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JP2006170739A - 緊急地震速報を用いた地震防災システム - Google Patents

緊急地震速報を用いた地震防災システム Download PDF

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克久 神田
Masamitsu Miyamura
正光 宮村
Akihiro Satake
昭弘 佐竹
Minoru Yoshida
稔 吉田
Naomiki Kusano
直幹 草野
Osamu Inaba
修 稲葉
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Abstract

【課題】施設や建物等の地震防災において、緊急地震速報を用いることで地震の主要動が到達する前に地震の報知や制御信号を出力でき、ニューラルネットワークを用いることで緊急地震速報だけでなく地盤の卓越周期や建物の振動特性を考慮した精度の高い評価ができ、学習によりニューラルネットワークを最適化することで予測の信頼性を飛躍的に向上させる。
【解決手段】緊急地震速報から得られる震源のマグニチュード、震源位置(緯度経度)、震源深さ、地震動の到達時間および大きさだけでなく、予め調査して得られている対象地点の地盤の卓越周期、建物内部ならば建物の固有周期、減衰階数などの動的特性を入力パラメータとしたニューラルネットワークを用いて、地震の主要動が到達する前に、対象地点の揺れまたは損傷レベルを推定し、地震防災のための報知あるいは設備機器類の制御を行う。自己学習機能を追加して最適化を図る。
【選択図】 図1

Description

本発明は、施設や建物などに設置される地震防災システムであり、緊急地震速報を用いて、地震動の到達する前に防災上の措置を講じるための有効な情報を出力し、地震報知装置や設備機器類の制御装置に利用する地震防災システムに関するものである。
施設や建物などに設置される従来からの地震報知・制御装置は、地震計と組み合わせることによって、あるレベル以上の地震動を地震計で検知した場合に報知を出したり制御したりするものが殆どである。例えばエレベータでは、通常感震装置で80Gal以上の加速度を観測すると、最寄階にエレベータを停止させる。
最近、緊急地震速報(特許文献1参照)が試験的に気象庁から伝達されるようになり、報知や制御に使うための試みが多方面で行われている。緊急地震速報は、震源に近い地震計が捉えた情報を用いて主要動(大きな揺れ)が到達する前に伝えられる地震情報で、近い将来、本運用される予定である。現在までの緊急地震速報を活用した地震防災報知・制御装置は、定められた経験的な震源と観測点の関係を用いて、主要動の到達時間・大きさを推定して、その結果を活用しているが、震源域から対象地点までの地震波が伝播する地殻構造、さらには対象地点の局所的な表層地層及び地形によって、誤差を含み、地震の継続時間についても推定できない。さらに、対象とする場所が建物内部の場合、建物の構造や階数によっても、揺れは異なってくる。緊急地震速報を活用するための精度の検討と、現実の地震動の評価や修正がなされていないため、より適切な防災に活用するために限界があった。
また、本発明に関連する先行技術文献として特許文献2がある。この発明は、ニューラルネットワークによる自己学習機能を持った地震早期検知システムであり、観測点地震検知装置内で行われる震源パラメータである、マグニチュード、震源距離、震源深さの評価に、ニューラルネットワークを応用するものである。また、1点の検知点で地震を検知し、その場で震源パラメータを評価するものである。さらに、地震情報の通報を地震検知装置から直接エンドユーザに行うものである。
特開2002−277557号公報 特開平11−64533号公報
(1)従来の地震報知・制御装置では、建物内部に設置した感震器などの地震計で観測された振動レベルでトリガーをかけるので、既に揺れが大きくなっており、報知や制御が間に合わず被害を防ぐことができない可能性がある。
(2)緊急地震速報を地震報知・制御装置に用いると、大きく揺れ始める前に地震情報が得られるので、事前に対策を取ることによって被害をより効率的に防ぐことができる。しかし、そのままの情報を用いると、揺れの大きさを経験則で一律に処理しているため、平均的地盤上での推定値となり、地点によっては局所的地盤の増幅特性の影響を受け、大きな誤差を生じる恐れがある。更に、建物の中では、建物の応答の影響を受けて正確な揺れを推定することができず、誤差が拡大する。
(3)評価誤差が大きいと、安全側の低い振動レベルで報知や制御のためのトリガーを掛けざるを得ず、被害が生じない地震でも作動し、効率的ではない。
本発明は、このような課題を解決すべくなされたもので、その目的は、施設や建物などの地震防災において、緊急地震速報を用いることにより、地震の主要動が到達する前に地震の報知や制御信号を出力することができると共に、ニューラルネットワークを用いることによって、緊急地震速報だけでなく、地盤の卓越周期や建物の振動特性を考慮した精度の高い評価ができ、さらに学習によりニューラルネットワークを最適化することにより、予測の信頼性を飛躍的に向上させることができ、地震時に効率的な報知や制御ができる緊急地震速報を用いた地震防災システムを提供することにある。
本発明の請求項1に係る発明は、地震防災の対象地点に設置される地震防災システムであって、緊急地震速報からの情報と対象地点特有の情報とを入力パラメータとしたニューラルネットワークを用いて、地震の主要動が到達する前に、対象地点の揺れまたは損傷レベルを推定し、地震防災のための報知あるいは設備機器類の制御を行うことを特徴とする緊急地震速報を用いた地震防災システムである。
本発明は、施設や建物などに設置される地震防災報知・制御装置の評価精度を向上させるために、緊急地震速報だけでなく、その他の情報(対象地点特有の情報)を入力するようにしたものである。即ち、緊急地震速報から得られる震源のマグニチュード、震源位置(緯度経度)、震源深さ、地震動の到達時間および大きさだけでなく、予め調査して得られている対象地点の地盤の卓越周期などの地盤特性、さらに建物内部ならば建物の固有周期、減衰階数などの建物動的特性をニューラルネットワークの入力パラメータとする。
本発明の地震防災システムは、例えば図1に示すように、情報処理装置としての即時地震情報伝達装置と、衛星アンテナ等の緊急地震速報の入力装置と、地震防災のための報知や制御を行う出力装置から構成することができる。即時地震情報伝達装置の演算記憶装置は、緊急地震速報データ処理機能と、評価用入力データ設定機能と、ニューラルネットワーク評価機能と、ニューラルネットワーク設定機能を有しており、上記の緊急地震速報からの情報と対象地点特有の情報とを入力パラメータとしたニューラルネットワークを用いて、地震の主要動が到達する前に、対象地点の揺れまたは損傷レベルを推定し、地震報知装置あるいは設備機器類の制御装置に利用する。
この地震報知装置あるいは制御装置は、例えば、エレベータやエスカレータの制御、産業機械の制御、交通機関の停止、遊戯施設の停止、建物内(公共施設、学校、イベント会場など)の人の避難誘導、扉・ガス・水道弁の開閉などに用いる。
ニューラルネットワークは、人間の神経細胞をモデル化した解析ツールであり、簡便なシステムで構成できるため、最近の工学の分野では制御に盛んに用いられている。ニューラルネットークを用いることにより、多くのパラメータを入力として考慮しながら評価する機能と、学習機能によりネットワークを最適なものにする機能がある。
ニューラルネットワークを用いた震源情報(震源位置、震源深さ、マグニチュード)の推定システムとしては、「ニューラルネットワークによる自己学習機能を持った地震早期検知システム」(特開平11−64533号(特許文献2))で発明済みであり、本発明は、この手法を転用し、対象地点の揺れや損傷レベルの推定に応用したものである。
本発明の請求項2に係る発明は、請求項1に記載の地震防災システムにおいて、ニューラルネットワークの自己学習機能を有していることを特徴とする緊急地震速報を用いた地震防災システムである。
例えば図2に示すように、即時地震情報伝達装置の演算記憶装置にニューラルネットワーク自己学習機能と学習用データ設定機能を付け加えた場合である。ニューラルネットワークにより、気象庁発表の震源情報と過去の揺れのデータ(例えば近くで取れた震度データや地震記録など)により学習させ、評価に用いるニューラルネットワークを最適なものとする。
本発明の請求項3に係る発明は、請求項2に記載の地震防災システムにおいて、対象地点に設置された地震計のデータを学習データとして用いることを特徴とする緊急地震速報を用いた地震防災システムである。
例えば図2に示すように、地震計を付属して設置できる場合であり、地震波データ記憶装置を付け加え、地震計のデータを学習データとして用いる。地震計の実測値を気象庁発表の震源情報と一緒に用いて学習させ、ニューラルネットワークを最適化し、精度を向上させる。
学習方法としては、地震発生ごとに自動で行う方法と、いくつかの地震データが蓄積された後、マニュアルで行う方法がある。
以上のような本発明によれば、緊急地震速報を用いることにより、地震の主要動が到達する前に地震の報知や制御信号を出力することができ、ニューラルネットワークを用いることにより、緊急地震速報からの情報だけでなく、対象地点特有の情報を考慮した地震動レベルおよび被害レベルの推定が可能になり、評価精度が向上する。さらに、自己学習機能を導入することにより、観測データを蓄積できれば、精度がさらに向上できる。その結果、地震防災のための報知や制御信号を本当に必要な地震のケースだけ出すことができ、効率的となる。
本発明は、以上のような構成からなるので、次のような効果が得られる。
(1)緊急地震速報を用いているため、地震の主要動が到達する前に地震の報知や制御信号を出力することができると共に、ニューラルネットワークを用いることによって、緊急地震速報だけでなく、地盤の卓越周期や建物の振動特性を考慮した精度の高い評価ができる。これにより施設や建物などに地震の主要動が到達する前に正確な報知や制御信号を出力することができ、地震による被害を確実に防ぐことができる。
(2)学習によりニューラルネットワークを最適化することにより、付属のものを付けなくても、本装置だけで様々な場所への適用が可能となる。即ち、データが蓄積されれば学習を行い、予測の信頼性を飛躍的に向上させることができ、地震時に効率的な報知や制御ができる。
(3)さらに、様々な用途の報知や制御信号のトリガーを設定することが可能であり、極めて汎用な地震防災システムが得られる。
以下、本発明を図示する実施の形態に基づいて説明する。図1は、本発明の地震防災システムの即時地震情報伝達装置の基本構成を示すブロック図である。図2は、図1の基本構成に自己学習機能と地震計を付加した構成を示すブロック図である。図3は、本発明のニューラルネットワークを用いた評価手法を示すフローである。図4は、本発明の報知装置と制御装置の具体例を例示したブロック図である。
図1に示すように、本発明の即時地震情報伝達装置1は、緊急地震速報を用いて主要動が到達する前に対象地点の揺れの大きさや被害レベルをニューラルネットワークを用いて推定し、地震防災のための報知や制御信号を出力する装置であり、演算記憶装置2と、入出力のインターフェース部3、4と、チューナ5などから構成され、これらは装置1のボックス(セットトップボックス)に内蔵されている。
このような即時地震情報伝達装置1の入力側には、衛星アンテナ10、インターネット・通常の電話回線・携帯電話等11などが接続され、出力側には、表示装置20、報知装置21、制御装置22、LAN(イーサネット(登録商標)など)の通信ケーブル23などが接続され、これにより地震防災システムが構成される。なお、出力側に関しては、装置1と表示装置20とが最小装置構成であり、これ以外は適宜選択して接続されるものである。
緊急地震速報は、衛星アンテナ10で受信し、この衛星アンテナ10からの信号をチューナ5で変換し、インターフェース部3を介して演算記憶装置2に入力する。また、インターネット・通常の電話回線・携帯電話等11からの信号はインターフェース部3を介して入力する。ここで、インターネットや通常の電話回線などで緊急地震速報を入手する場合、回線の混み方に情報入手時間は依存し、主要動の到達前に情報を入手できない可能性がある。主要動の到達前に報知や制御信号が必要な場合は電話の専用回線や衛星アンテナ10に接続し、緊急地震情報を入手できるように、様々な入出力対応とする。
演算記憶装置2は、緊急地震速報データ処理機能30と、評価用入力データ設定機能31と、ニューラルネットワーク評価機能32と、ニューラルネットワーク設定機能33を有している。
図1、図3に示すように、緊急地震速報から得られるマグニチュード、震源位置(緯度・経度)、震源深さ、地震動の到達時間および大きさだけでなく、予め調査して得られている対象地点の地盤の卓越周期、さらに建物内部ならば建物の固有周期、減衰階数などの動的特性を入力パラメータとし、ニューラルネットワークを用いて、対象地点の揺れや損傷レベルを推定し、地震防災のための報知や機器・設備の制御のための出力をする。表示装置20に緊急地震速報の受信データやニューラルネットワークによる推定結果を表示する。
なお、ニューラルネットワークの設定は、インターフェースを介して外部から行う。ニューラルネットワークの設定を行うための学習は外部でマニュアルで行い、必要に応じて適宜設定を変更できるようにする。地盤や建物の情報を考慮したニューラルネットワークの入力データについてもインターフェースを介して外部から行う。
図2の実施形態においては、演算記憶装置2にニューラルネットワーク自己学習機能34と学習用データ設定機能35が追加されている。さらに、地震計12を設置した場合には、地震計12で観測した記録を蓄える地震波データ記憶装置6を装置1の内部に設ける。
過去の地震についての気象庁発表の震源情報(震源位置、震源深さ、マグニチュード)、対象地点もしくは近傍の地盤の地震動や建物の揺れのデータを用いて学習を行い、評価に用いるニューラルネットワークを最適なものとする。地盤の地震動や建物の揺れのデータは、観測されたデータもしくはシミュレーション解析によって得られたデータを用いる。
ニューラルネットワークの学習としては、地震データがいくつか蓄積されたときに手動で行う方法を基本とし、毎回地震発生後に自動的に行い、ニューラルネットワークを更新する自己学習機能をオプションとして追加できるようにしている。但し、毎回地震発生後に行うためには、学習データとして地震計で観測された記録の入力が必要である。手動で学習する方法としては、オンサイト(現地)でのパソコンの接続、インターネット経由の遠隔の両方を可能とする。
地震計12を設置した場合には、地震波データ記憶装置6で蓄えた記録を分析することによってニューラルネットワークの学習用データを作成する。そのデータに基づいて、地震発生後または定期的に自己学習を行い、ニューラルネットワークを最適なものに更新する。この作業は自動で行う。
報知装置21は、図4に示すように、警報音発生装置、表示・表示灯装置、照明(フラッシュ)、振動装置などである。即ち、揺れの来る直前に放送機器から警報を発報し、人に音や音声で危険を知らせる。同様に、振動、照明(フラッシュ)、表示装置を用いて危険を知らせる。設置箇所等としては、公共施設、学校、イベント会場、防災担当者・重役などを挙げることができる。
制御装置22は、防災機器、防災システムなどである。例えば、エレベータ管制装置と連動し、揺れる前の減速・停止、およびビル管理装置との連動(ドアの開錠・施錠・開閉、シャッターの開閉、電源のオンオフ、一般照明・非常照明のオンオフ、非常電源の立ち上げ、ガス・水道弁の開閉)など。IT機器の保護(ストレージの保護回路の起動、ネットワークの保護回路の起動、電源のオンオフ)、交通規制、遊戯施設の減速・停止、非常時の回線の事前確保、海の水門の開閉、公共機関の非常時への切替のトリガー(防災関連機関、消防署)、各種センサーの起動・作動制御、防災無線装置の非常時モードの立ち上げ、都市ガスのガバナの電磁弁の制御、ダム施設の非常時体制の立ち上げなど。
本発明の地震防災システムの即時地震情報伝達装置の基本構成を示すブロック図である。 図1の基本構成に自己学習機能と地震計を付加した構成を示すブロック図である。 本発明のニューラルネットワークを用いた評価手法を示すフローである。 本発明の報知装置と制御装置の具体例を例示したブロック図である。
符号の説明
1……即時地震情報伝達装置
2……演算記憶装置
3……インターフェース部
4……インターフェース部
5……チューナ
6……地震波データ記憶装置
10…衛星アンテナ
11…インターネット・通常の電話回線・携帯電話等
12…地震計
20…表示装置
21…報知装置
22…制御装置
23…LAN
30…緊急地震速報データ処理機能
31…評価用入力データ設定機能
32…ニューラルネットワーク評価機能
33…ニューラルネットワーク設定機能
34…ニューラルネットワーク自己学習機能
35…学習用データ設定機能

Claims (3)

  1. 地震防災の対象地点に設置される地震防災システムであって、
    緊急地震速報からの情報と対象地点特有の情報とを入力パラメータとしたニューラルネットワークを用いて、地震の主要動が到達する前に、対象地点の揺れまたは損傷レベルを推定し、地震防災のための報知あるいは設備機器類の制御を行うことを特徴とする緊急地震速報を用いた地震防災システム。
  2. 請求項1に記載の地震防災システムにおいて、ニューラルネットワークの自己学習機能を有していることを特徴とする緊急地震速報を用いた地震防災システム。
  3. 請求項2に記載の地震防災システムにおいて、対象地点に設置された地震計のデータを学習データとして用いることを特徴とする緊急地震速報を用いた地震防災システム。


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