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Potassiumとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > デジタル大辞泉 > Potassiumの意味・解説 

ポタシウム【potassium】

読み方:ぽたしうむ

カリウム英語名


加里

読み方:かり
【英】:potassium

肥料の三要素一成分、植物体内デンプンや当分、タンパク質生成移動・蓄積に関する働きをもつ。

カリウム

分子式K
その他の名称Potassium、K
体系名:カリウム塩、カリウム


物質名
カリウム
英語名
Potassium
元素記号
K
原子番号
19
分子量
39.0983
発見
1807年
原子半径(Å)
2.26
融点(℃)
63.5
沸点(℃)
765.5
密度(g/cm3
0.86
比熱(cal/g ℃)
0.177
イオン化エネルギー(eV)
4.341
電子親和力(eV)
0.5012


カリウム

英訳・(英)同義/類義語:potassium

周期律表のI属(アルカリ金属)に属す金属元素で、陽イオン重要な生理作用を持つ。K

カリウム

(Potassium から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/09/25 06:10 UTC 版)

アルゴン カリウム カルシウム
Na

K

Rb
19K
外見
銀白色


カリウムのスペクトル線
一般特性
名称, 記号, 番号 カリウム, K, 19
分類 アルカリ金属
, 周期, ブロック 1, 4, s
原子量 39.0983(1) 
電子配置 [Ar] 4s1
電子殻 2, 8, 8, 1(画像
物理特性
固体
密度室温付近) 0.89 g/cm3
融点での液体密度 0.828 g/cm3
融点 336.53 K, 63.38 °C, 146.08 °F
沸点 1032 K, 759 °C, 1398 °F
三重点 336.35 K (63 °C), kPa
臨界点 2223 K, 16[1] MPa
融解熱 2.33 kJ/mol
蒸発熱 76.9 kJ/mol
熱容量 (25 °C) 29.6 J/(mol·K)
原子特性
酸化数 1(強塩基性酸化物)
電気陰性度 0.82(ポーリングの値)
イオン化エネルギー 第1: 418.8 kJ/mol
第2: 3052 kJ/mol
第3: 4420 kJ/mol
原子半径 227 pm
共有結合半径 203±12 pm
ファンデルワールス半径 275 pm
その他
結晶構造 体心立方
磁性 常磁性
電気抵抗率 (20 °C) 72 nΩ⋅m
熱伝導率 (300 K) 102.5 W/(m⋅K)
熱膨張率 (25 °C) 83.3 μm/(m⋅K)
音の伝わる速さ
(微細ロッド)
(20 °C) 2000 m/s
ヤング率 3.53 GPa
剛性率 1.3 GPa
体積弾性率 3.1 GPa
モース硬度 0.4
ブリネル硬度 0.363 MPa
CAS登録番号 7440-09-7
主な同位体
詳細はカリウムの同位体を参照
同位体 NA 半減期 DM DE (MeV) DP
39K 93.26 % 中性子20個で安定
40K 0.012 % 1.248(3) × 109 y β 1.311 40Ca
ε 1.505 40Ar
β+ 1.505 40Ar
41K 6.73 % 中性子22個で安定

カリウムドイツ語: Kalium [ˈkaːliʊm]新ラテン語: kalium)は原子番号19番の元素である。ポタシウム(剥荅叟母、Potassium [poʊˈtæsiəm]) 、加里(カリ)ともいう。元素記号K原子量は39.10。アルカリ金属典型元素のひとつ。生物にとって必須元素である。

名称と語源

英語圏とフランス語圏ではポタシウムと呼ばれる。一方、ドイツ語圏ではカリウムと呼ばれており、ラテン語及び日本語の名称もこれに従っている[2]国際純正・応用化学連合 (IUPAC) では、元素記号はドイツ語からKとし[3]IUPAC名は英語から potassium を採用している。因みに、実際の英語の発音は「ポタシム」である。

英語の potassium(ポタシウム)という名称は、potash という言葉に由来する[4]。これは、様々なカリウム塩を抽出する初期の方法で、木や葉を燃やした灰 (ash) を鍋 (pot) に入れ、水を加えて加熱し、溶液を蒸発させるというものである。1807年にイギリスのハンフリー・デービー電気分解によってカリウム元素を単離した際に、potash に因んで potassium と命名した。

ドイツ語のKalium(カリウム)という名称及び元素記号"K"は、アルカリの語源である kali に由来しており、kali はアラビア語で「植物の灰」を意味する アラビア語: القَلْيَه‎ (al-qalyah) に由来する[5]。1797年、ドイツのマルティン・クラプロートは、リューサイト英語版リチア雲母という鉱物の中に potash を発見し、potash が植物の成長の産物ではなく、実は新しい元素を含んでいることに気付き、これを kali と呼ぶことを提案した[6]。デービーの電気分解による単離・新元素発表後の1809年、ドイツのルートヴィヒ・ヴィルヘルム・ギルバート英語版がデービーの potassium に 対してKalium という名前を提案した[7]。1814年、スウェーデンのイェンス・ベルセリウスは、kalium という名称と元素記号"K"を提案した[8]

日本では一般にはドイツ語のカリウムが定着しているが、日本の医学薬学栄養学などの分野では、英語のポタシウムPotassium [poʊˈtæsiəm])が使われることもある。和名では、かつて加里(カリ)または剥荅叟母(ぽたしうむ)という当て字が用いられた。

カリウム以後、新たに発見された金属元素にはラテン語の派生名詞中性語尾「-ium」をつける習慣が一般化した。非金属に「-ium」がつけられるのはヘリウムだけである。なお、ヘリウムに対しても貴ガスに共通の語尾「-on」に直す意見もあったが、見送られた。

単体の特徴

カリウムの炎色反応

カリウムの単体金属は激しい反応性を持つ。電子を1個失って陽イオンK+になりやすく、自然界ではその形でのみ存在する。地殻中では2.6 %を占める7番目に存在量の多い元素であり、花崗岩カーナライトなどの鉱石に含まれる。塩化カリウムの形で採取され、そのままあるいは各種の加工を経て別の化合物として、肥料、食品添加物、火薬などさまざまな用途に使用されている。

物理的性質

銀白色の金属で、常温・常圧で安定な結晶構造は体心立方構造(BCC)である[9]。比重は0.86で水より軽く、リチウムに次いで2番目に比重の軽い金属である。融点63.7 °C沸点774 °C[9]ナイフで簡単に切れる軟らかい金属である。

カリウムの電子配置は[Ar] 4s1であり、電子を1つ失うことで非常に安定なアルゴンと同じ希ガス型の電子配置となる。そのため、カリウムの第1イオン化エネルギーは418.8 kJ/molと非常に低く、容易に電子を1つ失いK+の陽イオンとなる。対照的に、電子を2個失えば安定な希ガス型の電子配置が崩れるため、第2イオン化エネルギーは3052 kJ/molと非常に高く[10]、+2価の酸化状態の化合物は容易には形成されない[11]。このようにカリウムは1価の陽イオンに非常になりやすい性質を有しているが、アルカリドイオンのKも知られている[11]

炎色反応において、カリウムとその化合物は淡紫色を呈する。主要な輝線は波長404.5 nmの紫色のスペクトル線および、波長769.9 nmと766.5 nmの赤色の対となったスペクトル線(双子線)である[12]。ナトリウムと共存していると、ナトリウムの強い黄色の発色によって覆い隠されることもあるが、コバルトガラスを使うことでこのナトリウムの強く黄色い炎色を除去することができる[13]

化学的性質

アルカリ金属類の窒素以外の試薬に対する反応性は電気陰性度が低いほど高くなるため、カリウムは、より電気陰性度の大きいリチウムナトリウムよりも反応性が高く、より電気陰性度の小さいルビジウムセシウムよりは反応性が低い[14]。切断してすぐのカリウムの断面は銀色の外観をしているが、空気によってただちに酸化されて灰色へと変色していく[15]

ハロゲン元素と激しく発火して反応する。高温では水素とも反応し水素化カリウムを生成する[16]。カリウムと水との反応においては、反応によって水素が発生し、さらに発生した水素が引火するに足る反応熱を生じるため爆発の危険がある[17]。そのうえ、水素の燃焼によって生じた水が残ったカリウムと再び反応して水素をさらに発生させるため、金属カリウムが消費され尽くすまでこの反応は進行し続ける[18]。このカリウムの性質は、金属カリウムやナトリウム-カリウム合金として、蒸留前に溶媒を乾燥させるための強力な乾燥剤として利用される[18][19]空気中においても酸素との接触により反応熱で自然発火することもある[20]。そのため金属カリウムの保管は空気や水から遮断する必要があり、ほかのアルカリ金属と同様、鉱油やケロシンのようなアルカリ金属類と直接反応をしない炭化水素中やアルゴンで満たしたガラスアンプル中などで保管される[5]アルコールとも反応してアルコキシドを生成する[21]。カリウムは液体アンモニアに対する溶解度が非常に高く、0 °Cで1000 gのアンモニアに対して480 gのカリウムが溶解する。その溶液は黄みがかった青色であり、その電気伝導度は液体金属に類似している。純粋な液体アンモニアに対しては、徐々に反応してKNH2を形成するが、微量の遷移金属元素の塩が存在していると反応が加速される[22]

カリウムの化合物は、K+イオンの水和エネルギーの高さのため水に対する溶解性が非常に高く、したがってカリウムイオンを沈降分離させることは困難である。考えられる沈降方法としては、テトラフェニルホウ酸ナトリウムヘキサクロリド白金(IV)酸亜硝酸コバルチナトリウムとの反応が挙げられる[18]

溶液中のカリウム濃度は、一般にフレーム測光法英語版原子吸光分析イオンクロマトグラフィーによって測定される[23][24]誘導結合プラズマ発光分光分析[25]イオン選択電極英語版なども利用される。イオン選択電極を用いて測定する場合には、イオン選択電極において通常用いられる塩化カリウムを用いた塩橋を使用すると、塩橋からのカリウムイオンの混入により分析誤差が生じるため、カリウムを分析する際には硝酸アンモニウムなどが用いられる[26]。また、カリウムは非常にイオン化しやすいため、原子吸光分析を行う際にほかの共存元素のイオン化平衡に干渉(イオン化干渉)して、ほかの元素の測定値に影響を与える[27]

カリウムイオンは銀(1)イオンやタリウム(1)イオンとの“ナイトの動きの関係性”による類似点がよく知られている。“ナイトの動きの関係性”とは、主族元素後方において、ある元素と、その元素の一つ下の周期で二つ右の族であるような元素の間に相関が見られるという法則である。特にタリウムイオンは生化学的に類似性が強い。[28]

同位体

カリウムは宇宙において、より軽い元素から合成される(元素合成)。カリウムの安定同位体は、超新星においてより軽い元素が急速に中性子捕獲することによってR過程を経由して形成される(超新星元素合成[29]

カリウムには24種類の同位体が存在することが知られている。これらのうち、自然に産出するものはカリウム39(93.3 %)、カリウム40(0.0117 %)、カリウム41(6.7 %)の3つである。

カリウム40の崩壊

これらのうち、質量数40のカリウム40は放射性同位体である。半減期はおよそ12.5億年である[30]ため、地球創生時に取りこまれたものがいまだに自然界に残存している(元をただせば超新星爆発で核反応が起こって生成・放出されたものとされる)。カリウム40のうち11.2 %は、電子捕獲もしくは陽電子放出(β+崩壊)によってアルゴン40へと崩壊し、88.8 %は陰電子崩壊(β 崩壊)によって非放射性の安定同位体であるカルシウム40となる[30]大気中に存在するアルゴンの多くの部分は、このカリウム40の崩壊により生成したものだと考えられている。また、大気中のアルゴン40の一部は宇宙線太陽からの放射線)と反応することによりカリウム40となる。このためカリウム40は炭素14とともに常時生成されている。

カリウム40は、カリウムが商用の代用塩として大量に用いられるほどに自然界から十分な量が産出し、教室での実演のための放射線源に用いられる。このようにカリウムは大量に存在するうえに生体に含まれる量も多いため、健康な動物や人間にとって炭素14よりも大きな最大の内部被曝源である。70 kgの体重の人間において、1秒間にカリウム40はおよそ4400個崩壊する[31]。天然カリウムの活性は31 Bq/gである[32]

産出

カリウムを含んでいる長石(花崗岩などの主成分)

単体のカリウムは、カリウムのその強い反応性のために自然中からは産出しない[18]。カリウムはさまざまな化合物として地殻のおよそ2.6 %を占めており、地殻の2.8 %を占めるナトリウムに次いで地殻中で7番目に存在量の多い元素である(地殻中の元素の存在度も参照)[33]。たとえば花崗岩はカリウムをおおよそ5 %と、地殻の平均量以上を含んでいる。金属カリウムは非常に電気的に陽性であり(電気陰性度)、また非常に反応性が高いため、鉱石から直接生産することは難しい[15]

工業原料としてのカリウム資源はほぼすべて塩化カリウムの形で採取される。年間生産量は3500万トン(K2O換算、2008年)である[34]。2008年において、おもな産地はカナダ(30.0 %)、ロシア連邦(19.2 %)、ベラルーシ(14.2 %)である[34]。推定埋蔵量はK2O換算でおよそ180億トン[34]。カリウムは植物の成長に必須であるため、塩化カリウムの90 %以上はそのまま、もしくは硫酸カリウムの形で肥料(カリ肥料)として用いられる[35]。残りは水酸化カリウムを経由して、炭酸カリウムとなる。

商業生産

ニューメキシコで産出したカリ岩塩

純粋なカリウム金属は水酸化カリウムの電気分解という、19世紀初期にハンフリー・デービーがカリウムを単離した方法とほぼ同じプロセスで単離することができる[15]。この電気分解による製法は1920年代に開発され産業規模で用いられていたものの、金属ナトリウムと塩化カリウムを化学平衡を利用して反応させることによる熱的方法が1950年代には主流となった。この方法は反応時間および反応に用いるナトリウムの量を変えることでナトリウム-カリウム合金も生産することができる。フッ化カリウム炭化カルシウムの反応を利用するグリースハイマー法もまた、カリウムの生産に利用される[36][37]

カリウム鉱山の採掘の結果生じた、主として塩化ナトリウムからなるボタ山(ドイツ)

さまざまな方法でカリウム塩類をナトリウムおよびマグネシウム化合物から分離し、それによって生じたナトリウムやマグネシウムの副産物は地下に保存されるかボタ山に積み上げられる。採掘されたカリウム鉱石の大部分は処理されて最終的に塩化カリウムとなる。塩化カリウムは鉱山産業において、カリ(potash)、カリの塩(muriate of potash)もしくは単純にMOPと呼ばれる[36]

試薬グレードの金属カリウムは、1ポンドあたりおよそ10ドル(1 kgあたり22ドル)で売られている。純度の低いものは相応に安く販売される。カリウム金属市場は、金属カリウムの長期保管が困難であるために不安定である。金属カリウムは、その表面で超酸化カリウムが形成されないように乾燥した不活性ガスもしくは無水の鉱油中で保存しなければならない。この超酸化物は引っかかれた際に爆発を起こす、感圧性の爆薬である。超酸化物の形成が引き起こす爆発は、時に消火の難しい火災を引き起こす[44]

キログラム単位よりも多い量のカリウムは1 kgあたり700ドルと、非常に大きなコストが生じる。これは危険物の輸送に必要なコストのためである[45]

カリウムと人体

人体で8番目もしくは9番目に多く含まれる元素であり、体重のおよそ0.2 %を占めている(すなわち、60 kgの成人ではおよそ120 gのカリウムが含まれる)[46]。これは硫黄塩素と同程度の含有量であり、主要なミネラルでカリウムより多く含まれているのはカルシウムリンのみである[47]

神経伝達

ナトリウム-カリウムポンプによるイオンの輸送

カリウムは人体に不可欠の電解質であり、および神経などにおけるニューロンの情報伝達に重要な役割を果たしている。カリウムはイオン陽イオン)K+としておもに細胞内に分布しており、その濃度は細胞内液100–150 mol/m3 と高濃度に保たれているのに対し、細胞外液の濃度は3.5–4.5 mol/m3程度と非常に小さく保たれている。これは、いわゆるナトリウム-カリウムイオンポンプの働きによるものである[48]。このイオンポンプは、アデノシン三リン酸(ATP)を1個消費して、ナトリウムイオン3個を細胞外へと運び出し、カリウムイオン2個を細胞内へと運び込む。このイオンポンプの働きによって細胞の内外にイオン濃度差が生じ、細胞膜上に電気的な勾配を発生させる。この電気勾配は通常時は静止電位と呼ばれる値に保たれているが、カリウムイオンチャネルが開くとカリウムイオン濃度の高い細胞内からカリウムイオン濃度の低い細胞外へと濃度勾配の方向にカリウムイオンが移動し、また、ナトリウムイオンチャネルが開くと、同様にナトリウム濃度の高い細胞外からナトリウムイオン濃度の低い細胞内へとナトリウムイオンが移動する。カリウムイオンはナトリウムイオンよりもイオン半径が大きく、その違いによって細胞膜のイオンポンプおよびイオンチャネルはこれらを区別することができ、一方を通過させてもう一方を通過させないように選択的に機能することが可能である[49]。このイオンチャネルの開閉による細胞内外のイオン濃度のバランスの変化によって膜電位(細胞外に対する細胞内電位)が変化し、それによって活動電位が発生(いわゆる「点火」)する。この活動電位が伝導することで情報が伝達されていく。活動電位が生じて細胞膜が脱分極(ナトリウムイオンの移動によって正の膜電位が発生)している場合には、カリウムイオンチャネルが開くことで再分極(膜電位が静止電位に戻る)させることになる。

また、右心房にある洞房結節から発生する活動電位によって心拍の調節が行われているが、そのためには適切なカリウムイオン濃度が必要である。静脈注射、あるいは何らかの異常によりカリウムイオンの血中濃度が過剰になる高カリウム血症となった場合、洞房結節のペースメーキングに変調を生じさせ、致命的な不整脈を引き起こしたり、心停止に至ることもある。また、心臓などの外科手術で心停止が必要な場合には塩化カリウムが用いられ、塩化カリウムはアメリカ合衆国において薬殺刑にも用いられる[50]

摂取と健康

経口摂取の場合、吸収は比較的緩やかである。また、吸収後は細胞へ速やかに取り込まれることや、過剰分が腎臓のK+調節機能により排泄されることなどから、細胞外液中濃度は低レベルに維持される。1981年にモネル・ケミカル・センシズ・センターが発表したアルカリ金属のハロゲン化物に対する味覚調査によると、臭化カリウムおよび塩化カリウムの溶液に対する味覚は、濃度が希薄な状態では苦味が強いが、濃くなるほど苦味が弱まって塩味が強くなる傾向が示された[51][52]

一日の所要量は約0.8–1.6 gとされる[53]。2016年3月更新の厚生労働省「日本人の食事摂取基準」によると、目安量は男性3000 mg/日、女性2600 mg/日(いずれも15歳以上)と勧告されている[53]が、アメリカイギリスでは生活習慣病予防の観点から、男女ともに目安量4700 mg/日、推奨量3500 mg/日としている[53]。植物、動物の細胞には豊富に含まれており、通常の食事で生命を維持するために必要なカリウムは十分に賄われる。そのため、カリウムの血中濃度の低下による低カリウム血症(カリウム欠乏症)の顕著な徴候や症状が健康な人に現れることは稀である[53]。カリウムの豊富な食品として、パセリや乾燥させたアンズ粉ミルクチョコレート木の実(特にアーモンドピスタチオ)、ジャガイモタケノコバナナアボカドダイズなどに特に多く含まれるが、大部分の果実野菜において人体に十分な量が含まれている[54]。なお、カリウムの最適摂取量に関しては、いくつかの議論が存在する。たとえば、アメリカ医学研究所は2004年にカリウムの食事摂取量基準英語版を1日あたり4000 mg(100 mEq)と指定したが、アメリカ人の平均的カリウム摂取量はその半分程度しかないため、大部分が摂取不足であることになる[55]。同様に欧州連合、特にドイツイタリアにおいても、カリウムは一般的に摂取不足の傾向にあると考えられている[56]

高血圧についての疫学的研究および動物実験の結果、カリウム含有量の高い食品の摂取によって高血圧のリスクを低減できることが示され、高血圧を原因としない脳卒中についても低減されると考えられている。イタリアの研究者によるメタアナリシスに基づいた報告(2011年)によると、一日に1.46 g以上カリウムを摂取すると脳卒中のリスクが21 %低減するとされる[57]。また、ラットを用いた研究において、カリウムの欠乏はチアミン(ビタミンB1)の摂取不足と複合すると心臓病を誘発することが示された[58]

サプリメント

医薬的用途のカリウムサプリメントループ利尿薬サイアザイド利尿薬と併用して使われることが多い。これは、利尿剤の薬効として尿が体外へ排出される際に副作用として排出されてしまうカリウムの補充を目的としている。典型的な医薬用サプリメントは、一回につき400 mg(10 mgEq、牛乳250 mLや100 %オレンジジュース200 mLに含まれるカリウムとほぼ同等)から800 mg(20 mgEq)の範囲で服用される。多くのサプリメントに使われている塩化カリウムは、胃や腸の粘膜に刺激を与えるため、消化管通過障害のある患者には禁忌である。また、カリウムイオンが高濃度となることで細胞破壊を引き起こす恐れもあるため、一般的に、浸出を緩やかにするタブレットやカプセルなどの形態で提供される。

非医薬的用途としてもカリウムサプリメントは広く利用されている。塩化カリウムのようなカリウム塩は水によく溶けるものの、濃度の高い溶液では味覚(苦味と塩味)を刺激するため、サプリメント飲料などにおいては、経口摂取の障害とならないよう口当たりをよくする研究も行われている[59][60]。なお、健康的な悪影響を避けるため、アメリカでは処方箋不要なカリウム錠のカリウム含有量を一錠あたり99 mg以下に法規制している。

過剰摂取と欠乏症

体内のカリウム濃度が高まると高カリウム血症が引き起こされ、致命的な不整脈を誘発する危険がある[61]。健康であれば、カリウムを過剰に摂取しても腎臓の調節機能によりカリウム濃度は抑制されているが、腎臓病の患者においては、腎不全によってカリウム濃度の制御機能が低下しているため対応できない。このような腎不全による高カリウム血症の対症療法として、カリウムの摂取制限やカリウムイオン交換樹脂薬の服用などが行われる[62]

一方、嘔吐下痢、多尿症などによって引き起こされる体液中のカリウム不足は、低カリウム血症として知られる致命的な状態を引き起こすことがある[63]。これは、カリウムが生体の神経伝達において非常に重要な役割を担っていることと関連している。カリウム欠乏の徴候としては、筋力の低下、イレウス(腸閉塞)、心電図の異常、反射機能の低下が挙げられ、重度の場合では呼吸困難やアルカローシス不整脈も認められる[64]

カリウムと植物

植物にとってカリウムは、新陳代謝を良くし、葉や茎を丈夫にする不可欠な要素である[65]植物の生育に欠かせないため、窒素リン酸と並んで肥料の三要素の一つに数えられる。

カリウム不足になると植物の伸長が抑えられ、幼葉が青緑色になることがある[65]。一方、カリウム過多になると、窒素、カルシウム、マグネシウムの吸収が阻害される[65]

用途

カリウムはほかの多くの元素と同じように、金属カリウム単体としてよりも、カリウム化合物としての用途のほうが重要である。しかし、同じアルカリ金属であるナトリウムがカリウムとほぼ同じような用途を持つため、より安価なナトリウム塩で代替可能な用途も多く、コスト面で劣るカリウムの用途は非常に限られている。たとえば、2008年度の水酸化ナトリウムの日本における消費量は98万6744トンであるが、同年の水酸化カリウムの日本における消費量は2万8044トンでしかない[66]

肥料

硫酸カリウムおよび硫酸マグネシウムからなる肥料

カリウムイオンは植物にとって重要な主要栄養元素のひとつであり、さまざまなタイプの土壌に含まれている[67]。近代の高収穫率な農業においては、土壌中のカリウムは自然に供給されるよりも非常に速い割合で消費されるため、肥料としてカリウムを人工的に土壌に補給する必要がある。大部分の種類の農作物に含まれるカリウム量は通常収穫量の0.5–2 %の範囲であり、それだけの量のカリウムが収穫ごとに土壌から持ち出される。カリウム肥料は農業園芸水耕栽培などの耕作、栽培において、塩化物(KCl)や硫酸塩(K2SO4)、硝酸塩(KNO3)のような形で利用される(また、植物由来の肥料である草木灰において炭酸塩(K2CO3)の形での利用がある)。世界で生産されるカリウム製品のおよそ93 %(2005年[42])が肥料として消費されており、そのうち90 %は塩化カリウムとして供給されている[67]。塩化カリウムはカーナライト(KCl、MgCl2、6H2O)鉱石などから、塩化カリウムと塩化マグネシウムの溶解度差を利用して水中で分離することによって製造される[68]。塩化物に敏感な作物や、硫黄分を必要とするような作物に対しては硫酸カリウムが用いられる。硫酸カリウムはラングバイナイト英語版(MgSO4、KCl、3H2O)やカイナイト英語版((Mg, K)SO4)のような鉱石の複分解によって生産される[69]。硝酸カリウムの肥料としての消費量は非常に少ない[70]。肥料成分の表記は通常、窒素、リン、カリウムの順に示され、カリウム量はK2Oとして表される[71]

食品

前述のように、カリウムイオンは人の生命と健康を支えるのに重要な役目を果たす栄養素である。高血圧を抑えるためにナトリウムの摂取量を制限している人々によって、食塩の代替として塩化カリウムが用いられる(代用塩)。昆布わかめひじきなどの海藻類に多く含まれる。アメリカ合衆国農務省は、トマトペースト、オレンジジューステンサイ、ホワイトビーンズ、ジャガイモ、バナナその他多くのカリウムをよく含む食品をリストアップし、カリウム含有量をランク付けしている[72]。一方で腎臓病の患者にはカリウム摂取制限を行う必要があり、近年は水耕栽培でカリウム含有量を大幅に抑えたレタスなどの生野菜の生産も行われている。

酒石酸カリウムナトリウム(KNaC4H4O6、ロッシェル塩)はベーキングパウダーの主成分であり、鏡に銀メッキをする際にも用いられる。臭素酸カリウムは強力な酸化剤(E924)であり、パン生地や魚肉練り製品の改良剤として用いられていた[73]。また、亜硫酸水素カリウム(KHSO3)はワインビールなどの防腐剤として用いられていたが、肉には用いられなかった[74]。亜硫酸水素カリウムは織物や麦わらの漂白剤としてや、皮なめし剤としても用いられていた。

工業

硝酸コバルトカリウム(コバルト・イエロー)

純粋なカリウム蒸気は数種類の磁気センサに用いられる[75]。また、光電子素子としても用いられる。ナトリウムとカリウムの合金(NaK、ナトリウムカリウム合金)は熱交換媒体として原子炉の冷却材などに低融点合金として用いられる液体であり、希ガスや溶媒からわずかに含まれる二酸化炭素、あるいは酸素を高度に除去するための反応剤、乾燥剤としても用いられる。ナトリウムカリウム合金はまた、反応性蒸留英語版においても用いられる[76]。ナトリウム、カリウム、セシウムをそれぞれ12 %、47 %、41 %含んだ三元合金は、合金としては最低である融点−78 °Cを持つ[77]

すべてのカリウム化合物は強いイオン性を有しているため、カリウムはしばし有用な陰イオンを保持させるのに用いられ、その一例として、クロム酸カリウム(K2CrO4)がある。クロム酸カリウムは黄色の染料やインク、爆薬や花火、皮なめし剤、ハエ取り紙、安全マッチ[78]などさまざまな用途に用いられるが、これらはカリウムイオンの特性というよりはむしろクロム酸イオンの特性であり、カリウムイオンはクロム酸イオンを保持する役目を担っている。

水酸化カリウム

水酸化カリウムは強塩基であり、強酸や弱酸を中和してpHをコントロールするために用いられる。また、カリウム塩類の生産や、エステル加水分解反応、洗剤産業における油脂けん化などにも用いられる[79]

硝酸カリウム

硝酸カリウム(KNO3硝石)は、火薬(黒色火薬)において酸化剤として働き、また肥料としても重要である。歴史的には、チリ硝石の主成分である硝酸ナトリウムに塩化カリウムを反応させる「転化法」と呼ばれる方法によって工業生産されていたが、ハーバー・ボッシュ法による空気から化学的に窒素を固定する手法(化学的窒素固定法)が確立してからは、炭酸カリウムもしくは水酸化カリウムを硝酸に溶解させる方法で作られるようになった[80]。また、グアノ蒸発岩などの天然鉱石からも得られる。

過マンガン酸カリウム

シアン化カリウム(KCN、青酸カリ)は貴金属(特に)を錯体を形成することによって溶解させる用途に使われ、それらの金属の電鋳電解めっき、金鉱山の採掘にも用いられる。シアン化カリウムはまた、有機合成においてニトリル類を合成するためにも用いられ、さらには、シアン化銀とともにメッキ浴としても用いられる[81]。シアン化カリウムはこのように多くの用途を有する有用な化合物であるが、生物に対して非常に強い毒性を示す[82]炭酸カリウム(K2CO3、ポタッシュ)は穏やかな乾燥剤として用いられ、ガラスや石鹸、カラーテレビブラウン管蛍光灯、織物の染料や顔料の製造にも利用される。過マンガン酸カリウム(KMnO4)は酸化剤や漂白剤、浄化物質として利用され、サッカリンの製造にも用いられる。塩素酸カリウム(KClO3)はマッチや爆薬に加えられる。臭化カリウム(KBr)は、以前は写真の定着剤や医薬品の鎮静剤として用いられていた[67]。また、フェリシアン化カリウムフェロシアン化カリウムも写真の作成に利用される。ヘキサフルオロケイ酸カリウム(K2SiF6)は琺瑯陶器の釉薬、特殊ガラスなどの用途に利用される。ヨウ化カリウム(KI)は殺菌消毒薬などに使われる。

超酸化カリウムは橙色固体であり、持ち運び可能な酸素源として自給式ガスマスクに用いられる。気体の酸素よりも使用する容積が小さくて済むため、鉱山や潜水艦宇宙船において呼吸のための酸素供給システムとしても広く用いられている[83][84]。また、過酸化カリウムは二酸化炭素吸収剤として利用される。

ハンフリー・デービー

カリウムは、草木を焼いたとして古来から利用されてきたが、これがナトリウム塩とは根本的に異なる物質であるということは理解されていなかった。元素としてのカリウムや、ほかの塩類から分離された独立した要素としてのカリウム塩類は古代ローマ時代には知られておらず、元素のラテン語名は古典ラテン語でなく、むしろ新ラテン語であった[5]。カリウムは、カノハウサ人による濃青色の織物を生産するために、インディゴ、湯を混ぜ合わせて使われていた秘密の成分であった[96]

1736年ゲオルク・シュタールはナトリウムとカリウムの塩の重要な差異について彼が提唱するに至った実験的な徴候を得[97]1736年アンリ=ルイ・デュアメル・デュ・モンソーによってその違いが証明された[98]1807年イギリスハンフリー・デービーが新しく発見されたボルタ電池を用いて、水酸化カリウム(苛性カリ)を電気分解(溶融塩電解)することによって金属カリウムを初めて単離した。この元素は電気分解によって分離された最初の金属であった[99]。植物はほとんどナトリウムを含有しないため、potashはおもにカリウム塩であり、残りの成分は主に水溶性の低いカルシウム塩である。

その数年後、デービーはカリウムを単離したのと類似した技術によって、植物塩でない、鉱石より誘導された水酸化ナトリウムから金属ナトリウムを単離し、カリウムとナトリウムの元素、塩類が違う物質であることを示した[100][101][101][102]。この単離された金属ナトリウムおよび金属カリウムがともに元素であることが示されたが、この見解が一般に認められるまでには長い時間がかかった[103]

長い間、カリウムの大きな用途はガラス、石鹸と漂白剤の製造に限られていた[104]。動物性油脂および木炭や植物油から作られるカリウム石鹸は軟石鹸として知られ、非常に水によく溶け柔らかい傾向があり重宝されていた[67][105]。1840年ドイツユストゥス・フォン・リービッヒによって、カリウムが植物のために必要な元素であり、しかも大部分の土壌においてカリウムが欠乏していることが発見され[106]、カリウム塩類の需要は急激に増加した。モミの木から作られる木の灰がカリウム源として使われていたが、ドイツのシュタースフルト英語版近郊においてカリウム塩を含んだ鉱床が発見され、1868年にドイツでカリウム肥料の工業規模の生産が始まった[107][108][109]。その他のカリウム鉱床は、1960年代までにカナダで大きなものが発見され、主要な生産源となった[110][111]

危険性

金属カリウムと水との反応。カリウムと水との反応で生じた水素がピンクもしくは薄紫色で燃焼している(この炎色はカリウムの蒸気によるものである)。強アルカリ性の水酸化カリウムは水溶液として生成する

単体の金属カリウムは消防法第2条第7項および別表第一第3類1号により第3類危険物に指定されている[112]。また毒物及び劇物取締法に定める劇物に該当する[113]

カリウムは水と激しく反応し、水酸化カリウムと水素ガスを発生させる[17]

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