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JP4721596B2 - 低密度発泡紙及びその製造方法 - Google Patents

低密度発泡紙及びその製造方法 Download PDF

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JP4721596B2 JP2001303994A JP2001303994A JP4721596B2 JP 4721596 B2 JP4721596 B2 JP 4721596B2 JP 2001303994 A JP2001303994 A JP 2001303994A JP 2001303994 A JP2001303994 A JP 2001303994A JP 4721596 B2 JP4721596 B2 JP 4721596B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術野】
本発明は、パルプと熱発泡性マイクロスフェアーとを含有する混合材料を加熱発泡させた低密度発泡紙に関し、さらに詳しくは、表面平滑性、印刷特性、断熱性、保温性、クッション性、吸音性に優れた低密度発泡紙に関する。
【0002】
【従来の技術】
発泡ポリスチレン、発泡ポリエチレン、発泡ポリウレタンなどの高分子発泡体材料は、断熱性及び保温性に優れ、成形加工性も良好であるため、食品容器や包装材料などの分野で汎用されている。しかし、高分子発泡体材料は、自然分解性に劣り、しかも燃焼時に汚染物質や黒煙等を排出する。近年、環境に優しい素材への要求が高まっており、発泡体の技術分野においても、自然分解性に優れ、汚染物質の排出の少ない素材への転換が要求されている。
【0003】
このような事情を背景に、環境に優しい素材として紙が注目されている。具体的には、紙を低密度化して、断熱性やクッション性などを大幅に改良し、高分子発泡体材料に代替させる考え方が幾つか提案されている。
【0004】
例えば、特許第2689787号公報には、パルプに発泡性粒子を配合して抄紙したシートを加熱により発泡させて、密度が0.1〜0.3g/cm3の嵩高な紙を製造する方法が提案されている。発泡性粒子としては、マイクロカプセル内に低沸点溶剤を封入した熱膨張性マイクロカプセル(即ち、熱発泡性マイクロスフェアー)が使用されている。
【0005】
特許第3061345号公報には、製紙用パルプを抄紙した湿潤シートに、発泡性マイクロカプセルからなる含浸液を湿式含浸法により含浸させ、次いで、加熱して発泡性マイクロカプセルを発泡させた低密度紙が提案されている。
【0006】
特開2000−170096号公報には、パルプスラリー中に、熱膨張性マイクロカプセルを100メッシュパス分が98%以上となる状態で分散させ、このパルプスラリーを抄紙後、加熱発泡させる低密度発泡紙の製造方法が開示されている。
【0007】
特開2001−98494号公報には、パルプを抄紙して得た湿紙に発泡性マイクロカプセルの分散液をスプレーにより添加し、湿紙の厚さ方向における発泡性マイクロカプセルの紙層内分布を所定分布状態に調節し、次いで、プレスした後、加熱発泡させる発泡紙の製造方法が提案されている。
【0008】
これらの低密度発泡紙は、断熱性やクッション性などに優れ、環境にも優しい素材である。ところが、従来の低密度発泡紙は、表面に多数の微細な突起物が生じやすいため、表面平滑性と印刷特性に劣るという欠点があった。低密度発泡紙でも通常の板紙などの紙素材と同様に、意匠性の付与等の目的で表面に文字や模様などを印刷することが求められている。低密度発泡紙の表面が平滑でないと、外観不良で商品価値が低下することに加えて、印刷特性が悪くなり、印刷時に柄抜けなどの不都合が生じてしまう。
【0009】
一般に、熱発泡性マイクロスフェアーの凝集物(一次粒子の凝集物)が湿潤パルプシート中に存在すると、加熱発泡時に凝集物が異常に大きく発泡して、得られた低密度発泡紙の表面に微細な突起物が形成される。そこで、低密度発泡紙の製造工程において、熱発泡性マイクロスフェアーの凝集粒子を除去する方法が提案されているが(特開2000−170096号公報)、充分に満足できる程度にまで表面平滑性を高めることは困難である。また、熱発泡性マイクロスフェアーの凝集粒子を除去する方法は、熱発泡性マイクロスフェアーを分散させたスラリーを篩で濾過する必要があり、操作が煩雑である上、100メッシュオンの粗大粒子を廃棄することになるため、原料ロスが生じる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、断熱性、保温性、クッション性、吸音性に優れるとともに、表面平滑性及び印刷特性が顕著に優れた低密度発泡紙を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、凝集物の除去などの煩雑で原料ロスの多い方法を採用することなく、表面平滑性、印刷特性、断熱性、保温性、クッション性、吸音性に優れた低密度発泡紙を製造する方法を提供することにある。
【0012】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究した結果、熱発泡性マイクロスフェアーとパルプを含有する混合材料を作製し、次いで、熱発泡性マイクロスフェアーを加熱発泡させて低密度発泡紙を製造する方法において、混合材料の作成時に、有機ケイ素化合物を存在させると、微細突起物の形成が抑制されて、表面平滑性と印刷特性が顕著に改善された低密度発泡紙の得られることを見いだした。
【0013】
低密度発泡紙の製造工程では、例えば、熱発泡性マイクロスフェアーとパルプを含有する水性分散液を抄紙したり、あるいはパルプを抄紙した紙材料に熱発泡性マイクロスフェアーの水性分散液を含浸させたりして、熱発泡性マイクロスフェアーを含有する混合材料を作製している。発泡前の熱発泡性マイクロスフェアーは、通常、その粒子径(一次粒子径)が5〜50μm程度と小さく、かつ、疎水性であるため、水への分散性が悪く、水性分散液中に凝集物(一次粒子の凝集塊)が残りやすい。また、水性分散液中でも、熱発泡性マイクロスフェアーの凝集が生じたり、撹拌時に分散不良となることがある。
【0014】
ところが、有機ケイ素化合物を存在させると、熱発泡性マイクロスフェアーの表面が有機ケイ素化合物により親水性に改質されるため、水への分散性が改善されて、熱発泡性マイクロスフェアーが容易に一次粒子にまで分散すると考えられる。その結果、熱発泡性マイクロスフェアーを凝集させることなく、パルプ繊維間に均一に分散させることができる。
【0015】
また、有機ケイ素化合物の存在下で熱発泡性マイクロスフェアーを水に添加し攪拌すると、泡立ちを抑制できることが見いだされた。水性分散液が泡立つと、泡立ち部分では攪拌が充分に行なわれずに熱発泡性マイクロスフェアーが分散不良となり、微細突起物の発生原因となる。
【0016】
このように、パルプ繊維間に熱発泡性マイクロスフェアーが微細かつ均一に分散した混合材料を作製し、それを加熱して発泡させると、熱発泡性マイクロスフェアーが均等に発泡して、不均一な発泡状態をなくすことができると共に、微細な突起物の発生を効果的に防止することができる。本発明は、これらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、(A)重合体から形成された外殻内に発泡剤が封入された構造を持つ熱発泡性マイクロスフェアー、(B)シランカップリング剤である有機ケイ素化合物、及び(C)パルプを含有する混合材料であり、かつ、該(B)有機ケイ素化合物が、該(A)熱発泡性マイクロスフェアーの外殻と一体化された状態で該混合材料に含有されている混合材料からなり、(A)熱発泡性マイクロスフェアーが該混合材料中で発泡している低密度発泡紙が提供される。
【0018】
また、本発明によれば、(I)(A)重合体から形成された外殻内に発泡剤が封入された構造を持つ熱発泡性マイクロスフェアー、(B)シランカップリング剤である有機ケイ素化合物、及び(C)パルプを含有する混合材料であり、かつ、該(B)有機ケイ素化合物が、該(A)熱発泡性マイクロスフェアーの外殻と一体化された状態で該混合材料に含有されている混合材料を作製し、次いで、(II)該混合材料を加熱して(A)熱発泡性マイクロスフェアーを発泡させる低密度発泡紙の製造方法が提供される。
【0019】
【発明の実施の形態】
1.熱発泡性マイクロスフェアー
本発明で用いる熱発泡性マイクロスフェアーは、重合体から形成された外殻内に発泡剤が封入された構造を有している。熱発泡性マイクロスフェアーは、水系分散媒体中で、少なくとも発泡剤と重合性単量体とを含有する重合性混合物を懸濁重合することにより製造することができる。
【0020】
有機ケイ素化合物は、熱発泡性マイクロスフェアーの表面に付着させたり、外殻中に含有させるなどして、熱発泡性マイクロスフェアーと一体化させることが好ましい。有機ケイ素化合物としてシランカップリング剤を使用すると、有機ケイ素化合物を熱発泡性マイクロスフェアーの外殻に容易に付着させることができる。また、重合可能な官能基を有するシランカップリング剤を用いて、外殻を形成する重合体の重合時に重合性単量体と共重合させれば、化学的に結合した有機ケイ素化合物を含有する外殻を形成することができる。さらに、熱発泡性マイクロスフェアーの製造工程で、懸濁重合法を工夫することにより、シランカップリング剤などの有機ケイ素化合物を外殻の表面により多く分布させることで、熱発泡性マイクロスフェアーの親水性を容易にコントロールすることもできる。
【0021】
本発明で用いる熱発泡性マイクロスフェアーの平均粒径は、特に限定されないが、通常3〜100μm、好ましくは5〜50μmの範囲内である。本発明の熱発泡性マイクロスフェアーにおける発泡剤の含有量は、通常5〜50重量%、好ましくは7〜35重量%である。発泡剤としては、低沸点有機溶剤、加熱により分解してガスを発生する化合物などがあり、これらの中でも、低沸点有機溶剤が好ましい。発泡剤は、外殻を形成する重合体の軟化点以下の温度でガス状になるものから選択される。
【0022】
本発明で使用する熱発泡性マイクロスフェアーの外殻は、一般に、ガスバリア性と耐熱性に優れた重合体から形成される。具体的には、アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリル、塩化ビニリデン、塩化ビニル、スチレンなどの種々の重合性単量体を用いて形成することができる。これらの中でも、塩化ビニリデン(共)重合体及び(メタ)アクリロニトリル(共)重合体は、ガスバリア性、耐熱性、発泡性などを高度にバランスさせる上で好ましい。
【0023】
2.有機ケイ素化合物
有機ケイ素化合物は、熱発泡性マイクロスフェアーを製造した後、その表面に付着させたり、あるいは熱発泡性マイクロスフェアーとパルプとを含有する水性分散液を用いて抄紙する工程で、該水性分散液に添加して使用することができるが、多くの場合、熱発泡性マイクロスフェアーの製造工程で、有機ケイ素化合物を外殻を形成する重合体中に含有させることが好ましい。
【0024】
機ケイ素化合物とは、有機基を有するケイ素化合物を意味しており、より具体的には、分子中に少なくとも1つのケイ素−炭素結合を持つ化合物を意味している。本発明で使用する有機ケイ素化合物は、シランカップリング剤などの低分子量物から、シリコーンオイルなどの高分子量物まで含んでいる。有機ケイ素化合物の中でも、シランカップリング剤、消泡シリコーン、及びこれらの混合物が好ましい。本発明では、有機ケイ素化合物として、シランカップリング剤を用いる。
【0025】
シランカップリング剤としては、式(1)で表される有機ケイ素化合物が代表的なものである。
【0026】
【化1】
Figure 0004721596
【0027】
式(1)中、Yは、ケイ素原子に結合した反応性基を表わし、ビニル基、アクリル基、メタクリル基、アリル基、メタリル基、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、クロル基、またはこれらの反応性基を有する有機基である。Yの具体例としては、以下のような反応性基を挙げることができる。
【0028】
【化2】
Figure 0004721596
【0029】
式(1)中、Xは、塩素原子などのハロゲン原子、−OR(R=水素原子、またはメチル基やエチル基などの低級アルキル基)、−NR2(R=水素原子、またはメチル基やエチル基などの低級アルキル基)などであり、多くの場合、ケイ素原子に結合している加水分解性の基である。Xの具体例としては、以下のような基が挙げられる。
【0030】
【化3】
Figure 0004721596
【0031】
重合可能な反応性基を有する有機ケイ素化合物としては、反応性基として、ビニル基、アクリル基、メタクリル基、アリル基、またはメタリル基を有するものが挙げられる。これらの中で好ましい有機ケイ素化合物としては、例えば、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリス(2−トリメチルシロキシ)シラン、アリルトリメチルシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−〔N−アリル−N−(2−アミノエチル)〕アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(N−アリル−N−グリシジル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(N−アリル−N−メタクリロイル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ビス〔3−(メチルジメトキシシリル)プロピル〕メタクリルアミド、N,N−ビス〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕メタクリルアミド、1−(3−メタクリロキシプロピル)−1,1,3,3,3−ペンタメチルジシロキサン、トリメトキシシリルビニルビシクロ〔2,2,1〕ヘプタン等が挙げられる。
【0032】
エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、クロル基などの反応性基を有する好ましい有機ケイ素化合物としては、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−(N,N−ジグリシジル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシランなどを挙げることができる。その他の有機ケイ素化合物としては、アルコキシシラン類、クロロシラン類、及びシラザン類を挙げることができる。
【0033】
これらの中でも、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどの重合可能な反応性基を有するシランカップリング剤、あるいは3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのエポキシ基を有するシランカップリング剤が特に好ましい。これらの有機ケイ素化合物は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0034】
有機ケイ素化合物がシランカップリング剤などの低分子量物である場合、その使用量は、熱発泡性マイクロスフェアーの全重量基準で、好ましくは0.005重量%以上、より好ましくは0.01重量%以上、特に好ましくは0.015重量%以上である。有機ケイ素化合物の使用量が少なすぎると、熱発泡性マイクロスフェアーの表面を充分に親水性に改質することが困難とり、水性懸濁液中で分散不良を起こしやすくなる。有機ケイ素化合物の使用量の上限は、好ましくは5重量%であり、より好ましくは1重量%程度である。有機ケイ素化合物の使用量の範囲は、好ましくは0.01〜5重量%、より好ましくは0.015〜1重量%である。有機ケイ素化合物の使用量が多すぎると、経済的でない。
【0035】
機ケイ素化合物として、消泡シリコーンを使用することができる。消泡シリコーンは、一般に、シリコーンオイルなどの高分子量の有機ケイ素化合物を有効成分とする消泡剤である。消泡シリコーンには、オイル型、オイルコンパウンド型、溶液型、エマルション型、自己乳化型などがある。有効成分としては、ジメチルシリコーン、アルキル変性ジメチルシリコーン、シリコーンポリエーテル共重合体などの各種シリコーンオイルが挙げられる。
【0036】
オイル型は、ジメチルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、シリコーンポリエーテル共重合体などで、100%オイル分からなる消泡シリコーンである。オイルコンパウンド型は、シリコーンオイルに微粉末シリカを配合したものである。溶液型は、高粘度ジメチルシリコーンオイルをミネラルスピリットなどの溶剤で希釈したものである。エマルション型は、シリコーンオイルを各種乳化剤を用いて乳化したものである。自己乳化型は、30℃以下の冷水に対して自己乳化性を示すものであり、消泡持続性に優れ、酸性、アルカリ性でも良好な消泡性を示す。これらの消泡シリコーンの中でも、エマルション型及び自己乳化型の消泡シリコーンが好ましい。消泡シリコーンとしては、GE東芝シリコーン株式会社などから製造販売されている市販品を使用することができる。
【0037】
消泡シリコーンは、熱発泡性マイクロスフェアーとパルプとを含有する水性分散液(パルプスラリー)に添加することが好ましい。消泡シリコーンは、微量の添加量でも、パルプスラリー撹拌時の泡立ちを抑えることができ、しかも表面平滑性に優れた低密度発泡紙を与えることができる。水性分散液に対する消泡シリコーンの添加量は、有効成分として通常1〜500ppm、好ましくは3〜300ppm、より好ましくは5〜200ppm程度である。消泡シリコーンを予め熱発泡性マイクロスフェアーの表面に付着させるなどの他の添加方法を採用する場合にも、パルプを含有する水性分散液に対する割合が前記範囲内となるように添加量を調整することが望ましい。
【0038】
3.パルプ
本発明で使用するパルプとしては、通常の製紙で使用される製紙用パルプであれば何れもが使用可能である。パルプの具体例としては、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹クラフトパルプ(LBKP)などの木材パルプ;古紙パルプ;麻や綿等の非木材天然パルプ;ポリエチレン、ポリプロピレン等を原料とした合成化学パルプ;などを挙げることができる。
【0039】
パルプは、それぞれ単独で、あるいは前記各種パルプを組み合わせて使用することができる。前記パルプの他に、アクリル繊維、レーヨン繊維、フェノール繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維等の有機繊維;ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維等の無機繊維;などを混抄することも可能である。
【0040】
4.熱発泡性マイクロスフェアーの製造方法
本発明で用いる熱発泡性マイクロスフェアーは、水系分散媒体中で、少なくとも発泡剤及び重合性単量体を含有する重合性混合物を懸濁重合することにより製造することができる。熱発泡性マイクロスフェアーは、懸濁重合により生成した重合体から形成された外殻内に発泡剤が封入された構造を持っている。重合性混合物を重合可能な反応基を有するシランカップリング剤などの有機ケイ素化合物の存在下で懸濁重合することにより、外殻中に有機ケイ素化合物を含有させることができる。
【0041】
(1)重合性単量体
重合性単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、ジシクロペンテニルアクリレート等のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、イソボルニルメタクリレート等のメタクリル酸エステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニリデン、塩化ビニル、スチレン、酢酸ビニル、α−メチルスチレン、クロロプレン、ネオプレン、ブタジエンなどが挙げられる。これらの重合性単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0042】
熱発泡性マイクロスフェアーは、外殻を形成する重合体が熱可塑性で、かつ、ガスバリア性を有するものが好ましい。これらの観点から、外殻を形成する重合体としては、塩化ビニリデン(共)重合体及び(メタ)アクリロニトリル(共)重合体が好ましい。
【0043】
塩化ビニリデン(共)重合体としては、重合性単量体として、塩化ビニリデン単独、あるいは塩化ビニリデンとこれと共重合可能なビニル系単量体との混合物を用いて得られる(共)重合体を挙げることができる。塩化ビニリデンと共重合可能な単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、スチレン、酢酸ビニルなどが挙げられる。
【0044】
このような塩化ビニリデン(共)重合体としては、 重合性単量体として、(a)塩化ビニリデン30〜100重量%と、(b) アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、及び酢酸ビニルからなる群より選ばれた少なくとも一種の単量体0〜70重量%とを用いて得られた(共)重合体が好ましい。塩化ビニリデンの共重合割合が30重量%未満であるとガスバリア性が低下すぎるので好ましくない。
【0045】
また、塩化ビニリデン(共)重合体としては、重合性単量体として(a1)塩化ビニリデン40〜80重量%と、(b1)アクリロニトリル及びメタクリロニトリルからなる群より選ばれた少なくとも一種の単量体0〜60重量%と、(b2)アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルからなる群より選ばれた少なくとも一種の単量体0〜60重量%との共重合体である。外殻をこのような共重合体で形成することにより、熱発泡性マイクロスフェアーの発泡温度の設計が容易であり、また、高発泡倍率を達成しやすい。
【0046】
耐溶剤性や高温での発泡性を望む場合には、(メタ)アクリロニトリル(共)重合体により外殻を形成することが好ましい。(メタ)アクリロニトリル(共)重合体としては、重合性単量体として、(メタ)アクリロニトリル単独、あるいは(メタ)アクリロニトリルとそれと共重合可能なビニル系単量体とを用いて得られる(共)重合体を挙げることができる。(メタ)アクリロニトリルと共重合可能なビニル系単量体としては、塩化ビニリデン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、酢酸ビニルなどが挙げられる。
【0047】
このような(メタ)アクリロニトリル(共)重合体としては、重合性単量体として、(c)アクリロニトリル及びメタクリロニトリルからなる群より選ばれた少なくとも一種の単量体30〜100重量%と、(d)塩化ビニリデン、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステル、スチレン、及び酢酸ビニルからなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体0〜70重量%とを用いて得られた(共)重合体が好ましい。(メタ)アクリロニトリルの共重合割合が30重量%未満では、耐熱性が不充分となる。
【0048】
(メタ)アクリロニトリル(共)重合体は、(メタ)アクリロニトリルの使用割合が大きく発泡温度が高い(共)重合体と、(メタ)アクリロニトリルの使用割合が小さく発泡温度が低い(共)重合体とに分けることができる。(メタ)アクリロニトルの使用割合が大きい(共)重合体としては、重合性単量体として、(c)アクリロニトリル及びメタクリロニトリルからなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体80〜100重量%と、(d)塩化ビニリデン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、及び酢酸ビニルからなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体0〜20重量%とを用いて得られた(共)重合体が挙げられる。
【0049】
一方、(メタ)アクリロニトリルの使用割合が小さい(共)重合体としては、重合性単量体として、(c)アクリロトリル及びメタクリロニトリルからなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体30〜80重量%未満と、(d)塩化ビニリデン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、及び酢酸ビニルからなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体20重量%超過70重量%以下とを用いて得られた(共)重合体が挙げられる。
【0050】
(メタ)アクリロニトリル(共)重合体は、重合性単量体として(c1)アクリロニトリル及びメタクリロニトリルからなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体51〜100重量%と、(d1)塩化ビニリデン0〜40重量%と、(d2)アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体0〜48重量%とを用いて得られた(共)重合体が好ましい。
【0051】
外殻の重合体として、塩化ビニリデンを含まない(共)重合体が望まれる場合には、重合性単量体として、(e) アクリロニトリル及びメタクリロニトリルからなる群より選ばれた少なくとも一種の単量体30〜100重量%と、(f) アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルからなる群より選ばれた少なくとも一種の単量体0〜70重量%とを用いて得られた(メタ)アクリロニトリル(共)重合体が好ましい。また、重合性単量体として、(e1)アクリロニトリル1〜99重量%と、(e2)メタクリロニトリル1〜99重量%と、(f)アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体0〜70重量%とを用いて得られた共重合体が好ましい。
【0052】
(2)架橋性単量体
前記の如き重合性単量体と共に、発泡特性、加工特性、耐溶剤性、耐熱性を改良するために、架橋性単量体を併用することができる。架橋性単量体としては、2つ以上の炭素−炭素二重結合を有する化合物が用いられる。より具体的に、架橋性単量体として、例えば、ジビニルベンゼン、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン、ジメタクリル酸1,3−ブチルグリコール、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。架橋性単量体の使用割合は、重合性単量体の全重量基準で、通常0.05〜5重量%、好ましくは0.1〜3重量%である。
【0053】
(3)発泡剤
本発明で使用する発泡剤は、一般に、外殻を形成する重合体の軟化点以下の温度でガス状になる物質である。このような発泡剤としては、低沸点有機溶剤が好適である。発泡剤の具体例としては、例えば、エタン、エチレン、プロパン、プロペン、n−ブタン、イソブタン、ブテン、イソブテン、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、2,2,4−トリメチルペンタン、n−へキサン、イソヘキサン、石油エーテル、ヘプタンなどの低分子量炭化水素;CCl3 F等のクロロフルオロカーボン;テトラメチルシランなどのテトラアルキルシラン;などが挙げられる。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0054】
これらの中でも、イソブタン、n−ブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、2,2,4−トリメチルペンタン、石油エーテル、及びこれらの2種以上の混合物が好ましい。また、発泡剤として、所望により、加熱により熱分解してガス状になる化合物を使用してもよい。
【0055】
(4)重合開始剤
重合開始剤としては、特に限定されず、この分野で一般に使用されているものを使用することができるが、重合性単量体に可溶性である油溶性重合開始剤が好ましい。重合開始剤としては、例えば、過酸化ジアルキル、過酸化ジアシル、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート、及びアゾ化合物が挙げられる。重合開始剤は、通常、単量体混合物中に含有させるが、早期重合を抑制する必要がある場合には、水性懸濁媒体中での単量体混合物の造粒工程中または造粒工程後に、その一部または全部を水系分散媒体中に添加して、重合性混合物の液滴中に移行させてもよい。重合開始剤は、水系分散媒体基準で、通常、0.0001〜3重量%の割合で使用される。
【0056】
(5)水系分散媒体
懸濁重合は、一般に、分散安定剤を含有する水系分散媒体中で行われる。分散安定剤としては、例えば、シリカ、水酸化マグネシウムなどの無機微粒子を挙げることができる。この他に補助安定剤、例えば、ジエタノールアミンと脂肪族ジカルボン酸の縮合生成物、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、各種乳化剤等を使用することができる。分散安定剤は、重合性単量体100重量部に対して、通常、0.1〜20重量部の割合で使用される。
【0057】
分散安定剤を含有する水系分散媒体は、通常、分散安定剤や補助安定剤を脱イオン水に配合して調製する。重合時の水相のpHは、使用する分散安定剤や補助安定剤の種類によって適宜決められる。例えば、分散安定剤としてコロイダルシリカなどのシリカを使用する場合は、酸性環境下で重合が行われる。水系分散媒体を酸性にするには、必要に応じて酸を加えて、系のpHを7以下、好ましくはpH6以下、より好ましくは5.5以下、特に好ましくはpH3〜4程度に調整する。水酸化マグネシウムやリン酸カルシウムなどの酸性環境下で水系分散媒体に溶解する分散安定剤の場合には、アルカリ性環境下で重合させる。
【0058】
分散安定剤の好ましい組み合わせの一つとして、コロイダルシリカと縮合生成物との組み合わせがある。縮合生成物としては、ジエタノールアミンと脂肪族ジカルボン酸との縮合生成物が好ましく、特にジエタノールアミンとアジピン酸との縮合物や、ジエタノールアミンとイタコン酸との縮合生成物が好ましい。縮合生成物の酸価は、60以上95未満であることが好ましく、65〜90であることがより好ましい。さらに、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム等の無機塩を添加すると、より均一な粒子形状を有する熱発泡性マイクロスフェアーが得られやすくなる。無機塩としては、通常、塩化ナトリウムが好適に用いられる。
【0059】
コロイダルシリカの使用量は、その粒子径によっても変動するが、重合性単量体100重量部に対して、通常、0.5〜20重量部、好ましくは、1〜15重量部の割合である。縮合生成物は、重合性単量体100重量部に対して、通常、0.05〜2重量部の割合で使用される。無機塩は、重合性単量体100重量部に対して、通常、0〜100重量部の割合で使用される。
【0060】
分散安定剤の他の好ましい組み合わせとしては、コロイダルシリカと水溶性窒素含有化合物との組み合わせが挙げられる。これらの中でも、コロイダルシリカとポリビニルピロリドンとの組み合わせが好適に用いられる。さらに、他の好ましい組み合わせとしては、水酸化マグネシウム及び/またはリン酸カルシウムと乳化剤との組み合わせがある。
【0061】
分散安定剤として、水溶性多価金属化合物(例えば、塩化マグネシウム)と水酸化アルカリ金属塩(例えば、水酸化ナトリウム)との水相中での反応により得られる難水溶性金属水酸化物(例えば、水酸化マグネシウム)のコロイドを用いることができる。また、リン酸カルシウムとしては、リン酸ナトリウムと塩化カルシウムとの水相中での反応生成物を使用することができる。
【0062】
乳化剤は、一般に使用しないが、所望により陰イオン性界面活性剤、例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩やポリオキシエチレンアルキル(アリル)エーテルのリン酸エステル等を用いてもよい。
【0063】
重合助剤として、水系分散媒体中に、亜硝酸アルカリ金属塩、塩化第一スズ、塩化第二スズ、水可溶性アスコルビン酸類、及び硼酸からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を存在させることができる。これらの化合物の存在下に懸濁重合を行うと、重合時に、重合粒子同士の凝集が起こらず、重合物が重合缶壁に付着することがなく、重合による発熱を効率的に除去しながら安定して熱発泡性マイクロスフェアーを製造することができる。
【0064】
亜硝酸アルカリ金属塩の中では、亜硝酸ナトリウム及び亜硝酸カリウムが入手の容易性や価格の点で好ましい。アスコルビン酸類としては、アスコルビン酸、アスコルビン酸の金属塩、アスコルビン酸のエステルなどが挙げられるが、これらの中でも水可溶性のものが好適に用いられる。ここで、水可溶性アスコルビン酸類とは、23℃の水に対する溶解性が1g/100cm3以上であるものを意味し、アスコルビン酸とそのアルカリ金属塩が好ましい。これらの中でも、L−アスコルビン酸(ビタミンC)、アスコルビン酸ナトリウム、及びアスコルビン酸カリウムが、入手の容易性や価格、作用効果の点で、特に好適に用いられる。これらの化合物は、重合性単量体100重量部に対して、通常、0.001〜1重量部、好ましくは、0.01〜0.1重量部の割合で使用される。
【0065】
(6)有機ケイ素化合物
有機ケイ素化合物としては、前記のものが用いられるが、熱発泡性マイクロスフェアーの製造工程で使用する有機ケイ素化合物としては、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどの重合可能な反応性基を有するシランカップリング剤が特に好ましい。熱発泡性マイクロスフェアーの製造工程で使用する有機ケイ素化合物の使用量は、前述と同様、熱発泡性マイクロスフェアーの全重量基準で、好ましくは0.005重量%以上、より好ましくは0.01重量%以上、特に好ましくは0.015重量%以上である。
【0066】
(7)懸濁重合
水系分散媒体に各成分を添加する順序は、任意であるが、通常は、水に分散安定剤、及び必要に応じて安定助剤や重合助剤などを加えて、分散安定剤を含有する水系分散媒体を調製する。一方、重合性単量体及び発泡剤は、別々に水系分散媒体に加えて、水系分散媒体中で一体化して重合性混合物(油性混合物)を形成してもよいが、通常、予め両者を混合してから、水系分散媒体中に添加する。重合開始剤は、予め重合性単量体に添加して使用することができるが、早期の重合を避ける必要がある場合には、例えば、重合性単量体と発泡剤との混合物を水系分散媒体中に添加し、攪拌しながら重合開始剤を加え、水系分散媒体中で一体化してもよい。重合性混合物と水系分散媒体との混合を別の容器で行って、高剪断力を有する攪拌機や分散機で攪拌混合した後、重合缶に仕込んでもよい。重合性混合物と水系分散媒体とを攪拌混合することにより、水系分散媒体中で重合性混合物の液滴を造粒する。液滴の平均粒径は、目的とする熱発泡性マイクロスフェアーの平均粒径とほぼ一致させることが好ましい。
【0067】
懸濁重合は、通常、反応槽内を脱気するか、もしくは不活性ガスで置換して、30〜100℃の温度に昇温して行う。重合反応性基を有する有機ケイ素化合物を重合性混合物中に添加して重合を行う場合には、常法に従って懸濁重合を行うことにより、重合体から形成される外殻中に有機ケイ素化合物が含有されることになる。懸濁重合の途中で有機ケイ素化合物を重合反応系に添加する場合には、懸濁重合開始から通常1〜12時間程度、好ましくは2〜10時間程度が経過した後に、有機ケイ素化合物を添加することが好ましい。重合途中で有機ケイ素化合物を添加することにより、外殻の表面部分の有機ケイ素化合物の密度を高くすることができると推定される。
【0068】
有機ケイ素化合物を重合途中で重合反応系に添加する場合、重合反応系のpHを7以下に保持するために、塩酸などの酸を加えて、pH調整することが好ましい。特にコロイダルシリカなどの少なくとも酸性領域で水系分散媒体に不溶性の無機微粒子を分散安定剤として用いる場合には、重合開始時から重合終了時までの間、重合反応系のpHを7以下に保持することが好ましく、そのために、重合途中で重合反応系に酸を加えてpH調整することができる。
【0069】
有機ケイ素化合物としては、ビニル基、メタクリル基、アクリル基、アリル基、及びメタリル基からなる群より選ばれた少なくとも一種の重合可能な反応性基を有する有機ケイ素化合物が好ましい。このような重合性有機ケイ素化合物は、熱発泡性マイクロスフェアーの外殻を形成する重合体中に重合性単量体との共重合によって強固に化学結合して含有させることができる。
【0070】
重合性混合物を有機ケイ素化合物の存在下で懸濁重合する具体的な方法としては、(i) 有機ケイ素化合物の存在下に重合性混合物を懸濁重合する方法、(ii)水系分散媒体と重合性混合物とを含有する重合反応系に有機ケイ素化合物を重合途中で添加して、懸濁重合をさらに継続する方法、及び(iii) これらを組み合わせた方法などが挙げられる。これらの方法の中でも、(ii)水系分散媒体と重合性混合物とを含有する重合反応系に有機ケイ素化合物を重合途中で添加して、懸濁重合をさらに継続する方法が好ましく、その際、重合開始時、重合途中、及び重合反応終了時における重合反応系のpHを7以下、好ましくは6以下、より好ましくは5.5以下に制御する方法が好ましい。使用する分散安定剤の種類にもよるが、多くの場合、重合反応系のpHが7超過にすると、充分な効果が得られないことがある。
【0071】
懸濁重合後、水相は、例えば、濾過、遠心分離、沈降によって除去される。熱発泡性マイクロスフェアーは、濾過・洗浄した後、乾燥する。熱発泡性マイクロスフェアーは、発泡剤がガス化しない程度の比較的低温で乾燥される。回収された熱発泡性マイクロスフェアーは、必要に応じて、有機ケイ素化合物で表面処理を行うことができる。
【0072】
懸濁重合法により得られた熱発泡性マイクロスフェアーの表面を有機ケイ素化合物で処理する方法ための表面処理方法としては、例えば、乾式法、湿式法、スプレー法、インテグラルブレンド法など、シランカップリング剤による一般的なフィラー処理方法を採用することができる。
【0073】
5.低密度発泡紙の製造方法
本発明では、(I)(A)重合体から形成された外殻内に発泡剤が封入された構造を持つ熱発泡性マイクロスフェアー、(B)有機ケイ素化合物、及び(C)パルプを含有する混合材料を作製する工程、並びに(II)該混合材料を加熱して(A)熱発泡性マイクロスフェアーを発泡させる工程により、低密度発泡紙を製造する。
【0074】
工程(I)における混合材料の調製工程は、一般に抄紙工程と呼ばれるものであり、シート状の混合材料が調製されることが多い。ただし、本発明の混合材料の形態は、シート状に限定されず、小片状のもの、厚みを有するもの、凹凸を有するもの、各種立体形状を有するものなど、使用目的に応じて適宜定めることができる。
【0075】
工程(I)において、(A)熱発泡性マイクロスフェアー、(B)有機ケイ素化合物、及び(C)パルプを含有する水性分散液(以下、「パルプスラリー1」という)を調製し、該パルプスラリー1を抄紙して混合材料を作製することができる。有機ケイ素化合物は、熱発泡性マイクロスフェアーの外殻と一体化させた状態で使用することができる。
【0076】
有機ケイ素化合物と外殻との一体化は、前記した通り、熱発泡性マイクロスフェアーの製造工程において、重合性単量体と有機ケイ素化合物とを共重合させるなどして、外殻中に有機ケイ素化合物を含有させる方法がある。この他、熱発泡性マイクロスフェアーを有機ケイ素化合物で表面処理して、外殻表面に付着させる方法がある。
【0077】
有機ケイ素化合物を外殻と一体化させた熱発泡性マイクロスフェアーは、その水性分散液を調製し、そこにパルプ、及び各種添加剤を加えてパルプスラリー1を調製することができる。また、有機ケイ素化合物を外殻と一体化させた熱発泡性マイクロスフェアーの水性分散液とパルプ含有水性分散液と混合してパルプスラリー1を調製することができる。さらに、パルプ含有水性分散液に、有機ケイ素化合物を外殻と一体化させた熱発泡性マイクロスフェアーを添加して分散させてもよい。
【0078】
熱発泡性マイクロスフェアーを含有する水性分散液に有機ケイ素化合物を添加してもよい。次に、この水性分散液に、パルプ、及び各種添加剤を加えてパルプスラリー1を調製することができる。また、この水性分散液とパルプ含有水性分散液とを混合してパルプスラリー1を調製することもできる。
【0079】
工程(I)において、(C)パルプを抄紙して得られたパルプシート等の形態の紙材料に、(A)熱発泡性マイクロスフェアーと(B)有機ケイ素化合物を含有する水性分散液を含浸させて混合材料を作製することもできる。パルプを抄紙するには、パルプを含有する水性分散液(以下、「パルプスラリー2」という)を調製し、このパルプスラリー2を抄紙する。
【0080】
パルプシートなどの紙材料に、熱発泡性マイクロスフェアーと有機ケイ素化合物とを含有する水系分散液を含浸させる方法としては、(i)乾燥紙材料に、熱発泡性マイクロスフェアーと有機ケイ素化合物とを含有する水性分散液を湿式含浸法により含浸させる方法(例えば、特許第3061345号公報)、(ii)湿潤または乾燥紙材料に、熱発泡性マイクロスフェアーと有機ケイ素化合物とを含有する水性分散液をスプレーする方法(例えば、特開2001−98494号公報)などがある。これらの方法においても、有機ケイ素化合物は、熱発泡性マイクロスフェアーの外殻と一体化させた状態で使用することができる。
【0081】
パルプを含有する水性分散液(パルプスラリー1及び2)には、製紙用パルプ以外の副材料、例えば、サイズ剤、紙力増強剤、染料、顔料、各種アニオン性、ノニオン性、カチオン性あるいは両性の歩留まり向上剤等の添加剤を必要に応じて単独でまたは組み合わせて含有させることができる。
【0082】
上記副材料以外に、一般に公知の填料を混合することもできる。填料の具体例としては、タルク、カオリン、焼成カオリン、クレー、ケイソウ土、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、シリカ等が挙げられる。発泡前の混合材料の表面には、必要に応じて、澱粉、ポリビニルアルコール、表面サイズ剤、顔料などを塗布することができる。
【0083】
熱発泡性マイクロスフェアーまたは有機ケイ素化合物を外殻と一体化した状態で含有する熱発泡性マイクロスフェアーの添加量(固形分換算)は、パルプ100重量部に対して、通常、3〜30重量部である。熱発泡性マイクロスフェアーの添加量が少なすぎると、充分な発泡が得られず、低密度化による利点を得ることが困難になる。熱発泡性マイクロスフェアーの添加量が多すぎると、経済上好ましくない。
【0084】
抄紙方法としては、抄紙マシーンを用いるなどの公知の方法を採用することができる。坪量は、通常、25〜600g/m2の範囲から選択される、得られた熱発泡性マイクロスフェアー含有混合材料は、湿潤状態のままで、あるいは水分量を適度に調整してから、加熱して熱発泡性マイクロスフェアーを発泡させる。加熱温度は、熱発泡性マイクロスフェアーの外殻を構成する重合体の種類やガラス転移温度などによって、シャープに発泡が起こる温度を選択することが好ましい。工業的には、単筒又は多筒式の熱ロールが好ましく用いられる。
【0085】
本発明の低密度発泡紙の密度は、通常0.5g/cm3 以下、好ましくは0.4g/cm3以下、より好ましくは0.3g/cm3以下である。低密度発泡紙の密度の下限は、通常0.05g/cm3程度である。本発明の低密度発泡紙の密度の範囲は、好ましくは0.05〜0.4g/cm3 、より好ましくは0.08〜0.3g/cm3である。低密度発泡紙の厚みは、用途に応じて適宜選択することができるが、通常、0.3〜5mm、好ましくは、0.5〜3mm程度である。
【0086】
本発明の低密度発泡紙は、その表面に微細な突起物が実質的に形成されていない。このような突起物は、目視によって観察し評価することが可能であるが、表面状態を表面粗さ測定装置によって測定することにより評価することができる。さらに、例えば、スクリーン印刷などで印刷し、柄抜けの有無を目視で観察することによっても、突起物の有無を評価することができる。
【0087】
微細な突起物とは、一般に、100μm以上の高さを有する突起物を意味している。また、低密度発泡紙に突起物がないと評価される状態は、このような突起物の個数が低密度発泡紙の10cm四方に、5個以下、好ましくは3個以下、より好ましくは0個であることを意味する。
【0088】
本発明の低密度発泡紙は、表面平滑性及び印刷特性が顕著に優れているので、外観が良好であることに加えて、印刷により所望の意匠を施すことができる。また、本発明の低密度発泡紙は、断熱性、保温性、クッション性、吸音性に優れている。
【0089】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。特性の評価方法は、次の通りである。
【0090】
(1)平均粒径
熱発泡性マイクロスフェアーの平均粒径は、島津製作所製の粒径分布測定器SALD−3000Jを用いて測定した。
【0091】
(2)パルプスラリー攪拌時の泡立ち
水に対してパルプ、熱発泡性マイクロスフェアー、その他の添加剤を加え、ミキサーにて良く攪拌した。攪拌停止直後の泡立ち状況を目視観察した。
【0092】
(3)発泡紙の密度
抄紙して得られた湿紙シートを熱プレス装置(プレックスオート1000 東京宝来社製)にて、130℃で80秒間加熱し、低密度発泡紙を得た。低密度発泡紙の重量及び紙厚を測定し、紙密度を算出した。
【0093】
(4)低密度発泡紙の表面状態
低密度発泡紙の表面状態を超深度形状測定顕微鏡(KEYENCE社製、VK−8500)により測定し、10cm四方に存在する100μm以上の高さの突起の個数を数えた。
【0094】
(5)印刷特性
熱プレス装置用のプリンティンググッズ(東京宝来社製)を用いて、室温にてスクリーン印刷を行なった。印刷後の柄抜けの有無を目視にて確認した。
◎:柄抜けが全くない、
○:微細に観察すると柄抜けが少しあるが、実用上の不都合はない、
×:柄抜けが目立つ。
【0095】
[比較例1]
(1)熱発泡性マイクロスフェアーの製造工程
(1−1)水系分散媒体の調製
固形分40%のコロイダルシリカ20.0g、ジエタノールアミン−アジピン酸縮合生成物(酸価=78mgKOH/g)0.75g、亜硝酸ナトリウム0.12g、及び水679.13gを混合して、水系分散媒体700gを調製した。この水系分散媒体のpHが3.5になるように、塩酸を添加してpH調整を行なった。
【0096】
(1−2)重合性混合物の調製
アクリロニトリル120g、メタクリル酸メチル80g、エチレングリコールジメタクリレート0.60g、発泡剤のイソブタン66g、及び重合開始剤の2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.2gを混合して、重合性混合物を調製した。
【0097】
(1−3)液滴の形成(造粒)
前記で調製した水系分散媒体と重合性混合物とを、ホモジナイザーで攪拌混合して、水系分散媒体中に重合性混合物の微小な液滴を形成した。
【0098】
(1−4)懸濁重合
この重合性混合物の微小な液滴を含有する水系分散媒体を、攪拌機付きの重合缶(1.5L)に仕込み、温水バスを用いて50℃で22時間反応させた。この反応混合物を濾過・水洗し、平均粒径14μmの熱発泡性マイクロスフェアーを回収した。
【0099】
(2)抄紙工程
広葉樹パルプ(LBKP)をミキサーにて解砕したものを使用した。重合して得られた熱発泡性マイクロスフェアーを自重の3倍量の水に加え、攪拌して水分散液を調製した。パルプの乾燥重量に対して、熱発泡性マイクロスフェアーの乾燥重量で10%となるように、熱発泡性マイクロスフェアーの水性分散液を投入した。さらに、乾燥紙力増強剤0.1%、澱粉0.4%、サイズ剤0.1%、及び湿紙力増強剤0.3%を順次添加した。これらの薬品の添加量は、全て乾燥パルプに対する固形分の重量%である。
【0100】
得られた水性分散液を円形手抄きシートマシーン(80メッシュ)を用いて抄紙した。次いで、湿式シートを濾紙に挟み、ロースプレスにより脱水し、発泡試験用の湿式シート(シート状材料)を得た。このようにして得られた湿式シートをプレス加熱して、低密度発泡紙を得た。結果を表1に示す。
【0101】
[実施例1]
比較例1における(1−4)の懸濁重合工程において、重合開始から6時間が経過した時点で、重合可能な反応性基を有するシランカップリング剤である3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(GE東芝シリコーン社製、TSL8370)0.3gを重合缶内に添加した。さらに、重合開始から7時間を経過した時点で、塩酸を添加して重合反応系のpHを3.0に調整した。このように比較例1の懸濁重合過程において、シランカップリング剤と塩酸を添加したこと以外は、比較例1と同様にして、熱発泡性マイクロスフェアーを製造した。反応終了後、反応混合物を濾過・水洗し乾燥して平均粒子径14μmの熱発泡性マイクロスフェアーを得た。次いで、比較例1と同様の抄紙方法及び発泡方法にて、低密度発泡紙を得た。結果を表1に示す。
【0102】
[実施例2]
比較例1の重合性混合物の調製工程(1−2)において、重合可能な反応性基を有するシランカップリング剤である3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(GE東芝シリコーン社製 TSL8370)0.3gを添加して、シランカップリング剤を含有する重合性混合物を調製し、そして、次の液滴の調整工程(3)において、水系分散媒体と重合性混合物をホモジナイザーで攪拌混合する前に、塩酸を加えてpHを3.0に調整してから、重合性混合物の微小な液滴を造粒したこと以外は、比較例1と同様にして、熱発泡性マイクロスフェアーを調製した。
【0103】
反応混合物中に若干量の凝集物が生成していたので、200メッシュの篩を用いて凝集物を除去した。しかる後、反応混合物を濾過・水洗し、乾燥して、平均粒径14μmの熱発泡性マイクロスフェアーを回収した。次いで、比較例1と同様の抄紙方法及び発泡方法にて、低密度発泡紙を得た。結果を表1に示す。
【0104】
[実施例3]
比較例1の懸濁重合工程(1−4)において、重合開始から6時間が経過した時点で、反応性基を有するシランカップリング剤である3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GE東芝シリコーン社製、TSL8350)0.3gを重合缶内に添加した。さらに、重合開始から7時間を経過した時点で、塩酸を添加して、重合反応系のpHを3.0に調整した。このように比較例1の懸濁重合過程において、シランカップリング剤と塩酸を添加したこと以外は、比較例1と同様にして、熱発泡性マイクロスフェアーを製造した。反応終了後、反応混合物を濾過・水洗し乾燥して平均粒子径14μmの熱発泡性マイクロスフェアーを得た。次いで、比較例1と同様の抄紙方法及び発泡方法にて、低密度発泡紙を得た。結果を表1に示す。
【0105】
[実施例4]
実施例1で調整した外殻中にシランカップリング剤を含有する熱発泡性マイクロスフェアー(粒子径14μm)の水分散液を、比較例1の(2)抄紙工程において、パルプの乾燥重量に対して熱発泡性マイクロスフェアーの乾燥重量で20%となるように投入した。さらに、乾燥紙力増強剤0.1%、澱粉0.4%、サイズ剤0.1%、及び湿紙力増強剤0.3%順次添加した。得られた水性分散液を円形手抄きシートマシーン(80メッシュ)を用いて抄紙した。次いで、比較例1と同様の発泡方法にて、低密度発泡紙を得た。結果を表1に示す。
【0106】
[実施例5]
比較例1と同様にして、平均粒径14μmの熱発泡性マイクロスフェアーを製造した。次いで、比較例1の(2)抄紙工程において、熱発泡性マイクロスフェアーを自重の3倍量の水に加え、さらに3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GE東芝シリコーン社製、TSL8350)0.3gを添加した。塩酸を添加してpHを4に調整後、攪拌して水性分散液を調製した。その他は、比較例1と同様の抄紙方法及び発泡方法にて、低密度発泡紙を得た。結果を表1に示す。
【0107】
[比較例2]
(1)熱発泡性マイクロスフェアーの作成
(1−1)水系分散媒体の調製
固形分40%のコロイダルシリカ10.0g、ジエタノールアミン−アジピン酸縮合生成物(酸価=78mgKOH/g)0.40g、亜硝酸ナトリウム0.12g、及び水を混合して、水系分散媒体480gを調製した。この水系分散媒体のpHが3.5になるように、塩酸を添加してpHを調整した。
【0108】
(1−2)重合性混合物の調製
塩化ビニリデン130g、アクリロニトリル60g、メタクリル酸メチル10g、エチレングリコールジメタクリレート0.40g、発泡剤のイソブタン32g、及び重合開始剤の2、2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2.0gを混合して、重合性混合物を調製した。
【0109】
(1−3)液滴の形成(造粒)
前記で調製した水系分散媒体と重合性混合物とを、ホモジナイザーで攪拌混合して、水系分散媒体中に重合性混合物の微小な液滴を形成した。
【0110】
(1−4)懸濁重合
この重合性混合物の微小な液滴を含有する水系分散媒体を、攪拌機付きの重合缶(1.5L)に仕込み、温水バスを用いて50℃で22時間反応させた。反応混合物を濾過・水洗し、平均粒径14μmの熱発泡性マイクロスフェアーを回収した。
【0111】
(2)抄紙
上記で得られた熱発泡性マイクロスフェアーを用いたこと以外は、比較例1の抄紙工程(2)と同様に行なった。得られた湿式シートをプレス加熱して低密度発泡紙を得た。結果を表1に示す。
【0112】
[実施例6]
比較例2の懸濁重合工程(1−4)において、重合開始から6時間が経過した時点で、重合可能な反応性基を有するシランカップリング剤である3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(GE東芝シリコーン社製、TSL8370)0.3gを重合缶内に添加した。さらに、重合開始から7時間を経過した時点で、塩酸を添加して、重合反応系のpHを3.0に調整した。このように、比較例2の懸濁重合過程において、シランカップリング剤と塩酸を添加したこと以外は、比較例2と同様にして、熱発泡性マイクロスフェアーを製造した。反応終了後、反応混合物を濾過・水洗し乾燥して平均粒子径14μmの熱発泡性マイクロスフェアーを得た。次いで、比較例2と同様の発泡方法にて、低密度発泡紙を得た。結果を表1に示す。
【0113】
[実施例7]
比較例2の重合性混合物の調製工程(1−2)において、重合可能な反応性基を有するシランカップリング剤である3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(GE東芝シリコーン社製、TSL8370)0.3gを添加してシランカップリング剤を含有する重合性混合物を調製し、そして、次の液滴の造粒工程(1−3)において、水系分散媒体と重合性混合物をホモジナイザーで攪拌混合する前に、塩酸を加えてpHを3.0に調整してから、重合性混合物の微小な液滴を造粒したこと以外は、比較例2と同様にして、熱発泡性マイクロスフェアーを調製した。次いで、比較例2と同様の発泡方法にて、低密度発泡紙を得た。結果を表1に示す。
【0114】
[実施例8]
比較例2と同様にして、平均粒径14μmの熱発泡性マイクロスフェアーを製造した。比較例1の抄紙工程(2)において、熱発泡性マイクロスフェアーを自重の3倍量の水に加え、かつ、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GE東芝シリコーン社製、TSL8350)0.3gを添加した後、塩酸を添加してpHを4に調整後、攪拌して水性分散液を調製した。その他は比較例2と同様の抄紙方法及び発泡方法にて、低密度発泡紙を得た。結果を表1に示す。
【0115】
【表1】
Figure 0004721596
【0116】
(脚注)
TSL8370:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
TSL8350:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
【0117】
参考例1
比較例1の抄紙工程(2)において、薬品添加後に、消泡シリコーン(ダウコーニング社製、FSアンチフォーム025)を水性分散液に対し、有効成分として15ppmの割合で添加して分散させたこと以外は、比較例1と同様にして低密度発泡紙を得た。水性分散液の撹拌時の泡立ちがなくなり、また、得られた低密度発泡紙の突起物は3個以下であった。低密度発泡紙の密度は、0.20g/cm3であった。この低密度発泡紙は、印刷時の柄抜けがなかった(評価=◎)。
【0118】
【発明の効果】
本発明によれば、断熱性、保温性、クッション性、吸音性に優れると共に、表面平滑性及び印刷特性が顕著に優れた低密度発泡紙が提供される。本発明の低密度発泡紙は、表面及び紙層中に微細突起物が実質的に存在しないため、外観に優れていることに加えて、表面に印刷を行なった場合でも柄抜けが起こらず、印刷特性に優れ、意匠付与性に優れている。本発明の低密度発泡紙は、通常0.5g/cm3以下の低密度で、断熱性、保温性、クッション性、吸音性に優れ、しかもリサイクルが可能な環境に優しい材料である。本発明の低密度発泡紙は、包装材料、断熱材、保温材、クッション材、吸音材などとして、広範な用途に使用することができる。

Claims (6)

  1. (A)重合体から形成された外殻内に発泡剤が封入された構造を持つ熱発泡性マイクロスフェアー、(B)シランカップリング剤である有機ケイ素化合物、及び(C)パルプを含有する混合材料であり、かつ、該(B)有機ケイ素化合物が、該(A)熱発泡性マイクロスフェアーの外殻と一体化された状態で該混合材料に含有されている混合材料からなり、(A)熱発泡性マイクロスフェアーが該混合材料中で発泡している低密度発泡紙。
  2. (B)有機ケイ素化合物が、(1)熱発泡性マイクロスフェアーの外殻表面への有機ケイ素化合物の付着、(2)該外殻中への有機ケイ素化合物の混入、(3)該外殻を形成する重合体と有機ケイ素化合物との化学的結合、または(4)これらの組み合わせにより、(A)熱発泡性マイクロスフェアーの外殻と一体化された状態で混合材料に含有されている請求項記載の低密度発泡紙。
  3. (A)熱発泡性マイクロスフェアーが、(メタ)アクリロニトリル(共)重合体または塩化ビニリデン(共)重合体から形成された外殻内に発泡剤が封入された構造を持つものである請求項1または2記載の低密度発泡紙。
  4. (I)(A)重合体から形成された外殻内に発泡剤が封入された構造を持つ熱発泡性マイクロスフェアー、(B)シランカップリング剤である有機ケイ素化合物、及び(C)パルプを含有する混合材料であり、かつ、該(B)有機ケイ素化合物が、該(A)熱発泡性マイクロスフェアーの外殻と一体化された状態で該混合材料に含有されている混合材料を作製し、次いで、(II)該混合材料を加熱して(A)熱発泡性マイクロスフェアーを発泡させる低密度発泡紙の製造方法。
  5. 工程(I)において、(A)熱発泡性マイクロスフェアー、(B)有機ケイ素化合物、及び(C)パルプを含有する水性分散液を抄紙して混合材料を作製する請求項記載の製造方法。
  6. 工程(I)において、(C)パルプを抄紙して得られた紙材料に、(A)熱発泡性マイクロスフェアーと(B)有機ケイ素化合物を含有する水性分散液を含浸させて混合材料を作製する請求項記載の製造方法。
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