本発明の実施形態に係る電子部品搭載用パッケージおよび電子装置について、添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。図1〜図5は本発明の第1の実施形態に係る電子部品搭載用パッケージ1の構成を示す図であり、また図6〜図12は本実施形態に係る電子部品搭載用パッケージ1を備えた電子装置2の構成を示す図である。
電子部品搭載用パッケージ1は電子部品21を搭載するためのパッケージである。電子装置2は、光通信装置において光信号を受発信する半導体装置であり、電子部品搭載用パッケージ1と、該電子部品搭載用パッケージ1の配線基板13に搭載された電子部品21とを含んで構成される。
電子部品搭載用パッケージ1は、基体11と、高周波信号を伝送する線状の導体から成る一対の信号端子12と、電子部品21が搭載される部品搭載領域を有する配線基板13と、接合材15と、配線基板13を支持する金属から成る基板支持部14と、を含んで構成される。なお、高周波信号とは、半導体装置の伝送速度が2.5Gbps以上に対応した信号をいう。
基体11は、板状に形成され、厚み方向に貫通した一対の貫通孔11bを有する。各信号端子12は、一対の貫通孔11bのそれぞれに設けられ、一端部12aが基体11の一主面11aから厚み方向一方側に出ている。配線基板13は、一対の信号端子12のそれぞれの一端部12aに対向して設けられ、前記一端部12aに面した対向面に、一対の信号端子12からの高周波信号を電子部品21に伝送するための一対の信号線路導体13aが形成されている。接合材15は、一対の信号端子12の各一端部12aと、配線基板13の各信号線路導体13aとをそれぞれ接合する。基板支持部14は、基体11の一主面11aに設けられ、配線基板13の対向面の裏面に当接して、配線基板13を支持する。
すなわち、電子部品搭載用パッケージ1は、板状の基体11に形成された一対の貫通孔11bのそれぞれに設けられた一対の信号端子12の、基体11の一主面11aから厚み方向一方側に出た各一端部12aと、基体11の一主面11aから厚み方向一方側に設けられた基板支持部14に支持された配線基板13の一対の信号線路導体13aと、が接合材15で接合された構造を有する。そして、本実施形態の電子部品搭載用パッケージ1において、基板支持部14は、図3に示すように、配線基板13の各信号端子12の一端部12aに面した対向面に垂直な方向から見たときに、各信号端子12の一端部12aと重ならないように設けられる。すなわち、基板支持部14の幅寸法は、一対の信号端子12間の距離よりも小さい。そして、対向面と反対側の裏面のうち、配線基板13の対向面の信号端子12の一端部12aと対向した領域は空間に臨んでおり、該裏面の領域において配線基板13は基板支持部14に支持されていない。
このような電子部品搭載用パッケージ1によれば、金属から成る基板支持部14が、配線基板13の前記対向面に垂直な方向から見たときに、各信号端子12の一端部12aと重ならないように設けられるので、信号端子12の一端部12aと基板支持部14との間に生じる不要な容量成分が抑制される。不要な容量成分が抑制されるので、ある特性インピーダンスにインピーダンスマッチングをとったときに、信号端子12の一端部12aにおける特性インピーダンスがずれにくいものとすることができる。その結果、高周波信号の伝送特性を良好にすることができる。
基体11は、熱伝導性の良い金属から成る。金属は熱伝導性も良く好適な材料である。金属の例としては、搭載される電子部品21やセラミックス製の配線基板13に近い熱膨張係数を有するもの、またコストの安いものとして、たとえば、Fe−Ni−Co合金やFe−Mn合金等の鉄系の合金、ならびに純鉄等が選ばれる。より具体的には、Fe99.6質量%−Mn0.4質量%系のSPC(Steel Plate Cold)材がある。たとえば基体11がFe−Mn合金から成る場合は、このインゴット(塊)に圧延加工や打ち抜き加工等の周知の金属加工方法を施すことによって基体11が所定形状に作製される。貫通孔11bはたとえばドリル加工によって形成される。
基体11の形状は、たとえば平板状であり、その形状には特に制限はない。基体11は、たとえば直径が3〜10mmの円板状、半径が1.5〜8mmの円板の一部を切り取った半円板状、一辺が3〜15mmの四角板状等所用の形状を有する。基体11の厚みは一様でなくてもよい。たとえば、基体11の外周縁端部の厚みを厚くすると、電子装置2を収納する筐体等の放熱体となるものを密着させやすくなる。このようにすると、電子部品21から発生した熱を基体11を介して外部に放出しやすくなるので好ましい。
図6に示す例では、2つの貫通孔11bを有する基体11に1個の電子部品21を搭載しているが、複数の電子部品21を搭載したり、電子部品21の数や電子部品21の端子の数に応じて、信号端子12が設けられる貫通孔11bを3つ以上形成してもよい。
基体11の厚みは0.5mm以上2mm以下が好ましい。厚みが0.5mm未満の場合は、電子部品21を保護するための金属製の蓋体(不図示)を金属製の基体11の一主面11aに接合する際に、接合温度等の接合条件によって基体11が曲がるなどの変形を生じやすくなる。基体11の変形によって気密性が低下するおそれがある。厚みが2mmを超えると、電子部品搭載用パッケージ1や電子装置2の厚みが厚くなり、小型化が困難になる。
基体11の一主面11aには、耐食性に優れ、電子部品21や配線基板13あるいは蓋体を接合し固定するための接合材(ろう材)との濡れ性に優れた、厚さが0.5〜9μmのNi層と厚さが0.5〜5μmのAu層とをめっき法によって順次被着させておくのがよい。これにより、基体11が酸化腐食するのを有効に防止できるとともに電子部品21や配線基板13あるいは蓋体を基体11に良好にろう接(接合)することができる。
本実施形態では、基板支持部14は、熱伝導性の良い金属から成る。基板支持部14は、基体11と一体に形成されており、基体11の一主面11aから厚み方向一方側に設けられる。この基板支持部14は、配線基板13の、各信号端子12の各一端部12aに面した対向面の裏面に当接して配線基板13を支持する。基板支持部14は、配線基板13の裏面に当接する部分に平面を有し、例えば一主面11aに垂直な四角柱状に形成されている。基板支持部14は、熱伝導性の良い金属から成るので、配線基板13に搭載される電子部品21が発生する熱を放散させる。基板支持部14から放散された熱は、多くが基体11に伝えられる。ここで、基体11は、熱伝導性の良い金属から成るので、基板支持部14から放散されて基体11に伝えられた熱を電子部品搭載用パッケージ1の外部に放散させる。このようにして、電子部品21が発生する熱は、基板支持部14および基体11から電子部品搭載用パッケージ1の外部に放散されるので、熱膨張による基体11の変形が抑制される。
また、基板支持部14は、先端部が基部よりも細く形成されていることが好ましい。これによって、基板支持部14と配線基板13とを接合する際に、基板支持部14の先端部と配線基板13との間の隙間にろう材だまりが形成されるので、接合強度の減少を補うことができる。基板支持部14の先端部の形状は、特に限定されるものではなく、たとえば、半球状、円錐台形状、四角錐台形状、四角錘の頭頂部が曲面状に形成された形状などが挙げられる。これらの中でも、四角錘の頭頂部が曲面状に形成された形状が好ましい。これによって、基板支持部14の先端部と配線基板13との間の隙間にろう材だまりが形成されやすくなり、接合強度をより高めることができる。
また、図4に示すように、基板支持部14に支持された配線基板13は、基体11の一主面11aから離れていることが好ましい。配線基板13と一主面11aとの間隔を適切に設定することによって、配線基板13の一端部12aに接続される部位と基体11との間に生じる静電結合を小さくすることができる。その結果、一端部12aにおいて、特性インピーダンスの変化を小さくすることができる。
さらにまた、前述したように、基板支持部14は、配線基板13に垂直な方向から見たときに、一対の信号端子12の一端部12aと重ならないように設けられる。基板支持部14と、各信号端子12の一端部12aとの位置関係について、詳細に説明する。
配線基板13において、一対の信号端子12の一端部12aに面した対向面には、一対の信号端子12の各一端部12aと接続される一対の信号線路導体13aと、一方の信号線路導体13aの一部分であって、電子部品21が搭載されて電子部品21の下面の接地電極と接続される部品搭載領域となる接地用導体13bとが、それぞれ形成されている。また、配線基板13の対向面とは反対側の裏面には、配線基板13が基板支持部14に搭載されたときに該基板支持部14と接合される搭載用導体が形成されていてもよい。
例えば、配線基板13において信号端子12の一端部12aに面した対向面と反対側の裏面に搭載用導体が設けられ、配線基板13に垂直な方向から見て、搭載用導体が一対の信号端子12の一端部12aと重ならないように設けられる場合には、一端部12aと基板支持部14とを結ぶ最短距離を、信号端子12および信号線路導体13aを伝送する高周波信号の波長の1/4以下にすることが好ましい。これにより、高周波信号が信号端子12を伝送する際に生じる共振を抑制できる。
なお、配線基板13において対向面と反対側の裏面に搭載用導体が設けられていない場合にも前述と同様に、一端部12aと基板支持部14とを結ぶ最短距離を、信号端子12および信号線路導体13aを伝送する高周波信号の波長の1/4以下にすることが好ましく、これにより、前述と同様に、高周波信号が信号端子12を伝送される際に生じる共振を抑制できる。
また、配線基板13において対向面と反対側の裏面に搭載用導体が設けられ、配線基板13に垂直な方向から見て、搭載用導体が一対の信号端子12の一端部12aと重なるように設けられる場合には、搭載用導体を通過しないように結ぶ、一端部12aと基板支持部14との最短距離を、信号端子12および信号線路導体13aを伝送する高周波信号の波長の1/4以下にすることが好ましい。これにより、高周波信号が信号端子12を伝送する際に生じる共振を抑制できる。
信号端子12は、一端部12aを基体11の一主面11aから信号線路導体13aと重なるまで突出させ、他端部を基体11の他主面11dから1〜20mm突出させて、貫通孔11b内に充填された封止材11cによって固定される。たとえば、図6に示す例のように、信号端子12の一端部12aと電子部品21とを信号線路導体13aを介して電気的に接続するとともに、信号端子12の他端部を外部電気回路(不図示)に電気的に接続することによって、信号端子12は電子部品21と外部電気回路との間の入出力信号を伝送する機能を果たす。
封止材11cは、ガラスやセラミックスなどの絶縁性の無機材料から成り、信号端子12と基体11との絶縁間隔を確保するとともに、信号端子12を基体11の貫通孔11b内に固定する。このような封止材11cの例としては、ホウケイ酸ガラス、ソーダガラス等のガラス、およびこれらのガラスに封止材11cの熱膨張係数や比誘電率を調整するためのセラミックフィラーを加えたものが挙げられ、インピーダンスマッチングのためにその比誘電率を適宜選択する。比誘電率を低下させるセラミックフィラーとしては、酸化リチウム等が挙げられる。
信号端子12は、Fe−Ni−Co合金やFe−Ni合金等の金属から成る。たとえば信号端子12がFe−Ni−Co合金から成る場合には、この合金のインゴット(塊)に圧延加工や打ち抜き加工、切削加工等の周知の金属加工を施すことによって、長さが1.5〜22mmで直径が0.1〜1mmの線状の信号端子12が作製される。信号端子12の強度を確保しながらより高い特性インピーダンスでのマッチングを行ないつつ小型化するには、信号端子12の直径は0.15〜0.25mmであることが好ましい。信号端子12の直径が0.15mmよりも小さくなると、電子部品搭載用パッケージ1を実装する際に、信号端子12が曲がりやすくなり、実装時の作業性が低下するおそれがある。また、信号端子12の直径が0.25mmよりも大きくなると、インピーダンス整合させた場合の貫通孔11bの径が信号端子12の径に伴い大きくなるので、小型化が困難になる。
貫通孔11bに充填された封止材11cを貫通して信号端子12を固定するには、たとえば、封止材11cがガラスから成る場合は、まず、周知の粉体プレス法や押し出し成形法によってガラス粉末を成形して、内径を信号端子12の外径に合わせ、外径を貫通孔11bの形状に合わせた筒状の、封止材11cの成形体を作製する。次に、この筒状の封止材11cの成形体に信号端子12を挿通して成形体を型に挿入し、所定の温度に加熱してガラスを溶融させた後、冷却してガラスを固化させることによって、信号端子12が固定された所定形状の封止材11cを形成する。その後、この信号端子12が固定された封止材11cを基体11の貫通孔11b内に挿入し、所定の温度に加熱した炉内を通過させて基体11と信号端子12とを封止材11cを介して固定する。これにより、封止材11cによって貫通孔11bが気密に封止されるとともに、封止材11cによって信号端子12が基体11と絶縁されて固定される。貫通孔11bに固定された信号端子12と基体11とは、同軸線路を形成する。あらかじめ貫通孔11bの形状に合わせた筒状の封止材11cだけを形成しておき、これを貫通孔11bに挿入するとともに信号端子12も封止材11cに通し、封止材11cと貫通孔11bの内面との接合、および封止材11cと信号端子12の外面との接合を同時に行なってもよい。
図2に示すように、基体11には接地端子16が接合される。接地端子16は、信号端子12と同様にして作製され、基体11の他主面11dに接合材11e(ろう材)等を用いて接合される。位置決めの容易性と接合強度の向上のために、予め基体11の他主面11dに穴を形成しておき、その穴に接地端子16を挿入して接合してもよい。このようにして基体11に接地端子16を接合することによって、信号端子12を外部電気回路に接続した際には、基体11が接地導体としても機能する。
図1,3に示すように、配線基板13は、該配線基板13の前記対向面に垂直な方向から見たときに、基体11の一主面11aに垂直な2つの短辺を有する矩形状である。そして、本実施形態では、配線基板13は、配線基板13の前記対向面に垂直な方向から見たときに、短辺側の両端部が一対の信号端子12の各一端部12aから外方に延出している。
配線基板13は、酸化アルミニウム(アルミナ:Al2O3)質焼結体、窒化アルミニウム(AlN)質焼結体等のセラミックス絶縁材料等から成る絶縁基板に信号線路導体13aを含む配線導体が形成されたものである。絶縁基板がたとえば酸化アルミニウム質焼結体から成る場合であれば、まずアルミナ(Al2O3)やシリカ(SiO2)、カルシア(CaO)、マグネシア(MgO)等の原料粉末に適当な有機溶剤、溶媒を添加混合して泥漿状とし、これを周知のドクターブレード法やカレンダーロール法等によってシート状に成形してセラミックグリーンシート(以下、グリーンシートともいう)を得る。その後、グリーンシートを所定形状に打ち抜き加工するとともに必要に応じて複数枚積層し、これを約1600℃の温度で焼成することによって作製される。
配線基板13は、配線導体として、たとえば、絶縁基板の上面(配線基板13において信号端子12の一端部12aに面した対向面)に形成された一対の信号線路導体13aおよび接地用導体13bと、絶縁基板の下面(配線基板13において対向面の裏面)に形成された搭載用導体と、を有する。一対の信号線路導体13aは、それぞれ、一対の信号端子12の各一端部12aと接続される。接地用導体13bは、電子部品21が搭載されて電子部品21の下面の接地電極と接続される部品搭載領域となる。搭載用導体は、配線基板13が基板支持部14に搭載されたときに該基板支持部14と接合される。接地用導体13bと搭載用導体とは、絶縁基板の側面に形成された接続導体、または絶縁基板を貫通して形成された接続導体によって接続される場合がある。または、接地用導体13bは、接合材15および信号端子12を介して外部電気回路の接地導体に電気的に接続され、搭載用導体は、基板支持部14および接地端子16を介して外部電気回路の接地導体に電気的に接続される。
信号線路導体13aは、電子部品21に信号端子12からの高周波信号を伝送する機能を有する。また信号線路導体13aは、電子部品21の種類によってその接続構造が異なり、電子部品21の種類に応じて形成されるものである。また、電子部品21と信号線路導体13aとはたとえばボンディングワイヤによって接続されるが、このボンディングワイヤを短くして信号の伝送損失を少なくするために、たとえば図5に示す例のように信号線路導体13aを屈曲させることによって、信号線路導体13aを伝送する信号の信号経路を屈曲させ、ボンディングワイヤの接続位置が電子部品21にできるだけ近くなるようにするのが好ましい。
信号線路導体13aを伝送する信号の信号経路を屈曲させる場合には、その信号経路は、屈曲点を端点とする2つの半直線で表される第1の信号経路と、第2の信号経路とから成る。第1の信号経路と第2の信号経路とが成す内部の角度(屈曲角度)は、90°よりも大きいことが好ましく、120°以上であることがより好ましい。これによって、信号線路導体13aにおける、信号経路が屈曲した屈曲部での反射による高周波の損失を少なくすることができる。信号経路を屈曲させる場合、複数の屈曲点を有するように段階的に信号経路を屈曲させてもよい。また、信号経路が屈曲した構造において、信号線路導体13aの外形を多角形状とする場合、信号経路が屈曲した屈曲部に対応して、複数の角部を組み合わせるのが好ましい。そして、信号経路が屈曲した屈曲部に対応した各角部の内角は、90°よりも大きいことが好ましく、120°以上であることがより好ましい。これによって、角部による高周波の損失をより少なくすることができる。なお、図5に示す例では、信号線路導体13aは、信号経路が屈曲した屈曲部に対応して、外方側では複数の角部が組み合わされているが、内方側でも複数の角部が組み合わされるのが好ましい。また、信号線路導体13aの外形を多角形状とする場合、信号経路が屈曲した屈曲部に対応した角部の外形を、円弧状とすることが好ましい。これによって、高周波の損失をより少なくすることができる。
また、信号線路導体13aは、配線基板13に垂直な方向から見て、基板支持部14と重ならないように設けられることが好ましい。これによって、信号線路導体13aと、信号端子12、配線基板13、基板支持部14および接合材(ろう材)15との熱膨張係数差に起因して生じる熱応力が、接合材15を介した信号端子12と信号線路導体13aとの接合部に集中することを抑制できるので、接合材15を介した信号端子12と信号線路導体13aとの接合部に生じるクラックや剥がれを抑制できるとともに、信号端子12と信号線路導体13aとの接合部における電気的な接続不良が生じることを抑制できる。
信号線路導体13aを含む配線導体を絶縁基板に形成する方法としては、絶縁基板と同時焼成で配線導体を形成する方法、あるいは絶縁基板を作製した後に金属メタライズを形成する周知の方法や、絶縁基板を作製した後に蒸着法やフォトリソグラフィ法によって配線導体を形成する方法がある。電子装置2が小型である場合には、それに搭載される配線基板13は小さいので、配線導体は微細なものとなる。このような微細な配線導体を形成する場合には、配線導体の信号線路導体13aと信号端子12との位置合わせ精度を高めるために、蒸着法やフォトリソグラフィ法によって配線導体を形成することが好ましい。この場合は、必要に応じて絶縁基板の主面に研磨加工を施す場合もある。
以下、配線導体を蒸着法やフォトリソグラフィ法によって形成する場合について詳細に説明する。配線導体は、たとえば密着金属層、拡散防止層および主導体層が順次積層された3層構造の導体層から成る。
密着金属層は、セラミックス等から成る絶縁基板との密着性を良好にするという観点からは、チタン(Ti)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、ニッケル−クロム(Ni−Cr)合金、窒化タンタル(Ta2N)等の熱膨張率がセラミックスと近い金属のうちの少なくとも1種より成るのが好ましく、その厚みは0.01〜0.2μmが好ましい。密着金属層の厚みが0.01μm未満では、密着金属層を絶縁基板に強固に密着することが困難となる傾向があり、0.2μmを超えると、成膜時の内部応力によって密着金属層が絶縁基板から剥離し易くなる傾向がある。
拡散防止層は、密着金属層と主導体層との相互拡散を防ぐという観点からは、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ニッケル(Ni)、Ni−Cr合金、Ti−W合金等の熱伝導性の良好な金属のうち少なくとも1種より成ることが好ましく、その厚みは0.05〜1μmが好ましい。拡散防止層の厚みが0.05μm未満では、ピンホール等の欠陥が発生して拡散防止層としての機能を果たしにくくなる傾向があり、1μmを超えると、成膜時の内部応力によって拡散防止層が密着金属層から剥離し易く成る傾向がある。なお、拡散防止層にNi−Cr合金を用いる場合は、Ni−Cr合金は絶縁基板との密着性が良好であるので、密着金属層を省くことも可能である。
主導体層は、電気抵抗の小さい金(Au)、Cu、Ni、銀(Ag)の少なくとも1種より成ることが好ましく、その厚みは0.1〜5μmが好ましい。主導体層の厚みが0.1μm未満では、電気抵抗が大きなものとなり配線基板13の配線導体に要求される電気抵抗を満足できなくなる傾向があり、5μmを超えると、成膜時の内部応力によって主導体層が拡散防止層から剥離し易く成る傾向がある。また、Cuは酸化し易いので、その上にNiおよびAuからなる保護層を被覆してもよい。
このようにして作製した配線基板13を基板支持部14に接合し、信号端子12の一端部12aと信号線路導体13aとを接合材(ろう材)15で接続することによって、本実施形態に係る電子部品搭載用パッケージ1となる。
そして、電子部品21を電子部品搭載用パッケージ1における配線基板13上に搭載するとともに、必要に応じて基体11に蓋体を接合することによって、図6〜図12に示す例のような本実施形態の電子装置2となる。
本実施形態に係る電子装置2は、電子部品搭載用パッケージ1に電子部品21が搭載されたものである。電子部品搭載用パッケージ1は、前述したように、不要な容量成分が生じることが抑制されて、特性インピーダンスがずれにくいものとすることができ、それ故、高周波信号の伝送特性を良好にすることができる、という効果を奏するものである。電子装置2は、前記効果を奏する電子部品搭載用パッケージ1に電子部品21が搭載されたものであるから、高周波での動作が良好な電子装置となる。
電子部品21としては、LD(レーザーダイオード)やPD(フォトダイオ−ド)等の光半導体素子、半導体集積回路素子を含む半導体素子、水晶振動子や弾性表面波素子等の圧電素子、圧力センサー素子、容量素子、抵抗器等が挙げられる。
電子部品21の配線基板13への搭載は、ろう材や導電性樹脂等の導電性の接合材を用いて固定することによって行なうことが可能である。たとえば、配線基板13を基板支持部14に搭載した後に電子部品21を配線基板13上に搭載する場合は、配線基板13の固定には金−錫(Au−Sn)合金や金−ゲルマニウム(Au−Ge)合金のろう材を接合材として用い、電子部品21の固定には、これらよりも融点の低い錫−銀(Sn−Ag)合金や錫−銀−銅(Sn−Ag−Cu)合金のろう材や、融点よりも低い温度で硬化可能な、Agエポキシ等の樹脂から成る接着剤を接合材として用いればよい。
また、電子部品21を配線基板13上に搭載した後に配線基板13を基板支持部14に搭載してもよく、その場合は上記とは逆に、配線基板13を基板支持部14に搭載する際に用いる接合材の融点の方を低くすればよい。いずれの場合であっても、配線基板13上に接合材のペーストを周知のスクリーン印刷法を用いて印刷したり、フォトリソグラフィ法によって接合材層を形成したり、接合材となる低融点ろう材のプリフォームを載置するなどすればよい。
電子装置2において必要に応じて基体11の一主面11a上に設けられる蓋体は、基体11の外周領域に沿った外形で、基体11の一主面11a上の配線基板13や基板支持部14を覆うような空間を有する形状のものである。蓋体には、電子部品21と対向する部分に光を透過させる窓を設けてもよいし、窓に換えて、または窓に加えて光ファイバおよび戻り光防止用の光アイソレータを接合したものでもよい。本実施形態に係る電子装置2は、外部と光学的に接続する光学素子の電子部品21を実装する場合には、電子部品21からの熱を外部に放散させる基板支持部14および基体11の機能によって、熱膨張による基体11の変形が抑制されるので、外部と電子部品21との光学接続のずれを小さくすることができ、光学特性を良好に維持することができる。
蓋体は、Fe−Ni−Co合金やFe−Ni合金、Fe−Mn合金等の金属から成り、これらの板材にプレス加工や打ち抜き加工等の周知の金属加工を施すことによって作製される。蓋体の材料としては、基体11の材料と同程度の熱膨張係数を有するものが好ましく、基体11の材料と同じものを用いるのがより好ましい。蓋体が窓を有する場合は、電子部品21と対向する部分に孔を設けたものに、平板状やレンズ状のガラス製の窓部材を低融点ガラスなどによって接合する。
蓋体の基体11への接合は、シーム溶接やYAGレーザ溶接等の溶接またはAu−Snろう材等の接合材によるろう接によって行われる。
図13〜図15は本発明の第2の実施形態に係る電子部品搭載用パッケージ1Aの構成を示す図である。また図16〜図18は本実施形態に係る電子部品搭載用パッケージ1Aを備えた電子装置2Aの構成を示す図である。
電子部品搭載用パッケージ1Aは、配線基板13Aに係る構成が前述した配線基板13と異なること以外は、電子部品搭載用パッケージ1と同様に構成される。また、電子装置2Aは、配線基板13Aを有する電子部品搭載用パッケージ1Aを備えたこと以外は、電子装置2と同様に構成される。このように本実施形態の電子部品搭載用パッケージ1Aおよび電子装置2Aは、前述した第1の実施形態に係る電子部品搭載用パッケージ1および電子装置2と同様の部分を有する。したがって、以下の説明および図において、対応する同様の部分については同一の参照符号を付すとともに、説明を省略する。
電子部品搭載用パッケージ1Aは、板状の基体11に形成された一対の貫通孔11bのそれぞれに設けられた一対の信号端子12の、基体11の一主面11aから厚み方向一方側に出た各一端部12aと、基体11の一主面11aから厚み方向一方側に設けられた基板支持部14に支持された配線基板13Aの一対の信号線路導体13Aaと、が接合材15で接合された構造を有する。電子部品搭載用パッケージ1Aにおいて、基板支持部14は、配線基板13Aの各信号端子12の一端部12aに面した対向面に垂直な方向から見たときに、各信号端子12の一端部12aと重ならないように設けられる。これによって、前述したように、信号端子12の一端部12aと基板支持部14との間に、生じる不要な容量成分が生じることが抑制され、ある特性インピーダンスにインピーダンスマッチングをとったときに、信号端子12の一端部12aにおける特性インピーダンスがずれにくいものとすることができる。その結果、高周波信号の伝送特性を良好にすることができる。
さらに、本実施形態において、配線基板13Aの前記対向面は、基体11の一主面11aに垂直な矩形状であり、2つの短辺13Abが一主面11aに垂直となっている。すなわち、配線基板13Aは、該配線基板13Aの前記対向面に垂直な方向から見たときに、基体11の一主面11aに垂直な2つの短辺13Abを有する矩形状である。そして、配線基板13Aにおいて、前記2つの短辺13Abは、それぞれ、前記対向面に垂直な方向から見たときに、一対の信号端子12の各一端部12aと重なる。すなわち、配線基板13Aは、前記対向面に垂直な方向から見たときに、一対の信号端子12の各一端部12aから外方に延出している部分がなく、長辺の長さが前述した配線基板13よりも短いものである。また、配線基板13Aは、各一端部12aよりも内方に短辺が位置するものよりも長辺の長さが長い。
このような、配線基板13よりも長辺の長さが短い配線基板13Aは、前記対向面の裏面において基板支持部14に当接されていない領域が小さくなるので、この領域の歪みが少ないものとなる。歪みを少なくできると、一端部12a、配線基板13A、信号線路導体13Aaおよび搭載用導体の相互の位置関係のずれを少なくできる。これにより、これらの周囲に生じる電界分布のずれも小さくなるので、特性インピーダンスが所望の値からずれることを抑制することができる。その結果、高周波信号の伝送特性をより安定なものにすることができる。
なお、一対の信号線路導体13Aaは、それぞれ、できるだけ短辺13Abに接近させて設けられる。好ましくは、一対の信号線路導体13Aaは、それぞれ、短辺13Abのエッジまで設けられる。したがって、一対の信号線路導体13Aaと一対の信号端子12の各一端部12aとの間を接合材15によってブリッジさせて電気的接続を図ることができる。
また、電子部品21を電子部品搭載用パッケージ1Aにおける配線基板13A上に搭載するとともに、必要に応じて基体11に蓋体を接合することによって、図16〜図18に示す例のような電子装置2Aとなる。電子装置2Aは、特性インピーダンスがずれにくい本実施形態に係る電子部品搭載用パッケージ1Aに電子部品21が搭載されているので、高周波での動作が良好な電子装置となる。
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を行なうことは何等差し支えない。
たとえば、上述の実施形態では、図1,13に示すような円形の基体11を用いた円柱状の電子部品搭載用パッケージ1,1Aを例として説明したが、角柱状の電子部品搭載用パッケージでも構わない。
また、電子部品21の発熱が大きい場合は、電子部品21(および配線基板13,13A)と基板支持部14との間に、ペルチェ素子等を搭載して、電子部品21を冷却するようにしてもよい。