ゲームソフト | Tear ー終わりとはじまりの雫ー | プレイステーション決めるぜ!覚悟!
「Tear 終わりとはじまりの雫」のレビュー行くぞ!
メーカー:ロッキンハート
機種:PS4ダウンロード専用ソフト
ジャンル:VRヴィジュアルノベルアドベンチャー
発売日:2017年10月20日
価格:税込1620円
2016年11月に出来たばかりのゲームメーカー。
ロッキンハートが送るPS4向けの完全新作ビジュアルノベルだ。
シナリオは選択肢で分岐し、20種類以上のエンディングが待っている。
当初はPSVRに対応する予定だったのが一旦見送りになり、
でも「VRヴィジュアルノベルアドベンチャー」という表記はそのままという色々ややこしい事態。
仮想空間に入るシーンがシナリオ上で重要なので、
PSVR非対応でもこの表記は間違いではないんだけどね。
アプデでのPSVR対応は「今後検討」らしいから望み薄。
ストーリーは「ファティマ第三の秘密」を軸に様々なオカルトネタやSFネタをぶち込んだノリだ。
この胡散臭いノリがなんだか面白そうだったのと、
結果的に非対応となってしまったがVR対応ノベルという点。
そして新興メーカーによるPS4向け完全新作ということで、
発売前からほどほどの期待と応援を込めつつ購入したが、
とんだ地獄への片道切符だったってワケだ!
VR対応とかどうでもいい!そんな話をする次元の存在ではないぞコイツは!
1620円のダウンロードソフトとはいえ、
これがPS4向け完全新作として2017年に発売されたこと自体が奇跡だよ!
ストーリーは「ファティマ第三の予言」の説明と、それに関連した謎めいた導入部の後に、
主人公のシュウ、その幼馴染で名探偵に憧れるヒロインの七海、
3つ年上だが幼少時代から仲良しのレナードが、
とある国の「人類進化学研究室」で研究をしているところから始まる。
七海が警察を無視して巷で発生している誘拐事件の捜査を開始したところ、
たどり着いた謎の洋館で謎のスーパーテクノロジーを秘めた機器「Tear」を発見。
与えた情報を元にした擬似空間世界を生成することが可能で、
物体の実体化も可能という恐るべき「Tear」について研究室で調べつつ、
それを使った事件の捜査をしているうちに、
謎の人物や謎の組織、登場人物たちに隠された秘密、陰謀が浮上し始め、物語は混迷を極めていく。
果たして「Tear」が導く先にはどんな未来が待ち受けているのか?!
というような内容だ。
フローチャートから遊ぶ章を選択してゲームをスタートさせ、
時々挟まる選択肢を選びながら文章を読んでいくオーソドックスなノベルゲームなのだが、
プレイ中は任意セーブが不可能。章を読み終えた時のオートセーブのみ。
そしてバックログを開くと読んでいた箇所の直前のログではなく、
保存されているログで一番古いログから表示される。
……この時点でかなり困惑したのだが、文字スキップが爆速なのでなんとかなるし、
そんなものは大いなる混乱へ続く小さな第一歩に過ぎなかった。
オープニングが終わってヒロインである七海が初登場するシーンで選択肢が登場。
誰か?という質問に「母親だ」を選択するとそのままバッドエンド。
その次の主人公と七海の対面シーンでの選択肢で「推しメンのアイドルだ!」を選択すると、
主人公が七海をアイドルデビューさせた後に何故か死んでバッドエンド。
そしてその次に七海の肩を揉む選択肢を選ぶと、主人公がバリツで殺されてバッドエンドとなる。
何を言っているか分からないと思うが、
本当に「主人公がヒロインにバリツで殺されるバッドエンド」としか言いようがないから困る……。
この3つのバッドエンドがキャラ紹介パートの途中の段階でぶち込まれる狂気の沙汰。
開始20分ほどでこのキチガイ3連バッドエンドを見終えた時は、
このゲームへの恐怖で冷や汗が止まらなくなったよ!
ヒロインを母親と呼ぶと謎バッドエンドになるゲームなんて、
「コードギアス 反逆のルルーシュDS」だけだと思ってた。
しかしこんなものはこのゲームのほんの入り口に過ぎないのだ。
複数のキャラと数々の謎とオカルトネタ、SF用語が入り乱れるシナリオにも関わらず、
文章を読んでいて状況が異様に分かり辛いため、物語が進めば進むほど、
今、一体画面で何が起こっているのか、
登場人物が何を言ってるのかよく分からない場面がどんどん増えてくる。
そんな何度も文章を読み返したくなるような作りなのにバックログが前述の仕様。
戦闘シーンは簡素な情景描写に、
「ダダダダダ」「ダダダダッ」「ズキューン」「ドカーーーン!」などの擬音を組み合わせた場面が
次々に飛び出すので緊張感が無い。本当に最初から最後までこんな表現が続くッ!
たまに「ダダダダダダダダダダダッダダ」とか捻りを入れてくる。
ノリが良い。
主人公大好きなもう一人のヒロインである瑠奈は結構可愛いんだけど……。
瑠奈の胸が体に当たった主人公が「そして実は巨乳だ(キリッ)」とか説明するギャグを、
プレイヤーの脳細胞が死ぬまで繰り返しやってくるから困ったわ。本当にやめてください。
そもそも「実は」も何も普通に巨乳じゃねーか?!
他にも、どう見ても本にしか見えない物を「古いスマートフォン」と呼んだり、
画面に黒いスーツの人物が表示されているのに文章が「白衣」になっていたり。
ビジュアルノベルなのにビジュアルとノベルが一致していないシーンがちょいちょいあり、
しかも何故かシナリオ上で重要なシーンに偏っているので脱力させられる。
1画面に表示される文章量が妙に少ない上に、
何故かセリフの最後に句点が付いたり付かなかったりするので、
ボタンを押してテキストを送るタイミングがちょいちょい狂わされるぜ。
画面に砂嵐みたいなフィルターが常に掛かっていて字が見辛いのも気になるところ。
PSVR対応の名残かなと思ったがVR対応シーンに入ると画面がクッキリするんだよね。
コンプしたけど演出上の意味は感じ取れなかったので本当に謎のフィルターだ……。
このシーン、仮にボイスがあったら一体どんな発音だったんだろうか。
BGMの種類が少ないので日常パートで流れる妙なノリのBGMを延々と聞くことになるし、
効果音も「何の音だ?!」って言いたくなるものが定期的に登場。
緊迫したシーンで「馬がゆっくり歩くような音」がすることがあって、
なんだったのかコンプした後も意味が分からなかったんだけど、
他の人が「緊張していることを表現する心臓の鼓動音」と言っているのを見てやっと理解できた。
いや、本当に心臓の鼓動音だったのかは、この文章を書いている今でも断言はできないのだが!
海岸で線香花火をするシーンで煙と光の量が明らかにおかしかったり、
その後の打ち上げ花火が明らかに花火大会レベルの絵だったり、演出も違和感が炸裂。
キャラの立ち絵の種類は少ないが「Live2D」を使っているので、
画面をじっと凝視すると微かに立ち絵が動いてるのがなんとなく理解できる。
っていうか瑠奈の胸が揺れるシーン以外はロクに動かないので、
そのためだけに導入したと思われる。
ゲーム中では「Tear」の能力を使って仮想空間で証拠を探すパートがあり、
ここが本来ならPSVRに対応していた3Dパート。
操作は単純で、狭いフィールド内を歩き回って光るポイントを探して調べるだけ。
何回か挟まるがすぐ終わる。
この何かを調べている時の画面が丸くキュッと狭まったスクショを見ていると、
「もうこんなゲームはコリゴリだよ~!」とか言ってレビューを終わりにしたくなってきますね。
ゲームとしてどこを切ってもツッコミ所しか出てこないんだけどシナリオとテキストそのものが
本当に「ヤバい」と表現できないくらいヤバくて、
主人公とシナリオを書いている人だけが話を理解しているような展開がどんどん積み重ねられていく。
プレイヤーをジャブのように細かく混乱させる文章と、
プレイヤーの意識を一気にぶっ飛ばすアッパーカットのような文章が矢継ぎ早に襲ってくる作りで、
遊んでいるとどんどん頭痛がひどくなっていく。
西遊記の孫悟空が悪いことをして三蔵法師にお経で怒られてる時みたいな。
つまりこのゲームはとてもありがたいゲームということです。
ファティマ第三の預言、ヴォイニッチ手稿、ネクロノミコン、UFO、エーテルなどのネタに、
複数の登場人物の思惑と視点と、異なる時系列と、
現実と虚構が入り混じる超展開が超テキストと共に加速していき、
プレイヤーはこのゲームが、
現実に2017年のPS4で発売されたゲームなのかどうかも分からなくなってくる。
ゲームをクリアした時は「一体なんだったんだ…」以外のコメントが出てこなかったし、
その後のすべての謎が解ける真エンドを見た後も「一体なんだったんだ…」以外のコメントが出てこなかった。
すべての謎は解けたんだけど、
そもそも何が解けたのかを理解するところから努力をスタートさせないといけない。
ルートレターはちゃんとしたメーカーのちゃんとしたゲームだったんだなってマジで思えた。
だって、文章を読んで、今何が起こっているのかちゃんと理解できたもの!
フルコンプまで6時間くらい。
しかしストーリーを完全に理解するためにリプレイを繰り返せば数十時間、数百時間掛かるであろう!
もはや面白いとか、つまらないとか、そういう小さな物差しで測れるゲームではないと思えた。
褒められるところを探すと、「このゲームでしか味わえない体験」が間違いなく出来ることと、
ヒロインが結構可愛いところかな。
最初にも書いたがもはや「Tear 終わりとはじまりの雫」の存在そのものが現代の奇跡と言えるので、
興味を持った方は今すぐに1620円払ってこの衝撃を自分の脳で味わってもらいたいッ!
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