ipに達するタイミングは、コンデンサ12から先の燃料噴射弁20への給電の最中に次の燃料噴射弁20へのコンデンサ12からの給電が実行されない場合(図5(a)における破線で示す状態)と比較して遅れてしまう。
そして、第6のタイミングt36で先の燃料噴射弁20のソレノイド21に流れる励磁電流Iinjがピーク電流値Ipに達すると、コンデンサ12から先の燃料噴射弁20への給電が終了される。すなわち、ピーク到達時点は、第6のタイミングt36となる。この第6のタイミングt36からは、コンデンサ12を電源として駆動する燃料噴射弁は、次の燃料噴射弁20のみとなる。そのため、第6のタイミングt36からのコンデンサ電圧Vcの低下速度は、第3のタイミングt33と第6のタイミングt36との間でのコンデンサ電圧Vcの低下速度よりも遅くなる。その後、第7のタイミングt37で次の燃料噴射弁20のソレノイド21に流れる励磁電流Iinjがピーク電流値Ipに達すると、コンデンサ12から次の燃料噴射弁20への給電が終了される。すると、バッテリ30からの充電によって、コンデンサ電圧Vcが上限電圧Vc_Maxに向けて次第に回復される。
ところで、図5に示すように、先の燃料噴射弁20にコンデンサ12から給電が行われている最中に次の燃料噴射弁20へのコンデンサ12からの給電が開始される場合には、デリバリパイプ54内の燃料圧力が高い場合に第2の通電開始時点では未だ先の燃料噴射弁20が開弁されていないことがある。例えば、燃料噴射弁20の開弁タイミングは、燃料噴射弁20に燃料を供給するデリバリパイプ54内の燃料圧力が高いほど遅くなりやすい。そのため、デリバリパイプ54内の燃料圧力が高い場合には、先の燃料噴射弁20の開弁タイミングが遅れ、先の燃料噴射弁20が開弁するよりも前に次の燃料噴射弁20への給電が開始されることがある。
次の燃料噴射弁20への給電開始に伴い、先の燃料噴射弁20のソレノイド21に流れる励磁電流Iinjの上昇速度は第3のタイミングt33から遅くなる。そのため、第2の通電開始時点である第3のタイミングt33において先の燃料噴射弁20が未だ開弁していないときには、次の燃料噴射弁20への給電開始に伴い、先の燃料噴射弁20の開弁タイミングが遅れる。
例えば、コンデンサ12から先の燃料噴射弁20への給電の最中に次の燃料噴射弁20へのコンデンサ12からの給電が実行されない場合(図5(a)における破線で示す状態)には、先の燃料噴射弁20の開弁タイミングが第4のタイミングt34となる。これに対し、第3のタイミングt33で次の燃料噴射弁20への通電が開始される場合には、先の燃料噴射弁20の開弁タイミングは第4のタイミングt34よりもあとの第5のタイミングt35となる。つまり、先の燃料噴射弁20の無効噴射時間TAが長くなる。
そのため、先の燃料噴射弁20による燃料の実際の噴射量と要求噴射量との乖離を抑制するためには、コンデンサ12による次の燃料噴射弁20への給電が開始される第2の通電開始時点で先の燃料噴射弁20が未だ開弁していない場合、先の燃料噴射弁20への通電時間TI1を長くする補正処理を行うことが好ましい。
なお、第2の通電開始時点である第3のタイミングt33よりも前に先の燃料噴射弁20が既に開弁しているときには、次の燃料噴射弁20へのコンデンサ12からの給電開始により先の燃料噴射弁20の開弁タイミングが遅れることはないため、こうした補正処理は必要ない。
次に、図6に示すフローチャートを参照して、燃料噴射弁20に対する通電時間TIを算出する際にECU14が実行する処理ルーチンについて説明する。なお、この処理ルーチンは、コンデンサ12による燃料噴射弁20への通電が開始される際に、すなわち通電開始時点に実行される処理ルーチンである。また、ここでは、複数設けられている燃料噴射弁20のうち、これから燃料噴射を開始する燃料噴射弁(上述の次の燃料噴射弁)を「今回の燃料噴射弁20B」といい、今回の燃料噴射弁20Bへの通電開始の直前に通電が開始された燃料噴射弁(上述の先の燃料噴射弁)を「前回の燃料噴射弁20A」というものとする。
図6に示すように、本処理ルーチンにおいて、ECU14は、今回の燃料噴射弁20Bに対する通電時間TIを算出する算出処理を行う(ステップS11)。この今回の燃料噴射弁20Bに対する通電時間TIを算出する算出処理の一例については、図7を用いて後述する。続いて、ECU14は、通電開始間隔TRPWがピーク到達間隔TRPKよりも短いか否かを判定する(ステップS12)。このステップS12でいう通電開始間隔TRPWとは、前回の燃料噴射弁20Aへの通電開始時点である第1の通電開始時点と今回の燃料噴射弁20Bへの通電開始時点である第2の通電開始時点との間隔である。また、ピーク到達間隔TRPKは、第1の通電開始時点と、前回の燃料噴射弁20Aのソレノイド21に流れる励磁電流Iinjがピーク電流値Ipに達するピーク到達時点との間隔の推定値である。
通電開始間隔TRPWがピーク到達間隔TRPK以上である場合、本処理ルーチンの実行タイミングである第2の通電開始時点では、コンデンサ12から前回の燃料噴射弁20Aへの給電が既に終了しているため、前回の燃料噴射弁20Aに対する通電時間TIを補正しなくてもよいと判断することができる。一方、通電開始間隔TRPWがピーク到達間隔TRPKよりも短い場合、本処理ルーチンの実行タイミングである第2の通電開始時点では、コンデンサ12から前回の燃料噴射弁20Aへの給電が未だ行われている。しかも、デリバリパイプ54内の燃料圧力Paの高さや通電開始間隔TRPWの長さによっては、前回の燃料噴射弁20Aが未だ開弁していない可能性がある。この場合、第2の通電開始時点で今回の燃料噴射弁20Bに対してコンデンサ12から給電が開始されることにより、前回の燃料噴射弁20Aの開弁が遅れるおそれがあるため、前回の燃料噴射弁20Aに対する通電時間TIを補正する必要が生じる。
そのため、通電開始間隔TRPWがピーク到達間隔TRPK以上である場合(ステップS12:YES)、ECU14は、前回の燃料噴射弁20Aに対する通電時間TIを補正することなく本処理ルーチンを終了する。一方、通電開始間隔TRPWがピーク到達間隔TRPKよりも短い場合(ステップS12:NO)、ECU14は、前回の燃料噴射弁20Aに対する通電時間TIを補正する補正処理を行い(ステップS13)、その後、本処理ルーチンを終了する。なお、前回の燃料噴射弁20Aに対する通電時間の補正処理に関しては、図8を用いて後述する。
次に、図7に示すフローチャートと、図10に示すタイミングチャートと、図11〜図18に示すマップとを参照して、上記ステップS11の今回の燃料噴射弁20Bに対する通電時間TIの算出処理ルーチンについて説明する。
図7に示すように、本処理ルーチンにおいて、ECU14は、前回の燃料噴射弁20Aにおけるピーク到達間隔TRPKを算出する(ステップS101)。ステップS101で算出するピーク到達間隔TRPKは、前回の燃料噴射弁20Aへの通電開始時点から、前回の燃料噴射弁20Aのソレノイド21に流れる励磁電流Iinjがピーク電流値Ipに達する時点までの間隔の推定値である。このピーク到達間隔TRPKは、ソレノイド21に流れる励磁電流Iinjがピーク電流値Ipに向けて上昇する際の同励磁電流Iinjの上昇速度と、前回の燃料噴射弁20Aによる燃料噴射に対して設定されたピーク電流値Ipの大きさとに基づき推定することができる。すなわち、ECU14は、励磁電流Iinjの上昇速度に応じた到達間隔ベース値TRPK_Bと、ピーク電流値Ipに応じた第1ピーク補正量TRPK_Rとを算出し、算出した到達間隔ベース値TRPK_Bと第1ピーク補正量TRPK_Rとを加算することによりピーク到達間隔TRPKを算出する。
ここで、到達間隔ベース値TRPK_Bの算出方法について説明する。
図10に示すように、ECU14は、燃料噴射弁20への通電が開始される通電開始時点t41から、励磁電流Iinjがピーク電流値Ipよりも低い規定電流値I_Thを上回る立ち上がり検出時点t42までの時間である立ち上がり検出時間T1rを計測している。この立ち上がり検出時間T1rは、励磁電流Iinjの上昇速度が遅いほど長くなる傾向を有しており、励磁電流Iinjの上昇速度に相当する値ということができる。なお、規定電流値I_Thは、燃料噴射弁20に対して設定される要求噴射量が燃料噴射弁20における最小噴射量である場合であっても励磁電流Iinjが規定電流値I_Thを必ず上回ることができるような小さな値に設定されている。
図10に示すように、ECU14は、燃料噴射弁20への通電が開始される通電開始時点t41から、励磁電流Iinjがピーク電流値Ipよりも低い規定電流値I_Thを上回る立ち上がり検出時点t42までの時間である立ち上がり検出時間T1rを計測している。この立ち上がり検出時間T1rは、励磁電流Iinjの上昇速度が遅いほど長くなる傾向を有しており、励磁電流Iinjの上昇速度に相当する値ということができる。なお、規定電流値I_Thは、燃料噴射弁20に対して設定される要求噴射量が燃料噴射弁20における最小噴射量である場合であっても励磁電流Iinjが規定電流値I_Thを必ず上回ることができるような小さな値に設定されている。
ところで、計測値である立ち上がり検出時間T1rは電流検出回路42によって検出される電流値のばらつきを含んでいるため、この立ち上がり検出時間T1rに基づいて到達間隔ベース値TRPK_Bを算出しても、その算出精度が高いとは言い難い。そこで、ECU14は、通電開始時点t41から立ち上がり検出時点t42までの時間の算出値である立ち上がり算出時間T1cを算出するようにしている。
例えば、ECU14は、コンデンサ12から給電されている燃料噴射弁20のソレノイド21に流れる励磁電流Iinjを検出する電流検出回路42の特性に応じたばらつき比学習値Rcを予め算出している。そして、ECU14は、立ち上がり検出時間T1rを計測するとともに、今回の燃料噴射弁20Bの電流検出回路42に対応するばらつき比学習値Rcをメモリから読み出し、立ち上がり検出時間T1rにばらつき比学習値Rcを乗ずることにより立ち上がり算出時間T1cを算出する。この立ち上がり算出時間T1cは、ばらつき比学習値を反映させて算出された電流検出回路42によって検出される電流値のばらつきを極力排除した値であるため、立ち上がり検出時間T1rよりも励磁電流Iinjの上昇速度に即した値となる。そして、ECU14は、図11に示すマップを用い、立ち上がり算出時間T1cに応じた到達間隔ベース値TRPK_Bを算出する。こうした立ち上がり算出時間T1cを用いた算出処理を行うことにより、到達間隔ベース値TRPK_Bの算出精度を、立ち上がり検出時間T1rを用いた算出処理を行う場合よりも良くすることができる。
図11は、立ち上がり算出時間T1cと到達間隔ベース値TRPK_Bとの関係を示している。図11に示すように、到達間隔ベース値TRPK_Bは、立ち上がり算出時間T1cが長いほど大きくなる。したがって図11に示すマップを用いて立ち上がり算出時間T1cに応じた到達間隔ベース値TRPK_Bを算出することにより、励磁電流Iinjの上昇速度が遅く、立ち上がり算出時間T1cが長くなるほど到達間隔ベース値TRPK_Bが大きくなる。
次に、第1ピーク補正量TRPK_Rの算出方法について説明する。
通電開始時点からピーク電流値Ipに向けて上昇する励磁電流Iinjの上昇速度が同等である場合、ピーク電流値Ipが大きいほど、ピーク到達間隔TRPKが長くなりやすい。そこで、ECU14は、図12に示すマップを用い、設定されているピーク電流値Ipに応じた第1ピーク補正量TRPK_Rを算出するようにした。
通電開始時点からピーク電流値Ipに向けて上昇する励磁電流Iinjの上昇速度が同等である場合、ピーク電流値Ipが大きいほど、ピーク到達間隔TRPKが長くなりやすい。そこで、ECU14は、図12に示すマップを用い、設定されているピーク電流値Ipに応じた第1ピーク補正量TRPK_Rを算出するようにした。
図12は、ピーク電流値Ipと第1ピーク補正量TRPK_Rとの関係を示している。図12に示すように、第1ピーク補正量TRPK_Rは、ピーク電流値Ipが大きいほど大きくなる。
図7に戻り、ステップS101でピーク到達間隔TRPKを算出したECU14は、第1の通電開始時点からピーク到達時点までにおける電圧低下量ΔVFを算出する(ステップS102)。この電圧低下量ΔVFとは、第1の通電開始時点からピーク到達時点までの間でコンデンサ12から前回の燃料噴射弁20Aのソレノイド21に供給される電荷の量に応じた値となる。この電圧低下量ΔVFは、前回の燃料噴射弁20Aの燃料噴射に対して設定されたピーク電流値Ip、前回の燃料噴射弁20Aにおけるピーク到達間隔TRPK、及び現時点のコンデンサ容量CCに基づき推定することができる。ECU14は、前回の燃料噴射弁20Aからの燃料噴射に際して設定されたピーク電流値Ipに応じた第2ピーク補正量ΔVF_RIと、ピーク到達間隔TRPKに応じた間隔補正量ΔVF_RPと、コンデンサ容量CCに応じた第1容量補正量ΔVF_RCとを算出する。そして、ECU14は、予め設定されているベース値ΔVF_Bに、第2ピーク補正量ΔVF_RI、間隔補正量ΔVF_RP及び第1容量補正量ΔVF_RCを加算することにより電圧低下量ΔVFを算出する。
ここで、第2ピーク補正量ΔVF_RIの算出方法について説明する。
ピーク電流値Ipが大きいほど、燃料噴射弁20のソレノイド21には大きな電流が流れることとなり、第1の通電開始時点からピーク到達時点までの間でコンデンサ12から前回の燃料噴射弁20Aのソレノイド21に供給される電荷の量が多いと推定することができる。そのため、電圧低下量ΔVFは、ピーク電流値Ipが大きいほど大きくなりやすい。そこで、ECU14は、図13に示すマップを用い、ピーク電流値Ipに応じた第2ピーク補正量ΔVF_RIを算出するようにした。
ピーク電流値Ipが大きいほど、燃料噴射弁20のソレノイド21には大きな電流が流れることとなり、第1の通電開始時点からピーク到達時点までの間でコンデンサ12から前回の燃料噴射弁20Aのソレノイド21に供給される電荷の量が多いと推定することができる。そのため、電圧低下量ΔVFは、ピーク電流値Ipが大きいほど大きくなりやすい。そこで、ECU14は、図13に示すマップを用い、ピーク電流値Ipに応じた第2ピーク補正量ΔVF_RIを算出するようにした。
図13は、ピーク電流値Ipと第2ピーク補正量ΔVF_RIとの関係を示している。図13に示すように、第2ピーク補正量ΔVF_RIは、ピーク電流値Ipが大きいほど大きくなる。
間隔補正量ΔVF_RPの算出方法について説明する。
ピーク到達間隔TRPKが長いほど、コンデンサ12から燃料噴射弁20に電力が供給され続ける時間が長くなる。これは、コンデンサ12から燃料噴射弁20のソレノイド21に電荷が供給される時間が長いことを示している。そして、このように電荷が供給される時間が長く、コンデンサ12から燃料噴射弁20に放出される電荷の量が多いほど、コンデンサ電圧Vcが低くなりやすい。そのため、電圧低下量ΔVFは、ピーク到達間隔TRPKが長いほど大きくなりやすい。そこで、ECU14は、図14に示すマップを用い、ピーク到達間隔TRPKに応じた間隔補正量ΔVF_RPを算出するようにした。
ピーク到達間隔TRPKが長いほど、コンデンサ12から燃料噴射弁20に電力が供給され続ける時間が長くなる。これは、コンデンサ12から燃料噴射弁20のソレノイド21に電荷が供給される時間が長いことを示している。そして、このように電荷が供給される時間が長く、コンデンサ12から燃料噴射弁20に放出される電荷の量が多いほど、コンデンサ電圧Vcが低くなりやすい。そのため、電圧低下量ΔVFは、ピーク到達間隔TRPKが長いほど大きくなりやすい。そこで、ECU14は、図14に示すマップを用い、ピーク到達間隔TRPKに応じた間隔補正量ΔVF_RPを算出するようにした。
図14は、ピーク到達間隔TRPKと間隔補正量ΔVF_RPとの関係を示している。図14に示すように、間隔補正量ΔVF_RPは、ピーク到達間隔TRPKが長いほど大きくなる。
第1容量補正量ΔVF_RCの算出方法について説明する。
燃料噴射弁20のソレノイド21に対してコンデンサ12から同量の電荷を供給させる場合、コンデンサ容量CCが少ないほど、コンデンサ電圧Vcが低くなりやすい。そこで、ECU14は、図15に示すマップを用い、コンデンサ容量CCに応じて第1容量補正量ΔVF_RCを算出するようにした。
燃料噴射弁20のソレノイド21に対してコンデンサ12から同量の電荷を供給させる場合、コンデンサ容量CCが少ないほど、コンデンサ電圧Vcが低くなりやすい。そこで、ECU14は、図15に示すマップを用い、コンデンサ容量CCに応じて第1容量補正量ΔVF_RCを算出するようにした。
コンデンサ容量CCは、コンデンサ12の製造上のばらつき及びコンデンサ12の経年変化などによってばらつく。そのため、コンデンサ容量CCは、機関運転中におけるコンデンサ電圧Vcの変化態様などに基づき学習することが好ましい。なお、コンデンサ容量CCの学習方法については、図9及び図20を用いて後述する。そして、第1容量補正量ΔVF_RCを算出する際には、この学習方法によって学習されたコンデンサ容量の学習値がコンデンサ容量CCとして採用される。
図15は、コンデンサ容量CCと第1容量補正量ΔVF_RCとの関係を示している。図15に示すように、第1容量補正量ΔVF_RCは、コンデンサ容量CCが少ないほど大きくなる。
図7に戻り、ステップS102で電圧低下量ΔVFを算出したECU14は、前回の燃料噴射弁20Aの通電開始時点である第1の通電開始時点におけるコンデンサ電圧の推定値Vc_Estbをメモリから読み出す(ステップS103)。続いて、ECU14は、コンデンサ電圧Vcが上限電圧Vc_Maxに向けて回復される際におけるコンデンサ電圧Vcの回復速度の推定値であるコンデンサ電圧上昇速度SCUPをメモリから読み出す(ステップS104)。
ここで、コンデンサ電圧上昇速度SCUPの算出方法について説明する。
コンデンサ12の特性上、バッテリ30によるコンデンサ12への充電によってコンデンサ電圧Vcが回復される場合にあっては、コンデンサ容量CCが少ないほどコンデンサ電圧Vcが速やかに回復する、すなわちコンデンサ電圧上昇速度SCUPが速くなりやすい。また、バッテリ30の電圧であるバッテリ電圧VBが高いほどコンデンサ12に印加される電圧が高くなるため、コンデンサ電圧上昇速度SCUPは、バッテリ電圧VBが高いほど速くなりやすい。つまり、コンデンサ電圧上昇速度SCUPは、コンデンサ容量CC及びバッテリ電圧VBに基づき推定することができる。
コンデンサ12の特性上、バッテリ30によるコンデンサ12への充電によってコンデンサ電圧Vcが回復される場合にあっては、コンデンサ容量CCが少ないほどコンデンサ電圧Vcが速やかに回復する、すなわちコンデンサ電圧上昇速度SCUPが速くなりやすい。また、バッテリ30の電圧であるバッテリ電圧VBが高いほどコンデンサ12に印加される電圧が高くなるため、コンデンサ電圧上昇速度SCUPは、バッテリ電圧VBが高いほど速くなりやすい。つまり、コンデンサ電圧上昇速度SCUPは、コンデンサ容量CC及びバッテリ電圧VBに基づき推定することができる。
そこで、ECU14は、図16に示すマップを用い、コンデンサ容量CCに応じた第2容量補正量SCUP_RCを算出し、図17に示すマップを用い、バッテリ電圧VBに応じたバッテリ補正量SCUP_RBを算出するようにした。そして、ECU14は、予め設定されているベース値SCUP_Bに対して、第2容量補正量SCUP_RC及びバッテリ補正量SCUP_RBを加算することによりコンデンサ電圧上昇速度SCUPを算出するようにした。
図16は、コンデンサ容量CCと第2容量補正量SCUP_RCとの関係を示している。図16に示すように、第2容量補正量SCUP_RCは、コンデンサ容量CCが少ないほど大きくなる。
図17は、バッテリ電圧VBとバッテリ補正量SCUP_RBとの関係を示している。図17に示すように、バッテリ補正量SCUP_RBは、バッテリ電圧VBが高いほど大きくなる。
図7に戻り、ステップS104でコンデンサ電圧上昇速度SCUPを取得したECU14は、前回の燃料噴射弁20Aの通電開始時点と今回の燃料噴射弁20Bの通電開始時点との間隔、すなわち第1の通電開始時点と第2の通電開始時点との間隔である通電開始間隔TRPWを算出する(ステップS105)。そして、ECU14は、通電開始間隔TRPWがステップS101で算出したピーク到達間隔TRPKよりも短いか否かを判定する(ステップS106)。上述したように、通電開始間隔TRPWがピーク到達間隔TRPKよりも短い場合には、コンデンサ12から前回の燃料噴射弁20Aへの給電が行われている最中に、コンデンサ12から今回の燃料噴射弁20Bへの給電が開始されることとなる。その一方で、通電開始間隔TRPWがピーク到達間隔TRPK以上である場合、コンデンサ12から今回の燃料噴射弁20Bへの給電が開始される時点、すなわち第2の通電開始時点では、コンデンサ12から前回の燃料噴射弁20Aへの給電が既に終了している。そのため、通電開始間隔TRPWがピーク到達間隔TRPKよりも短いか否かによって、コンデンサ電圧の推定値Vc_Estの算出方法を変更することが好ましい。
そのため、通電開始間隔TRPWがピーク到達間隔TRPK以上である場合(ステップS106:NO)、ECU14は、以下に示す関係式(式1)を用いる第1の算出処理によってコンデンサ電圧の推定値Vc_Estを算出する(ステップS107)。すなわち、コンデンサ電圧の推定値Vc_Estは、ステップS102〜S105で算出した電圧低下量ΔVF、第1の通電開始時点におけるコンデンサ電圧の推定値Vc_Estb、コンデンサ電圧上昇速度SCUP及び通電開始間隔TRPWを関係式(式1)に代入することにより算出される。この場合、コンデンサ電圧の推定値Vc_Estは、通電開始間隔TRPWが長いほど大きくなる。そして、ECU14は、その処理を後述するステップS109に移行する。
ステップS111において、ECU14は、通電補正量TIRを、コンデンサ電圧の推定値Vc_Estに応じた値に決定する。
コンデンサ電圧の推定値Vc_Estが小さいときとは、実際のコンデンサ電圧Vcが低いということができる。このようにコンデンサ電圧Vcが低い場合、燃料噴射を行う燃料噴射弁20のソレノイド21に印加される電圧が低く、ソレノイド21に流れる励磁電流Iinjの上昇速度が遅くなりやすい。そのため、今回の燃料噴射弁20Bに対する通電時間TIを、第2の通電開始時点におけるコンデンサ電圧の推定値Vc_Estが小さいほど大きくすることが好ましい。そこで、ECU14は、図18に示すマップを用い、コンデンサ電圧の推定値Vc_Estに応じた通電補正量TIRを算出している。
コンデンサ電圧の推定値Vc_Estが小さいときとは、実際のコンデンサ電圧Vcが低いということができる。このようにコンデンサ電圧Vcが低い場合、燃料噴射を行う燃料噴射弁20のソレノイド21に印加される電圧が低く、ソレノイド21に流れる励磁電流Iinjの上昇速度が遅くなりやすい。そのため、今回の燃料噴射弁20Bに対する通電時間TIを、第2の通電開始時点におけるコンデンサ電圧の推定値Vc_Estが小さいほど大きくすることが好ましい。そこで、ECU14は、図18に示すマップを用い、コンデンサ電圧の推定値Vc_Estに応じた通電補正量TIRを算出している。
図18は、コンデンサ電圧の推定値Vc_Estと通電補正量TIRとの関係を示している。図18に示すように、通電補正量TIRは、コンデンサ電圧の推定値Vc_Estが小さいほど大きくなる。ただし、コンデンサ電圧の推定値Vc_Estがある程度大きい場合には、無効噴射時間TAの長さはコンデンサ電圧Vcの大きさによる影響をほとんど受けなくなる。そこで図18のマップでは、コンデンサ電圧の推定値Vc_Estが基準電圧値Vc_B以上である場合の通電補正量TIRが「0(零)」になっている。
図7に戻り、ステップS111で通電補正量TIRを決定したECU14は、要求噴射量に応じたベース通電時間TIBを取得する(ステップS112)。そして、ECU14は、ベース通電時間TIBに対してステップS111で決定して通電補正量TIRを加算することにより、今回の燃料噴射弁20Bに対する通電時間TIを算出し(ステップS113)、本処理ルーチンを終了する。
次に、図8に示すフローチャートと、図19に示すマップとを参照して、上記ステップS13の前回の燃料噴射弁20Aに対する通電時間TIの補正処理ルーチンについて説明する。
図8に示すように、本処理ルーチンにおいて、ECU14は、デリバリパイプ54内の燃料圧力Paを取得する(ステップS201)。例えば、燃圧センサ43によって検出された燃料圧力のセンサ値を燃料圧力Paとしてもよい。続いて、ECU14は、図19に示すマップを用い、通電時間補正量TIPを、デリバリパイプ54内の燃料圧力Pa及び通電開始間隔TRPWに応じた値に設定する(ステップS202)。そして、ECU14は、前回の燃料噴射弁20Aによる燃料噴射に対して設定された通電時間TIに通電時間補正量TIPを加算し、この和(=TI+TIP)を通電時間TIとする補正処理を行い(ステップS203)、その後、本処理ルーチンを終了する。
上述したように、通電開始間隔TRPWがピーク到達間隔TRPKよりも短い場合、コンデンサ12から前回の燃料噴射弁20Aへの給電が未だ行われている最中に、コンデンサ12から今回の燃料噴射弁20Bへの給電が開始される。このとき、デリバリパイプ54内の燃料圧力Paが低い場合ほど、今回の燃料噴射弁20Bへの通電開始時点である第2の通電開始時点で前回の燃料噴射弁20Aが未だ開弁していない可能性は低くなる。言い換えると、燃料圧力Paが高い場合ほど、第2の通電開始時点で前回の燃料噴射弁20Aが未だ開弁していない可能性は高くなる。また、燃料圧力Paが同程度であっても、第2の通電開始時点で前回の燃料噴射弁20Aが未だ開弁していない可能性は、通電開始間隔TRPWが短いほど高くなる。
そのため、前回の燃料噴射弁20Aの通電時間TIを補正するための補正量である通電時間補正量TIPは、デリバリパイプ54内の燃料圧力Paと通電開始間隔TRPWとに基づいて決定することが好ましい。そこで、本実施形態の燃料噴射弁駆動システム10にあっては、通電開始間隔TRPWと通電時間補正量TIPとの関係を示すマップを、デリバリパイプ54内の燃料圧力Paに応じて複数用意している。そして、ECU14は、燃料圧力Paに応じたマップを選択して用い、通電時間補正量TIPを、通電開始間隔TRPWに応じた値に決定している。
図19には、通電開始間隔TRPWと通電時間補正量TIPとの関係を示すマップのうち、燃料圧力Paが低い場合の低圧用マップと、燃料圧力Paが高い場合の高圧用マップと、燃料圧力Paが中程度である場合の中程度用マップとが示されている。
図19に示すように、低圧用マップ及び中程度用マップでは、通電開始間隔TRPWが長いほど通電時間補正量TIPが小さくなる。しかし、中程度用マップでは、低圧用マップと比較して、通電開始間隔TRPWの変化に対する通電時間補正量TIPの変化量が少ない。そして、通電開始間隔TRPWが同等である場合、中程度用マップを用いて決定される通電時間補正量TIPは、低圧用マップを用いて決定される通電時間補正量よりも大きくなる。
一方、高圧用マップでは、通電時間補正量TIPは、通電開始間隔TRPWの長さに関係なくほぼ一定値となる。これは、高圧用マップが選択されるほどデリバリパイプ54内の燃料圧力Paが高いときには、通電開始間隔TRPWの長さによらず、第2の通電開始時点では前回の燃料噴射弁20Aが未だ開弁していない可能性が高いためである。なお、通電開始間隔TRPWが同等である場合、高圧用マップを用いて決定される通電時間補正量TIPは、低圧用マップや中程度用マップを用いて決定される通電時間補正量よりも大きくなる。
次に、図9に示すフローチャートと、図20に示すマップとを参照して、コンデンサ12の容量であるコンデンサ容量CCを学習する際にECU14が実行する処理ルーチンについて説明する。この処理ルーチンは、予め設定された制御サイクル毎に実行される。
図9に示すように、本処理ルーチンにおいて、ECU14は、コンデンサ12から給電が行われている燃料噴射弁20が1つのみであるか否かを判定する(ステップS301)。複数の燃料噴射弁20に対してコンデンサ12から給電が行われている場合や、コンデンサ12から給電が行われている燃料噴射弁20が1つもない場合(ステップS301:NO)には、ECU14は、その処理を次のステップS302に移行する。そして、ステップS302において、ECU14は、後述するコンデンサ電圧Vc_S,Vc_Aをリセットするリセット処理を行う。そして、その後、ECU14は、本処理ルーチンを一旦終了する。
一方、コンデンサ12から給電が行われている燃料噴射弁20が1つのみである場合(ステップS301:YES)、ECU14は、現時点が通電開始時点であるか否かを判定する(ステップS303)。現時点が通電開始時点ではない場合(ステップS303:NO)、ECU14は、その処理を後述するステップS305に移行する。一方、現時点が通電開始時点である場合(ステップS303:YES)、ECU14は、電圧センサ41によって検出されるコンデンサ電圧の検出値を通電開始時点のコンデンサ電圧Vc_Sに設定する(ステップS304)。そして、ECU14は、その処理を次のステップS305に移行する。
ステップS305において、ECU14は、通電開始時点からの経過時間が予め設定されている所定時間KTに達したか否かを判定する。この所定時間KTは、通電開始時点からピーク到達時点までの時間の推定値よりも短い時間に設定されている。そして、所定時間KTが未だ経過していない場合(ステップS305:NO)、ECU14は、コンデンサ容量CCを算出することなく本処理ルーチンを一旦終了する。一方、所定時間KTが経過した場合(ステップS305:YES)、ECU14は、所定時間KTが経過した時点において電圧センサ41によって検出されたコンデンサ電圧の検出値を、所定時間KTの経過時点のコンデンサ電圧Vc_Aとして設定する(ステップS306)。
続いて、ECU14は、通電開始時点のコンデンサ電圧Vc_Sから所定時間KTの経過時点のコンデンサ電圧Vc_Aを減じ、この差(=Vc_S−Vc_A)を電圧変化量ΔVcとする(ステップS307)。この電圧変化量ΔVcは、1つの燃料噴射弁20に対してコンデンサ12から給電を行っている場合のコンデンサ電圧Vcの低下速度が速いほど大きくなる。そして、ECU14は、ステップS307で算出した電圧変化量ΔVcに基づいてコンデンサ容量CCを学習する(ステップS308)。その後、ECU14は、本処理ルーチンを一旦終了する。
上述したように、コンデンサ12から燃料噴射弁20に給電を行う場合においては、コンデンサ容量CCが少ないほど、コンデンサ電圧Vcの低下速度が速くなる。言い換えると、コンデンサ容量CCは、コンデンサ電圧Vcの低下速度に相当する電圧変化量ΔVcが多いほど少ないということができる。そこで、本実施形態の燃料噴射弁駆動システム10にあっては、図20に示すマップを用い、その時点のコンデンサ容量CCを算出するようにした。
図20は、電圧変化量ΔVcとコンデンサ容量CCとの関係を示している。図20に示すように、コンデンサ容量CCは、電圧変化量ΔVcが多いほど少なくなる。こうしたマップを用いてコンデンサ容量CCを学習することにより、コンデンサ容量CCを、コンデンサ電圧Vcの低下速度が速いほど小さくすることができる。
次に、各燃料噴射弁20から燃料を噴射させる際の作用について説明する。
ある一つの燃料噴射弁20から燃料を噴射させる際には、その時点のコンデンサ電圧の推定値Vc_Estに基づいて通電時間TIが設定される。コンデンサ電圧の推定値Vc_Estは、今回燃料噴射を開始する燃料噴射弁(今回の燃料噴射弁20B)の通電開始時点と、この通電時間の直前に通電が開始された燃料噴射弁(前回の燃料噴射弁20A)への通電開始時点との間隔である通電開始間隔TRPWに基づいて推定される(ステップS11)。
ある一つの燃料噴射弁20から燃料を噴射させる際には、その時点のコンデンサ電圧の推定値Vc_Estに基づいて通電時間TIが設定される。コンデンサ電圧の推定値Vc_Estは、今回燃料噴射を開始する燃料噴射弁(今回の燃料噴射弁20B)の通電開始時点と、この通電時間の直前に通電が開始された燃料噴射弁(前回の燃料噴射弁20A)への通電開始時点との間隔である通電開始間隔TRPWに基づいて推定される(ステップS11)。
前回の燃料噴射弁20Aの通電開始時点から、前回の燃料噴射弁20Aのソレノイド21に流れる励磁電流Iinjがピーク電流値Ipに達する時点までの推定値であるピーク到達間隔TRPKが上記通電開始間隔TRPW以下である場合(ステップS104:NO)、コンデンサ12による前回の燃料噴射弁20Aへの給電は既に終了している。すなわち、バッテリ30からの電力供給によるコンデンサ12の充電によってコンデンサ電圧Vcが回復している最中又はコンデンサ電圧Vcの回復の完了後に、コンデンサ12から今回の燃料噴射弁20Bへの給電が開始されることとなる。そのため、上記関係式(式1)を用いることにより、コンデンサ電圧の推定値Vc_Estは、上記通電開始間隔TRPWが長いほど大きくなるように算出される(ステップS107)。
その一方で、上記ピーク到達間隔TRPKが上記通電開始間隔TRPWよりも長い場合(ステップS104:YES)、今回の燃料噴射弁20Bの通電開始時点では、前回の燃料噴射弁20Aに対してコンデンサ12からの給電が未だ行われている。すなわち、前回の燃料噴射弁20Aの通電開始時点と今回の燃料噴射弁20Bの通電開始時点との間には、コンデンサ電圧を回復させる期間が存在しない。そのため、上記関係式(式2)を用いることにより、コンデンサ電圧の推定値Vc_Estは、通電開始間隔TRPWが長いほど小さくなるように算出される(ステップS108)。
そして、コンデンサ電圧の推定値Vc_Estが算出されると、同推定値Vc_Estが小さいほど大きくなるように通電補正量TIRが算出される(ステップS111)。そして、この通電補正量TIRを要求噴射量に基づいて設定されたベース通電時間TIBに対して加算することにより、今回の燃料噴射弁20Bに対する通電時間TIが算出される(ステップS112,S113)。これにより、今回の燃料噴射弁20Bの通電開始時点における実際のコンデンサ電圧が低いほど、今回の燃料噴射弁20Bに電源から給電が行われる通電時間TIが長くなる。したがって、通電開始時点におけるコンデンサ電圧が低いときであっても、今回の燃料噴射弁20Bから噴射される燃料の量は、要求噴射量に見合った量となる。
なお、上記ピーク到達間隔TRPKが上記通電開始間隔TRPWよりも長い場合、通電開始間隔TRPWが非常に短かったり、デリバリパイプ54内の燃料圧力Paが高かったりすると、今回の燃料噴射弁20Bの通電開始時点では、前回の燃料噴射弁20Aが未だ開弁していないことがある。この場合には、通電開始間隔TRPW及び燃料圧力Paに基づいて、前回の燃料噴射弁20Aに対する通電時間TIが長くされる(ステップS201〜S203)。その結果、コンデンサ12から前回の燃料噴射弁20Aへの給電が行われている最中に、コンデンサ12から今回の燃料噴射弁20Bへの給電が開始されることにより、前回の燃料噴射弁20Aの開弁が遅れたとしても、前回の燃料噴射弁20Aから噴射される燃料の量は、要求噴射量に見合った量となる。
上記構成及び作用によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)本実施形態の燃料噴射弁駆動システム10では、通電開始間隔TRPWに基づいて燃料噴射弁20への通電開始時点におけるコンデンサ電圧の推定値Vc_Estを算出し、このコンデンサ電圧の推定値Vc_Estに基づいて燃料噴射弁20に対する通電時間TIが設定される。これにより、今回燃料噴射を開始する燃料噴射弁20に対する通電時間TIを、同燃料噴射弁20への通電開始の直前に通電が開始された他の燃料噴射弁への通電開始時点からのコンデンサ12の電圧の実際の低下態様を加味して設定することができる。すなわち、センサなどの検出系によって検出されるコンデンサ12の電圧の検出値に基づいて通電時間を設定する場合とは異なり、コンデンサ12の電圧の実際の変化速度と、検出系によって検出される電圧の検出値の変化速度との乖離による影響を受けることなく通電時間TIを設定することができる。そのため、上記通電開始間隔TRPWに基づいて通電時間TIを設定することにより、通電時間TIを、第2の通電開始時点におけるコンデンサ12の実際の電圧に見合った時間に近づけることができる。そして、この通電時間TIに基づいて燃料噴射弁20を制御することにより、燃料噴射弁20から要求噴射量に見合った適量の燃料を噴射させることができる。
(1)本実施形態の燃料噴射弁駆動システム10では、通電開始間隔TRPWに基づいて燃料噴射弁20への通電開始時点におけるコンデンサ電圧の推定値Vc_Estを算出し、このコンデンサ電圧の推定値Vc_Estに基づいて燃料噴射弁20に対する通電時間TIが設定される。これにより、今回燃料噴射を開始する燃料噴射弁20に対する通電時間TIを、同燃料噴射弁20への通電開始の直前に通電が開始された他の燃料噴射弁への通電開始時点からのコンデンサ12の電圧の実際の低下態様を加味して設定することができる。すなわち、センサなどの検出系によって検出されるコンデンサ12の電圧の検出値に基づいて通電時間を設定する場合とは異なり、コンデンサ12の電圧の実際の変化速度と、検出系によって検出される電圧の検出値の変化速度との乖離による影響を受けることなく通電時間TIを設定することができる。そのため、上記通電開始間隔TRPWに基づいて通電時間TIを設定することにより、通電時間TIを、第2の通電開始時点におけるコンデンサ12の実際の電圧に見合った時間に近づけることができる。そして、この通電時間TIに基づいて燃料噴射弁20を制御することにより、燃料噴射弁20から要求噴射量に見合った適量の燃料を噴射させることができる。
(2)なお、通電開始間隔TRPWがピーク到達間隔TRPK以上である場合、燃料噴射弁20への通電開始時点では上記他の燃料噴射弁へのコンデンサ12からの給電が既に終了している。そのため、通電開始間隔TRPWがピーク到達間隔TRPK以上である場合、通電開始間隔TRPWが短いほど、コンデンサ電圧Vcを回復させることのできる時間が短くなるため、第2の通電開始時点におけるコンデンサ電圧の推定値Vc_Estが低くなる。そこで、本実施形態の燃料噴射弁駆動システム10では、通電開始間隔TRPWがピーク到達間隔TRPK以上であるときには、通電開始間隔TRPWが短いほど第2の通電開始時点におけるコンデンサ電圧の推定値Vc_Estが低くなるようにコンデンサ電圧の推定値Vc_Estを算出している。このようにコンデンサ電圧の推定値Vc_Estを算出することにより、通電開始間隔TRPWがピーク到達間隔TRPK以上であるときには充電によってコンデンサ電圧Vcが回復することを考慮して、第2の通電開始時点におけるコンデンサ電圧の推定値Vc_Estを算出することができる。
(3)具体的には、第1の通電開始時点におけるコンデンサの電圧の推定値Vc_Estbから電圧低下量ΔVFを減じた差と、通電開始間隔TRPWにコンデンサ電圧上昇速度SCUPを乗じた積とを加算することにより、第2の通電開始時点におけるコンデンサ電圧の推定値Vc_Estが算出される。電圧低下量ΔVFは、第1の通電開始時点からピーク到達時点までの間にコンデンサ12から上記他の燃料噴射弁のソレノイド21に供給された電荷の量に相当する。また、上記積(=TRPW×SCUP)は、第1の通電開始時点から第2の通電開始時点までの間にバッテリ30からコンデンサ12に蓄えられた電荷の量に相当している。そのため、通電開始間隔TRPWがピーク到達間隔TRPK以上である場合には、電圧低下量ΔVFと上記積とを加算する算出処理を行うことで、ピーク到達時点までの電圧低下量とそれ以降の電圧の回復との双方を考慮して、第2の通電開始時点におけるコンデンサ電圧の推定値Vc_Estを算出することができる。
(4)一方、通電開始間隔TRPWがピーク到達間隔TRPK未満である場合、燃料噴射弁20への通電開始時点では上記他の燃料噴射弁へのコンデンサ12からの給電が未だ行われている。コンデンサ12から上記他の燃料噴射弁への給電が行われている場合にあっては、第1の通電開始時点から時間が経過するに連れてコンデンサ12の電圧が低くなる。そのため、通電開始間隔TRPWがピーク到達間隔TRPK未満である場合、通電開始間隔TRPWが短いほど第2の通電開始時点におけるコンデンサ電圧の推定値Vc_Estが高くなる。そこで、本実施形態の燃料噴射弁駆動システム10では、通電開始間隔TRPWがピーク到達間隔TRPK未満であるときには、通電開始間隔TRPWが短いほど第2の通電開始時点におけるコンデンサ電圧の推定値Vc_Estが高くなるようにコンデンサ電圧の推定値Vc_Estを算出する。このようにコンデンサ電圧の推定値Vc_Estを算出することにより、通電開始間隔TRPWがピーク到達間隔TRPK未満であるときには、通電開始間隔TRPWが長くなるほど電圧が低下することを考慮して、第2の通電開始時点におけるコンデンサ電圧の推定値Vc_Estを算出することができる。
(5)具体的には、通電開始間隔TRPWをピーク到達間隔TRPKで除した商に電圧低下量ΔVFを乗じ、この積(=ΔVF×TRPW/TRPK)に基づいて第2の通電開始時点におけるコンデンサ電圧の推定値Vc_Estが算出される。この場合、上記積(=ΔVF×TRPW/TRPK)が、第1の通電開始時点から第2の通電開始時点までの間にコンデンサ12から燃料噴射弁20に供給される電荷の量に相当する値となる。そのため、通電開始間隔TRPWがピーク到達間隔TRPK未満である場合には、上記積に基づく算出処理を行うことにより、第1の通電開始時点から第2の通電開始時点までの間にコンデンサから放電される電荷の量に応じた電圧の低下量を加味して、第2の通電開始時点におけるコンデンサ電圧の推定値Vc_Estを算出することができる。
(6)なお、ピーク到達間隔TRPKが長いほどコンデンサ12から燃料噴射弁20に給電している時間が長くなるため、ピーク到達時点では、コンデンサ電圧Vcが低くなっていると推定することができる。そこで、本実施形態の燃料噴射弁駆動システム10では、電圧低下量ΔVFを、ピーク到達間隔TRPKが長いほど大きくするようにした。したがって、ピーク到達間隔TRPKの長さによる影響を加味して、電圧低下量ΔVFを算出することができる。
(7)また、上記他の燃料噴射弁による燃料噴射に対して設定されたピーク電流値Ipが大きいほど、同他の燃料噴射弁のソレノイド21には大きい電流が流れることとなるため、コンデンサ12から同他の燃料噴射弁に供給される電荷の量は多くなる。このようにコンデンサ12から上記他の燃料噴射弁に供給される電荷の量が多いほど、電圧低下量ΔVFは大きくなる。そこで、本実施形態の燃料噴射弁駆動システム10では、電圧低下量ΔVFを、上記他の燃料噴射弁からの燃料噴射に対して設定されたピーク電流値Ipが大きいほど大きくするようにした。したがって、ピーク電流値Ipの大きさによる影響を加味して、電圧低下量ΔVFを算出することができる。
(8)また、同等の抵抗値を有する対象物に対してコンデンサから一定量の電荷を供給する場合、容量の少ないコンデンサの電圧は、容量の多いコンデンサの電圧よりも低くなりやすい。そのため、電圧低下量ΔVFは、燃料噴射弁20に給電を行うコンデンサ12の容量であるコンデンサ容量CCによっても変わりうる。そこで、本実施形態の燃料噴射弁駆動システム10では、電圧低下量ΔVFの値を、コンデンサ容量CCが少ないほど大きくするようにした。したがって、コンデンサ容量CCによる影響を加味して、電圧低下量ΔVFを算出することができる。
(9)励磁電流Iinjの上昇速度は、その時点のソレノイド21の抵抗値などによって変わりうる。そして、ソレノイド21の抵抗値が高いほど励磁電流Iinjの上昇速度が遅くなるため、ピーク到達間隔TRPKは長くなりやすい。そこで、本実施形態の燃料噴射弁駆動システム10では、励磁電流Iinjの上昇速度に相当する値として、燃料噴射弁20への通電が開始される時点から立ち上がり検出時点までの時間の算出値である立ち上がり算出時間T1cを算出し、この立ち上がり算出時間T1cに基づいてピーク到達間隔TRPKを算出するようにした。こうして算出されるピーク到達間隔TRPKは、励磁電流Iinjの上昇速度が速いほど長くなる。したがって、そのときの励磁電流Iinjの上昇速度を加味して、ピーク到達間隔TRPKを算出することができる。
(10)また、ピーク電流値Ipが大きいほど、励磁電流Iinjがピーク電流値Ipに達するまでの時間が長くなりやすい。そのため、ピーク到達間隔TRPKは、燃料噴射弁20による燃料噴射に対して設定されたピーク電流値Ipの大きさに基づいて推定することができる。そこで、本実施形態の燃料噴射弁駆動システム10では、ピーク到達間隔TRPKをピーク電流値Ipが大きいほど長くするようにした。したがって、燃料噴射弁20による燃料噴射に対して設定されたピーク電流値Ipの大きさの影響を加味して、ピーク到達間隔TRPKを算出することができる。
(11)コンデンサの特性上、コンデンサ容量CCが少ないほどコンデンサ電圧Vcは変動しやすい。そこで、本実施形態の燃料噴射弁駆動システム10では、コンデンサ電圧上昇速度SCUPの値を、コンデンサ容量CCが少ないほど大きくするようにした。そして、このコンデンサ電圧上昇速度SCUPを用いて第2の通電開始時点におけるコンデンサ電圧の推定値Vc_Estを算出しているため、コンデンサ容量CCの変化による影響を加味して、第2の通電開始時点におけるコンデンサ電圧の推定値Vc_Estを精度良く算出することができる。
(12)また、充電によってコンデンサ12の電圧を回復させる際にあっては、電源となるバッテリ30の電圧であるバッテリ電圧VBが高いほどコンデンサ12の充電を速やかに終了させることができる。そのため、コンデンサ電圧上昇速度SCUPは、バッテリ電圧VBが高いほど速いと推定することができる。そこで、本実施形態の燃料噴射弁駆動システム10では、コンデンサ電圧上昇速度SCUPの値を、バッテリ電圧VBが高いほど大きくするようにした。そして、このコンデンサ電圧上昇速度SCUPを用いて第2の通電開始時点におけるコンデンサ電圧の推定値Vc_Estを算出しているため、バッテリ電圧VBによる影響を加味して、第2の通電開始時点におけるコンデンサ電圧の推定値Vc_Estを精度良く算出することができる。
(13)コンデンサ12から燃料噴射弁20に給電を行う場合においては、コンデンサ容量CCが少ないほど、コンデンサ電圧Vcの低下速度が速くなる。言い換えると、コンデンサ容量CCは、コンデンサ電圧Vcの低下速度に相当する電圧変化量ΔVcが多いほど少ないということができる。そこで、本実施形態の燃料噴射弁駆動システム10では、コンデンサ12から一つの燃料噴射弁20に対してのみ給電を行っているときに、そのときのコンデンサ電圧Vcの低下速度に相当する電圧変化量ΔVcを算出し、この電圧変化量ΔVc基づきコンデンサ容量CCを算出するようにした。これにより、電圧変化量ΔVcに基づいてコンデンサ容量CCを算出し、算出したコンデンサ容量CCを用いることにより、その時点のコンデンサ12の容量を加味して、第2の通電開始時点におけるコンデンサ電圧の推定値Vc_Estを精度良く算出することができる。
(14)燃料噴射弁20が実際に開弁するタイミングは、デリバリパイプ54内の燃料圧力Paが高いほど遅くなりやすい。そのため、デリバリパイプ54内の燃料圧力Paが高い状態で、通電開始間隔TRPWがピーク到達間隔TRPK未満であるときには、第2の通電開始時点で上記他の燃料噴射弁が未だ開弁していないことがある。そして、このように上記他の燃料噴射弁が未だ開弁していない状態で同他の燃料噴射弁の次に燃料噴射を開始する燃料噴射弁に対してコンデンサ12から給電されるようになると、上記他の燃料噴射弁の開弁タイミングに遅れが生じるおそれがある。
そこで、本実施形態の燃料噴射弁駆動システム10では、通電開始間隔TRPWがピーク到達間隔TRPK未満である場合、上記他の燃料噴射弁に対する通電時間TIを、今回燃料噴射を行う燃料噴射弁20の通電開始時点の燃料圧力Paが高いほど長くなるように補正するようにした。これにより、上記他の燃料噴射弁からの燃料の噴射量が同他の燃料噴射弁に対する要求噴射量に見合った量よりも少なくなることを抑制することができる。
(15)また、今回燃料噴射を行う燃料噴射弁20への通電が開始される時点で上記他の燃料噴射弁が未だ開弁していない場合、同他の燃料噴射弁の開弁タイミングは、通電開始間隔TRPWが短いほど遅れやすい。そこで、本実施形態の燃料噴射弁駆動システム10では、通電開始間隔TRPWがピーク到達間隔TRPK未満である場合、上記他の燃料噴射弁に対する通電時間TIを、通電開始間隔TRPWが短いほど長くなるように補正するようにした。これにより、上記他の燃料噴射弁からの燃料の噴射量が同他の燃料噴射弁に対する要求噴射量に見合った量よりも少なくなることを抑制することができる。
なお、上記実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・今回燃料噴射を行う燃料噴射弁20への通電開始の直前にコンデンサ12から給電が開始された他の燃料噴射弁に対する通電時間TIの補正処理は、通電開始間隔TRPWを用いるのであれば、デリバリパイプ54内の燃料圧力Paを用いない処理であってもよい。この場合であっても、上記他の燃料噴射弁に対する通電時間TIを、通電開始間隔TRPWが短いほど長くすることができるため、上記(15)と同等の効果を得ることができる。
・今回燃料噴射を行う燃料噴射弁20への通電開始の直前にコンデンサ12から給電が開始された他の燃料噴射弁に対する通電時間TIの補正処理は、通電開始間隔TRPWを用いるのであれば、デリバリパイプ54内の燃料圧力Paを用いない処理であってもよい。この場合であっても、上記他の燃料噴射弁に対する通電時間TIを、通電開始間隔TRPWが短いほど長くすることができるため、上記(15)と同等の効果を得ることができる。
・燃圧センサ43によって検出される燃料圧力のセンサ値は、予め設定された検出周期毎に取得される。そのため、最後にセンサ値が検出された時点から通電開始時点までの間に、高圧燃料ポンプ53から高圧の燃料がデリバリパイプ54内に供給された場合、通電開始時点の実際の燃料圧力Paは、燃圧センサ43によって検出された燃料圧力のセンサ値とは異なっている。そこで、最後にセンサ値が検出された時点から通電開始時点までの間での高圧燃料ポンプ53からデリバリパイプ54内への燃料の供給量に基づき、最後にセンサ値が検出された時点から通電開始時点までの燃料圧力の上昇量を算出し、この上昇量とセンサ値とを加算した和を、通電開始時点における燃料圧力Paとするようにしてもよい。そして、このように算出した燃料圧力Paに基づいて通電時間補正量TIPを決定する(図19参照)ことにより、その決定精度を向上させることができる。その結果、上記他の燃料噴射弁に対する通電時間TIを適切に補正することができ、同他の燃料噴射弁からの燃料の噴射量を、要求噴射量に見合った量に近づけることができる。
・コンデンサ12の製造上の個体差やコンデンサ12の特性の経年変化に起因するコンデンサ容量CCのばらつきを無視することができるのであれば、コンデンサ容量CCとして予め設定された一定の値を用いるようにしてもよい。
・コンデンサ電圧上昇速度SCUPを、その時点のバッテリ電圧VBを加味することなく算出するようにしてもよい。この場合であっても、コンデンサ電圧上昇速度SCUPを、コンデンサ容量CCに基づいて算出するようにすれば、上記(11)と同等の効果を得ることができる。
・コンデンサ電圧上昇速度SCUPを、コンデンサ容量CCを加味することなく算出するようにしてもよい。この場合であっても、コンデンサ電圧上昇速度SCUPを、その時点のバッテリ電圧VBに基づいて算出するようにすれば、上記(12)と同等の効果を得ることができる。
・ピーク到達間隔TRPKを、立ち上がり算出時間T1cの代わりに、立ち上がり検出時間T1rに基づいて算出するようにしてもよい。このような制御構成を採用しても、励磁電流Iinjの上昇速度をある程度加味して、ピーク到達間隔TRPKを算出することができる。
・ピーク到達間隔TRPKを、ピーク電流値Ipの大きさを加味することなく算出するようにしてもよい。この場合であっても、ピーク到達間隔TRPKを、立ち上がり算出時間T1c又は立ち上がり検出時間T1rに基づいて算出するようにすれば、上記(9)と同等の効果を得ることができる。
・ピーク到達間隔TRPKを、励磁電流Iinjの上昇速度、すなわち立ち上がり算出時間T1cや立ち上がり検出時間T1rを加味することなく算出するようにしてもよい。この場合であっても、ピーク到達間隔TRPKを、ピーク電流値Ipに基づいて算出するようにすれば、上記(10)と同等の効果を得ることができる。
・電圧低下量ΔVFを、ピーク電流値Ipやピーク到達間隔TRPKを加味することなく算出するようにしてもよい。この場合であっても、電圧低下量ΔVFを、コンデンサ容量CCに基づいて算出するようにすれば、上記(8)と同等の効果を得ることができる。また、もちろん、電圧低下量ΔVFを、コンデンサ容量CC及びピーク電流値Ipに基づいて算出するようにしてもよいし、コンデンサ容量CC及びピーク到達間隔TRPKに基づいて算出するようにしてもよい。
・電圧低下量ΔVFを、コンデンサ容量CCやピーク到達間隔TRPKを加味することなく算出するようにしてもよい。この場合であっても、電圧低下量ΔVFを、ピーク電流値Ipに基づいて算出するようにすれば、上記(7)と同等の効果を得ることができる。また、もちろん、電圧低下量ΔVFを、ピーク電流値Ip及びコンデンサ容量CCに基づいて算出するようにしてもよいし、ピーク電流値Ip及びピーク到達間隔TRPKに基づいて算出するようにしてもよい。
・電圧低下量ΔVFを、ピーク電流値Ipやコンデンサ容量CCを加味することなく算出するようにしてもよい。この場合であっても、電圧低下量ΔVFを、ピーク到達間隔TRPKに基づいて算出するようにすれば、上記(6)と同等の効果を得ることができる。また、もちろん、電圧低下量ΔVFを、ピーク到達間隔TRPK及びピーク電流値Ipに基づいて算出するようにしてもよいし、ピーク到達間隔TRPK及びコンデンサ容量CCに基づいて算出するようにしてもよい。
・内燃機関によってはピーク電流値Ipが一定の値に固定されているものもあり、こうした内燃機関にあってはピーク電流値Ipの変更によるピーク到達間隔TRPKの変化は生じない。そしてさらに、電圧低下量ΔVF及びコンデンサ電圧上昇速度SCUPのばらつきが無視できるほど小さい場合、通電開始間隔TRPWがピーク到達間隔TRPK以上であるときには、通電補正量TIRを、通電開始間隔TRPWのみに基づいて算出することが可能となる。この場合、例えば図21に示すマップを用いることにより、通電開始時点におけるコンデンサ電圧Vcを推定することなく、通電補正量TIRを決定することができる。
なお、図21に示すマップは、通電開始間隔TRPWと通電補正量TIRとの関係を示すマップである。図21に示すように、通電補正量TIRは、通電開始間隔TRPWが長いほど小さくなる。そして、要求噴射量に応じて設定されたベース通電時間TIBに、こうして算出された通電補正量TIRを加算することにより、通電時間TIを算出することができる。
すなわち、通電開始間隔TRPWがピーク到達間隔TRPK未満とならないように各燃料噴射弁20からの燃料噴射を制御する場合、今回燃料噴射を行う燃料噴射弁20に対する通電時間TIを、通電開始間隔TRPWが短いほど長くするように算出してもよい。この場合であっても、センサなどの検出系によって検出されるコンデンサの電圧の検出値に基づいて通電時間を設定する場合とは異なり、コンデンサの電圧の実際の変化速度と、検出系によって検出される電圧の検出値の変化速度との乖離による影響を受けることなく通電時間TIを設定することができる。そのため、通電時間TIを、燃料噴射を開始する燃料噴射弁への通電開始時点におけるコンデンサの実際の電圧に見合った時間に近づけることができる。そして、こうした通電時間TIに基づいて燃料噴射弁20を制御することにより、燃料噴射弁20から要求噴射量に見合った適量の燃料を噴射させることができる。
10…燃料噴射弁駆動システム、12…コンデンサ、13…駆動制御部としての駆動回路、14…制御装置及び学習部としても機能する電子制御装置(ECU)、20,20A,20B…燃料噴射弁、21…ソレノイド、30…バッテリ、54…デリバリパイプ、CC…コンデンサ容量(学習値)、Iinj…励磁電流、Ip…ピーク電流値、I_Th…規定電流値、Pa…燃料圧力、SCUP…コンデンサ電圧上昇速度、T1c…立ち上がり算出時間、T1r…立ち上がり検出時間、TI,TI1,TI2…通電時間、TRPK…ピーク到達間隔、TRPW…通電開始間隔、Vc_Est…コンデンサ電圧の推定値、ΔVF…電圧低下量。
Claims (14)
- バッテリから供給される電力により充電されるコンデンサと、
前記バッテリと前記コンデンサとを電源として使い分け、同バッテリ又は同コンデンサから燃料噴射弁への給電を制御することにより、同燃料噴射弁を開閉動作させる駆動制御部と、
同駆動制御部を制御し、複数の燃料噴射弁から燃料を噴射させる制御装置と、を備え、
前記各燃料噴射弁から順次燃料を噴射させるに際し、先に通電が開始された他の燃料噴射弁への通電開始時点を第1の通電開始時点とし、同他の燃料噴射弁のソレノイドに流れる励磁電流が、同他の燃料噴射弁の燃料噴射時に設定されているピーク電流値に達した時点をピーク到達時点とし、同他の燃料噴射弁の次に通電が開始される燃料噴射弁への通電開始時点を第2の通電開始時点としたとき、
前記制御装置は、
前記第2の通電開始時点から通電が開始される燃料噴射弁に対する通電時間を、
前記第1の通電開始時点から前記第2の通電開始時点までの間隔である通電開始間隔が前記第1の通電開始時点から前記ピーク到達時点までの間隔であるピーク到達間隔以上であるときには同通電開始間隔が短いほど長くし、
前記通電開始間隔が前記ピーク到達間隔未満であるときには同通電開始間隔が短いほど短くする
ことを特徴とする燃料噴射弁駆動システム。 - 前記制御装置は、
前記通電開始間隔が前記ピーク到達間隔以上であるときには、同通電開始間隔が短いほど前記第2の通電開始時点における前記コンデンサの電圧の推定値を小さくする一方、
前記通電開始間隔が前記ピーク到達間隔未満であるときには、同通電開始間隔が短いほど前記第2の通電開始時点における前記コンデンサの電圧の推定値を大きくし、
前記第2の通電開始時点から通電が開始される燃料噴射弁に対する通電時間を、前記第2の通電開始時点における前記コンデンサの電圧の推定値が小さいほど長くする
請求項1に記載の燃料噴射弁駆動システム。 - 前記第1の通電開始時点から前記ピーク到達時点までにおける前記コンデンサから前記他の燃料噴射弁への給電による同コンデンサの電圧の低下量を電圧低下量とし、前記バッテリから供給される電力による充電によって同コンデンサの電圧が回復される際における同電圧の回復速度をコンデンサ電圧上昇速度としたとき、
前記制御装置は、
前記通電開始間隔が前記ピーク到達間隔以上であるときには、
前記第1の通電開始時点における前記コンデンサの電圧の値から前記電圧低下量を減じた差と、前記通電開始間隔の値に前記コンデンサ電圧上昇速度を乗じた積とを加算することにより、前記第2の通電開始時点における前記コンデンサの電圧の推定値を算出する
請求項2に記載の燃料噴射弁駆動システム。 - 前記第1の通電開始時点から前記ピーク到達時点までにおける前記コンデンサから前記他の燃料噴射弁への給電による同コンデンサの電圧の低下量を電圧低下量としたとき、
前記制御装置は、
前記通電開始間隔が前記ピーク到達間隔未満であるときには、
前記通電開始間隔の値を前記ピーク到達間隔の値で除算した商に前記電圧低下量を乗じ、この積が大きいほど前記第2の通電開始時点における前記コンデンサの電圧の推定値を小さくする
請求項2又は請求項3に記載の燃料噴射弁駆動システム。 - 前記制御装置は、前記ピーク到達間隔に基づいて前記電圧低下量を算出し、前記ピーク到達間隔が長いほど前記電圧低下量を大きくする
請求項3又は請求項4に記載の燃料噴射弁駆動システム。 - 前記制御装置は、前記他の燃料噴射弁からの燃料噴射に対して設定された前記ピーク電流値に基づいて前記電圧低下量を算出し、前記他の燃料噴射弁からの燃料噴射に対して設定された前記ピーク電流値が大きいほど前記電圧低下量を大きくする
請求項3〜請求項5のうち何れか一項に記載の燃料噴射弁駆動システム。 - 前記制御装置は、前記コンデンサの容量に基づいて前記電圧低下量を算出し、前記コンデンサの容量が少ないほど前記電圧低下量を大きくする
請求項3〜請求項6のうち何れか一項に記載の燃料噴射弁駆動システム。 - 前記他の燃料噴射弁のソレノイドに流れる励磁電流が上昇する過程で、同励磁電流が前記ピーク電流値よりも小さい規定電流値を上回る時点を立ち上がり検出時点としたとき、
前記制御装置は、前記第1の通電開始時点から前記立ち上がり検出時点までの時間に基づいて前記ピーク到達間隔を算出し、前記第1の通電開始時点から前記立ち上がり検出時点までの時間が長いほど前記ピーク到達間隔の値を大きくする
請求項3〜請求項7のうち何れか一項に記載の燃料噴射弁駆動システム。 - 前記制御装置は、前記ピーク電流値に基づいて前記ピーク到達間隔を算出し、前記ピーク電流値が大きいほど前記ピーク到達間隔の値を大きくする
請求項2〜請求項8のうち何れか一項に記載の燃料噴射弁駆動システム。 - 前記制御装置は、前記コンデンサの容量に基づいて前記コンデンサ電圧上昇速度を算出し、前記コンデンサの容量が少ないほど前記コンデンサ電圧上昇速度を大きくする
請求項3に記載の燃料噴射弁駆動システム。 - 前記制御装置は、前記バッテリの電圧に基づいて前記コンデンサ電圧上昇速度を算出し、前記バッテリの電圧が高いほど前記コンデンサ電圧上昇速度を大きくする
請求項3又は請求項10に記載の燃料噴射弁駆動システム。 - 前記コンデンサの容量を学習する学習部を備え、
同学習部は、前記コンデンサから前記燃料噴射弁に給電を行っているときの前記コンデンサの電圧の検出値の低下速度が速いほど前記コンデンサの容量の学習値を小さくする
請求項7又は請求項10に記載の燃料噴射弁駆動システム。 - 前記制御装置は、
前記通電開始間隔が前記ピーク到達間隔未満であるときには、
デリバリパイプ内の燃料圧力が高いほど前記他の燃料噴射弁に対する通電時間を長くする
請求項1〜請求項12のうち何れか一項に記載の燃料噴射弁駆動システム。 - 前記制御装置は、
前記通電開始間隔が前記ピーク到達間隔未満であるときには、
前記通電開始間隔が短いほど前記他の燃料噴射弁に対する通電時間を長くする
請求項1〜請求項13のうち何れか一項に記載の燃料噴射弁駆動システム。
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