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JP5608040B2 - 有機光電変換素子 - Google Patents

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JP5608040B2 JP2010241245A JP2010241245A JP5608040B2 JP 5608040 B2 JP5608040 B2 JP 5608040B2 JP 2010241245 A JP2010241245 A JP 2010241245A JP 2010241245 A JP2010241245 A JP 2010241245A JP 5608040 B2 JP5608040 B2 JP 5608040B2
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Description

本発明は有機光電変換素子に関する。
光電変換素子は光エネルギーを電気エネルギーに変換しうる素子であり、その例として太陽電池が挙げられる。代表的な太陽電池としては、シリコン系太陽電池が知られている。しかし、シリコン系太陽電池は、製造工程において高真空環境及び高圧環境を用意することになるため、製造コストが高い。このため、製造コストがシリコン系太陽電池に比べて安価な有機太陽電池が注目されている。
しかしながら、有機太陽電池は有機材料を使用しているため、酸素及び水等により有機材料が劣化しやすく、シリコン系太陽電池と比較して寿命が短い傾向がある。そこで、有機太陽電池において長寿命化を実現するため、様々な技術開発がなされている。例えば特許文献1では、有機光電変換素子に乾燥剤からなるゲッター剤を設ける構成が記載されている。
特開2007−317565号公報
有機光電変換素子に乾燥剤からなるゲッター剤を設ければ、有機光電変換素子内の水をゲッター剤に吸着させることができるので、有機光電変換素子内の有機材料の水による劣化を抑制して、有機光電変換素子の寿命を延ばすことができる。しかし、特許文献1記載の技術では長寿命化は十分ではなく、有機光電変換素子の寿命を更に延ばす技術が望まれていた。
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであって、長寿命な有機光電変換素子を提供することを目的とする。
本発明者は、上述した課題を解決するために鋭意検討した結果、有機光電変換素子の劣化の大きな要因の一つが電極の劣化であること、並びに、電極に直接に接するようにして酸素及び水を吸着しうるゲッター層を設けることにより電極の劣化を効果的に防止できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の通りである。
〔1〕 第一の電極と、第二の電極と、活性層と、ゲッター層とを備える有機光電変換素子であって、
前記活性層は、前記第一の電極及び前記第二の電極の間に設けられて、光の入射により電荷を生じうる層であり、
前記ゲッター層は、前記第二の電極の前記第一の電極とは反対側の表面に接しており、酸素及び水を吸着しうる層である、有機光電変換素子。
〔2〕 前記活性層がp型半導体とn型半導体とを含む〔1〕に記載の有機光電変換素子。
〔3〕 前記ゲッター層がアルコキシドを含む〔1〕又は〔2〕に記載の有機光電変換素子。
〔4〕 前記アルコキシドが、アルミニウム−s−ブトキシド及びチタンイソプロポキシドからなる群より選ばれるアルコキシドである〔3〕に記載の有機光電変換素子。
〔5〕 前記ゲッター層が、アルコキシド及び有機溶媒を含む溶液を塗布する工程を経て形成された〔3〕又は〔4〕に記載の有機光電変換素子。
本発明によれば、長寿命の有機光電変換素子を実現できる。
図1は、本発明の一実施形態に係る有機光電変換素子の模式的な断面図である。
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施形態及び例示物等に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
[1.概要]
本発明の有機光電変換素子は、第一の電極と、第二の電極と、活性層と、ゲッター層とを備える。活性層は、第一の電極及び第二の電極の間に設けられて、光の入射により電荷を生じうる層である。また、ゲッター層は、第二の電極の第一の電極とは反対側の表面に接しており、酸素及び水を吸着しうる層である。したがって、各層の並び順は、第一の電極、活性層、第二の電極及びゲッター層の順となる。ゲッター層は、基板、保護層、封止材層等を通過して有機光電変換素子の内部に浸入した酸素及び水を吸着したり、有機光電変換素子を構成する活性層等の層中に有機光電変換素子の製造過程において混入した残留酸素及び残留水分を吸着したりできるので、有機光電変換素子内の材料が酸素及び水により劣化することを防止できる。
さらに、本発明の有機光電変換素子では、ゲッター層は第二の電極に接して設けられるため、第一の電極及び第二の電極からゲッター層までの距離が非常に近い。したがって、有機光電変換素子の劣化の主要な要因である電極の劣化(特に酸化)を効果的に防止できる。前記の電極の酸化はしばしば有機光電変換素子の劣化の最大の要因となるが、本発明の有機光電変換素子は前記電極の酸化を効果的に防止できるため、従来よりも寿命を延ばすことが可能となっている。
また、本発明の有機光電変換素子は、第一の電極、活性層、第二の電極、及びゲッター層以外の層を備えていてもよい。通常、本発明の有機光電変換素子は、有機光電変換素子の表面を覆う保護層を備える。また、例えば、本発明の有機光電変換素子は、第一の電極と活性層との間に機能層を備えていてもよく、活性層と第二の電極との間に機能層を備えていてもよい。
さらに、本発明の有機光電変換素子は通常は基板を備え、基板上に本発明の有機光電変換素子を構成する各層(例えば、第一の電極、活性層、第二の電極、ゲッター層、保護層及び機能層等)が積層された構造を有している。
[2.基板]
基板は、本発明の有機光電変換素子の支持体として機能する部材である。基板としては、通常、電極を形成したり有機材料の層を形成したりする際に化学的に変化しない部材を用いる。基板の材料としては、例えば、ガラス、プラスチック、高分子フィルム、シリコン等が挙げられる。なお、基板の材料は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
通常は基板として透明又は半透明な部材を用いるが、不透明な基板を用いることも可能である。ただし、不透明な基板を用いる場合には、当該基板とは反対側の電極(即ち、第一の電極及び第二の電極のうち、不透明な基板から遠い方の電極)が透明又は半透明であることが好ましい。
[3.第一の電極及び第二の電極]
第一の電極及び第二の電極のうち、一方は陽極であり、他方は陰極である。第一の電極及び第二の電極の間に位置する活性層に光が進入しやすくするため、第一の電極及び第二の電極のうち少なくとも一方は透明又は半透明であることが好ましい。
透明又は半透明の電極の例としては、導電性の金属酸化物膜、半透明の金属薄膜等が挙げられる。前記の透明又は半透明の電極の材料の例としては、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及びそれらの複合体であるインジウム・スズ・オキサイド(ITO)、インジウム・亜鉛・オキサイド(IZO)、NESA等の導電性材料を用いて作製された膜や、金、白金、銀、銅等が挙げられる。中でも、ITO、インジウム・亜鉛・オキサイド、酸化スズが好ましい。
また、透明又は半透明の電極の材料として有機材料を用いることも可能である。電極の材料として使用できる有機材料の例を挙げると、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体などの導電性高分子が挙げられる。
不透明の電極の材料としては、例えば、金属、導電性高分子等が挙げられる。その具体例を挙げると、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム等の金属、前記金属のうち2種類以上の合金、1種類以上の前記金属と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン及び錫からなる群から選ばれる1種類以上の金属との合金、グラファイト、グラファイト層間化合物、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体などが挙げられる。前記の合金の具体例を挙げると、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金等が挙げられる。
なお、電極の材料は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
第一の電極及び第二の電極の厚みは、電極の材料の種類により異なるが、光の透過性を良好にする観点、及び、電気抵抗を小さく抑える観点から、好ましくは500nm以下であり、より好ましくは200nm以下である。なお、下限に制限は無いが、通常は10nm以上である。
第一の電極及び第二の電極の形成方法の例を挙げると、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等が挙げられる。また、第一の電極及び第二の電極を例えば導電性高分子によって形成する場合には、塗布法により形成してもよい。
[4.活性層]
活性層は、光の入射により電荷を生じうる層であり、通常、電子供与性化合物であるp型半導体と電子受容性化合物であるn型半導体とを含む。本発明の有機光電変換素子は、p型半導体及びn型半導体のうち少なくとも一方、通常は両方として有機化合物を用いていることから、「有機」光電変換素子と称される。なお、p型半導体及びn型半導体は、前記の半導体のエネルギー準位のエネルギーレベルから相対的に決定される。
活性層においては、以下のような要領で電荷が生じるようになっていると考えられる。活性層に入射した光エネルギーがn型半導体及びp型半導体の一方又は両方で吸収されると、電子と正孔(ホール)とが結合した励起子を生成する。生成した励起子が移動して、n型半導体とp型半導体とが隣接しているヘテロ接合界面に達すると、ヘテロ接合界面でのそれぞれのHOMO(最高被占軌道)エネルギー及びLUMO(最低空軌道)エネルギーとの違いにより電子と正孔が分離し、独立に動くことができる電荷(電子及び正孔)が発生する。発生した電荷は、それぞれ電極へ移動することにより、本発明の有機光電変換素子の外部へ電気エネルギー(電流)として取り出すことができるようになっている。
光の入射により電荷を生じうる層であれば、活性層は1層のみからなる単層構造の層であってもよく、2層以上の層を備える積層構造の層であってもよい。活性層の層構成の例を挙げると、以下のような例が挙げられる。ただし、活性層の層構成は、下記の例示に限定されない。
層構成(i) p型半導体を含有する層と、n型半導体を含有する層とを備える積層構造の活性層。
層構成(ii) p型半導体及びn型半導体を含有する単層構造の活性層。
層構成(iii) p型半導体を含有する層と、p型半導体及びn型半導体を含有する層と、n型半導体を含有する層とを備える積層構造の活性層。
p型半導体としては、例えば、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、オリゴチオフェン及びその誘導体、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体等が挙げられる。
さらに、好適なp型半導体として、下記構造式(1)で示される構造単位を有する有機高分子化合物を挙げることができる。
Figure 0005608040
上記有機高分子化合物としては、上記構造式(1)で示される構造単位を有する化合物と、下記構造式(2)で示される化合物との共重合体がより好ましい。
Figure 0005608040
〔式(2)中、Ar1及びAr2は、同一又は相異なり、3価の複素環基を表す。X1は、−O−、−S−、−C(=O)−、−S(=O)−、−SO2−、−Si(R3)(R4)−、−N(R5)−、−B(R6)−、−P(R7)−又は−P(=O)(R8)−を表す。R3、R4、R5、R6、R7及びR8は、同一又は相異なり、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルキルチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、酸イミド基、アミノ基、置換アミノ基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、置換シリルアミノ基、1価の複素環基、複素環オキシ基、複素環チオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、カルボキシル基又はシアノ基を表す。R50は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルキルチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、酸イミド基、アミノ基、置換アミノ基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、置換シリルアミノ基、1価の複素環基、複素環オキシ基、複素環チオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、カルボキシル基又はシアノ基を表す。R51は、炭素数6以上のアルキル基、炭素数6以上のアルキルオキシ基、炭素数6以上のアルキルチオ基、炭素数6以上のアリール基、炭素数6以上のアリールオキシ基、炭素数6以上のアリールチオ基、炭素数7以上のアリールアルキル基、炭素数7以上のアリールアルキルオキシ基、炭素数7以上のアリールアルキルチオ基、炭素数6以上のアシル基又は炭素数6以上のアシルオキシ基を表す。X1とAr2は、Ar1に含まれる複素環の隣接位に結合し、C(R50)(R51)とAr1は、Ar2に含まれる複素環の隣接位に結合している。〕
なお、p型半導体は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
n型半導体としては、例えば、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体、C60等のフラーレン類及びその誘導体、バソクプロイン等のフェナントレン誘導体、二酸化チタン等の金属酸化物、カーボンナノチューブ等が挙げられる。中でも、二酸化チタン、カーボンナノチューブ、フラーレン及びフラーレン誘導体が好ましく、フラーレン及びフラーレン誘導体が特に好ましい。
フラーレンの例としては、C60フラーレン、C70フラーレン、C76フラーレン、C78フラーレン、C84フラーレンなどが挙げられる。
フラーレン誘導体の例としては、C60、C70、C76、C78及びC84等の誘導体が挙げられる。フラーレン誘導体の具体例を挙げると、以下のような構造を有する化合物が挙げられる。
Figure 0005608040
また、別のフラーレン誘導体の例としては、[6,6]フェニル−C61酪酸メチルエステル(C60PCBM、[6,6]−Phenyl C61 butyric acid methyl ester)、[6,6]フェニル−C71酪酸メチルエステル(C70PCBM、[6,6]−Phenyl C71 butyric acid methyl ester)、[6,6]フェニル−C85酪酸メチルエステル(C84PCBM、[6,6]−Phenyl C85 butyric acid methyl ester)、[6,6]チェニル−C61酪酸メチルエステル([6,6]−Thienyl C61 butyric acid methyl ester)などが挙げられる。
なお、n型半導体は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
活性層におけるp型半導体とn型半導体との量比は本発明の効果を損なわない限り任意である。例えば、前記の層構成(i)及び(iii)におけるp型半導体及びn型半導体の両方を含有する層においては、p型半導体100重量部に対するn型半導体の量は、好ましくは10重量部以上、より好ましくは20重量部以上であり、好ましくは1000重量部以下、より好ましくは500重量部以下である。
活性層の厚みは、通常1nm以上、好ましくは2nm以上、より好ましくは5nm以上、特に好ましくは20nm以上であり、通常100μm以下、好ましくは1000nm以下、より好ましくは500nm以下、特に好ましくは200nm以下である。
活性層の形成方法に制限は無く、例えば、活性層の材料(例えば、p型半導体及びn型半導体の一方又は両方)を含む液状組成物からの成膜方法、真空蒸着法等の物理蒸着法(PVD法)及び化学気相成長法(CVD法)などの気相成膜法による成膜方法などが挙げられる。なかでも、形成が容易でコストを安価にできるため、液状組成物からの成膜方法が好ましい。
液状組成物からの成膜方法では、液状組成物を用意し、前記の液状組成物を所望の位置に成膜することにより、活性層が形成される。
液状組成物は、通常、活性層の材料と溶媒とを含む。溶媒を含む場合、液状組成物は溶媒中に活性層の材料が分散した分散液であってもよいが、溶媒中に活性層の材料が溶解した溶液であることが好ましい。したがって、溶媒としては、活性層の材料を溶解させうる溶媒を使用することが好ましい。溶媒の例を挙げると、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、デカリン、ビシクロヘキシル、n−ブチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン等の不飽和炭化水素系溶媒、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン等のハロゲン化飽和炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化不飽和炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル類系溶媒などが挙げられる。なお、溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
p型半導体及びn型半導体それぞれの液状組成物中における濃度は、通常、溶媒に対して0.1重量%以上とする。
液状組成物の成膜方法としては、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法、ノズルコート法、キャピラリーコート法等の塗布法が挙げられる。中でも、スピンコート法、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法が好ましい。
液状組成物の成膜後、成膜された膜から必要に応じて乾燥により溶媒を除去する等の工程を行なうことにより、活性層が得られる。
また、活性層が2層以上の積層構造を有する場合には、例えば上述した方法によって、活性層を構成する各層を順次積層するようにすればよい。
[5.ゲッター層]
ゲッター層は、酸素及び水を吸着しうる層である。ゲッター層が酸素及び水を吸着することにより、本発明の有機光電変換素子の内部に存在する酸素及び水の量を減らして、本発明の有機光電変換素子内の材料が酸素及び水により劣化することを防止できるようになっている。さらに、本発明の有機光電変換素子では、ゲッター層は、第二の電極の第一の電極とは反対側の表面の、少なくとも一部、好ましくは全体に接している。したがって、ゲッター層は電極までの距離が近いことから電極の酸化を効果的に防止でき、特に第二の電極に接しているため第二の電極の酸化を強力に防止できる。電極の酸化は有機光電変換素子の劣化の主要な要因の一つと考えられるため、前記電極の酸化を効果的に防止することにより、本発明の有機光電変換素子は従来よりも長期にわたって光電変換効率を維持できる長寿命の有機光電変換素子となる。
酸素及び水を吸着する機能を実現するため、ゲッター層は、酸素及び水を吸着しうる材料であるゲッター剤を含む。ゲッター剤の例としては、アルミニウム−S−ブトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウム t−ブトキシド、カリウム t−ブトキシド等のアルコキシド等が挙げられる。中でも、塗布法によりゲッター層を形成できる点、第二の電極との親和性が高く第二の電極の酸化を効果的に防止できる点、及び、ゲッター剤自体の安定性が高い点から、アルコキシドが好ましい。アルコキシドの中でもアルミニウム−s−ブトキシド及びチタンイソプロポキシドからなる群より選ばれるアルコキシドは、特に吸水性に優れるため、特に好ましい。
なお、ゲッター剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ゲッター層には、本発明の効果を著しく損なわない限り、ゲッター剤以外にその他の成分を含ませてもよい。その他の成分の例を挙げると、ゲッター剤を保持するためのバインダが挙げられる。バインダとしては、例えば樹脂が挙げられ、その具体例としては、三フッ化ポリエチレン、ポリ三フッ化塩化エチレン(PCTFE)、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、脂環式ポリオレフィン、エチレン−ビニルアルコール共重合体等が挙げられる。
また、その他の成分としては、例えば、充填剤、酸化防止剤等の添加剤も挙げられる。
なお、その他の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ただし、ゲッター層に占めるゲッター剤の割合は、酸素及び水を効果的に吸着する観点から、好ましくは80体積%以上100体積%以下、より好ましくは90体積%以上100体積%以下、特に好ましくは95体積%以上100体積%以下である。
ゲッター層の厚みは、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは100μm以上であり、通常500μm以下、好ましくは300μm以下である。ゲッター層が薄すぎると酸素及び水を十分に吸着できない可能性があり、厚すぎると有機光電変換素子が過度に厚くなる可能性がある。
ゲッター層は、ゲッター剤の種類に応じて任意の方法で形成できる。例えば、ゲッター層の材料(ゲッター剤等)をスパッタリング法及び真空蒸着法等の物理蒸着法(PVD法)及び化学気相成長法(CVD法)などの気相成膜法で成膜するようにすればよい。ただし、ゲッター層の形成が容易でコストを安価にできるため、ゲッター層は塗布法によって形成することが好ましい。特に、ゲッター剤としてアルコキシドを用いる場合に、塗布法が適している。以下、ゲッター剤としてアルコキシドを用いた場合にゲッター層を塗布法で形成する方法を説明する。
ゲッター剤としてアルコキシドを用いる場合、ゲッター層は、アルコキシド及び有機溶媒を含むゲッター層形成用の溶液を用意し、前記のゲッター層形成用の溶液を塗布する工程を経て形成することが好ましい。
ゲッター層形成用の溶液に含まれる有機溶媒の例としては、活性層形成用の液状組成物に含まれる溶媒と同様の溶媒が挙げられる。なお、有機溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。また、ゲッター層がアルコキシド以外の成分を含む場合、通常は当該成分もゲッター層形成用の溶液に含ませるようにする。
ゲッター層形成用の溶液における有機溶媒の量は、ゲッター剤であるアルコキシド100重量部に対して、通常1000重量部以上、好ましくは5000重量部以上、より好ましくは10000重量部以上であり、通常20000重量部以下、好ましくは15000重量部以下、より好ましくは12000重量部以下である。
ゲッター層形成用の溶液を用意した後、当該溶液を、ゲッター層を形成しようとする所定の位置に塗布する。本発明の有機光電変換素子においてゲッター層は第二の電極に接するため、通常は第二の電極上にゲッター層形成用の溶液を塗布する。ゲッター層形成用の溶液の塗布方法の例としては、活性層形成用の液状組成物の塗布方法と同様の塗布方法が挙げられる。
ゲッター層形成用の溶液の塗布により、ゲッター剤としてアルコキシドを含む膜が成膜される。したがって、ゲッター層形成用の溶液の塗布後に、必要に応じて、成膜された膜を乾燥させて有機溶媒を除去する等の工程を行なうことにより、アルコキシドを含むゲッター層が得られる。
[6.保護層]
本発明の有機光電変換素子は、通常、保護層を備える。保護層は本発明の有機光電変換素子を酸素及び水等から保護する層であり、例えばガスバリア層、ガスバリア性フィルム等と呼ばれる層に当たる。通常、第一の電極、第二の電極、活性層、及びゲッター層を覆うように保護層が設けられる。したがって、通常は、保護層及び基板により囲まれる空間内に、第一の電極、第二の電極、活性層、及びゲッター層が位置するようになっている。
保護層は、水蒸気を遮断する性質(水蒸気バリア性)または酸素を遮断する性質(酸素バリア性)を有する材料により形成することが好ましい。保護層の材料として好適な材料の例を挙げると、三フッ化ポリエチレン、ポリ三フッ化塩化エチレン(PCTFE)、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、脂環式ポリオレフィン、エチレン−ビニルアルコール共重合体等の樹脂などの有機材料、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、ダイヤモンドライクカーボン等の無機材料などが挙げられる。なお、保護層の材料は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
保護層には、必要に応じて添加剤を含ませてもよい。好ましい添加剤の例を挙げると、前記のゲッター剤が挙げられる。保護層がゲッター剤を含むと保護層自身をゲッター層と同様に機能させることができるため、本発明の有機光源変換素子に浸入する酸素及び水の量を更に減少させることができる。これにより、本発明の有機光電変換素子内の材料が酸素及び水により劣化することを更に効果的に防止して、有機光電変換素子の更なる長寿命化を実現できる。
なお、保護層に含ませる添加剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
保護層中のゲッター剤の量は、通常3体積%以上、好ましくは5体積%以上、より好ましくは10体積%以上であり、通常50体積%以下、好ましくは30体積%以下、より好ましくは25体積%以下である。ゲッター剤の量が少なすぎるとゲッター剤の効果が十分に発揮できない可能性があり、多すぎるとかえって酸素及び水を十分に遮断できない可能性がある。
保護層の厚さは、保護層の材料の種類によるが、保護層による保護性能と製造コスト等との観点から、通常5μm以上、好ましくは10μm以上であり、通常300μm以下、好ましくは100μm以下である。
保護層は、活性層は1層のみからなる単層構造の層であってもよく、2層以上の層を備える積層構造の層であってもよい。
保護層は、保護層の材料の種類に応じて任意の方法で形成することができるが、例えば気相成膜法などが挙げられる。また、例えば、保護層の材料を含む液状組成物をスピンコート法、ディップ法、スプレー法等の塗布法で塗布することにより保護層を形成してもよい。さらに、例えば、予め成形したフィルム状成形物を粘着剤等で貼り付けることにより形成してもよい。
[7.機能層]
本発明の有機光電変換素子は、第一の電極と活性層との間、及び、第二の電極と活性層との間に、機能層を備えていてもよい。機能層は、活性層で生じた電荷を電極に輸送しうる層であり、第一の電極と活性層との間の機能層は活性層で生じた電荷を第一の電極に輸送でき、第二の電極と活性層との間の機能層は活性層で生じた電荷を第二の電極に輸送できるようになっている。機能層は、第一の電極と活性層との間、及び、第二の電極と活性層との間のうち、一方に設けるようにしてもよく、両方に設けるようにしてもよい。
活性層と陽極との間に設けられた機能層は、活性層で生じた正孔を陽極に輸送しうるようになっており、正孔輸送層又は電子ブロック層等と呼ばれることがある。一方、活性層と陰極との間に設けられた機能層は、活性層で生じた電子を陰極に輸送しうるようになっており、電子輸送層又は正孔ブロック層等と呼ばれることがある。前記の機能層を備えることにより、本発明の有効光電変換素子は、活性層で生じた正孔を陽極で取り出す効率を高めたり、活性層で生じた電子を陰極で取り出す効率を高めたり、活性層で生じた正孔が陰極に移動することを防止したり、活性層で生じた電子が陽極に移動することを防止したりすることが可能となり、光電変換効率を向上させることができる。
機能層の材料は、活性層で生じた電荷を輸送する能力を有する材料であればよい。中でも、活性層と陽極との間の機能層には、正孔を輸送する能力を有し、電子が当該機能層に移動することを防止できる材料を含ませることが好ましい。また、活性層と陰極との間の機能層には、電子を輸送する能力を有し、正孔が当該機能層に移動することを防止できる材料を含ませることが好ましい。
機能層の材料の例を挙げると、フッ化リチウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属のハロゲン化物及び酸化物、二酸化チタン等の無機半導体、バソクプロイン、バソフェナントロリン及びそれらの誘導体、トリアゾール化合物、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、ビス(4−メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、オキサジアゾール化合物、ジスチリルアリーレン誘導体、シロール化合物、2,2’,2”−(1,3,5−ベンゼントリル)トリス−[1−フェニル−1H−ベンツイミダゾール](TPBI)フタロシアニン誘導体、ナフタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)、4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)等の芳香族ジアミン化合物、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、イミダゾロン、スチルベン誘導体、ピラゾリン誘導体、テトラヒドロイミダゾール、ポリアリールアルカン、ブタジエン、4,4’,4”−トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)、ポリビニルカルバゾール、ポリシラン、ポリ−3,4−エチレンジオキサイドチオフェン(PEDOT)などが挙げられる。なお、前記の材料は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
機能層には、本発明の効果を著しく損なわない限り、上述した材料以外にその他の成分を含ませてもよい。
なお、その他の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で併用してもよい。
機能層の厚みは、通常0.01nm以上、好ましくは0.1nm以上、より好ましくは1nm以上であり、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下、より好ましくは100nm以下である。機能層が薄すぎると上述した機能層の機能を十分に発揮できない可能性があり、厚すぎると有機光電変換素子が過度に厚くなる可能性がある。
機能層は、例えば気相成膜法により形成してもよいが、形成が容易でコストを安価にできるため、機能層の材料を含む液状組成物を所定の位置に塗布する工程を経て形成することが好ましい。以下、液状組成物から機能層を形成する前記の方法について説明する。
機能層形成用の液状組成物は、通常、機能層の材料と溶媒とを含む。溶媒を含む場合、液状組成物は溶媒中に機能層の材料が分散した分散液であってもよく、溶媒中に機能層の材料が溶解した溶液であってもよい。
機能層形成用の液状組成物に含まれる溶媒の例としては、活性層形成用の液状組成物に含まれる溶媒と同様の溶媒が挙げられる。なお、溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
液状組成物における溶媒の量は、機能層の材料100重量部に対して、通常100重量部以上、好ましくは1000重量部以上、より好ましくは10000重量部以上であり、通常1000000重量部以下、好ましくは100000重量部以下である。
機能層形成用の液状組成物を用意した後、前記の液状組成物を、機能層を形成しようとする所定の位置に塗布する。通常は、本発明の有機光電変換素子において機能層に接することになる層(通常は、第一の電極、第二の電極又は活性層)上に、前記の液状組成物を塗布する。液状組成物の塗布方法の例としては、活性層形成用の液状組成物の塗布方法と同様の塗布方法が挙げられる。
機能層形成用の液状組成物の塗布により、機能層の材料を含む膜が成膜される。したがって、液状組成物の塗布後に、必要に応じて、成膜された膜を乾燥させて溶媒を除去する等の工程を行なうことにより、機能層が得られる。
[8.その他の層]
本発明の有機光電変換素子は、本発明の効果を著しく損なわない限り、上述した基板、第一の電極、第二の電極、活性層、ゲッター層、保護層及び機能層以外の層を備えていてもよい。
例えば、本発明の有光電変換素子は、封止材層を備えていてもよい。封止材層は、本発明の有機光電変換素子を外気及び塵等から保護する層である。通常、封止材層は、上述した第一の電極、第二の電極、活性層、ゲッター層、保護層及び機能層を覆う封止材の層として形成される。したがって、通常は、封止剤層及び基板によって形成される空間内に、第一の電極、第二の電極、活性層、ゲッター層、保護層及び機能層が位置するようになっている。
封止材としては、無機封止材を用いてもよく、有機封止材を用いてもよい。無機封止材の例を挙げると、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、炭化ケイ素等のケイ素系化合物、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、珪酸アルミニウム等のアルミニウム系化合物、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化チタン等の金属酸化物、窒化チタン等の金属窒化物、ダイヤモンドライクカーボンなどが挙げられる。また、有機封止材の例を挙げると、光硬化性樹脂及び熱硬化性樹脂等が挙げられ、好適な例としてはシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素系樹脂、ワックスなどが挙げられる。
なお、封止材は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
封止材層の厚さは、封止材の種類によるが、封止材層による保護性能と製造コスト等との観点から、通常1μm以上、好ましくは10μm以上であり、通常100μm以下である。
封止材層の形成方法は、例えば無機封止材を用いた封止材層の場合は気相成膜法などが挙げられ、例えば有機封止材を用いた封止材層の場合はスピンコート法、ディップ法、スプレー法等の塗布法並びに予め成形したフィルム状成形物を貼り付ける方法などが挙げられる。
ところで、封止材層には、必要に応じて添加剤を含ませてもよい。好ましい添加剤の例を挙げると、ゲッター剤、波長変換剤及び紫外線吸収剤等が挙げられる。なお、添加剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
[9.実施形態]
以下、本発明の有機光電変換素子の好ましい実施形態について、図面を示して説明する。図1は本発明の一実施形態に係る有機光電変換素子の模式的な断面図である。なお、以下の実施形態では、有機光電変換素子の基板を水平に置いた様子を示して説明する。
図1に示す有機光電変換素子100は、基板1上に、陽極として機能する第一の電極2、正孔輸送層として機能する機能層3、可視光の入射により電荷を発生しうる活性層4、電子輸送層として機能する機能層5、陰極として機能する第二の電極6、及び、酸素及び水を吸着しうるゲッター層7を、前記の順に備える。第一の電極2及び第二の電極6には図示しない端子が接続され、電気を外部に取り出せるようになっている。また、第一の電極2、機能層3、活性層4、機能層5、第二の電極6及びゲッター層7は、前記の端子以外の部分が保護層8で被覆されることにより封止され、保護層8上には基板9が設けられている。したがって、有機光電変換素子100は、第一の電極2と、第二の電極6と、機能層3及び機能層5を介して第一の電極2及び第二の電極6の間に設けられた活性層4と、ゲッター層7とを備える。また、第二の電極6の上側の表面(第一の電極2とは反対側の表面)6Uの全面にゲッター層7が接している。
有機光電変換素子100は以上のように構成されているため、光が照射されると、照射された光は活性層4に入射し、活性層4において電荷が生じる。活性層4で生じた電荷は、正孔が機能層3から第一の電極2に輸送され、電子が機能層5から第二の電極6に輸送されて、それぞれ端子を通じて外部に取り出される。
また、有機光電変換素子100は保護層8を備えているので、基板1及び保護層8で囲まれた空間内に酸素及び水が浸入し難くなっている。また、保護層8を透過して前記空間内に酸素及び水分が浸入しても、浸入した酸素及び水分はゲッター層7により吸着できる。さらに、有機光電変換素子100の製造過程で素子内に残留した酸素及び水分が存在したとしても、前記の残留した酸素及び水分もゲッター層7で吸着できる。
したがって、本実施形態の有機光電変換素子100によれば、第一の電極2、機能層3、活性層4、機能層5及び第二の電極6の酸素及び水分による劣化を進行しにくくできる。中でも、第二の電極6はゲッター層7に直接に接していることから、第二の電極6の酸素及び水による劣化(特に、酸化)を効果的に防止できる。このため、有機光電変換素子100は、従来の有機光電変換素子に比べて長期間にわたって光電変換効率を維持できる長寿命の有機光電変換素子となっている。
なお、本実施形態に係る有機光電変換素子100ではゲッター層7に遠い方を陽極、近い方を陰極とした例を示したが、逆にゲッター層7に遠い方を陰極、近い方を陽極としても同様の効果を得ることができる。
[10.有機光電変換素子の用途]
本発明の有機光電変換素子の電極間には、上述した要領によって、太陽光等の光の照射により光起電力が発生する。前記の光起電力を利用して、本発明の有機光電変換素子は、例えば太陽電池として使用できる。太陽電池として使用する場合、通常、本発明の有機光電変換素子は有機薄膜太陽電池の太陽電池セルとして使用される。また、太陽電池セルは、複数個集積することによって太陽電池モジュール(有機薄膜太陽電池モジュール)とし、太陽電池モジュールの態様で使用してもよい。本発明の有機光電変換素子は上述したように長寿命であるため、本発明の有機光電変換素子を備える太陽電池は長寿命化が期待できる。
また、本発明の有機光電変換素子は、有機光センサーとして使用することもできる。例えば、電極間に電圧を印加した状態又は無印加の状態で本発明の有機光電変換素子に光を照射すると電荷が生じるため、前記の電荷を光電流として検出するようにすれば、本発明の有機光電変換素子を有機光センサーとして動作させることが可能となる。さらに、有機光センサーを複数個集積することにより、有機イメージセンサーとして用いることもできる。
[11.太陽電池モジュール]
本発明の有機光電変換素子を太陽電池セルとして用いて太陽電池モジュールを構成する場合、当該太陽電池モジュールは、従来の太陽電池モジュールと基本的には同様のモジュール構造をとりうる。太陽電池モジュールは、一般的には金属、セラミック等の支持基板の上に太陽電池セルが設けられ、前記太陽電池セルの上を充填樹脂や保護ガラス等で覆う構成を有し、支持基板とは反対側の面を通じて光を取り込めるようになっている。また、太陽電池モジュールは、支持基板として強化ガラス等の透明材料を用い、前記の支持基板の上に太陽電池セルを設けた構成を有し、前記の透明の支持基板を通じて光を取り込めるようになっていてもよい。
太陽電池モジュールの構成としては、例えば、スーパーストレートタイプ、サブストレートタイプ、ポッティングタイプ等のモジュール構造、アモルファスシリコン太陽電池等で用いられる基板一体型モジュール構造などが知られている。本発明の有機光電変換素子を用いた太陽電池モジュールは、使用目的、使用場所及び環境などに応じて、適宜、適切なモジュール構造を選択すればよい。
例えば、代表的なモジュール構造であるスーパーストレートタイプ及びサブストレートタイプの太陽電池モジュールでは、一対の支持基板の間に一定間隔に太陽電池セルが配置された構造を有している。前記支持基板のうち片方又は両方は透明であり、通常、反射防止処理を施されている。また、隣り合う太陽電池セル同士は金属リード及びフレキシブル配線等の配線により電気的に接続され、太陽電池モジュールの外縁部には集積電極が配置され、太陽電池セルで発生した電力を外部に取り出せるようになっている。
支持基板と太陽電池セルとの間には、太陽電池セルの保護及び集電効率向上のため、必要に応じてエチレンビニルアセテート(EVA)等のプラスチック材料などの充填材料の層を設けてもよい。前記の充填材料は、予めフィルム状に成形してから装着してもよく、樹脂を所望の位置に充填させてから硬化させるようにしてもよい。
また、例えば外部からの衝撃が少ない場所など、表面を硬い素材で覆う必要のない場所において太陽電池モジュールを使用する場合には、片方の支持基板を設けないようにしてもよい。ただし、太陽電池モジュールの支持基板を設けていない方の表面には、例えば透明プラスチックフィルムで覆ったり、充填樹脂で被覆後に樹脂を硬化させたりすることで表面保護層を設け、保護機能を付与することが好ましい。
さらに、通常、支持基板の周囲は、内部の密封及び太陽電池モジュールの剛性を確保するため、金属製のフレームで太陽電池モジュールを挟み込むようにして固定する。また、支持基板とフレームとの間は、通常は封止材料で密封シールを施す。
有機材料を用いた光電変換素子である本発明の有機光電変換素子を備えるため、前記の太陽電池モジュールは、有機光電変換素子の利点を活かした態様で使用することも可能である。例えば、有機光電変換素子は可撓性の素子として構成できるため、支持基板、充填材料及び封止材料等として可撓性の素材を用いれば、曲面の上に太陽電池モジュールを設けることができる。
また、有機光電変換素子は塗布法を利用して低コストで製造できるため、太陽電池モジュールも塗布法を用いて製造可能である。例えば、支持基板としてポリマーフィルム等のフレキシブル支持体を用いて太陽電池モジュールを製造する場合、ロール状のフレキシブル支持体を送り出しながら塗布法等を用いて順次太陽電池セルを形成し、フレキシブル支持体を所望のサイズに切断した後、切り出した切断片の周縁部をフレキシブルで防湿性のある素材でシールすることにより、太陽電池モジュール本体を製造できる。さらに、例えばSolar Energy Materials and Solar Cells, 48,p383−391記載の「SCAF」と呼ばれるモジュール構造を有する太陽電池モジュールを得ることもできる。
また、フレキシブル支持体を用いた太陽電池モジュールは、曲面ガラス等に接着固定して使用することもできる。
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
[評価方法]
以下に説明する実施例及び比較例では、2mm×2mmの正四角形の有機光電変換素子を製造した。製造された有機光電変換素子について、ソーラシミュレーター(分光計器製、商品名:CEP−2000型、放射照度100mW/cm2)を用いて一定の光を照射し、発生する電流と電圧を測定して、光電変換効率を評価する。
[実施例1]
スパッタ法により第一の電極として膜厚約150nmのITO膜がパターニングされたガラス基板を用意した。用意したガラス基板を、有機溶媒、アルカリ洗剤、超純水で洗浄し、乾かし、UV−O3装置にて紫外線−オゾン処理(UV−O3処理)を行なった。
ポリ(3,4)エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(HCスタルクビーテック社製、Bytron P TP AI 4083)の懸濁液を用意し、孔径0.5ミクロンのフィルターでろ過した。濾過した懸濁液を、前記ガラス基板のITO膜が形成された面にスピンコートして、70nmの厚みで成膜した。その後、大気中においてホットプレート上で200℃で10分間乾燥させて、機能層を形成した。
次に、式(3)で表される単量体と式(4)で表される単量体との交互重合体である高分子化合物Aと、[6,6]−フェニルC61ブチリックアシッドメチルエステル(以下、適宜「[6,6]−PCBM」と略称する。)とを重量比1:3で含むオルトジクロロベンゼン溶液を調製した。なお、高分子化合物Aはオルトジクロロベンゼンに対して1重量%とした。調製した溶液について攪拌混合を行い、超音波処理を施した。超音波処理を施した溶液を、前記の機能層上にスピンコートした後、N2雰囲気中で乾燥を行った。これにより、厚み100nmの活性層を得た。なお、高分子化合物Aは、ポリスチレン換算の重量平均分子量が17000であり、ポリスチレン換算の数平均分子量が5000であった。さらに、高分子化合物Aの光吸収端波長は、925nmであった。
Figure 0005608040
さらに、前記活性層上に、抵抗加熱蒸着装置内にて、LiFを厚み約2.3nmで成膜して機能層を形成し、続いてAlを厚み約70nmで成膜して第二の電極を形成した。
チタンイソプロポキシドをアセトンに5重量%滴下し、攪拌混合した溶液を用意した。用意した溶液を、第二の電極上にスピンコートし、減圧乾燥することにより、厚み100μm程度のゲッター層を形成した。
さらに、ゲッター層の上から封止材としてエポキシ樹脂(急速硬化型アラルダイト)にてガラス基板を接着することで封止処理を施し、有機光電変換素子を得た。
[実施例2]
実施例1に用いたチタンイソプロポキシドの代わりにアルミニウム−S−ブトキシドを用いたこと以外は実施例1と同様に有機光電変換素子を作製した。
[実施例3]
活性層を、以下に説明する要領で形成したこと以外は実施例1と同様にして、有機光電変換素子を得た。
活性層は、次の要領で形成した。まず、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)(以下、適宜「P3HT」と略称する。)と[6,6]−PCBMとを重量比1:0.8で含むオルトジクロロベンゼン溶液を調製した。なお、P3HTはオルトジクロロベンゼンに対して1重量%とした。調製した溶液について攪拌混合を行い、超音波処理を施した。超音波処理を施した溶液を、前記の機能層上にスピンコートした後、N2雰囲気中で乾燥を行った。これにより、厚み150nmの活性層を得た。
[比較例1]
ゲッター層を形成しなかったこと以外は実施例1と同様にして、有機光電変換素子を得た。
[比較例2]
ゲッター層を形成しなかったこと以外は実施例3と同様にして、有機光電変換素子を得た。
[評価結果]
実施例1から3、並びに比較例1及び2のそれぞれについて、有機光電変換素子の作製直後の変換効率および有機光電変換素子の作製から24時間後の変換効率を求め、作製から24時間後の変換効率を作製直後の変換効率で割ることにより維持率を算出した。結果を下記の表に示す。実施例1、2及び3で製造した有機光電変換素子は、比較例1及び2で製造した有機光電変換素子に比べて、長期間にわたって光電変換効率を維持することができた。すなわち、実施例1から3の有機光電変換素子は、比較例1及び2の有機光電変換素子よりも長寿命であった。
Figure 0005608040
本発明の有機光電変換素子は、例えば太陽電池、光センサー等に用いることができる。
1 基板
2 第一の電極
3 機能層
4 活性層
5 機能層
6 第二の電極
6U 第二の電極の上面(第一の電極2とは反対側の表面)
7 ゲッター層
8 保護層
9 基板
100 有機光電変換素子

Claims (3)

  1. 第一の電極と、第二の電極と、活性層と、ゲッター層とを備える有機光電変換素子であって、
    前記活性層は、前記第一の電極及び前記第二の電極の間に設けられて、光の入射により電荷を生じうる層であり、
    前記ゲッター層は、前記第二の電極の前記第一の電極とは反対側の表面に接しており、酸素及び水を吸着しうる、アルミニウム−s−ブトキシドを100体積%含む層である、有機光電変換素子。
  2. 前記活性層がp型半導体とn型半導体とを含む請求項1に記載の有機光電変換素子。
  3. 前記ゲッター層が、アルミニウム−s−ブトキシド及び有機溶媒を含む溶液を塗布する工程を経て形成された請求項1又は2に記載の有機光電変換素子。
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