JP5604472B2 - 熱発泡性マイクロスフェアー及びその製造方法 - Google Patents
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Description
また、本発明の目的は、発泡体粒子間の融着が抑制された熱発泡性マイクロスフェアーとその製造方法を提供することにある。
(i)該重合体から形成された外殻が、塩化ビニリデン(共)重合体及び(メタ)アクリロニトリル(共)重合体からなる群より選ばれた重合体から形成されたものであり、
(ii)該重合体から形成された外殻が、水系分散媒体中で、少なくとも発泡剤及び重合性単量体を含有する重合性混合物を懸濁重合することにより形成されたものであり、
(iii)該重合性混合物が、2つ以上の炭素−炭素二重結合を有する化合物である架橋性単量体を、重合性単量体の全重量基準で0.05〜5重量%含み、
(iv)該重合体から形成された外殻が、(1)該外殻表面への有機ケイ素化合物の付着、(2)該外殻中への有機ケイ素化合物の混入、(3)該重合体と有機ケイ素化合物との化学的結合、あるいは(4)これらの組み合わせにより、有機ケイ素化合物を含有するものであり、
(v)該有機ケイ素化合物が、シランカップリング剤であり、
(vi)該発泡剤が、該外殻を形成する重合体の軟化点以下の温度でガス状になる物質である低沸点有機溶剤であり、かつ、
(vii)該無機物が、無機微粒子であり、かつ、該有機物が微粒子である熱発泡性マイクロスフェアーが提供される。
(i)重合性単量体が、(a) 塩化ビニリデン単独、(b)塩化ビニリデンと塩化ビニリデンと共重合可能なビニル系単量体との混合物、(c)(メタ)アクリロニトリル単独、または(d)(メタ)アクリロニトリルと(メタ)アクリロニトリルと共重合可能なビニル系単量体との混合物から選ばれ、
(ii)該重合性混合物が、2つ以上の炭素−炭素二重結合を有する化合物である架橋性単量体を、重合性単量体の全重量基準で0.05〜5重量%含み、
(iii)該有機ケイ素化合物が、シランカップリング剤であり、かつ、
(iv)該発泡剤が、該外殻を形成する重合体の軟化点以下の温度でガス状になる物質である低沸点有機溶剤である
熱発泡性マイクロスフェアーの製造方法が提供される。
(i)重合性単量体が、(a) 塩化ビニリデン単独、(b)塩化ビニリデンと塩化ビニリデンと共重合可能なビニル系単量体との混合物、(c)(メタ)アクリロニトリル単独、または(d)(メタ)アクリロニトリルと(メタ)アクリロニトリルと共重合可能なビニル系単量体との混合物から選ばれ、
(ii)該重合性混合物が、2つ以上の炭素−炭素二重結合を有する化合物である架橋性単量体を、重合性単量体の全重量基準で0.05〜5重量%含み、
(iii)該有機ケイ素化合物が、シランカップリング剤であり、
(iv)該発泡剤が、該外殻を形成する重合体の軟化点以下の温度でガス状になる物質である低沸点有機溶剤である製造方法が提供される。
本発明の熱発泡性マイクロスフェアーは、重合体から形成された外殻内に発泡剤が封入された構造をもち、その外殻が有機ケイ素化合物を含有している。有機ケイ素化合物としてシランカップリング剤を使用すると、有機ケイ素化合物を外殻に容易に付着させることができる。種々の官能基を有するシランカップリング剤が入手可能であり、それらを使用すると、外殻を種々の官能基で化学修飾することも容易になる。
本発明の熱発泡性マイクロスフェアーは、水系分散媒体中で、少なくとも発泡剤及び重合性単量体を含有する重合性混合物を懸濁重合して、生成重合体から形成された外殻内に発泡剤が封入された構造をもつ熱発泡性マイクロスフェアーを製造する方法において、重合性混合物を有機ケイ素化合物の存在下で懸濁重合することにより得ることができる。
本発明で使用する有機ケイ素化合物とは、有機基を有するケイ素化合物を意味しており、その中でもシランカップリング剤が好ましい。シランカップリング剤としては、式(1)
本発明で使用する無機物としては、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン、ガラス、カオリンクレー、マイカ、ネフエリンシナイト、合成ケイ酸、石英粉、珪石粉、珪藻土、硫酸バリウム、軽石粉、その他の無機顔料などの微粉体を挙げることができる。また、無機物としては、コロイダルシリカ、水酸化マグネシウム、リン酸カルシウムなどのコロイドを挙げることができる。無機物としては、このような無機微粒子が好ましい。
本発明で使用する発泡剤は、通常、外殻を形成する重合体の軟化点以下の温度でガス状になる物質である。このような発泡剤としては、低沸点有機溶剤が好適であり、例えば、エタン、エチレン、プロパン、プロペン、n−ブタン、イソブタン、ブテン、イソブテン、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、2,2,4−トリメチルペンタン、n−ヘキサン、イソヘキサン、石油エーテル、ヘプタンなどの低分子量炭化水素;CCl3 F等のクロロフルオロカーボン;テトラメチルシランなどのテトラアルキルシラン;などが挙げられる。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
重合性単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、ジシクロペンテニルアクリレート等のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、イソボルニルメタクリレート等のメタクリル酸エステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニリデン、塩化ビニル、スチレン、酢酸ビニル、α−メチルスチレン、クロロプレン、ネオプレン、ブタジエンなどが挙げられる。これらの重合性単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
前記の如き重合性単量体と共に、発泡特性、加工特性、耐溶剤性、耐熱性を改良するために、架橋性単量体を併用することができる。架橋性単量体としては、通常、2つ以上の炭素−炭素二重結合を有する化合物が用いられる。より具体的に、架橋性単量体として、例えば、ジビニルベンゼン、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン、ジメタクリル酸1,3−ブチルグリコール、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。架橋性単量体の使用割合は、重合性単量体の全重量基準で、通常、0.05〜5重量%、好ましくは0.1〜3重量%である。
重合開始剤としては、特に限定されず、この分野で一般に使用されているものを使用することができるが、重合性単量体に可溶性である油溶性重合開始剤が好ましい。より具体的に、重合開始剤として、例えば、過酸化ジアルキル、過酸化ジアシル、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート、及びアゾ化合物が挙げられる。重合開始剤は、通常、単量体混合物中に含有させるが、早期重合を抑制する必要がある場合には、造粒工程中または造粒工程後に、その一部または全部を水系分散媒体中に添加して、重合性混合物の液滴中に移行させてもよい。重合開始剤は、水系分散媒体基準で、通常、0.0001〜3重量%の割合で使用される。
懸濁重合は、通常、分散安定剤を含有する水系分散媒体中で行われる。分散安定剤としては、例えば、シリカ、水酸化マグネシウムなどの無機微粒子を挙げることができる。この他に補助安定剤、例えば、ジエタノールアミンと脂肪族ジカルボン酸の縮合生成物、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、各種乳化剤等を使用することができる。分散安定剤は、重合性単量体100重量部に対して、通常、0.1〜20重量部の割合で使用される。
水系分散媒体に各成分を添加する順序は、任意であるが、通常は、水と分散安定剤、必要に応じて安定助剤や重合助剤などを加えて、分散安定剤を含有する水系分散媒体を調製する。一方、重合性単量体及び発泡剤は、別々に水系分散媒体に加えて、水系分散媒体中で一体化して重合性混合物(油性混合物)を形成してもよいが、通常は、予め両者を混合してから、水系分散媒体中に添加する。重合開始剤は、予め重合性単量体に添加して使用することができるが、早期の重合を避ける必要がある場合には、例えば、重合性単量体と発泡剤との混合物を水系分散媒体中に添加し、攪拌しながら重合開始剤を加え、水系分散媒体中で一体化してもよい。重合性混合物と水系分散媒体との混合を別の容器で行って、高剪断力を有する攪拌機や分散機で攪拌混合した後、重合缶に仕込んでもよい。重合性混合物と水系分散媒体とを攪拌混合することにより、水系分散媒体中で重合性混合物の液滴を調製(造粒)する。液滴の平均粒径は、目的とする熱発泡性マイクロスフェアーの平均粒径とほぼ一致させることが好ましい。
本発明により得られる熱発泡性マイクロスフェアーは、加熱発泡(熱膨脹)させて、あるいは未発泡のままで、各種分野に使用される。熱発泡性マイクロスフェアーは、例えば、その膨脹性を利用して、自動車等の塗料の充填剤、壁紙、発泡インク(T−シャツ等のレリーフ模様付け)の発泡剤、収縮防止剤などに使用される。熱発泡性マイクロスフェアーは、発泡による体積増加を利用して、プラスチック、塗料、各種資材などの軽量化や多孔質化、各種機能性付与(例えば、スリップ性、断熱性、クッション性、遮音性等)の目的で使用される。
<測定方法>
(1)発泡倍率
熱発泡性マイクロスフェアー0.7gを、ギア式オーブン中に入れ、所定温度(発泡温度)で2分間加熱して発泡させる。得られた発泡体をメスシリンダーに入れて体積を測定し、発泡体の体積を未発泡時の熱発泡性マイクロスフェアーの体積で割って発泡倍率を算出した。この際、発泡倍率を70℃から5℃刻みで昇温し、最大の発泡倍率が得られる時点での当該発泡倍率を最大発泡倍率と定義する。
エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)を含有するEVA系水性エマルジョン(濃度55重量%)のEVA5重量部に対して、熱発泡性マイクロスフェアー1重量部を加えて、塗工液を調製する。この塗工液を両面アート紙に200μmのギャップを有するコーターで塗布した後、オーブンに入れて乾燥する。乾燥は、外殻樹脂のガラス転移温度が100℃以上である熱発泡性マイクロスフェアーを用いた場合には、90℃で5分間行い、外殻樹脂のガラス転移温度が70℃以上100℃未満の熱発泡性マイクロスフェアーを用いた場合には、60℃で5分間行う。
次いで、所定温度のオーブンに入れて2分間加熱する。この際、発泡倍率を70℃から5℃刻みで昇温し加熱するが、粒子の大多数が発泡する温度を発泡開始温度と定義する。さらに、発泡開始温度未満の加熱温度でも発泡した粒子を異常発泡粒子と定義する。異常発泡粒子の存在の有無は、発泡開始温度未満で加熱した塗工膜表面を光学顕微鏡で観察して確認する。
島津製作所製の粒径分布測定器SALD−3000Jを用いて測定した。
(1)水系分散媒体の調製
コロイダルシリカ5.5g、ジエタノールアミン−アジピン酸縮合生成物(酸価=78mgKOH/g)0.825g、亜硝酸ナトリウム0.132g、及び水594.38gを混合して、水系分散媒体600gを調製した。この水系分散媒体のpHが3.2になるように、塩酸を添加してpHを調整した。
アクリロニトリル110g、メタクリル酸メチル110g、エチレングリコールジメタクリレート0.44g、ペンタン39.6g、及び2、2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.32gを混合して、重合性混合物を調製した。単量体成分の重量%は、アクリロニトリル/メタクリル酸メチル=50/50である。
前記で調製した水系分散媒体と重合性混合物とを、ホモジナイザーで攪拌混合して、水系分散媒体中に重合性混合物の微小な液滴を調製した。
この重合性混合物の微小な液滴を含有する水系分散媒体を、攪拌機付きの重合缶(1.5L)に仕込み、温水バスを用いて53℃で22時間反応させた。反応終了後、pH6.3の反応混合物が得られた。この反応混合物を濾過・水洗し、この操作を更に2回繰り返した後、乾燥して、平均粒径14μmの熱発泡性マイクロスフェアーを回収した。
このようにして得られた熱発泡性マイクロスフェアーに含まれるシリカ量は、0.8重量%であり、仕込み量の39重量%に相当する量であった。この熱発泡性マイクロスフェアーを発泡させると、発泡体粒子間の強い融着が認められた。発泡温度145℃での発泡倍率は、40倍であった。バインダー系での発泡挙動を調べたところ、粒子の大多数が発泡する温度(140℃)未満の加熱温度でも発泡した粒子(異常発泡粒子)が多く見られた。つまり、非常にブロードな発泡開始挙動を示した。このような発泡開始挙動を示す熱発泡性マイクロスフェアーを、表面性や平滑性が要求される塗料、壁紙、インク分野に用いると、表面性や平滑性が損われ、実用性能に問題が生じる。
比較例1の懸濁重合工程(4)において、重合開始から6時間が経過した時点で、重合可能な反応基を有するシランカップリング剤である3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.2gを重合缶(重合反応系)中に添加した。さらに、重合開始から7時間が経過した時点で、塩酸を重合缶中に添加して、重合反応系のpHを3.0に調整した。このように、比較例1の懸濁重合工程(4)において、シランカップリング剤と塩酸を添加したこと以外は、比較例1と同様にして、熱発泡性マイクロスフェアーを製造した。
比較例1の重合性混合物の調製工程(2)において、重合可能な反応基を有するシランカップリング剤である3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.2gを添加して、シランカップリング剤を含有する重合性混合物を調製し、そして、次の液滴の調製工程(3)において、水系分散媒体と重合性混合物をホモジナイザーで攪拌混合する前に、塩酸を加えてpHを3.0に調整してから、重合性混合物の微小な液滴を造粒したこと以外は、比較例1と同様にして、熱発泡性マイクロスフェアーを調製した。
実施例1において、重合開始7時間後に塩酸を重合缶中に添加してpHを調整する操作を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、熱発泡性マイクロスフェアーを調製した。反応終了後、反応混合物のpHは、5.8であった。反応混合物を濾過・水洗し、この操作を更に2回繰り返した後、乾燥して、平均粒径14μmの熱発泡性マイクロスフェアーを回収した。最初の濾液には、ごく僅かの白濁が認められたが、2回目及び3回目の濾液には、白濁は認められなかった。
比較例1の懸濁重合工程(4)において、重合開始から6時間が経過した時点で、重合可能な反応基を有するシランカップリング剤である3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.2gを重合缶(重合反応系)中に添加した。さらに、重合開始から7時間が経過した時点で、塩酸を重合缶中に添加して、重合反応系のpHを3.0に調整した.このように、比較例1の懸濁重合工程(4)において、シランカップリング剤と塩酸を添加したこと以外は、比較例1と同様にして、熱発泡性マイクロスフェアーを製造した。
比較例1の懸濁重合工程(4)において、重合開始から6時間が経過した時点で、重合可能な反応基を有するシランカップリング剤である3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.6gを重合缶(重合反応系)中に添加した。さらに、重合開始から7時間が経過した時点で、塩酸を重合缶中に添加して、重合反応系のpHを3.0に調整した.このように、比較例1の懸濁重合工程(4)において、シランカップリング剤と塩酸を添加したこと以外は、比較例1と同様にして、熱発泡性マイクロスフェアーを製造した。
(1)水系分散媒体の調製
コロイダルシリカ4g、ジエタノールアミン−アジピン酸縮合生成物(酸価=78mgKOH/g)0.5g、亜硝酸ナトリウム0.12g、及び水595.38gを混合して、水系分散媒体600gを調製した。この水系分散媒体のpHが3.2になるように、塩酸を添加してpHを調整した。
アクリロニトリル120g、メタクリル酸メチル60g、アクリル酸メチル20g、エチレングリコールジメタクリレート0.4g、イソペンタン22g、及び2、2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.2gを混合して重合性混合物を調製した。単量体成分の重量%は、アクリロニトリル/メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル=60/30/10である。
前記で調製した水系分散媒体と重合性混合物とを、ホモジナイザーで攪拌混合して、水系分散媒体中に重合性混合物の微小な液滴を調製した。
この重合性混合物の微小な液滴を含有する水系分散媒体を、攪拌機付きの重合缶(1.5L)に仕込み、温水バスを用いて53℃で22時間反応させた。反応終了後、pH5.9の反応混合物が得られた。この反応混合物を濾過・水洗し、この操作を更に2回繰り返した後、乾燥して、平均粒径16μmの熱発泡性マイクロスフェアーを回収した。
このようにして得られた熱発泡性マイクロスフェアーに含まれるシリカ量は、0.6重量%であり、仕込み量の34重量%に相当する量であった。この熱発泡性マイクロスフェアーを発泡させると、発泡体粒子間の強い融着が認められた。発泡温度140℃での発泡倍率は、46倍であった。バインダー系での発泡挙動を調べたところ、粒子の大多数が発泡する温度(135℃)未満の加熱温度でも発泡した異常発泡粒子が多く見られた。つまり、非常にブロードな発泡開始挙動を示した。このような発泡開始挙動を示す熱発泡性マイクロスフェアーを、表面性や平滑性が要求される塗料、壁紙、インク分野に用いると、表面性や平滑性が損われ、実用性能に問題が生じる。
比較例2の懸濁重合工程(4)において、重合開始から6時間が経過した時点で、重合可能な反応基を有するシランカップリング剤である3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.1gを重合缶(重合反応系)中に添加した。さらに、重合開始から7時間が経過した時点で、塩酸を重合缶中に添加して、重合反応系のpHを3.0に調整した。このように、比較例2の懸濁重合工程(4)において、シランカップリング剤と塩酸を添加したこと以外は、比較例2と同様にして、熱発泡性マイクロスフェアーを製造した。
比較例2の重合性混合物の調製工程(2)において、重合可能な反応基を有するシランカップリング剤である3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.1gを添加して、シランカップリング剤を含有する重合性混合物を調製し、そして、次の液滴の調製工程(3)において、水系分散媒体と重合性混合物をホモジナイザーで攪拌混合する前に、塩酸を加えてpHを3.0に調整してから、重合性混合物の微小な液滴を造粒したこと以外は、比較例2と同様にして、熱発泡性マイクロスフェアーを調製した。
比較例2の懸濁重合工程(4)において、重合開始から6時間が経過した時点で、重合可能な反応基を有するシランカップリング剤である3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.5gを重合缶(重合反応系)中に添加した。さらに、重合開始から7時間が経過した時点で、塩酸を重合缶中に添加して、重合反応系のpHを3.0に調整した。このように、比較例2の懸濁重合工程(4)において、シランカップリング剤と塩酸を添加したこと以外は、比較例2と同様にして、熱発泡性マイクロスフェアーを製造した。
(1)水系分散媒体の調製
コロイダルシリカ16.5g、ジエタノールアミン−アジピン酸縮合生成物(酸価=78mgKOH/g)1.65g、食塩169.8g、亜硝酸ナトリウム0.11g、及び水368.94gを混合して、水系分散媒体557gを調製した。水系分散媒体のpHが3.2になるように、塩酸を添加して調整した。
アクリロニトリル147.4g、メタクリロニトリル68.2g、メタクリル酸メチル4.4g、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン0.66g、n−ペンタン26.2g、石油エーテル15g、及び2,2′−アゾイソブチロニトリル1.2gを混合して、重合性混合物を調製した。単量体成分の重量%は、アクリロニトリル/メタクリロニトリル/メタクリル酸メチル=67/31/2である。
前記で調製した水系分散媒体と重合性混合物とを、ホモジナイザーで攪拌混合して、水系分散媒体中に重合性混合物の微小な液滴を調製した。
前記の重合性混合物の微小な液滴を含有する水系分散媒体を攪拌機付きの重合缶(1.5L)に仕込み、温水バスを用いて60℃で20時間反応させた。反応終了後、反応混合物を濾過・水洗し、この操作を更に数回繰り返した後、乾燥して、平均粒径28μmの熱発泡性マイクロスフェアーを回収した。
このようにして得られた熱発泡性マイクロスフェアーに含まれるシリカ量は、5.5重量%であった。この熱発泡性マイクロスフェアーの5%水スラリー液を調製し、該スラリー液を60分間攪拌機で攪拌処理すると、スラリー液には熱発泡性マイクロスフェアーから遊離したシリカによる白濁が生じた。その後、このスラリー液から回収した熱発泡性マイクロスフェアーに含有されるシリカ量は、1.3重量%に低下してしまった。この熱発泡性マイクロスフェアーを発泡させると、発泡体粒子間の強い融着が認められた。
比較例3の懸濁重合工程(4)において、重合開始から6時間が経過した時点で、重合可能な反応基を有するシランカップリング剤である3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.2gを重合缶(重合反応系)中に添加した。さらに、重合開始から7時間が経過した時点で、塩酸を重合缶中に添加して、重合反応系のpHを3.0に調整した。このように、比較例3の懸濁重合工程(4)において、シランカップリング剤と塩酸を添加したこと以外は、比較例3と同様にして熱発泡性マイクロスフェアーを製造した。反応終了後、反応混合物のpHは、4.2であった。この反応混合物を濾過・水洗し、この操作を更に数回繰り返した後、乾燥して、平均粒径28μmの熱発泡性マイクロスフェアーを回収した。
比較例3の懸濁重合工程(4)において、重合開始から6時間が経過した時点で、重合可能な反応基を有するシランカップリング剤である3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.3gとシリカコロイド5.5gを重合缶(重合反応系)中に添加した。さらに、重合開始から7時間が経過した時点で、塩酸を重合缶中に添加して、重合反応系のpHを3.0に調整した。このように、比較例3の懸濁重合工程(4)において、シランカップリング剤とシリカコロイドを同時に追加添加したこと、及び塩酸を添加したこと以外は、比較例3と同様にして熱発泡性マイクロスフェアーを製造した。反応終了後、反応混合物のpHは、4.2であった。この反応混合物を濾過・水洗し、この操作を更に数回繰り返した後、乾燥して、平均粒径28μmの熱発泡性マイクロスフェアーを回収した。
比較例3の懸濁重合工程(4)において、重合開始から6時間が経過した時点で、シリカコロイド5.5gを重合缶(重合反応系)中に添加した。さらに、重合開始から7時間が経過した時点で、塩酸を重合缶中に添加して、重合反応系のpHを3.0に調整した。このように、比較例3の懸濁重合工程(4)において、シリカコロイドを追加添加したこと、及び塩酸を添加したこと以外は、比較例3と同様にして熱発泡性マイクロスフェアーを製造した。反応終了後、反応混合物のpHは、4.5であった。この反応混合物を濾過・水洗し、この操作を更に数回繰り返した後、乾燥して、平均粒径27μmの熱発泡性マイクロスフェアーを回収した。
比較例3の乳化液滴の調製後、重合開始時にコロイダルシリカ5.5gを追加添加したこと以外は、比較例3と同様にして、熱発泡性マイクロスフェアーを製造した。このようにして得られた熱発泡性マイクロスフェアーは、平均粒径が20μmと小さくなり、発泡温度170℃での発泡倍率は40倍にまで低下した。したがって、平均粒径を保持して、コロイダルシリカ量だけを増量することはできなかった。
(1)水系分散媒体の調製
脱イオン水770gに固形分40重量%のコロイダルシリカ22gを加えて溶解させた。さらに、ジエタノールアミン−アジピン酸縮合物0.8g、亜硝酸ナトリウム0.13gを溶解させ、そして、塩酸を加えて、pH3.5の水系分散媒体を調製した。
塩化ビニリデン123.2g、アクリロニトリル85.8g、メタクリル酸メチル11g、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン0.33g、2,2′−アゾビス−ジメチルバレロニトリル1.1g、及びブタン35.2gからなる重合性混合物を調製した。単量体成分の重量%は、塩化ビニリデン/アクリロニトリル/メタクリル酸メチル=56/39/5である。
前記で調製した水系分散媒体と重合性混合物とを、ホモジナイザーで攪拌混合して、水系分散媒体中に重合性混合物の微小な液滴を調製した。
この重合性混合物の微小な液滴を含有する水系分散媒体を、攪拌機付きの重合缶(1.5L)に仕込み、温水バスを用いて50℃で22時間反応させた。反応終了後、反応混合物を濾過・水洗し、この操作を更に数回繰り返した後、乾燥して、平均粒径14μmの熱発泡性マイクロスフェアーを回収した。
このようにして得られた熱発泡性マイクロスフェアーに含まれるシリカ量は、3.3重量%であった。この熱発泡性マイクロスフェアーの5%水スラリー液を調製し、該スラリー液を60分間攪拌機で攪拌処理すると、スラリー液には熱発泡性マイクロスフェアーから遊離したシリカによる白濁が生じた。その後、このスラリー液から回収した熱発泡性マイクロスフェアーに含有されるシリカ量は、2.4重量%に低下してしまった。
比較例6の懸濁重合工程(4)において、重合開始から6時間が経過した時点で、重合可能な反応基を有するシランカップリング剤である3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.2gを重合缶(重合反応系)中に添加した。さらに、重合開始から7時間が経過した時点で、塩酸を重合缶中に添加して、重合反応系のpHを3.0に調整した。このように、比較例6の懸濁重合工程(4)において、シランカップリング剤と塩酸を添加したこと以外は、比較例6と同様にして熱発泡性マイクロスフェアーを製造した。反応終了後、反応混合物のpHは、3.5であった。反応混合物を濾過・水洗し、この操作を更に数回繰り返した後、乾燥して、平均粒径14の熱発泡性マイクロスフェアーを回収した。
Claims (10)
- 重合体から形成された外殻内に発泡剤が封入された構造をもつ熱発泡性マイクロスフェアーにおいて、重合体から形成された外殻が、有機ケイ素化合物を含有し、かつ、重合体から形成された外殻が、その表面に付着した無機物及び/または有機物を更に含有するものである熱発泡性マイクロスフェアーであって、
(i)該重合体から形成された外殻が、塩化ビニリデン(共)重合体及び(メタ)アクリロニトリル(共)重合体からなる群より選ばれた重合体から形成されたものであり、
(ii)該重合体から形成された外殻が、水系分散媒体中で、少なくとも発泡剤及び重合性単量体を含有する重合性混合物を懸濁重合することにより形成されたものであり、
(iii)該重合性混合物が、2つ以上の炭素−炭素二重結合を有する化合物である架橋性単量体を、重合性単量体の全重量基準で0.05〜5重量%含み、
(iv)該重合体から形成された外殻が、(1)該外殻表面への有機ケイ素化合物の付着、(2)該外殻中への有機ケイ素化合物の混入、(3)該重合体と有機ケイ素化合物との化学的結合、あるいは(4)これらの組み合わせにより、有機ケイ素化合物を含有するものであり、
(v)該有機ケイ素化合物が、シランカップリング剤であり、
(vi)該発泡剤が、該外殻を形成する重合体の軟化点以下の温度でガス状になる物質である低沸点有機溶剤であり、かつ、
(vii)該無機物が、無機微粒子であり、かつ、該有機物が微粒子である熱発泡性マイクロスフェアー。 - 有機ケイ素化合物が、ビニル基、メタクリル基、アクリル基、及びアリル基からなる群より選ばれた少なくとも一種の重合可能な反応基を有する有機ケイ素化合物である請求項1記載の熱発泡性マイクロスフェアー。
- 水系分散媒体中で、少なくとも発泡剤及び重合性単量体を含有する重合性混合物を懸濁重合して、生成重合体から形成された外殻内に発泡剤が封入された構造をもつ熱発泡性マイクロスフェアーを製造する方法において、重合性混合物を有機ケイ素化合物の存在下で懸濁重合することを特徴とする請求項1記載の熱発泡性マイクロスフェアーの製造方法であって、
(i)重合性単量体が、(a) 塩化ビニリデン単独、(b)塩化ビニリデンと塩化ビニリデンと共重合可能なビニル系単量体との混合物、(c)(メタ)アクリロニトリル単独、または(d)(メタ)アクリロニトリルと(メタ)アクリロニトリルと共重合可能なビニル系単量体との混合物から選ばれ、
(ii)該重合性混合物が、2つ以上の炭素−炭素二重結合を有する化合物である架橋性単量体を、重合性単量体の全重量基準で0.05〜5重量%含み、
(iii)該有機ケイ素化合物が、シランカップリング剤であり、かつ、
(iv)該発泡剤が、該外殻を形成する重合体の軟化点以下の温度でガス状になる物質である低沸点有機溶剤である
熱発泡性マイクロスフェアーの製造方法。 - 有機ケイ素化合物が、ビニル基、メタクリル基、アクリル基、及びアリル基からなる群より選ばれた少なくとも一種の重合可能な反応基を有する有機ケイ素化合物である請求項3記載の製造方法。
- (i)有機ケイ素化合物を添加した重合性混合物を懸濁重合する方法、(ii)水系分散媒体と重合性混合物とを含有する重合反応系に有機ケイ素化合物を重合途中で添加して、懸濁重合を更に継続する方法、または(iii)これらを組み合わせた方法により、重合性混合物を有機ケイ素化合物の存在下で懸濁重合する請求項3または4に記載の製造方法。
- 水系分散媒体と重合性混合物とを含有する重合反応系に有機ケイ素化合物を重合途中で添加して、懸濁重合を更に継続し、その際、重合開始時、重合途中、及び重合反応終了時における重合反応系のpHを7以下に制御する請求項3乃至5のいずれか1項に記載の製造方法。
- 無機微粒子からなる分散安定剤を含有する水系分散媒体中で重合性混合物を懸濁重合し、重合反応終了後、生成重合体から形成された外殻の表面に無機微粒子が付着した熱発泡性マイクロスフェアーを回収する請求項3乃至6のいずれか1項に記載の製造方法。
- 少なくとも酸性領域で水系分散媒体に不溶性の無機微粒子からなる分散安定剤を含有する水系分散媒体中で重合性混合物を懸濁重合し、その際、重合開始時、重合途中、及び重合反応終了時における重合反応系のpHを7以下に制御する請求項7記載の製造方法。
- 重合途中で、無機物及び/または有機物を重合反応系に添加して懸濁重合を継続し、重合反応終了後、生成重合体から形成された外殻の表面に無機物及び/または有機物が付着した熱発泡性マイクロスフェアーを回収する請求項3乃至8のいずれか1項に記載の製造方法であって、該無機物が、無機微粒子であり、かつ、該有機物が微粒子である製造方法。
- 水系分散媒体中で、少なくとも発泡剤及び重合性単量体を含有する重合性混合物を懸濁重合して、生成重合体から形成された外殻内に発泡剤が封入された構造をもつ熱発泡性マイクロスフェアーを製造する方法において、重合反応終了後、回収した熱発泡性マイクロスフェアーの表面を有機ケイ素化合物で処理することを特徴とする請求項1記載の熱発泡性マイクロスフェアーの製造方法であって、
(i)重合性単量体が、(a) 塩化ビニリデン単独、(b)塩化ビニリデンと塩化ビニリデンと共重合可能なビニル系単量体との混合物、(c)(メタ)アクリロニトリル単独、または(d)(メタ)アクリロニトリルと(メタ)アクリロニトリルと共重合可能なビニル系単量体との混合物から選ばれ、
(ii)該重合性混合物が、2つ以上の炭素−炭素二重結合を有する化合物である架橋性単量体を、重合性単量体の全重量基準で0.05〜5重量%含み、
(iii)該有機ケイ素化合物が、シランカップリング剤であり、
(iv)該発泡剤が、該外殻を形成する重合体の軟化点以下の温度でガス状になる物質である低沸点有機溶剤である製造方法。
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