JP4291682B2 - バリアフィルムの製造方法 - Google Patents
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Description
しかし、これらのバリアフィルムにおいては、酸素、水蒸気に対するバリア性が十分でなく、特に高温での殺菌処理においてバリア性の著しい低下が生じるという問題があった。さらに、ポリ塩化ビニリデンのコーティング層を設けたバリアフィルムは、焼却時に有毒なダイオキシンを発生し、環境への悪影響が懸念されている。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、極めて高いガスバリア性を有し、透明性が高く、柔軟性、耐候性にも優れ、かつ、種々の後加工適性に必要な耐熱性、耐薬品性を有するバリアフィルムをより高い生産性で製造可能な製造方法を提供することを目的とする。
本発明の他の態様として、前記有機珪素化合物はヘキサメチルジシロキサン、テトラメチルジシロキサン、テトラメチルシラン、および、ヘキサメチルジシラザンのいずれかであるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記イオンプレーティング法は、ホローカソード型イオンプレーティング法であるような構成とした。
本発明の他の態様として、予め樹脂層を前記基材フィルムに設け、該樹脂層上に前記バリア層を形成するような構成とした。
本発明の他の態様として、前記基材フィルム上に前記バリア層を形成し、該バリア層上に平滑性を有する樹脂層および/またはゾルゲル層を形成するような構成とした。
本発明のバリアフィルムの製造方法は、酸化珪素または窒化珪素を成膜材料とし、分子内に炭素−珪素結合をもつ有機珪素化合物ガスと窒素ガスの存在下でイオンプレーティング法により窒化酸化炭化珪素膜を基材フィルム上に形成してバリア層とするものである。イオンプレーティング法としては、ホローカソード型イオンプレーティング法、ホローアノード型イオンプレーティング法等を使用することができる。また、本発明では、成膜時の有機珪素化合物ガスと窒素ガスの供給を、有機珪素化合物ガスの供給量A(sccm)と窒素ガスの供給量B(sccm)の間にA>B/(有機珪素化合物ガス1分子あたりに含まれるSi−CH3結合数)>1の関係が成立するように設定する。
有機珪素化合物ガスの供給量Aが上記の関係から外れて少ない場合、プラズマ放電圧の低下が生じ易く、必要なプラズマ放電が維持できず、成膜される窒化酸化珪素膜の緻密性低下が見られる。また、有機珪素化合物ガスの供給量Aが上記の関係から外れて多い場合、成膜圧力が高くなり膜質悪化が生じ、形成される膜のガスバリア性が悪くなるか、または、成膜圧力が維持できたとしても、成膜ガスの排気能力を大幅に増強した装置が必要となり、装置コストが上昇することになる。
尚、本発明により成膜される窒化酸化炭化珪素膜は、元素数比がSi:O:N:C=100:80〜150:30〜80:30〜150の範囲にあることが好ましい。上記の元素数比は光電子分光(ESCA)法により測定することができる。
また、図2はバリアフィルムの他の例を示す概略断面図である。図2において、バリアフィルム11は基材フィルム12と、この基材フィルム12の一方の面に樹脂層14を介して形成されたバリア層13とを備えている。尚、本発明のバリアフィルム11は、基材フィルム12の両面に樹脂層14とバリア層13を積層するものでもよい。また、樹脂層14とバリア層13との積層を2回以上繰り返して形成してもよい。
上記のバリアフィルム11を構成する樹脂層14は、基材フィルム12とバリア層13との密着性を向上させ、かつ、バリア性も向上させるためのものである。また、バリア層23を被覆する樹脂層24は、保護膜として機能して耐熱性、耐薬品性、耐候性をバリアフィルム21に付与するとともに、バリア層23に欠損部位があっても、それを埋めることによりバリア性を向上させるためのものである。
さらに、本発明では、樹脂層24を平滑性を有する樹脂層とし、この樹脂層上に平滑性を有するゾルゲル層を設けてもよく、あるいは、バリア層23上に平滑性を有するゾルゲル層を介して平滑性を有する樹脂層24を設けてもよく、あるいは、バリア層23上に平滑性を有するゾルゲル層のみを設けてもよい。
このような樹脂層は、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂等の樹脂材料中から、基材フィルムにコーティング後、加熱、紫外線照射、電子線照射等により硬化処理を施して硬化させたときに、透明で平坦な面が得られる樹脂材料を使用して形成することができる。
このような樹脂層やゾルゲル層が設けられたバリアフィルムは、その表面平均粗さRaが6nm以下、好ましくは0.1〜2nm、最大高低差P−Vが60nm以下、好ましくは0.1〜10nmであることが望ましい。バリアフィルムがこのような平滑性を有することにより、突起部でのガス透過がなく、ガスバリア性が著しく向上する。また、表面に突起部がなく平滑なため、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等、種々の用途に展開することが可能となる。
(バリアフィルムの作製)
基材フィルムとして幅30cmの巻取り状の2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績(株)製 PETフィルムA4100、厚み100μm、)を準備し、この基材フィルムの易接着面と反対側の面を被成膜面として、図4に示すような圧力勾配型プラズマガンを備えた巻取り式のホローカソード型イオンプレーティング装置31のチャンバー32内に装着した。このイオンプレーティング装置31は、真空チャンバー32と、この真空チャンバー32内に配設された基材フィルムの供給ロール33a、巻き取りロール33b、コーティングドラム34、バルブを介して真空チャンバー32に接続された真空排気ポンプ35と、仕切り板39,39で真空チャンバー32と仕切られた成膜チャンバー36、この成膜チャンバー36内の下部に配設された坩堝37、アノード磁石38、成膜チャンバー36の所定位置(図示例では成膜チャンバーの右側壁)に配設された圧力勾配型プラズマガン40、収束用コイル41、シート化磁石42、圧力勾配型プラズマガン40へのアルゴンガスの供給量を調整するためのバルブ43、成膜チャンバー36にバルブを介して接続された真空排気ポンプ44、窒素ガスの供給量を調整するためのバルブ45、酸素ガスの供給量を調整するためのバルブ46、および、モノマー流量計48と気化器49を介して成膜チャンバー36に接続された有機珪素化合物供給源47とを備えている。
次に、成膜時の添加ガスとして酸素ガス(大陽東洋酸素(株)製(純度99.9995%以上))、窒素ガス(大陽東洋酸素(株)製(純度99.9999%以上))、および、アルゴンガス(大陽東洋酸素(株)製(純度99.9999%以上))を準備した。さらに、分子内に炭素−珪素結合をもつ有機珪素化合物原料として、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)(東レ・ダウ・コーニングシリコーン(株)製SH200 0.65cSt)を準備した。
窒化酸化珪素膜の成分測定
ESCA(英国 VG Scientific社製 ESCA LAB220i−
XL)により測定した。X線源としては、Ag−3d−5/2ピーク強度が300
Kcps〜1McpsとなるモノクロAlX線源、および、直径約1mmのスリッ
トを使用した。測定は、測定に供した試料面の法線上に検出器をセットした状態で
行い、適正な帯電補正を行った。測定後の解析は、上述のESCA装置に付属され
たソフトウエアEclipseバージョン2.1を使用し、Si:2p、C:1s、
O:1s、N:1sのバインディングエネルギーに相当するピークを用いて行った。
このとき、各ピークに対して、シャーリーのバックグラウンド除去を行い、ピーク
面積に各元素の感度係数補正(C=1に対して、Si=0.817、O=2.930、
N=1.800)を行い、原子数比を求めた。得られた原子数比について、Si原
子数を100とし、他の成分であるOとNとCの原子数を算出して成分割合とした。
膜密度の測定
X線反射率測定装置(理学電機(株)製ATX−E)を用いて以下のように測定し
た。すなわち、X線源として18kWのX線発生装置、CuターゲットによるCu
Kaの波長λ=1.5405Åを使用し、モノクロメーターには、放物面人工多層
膜ミラーとGe(220)モノクロ結晶を使用した。また、設定条件として、スキ
ャン速度:0.1000°/分、サンプリング幅:0.002°、走査範囲:0〜
4.0000°に設定した。そして、基板ホルダーにサンプルをマグネットにより
装着し、装置の自動アライメント機能により0°位置調整を行った。その後、上記
設定条件により反射率を測定した。得られた反射率測定値について、上述のX線反
射率測定装置に付属の解析ソフト(RGXR)を使用して、フィッティングエリア
:0.4°〜4.0°の条件で解析を行った。その際、フィッティング初期値とし
て、薄膜の元素比(Si:N=3:4)を入力した。反射率を非線形最小二乗法に
よりフィッティングし、膜密度を算出した。
柔軟性の測定
バリアフィルムの柔軟性測定は、サンプルを100mm幅、120mm長で用意し、
サンプルの長さ方向で距離が100mmとなる2点を支持点として長さ方向に105
mmとなるまで引張り、この状態を10秒間保持した後、引張り負荷を解除した。
その後、このサンプルのバリア性を後述の条件で測定し、初期状態のバリア性と比
較した。引張り負荷をかける前のバリア性がほぼ維持されたサンプルは柔軟性があ
ると判断し、○表示で示した。
上述のように作製したバリアフィルム(実施例1〜3、比較例1〜3)について、下記の条件で酸素透過率および水蒸気透過率を測定して、結果を下記の表1に示した。
酸素透過率の測定
酸素ガス透過率測定装置(MOCON社製 OX−TRAN 2/20)を用いて、
温度23℃、湿度90%RH、バックグラウンド除去測定を行うインディヴィジュ
アルゼロ(Individual Zero)測定ありの条件で測定した。
水蒸気透過率の測定
水蒸気透過率測定装置(MOCON社製 PERMATRAN−W 3/31)を
用いて、温度40℃、湿度100%RHで測定した。
これに対して、比較例1〜3はバリア性、柔軟性が実施例1〜3に比べて悪いものであった。
1,12,22…基材フィルム
3,13,23…バリア層
14,24…樹脂層
31…ホローカソード型イオンプレーティング装置
32…真空チャンバー
33a…供給ロール
33b…巻き取りロール
34…コーティングドラム
35…真空排気ポンプ
36…成膜チャンバー
37…坩堝
38…アノード磁石
39…仕切り板
40…圧力勾配型プラズマガン
41…収束用コイル
42…シート化磁石
43,45,46…バルブ
44…真空排気ポンプ
47…有機珪素化合物供給源
48…モノマー流量計
49…気化器
Claims (6)
- 基材フィルム上にバリア層を備えたバリアフィルムの製造方法において、
酸化珪素または窒化珪素を成膜材料とし、分子内に炭素−珪素結合をもつ有機珪素化合物ガスと窒素ガスの存在下で、前記有機珪素化合物ガスの供給量A(sccm)と窒素ガスの供給量B(sccm)の間にA>B/(有機珪素化合物ガス1分子あたりに含まれるSi−CH3結合数)>1の関係が成立するようにイオンプレーティング法により窒化酸化炭化珪素膜を基材フィルム上に形成してバリア層とすることを特徴とするバリアフィルムの製造方法。 - 前記有機珪素化合物ガスの供給量Aは0.01〜20slmの範囲内であることを特徴とする請求項1に記載のバリアフィルムの製造方法。
- 前記有機珪素化合物はヘキサメチルジシロキサン、テトラメチルジシロキサン、テトラメチルシラン、および、ヘキサメチルジシラザンのいずれかであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のバリアフィルムの製造方法。
- 前記イオンプレーティング法は、ホローカソード型イオンプレーティング法であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のバリアフィルムの製造方法。
- 予め樹脂層を前記基材フィルムに設け、該樹脂層上に前記バリア層を形成することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のバリアフィルムの製造方法。
- 前記基材フィルム上に前記バリア層を形成し、該バリア層上に平滑性を有する樹脂層および/またはゾルゲル層を形成することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のバリアフィルムの製造方法。
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