セ・リーグ理事会が予定通り25日開幕の方針を固めてから一夜明けた16日、選手から延期を要望する声が次々と上がった。理事会後の実行委員会で強行開幕に待ったをかけ、継続協議に持ち込んだ労組・選手会会長の阪神新井貴浩内野手(34)の兄貴分、阪神金本知憲外野手(42)は800字を超えるコメントを発表した。またヤクルトでは労組・選手会前会長の宮本慎也内野手(40)とチーム選手会長の石川雅規投手(31)も強行開幕へ向けて事情説明に来た球団首脳にNOを突きつけた。
阪神の選手会は開幕延期に賛同しました。僕もその意見に賛同しました。今、被災者の方々のことを考えると、野球どころじゃない。批判されるかもしれないけど、僕個人としては、そういう気持ち。
勇気を与えるとか、勇気をもらうとか、そういう状況じゃないと思う。水もなくて、お風呂にも入れなくて、食料も明日何が手に入るかも分からない。僕らが野球をやっても、被災者の精神状態も、そういうレベルじゃない。
まだ、捜索段階で遺体もどんどん見つかっている。勇気を与えるとかは、もう少し落ち着いてから。食べ物がのどを通って、電気も通って、ある程度の生活が確保されれば、さあ、がんばろうという気持ちになると思う。僕たちもそういう姿を見せないといけないと思う。でも、今は野球を見て楽しもうとか、そういうレベルじゃない。
僕自身、仙台で大学時代を過ごした。亡くなった人はまだいないけど、連絡がつかない友人もいる。岩手の小岩井農場にも行ったし、松島とか、七ケ浜の海水浴場にもよく行った。そういうところが、ああいう状況になっているのはやりきれない。
僕が開幕を焦らず、反対している理由には、電気のことがある。今、電車の本数を減らしたり、都内のコンビニが空っぽになっている中で、自分たちが電気を煌々(こうこう)と使って、スコアボードも使ってやっていいのか。
放射能もそう。海外の大使館は退去命令を出しているという。そんな中、ファンも数時間野球を見て、危険にさらされる可能性がないわけじゃない。試合中にまた、原子力発電所が危機的な状況にならない保証はない。「プロが何か」と言われて、どんな状況でも強行してやるのがプロなのか?
サッカー日本代表も国際試合をしようとして、抗議メールが殺到したと聞く。近々にそういう前例がある中、ゴルフ、フィギュア、競馬も中止になって、野球だけがそこまで(25日の)開幕にこだわる理由が何なのか。僕としてはそういう思いがある。