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JP2003276115A - 積層体およびその製造方法 - Google Patents

積層体およびその製造方法

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Publication number
JP2003276115A
JP2003276115A JP2002086201A JP2002086201A JP2003276115A JP 2003276115 A JP2003276115 A JP 2003276115A JP 2002086201 A JP2002086201 A JP 2002086201A JP 2002086201 A JP2002086201 A JP 2002086201A JP 2003276115 A JP2003276115 A JP 2003276115A
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thin film
film layer
resin thin
vapor deposition
layer
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Application number
JP2002086201A
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Yoshihiro Kishimoto
好弘 岸本
Hiroaki Usui
博明 臼井
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Dai Nippon Printing Co Ltd
Original Assignee
Dai Nippon Printing Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、表面が平滑であることから種々の
用途に用いることが可能であり、また無機酸化物の蒸着
膜と共に用いることにより、ガスバリア性を向上させる
ことができる積層体を提供することを主目的とするもの
である。 【解決手段】 上記目的を達成するために、本発明は、
基材と、上記基材の少なくとも片面に積層された樹脂か
らなる樹脂薄膜層を有し、上記樹脂薄膜層は、平衡蒸気
圧が10−3Torrとなる温度が60℃〜500℃の
範囲内であり、かつその温度において熱分解しないビニ
ル重合性モノマーを重合して形成された樹脂薄膜層であ
ることを特徴とする積層体を提供する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、基材上に樹脂製の
薄膜を形成することにより、その表面を平滑化した積層
体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、食品や非食品及び医薬品等の包装
に用いられる包装材料は、内容物の変質を抑制しそれら
の機能や性質を保持するために、包装材料を透過する酸
素、水蒸気、その他内容物を変質させる気体による影響
を防止する必要があり、これら気体を遮断するガスバリ
ア性を備えることが求められている。
【0003】そのため従来から、温度・湿度などによる
影響が少ないアルミ等の金属からなる金属箔やそれらの
金属蒸着フィルム、ポリビニルアルコールやエチレン−
ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリ
アクリロニトリル等の樹脂フィルムやこれらの樹脂をコ
ーティングしたものがガスバリア層として一般的に包装
材料に用いられてきた。
【0004】ところが、アルミ等の金属からなる金属箔
やそれらの金属蒸着フィルムを用いた包装材料は、ガス
バリア性に優れるが、包装材料を透視して内容物を確認
することができない、使用後の廃棄の際は不燃物として
処理しなければならない、検査の際金属探知器が使用で
きないなどの欠点を有し問題があった。またガスバリア
性樹脂フィルムやそれらをコーティングしたフィルム
は、温湿度依存性が大きく高度なガスバリア性を維持で
きない、さらにポリ塩化ビニリデンやポリアクリロニト
リル等は廃棄・焼却の際に有害物質の原料となりうる可
能性があるなどの問題がある。
【0005】また、電子デバイスの分野においては、電
子デバイス用基板として従来、Siウエハやガラスなど
の無機材料が広く用いられてきた。ところが、近年、製
品の軽量化、基板のフレキシブル化、低コスト化、ハン
ドリング特性などの様々な理由から高分子基板が望まれ
るようになっている。しかしながら、高分子材料は、ガ
ラスなどの無機材料と比較した場合、ガスの透過性が著
しく大きいという問題を有している。
【0006】このため、電子デバイス用基板として高分
子基板を用いた場合には、高分子基板を透過して電子デ
バイス内に侵入・拡散した酸素によりデバイスが酸化し
て劣化してしまうといった問題や、電子デバイス内の必
要な真空度を維持できない、等の問題がある。
【0007】例えば、特開平2−251429号公報や
特開平6−124785号公報では、有機エレクトロル
ミネッセンス素子の基板として高分子フィルムが用いら
れている。しかしながら、これらの有機EL素子の場合
は、基板である高分子フィルムを透過して有機EL素子
内に侵入する酸素や水蒸気により有機膜が劣化してしま
うため、発光特性が不十分となり、また、耐久性に不安
がある、等の問題が考えられる。
【0008】すなわち、上述したように、種々の分野に
おいて十分なガスバリア性を有し、そのガスバリア性に
よりガスバリア対象物の良好な品質を確保することが可
能な、優れたガスバリア性能を備えた高分子フィルムは
確立されていない。
【0009】このような高分子フィルム上に酸化珪素膜
等の無機酸化物の蒸着膜を製膜してガスバリアフィルム
とする場合の問題点の一つとして、高分子フィルム表面
の平滑性の問題がある。一般に高分子フィルム上には微
細な凹凸があり、この上に無機酸化物を真空成膜法によ
り成膜した場合に、この微細な凹凸上に成膜したことに
起因する欠陥が蒸着膜内に発生し、ガスバリア性を低下
させてしまうといった問題が指摘されている。
【0010】また、例えば有機EL素子等においては、
発光層を形成する面に平坦性がない場合に、ブラックス
ポットが発生してしまうといった不都合があり、このよ
うに種々の機能性素子において、表面の平滑性が求めら
れている。特に、可撓性を付与するために、高分子フィ
ルム上に機能性素子を形成する場合等においては、樹脂
製フィルム上の凹凸が問題となり、このような凹凸を平
滑化する手段が求められていた。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記事情に
鑑みてなされたものであり、表面が平滑であることから
種々の用途に用いることが可能であり、また無機酸化物
の蒸着膜と共に用いることにより、ガスバリア性を向上
させることができる積層体を提供することを主目的とす
るものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明は、請求項1に記載するように、基材と、上
記基材の少なくとも片面に積層され、表面平均粗さが4
nm以下である樹脂からなる樹脂薄膜層とを有すること
を特徴とする積層体を提供する。本発明によれば、この
ように表面平均粗さが4nm以下であることから、平滑
性が要求される種々の用途、例えば有機EL素子の基板
等に用いた場合でも、ブラックスポットの発生等の不具
合が生じない。また、このような平滑な面の表面に無機
酸化物を蒸着させることにより、欠損部分の少ない均質
な蒸着層を堆積することができるので、よりガスバリア
性の高いガスバリアフィルムを得ることができる。
【0013】上記請求項1に記載された発明において
は、請求項2に記載するように、上記樹脂薄膜層が、平
衡蒸気圧が10−3Torrとなる温度が60℃〜50
0℃の範囲内であり、かつその温度において熱分解しな
いビニル重合性モノマーを重合して形成された樹脂薄膜
層であることが好ましい。このような化合物を原料とし
て用いることにより、より平滑性の高い樹脂薄膜層とす
ることが可能となるからである。
【0014】本発明はまた、請求項3に記載するよう
に、基材と、上記基材の少なくとも片面に積層された樹
脂からなる樹脂薄膜層を有し、上記樹脂薄膜層は、平衡
蒸気圧が10−3Torrとなる温度が60℃〜500
℃の範囲内であり、かつその温度において熱分解しない
ビニル重合性モノマーを重合して形成された樹脂薄膜層
であることを特徴とする積層体を提供する。本発明によ
れば、このような材料を用いて樹脂薄膜層を形成するも
のであるので、極めて平滑な表面とすることが可能とな
り、これにより種々の機能を有する機能性素子の基板等
に用いることができる。
【0015】上記請求項2または請求項3に記載された
発明においては、請求項4に記載するように、上記樹脂
薄膜層が、真空中で成膜されたものであることが好まし
い。乾式製膜法により形成することにより、より均一で
平滑な樹脂薄膜層を形成することができるからである。
【0016】上記請求項2から請求項4までのいずれか
の請求項に記載された発明においては、請求項5に記載
するように、上記ビニル重合性モノマーが、常温常圧
(23度、1atm)において固体状態であることが好
ましい。樹脂薄膜層を形成するに当り、このようなビニ
ル重合性モノマーが製造工程上好ましいからである。
【0017】上記請求項2から請求項5までのいずれか
の請求項に記載された発明においては、請求項6に記載
するように、上記ビニル重合性モノマーが、炭素数5〜
50のアルキル基もしくはフッ化アルキル基を置換基に
有するものであることが好ましい。このような置換基を
有するビニル重合性モノマーを重合させて得られる樹脂
薄膜層は、表面が撥水性を有するものであるので、表面
に撥水性を必要とする用途や、表面汚染の低減が必要な
用途、例えば無機酸化物の蒸着膜と共に用いることによ
りガスバリア性を向上させる用途等に好適に用いること
ができるからである。
【0018】上記請求項2から請求項5までのいずれか
の請求項に記載の発明においては、請求項7に記載する
ように、上記ビニル重合性モノマーが、(メタ)アクリ
レートモノマーであることが好ましい。(メタ)アクリ
レートモノマーは、置換基の導入が容易であることか
ら、樹脂薄膜層に対して必要な特性、例えば撥水性等を
付与するのに必要な置換基を容易に導入することが可能
となり、樹脂薄膜層の特性の設計を容易に行うことがで
きるからである。
【0019】上記請求項7に記載された発明において
は、請求項8に記載するように、上記(メタ)アクリレ
ートモノマーが、フッ化アルキル(メタ)アクリレートモ
ノマーであることが好ましい。樹脂薄膜層の原料とし
て、このような材料を用いることにより、表面が平滑で
あると共に、種々の特性、例えば撥水性や防汚性等を付
与することが可能となり、種々の用途に応用することが
可能となるからである。
【0020】上記請求項1から請求項8までのいずれか
の請求項に記載された発明においては、請求項9に記載
するように、上記樹脂薄膜層表面における水との接触角
が70°以上(測定温度23℃)であることが好まし
い。撥水性の用途、例えば無機酸化物の蒸着層と共に用
い、ガスバリア性が要求される用途の場合等において
は、この程度の撥水性を有することが好ましいからであ
る。
【0021】上記請求項1から請求項9までのいずれか
の請求項に記載された発明においては、請求項10に記
載するように、上記樹脂薄膜層の膜厚が、5〜2000
nmの範囲内であることが好ましい。上記範囲より膜厚
が薄い場合は、樹脂薄膜層を形成することにより平滑性
を得ることが困難であるからであり、また、平滑性を得
る上では上記上限を超える必要性があまりないからであ
る。
【0022】上記請求項1から請求項10までのいずれ
かの請求項に記載された発明においては、請求項11に
記載するように、上記基材上に無機酸化物からなる蒸着
層が形成され、さらにその上に上記樹脂薄膜層が形成さ
れているものであっても、請求項12に記載するよう
に、上記基材上に上記樹脂薄膜層が形成され、さらにそ
の上に無機酸化物からなる蒸着層が積層されているもの
であってもよい。このように無機酸化物の蒸着膜と共に
用いることにより、樹脂薄膜層が蒸着層の応力を緩和
し、変形による蒸着層の欠陥を抑制するため、可撓性の
高いガスバリア性フィルムが得られることから、よりガ
スバリア性を向上させたガスバリア積層体として用いる
ことができるからである。
【0023】上記請求項11または請求項12に記載さ
れた発明においては、請求項13に記載するように、上
記蒸着層および上記樹脂薄膜層が2層〜10層の範囲内
で積層されていることが好ましい。積層することによ
り、樹脂薄膜層が蒸着層の応力を緩和し、変形による蒸
着層の欠陥を抑制するため、可撓性の高いガスバリア性
フィルムが得られることにより、ガスバリア性が向上す
るからである。
【0024】また、請求項11から請求項13までのい
ずれかの請求項に記載された発明においては、請求項1
4に記載するように、最外層が上記樹脂薄膜層であるこ
とが好ましい。このように最外層を樹脂薄膜層とするこ
とにより、表面の平滑性を向上させることが可能とな
り、表面平滑性およびガスバリア性の両特性を必要とす
る用途、例えば有機EL素子の基板等の用途に好適に用
いることができるからである。
【0025】上記請求項11から請求項14までのいず
れかの請求項に記載された発明においては、請求項15
に記載するように、上記無機酸化物からなる蒸着層が、
酸化珪素もしくは酸化窒化珪素からなる蒸着層であるこ
とが好ましい。これらの蒸着層が、ガスバリア性に優れ
ているからである。
【0026】上記請求項11から請求項14までのいず
れかの請求項に記載された発明においては、請求項16
に記載するように、上記蒸着層の膜厚が、5〜500n
mの範囲内であることが好ましい。上記範囲より膜厚が
薄い場合はガスバリア性に問題が生じる可能性がある場
合があり、一方上記範囲を越えて膜厚を厚くすると蒸着
膜にクラックが入り易くなる等の不具合が生じる可能性
があるからである。
【0027】上記請求項11から請求項15までのいず
れかの請求項に記載された発明においては、請求項17
に記載するように、上記基材が、樹脂製フィルムである
ことが好ましい。例えば、可撓性を有するガスバリア性
フィルム等が各種包装材料や、各種画像表示装置におい
て要求されており、このような場合は基材として樹脂製
フィルムが用いられるからである。
【0028】上記請求項11から請求項17までのいず
れかの請求項に記載された発明においては、請求項18
に記載するように、上記積層体の酸素透過率が1.0c
c/m/day以下であり、水蒸気透過率が、1.0
g/m/day以下であることが好ましい。酸素透過
率および水蒸気透過率を上記の範囲内とすることによ
り、内容物の品質を変化させる原因となる酸素と水蒸気
を殆ど透過させないので、高いガスバリア性が要求され
る用途に好ましく用いることができるからである。
【0029】本発明はまた、請求項19に記載するよう
に、原料として、平衡蒸気圧が10 −3Torrとなる
温度が60℃〜500℃の範囲内であり、かつその温度
において熱分解しないビニル重合性モノマーを用い、こ
れを基材上に真空中で成膜する成膜工程と、上記成膜さ
れたモノマーに対し、活性照射線を照射して重合させ、
樹脂薄膜層を形成する重合工程とを有することを特徴と
する積層体の製造方法を提供する。
【0030】本発明によれば、基材上に極めて平滑な表
面を有する樹脂薄膜層を形成することができるので、例
えばその上に無機酸化物の蒸着膜を積層させることによ
り欠陥の少ない蒸着膜とすることが可能となり、ガスバ
リア性を向上させることができる等の利点を有する積層
体を製造することができる。
【0031】また、本発明においては、請求項20に記
載するように、原料として、平衡蒸気圧が10−3To
rrとなる温度が60℃〜500℃の範囲内であり、か
つその温度において熱分解しないビニル重合性モノマー
を用い、これを基材上に真空中でイオンを援用した蒸着
法を用いて成膜・重合し、樹脂薄膜層を形成する樹脂薄
膜層形成工程を有することを特徴とする積層体の製造方
法を提供する。本発明によれば、イオンを援用した方法
を用いて樹脂薄膜層を形成するものであるので、平滑な
表面を有すると共に、形成された樹脂薄膜層中の樹脂の
重合度が高く、物性の良好な樹脂薄膜層を形成すること
ができる。
【0032】上記請求項20に記載された発明において
は、請求項21に記載するように、さらに形成された樹
脂薄膜層に対し、活性照射線を照射して後処理を行う後
処理工程を有することが好ましい。このような後処理工
程を行うことにより、より樹脂薄膜層中の重合度を向上
させることが可能となり、樹脂薄膜層における樹脂の物
性を向上させることができるからである。
【0033】上記請求項19から請求項21までのいず
れかの請求項に記載された発明においては、請求項22
に記載するように、基材上に上記樹脂薄膜層を形成する
工程を施した後、無機酸化物を真空成膜法により蒸着さ
せる蒸着工程を有するものであっても、請求項23に記
載するように、基材上に無機酸化物を真空成膜法により
蒸着させる蒸着工程を行い、次いで上記樹脂薄膜層を形
成する工程を施すものであってもよい。
【0034】先に樹脂薄膜層を形成した場合は、平滑化
された樹脂薄膜層表面に無機酸化物の蒸着膜を堆積させ
るものであるので、蒸着膜中の欠陥の発生を少なくする
ことが可能となり、その結果ガスバリア性を向上させる
ことができるからであり、先に無機酸化物からなる蒸着
膜を成膜し、その後樹脂薄膜を成膜した場合は、最外層
が極めて平滑な面を有するガスバリア性を有する積層体
とすることができるので、ガスバリア性と表面の平滑性
を要求される、例えば有機EL素子の基板等に好適に用
いることができる積層体を製造することができるからで
ある。また、樹脂薄膜層が蒸着層の応力を緩和し、変形
による蒸着層の欠陥を抑制するため、可撓性の高いガス
バリア性フィルムが得ることが可能となる。
【0035】
【発明の実施の形態】まず、本発明に含まれる積層体に
ついて説明し、その後本発明に含まれる積層体の製造方
法について説明する。
【0036】A.積層体 本発明の積層体は、基材と、上記基材の少なくとも片面
に形成された樹脂からなる特定の樹脂薄膜層とを有する
ものである。以下、このような本発明の積層体につい
て、まず特徴部分である特定の樹脂薄膜層について説明
し、次いで基材およびその他の構成について説明する。
【0037】1.樹脂薄膜層 本発明における樹脂薄膜層は、材料面および形態面にお
いてそれぞれ特徴を有するものである。
【0038】まず材料面においては、上記積層体中の樹
脂薄膜層を形成する原料として、平衡蒸気圧が10−3
Torrとなる温度が60℃〜500℃の範囲内であ
り、かつその温度において熱分解しないビニル重合性モ
ノマーを用いている点を挙げることができる。
【0039】本発明においては、このようなビニル重合
性モノマーを用いて樹脂薄膜層を形成していることか
ら、表面の平滑性に極めて優れた積層体とすることがで
きるのである。以下、このような樹脂薄膜層を第1実施
態様として説明する。
【0040】一方、形態面では、上記樹脂薄膜層の表面
平均粗さが4nm以下である点を挙げることができる。
本発明においては、このように極めて凹凸の少ない表面
であることから、例えばこの樹脂薄膜層表面に無機酸化
物を成膜することにより、ガスバリア性の良好なガスバ
リア膜とすることができる等の種々の利点を有する積層
体とすることができるのである。以下、このような樹脂
薄膜層を第2実施態様として説明する。
【0041】(1)第1実施態様 本実施態様において基材上に形成される樹脂薄膜層は、
平衡蒸気圧が10−3Torrとなる温度が60℃〜5
00℃、好ましくは80℃〜450℃、特に100℃〜
400℃の範囲内であり、かつその温度において熱分解
しないビニル重合性モノマーが重合されて形成されたも
のである。
【0042】本実施態様において、この樹脂薄膜層の製
造方法は特に限定されるものではなく、湿式法を用いて
もよいが、一般的には真空中において、モノマーを徐々
に蒸発させ、これを基材もしくは蒸着層上に堆積・重合
させる方法により製造されることが好ましい。このよう
な製法を用いるためには、上述したような材料を用いる
ことが好ましいのである。具体的には、上記範囲より高
い温度であるモノマーは熱分解しない温度で気化するこ
とが困難である可能性が高く、上記範囲より低い温度で
あるモノマーは、上述した製法において徐々に蒸発させ
ることが困難であり、また蒸発した場合でも基材に堆積
した際に再度蒸発してしまい、定着性が悪い等の問題が
ある。
【0043】このような材料の他の特性としては、上記
ビニル重合性モノマーが常温常圧(23度、1atm)
において固体状態であることが好ましい。これも上述し
たように、真空中での成膜に際して、真空中で加熱する
ことにより徐々に蒸発させて基材上に蒸着させるには、
原材料が常温常圧で固体状態のものを用いることによ
り、その取り扱いが容易となるからである。
【0044】このようなビニル重合性モノマーの分子量
としては、分子量が50以上1000以下、中でも10
0〜800の範囲内であるものが好適に用いられる。こ
のような平均分子量を有するものが、上述したような真
空成膜に際して、取り扱いが容易であるからである。
【0045】本発明に用いられるビニル重合性モノマー
とは、ラジカル重合が可能な炭素・炭素間の二重結合を
有する分子であり、かつ平衡蒸気圧が10−3Torr
となる温度が上述した範囲内のものであれば特に限定さ
れるものではなく、得られる樹脂薄膜層の特性に応じて
種々の材料を選択することができる。
【0046】具体的には例えば表面の撥水性を向上させ
るためには、上記ビニル重合性モノマーが、疎水性基を
有するものであることが好ましく、具体的には炭素数5
〜50、好ましくは炭素数10〜30の範囲内であるア
ルキル基もしくはフッ化アルキル基を置換基に有するも
のが好適に用いられる。
【0047】本実施態様においては、このようにビニル
重合性モノマーに対して種々の置換基、すなわち得られ
る樹脂薄膜層に特性を付与することができる置換基を容
易に付加することができるものであることが好ましい。
また、樹脂薄膜層とした際に重合性が良好であるものが
好ましい。このような観点から、本実施態様において
は、上記ビニル重合性モノマーが(メタ)アクリレートモ
ノマーであることが好ましい。なお、ここで(メタ)ア
クリレートモノマーとは、アクリレートモノマーとメタ
クリレートモノマーとを含む概念である。
【0048】このような本実施態様に用いることができ
る(メタ)アクリレートモノマーとしては、オクタデシル
アクリレート、オクタデシルメタアクリレート、ステア
リルアクリレート、ステアリルメタアクリレート、ヘキ
サデシルアクリレート、ヘキサデシルメタアクリレート
等を挙げることができる。
【0049】また、本実施態様においては、その中でも
フッ化アルキル(メタ)アクリレートモノマーを好適に用
いることができる。これは以下の理由によるものであ
る。
【0050】すなわち、このようなフッ化アルキル(メ
タ)アクリレートを用いることにより、得られる樹脂薄
膜層の表面の撥水性を大幅に向上させることが可能とな
る。したがって、後述するように無機酸化物の蒸着膜と
積層することにより、ガスバリア性を向上させた積層体
を得ることができる。
【0051】また、基材表面にフッ素を含有する平滑な
膜が形成されることから、熱的・化学的に安定な表面を
必要とする素材の表面改質としての保護膜、高撥水性・
耐表面汚染性を必要とする素材の表面改質としての保護
膜、低誘電率・高抵抗率を必要とする高速電子デバイス
の絶縁膜、さらには低屈折率・高透過率を必要とする光
学素子の表面コーティングおよび導波素子のクラッド層
といった用途に適用の可能性の広がる積層体を得ること
ができるからである。
【0052】本発明において用いることができるこのよ
うなフッ化アルキル(メタ)アクリレートとしては、具
体的には、エイコサフルオロウンデシルアクリレート、
エイコサフルオロウンデシルメタアクリレート、ヘキサ
デカフルオロノニルアクリレート、ヘキサデカフルオロ
ノニルメタアクリレート、ヘキサデカフルオロ−9−
(トリフルオロメチル)デシルアクリレート、ヘキサデ
カフルオロ−9−(トリフルオロメチル)デシルメタア
クリレートを用いることが可能であり、特にエイコサフ
ルオロウンデシルアクリレートが好適に用いられる。
【0053】また、本実施態様においては、この樹脂薄
膜層が有する特性として撥水性を有することが好ましい
といえる。この撥水性は、上述したようにガスバリア性
を有する無機酸化物の蒸着膜と併用して、例えば高分子
フィルムを基材として用いた際にガスバリア性を付与し
たい場合等においては、上記蒸着膜の表面にこの撥水性
を有する樹脂薄膜層を形成することにより、ガスバリア
性を大幅に向上させることができるからである。
【0054】また、例えばガラス等の親水性を有する基
板上に撥水性を有する樹脂薄膜層を成膜し、これをパタ
ーン状に除去することにより、濡れ性の異なるパターン
を形成することが可能となり、この濡れ性に沿って種々
の機能性素子形成用の塗工液を塗布する等により、例え
ばカラーフィルタ等の種々の機能性素子を形成すること
が可能となるからである。
【0055】このような撥水性の目安としては、樹脂薄
膜層表面における水との接触角が、70°以上、特に8
0°〜130°の範囲内(測定温度23℃)であること
が好ましい。上述したような用途に用いるためにはこの
程度の撥水性を有することが好ましいからである。
【0056】ここで、この水との接触角の測定方法は、
協和界面化学社の接触角測定装置(型番CA−Z)を用
いて求めた値である。すなわち、被測定対象物の表面上
に、純水を一滴(一定量)滴下させ、一定時間経過後、
顕微鏡やCCDカメラを用い水滴形状を観察し、物理的
に接触角を求める方法を用い、この方法により測定され
た水との接触角を本発明における水との接触角とするこ
ととする。
【0057】本発明においては、このような基材上に形
成された樹脂薄膜層の膜厚は、用いられる用途や、基材
の種類、樹脂薄膜層形成に際して用いたモノマーの種
類、樹脂薄膜層の形成方法等により大幅に異なるもので
はあるが、一般的には5〜2000nmの範囲内であ
り、特に10nm〜1000nmの範囲内とすることが
好ましい。上記範囲より膜厚が薄い場合は、樹脂薄膜層
を形成することにより平滑性を得ることが困難である可
能性が生じるからであり、また、平滑性を得る上では上
記上限を超える必要性があまりなく、材料コスト面、生
産効率面の問題が生じる可能性があるからである。
【0058】また、このような樹脂薄膜層を形成する方
法は、特に限定されるものではなく、例えば湿式法を用
いて形成されたものであってもよい。しかしながら、ス
プレー法やスピンコ−ト法等の湿式法では、分子レベル
(nmレベル)の平滑性を得ることが難しく、また溶剤
を使用するため、電子デバイス用途には不向きである等
の欠点がある。本発明においては、均一な膜で、かつ表
面の平滑性を比較的容易に得ることができるといった観
点から、真空中で成膜されたものであることが好まし
い。そして、本発明においては、特に上述したようなビ
ニル重合性モノマーを用いることが可能な真空中で徐々
にビニル重合性モノマーを蒸発させて基材上に蒸着させ
る方法が好ましく、例えば特許第2996516号等に
おいて用いられているフラッシュ蒸着法を除いた真空中
での蒸着法が好ましく用いられる。これは、フラッシュ
蒸着法の場合、原料が液体であるため、形成された膜を
硬化する後処理が必要である点、さらに充分に処理が施
されない場合は、液状のモノマーが存在し、充分な平滑
性は得ることができない点、またその場合モノマーの蒸
気圧が高く、それ自身が電子デバイス特性を劣化してし
まう点等の問題点があるからである。
【0059】(2)第2実施態様 本発明に用いられる樹脂薄膜層の第2実施態様は、表面
平均粗さが4nm以下、中でも3nm以下である樹脂か
らなる樹脂薄膜層である。本実施態様の樹脂薄膜層はそ
の表面がこのような従来にない極めて平滑な面であるこ
とから、例えばこの樹脂薄膜層表面に無機酸化物を成膜
することにより、ガスバリア性の良好なガスバリア膜と
することができ、また平滑性が必要とされる記録媒体の
基材としての用途等の種々の用途に用いることができ
る。
【0060】本実施態様における表面平均粗さの値とし
ては、セイコーインスツルメント製原子間力顕微鏡(S
TM)を用い、100μMスキャン範囲、135sec
/flameの条件により決定された値を用いることと
する。
【0061】このような樹脂からなる樹脂薄膜層は、特
に限定されるものではないが、上記第1実施態様におい
て説明した材料を用いることができる。なお、本実施態
様の樹脂薄膜層の好適な材料、特性、膜厚等に関して
は、上記第1実施態様と同様であるので、ここでの説明
は省略する。
【0062】2.基材 本発明に用いられる基材としては、樹脂等の有機物であ
っても、ガラス等の無機物であってもよく、また用いる
用途に応じて透明なものであっても不透明なものであっ
てもよい。しかしながら、例えば包装材、さらには有機
EL素子等の画像表示装置の基板などの用途面を考慮す
ると、基材はプラスチック材料であり、かつ透明なフィ
ルムであることが好ましい。
【0063】このような樹脂製のフィルム基材の例とし
ては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエ
チレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリ
エチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンフィル
ム、ポリスチレンフィルム、ポリエ−テルサルホンフィ
ルム、ポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、
ポリカーボネートフィルム、ポリアクリルニトリルフィ
ルム、ポリイミドフィルム等が挙げられる。
【0064】基材は、延伸、未延伸のどちらでも良く、
また機械的強度や寸法安定性を有するものが良い。この
中で、二軸方向に任意に延伸されたポリエチレンテレフ
タレートが包装用途において好ましく用いられる。また
ポリエ−テルサルホンフィルムが耐溶剤性が良く、ポリ
カーボネートフィルムが耐熱性が良く、電子デバイス用
途において好ましく用いられる。この基材の樹脂薄膜層
が設けられる面もしくは反対側の表面に、周知の種々の
添加剤や安定剤、例えば帯電防止剤、紫外線防止剤、可
塑剤、滑剤などを塗布した薄膜を形成していても良い。
【0065】さらに、樹脂薄膜層、もしくは後述する無
機酸化物の蒸着膜との密着性を良くするために、基材の
表面を前処理としてコロナ処理、低温プラズマ処理、イ
オンボンバード処理、薬品処理、溶剤処理などを施して
も良い。
【0066】基材の厚さは、包装用途の場合とくに制限
を受けるものではなく、包装材料としての適性を考慮し
て、単体フィルム以外に異なる性質のフィルムを積層し
たフィルムを使用できる。しかしながら、樹脂薄膜層や
後述する無機酸化物からなる蒸着層を形成する場合の加
工性を考慮すると、実用的には3〜400μmの範囲が
好ましく、特に6〜30μmとすることが好ましい。
【0067】電子デバイス用途の場合、現在の状況下に
おいてはガラス基板の代替ということもあり、ガラス基
板仕様で作製された後工程機器に合わせるため、比較的
厚い100〜800μmの範囲、特に100〜400μ
mの範囲が好ましいが、技術の進歩とともに、基板の軽
量化フレキシブル化、低コスト化が期待される3〜10
0μmも範囲になると考えられる。
【0068】また、量産性を考慮すれば、連続的に上記
各層を形成できるように長尺の連続フィルムとすること
が望ましい。
【0069】3.無機酸化物からなる蒸着層 本発明においては、上述した基材上に上記樹脂薄膜層の
他に無機酸化物からなる蒸着膜を形成してもよい。この
ように無機酸化物からなる蒸着膜を形成して上記樹脂薄
膜層と積層することにより、高いガスバリア性を有する
積層体とすることができるからである。
【0070】本発明においては、基材上に樹脂薄膜層を
形成し、その表面に無機酸化物からなる蒸着層を形成す
るようにしてもよく、また基材上に無機酸化物からなる
蒸着層を形成し、その上に樹脂薄膜層を形成するように
してもよい。
【0071】基材上に先に樹脂薄膜層を形成する場合
は、無機酸化物からなる蒸着層が極めて平滑な面を有す
る樹脂薄膜層上に形成されることから、蒸着層に下地の
凹凸に起因する欠陥が生じることがないため、極めて良
好なガスバリア性が得られるという利点を有する。
【0072】一方、無機酸化物からなる蒸着層上に樹脂
薄膜層を形成する場合は、表面を平滑化することが可能
となるため、この上に何らかの機能層、例えば有機EL
素子における発光層等を形成する場合でも、ダークスポ
ットが生じるといったような不具合が生じる可能性を低
減することができる。
【0073】本発明においては、この樹脂薄膜層と無機
酸化物からなる蒸着層とを繰り返し積層することが好ま
しい。具体的にはガスバリア性の観点から上記蒸着層が
少なくとも2回積層されることが好ましいことから2層
〜10層の範囲内、特に2層〜6層の範囲内で積層する
ことが好ましい。上記範囲より少ない場合は、蒸着層の
ガスバリア性能にもよるが、十分なガスバリア性が得ら
れない可能性があることから好ましくなく、上記範囲を
超えて積層しても、ガスバリア性が改良されるものでは
なく、むしろ全体的な膜厚の増加に伴うデメリット、例
えばクラックの発生等が生じる可能性があることから好
ましくない。
【0074】本発明においては、基材上に平滑性を付与
する目的で、まず基材上に樹脂薄膜層を形成し、次いで
無機酸化物からなる蒸着層と樹脂薄膜層とをこの順で複
数回積層した後、最表面を樹脂薄膜層とするような積層
体が好ましい。基材上に樹脂薄膜層を形成することによ
り無機酸化物からなる蒸着膜を平滑な面上に形成するこ
とが可能となり、ガスバリア性が向上し、さらに最表面
に樹脂薄膜層を形成することにより、積層体表面を平滑
化することが可能となり、有機EL素子の基板等に用い
る場合に好ましいからである。
【0075】本発明においては、このように無機酸化物
の蒸着層と共に樹脂薄膜層を形成する場合は、樹脂薄膜
層が撥水性を有する層であることが好ましい。このよう
に無機酸化物層の表面に撥水性を有する層を形成するこ
とにより、よりガスバリア性を向上させることができる
からである。
【0076】このような無機酸化物からなる蒸着層は、
透明性を有しかつ酸素、水蒸気等のガスバリア性を有す
るものであれば特に限定されるものではない。具体的に
は、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化窒化珪素、ある
いはそれらの混合物などを挙げることができる。本発明
においては、中でも高いガスバリア性を有する点から、
酸化珪素もしくは酸化窒化珪素を用いることが好まし
い。
【0077】このような無機酸化物からなる蒸着層の膜
厚は、用いられる無機化合物の種類・構成により最適条
件が異なるが、一般的には5〜500nmの範囲内が望
ましく、中でも10〜200nmの範囲内であることが
好ましい。膜厚が上記範囲より薄い場合は均一な膜が得
られない可能性があり、またガスバリア材としての機能
を十分に果たすことができない場合があることから好ま
しくない。また膜厚が上記範囲を越える場合は薄膜にフ
レキシビリティを保持させることができない可能性があ
り、成膜後に折り曲げ、引っ張りなどの外的要因によ
り、薄膜に亀裂を生じるおそれがあることから好ましく
ない。
【0078】本発明においては、このように基材上に樹
脂薄膜層と無機酸化物からなる蒸着層を形成した場合に
おいては、このような積層体の酸素透過率が、1cc/
/day以下であり、特に好ましくは0.5cc/
/day以下であり、水蒸気透過率が、1g/m
/day以下であり、特に好ましくは0.5g/m
day以下であることが好ましい。酸素透過率および水
蒸気透過率を上記の範囲内とすることにより、内容物の
品質を変化させる原因となる酸素と水蒸気を殆ど透過さ
せないので、高いガスバリア性が要求される用途に好ま
しく用いることができるからである。なお、上記値は、
基材として樹脂、特にプラスチック製フィルムを用いた
場合の値である。
【0079】B.積層体の製造方法 次に、本発明に含まれる積層体の製造方法について説明
する。この積層体の製造方法は、イオンを援用した蒸着
法を用いるか否かにより大きく二つの態様に分けること
ができる。以下、イオンを援用した蒸着法を用いない場
合(第3実施態様)について先に説明し、次いでイオン
を援用した蒸着法を用いる場合(第4実施態様)につい
て説明する。
【0080】1.第3実施態様 本実施態様は、原料として、平衡蒸気圧が10−3To
rrとなる温度が60℃〜500℃の範囲内であり、か
つその温度において熱分解しないビニル重合性モノマー
を用い、これを基材上に真空中で成膜する成膜工程と、
上記成膜されたモノマーに対し、活性照射線を照射して
重合させ、樹脂薄膜層を形成する重合工程とを有するこ
とを特徴とする積層体の製造方法である。
【0081】ここで、ビニル重合性モノマーに関して
は、上記「A.積層体」の欄で説明したものと同様であ
るので、ここでの説明は省略する。
【0082】まず、上記成膜工程においては、このよう
なビニル重合性モノマーを、高真空中で加熱気化させ、
基材上に堆積・成膜させる工程である。次いで、基材上
に成膜されたビニル重合性モノマーに対し、活性照射線
を照射して重合させて樹脂薄膜層を形成する重合工程が
行われる。ここで用いられる活性照射線とは、ビニル重
合性モノマーを重合させることができるものであれば特
に限定されるものではないが、通常は電子線、紫外線、
ガンマ線等が好適に用いられる。
【0083】本発明においては、このような基材上に樹
脂薄膜層を形成する工程を行う前、もしくは行った後
に、無機酸化物からなる蒸着層を形成する蒸着工程が行
われてもよい。この蒸着工程は、通常行われている種々
の真空蒸着法により形成することができるが、基材が樹
脂である等の熱的なダメージを受けやすい基材が用いら
れている場合は、スパッタリング法やイオンプレーティ
ング法、プラズマ気相成長法(CVD)などの基材に熱
的なダメージを与えない真空成膜法を選択することが好
ましい。このような蒸着工程を行うことにより、ガスバ
リア性を有する積層体を得ることができる。
【0084】なお、上記無機酸化物の種類や蒸着膜の膜
厚等の事項、さらに得られるガスバリア性を有する積層
体に関する事項については、上記「A.積層体」で説明
した内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0085】2.第4実施態様 本実施態様は、原料として、平衡蒸気圧が10−3To
rrとなる温度が60℃〜500℃の範囲内であり、か
つその温度において熱分解しないビニル重合性モノマー
を用い、これを基材上に真空中でイオンを援用した蒸着
法を用いて成膜・重合し、樹脂薄膜層を形成する樹脂薄
膜層形成工程を有することを特徴とする積層体の製造方
法である。
【0086】ここで、ビニル重合性モノマーに関して
は、上記「A.積層体」の欄で説明したものと同様であ
るので、ここでの説明は省略する。
【0087】本実施態様の特徴は、このビニル重合性モ
ノマーを、真空中でイオンを援用した蒸着法を用いて基
材上に成膜・重合する点にある。ここで、本発明に用い
られるイオンを援用した蒸着法とは、成膜等に、電子あ
るいはプラズマを用いて、成膜材料の一部をイオン化し
て蒸着する手法であり、その代表例としては、イオン化
蒸着法、イオンプレーティング法、イオンアシスト蒸着
法、プラズマ重合法、プラズマCVD法等がある。具体
的には、イオン化装置として、蒸着材料の通過領域を取
り囲むグリッド状陽極と、その外側に配置したタングス
テンフィラメント状陰極からなる熱電子発生装置を用
い、タングステンフィラメントに通電加熱して熱電子を
発生させ、陽極に電子引出電圧を印加して、この熱電子
を蒸発材料に照射することによって、イオン化する方法
である。
【0088】このようなイオンを援用した蒸着法を用い
ることにより、基材とその上に成膜された樹脂薄膜層と
の密着性が向上し、かつビニル重合性モノマーの重合が
促進されたより平滑性の高い樹脂薄膜層を得ることがで
きる。
【0089】上記イオンを援用した蒸着法において、電
子の加速電圧は30〜300Vが好ましい範囲であると
いえる。また、電流は、蒸着面積1cmにつき、0.
01〜10mAが好ましい範囲である。加速電圧および
電流共に、上述した範囲より低い場合は、重合化の進行
が鈍る可能性があることから好ましくなく、上述した範
囲を超えると、炭化が進む可能性や、分解して複雑な構
造になるおそれがあることから好ましくない。
【0090】本実施態様においては、このようにイオン
を援用した蒸着法により樹脂薄膜層を形成する樹脂薄膜
層形成工程の後、さらに活性照射線を照射する後処理工
程を行ってもよい。このような後処理工程を行うことに
より、ビニル重合性モノマーの重合をより完全なものと
することが可能となるからである。なお、ここで用いる
活性照射線は、第3実施態様で説明したものと同様であ
るので、ここでの説明は省略する。
【0091】また、本実施態様においても、上記第3実
施態様と同様に無機酸化物からなる蒸着膜を真空成膜法
により成膜する工程を、上記樹脂薄膜層形成工程の前、
もしくは後に行うようにしてもよい。この点に関して
は、上記第3実施態様と同様であるので、ここでの説明
は省略する。
【0092】なお、本発明は、上記実施形態に限定され
るものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明
の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同
一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いか
なるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0093】
【実施例】以下、本発明の積層体について、実施例を挙
げて具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に
限定されるものではない。
【0094】[実施例1]基材として、厚さ100μm
の2軸延伸ポリエチレンナフタレート(PEN)フィル
ムを準備した。チャンバー内の真空度を4.0×10
−3Paに減圧した。電極に90kHzの周波数を有す
る電力(投入電力300W)を印加した。ヘキサメチル
ジシロキサン(HMDSO)、酸素ガス、ヘリウムガス
をそれぞれ所定量導入した。その際の真空度を30Pa
に制御して、プラズマ気相成長法(CVD法)により酸
化珪素の薄膜を100nm形成した。
【0095】次いで、図1に示すイオンを援用した真空
蒸着装置の真空度を2×10−3Paに減圧した。その
後ステンレススチール製のるつぼ1を100℃に加熱
し、蒸発材料であるアクリレ−ト化合物2を蒸発させ
た。その際、3Aの電流をタングステンフィラメント3
に流し、アノード4に50Vの電子引出電圧を加え、1
0mAの熱電子を真空チャンバー内で発生させた。それ
により厚さ200nmの樹脂薄膜層5を、基材6上に形
成し、本発明の積層体を得た。
【0096】下記の評価方法により評価した結果を表1
にまとめる。
【0097】(酸化珪素膜形成条件) 導入ガス比: ヘキサメチルジシロキサン:酸素ガス:ヘリウム=1
0:30:30(sccm) (アクリレ−ト膜形成条件) アクリレ−ト化合物:n−オクタデシルアクリレ−ト 蒸発温度:100℃ 成膜速度:20nm/分 イオン化フィラメント電流:3A 電子放出電流:10mA 電子引出電圧:50V イオン化アノ−ド電位:50V 基板電位:0V [比較例1]実施例1において、樹脂薄膜層を設けなか
った以外は同様にして、積層体を得た。下記の評価方法
により評価した結果を表1にまとめる。
【0098】
【表1】
【0099】(評価方法) ・酸素透過度:酸素ガス透過率測定装置(MOCON社製:
OX−TRAN2/20)を用い、23℃90%Rhの
条件で測定した。 ・水蒸気透過度:水蒸気透過率測定装置(MOCON社製:
PERMATRAN3/31)を用い、37.8℃10
0%Rhの条件で測定した。 ・表面平滑性:原子間力顕微鏡(セイコ−インストゥル
メンツ製ナノピクス)を用い、100μMスキャン範囲
・135sec/flameの条件で測定し、平均粗さ
Ra、最大高低差Rmax、平均自乗粗さRmsを求め
た。 ・表面濡れ性:接触角計測器を用い、水に対する接触角
を求めた。 ・有機膜確認:赤外分光分析装置(日本分光製FT−6
10)を用い、備付のATR(全反射)測定装置を取り
付け薄膜表面の赤外吸収スペクトルを測定した。
【0100】[実施例2]蒸着材料として、1H,1H,1H-E
icosafluoroundecyl acrylateを用い、100℃の温度で蒸
発させた。基板材料として、アルミニウムを蒸着したガ
ラス基板を用い、基板温度を−20℃に保った。
【0101】エネルギー50eV、電流量5mAの電子
を照射しつつ蒸着を行うと、毎分0.45nmの速度で
薄膜が成長した。この膜の赤外吸収スペクトルをモノマ
ーのものと比較すると、1416cm−1のビニル基の
伸縮振動のピークが高周波側にシフトした。これは、モ
ノマー材料の基本分子構造を保ったビニルポリマーが得
られたことを示すものである。
【0102】このようにして得られた樹脂薄膜層表面の
水との接触角は、87°であった。
【0103】[実施例3]電子電流を30mAにした以
外は、上記実施例2と同様にして基材上に樹脂薄膜層を
形成した。成膜速度1.1nm/minでフッ素系高分
子薄膜を得ることができた。
【0104】
【発明の効果】本発明によれば、特定のビニル重合性モ
ノマーを用いて樹脂薄膜層を形成するものであるので、
極めて平滑な表面とすることが可能となり、これにより
種々の機能を有する機能性素子の基板等に用いることが
できるという効果を奏する。
【0105】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明におけるイオンを援用した蒸着法の一例
を示す概略図である。
【符号の説明】
1…るつぼ 2…蒸発材料 3…タングステンフィラメント 4…アノード 5…樹脂薄膜層 6…基材
フロントページの続き Fターム(参考) 4F100 AA01D AA01E AA20D AA20E AK01A AK01B AK01C AK21B AK21C AK25B AK25C AK42 AT00A BA02 BA03 BA04 BA05 BA06 BA07 BA08 BA10B BA10C BA10D BA10E BA13 DD07B DD07C EH66 EH662 EJ24 EJ242 EJ52 EJ522 GB23 GB66 JD03 JM02B JM02C JM02D JM02E YY00B YY00C

Claims (23)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基材と、前記基材の少なくとも片面に積
    層され、表面平均粗さが4nm以下である樹脂からなる
    樹脂薄膜層とを有することを特徴とする積層体。
  2. 【請求項2】 前記樹脂薄膜層は、平衡蒸気圧が10
    −3Torrとなる温度が60℃〜500℃の範囲内で
    あり、かつその温度において熱分解しないビニル重合性
    モノマーを重合して形成された樹脂薄膜層であることを
    特徴とする請求項1に記載の積層体。
  3. 【請求項3】 基材と、前記基材の少なくとも片面に積
    層された樹脂からなる樹脂薄膜層を有し、 前記樹脂薄膜層は、平衡蒸気圧が10−3Torrとな
    る温度が60℃〜500℃の範囲内であり、かつその温
    度において熱分解しないビニル重合性モノマーを重合し
    て形成された樹脂薄膜層であることを特徴とする積層
    体。
  4. 【請求項4】 前記樹脂薄膜層が、真空中で成膜された
    ものであることを特徴とする請求項2または請求項3に
    記載の積層体。
  5. 【請求項5】 前記ビニル重合性モノマーが、常温常圧
    (23度、1atm)において固体状態であることを特
    徴とする請求項2から請求項4までのいずれかの請求項
    に記載の積層体。
  6. 【請求項6】 前記ビニル重合性モノマーが、炭素数5
    〜50のアルキル基もしくはフッ化アルキル基を置換基
    に有することを特徴とする請求項2から請求項5までの
    いずれかの請求項に記載の積層体。
  7. 【請求項7】 前記ビニル重合性モノマーが、(メタ)
    アクリレートモノマーであることを特徴とする請求項2
    から請求項6までのいずれかの請求項に記載の積層体。
  8. 【請求項8】 前記(メタ)アクリレートモノマーが、
    フッ化アルキル(メタ)アクリレートモノマーであること
    を特徴とする請求項7に記載の積層体。
  9. 【請求項9】 前記樹脂薄膜層表面における水との接触
    角が70°以上(測定温度23℃)であることを特徴と
    する請求項1から請求項8までのいずれかの請求項に記
    載の積層体。
  10. 【請求項10】 前記樹脂薄膜層の膜厚が、5〜200
    0nmの範囲内であることを特徴とする請求項1から請
    求項9までのいずれかの請求項に記載の積層体。
  11. 【請求項11】 前記基材上に無機酸化物からなる蒸着
    層が形成され、さらに前記樹脂薄膜層が形成されている
    ことを特徴とする請求項1から請求項10までのいずれ
    かの請求項に記載の積層体。
  12. 【請求項12】 前記基材上に前記樹脂薄膜層が形成さ
    れ、さらに無機酸化物からなる蒸着層が積層されている
    ことを特徴とする請求項1から請求項10までのいずれ
    かの請求項に記載の積層体。
  13. 【請求項13】 前記蒸着層および前記樹脂薄膜層が2
    層〜10層の範囲内で積層されていることを特徴とする
    請求項11または請求項12に記載の積層体。
  14. 【請求項14】 最外層が前記樹脂薄膜層であることを
    特徴とする請求項11から請求項13までのいずれかの
    請求項に記載の積層体。
  15. 【請求項15】 前記無機酸化物からなる蒸着層が、酸
    化珪素もしくは酸化窒化珪素からなる蒸着層であること
    を特徴とする請求項11から請求項14までのいずれか
    の請求項に記載の積層体。
  16. 【請求項16】 前記蒸着層の膜厚が、5〜500nm
    の範囲内であることを特徴とする請求項11から請求項
    15までのいずれかの請求項に記載の積層体。
  17. 【請求項17】 前記基材が、樹脂製フィルムであるこ
    とを特徴とする請求項11から請求項16までのいずれ
    かの請求項に記載の積層体。
  18. 【請求項18】 前記積層体の酸素透過率が1.0cc
    /m/day以下であり、水蒸気透過率が、1.0g
    /m/day以下であることを特徴とする請求項11
    から請求項17までのいずれかの請求項に記載の積層
    体。
  19. 【請求項19】 原料として、平衡蒸気圧が10−3
    orrとなる温度が60℃〜500℃の範囲内であり、
    かつその温度において熱分解しないビニル重合性モノマ
    ーを用い、これを基材上に真空中で成膜する成膜工程
    と、 前記成膜されたモノマーに対し、活性照射線を照射して
    重合させ、樹脂薄膜層を形成する重合工程とを有するこ
    とを特徴とする積層体の製造方法。
  20. 【請求項20】 原料として、平衡蒸気圧が10−3
    orrとなる温度が60℃〜500℃の範囲内であり、
    かつその温度において熱分解しないビニル重合性モノマ
    ーを用い、これを基材上に真空中でイオンを援用した蒸
    着法を用いて成膜・重合し、樹脂薄膜層を形成する樹脂
    薄膜層形成工程を有することを特徴とする積層体の製造
    方法。
  21. 【請求項21】 さらに形成された樹脂薄膜層に対し、
    活性照射線を照射して後処理を行う後処理工程を有する
    ことを特徴とする請求項20に記載の積層体の製造方
    法。
  22. 【請求項22】 基材上に前記樹脂薄膜層を形成する工
    程を施した後、無機酸化物を真空成膜法により蒸着させ
    る蒸着工程を有することを特徴とする請求項19から請
    求項21までのいずれかの請求項に記載の積層体の製造
    方法。
  23. 【請求項23】 基材上に無機酸化物を真空成膜法によ
    り蒸着させる蒸着工程を行い、次いで前記樹脂薄膜層を
    形成する工程を施すことを特徴とする請求項19から請
    求項21までのいずれかの請求項に記載の積層体の製造
    方法。
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