以下、本発明にかかる液体現像剤(X)について説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表すものである。また、長さ、幅、厚さ、深さなどの寸法関係は図面の明瞭化と簡略化のために適宜変更されており、実際の寸法関係を表すものではない。
[液体現像剤の構成]
本実施の形態に係る液体現像剤(X)は、複写機、プリンタ、デジタル印刷機、簡易印刷機などの電子写真方式の画像形成装置(後述)において用いられる電子写真用液体現像剤、塗料、静電記録用液体現像剤、インクジェットプリンタ用油性インクまたは電子ペーパー用インクとして有用であり、トナー粒子(C)が絶縁性液体(L)に分散されてなる。トナー粒子(C)は、第1樹脂(a)を含む第1樹脂粒子(A)が第2樹脂(b)を含む第2樹脂粒子(B)の表面に付着または被覆されてなるコア・シェル構造を有する。以下では、「第1樹脂(a)」および「第1粒子(A)」をそれぞれ「シェル樹脂(a)」および「シェル粒子(A)」と記す。また、「第2樹脂(b)」および「第2粒子(B)」をそれぞれ「コア樹脂(b)」および「コア粒子(B)」と記す。
<シェル樹脂(a)>
本実施の形態におけるシェル樹脂(a)は、熱可塑性樹脂であっても良いし、熱硬化性樹脂であっても良い。シェル樹脂(a)としては、たとえば、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、および、ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。なお、シェル樹脂(a)として、上記列挙された樹脂の2種以上を併用してもよい。
本実施の形態に係る液体現像剤(X)が得られやすいという観点では、シェル樹脂(a)として、好ましくは、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、および、エポキシ樹脂の少なくとも1つを用いることであり、より好ましくは、ポリエステル樹脂、および、ポリウレタン樹脂の少なくとも1つを用いることである。
<ビニル樹脂>
ビニル樹脂は、重合性二重結合を有する単量体が単独重合されて得られた単独重合体(ビニルモノマーに由来する結合ユニットを含む単独重合体)であっても良いし、重合性二重結合を有する二種以上の単量体が共重合されて得られた共重合体(ビニルモノマーに由来する結合ユニットを含む共重合体)であっても良い。重合性二重結合を有する単量体としては、たとえば、下記(1)〜(9)が挙げられる。
(1) 重合性二重結合を有する炭化水素
重合性二重結合を有する炭化水素は、たとえば、下記(1−1)で示す重合性二重結合を有する脂肪族炭化水素、または、下記(1−2)で示す重合性二重結合を有する芳香族炭化水素などであることが好ましい。
(1−1) 重合性二重結合を有する脂肪族炭化水素
重合性二重結合を有する脂肪族炭化水素は、たとえば、下記(1−1−1)で示す重合性二重結合を有する鎖状炭化水素、または、下記(1−1−2)で示す重合性二重結合を有する環状炭化水素などであることが好ましい。
(1−1−1) 重合性二重結合を有する鎖状炭化水素
重合性二重結合を有する鎖状炭化水素としては、たとえば、炭素数が2〜30のアルケン(たとえば、エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセンまたはオクタデセンなど);炭素数が4〜30のアルカジエン(たとえば、ブタジエン、イソプレン、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエンまたは1,7−オクタジエンなど)などが挙げられる。
(1−1−2) 重合性二重結合を有する環状炭化水素
重合性二重結合を有する環状炭化水素としては、たとえば、炭素数が6〜30のモノまたはジシクロアルケン(たとえば、シクロヘキセン、ビニルシクロヘキセンまたはエチリデンビシクロヘプテンなど);炭素数が5〜30のモノまたはジシクロアルカジエン(たとえば、シクロペンタジエンまたはジシクロペンタジエンなど)などが挙げられる。
(1−2) 重合性二重結合を有する芳香族炭化水素
重合性二重結合を有する芳香族炭化水素としては、たとえば、スチレン;スチレンのハイドロカルビル(たとえば、炭素数が1〜30のアルキル、シクロアルキル、アラルキルおよび/またはアルケニル)置換体(たとえば、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、シクロヘキシルスチレン、ベンジルスチレン、クロチルベンゼン、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレンまたはトリビニルベンゼンなど);ビニルナフタレンなどが挙げられる。
(2) カルボキシル基と重合性二重結合を有する単量体およびそれらの塩
カルボキシル基と重合性二重結合を有する単量体としては、たとえば、炭素数が3〜15の不飽和モノカルボン酸[たとえば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸または桂皮酸など];炭素数が3〜30の不飽和ジカルボン酸(無水物)[たとえば、(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、(無水)シトラコン酸またはメサコン酸など];炭素数が3〜10の不飽和ジカルボン酸のモノアルキル(炭素数が1〜10)エステル(たとえば、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノデシルエステル、フマル酸モノエチルエステル、イタコン酸モノブチルエステルまたはシトラコン酸モノデシルエステルなど)などが挙げられる。本明細書では、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。
上記単量体の塩としては、たとえば、アルカリ金属塩(たとえば、ナトリウム塩またはカリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(たとえば、カルシウム塩またはマグネシウム塩など)、アンモニウム塩、アミン塩、および、4級アンモニウム塩などが挙げられる。
アミン塩としては、アミン化合物であれば特に限定されず、たとえば、1級アミン塩(たとえば、エチルアミン塩、ブチルアミン塩またはオクチルアミン塩など);2級アミン塩(たとえば、ジエチルアミン塩またはジブチルアミン塩など);3級アミン塩(たとえば、トリエチルアミン塩またはトリブチルアミン塩など)などが挙げられる。
4級アンモニウム塩としては、たとえば、テトラエチルアンモニウム塩、トリエチルラウリルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩およびトリブチルラウリルアンモニウム塩などが挙げられる。
カルボキシル基と重合性二重結合を有する単量体の塩としては、たとえば、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウム、マレイン酸モノナトリウム、マレイン酸ジナトリウム、アクリル酸カリウム、メタクリル酸カリウム、マレイン酸モノカリウム、アクリル酸リチウム、アクリル酸セシウム、アクリル酸アンモニウム、アクリル酸カルシウムおよびアクリル酸アルミニウムなどが挙げられる。
(3) スルホ基と重合性二重結合を有する単量体およびそれらの塩
スルホ基と重合性二重結合を有する単量体としては、たとえば、炭素数が2〜14のアルケンスルホン酸[たとえば、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸またはメチルビニルスルホン酸など];スチレンスルホン酸およびスチレンスルホン酸のアルキル(炭素数が2〜24)誘導体(たとえば、α−メチルスチレンスルホン酸など);炭素数が5〜18のスルホ(ヒドロキシ)アルキル−(メタ)アクリレート[たとえば、スルホプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロキシプロピルスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸または3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸など];炭素数が5〜18のスルホ(ヒドロキシ)アルキル(メタ)アクリルアミド[たとえば、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸または3−(メタ)アクリルアミド−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸など];アルキル(炭素数が3〜18)アリルスルホコハク酸(たとえば、プロピルアリルスルホコハク酸、ブチルアリルスルホコハク酸または2−エチルヘキシル−アリルスルホコハク酸など);ポリ[n(「n」は重合度を表わす。以下同様。)=2〜30]オキシアルキレン(たとえば、オキシエチレン、オキシプロピレンまたはオキシブチレンなど。ポリオキシアルキレンは、オキシアルキレンの単独重合体であっても良いし、オキシアルキレンの共重合体であっても良い。ポリオキシアルキレンがオキシアルキレンの共重合体である場合には、ランダム重合体であっても良いしブロック重合体であっても良い。);モノ(メタ)アクリレートの硫酸エステル[たとえば、ポリ(n=5〜15)オキシエチレンモノメタクリレート硫酸エステルまたはポリ(n=5〜15)オキシプロピレンモノメタクリレート硫酸エステルなど];下記化学式(1)〜(3)で表される化合物などが挙げられる。
上記化学式(1)〜(3)中、R1は炭素数が2〜4のアルキレン基を表わす。化学式(1)が2以上のR1Oを含む場合、2以上のR1Oは、同一のアルキレン基を用いて構成されても良いし、二種以上のアルキレン基が併用されて構成されても良い。二種以上のアルキレン基が併用される場合、化学式(1)におけるR1の配列はランダム配列であっても良いしブロック配列であっても良い。R2およびR3は、それぞれ独立に炭素数が1〜15のアルキル基を表わす。mおよびnは、それぞれ独立に1〜50の整数である。Arはベンゼン環を表わす。R4は、フッ素原子で置換されていても良い炭素数が1〜15のアルキル基を表わす。
スルホ基と重合性二重結合を有する単量体の塩としては、たとえば、上記「(2)カルボキシル基と重合性二重結合を有する単量体」において「上記単量体の塩」として列挙した塩が挙げられる。
(4) ホスホノ基と重合性二重結合を有する単量体およびその塩
ホスホノ基と重合性二重結合を有する単量体としては、たとえば、(メタ)アクリロイルオキシアルキルリン酸モノエステル(アルキル基の炭素数が1〜24)[たとえば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルホスフェートまたはフェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェートなど];(メタ)アクリロイルオキシアルキルホスホン酸(アルキル基の炭素数が1〜24)(たとえば2−アクリロイルオキシエチルホスホン酸など)などが挙げられる。
ホスホノ基と重合性二重結合を有する単量体の塩としては、たとえば、上記「(2)カルボキシル基と重合性二重結合を有する単量体」において「上記単量体の塩」として列挙した塩が挙げられる。
(5) ヒドロキシル基と重合性二重結合を有する単量体
ヒドロキシル基と重合性二重結合を有する単量体としては、たとえば、ヒドロキシスチレン、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール、イソクロチルアルコール、1−ブテン−3−オール、2−ブテン−1−オール、2−ブテン−1,4−ジオール、プロパルギルアルコール、2−ヒドロキシエチルプロペニルエーテルおよび庶糖アリルエーテルなどが挙げられる。
(6) 重合性二重結合を有する含窒素単量体
重合性二重結合を有する含窒素単量体としては、たとえば、下記(6−1)〜(6−4)で示す単量体が挙げられる。
(6−1) アミノ基と重合性二重結合を有する単量体
アミノ基と重合性二重結合を有する単量体としては、たとえば、アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチルメタクリレート、N−アミノエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アリルアミン、モルホリノエチル(メタ)アクリレート、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、クロチルアミン、N,N−ジメチルアミノスチレン、メチル−α−アセトアミノアクリレート、ビニルイミダゾール、N−ビニルピロール、N−ビニルチオピロリドン、N−アリールフェニレンジアミン、アミノカルバゾール、アミノチアゾール、アミノインドール、アミノピロール、アミノイミダゾールおよびアミノメルカプトチアゾールなどが挙げられる。
アミノ基と重合性二重結合を有する単量体は、上記列挙した単量体の塩であっても良い。上記列挙した単量体の塩としては、たとえば、上記「(2)カルボキシル基と重合性二重結合を有する単量体」において「上記単量体の塩」として列挙した塩が挙げられる。
(6−2) アミド基と重合性二重結合を有する単量体
アミド基と重合性二重結合を有する単量体としては、たとえば、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N’−メチレン−ビス(メタ)アクリルアミド、桂皮酸アミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジベンジルアクリルアミド、メタクリルホルムアミド、N−メチル−N−ビニルアセトアミドおよびN−ビニルピロリドンなどが挙げられる。
(6−3) ニトリル基と重合性二重結合を有する炭素数が3〜10の単量体
ニトリル基と重合性二重結合を有する炭素数が3〜10の単量体としては、たとえば、(メタ)アクリロニトリル、シアノスチレンおよびシアノアクリレートなどが挙げられる。
(6−4) ニトロ基と重合性二重結合を有する炭素数が8〜12の単量体
ニトロ基と重合性二重結合を有する炭素数が8〜12の単量体としては、たとえば、ニトロスチレンなどが挙げられる。
(7) エポキシ基と重合性二重結合を有する炭素数が6〜18の単量体
エポキシ基と重合性二重結合を有する炭素数が6〜18の単量体としては、たとえば、グリシジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
(8) ハロゲン元素と重合性二重結合を有する炭素数が2〜16の単量体
ハロゲン元素と重合性二重結合を有する炭素数が2〜16の単量体としては、たとえば、塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、アリルクロライド、クロロスチレン、ブロムスチレン、ジクロロスチレン、クロロメチルスチレン、テトラフルオロスチレンおよびクロロプレンなどが挙げられる。
(9) そのほか
重合性二重結合を有する単量体としては、上記単量体以外に、下記(9−1)〜(9−4)で示す単量体が挙げられる。
(9−1) 重合性二重結合を有する炭素数が4〜16のエステル
重合性二重結合を有する炭素数が4〜16のエステルとしては、たとえば、酢酸ビニル;プロピオン酸ビニル;酪酸ビニル;ジアリルフタレート;ジアリルアジペート;イソプロペニルアセテート;ビニルメタクリレート;メチル−4−ビニルベンゾエート;シクロヘキシルメタクリレート;ベンジルメタクリレート;フェニル(メタ)アクリレート;ビニルメトキシアセテート;ビニルベンゾエート;エチル−α−エトキシアクリレート;炭素数が1〜11のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート[たとえば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートまたは2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなど];ジアルキルフマレート(2個のアルキル基は、炭素数が2〜8の直鎖アルキル基、分枝アルキル基または脂環式のアルキル基である);ジアルキルマレエート(2個のアルキル基は、炭素数が2〜8の直鎖アルキル基、分枝アルキル基または脂環式のアルキル基である);ポリ(メタ)アリロキシアルカン類(たとえば、ジアリロキシエタン、トリアリロキシエタン、テトラアリロキシエタン、テトラアリロキシプロパン、テトラアリロキシブタンまたはテトラメタアリロキシエタンなど);ポリアルキレングリコール鎖と重合性二重結合を有する単量体{たとえば、ポリエチレングリコール[数平均分子量(以下「Mn」と略記する)=300]モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(Mn=500)モノアクリレート、メチルアルコールエチレンオキサイド(以下「エチレンオキサイド」を「EO」と略記する)10モル付加物(メタ)アクリレートまたはラウリルアルコールEO30モル付加物(メタ)アクリレートなど};ポリ(メタ)アクリレート類{たとえば、多価アルコール類のポリ(メタ)アクリレート[たとえば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートまたはポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなど]}などが挙げられる。
(9−2) 重合性二重結合を有する炭素数が3〜16のエーテル
重合性二重結合を有する炭素数が3〜16のエーテルとしては、たとえば、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル、ビニルブチルエーテル、ビニル−2−エチルヘキシルエーテル、ビニルフェニルエーテル、ビニル−2−メトキシエチルエーテル、メトキシブタジエン、ビニル−2−ブトキシエチルエーテル、3,4−ジヒドロ−1,2−ピラン、2−ブトキシ−2’−ビニロキシジエチルエーテル、アセトキシスチレンおよびフェノキシスチレンなどが挙げられる。
(9−3) 重合性二重結合を有する炭素数が4〜12のケトン
重合性二重結合を有する炭素数が4〜12のケトンとしては、たとえば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトンおよびビニルフェニルケトンなどが挙げられる。
(9−4) 重合性二重結合を有する炭素数2〜16の含硫黄化合物
重合性二重結合を有する炭素数2〜16の含硫黄化合物としては、たとえば、ジビニルサルファイド、p−ビニルジフェニルサルファイド、ビニルエチルサルファイド、ビニルエチルスルホン、ジビニルスルホンおよびジビニルスルホキサイドなどが挙げられる。
ビニル樹脂の具体例としては、たとえば、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−(無水)マレイン酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸−ジビニルベンゼン共重合体およびスチレン−スチレンスルホン酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体などが挙げられる。
ビニル樹脂としては、上記(1)〜(9)の重合性二重結合を有する単量体の単独重合体または共重合体であっても良いし、上記(1)〜(9)の重合性二重結合を有する単量体と分子鎖(k)を有する重合性二重結合を有する単量体(m)とが重合されたものであっても良い。分子鎖(k)としては、炭素数12〜27の直鎖状または分岐状炭化水素鎖、炭素数が4〜20のフルオロアルキル鎖およびポリジメチルシロキサン鎖などが挙げられる。単量体(m)中の分子鎖(k)と絶縁性液体(L)とのSP値の差は2以下であることが好ましい。本明細書では、「SP値」は、Fedorsによる方法[Polym.Eng.Sci.14(2)152,(1974)]により計算された数値である。
分子鎖(k)を有する重合性二重結合を有する単量体(m)としては、特に限定されないが、たとえば、下記の単量体(m1)〜(m4)などが挙げられる。単量体(m)としては、単量体(m1)〜(m4)の2種以上を併用しても良い。
炭素数が12〜27(好ましくは16〜25)の直鎖状炭化水素鎖と重合性二重結合を有する単量体(m1)
このような単量体(m1)としては、たとえば、不飽和モノカルボン酸のモノ直鎖状アルキル(アルキルの炭素数が12〜27)エステルおよび不飽和ジカルボン酸のモノ直鎖状アルキル(アルキルの炭素数が12〜27)エステルなどが挙げられる。上記不飽和モノカルボン酸および不飽和ジカルボン酸としては、たとえば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸およびシトラコン酸などの炭素数が3〜24のカルボキシル基含有ビニル単量体などが挙げられる。
単量体(m1)の具体例としては、たとえば、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシルおよび(メタ)アクリル酸エイコシルなどが挙げられる。
炭素数が12〜27(好ましくは16〜25)の分岐状炭化水素鎖と重合性二重結合を有する単量体(m2)
このような単量体(m2)としては、たとえば、不飽和モノカルボン酸の分岐状アルキル(アルキルの炭素数が12〜27)エステルおよび不飽和ジカルボン酸のモノ分岐状アルキル(アルキルの炭素数が12〜27)エステルなどが挙げられる。上記不飽和モノカルボン酸および不飽和ジカルボン酸としては、たとえば、単量体(m1)において不飽和モノカルボン酸および不飽和ジカルボン酸の具体例として列挙したものと同様のものが挙げられる。
単量体(m2)の具体例としては、たとえば、(メタ)アクリル酸2−デシルテトラデシルなどが挙げられる。
炭素数が4〜20のフルオロアルキル鎖と重合性二重結合を有する単量体(m3)
このような単量体(m3)としては、たとえば、下記化学式(4)で表されるパーフルオロアルキル(アルキル)(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる
CH2=CR−COO−(CH2)p−(CF3)q−Z:化学式(4)
上記化学式(4)中、Rは水素原子またはメチル基を表わし、pは0〜3の整数であり、qは2、4、6、8、10または12のいずれかであり、Zは水素原子またはフッ素原子を表わす。
単量体(m3)の具体例としては、たとえば、[(2−パーフルオロエチル)エチル](メタ)アクリル酸エステル、[(2−パーフルオロブチル)エチル](メタ)アクリル酸エステル、[(2−パーフルオロヘキシル)エチル](メタ)アクリル酸エステル、[(2−パーフルオロオクチル)エチル](メタ)アクリル酸エステル、[(2−パーフルオロデシル)エチル](メタ)アクリル酸エステル、および、[(2−パーフルオロドデシル)エチル](メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。
ポリジメチルシロキサン鎖と重合性二重結合を有する単量体(m4)
このような単量体(m4)としては、たとえば、下記化学式(5)で表される(メタ)アクリル変性シリコーンなどが挙げられる
CH2=CR−COO−((CH3)2SiO)m−Si(CH3)3:化学式(5)
上記化学式(5)中、Rは水素原子またはメチル基を表わし、mは平均値で15〜45である。
単量体(m4)の具体例としては、たとえば、変性シリコーンオイル(たとえば、信越シリコーン(株)製の「X−22−174DX」、「X−22−2426」または「X−22−2475」など)などが挙げられる。
単量体(m1)〜(m4)のうち好ましい単量体は単量体(m1)および単量体(m2)であり、より好ましい単量体は単量体(m2)である。
単量体(m)の含有率は、ビニル樹脂の質量に対して、好ましくは10〜90質量%であり、より好ましくは15〜80質量%であり、さらに好ましくは20〜60質量%である。単量体(m)の含有率が上記範囲内であれば、トナー粒子(C)同士が合一し難くなる。
上記(1)〜(9)の重合性二重結合を有する単量体と単量体(m1)と単量体(m2)とが重合されてビニル樹脂を構成している場合、単量体(m1)と単量体(m2)との質量比[(m1):(m2)]は、トナー粒子(C)の粒度分布とトナー粒子(C)の定着性との観点から、好ましくは90:10〜10:90であり、より好ましくは80:20〜20:80であり、さらに好ましくは70:30〜30:70である。
<ポリエステル樹脂>
ポリエステル樹脂としては、たとえば、ポリオールと、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸の酸無水物またはポリカルボン酸の低級アルキル(アルキル基の炭素数が1〜4)エステルとの重縮合物などが挙げられる。重縮合反応には、公知の重縮合触媒などが使用できる。
ポリオールとしては、たとえば、ジオール(10)、および、3〜8価またはそれ以上の価数を有するポリオール(11)(以下では「ポリオール(11)」と略記する)などが挙げられる。
ポリカルボン酸としては、たとえば、ジカルボン酸(12)、および、3〜6価またはそれ以上の価数を有するポリカルボン酸(13)(以下では「ポリカルボン酸(13)」と略記する)などが挙げられる。ポリカルボン酸の酸無水物としては、たとえば、ジカルボン酸(12)の酸無水物およびポリカルボン酸(13)の酸無水物などが挙げられる。ポリカルボン酸の低級アルキルエステルとしては、たとえば、ジカルボン酸(12)の低級アルキルエステルおよびポリカルボン酸(13)の低級アルキルエステルなどが挙げられる。
ポリオールとポリカルボン酸との比率は、特に限定されない。水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]との当量比([OH]/[COOH])が好ましくは2/1〜1/5となるように、より好ましくは1.5/1〜1/4となるように、さらに好ましくは1.3/1〜1/3となるように、ポリオールとポリカルボン酸との比率を設定すれば良い。
ジオール(10)としては、たとえば、炭素数が2〜30のアルキレングリコール(たとえば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、テトラデカンジオール、ネオペンチルグリコールまたは2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオールなど);Mn=106〜10000のアルキレンエーテルグリコール(たとえばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはポリテトラメチレンエーテルグリコールなど);炭素数が6〜24の脂環式ジオール(たとえば1,4−シクロヘキサンジメタノールまたは水素添加ビスフェノールAなど);Mn=100〜10000の上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(以下「アルキレンオキサイド」を「AO」と略記する)付加物(付加モル数が2〜100)(たとえば1,4−シクロヘキサンジメタノールEO10モル付加物など);炭素数が15〜30のビスフェノール類(たとえば、ビスフェノールA、ビスフェノールFもしくはビスフェノールSなど)AO[たとえば、EO、プロピレンオキサイド(以下「PO」と略記する)もしくはブチレンオキサイドなど]付加物(付加モル数が2〜100)または炭素数が12〜24のポリフェノール(たとえばカテコール、ハイドロキノンもしくはレゾルシンなど)の上記AO付加物(たとえば、ビスフェノールAのEO2〜4モル付加物またはビスフェノールAのPO2〜4モル付加物など);重量平均分子量(以下「Mw」と略記する)=100〜5000のポリラクトンジオール(たとえばポリ−ε−カプロラクトンジオールなど);Mwが1000〜20000のポリブタジエンジオールなどが挙げられる。
これらのうちジオール(10)として好ましいのはアルキレングリコールおよびビスフェノール類のAO付加物であり、より好ましいのはビスフェノール類のAO付加物単体およびビスフェノール類のAO付加物とアルキレングリコールとの混合物である。
ポリオール(11)としては、たとえば、3〜8価またはそれ以上の価数を有し且つ炭素数が3〜10の脂肪族多価アルコール(たとえばグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビタンまたはソルビトールなど);炭素数が25〜50のトリスフェノールのAO(炭素数が2〜4)付加物(付加モル数が2〜100)(たとえば、トリスフェノールEO2〜4モル付加物またはトリスフェノールポリアミドPO2〜4モル付加物など);n=3〜50のノボラック樹脂(たとえばフェノールノボラックまたはクレゾールノボラックなど)のAO(炭素数が2〜4)付加物(付加モル数が2〜100)(たとえば、フェノールノボラックPO2モル付加物またはフェノールノボラックEO4モル付加物など);炭素数が6〜30のポリフェノール(たとえばピロガロール、フロログルシノールまたは1,2,4−ベンゼントリオールなど)のAO(炭素数が2〜4)付加物(付加モル数が2〜100)(たとえば、ピロガロールEO4モル付加物など);n=20〜2000のアクリルポリオール{たとえば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと他の重合性二重結合を有する単量体[たとえば、スチレン、(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸エステルなど]との共重合物など}などが挙げられる。
これらのうちポリオール(11)として好ましいのは脂肪族多価アルコールおよびノボラック樹脂のAO付加物であり、より好ましいのはノボラック樹脂のAO付加物である。
ジカルボン酸(12)としては、たとえば、炭素数が4〜32のアルカンジカルボン酸(たとえば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸またはオクタデカンジカルボン酸など);炭素数が4〜32のアルケンジカルボン酸(たとえばマレイン酸、フマール酸、シトラコン酸またはメサコン酸など);炭素数が8〜40の分岐アルケンジカルボン酸[たとえば、ダイマー酸、または、アルケニルコハク酸(たとえば、ドデセニルコハク酸、ペンタデセニルコハク酸もしくはオクタデセニルコハク酸など)など];炭素数が12〜40の分岐アルカンジカルボン酸[たとえば、アルキルコハク酸(たとえば、デシルコハク酸、ドデシルコハク酸またはオクタデシルコハク酸など)など];炭素数が8〜20の芳香族ジカルボン酸(たとえば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸またはナフタレンジカルボン酸など)などが挙げられる。
これらのうちジカルボン酸(12)として好ましいのはアルケンジカルボン酸および芳香族ジカルボン酸であり、より好ましいのは芳香族ジカルボン酸である。
ポリカルボン酸(13)としては、たとえば、炭素数が9〜20の芳香族ポリカルボン酸(たとえばトリメリット酸またはピロメリット酸など)などが挙げられる。
なお、ジカルボン酸(12)およびポリカルボン酸(13)の酸無水物としては、たとえば、トリメリット酸無水物およびピロメリット酸無水物などが挙げられる。また、ジカルボン酸(12)およびポリカルボン酸(13)の低級アルキルエステルとしては、たとえば、メチルエステル、エチルエステルおよびイソプロピルエステルなどが挙げられる。
<ポリウレタン樹脂>
ポリウレタン樹脂としては、たとえば、ポリイソシアネート(14)と活性水素含有化合物{たとえば、水;ポリオール[たとえば、ジオール(10)(ヒドロキシル基以外の官能基を有するジオールを含む)またはポリオール(11)など];ポリカルボン酸[たとえば、ジカルボン酸(12)またはポリカルボン酸(13)など];ポリオールとポリカルボン酸との重縮合により得られるポリエステルポリオール;炭素数が6〜12のラクトンの開環重合体;ポリアミン(15);ポリチオール(16);これらの併用など}との重付加物であっても良いし、ポリイソシアネート(14)と上記活性水素含有化合物とを反応させてなる末端イソシアネート基プレポリマーと、当該末端イソシアネート基プレポリマーのイソシアネート基に対して等量の1級および/または2級モノアミン(17)とを反応させて得られるアミノ基含有ポリウレタン樹脂であっても良い。
ポリウレタン樹脂中のカルボキシル基の含有率は、好ましくは0.1〜10質量%である。
ポリイソシアネート(14)としては、たとえば、炭素数(NCO基中の炭素を除く。以下<ポリウレタン樹脂>においては同様。)が6〜20の芳香族ポリイソシアネート;炭素数が2〜18の脂肪族ポリイソシアネート;これらのポリイソシアネートの変性物(たとえば、ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基またはオキサゾリドン基などを含む変性物);これら2種以上の併用などが挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、たとえば、1,3−または1,4−フェニレンジイソシアネート;2,4−または2,6−トリレンジイソシアネート(以下「TDI」と略記する);粗製TDI;m−またはp−キシリレンジイソシアネート;α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート;2,4’−または4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下「MDI」と略記する);粗製MDI{たとえば、粗製ジアミノフェニルメタン[たとえば、ホルムアルデヒドと芳香族アミン(1種であっても良いし2種以上を併用しても良い)との縮合生成物、もしくは、ジアミノジフェニルメタンと少量(たとえば5〜20質量%)の3以上のアミン基を有するポリアミンとの混合物など]のホスゲン化物、または、ポリアリルポリイソシアネートなど};1,5−ナフチレンジイソシアネート;4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート;m−またはp−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート;これら2種以上の併用などが挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、たとえば、鎖状脂肪族ポリイソシアネートおよび環状脂肪族ポリイソシアネートなどが挙げられる。
鎖状脂肪族ポリイソシアネートとしては、たとえば、エチレンジイソシアネート;テトラメチレンジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(以下「HDI」と略記する);ドデカメチレンジイソシアネート;1,6,11−ウンデカントリイソシアネート;2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート;リジンジイソシアネート;2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート;ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート;ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート;2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート;これら2種以上の併用などが挙げられる。
環状脂肪族ポリイソシアネートとしては、たとえば、イソホロンジイソシアネート(以下「IPDI」と略記する);ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(水添MDI);シクロヘキシレンジイソシアネート;メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水添TDI);ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシレート;2,5−または2,6−ノルボルナンジイソシアネート;これら2種以上の併用などが挙げられる。
ポリイソシアネートの変性物には、ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基およびオキサゾリドン基の少なくとも1つを含むポリイソシアネート化合物などが挙げられる。ポリイソシアネートの変性物としては、たとえば、変性MDI(たとえば、ウレタン変性MDI、カルボジイミド変性MDIまたはトリヒドロカルビルホスフェート変性MDIなど);ウレタン変性TDI;これら2種以上の併用[たとえば、変性MDIとウレタン変性TDI(たとえばイソシアネート含有プレポリマーなど)との併用など]などが挙げられる。
これらのうちポリイソシアネート(14)として好ましいのは、炭素数が6〜15の芳香族ポリイソシアネートおよび炭素数が4〜15の脂肪族ポリイソシアネートであり、更に好ましいのは、TDI、MDI、HDI、水添MDIおよびIPDIである。
ポリアミン(15)としては、たとえば、炭素数が2〜18の脂肪族ポリアミン、および、芳香族ポリアミン(たとえば炭素数が6〜20)などが挙げられる。
炭素数が2〜18の脂肪族ポリアミンとしては、たとえば、鎖状脂肪族ポリアミン;鎖状脂肪族ポリアミンのアルキル(炭素数が1〜4)置換体;鎖状脂肪族ポリアミンのヒドロキシアルキル(炭素数が2〜4)置換体;環状脂肪族ポリアミンなどが挙げられる。
鎖状脂肪族ポリアミンとしては、たとえば、炭素数が2〜12のアルキレンジアミン(たとえば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミンまたはヘキサメチレンジアミンなど);ポリアルキレン(炭素数が2〜6)ポリアミン[たとえば、ジエチレントリアミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンまたはペンタエチレンヘキサミンなど]などが挙げられる。
鎖状脂肪族ポリアミンのアルキル(炭素数が1〜4)置換体および鎖状脂肪族ポリアミンのヒドロキシアルキル(炭素数が2〜4)置換体としては、たとえば、ジアルキル(炭素数が1〜3)アミノプロピルアミン;トリメチルヘキサメチレンジアミン;アミノエチルエタノールアミン;2,5−ジメチル−2,5−ヘキサメチレンジアミン;メチルイミノビスプロピルアミンなどが挙げられる。
環状脂肪族ポリアミンとしては、たとえば、炭素数が4〜15の脂環式ポリアミン[たとえば、1,3−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、メンセンジアミン、4,4’−メチレンジシクロヘキサンジアミン(水添メチレンジアニリン)または3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなど];炭素数が4〜15の複素環式ポリアミン[たとえば、ピペラジン、N−アミノエチルピペラジン、1,4−ジアミノエチルピペラジンまたは1,4−ビス(2−アミノ−2−メチルプロピル)ピペラジンなど]などが挙げられる。
芳香族ポリアミン(炭素数が6〜20)としては、たとえば、非置換芳香族ポリアミン;アルキル基(たとえば、メチル基、エチル基、n−またはイソプロピル基およびブチル基などの炭素数が1〜4のアルキル基)を有する芳香族ポリアミン;電子吸引基(たとえば、Cl、Br、IおよびFなどのハロゲン原子、メトキシ基およびエトキシ基などのアルコキシ基ならびにニトロ基など)を有する芳香族ポリアミン;2級アミノ基を有する芳香族ポリアミンなどが挙げられる。
非置換芳香族ポリアミンとしては、たとえば、1,2−、1,3−または1,4−フェニレンジアミン;2,4’−または4,4’−ジフェニルメタンジアミン;クルードジフェニルメタンジアミン(たとえば、ポリフェニルポリメチレンポリアミン);ジアミノジフェニルスルホン;ベンジジン;チオジアニリン;ビス(3,4−ジアミノフェニル)スルホン;2,6−ジアミノピリジン;m−アミノベンジルアミン;トリフェニルメタン−4,4’,4”−トリアミン;ナフチレンジアミン;これら2種以上の併用などが挙げられる。
アルキル基(たとえば、メチル基、エチル基、n−またはイソプロピル基およびブチル基などの炭素数が1〜4のアルキル基)を有する芳香族ポリアミンとしては、たとえば、2,4−または2,6−トリレンジアミン、クルードトリレンジアミン、ジエチルトリレンジアミン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ビス(o−トルイジン)、ジアニシジン、ジアミノジトリルスルホン、1,3−ジメチル−2,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジエチル−2,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジメチル−2,6−ジアミノベンゼン、1,4−ジエチル−2,5−ジアミノベンゼン、1,4−ジイソプロピル−2,5−ジアミノベンゼン、1,4−ジブチル−2,5−ジアミノベンゼン、2,4−ジアミノメシチレン、1,3,5−トリエチル−2,4−ジアミノベンゼン、1,3,5−トリイソプロピル−2,4−ジアミノベンゼン、1−メチル−3,5−ジエチル−2,4−ジアミノベンゼン、1−メチル−3,5−ジエチル−2,6−ジアミノベンゼン、2,3−ジメチル−1,4−ジアミノナフタレン、2,6−ジメチル−1,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジイソプロピル−1,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジブチル−1,5−ジアミノナフタレン、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン、3,3’,5,5’−テトライソプロピルベンジジン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトライソプロピル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラブチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,5−ジエチル−3’−メチル−2’,4−ジアミノジフェニルメタン、3,5−ジイソプロピル−3’−メチル−2’,4−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジエチル−2,2’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’,5,5’−テトライソプロピル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’,5,5’−テトラエチル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’,5,5’−テトライソプロピル−4,4’−ジアミノジフェニルスルホンおよびこれら2種以上の併用などが挙げられる。
電子吸引基(たとえば、Cl、Br、IおよびFなどのハロゲン原子、メトキシ基およびエトキシ基などのアルコキシ基ならびにニトロ基など)を有する芳香族ポリアミンとしては、たとえば、メチレンビス−o−クロロアニリン、4−クロロ−o−フェニレンジアミン、2−クロロ−1,4−フェニレンジアミン、3−アミノ−4−クロロアニリン、4−ブロモ−1,3−フェニレンジアミン、2,5−ジクロロ−1,4−フェニレンジアミン、5−ニトロ−1,3−フェニレンジアミン、3−ジメトキシ−4−アミノアニリン;4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチル−5,5’−ジブロモ−ジフェニルメタン、3,3’−ジクロロベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、ビス(4−アミノ−3−クロロフェニル)オキシド、ビス(4−アミノ−2−クロロフェニル)プロパン、ビス(4−アミノ−2−クロロフェニル)スルホン、ビス(4−アミノ−3−メトキシフェニル)デカン、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(4−アミノフェニル)テルリド、ビス(4−アミノフェニル)セレニド、ビス(4−アミノ−3−メトキシフェニル)ジスルフィド、4,4’−メチレンビス(2−ヨードアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−ブロモアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−フルオロアニリン)および4−アミノフェニル−2−クロロアニリンなどが挙げられる。
2級アミノ基を有する芳香族ポリアミンとしては、たとえば、上記非置換芳香族ポリアミン、アルキル基を有する芳香族ポリアミンおよび電子吸引基を有する芳香族ポリアミンにおける−NH2の一部または全部が−NH−R’(R’はアルキル基であり、たとえば、メチル基およびエチル基などの炭素数が1〜4の低級アルキル基)で置換されたもの[たとえば、4,4’−ジ(メチルアミノ)ジフェニルメタンまたは1−メチル−2−メチルアミノ−4−アミノベンゼンなど];ポリアミドポリアミン;ジカルボン酸(たとえばダイマー酸など)と過剰(酸1モル当り2モル以上)のポリアミン類(たとえば上記アルキレンジアミンまたはポリアルキレンポリアミンなど)との縮合により得られる低分子量ポリアミドポリアミン;ポリエーテルポリアミン;ポリエーテルポリオール(たとえばポリアルキレングリコールなど)のシアノエチル化物の水素化物などが挙げられる。
ポリチオール(16)としては、たとえば、炭素数が2〜36のアルカンジチオール(たとえば、エタンジチオール、1,4−ブタンジチオールおよび1,6−ヘキサンジチオールなど)などが挙げられる。
1級および/または2級モノアミン(17)としては、たとえば、炭素数が2〜24のアルキルアミン(たとえば、エチルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、ジエチルアミンまたはn−ブチル−n−ドデシルアミンなど)などが挙げられる。
<エポキシ樹脂>
エポキシ樹脂としては、たとえば、ポリエポキシド(18)の開環重合物;ポリエポキシド(18)と活性水素含有化合物[たとえば、水、ジオール(10)、ジカルボン酸(12)、ポリアミン(15)またはポリチオール(16)など]との重付加物;ポリエポキシド(18)とジカルボン酸(12)の酸無水物との硬化物などが挙げられる。
ポリエポキシド(18)は、分子中に2個以上のエポキシ基を有していれば、特に限定されない。硬化物の機械的性質の観点から、ポリエポキシド(18)として好ましいものは分子中にエポキシ基を2個有するものである。ポリエポキシド(18)のエポキシ当量(エポキシ基1個当たりの分子量)は、好ましくは65〜1000であり、より好ましくは90〜500である。エポキシ当量が1000以下であると、架橋構造が密になり、硬化物の耐水性、耐薬品性および機械的強度などの物性が向上する。一方、エポキシ当量が65未満であれば、ポリエポキシド(18)の合成が困難となることがある。
ポリエポキシド(18)としては、たとえば、芳香族ポリエポキシ化合物および脂肪族ポリエポキシ化合物などが挙げられる。
芳香族ポリエポキシ化合物としては、たとえば、多価フェノールのグリシジルエーテル体、芳香族多価カルボン酸のグリシジルエステル体、グリシジル芳香族ポリアミンおよびアミノフェノールのグリシジル化物などが挙げられる。
多価フェノールのグリシジルエーテル体としては、たとえば、ビスフェノールFジグリシジルエーテル;ビスフェノールAジグリシジルエーテル;ビスフェノールBジグリシジルエーテル;ビスフェノールADジグリシジルエーテル;ビスフェノールSジグリシジルエーテル;ハロゲン化ビスフェノールAジグリシジル;テトラクロロビスフェノールAジグリシジルエーテル;カテキンジグリシジルエーテル;レゾルシノールジグリシジルエーテル;ハイドロキノンジグリシジルエーテル;ピロガロールトリグリシジルエーテル;1,5−ジヒドロキシナフタリンジグリシジルエーテル;ジヒドロキシビフェニルジグリシジルエーテル;オクタクロロ−4,4’−ジヒドロキシビフェニルジグリシジルエーテル;テトラメチルビフェニルジグリシジルエーテル;ジヒドロキシナフチルクレゾールトリグリシジルエーテル;トリス(ヒドロキシフェニル)メタントリグリシジルエーテル;ジナフチルトリオールトリグリシジルエーテル;テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタンテトラグリシジルエーテル;p−グリシジルフェニルジメチルトリールビスフェノールAグリシジルエーテル;トリスメチル−t−ブチル−ブチルヒドロキシメタントリグリシジルエーテル;9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンジグリシジルエーテル;4,4’−オキシビス(1,4−フェニルエチル)テトラクレゾールグリシジルエーテル;4,4’−オキシビス(1,4−フェニルエチル)フェニルグリシジルエーテル、ビス(ジヒドロキシナフタレン)テトラグリシジルエーテル;フェノールまたはクレゾールノボラック樹脂のグリシジルエーテル体;リモネンフェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル体;ビスフェノールA2モルとエピクロロヒドリン3モルとの反応から得られるジグリシジルエーテル体;フェノールとグリオキザール、グルタールアルデヒド、またはホルムアルデヒドの縮合反応によって得られるポリフェノールのポリグリシジルエーテル体;レゾルシンとアセトンとの縮合反応により得られるポリフェノールのポリグリシジルエーテル体などが挙げられる。
芳香族多価カルボン酸のグリシジルエステル体としては、たとえば、フタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステルおよびテレフタル酸ジグリシジルエステルなどが挙げられる。
グリシジル芳香族ポリアミンとしては、たとえば、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルキシリレンジアミンおよびN,N,N’,N’−テトラグリシジルジフェニルメタンジアミンなどが挙げられる。
芳香族ポリエポキシ化合物としては、上記列挙した化合物以外に、p−アミノフェノールのトリグリシジルエーテル(アミノフェノールのグリシジル化物の一例);トリレンジイソシアネートまたはジフェニルメタンジイソシアネートとグリシドールとを反応させて得られるジグリシジルウレタン化合物;トリレンジイソシアネートまたはジフェニルメタンジイソシアネートとグリシドールとポリオールとを反応させて得られるグリシジル基含有ポリウレタン(プレ)ポリマー;ビスフェノールAのAO付加物のジグリシジルエーテル体などが挙げられる。
脂肪族ポリエポキシ化合物としては、たとえば、鎖状脂肪族ポリエポキシ化合物および環状脂肪族ポリエポキシ化合物などが挙げられる。脂肪族ポリエポキシ化合物は、ジグリシジルエーテルとグリシジル(メタ)アクリレートとの共重合体であっても良い。
鎖状脂肪族ポリエポキシ化合物としては、たとえば、多価脂肪族アルコールのポリグリシジルエーテル体、多価脂肪酸のポリグリシジルエステル体およびグリシジル脂肪族アミンなどが挙げられる。
多価脂肪族アルコールのポリグリシジルエーテル体としては、たとえば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、テトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテルおよびポリグリセロールポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。
多価脂肪酸のポリグリシジルエステル体としては、たとえば、ジグリシジルオキサレート、ジグリシジルマレート、ジグリシジルスクシネート、ジグリシジルグルタレート、ジグリシジルアジペートおよびジグリシジルピメレートなどが挙げられる。
グリシジル脂肪族アミンとしては、たとえば、N,N,N’,N’−テトラグリシジルヘキサメチレンジアミンなどが挙げられる。
環状脂肪族ポリエポキシ化合物としては、たとえば、トリスグリシジルメラミン、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、リモネンジオキサイド、ジシクロペンタジエンジオキサイド、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、エチレングリコールビスエポキシジシクロペンチルエーテル、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)ブチルアミンおよびダイマー酸ジグリシジルエステルなどが挙げられる。また、環状脂肪族ポリエポキシ化合物としては、前記芳香族ポリエポキシ化合物の水添化物も挙げられる。
<ポリアミド樹脂>
ポリアミド樹脂としては、たとえば、ラクタムの開環重合体、アミノカルボン酸の重縮合体およびポリカルボン酸とポリアミンとの重縮合体などが挙げられる。
<ポリイミド樹脂>
ポリイミド樹脂としては、たとえば、脂肪族ポリイミド樹脂(たとえば、脂肪族カルボン酸二無水物と脂肪族ジアミンとから得られる縮合重合体など)、および、芳香族ポリイミド樹脂(たとえば、芳香族カルボン酸二無水物と脂肪族ジアミンまたは芳香族ジアミンとから得られる縮合重合体など)などが挙げられる。
<ケイ素樹脂>
ケイ素樹脂としては、たとえば、分子鎖中に、ケイ素−ケイ素結合、ケイ素−炭素結合、シロキサン結合およびケイ素−窒素結合などの少なくとも1つを有する化合物(たとえば、ポリシロキサン、ポリカルボシランまたはポリシラザンなど)などが挙げられる。
<フェノール樹脂>
フェノール樹脂としては、たとえば、フェノール類(たとえば、フェノール、クレゾール、ノニルフェノール、リグニン、レゾルシンまたはカテコールなど)とアルデヒド類(たとえば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドまたはフルフラールなど)とから得られる縮合重合体などが挙げられる。
<メラミン樹脂>
メラミン樹脂としては、たとえば、メラミンとホルムアルデヒドとから得られる重縮合体などが挙げられる。
<ユリア樹脂>
ユリア樹脂としては、たとえば、尿素とホルムアルデヒドとから得られる重縮合体などが挙げられる。
<アニリン樹脂>
アニリン樹脂としては、たとえば、アニリンとアルデヒド類とを酸性下で反応して得られたものなどが挙げられる。
<アイオノマー樹脂>
アイオノマー樹脂としては、たとえば、重合性二重結合を有する単量体(たとえば、α−オレフィン系単量体またはスチレン系単量体など)とα,β−不飽和カルボン酸(たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチルエステル、無水マレイン酸またはマレイン酸モノエチルエステルなど)との共重合体で当該共重合体中のカルボン酸の一部または全部がカルボン酸塩(たとえば、カリウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩またはカルシウム塩など)であるものなどが挙げられる。
<ポリカーボネート樹脂>
ポリカーボネート樹脂としては、たとえば、ビスフェノール類(たとえば、ビスフェノールA、ビスフェノールFまたはビスフェノールSなど)と、ホスゲンまたは炭酸ジエステルなどとの縮合重合体などが挙げられる。
<結晶性・非結晶性>
シェル樹脂(a)は、結晶性樹脂(a1)であっても良いし、非結晶性樹脂(a2)であっても良いし、結晶性樹脂(a1)と非結晶性樹脂(a2)とが併用されたものであっても良い。トナー粒子(C)の定着性の観点から、シェル樹脂(a)は結晶性樹脂(a1)であることが好ましい。
本明細書において、「結晶性」とは、樹脂の軟化点(以下「Tm」と略記する)と樹脂の融解熱の最大ピーク温度(以下「Ta」と略記する)との比(Tm/Ta)が0.8以上1.55以下であることを意味し、DSCにより得られた結果は階段状の吸熱量変化を示すのではなく明確な吸熱ピークを有することを意味する。また、本明細書において、「非結晶性」とは、TmとTaとの比(Tm/Ta)が1.55より大きいことを意味する。TmおよびTaは以下の方法で測定することができる。
高化式フローテスター(たとえば(株)島津製作所製の「CFT−500D」)を用いて、Tmを測定することができる。具体的には、1gの測定試料を昇温速度6℃/分で加熱しながらプランジャーにより上記測定試料に1.96MPaの荷重を与え、直径1mmおよび長さ1mmのノズルから上記測定試料を押し出す。そして、「プランジャー降下量(流れ値)」と「温度」との関係をグラフに描く。プランジャーの降下量が当該降下量の最大値の1/2であるときの温度をグラフから読み取り、この値(測定試料の半分がノズルから押し出されたときの温度)をTmとする。
示差走査熱量計(たとえばセイコーインスツル(株)製の「DSC210」)を用いてTaを測定することができる。具体的には、まず、Taを測定するために用いる試料に対して前処理を行なう。試料を、130℃で溶融した後、130℃から70℃まで1.0℃/分の速度で降温させ、その後、70℃から10℃まで0.5℃/分の速度で降温させる。次に、DSC法により、試料を昇温速度20℃/分で昇温させて当該試料の吸発熱変化を測定し、「吸発熱量」と「温度」との関係をグラフに描く。このとき、20〜100℃に観測される吸熱ピークの温度をTa’とする。吸熱ピークが複数ある場合には最も吸熱量が大きいピークの温度をTa’とする。そして、試料を、(Ta’−10)℃で6時間保管した後、(Ta’−15)℃で6時間保管する。
次に、DSC法により、上記前処理が施された試料を降温速度10℃/分で0℃まで冷却してから昇温速度20℃/分で昇温させて吸発熱変化を測定し、「吸発熱量」と「温度」との関係をグラフに描く。そして、吸熱量が最大値をとったときの温度を融解熱の最大ピーク温度(Ta)とする。
<融点>
シェル樹脂(a)の融点は、好ましくは0〜220℃であり、より好ましくは30〜200℃であり、さらに好ましくは40〜80℃である。トナー粒子(C)の粒度分布、ならびに、液体現像剤(X)の粉体流動性、耐熱保管安定性および耐ストレス性などの観点から、シェル樹脂(a)の融点は液体現像剤(X)を製造するときの温度以上であることが好ましい。シェル樹脂の融点が液体現像剤を製造するときの温度よりも低いと、トナー粒子同士が合一することを防止し難くなることがあり、トナー粒子が分裂することを防止し難くなることがある。それだけでなく、トナー粒子の粒度分布における分布幅が狭くなり難い、別の言い方をすると、トナー粒子の粒径のバラツキが大きくなるおそれがある。
本明細書において、融点は、示差走査熱量測定装置(セイコーインスツル(株)製の「DSC20」または「SSC/580」など)を用いてASTM D3418−82に規定の方法に準拠して測定されたものである。
<MnおよびMw>
シェル樹脂(a)のMn[ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下「GPC」と略記する)で測定して得られたもの]は、好ましくは100〜5000000であり、好ましくは200〜5000000であり、より好ましくは500〜500000である。
本明細書において、樹脂(ポリウレタン樹脂を除く)のMnおよびMwは、テトラヒドロフラン(以下「THF」と略記する)の可溶分について、GPCを用いて、以下の条件で測定されたものである
測定装置:東ソー(株)製の「HLC−8120」
カラム:東ソー(株)製の「TSKgelGMHXL」(2本)と東ソー(株)製の「TSKgelMultiporeHXL−M」(1本)
試料溶液:0.25質量%のTHF溶液
カラムへのTHF溶液の注入量:100μl
流速:1ml/分
測定温度:40℃
検出装置:屈折率検出器
基準物質:東ソー(株)製の標準ポリスチレン(TSK standard PОLYSTYRENE)12点(分子量:500、1050、2800、5970、9100、18100、37900、96400、190000、355000、1090000、2890000)。
本明細書において、ポリウレタン樹脂のMnおよびMwは、GPCを用いて、以下の条件で測定されたものである
測定装置:東ソー(株)製の「HLC−8220GPC」
カラム:「Guardcоlumn α」(1本)と「TSKgel α―M」(1本)
試料溶液:0.125質量%のジメチルホルムアミド溶液
カラムへのジメチルホルムアミド溶液の注入量:100μl
流速:1ml/分
測定温度:40℃
検出装置:屈折率検出器
基準物質:東ソー(株)製の標準ポリスチレン(TSK standard PОLYSTYRENE)12点(分子量:500、1050、2800、5970、9100、18100、37900、96400、190000、355000、1090000、2890000)。
<SP値>
シェル樹脂(a)のSP値は、好ましくは7〜18(cal/cm3)1/2であり、より好ましくは8〜14(cal/cm3)1/2である。
<コア樹脂(b)>
本実施の形態におけるコア樹脂(b)としては、公知の樹脂であればいかなる樹脂であっても使用でき、コア樹脂(b)の具体例としては、シェル樹脂(a)の具体例として列挙したものと同様のものが挙げられる。シェル樹脂(a)の具体例として例示したもののうちコア樹脂(b)として好ましいのは、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ビニル樹脂およびこれらの併用である。より好ましくは、DSCによる融解熱が下記数式(1)〜(2)を満たすようにコア樹脂(b)が構成されていることであり、このようなコア樹脂(b)の具体例は後述のとおりである。
コア樹脂(b)のDSCによる融解熱は、以下の数式(1)〜(2)を満たす。
5≦H1≦70・・・・・・・・・数式(1)
0.2≦H2/H1≦1.0・・・数式(2)
上記数式(1)〜(2)において、H1は、DSCによる初回昇温時の融解熱(J/g)を表し、H2はDSCによる2回目昇温時の融解熱(J/g)を表す。
H1は、コア樹脂(b)の溶融速度の指標である。一般に、融解熱を有する樹脂は、シャープメルト性を有するため、少ないエネルギーで溶融させることができる。コア樹脂のH1が70を超えると、定着時に要するエネルギーを低減させることが難しく、よって、トナー粒子の定着性の低下を招く。一方、コア樹脂のH1が5未満であれば、定着時に要するエネルギーが少なくなりすぎるため、ドキュメントオフセットが発生し易くなる。しかし、コア樹脂(b)のH1が上記数式(1)を満たせば、ドキュメントオフセットの発生を防止でき、また定着性の低下を防止することができる。好ましくは15≦H1≦68であり、より好ましくは35≦H1≦65である。
上記数式(2)におけるH2/H1は、コア樹脂(b)の結晶化速度の指標である。一般に、樹脂からなる粒子(樹脂粒子)を溶融させた後に冷却して使用する場合、当該樹脂粒子中の結晶成分に結晶化されていない部分が存在していれば、当該樹脂粒子の抵抗値が下がる、または、当該樹脂粒子が可塑化されるなどという不具合が生じる。このような不具合が発生すると、冷却により得られた樹脂粒子の性能が当初設計した性能と異なることがある。以上のことから、樹脂粒子中の結晶成分を速やかに結晶化させ、樹脂粒子の性能に影響を与えないようにする必要がある。H2/H1は、より好ましくは0.3以上であり、さらに好ましくは0.4以上である。また、コア樹脂(b)の結晶化速度が速ければ、H2/H1は1.0に近づくため、H2/H1は、1.0に近い値を取ることが好ましい。
なお、上記数式(2)におけるH2/H1は、理論的には1.0を超えないが、DSCによる実測値では1.0を超えることがある。DSCによる実測値(H2/H1)が1.0を超えた場合も、上記式(2)を満たすものとする。
H1およびH2は、JIS−K7122(1987)「プラスチックの転移熱測定方法」に準拠して測定することができる。具体的には、まず、コア樹脂(b)を5mg採取して、アルミパンに入れる。示差走査熱量測定装置(たとえば、エスアイアイナノテクノロジー(株)製の「RDC220」またはセイコーインスツル(株)の「DSC20」など)を用いて、昇温速度を毎分10℃として、溶融によるコア樹脂(b)の吸熱ピークにおける温度(融点)を測定し、吸熱ピークの面積S1を求める。そして、求められた吸熱ピークの面積S1から、H1を算出することができる。H1を算出してから、冷却速度を90℃/分として0℃まで冷却した後、昇温速度を毎分10℃として、溶融によるコア樹脂(b)の吸熱ピークにおける温度(融点)を測定し、吸熱ピークの面積S2を求める。そして、求められた吸熱ピークの面積S2から、H2を算出することができる。
H1およびH2は、示差走査熱量計(たとえばセイコーインスツル(株)製の「DSC210」)を用いて以下に示す方法にしたがって測定することもできる。まず、0℃から180℃まで10℃/分の速度で標準試料とコア樹脂(b)とを加熱し、標準試料の熱量とコア樹脂(b)の熱量との差を測定する。測定された熱量の差がコア樹脂(b)のDSCによる溶融熱H1である。その後、冷却速度を90℃/分として0℃まで冷却した後、0℃から180℃まで10℃/分の速度で標準試料とコア樹脂(b)とを加熱し、標準試料の熱量とコア樹脂(b)の熱量との差を測定する。測定された熱量の差がコア樹脂(b)のDSCによる溶融熱H2である。
コア樹脂(b)の構成成分を適宜選択することにより、上記数式(1)〜(2)を満たすことが可能である。検証性向上の観点では、コア樹脂(b)の構成成分としては、たとえば、炭素数が4以上の直鎖状のアルキル骨格もつ単量体が好ましい。コア樹脂(b)を構成する単量体の好ましい例としては、たとえば、脂肪族ジカルボン酸および脂肪族ジオールなどが挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸として好ましいのは、炭素数が4〜20のアルカンジカルボン酸;炭素数が4〜36のアルカンジカルボン酸;これらのエステル形成性誘導体などである。脂肪族ジカルボン酸としてより好ましいのは、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸もしくはフマル酸などであり、または、これらのエステル形成性誘導体である。
脂肪族ジオールとして好ましいのは、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、または1,10−デカンジオールである。
<Mn、融点、ガラス転移温度(以下「Tg」と略記する)およびSP値>
コア樹脂(b)のMn、融点、TgおよびSP値は、それぞれ、用途によって好ましい範囲に適宜調整すればよい。
たとえば本実施の形態にかかる液体現像剤(X)を電子写真、静電記録または静電印刷などに使用される液体現像剤として用いる場合には、コア樹脂(b)のMn、融点、TgおよびSP値は以下に示す値をとることが好ましい。コア樹脂(b)のMnは、好ましくは1000〜5000000であり、より好ましくは2000〜500000である。コア樹脂(b)の融点は、好ましくは20〜300℃であり、より好ましくは80〜250℃である。コア樹脂(b)のTgは、好ましくは20〜200℃であり、より好ましくは40〜150℃である。コア樹脂(b)のSP値は、好ましくは8〜16(cal/cm3)1/2であり、より好ましくは9〜14(cal/cm3)1/2である。なお、Mnは、上記<MnおよびMw>で記載の方法にしたがって測定することができる。また、融点は、上記<融点>で記載の方法にしたがって測定することができる。
本明細書において、Tgは、示差走査熱量測定(DSC(Differential Scanning Calorimetry))法により測定しても良いし、フローテスターを用いて測定しても良い。DSC法によりTgを測定する場合には、たとえば、示差走査熱量測定装置(セイコーインスツル(株)製の「DSC20」または「SSC/580」など)を用いてASTM D3418−82に規定の方法に準拠してTgを測定することが好ましい。
フローテスターを用いてTgを測定する場合には、高化式フローテスター(たとえば、(株)島津製作所製の「CFT500型」など)を用いることが好ましい。この場合のTgの測定条件の一例を以下に示す
荷重:3MPa
昇温速度:3.0℃/min
ダイ口径:0.50mm
ダイ長さ:10.0mm。
<トナー粒子>
シェル粒子(A)の粒径は、コア粒子(B)の粒径よりも小さいことが好ましい。トナー粒子(C)の粒径均一性の観点から、粒径比[(シェル粒子(A)の体積平均粒径)/(コア粒子(B)の体積平均粒径)]は0.001〜0.3の範囲内にあることが好ましい。より好ましくは、粒径比の下限は0.003であり、上限は0.25である。粒径比が0.3より大きいと、シェル粒子(A)がコア粒子(B)の表面に効率良く吸着し難くなり、よって、得られるトナー粒子(C)の粒度分布における分布幅が広くなる傾向がある。一方、粒径比が0.001より小さいと、シェル粒子(A)の製造が困難となることがある。
シェル粒子(A)の体積平均粒径は、所望の粒径のトナー粒子(C)を得るのに適した粒径になるように、且つ、上記粒径比が上記好ましい範囲内に収まるように、適宜調整することができる。シェル粒子(A)の体積平均粒径は、好ましくは0.0005〜30μmである。シェル粒子(A)の体積平均粒径の上限は、より好ましくは20μmであり、さらに好ましくは10μmである。シェル粒子(A)の体積平均粒径の下限は、より好ましくは0.01μmであり、さらに好ましくは0.02μmであり、最も好ましくは0.04μmである。たとえば体積平均粒径が1μmのトナー粒子(C)を得たい場合には、シェル粒子(A)の体積平均粒径は、好ましくは0.0005〜0.3μmであり、より好ましくは0.001〜0.2μmである。たとえば体積平均粒径が10μmのトナー粒子(C)を得たい場合には、シェル粒子(A)の体積平均粒径は、好ましくは0.005〜3μmであり、より好ましくは0.05〜2μmである。たとえば体積平均粒径が100μmのトナー粒子(C)を得たい場合には、シェル粒子(A)の体積平均粒径は、好ましくは0.05〜30μmであり、より好ましくは0.1〜20μmである。
上記粒径比を上記好ましい範囲内に制御し易いという観点から、コア粒子(B)の体積平均粒径は、好ましくは0.1〜300μmであり、より好ましくは0.5〜250μmであり、さらに好ましくは1〜200μmである。
本明細書では、「体積平均粒径」は、レーザー式粒度分布測定装置(たとえば(株)堀場製作所製の「LA−920」またはコールター社製の「マルチサイザーIII」);光学系としてレーザードップラー法を用いる「ELS−800」(大塚電子(株)製)などを用いて測定可能である。異なる測定装置で体積平均粒径を測定したときにその測定値に差が生じた場合には、「ELS−800」での測定値を採用する。
シェル粒子(A)とコア粒子(B)との質量比[(A):(B)]は、好ましくは1:99〜70:30である。トナー粒子(C)の粒径の均一性および液体現像剤(X)の耐熱安定性などの観点から、上記比率[(A):(B)]は、より好ましくは2:98〜50:50であり、さらに好ましくは3:97〜35:65である。シェル粒子の含有率(質量比)が低すぎると、トナー粒子の耐ブロッキング性が低下することがある。シェル粒子の含有率(質量比)が高すぎると、トナー粒子の粒径均一性が低下することがある。
トナー粒子(C)の形状は、液体現像剤(X)の流動性およびその溶融レベリング性などの観点から、好ましくは球状である。具体的には、トナー粒子(C)の円形度の平均値(平均円形度)は、好ましくは0.92以上1.0以下であり、より好ましくは0.97以上1.0以下であり、さらに好ましくは0.98以上1.0以下である。なお、トナー粒子(C)の平均円形度が1.0に近ければ近いほど、トナー粒子(C)は球状に近い形状を有することとなる。コア粒子(B)が球状であればトナー粒子(C)が球状になりやすいため、コア粒子(B)は球状であることが好ましい。
本明細書において、平均円形度は、トナー粒子(C)を光学的に検知し、トナー粒子(C)の投影面積と等しい面積を有する円の周囲長を検知されたトナー粒子(C)の周囲長さで除した値である。具体的には、フロー式粒子像分析装置(たとえばシスメックス(株)製の「FPIA−2000」)を用いて平均円形度を測定する。詳細には、所定の容器に、あらかじめ不純固形物を除去した水100〜150mlを入れ、分散剤として界面活性剤(たとえば富士写真フイルム(株)製の「ドライウエル」)0.1〜0.5mlを加え、測定試料0.1〜9.5g程度をさらに加える。このようにして測定試料が分散された懸濁液に対して、超音波分散器(たとえば、ウエルボクリア社製の「ウルトラソニッククリーナ モデル VS−150」)を用いて、約1〜3分間、分散処理を行なう。これにより、分散濃度を3000〜10000個/μLにする。そして、分散処理後の試料溶液を用いて、測定試料の形状および粒度分布を測定する。
トナー粒子(C)の体積平均粒径は、用途により適宜決定されることが好ましいが、一般的には0.01μm以上100μm以下であることが好ましい。トナー粒子(C)の体積平均粒径の上限は、より好ましくは40μmであり、さらに好ましくは30μmであり、最も好ましくは20μmである。トナー粒子(C)の体積平均粒径の下限は、より好ましくは0.3μmであり、さらに好ましくは0.5μmである。
トナー粒子(C)の粒径均一性の観点から、トナー粒子(C)の体積分布の変動係数は、好ましくは1%以上100%以下であり、より好ましくは1〜50%であり、さらに好ましくは1〜30%であり、最も好ましくは1〜25%である。本明細書では、体積分布の変動係数は、レーザ式粒度分布測定装置(たとえば(株)堀場製作所製の「LA−920」)などの粒度分布測定装置を用いて測定される。
トナー粒子(C)の粒径均一性、液体現像剤(X)の流動性および液体現像剤(X)の耐熱安定性の観点から、トナー粒子(C)においてシェル粒子(A)によるコア粒子(B)の表面被覆率は、好ましくは50%以上であり、より好ましくは80%以上である。なお、表面被覆とは、シェル粒子(A)がコア粒子(B)の表面に付着または被覆されていることを意味する。また、シェル粒子(A)によるコア粒子(B)の表面被覆率は、たとえば、走査型電子顕微鏡(SEM)で得られる像の画像解析から下記数式(3)に基づいて求めることができる。そして、下記数式(3)で求められる表面被覆率を変えることにより、トナー粒子(C)の形状を制御することができる
表面被覆率(%)=シェル粒子(A)に覆われているコア粒子(B)の面積/[(シェル粒子(A)に覆われているコア粒子(B)の面積+シェル粒子(A)から露出しているコア粒子(B)の面積)]×100・・・・・数式(3)。
トナー粒子(C)の表面平均中心線粗さ(Ra)は、液体現像剤(X)の流動性の観点から、好ましくは0.01〜0.8μmである。表面平均中心線粗さ(Ra)は、粗さ曲線と当該粗さ曲線の中心線との偏差の絶対値を算術平均して得られた値であり、走査型プローブ顕微鏡システム(たとえば東陽テクニカ(株)製)などを用いて測定される。
トナー粒子(C)の粒度分布および液体現像剤(X)の耐熱安定性の観点から、トナー粒子(C)のコア・シェル構造は、トナー粒子(C)の質量に対して、1〜70質量%(より好ましくは5〜50質量%、さらに好ましくは10〜35質量%)の膜状のシェル粒子(A)と、30〜99質量%(より好ましくは50〜95質量%、さらに好ましくは65〜90質量%)のコア粒子(B)とで構成されることが好ましい。
トナー粒子(C)の定着性と液体現像剤(X)の耐熱安定性との観点から、液体現像剤(X)におけるトナー粒子(C)の含有率は、好ましくは10〜50質量%であり、より好ましくは15〜45質量%であり、さらに好ましくは20〜40質量%である。
<添加剤>
本実施の形態におけるトナー粒子(C)は、シェル粒子(A)およびコア粒子(B)の少なくとも一方に、着色剤を含んでいることが好ましく、着色剤以外の添加剤(たとえば、充填剤、帯電防止剤、離型剤、荷電制御剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、ブロッキング防止剤、耐熱安定剤および難燃剤など)をさらに含んでいても良い。
<着色剤>
着色剤としては、公知の顔料を特に限定することなく使用することができるが、コスト、耐光性および着色性などの観点から、以下に示す着色剤を使用することが好ましい。なお、色彩構成上、以下に示す着色剤は、通常、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンタ顔料およびシアン顔料に分類され、ブラック以外の色彩(カラー画像)は基本的にイエロー顔料、マゼンタ顔料およびシアン顔料の減法混色により調色される。また、着色剤としては、以下に示す顔料に対して酸性または塩基性などの溶剤を用いて表面処理を行ったものを使用しても良く、たとえば以下に示す顔料に酸性または塩基性のシナジストを併用しても良い。
ブラック顔料としては、たとえば、カーボンブラックなどが挙げられる。
イエロー顔料としては、たとえば、C.I.(カラーインデックス)Pigment Yellow12、同13、同14、同17、同55、同81、同83、同180および同185などのジスアゾ系イエロー顔料などが挙げられる。
マゼンタ顔料としては、たとえば、C.I.Pigment Red48、同57(カーミン6B)、同5、同23、同60、同114、同146および同186などのアゾレーキ系マゼンタ顔料;不溶性アゾ系マゼンタ顔料;C.I.Pigment Red88、C.I.Pigment Violet36および同38などのチオインジゴ系マゼンタ顔料;C.I.Pigment Red122および同209などのキナクリドン系マゼンタ顔料;C.I.Pigment Red269などのナフトール系マゼンタ顔料などが挙げられる。なお、マゼンタ顔料としては、これらのうちキナクリドン系顔料、カーミン系顔料およびナフトール系顔料のうち少なくとも1つが含まれていることが好ましく、より好ましくはこれら3種の顔料のうち2種類または3種類が含まれていることである。
シアン顔料としては、たとえば、C.I.Pigment Blue15:1、同15:3などの銅フタロシアニンブルー系シアン顔料;フタロシアニングリーン系顔料などが挙げられる。
<ワックス>
液体現像剤(X)の耐熱安定性などの観点から、添加剤として、ワックス(c)と重合性二重結合を有する単量体(ビニルモノマー)がワックス(c)にグラフト重合された変性ワックス(d)(以下では「変性ワックス(d)」と略記する)との少なくとも一方がコア粒子(B)(コア層)内に含まれていることが好ましい。
ワックス(c)の含有率は、コア粒子(B)の質量に対して、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは1〜15質量%である。変性ワックス(d)の含有率は、コア粒子(B)の質量に対して、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは0.5〜8質量%である。ワックス(c)と変性ワックス(d)との合計含有率は、コア粒子(B)の質量に対して、好ましくは25質量%以下であり、より好ましくは1〜20質量%である。
ワックス(c)としては、たとえば、合成ワックス(たとえばポリオレフィンワックスなど);天然ワックス(たとえばパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、カルナウバワックス、カルボニル基含有ワックスまたはこれらの併用など)などが挙げられる。これらのうちワックス(c)として好ましいのは、パラフィンワックスおよびカルナウバワックスである。パラフィンワックスとしては、たとえば、融点が50〜90℃で炭素数が20〜36の直鎖飽和炭化水素を主成分とする石油系ワックスなどが挙げられる。カルナウバワックスとしては、たとえば、融点が50〜90℃で炭素数が16〜36の動植物ワックスなどが挙げられる。
ワックス(c)のMnは、離型性の観点から、好ましくは400〜5000であり、より好ましくは1000〜3000であり、さらに好ましくは1500〜2000である。本明細書において、ワックス(c)のMnは、GPCを用いて測定される。ワックス(c)のMnの測定時、溶剤としては、たとえばo−ジクロロベンゼンを用いることができ、基準物質としては、たとえばポリスチレンを用いることができる。
ワックス(c)と変性ワックス(d)とを併用する場合には、ワックス(c)は、変性ワックス(d)と共に、無溶剤下での溶融混練処理および有機溶剤存在下での加熱溶解混合処理の少なくとも一方の処理の後に、コア樹脂(b)中に分散されることが好ましい。このようにワックスの分散処理時に変性ワックス(d)を共存させることにより、変性ワックス(d)のワックス基部分が効率良くワックス(c)の表面に吸着する、または、変性ワックス(d)のワックス基部分の一部が効率良くワックス(c)のマトリクス構造内に絡みあう。これにより、ワックス(c)の表面とコア樹脂(b)との親和性が良好になり、ワックス(c)をより均一にコア粒子(B)中に内包させることができる。よって、ワックス(c)の分散状態の制御が容易になる。
変性ワックス(d)は、重合性二重結合を有する単量体がワックス(c)にグラフト重合されたものである。変性ワックス(d)に用いられるワックスとしては、たとえば上記ワックス(c)の具体例として列挙したものと同様のものが挙げられ、変性ワックス(d)に用いられるワックスの好ましい材料についても、上記ワックス(c)の好ましい材料として列挙したものと同様のものが挙げられる。重合性二重結合を有する単量体としては、たとえば、上記のビニル樹脂を構成する重合性二重結合を有する単量体(1)〜(9)と同様のものが挙げられるが、これらのうち好ましいのは、上記単量体(1)、上記単量体(2)および上記単量体(6)である。重合性二重結合を有する単量体としては、上記単量体(1)〜(9)のいずれかを単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。
変性ワックス(d)におけるワックス成分の量(未反応ワックスを含む)は、好ましくは0.5〜99.5質量%であり、より好ましくは1〜80質量%であり、さらに好ましくは5〜50質量%であり、最も好ましくは10〜30質量%である。
液体現像剤(X)の耐熱保管安定性の観点から、変性ワックス(d)のTgは、好ましくは40〜90℃であり、より好ましくは50〜80℃である。
変性ワックス(d)のMnは、好ましくは1500〜10000であり、より好ましくは1800〜9000である。変性ワックス(d)のMnが1500〜10000であれば、トナー粒子(C)の機械強度が良好となる。
このような変性ワックス(d)の製造方法は特に限定されない。たとえば、ワックス(c)を溶剤(たとえばトルエンまたはキシレンなど)に溶解または分散させて100〜200℃に加熱した後、重合性二重結合を有する単量体を重合させてから溶剤を留去することにより変性ワックス(d)を得ることができる。
ワックス(c)と変性ワックス(d)とを混合する方法としては、たとえば、下記[i]〜[iii]に記載の方法を挙げることができる。下記[i]〜[iii]のうち下記[ii]を用いることが好ましい
[i]:それぞれの融点以上の温度でワックス(c)と変性ワックス(d)とを溶融させて混練させる
[ii]:ワックス(c)と変性ワックス(d)とを後述の有機溶剤(u)中に溶解または懸濁させた後、冷却晶析もしくは溶剤晶析などにより液中に析出させる、または、スプレードライなどにより気体中に析出させる
[iii]:ワックス(c)と変性ワックス(d)とを後述の有機溶剤(u)中に溶解または懸濁させた後、分散機などを用いて機械的に湿式で粉砕させる。
ワックス(c)と変性ワックス(d)とをコア樹脂(b)中に分散させる方法としては、たとえば、ワックス(c)および変性ワックス(d)とコア樹脂(b)とをそれぞれ溶剤に溶解または分散させてから、これらを混合する方法などが挙げられる。
<絶縁性液体>
絶縁性液体(L)としては、たとえば、ヘキサン、オクタン、イソオクタン、デカン、イソデカン、デカリン、ノナン、ドデカン、イソドデカン、シクロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、アイソパーE、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL(アイソパー:エクソン社の商品名)、シェルゾール70、シェルゾール71(シェルゾール:シェルオイル社の商品名)、アムスコOMS、アムスコ460(アムスコ:スピリッツ社の商品名)、IPソルベント2028(出光興産の商品名)、シリコーンオイルおよび流動パラフィンなどが挙げられる。これらを単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
臭気の観点から、これらのうち絶縁性液体(L)として好ましいのは、沸点が100℃以上の溶剤であり、より好ましいのは、炭素数が10以上の炭化水素系溶剤(たとえば、ドデカン、イソドデカンおよび流動パラフィンなど)およびシリコーンオイルであり、さらに好ましいのは、流動パラフィンである。
絶縁性液体(L)の比誘電率は20℃において1以上4以下であることが好ましい。これにより、液体現像剤の帯電維持性を高めることができる。絶縁性液体(L)の比誘電率は、ブリッジ法(JIS C2101−1999)により求められた絶縁性液体(L)の誘電率を用いて算出される。具体的には、絶縁性液体(L)を充填する前の空の状態の静電容量C0(pF)と、絶縁性液体(L)を充填した状態の等価並列静電容量Cx(pF)とを測定し、下記数式(4)に代入して絶縁性液体(L)の誘電率εを算出する。絶縁性液体(L)の比誘電率は、算出されたεと空気の比誘電率1.000585との比で求められる
ε=Cx/C0・・・数式(4)。
本実施の形態に係る液体現像剤(X)に含まれる溶剤としては、実質的に絶縁性液体(L)のみであることが好ましいが、液体現像剤(X)は、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下の範囲で他の有機溶剤を含んでも良い。
[液体現像剤の製造方法]
本実施の形態にかかる液体現像剤(X)の製造方法は、シェル粒子(A)の分散液(W)を調製する工程と、コア樹脂(b)形成用溶液(Y)を調製する工程と、コア樹脂(b)形成用溶液(Y)をシェル粒子(A)の分散液(W)に分散させる工程と、コア樹脂(b)形成用溶液(Y)に含まれていた有機溶剤(M)を留去させる工程とを備える。本実施の形態にかかる液体現像剤(X)の製造方法は、着色剤が分散された分散液(着色剤の分散液)を調製する工程を備えることが好ましい。以下、工程ごとに示す。
<シェル粒子(A)の分散液(W)の調製>
シェル粒子(A)の分散液(W)の調製工程では、シェル粒子(A)を製造してから当該シェル粒子(A)を絶縁性液体(L)に分散させても良いし、絶縁性液体(L)中において重合反応などによりシェル粒子(A)を製造しても良い。これにより、シェル粒子(A)が絶縁性液体(L)に分散されてなるシェル粒子(A)の分散液(W)が調製される。ここで、シェル粒子(A)に含まれるシェル樹脂(a)としては、上記<シェル樹脂(a)>で挙げられた樹脂を用いることができる。
シェル粒子(A)を製造してから当該シェル粒子(A)を絶縁性液体(L)に分散させる場合には、下記[4]〜[6]のいずれかの方法を用いることが好ましく、下記[6]を用いることがより好ましい。また、絶縁性液体(L)中において重合反応などによりシェル粒子(A)を製造する場合には、下記[1]〜[3]のいずれかの方法を用いることが好ましく、下記[1]を用いることがより好ましい
[1]:シェル樹脂(a)がビニル樹脂である場合。単量体を、絶縁性液体(L)を含む溶剤中で分散重合法などにより重合させる。これにより、シェル粒子(A)の分散液(W1)が直接製造される。必要に応じて、絶縁性液体(L)以外の溶剤をシェル粒子(A)の分散液(W)から留去させる。なお、絶縁性液体(L)以外の溶剤を留去するとき、絶縁性液体(L)のうち低沸点成分が留去されても良い。このことは、以下に示す絶縁性液体(L)以外の溶剤を留去させる工程において同様である
[2]:シェル樹脂(a)がポリエステル樹脂もしくはポリウレタン樹脂などの重付加樹脂または縮合系樹脂である場合。前駆体(単量体もしくはオリゴマーなど)または前駆体の溶液を必要であれば適当な分散剤の存在下で絶縁性液体(L)に分散させ、その後、加熱または硬化剤の添加などにより前躯体を硬化させる。必要に応じて、絶縁性液体(L)以外の溶剤を留去させる
[3]:シェル樹脂(a)がポリエステル樹脂もしくはポリウレタン樹脂などの重付加樹脂または縮合系樹脂である場合。前駆体(単量体もしくはオリゴマーなど)または前駆体の溶液(出発物質は、液体であることが好ましいが、加熱により液状化するものであっても良い)中に適当な乳化剤を溶解させた後、貧溶媒となる絶縁性液体(L)を加えて前駆体を再沈殿させる。その後、硬化剤の添加などにより前躯体を硬化させ、必要に応じて絶縁性液体(L)以外の溶剤を留去させる
[4]:あらかじめ重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合および縮合重合などのいずれの重合反応であってもよい。下記[5]および[6]においても同様。)により得られたシェル樹脂(a)を機械回転式またはジェット式などの微粉砕機を用いて粉砕し、その後分級する。これにより、シェル粒子(A)が得られる。得られたシェル粒子(A)を適当な分散剤の存在下で絶縁性液体(L)に分散させる
[5]:あらかじめ重合反応により得られたシェル樹脂(a)が溶解された樹脂溶液(この樹脂溶液は、シェル樹脂(a)を溶剤中で重合させることにより得られたものであっても良い)を霧状に噴霧する。これにより、シェル粒子(A)が得られる。得られたシェル粒子(A)を適当な分散剤の存在下で絶縁性液体(L)に分散させる
[6]:あらかじめ重合反応により得られたシェル樹脂(a)が溶解された樹脂溶液(この樹脂溶液は、シェル樹脂(a)を溶剤中で重合させることにより得られたものであっても良い)に貧溶媒(絶縁性液体(L)であることが好ましい。)を添加する、または、あらかじめシェル樹脂(a)が加熱溶解されて得られた樹脂溶液を冷却することにより、さらには適当な分散剤を存在させることにより、シェル粒子(A)を析出させる。必要に応じて、絶縁性液体(L)以外の溶剤を留去させる。
シェル粒子(A)を製造してから当該シェル粒子(A)を絶縁性液体(L)に分散させる場合、シェル粒子(A)の製造方法は特に限定されず、下記[7]に示す乾式でシェル粒子(A)を製造する方法であっても良いし、下記[8]〜[13]で示す湿式でシェル粒子(A)を製造する方法であっても良い。シェル粒子(A)の製造し易さの観点から、シェル粒子(A)の製造方法は、好ましくは湿式であり、より好ましくは下記[10]、下記[12]または下記[13]であり、さらに好ましくは下記[12]または[13]である
[7]:ジェットミルなどの公知の乾式粉砕機を用いて、シェル樹脂(a)を乾式で粉砕させる
[8]:シェル樹脂(a)の粉末を有機溶剤中に分散させ、ビーズミルまたはロールミルなどの公知の湿式分散機を用いて湿式で粉砕させる
[9]:スプレードライヤーなどを用いてシェル樹脂(a)の溶液を噴霧し、乾燥させる
[10]:シェル樹脂(a)の溶液に対して貧溶媒の添加または冷却を行なって、シェル樹脂(a)を過飽和させて析出させる
[11]:シェル樹脂(a)の溶液を水または有機溶剤中に分散させる
[12]:シェル樹脂(a)の前駆体を水中で乳化重合法、ソープフリー乳化重合法、シード重合法、または、懸濁重合法などにより重合させる
[13]:シェル樹脂(a)の前駆体を有機溶剤中で分散重合などにより重合させる。
上記[2]および[4]〜[6]における分散剤としては、たとえば、公知の界面活性剤(s)および油溶性ポリマー(t)などが挙げられる。また、分散の助剤として、たとえば有機溶剤(u)および可塑剤(v)などを併用することができる。
界面活性剤(s)としては、たとえば、アニオン性界面活性剤(s−1)、カチオン性界面活性剤(s−2)、両性界面活性剤(s−3)および非イオン性界面活性剤(s−4)などが挙げられる。なお、界面活性剤(s)として、2種以上の界面活性剤を併用しても良い。
アニオン性界面活性剤(s−1)としては、たとえば、炭素数が8〜24のアルキル基を有するエーテルカルボン酸(塩)[たとえば(ポリ)オキシエチレン(繰り返し単位数が1〜100)ラウリルエーテル酢酸ナトリウムなど];炭素数が8〜24のアルキル基を有するエーテル硫酸エステル塩[たとえば(ポリ)オキシエチレン(繰り返し単位数が1〜100)ラウリル硫酸ナトリウムなど];炭素数が8〜24のアルキル基を有するスルホコハク酸エステル塩[たとえば、モノもしくはジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム、モノもしくはジアルキルスルホコハク酸エステルジナトリウム、(ポリ)オキシエチレン(繰り返し単位数が1〜100)モノもしくはジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム、または、(ポリ)オキシエチレン(繰り返し単位数が1〜100)モノもしくはジアルキルスルホコハク酸エステルジナトリウムなど];(ポリ)オキシエチレン(繰り返し単位数が1〜100)ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド硫酸ナトリウム;炭素数が8〜24のアルキル基を有するスルホン酸塩(たとえばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなど);炭素数が8〜24のアルキル基を有するリン酸エステル塩[たとえば、ラウリルリン酸ナトリウム、または、(ポリ)オキシエチレン(繰り返し単位数が1〜100)ラウリルエーテルリン酸ナトリウムなど];脂肪酸塩(たとえば、ラウリン酸ナトリウムまたはラウリン酸トリエタノールアミンなど);アシル化アミノ酸塩(たとえばヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウムなど)などが挙げられる。
カチオン性界面活性剤(s−2)としては、たとえば、4級アンモニウム塩型のカチオン界面活性剤およびアミン塩型のカチオン界面活性剤などが挙げられる。4級アンモニウム塩型のカチオン界面活性剤としては、たとえば、3級アミン類と4級化剤(たとえば、メチルクロライド、メチルブロマイド、エチルクロライドおよびベンジルクロライド等のハロゲン化アルキル、ジメチル硫酸、ジメチルカーボネート、または、エチレンオキサイドなど)との反応で得られる化合物などが挙げられる。4級アンモニウム塩型のカチオン界面活性剤の具体例としては、たとえば、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムブロマイド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド(塩化ベンザルコニウム)、ポリオキシエチレントリメチルアンモニウムクロライドおよびステアラミドエチルジエチルメチルアンモニウムメトサルフェートなどが挙げられる。
アミン塩型のカチオン界面活性剤としては、たとえば、1〜3級アミン類を無機酸(たとえば、塩酸、硝酸、硫酸もしくはヨウ化水素酸など)または有機酸(たとえば、酢酸、ギ酸、シュウ酸、乳酸、グルコン酸、アジピン酸もしくはアルキルリン酸など)で中和することにより得られる化合物などが挙げられる。1級アミン塩型のカチオン界面活性剤としては、たとえば、脂肪族高級アミン(たとえば、ラウリルアミン、ステアリルアミン、硬化牛脂アミンもしくはロジンアミンなどの高級アミン)の無機酸塩またはその有機酸塩;低級アミン類の高級脂肪酸(たとえば、ステアリン酸またはオレイン酸など)塩などが挙げられる。2級アミン塩型のカチオン界面活性剤としては、たとえば、脂肪族アミンのエチレンオキサイド付加物などの脂肪族アミンの無機酸塩またはその有機酸塩などが挙げられる。
両性界面活性剤(s−3)としては、たとえば、カルボキシベタイン型両性界面活性剤[たとえば、炭素数が10〜18の脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン(たとえばヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインなど)、アルキル(炭素数が10〜18)ジメチルアミノ酢酸ベタイン(たとえばラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなど)、または、イミダゾリニウム型カルボキシベタイン(たとえば2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインなど)など];スルホベタイン型両性界面活性剤[たとえば、炭素数が10〜18の脂肪酸アミドプロピルヒドロキシエチルスルホベタイン(たとえばヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルヒドロキシエチルスルホベタインなど)、または、ジメチルアルキル(炭素数が10〜18)ジメチルヒドロキシエチルスルホベタイン(たとえばラウリルヒドロキシスルホベタインなど)など];アミノ酸型両性界面活性剤(たとえばβ−ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウムなど)などが挙げられる。
非イオン性界面活性剤(s−4)としては、たとえば、AO付加型非イオン性界面活性剤および多価アルコール型非イオン性界面活性剤などが挙げられる。
AO付加型非イオン性界面活性剤としては、たとえば、高級アルコール(炭素数が8〜18)のAO(炭素数が2〜4、好ましくは2)付加物(活性水素1個当たりの付加モル数が1〜30);アルキル(炭素数が1〜12)フェノールEO付加物(付加モル数が1〜30);高級アミン(炭素数が8〜22)AO(炭素数が2〜4、好ましくは2)付加物(活性水素1個当たりの付加モル数が1〜40);脂肪酸(炭素数が8〜18)のEO付加物(活性水素1個当たりの付加モル数が1〜60);ポリプロピレングリコール(Mn=200〜4000)EO付加物(活性水素1個当たりの付加モル数が1〜50);ポリオキシエチレン(繰り返し単位数が3〜30)アルキル(炭素数が6〜20)アリルエーテル;ソルビタンモノラウレートEO付加物(活性水素1個当たりの付加モル数が1〜30)およびソルビタンモノオレートEO付加物(活性水素1個当たりの付加モル数が1〜30)などの多価(2〜8価またはそれ以上の価数)アルコール(炭素数が2〜30)の脂肪酸(炭素数が8〜24)エステルEO付加物(活性水素1個当たりの付加モル数が1〜30)などが挙げられる。
多価アルコール型非イオン性界面活性剤としては、たとえば、グリセリンモノオレート、ソルビタンモノラウレートおよびソルビタンモノオレートなどの多価(2〜8価またはそれ以上の価数)アルコール(炭素数が2〜30)の脂肪酸(炭素数が8〜24)エステル;ラウリン酸モノエタノールアミドおよびラウリン酸ジエタノールアミドなどの脂肪酸(炭素数が10〜18)アルカノールアミドなどが挙げられる。
油溶性ポリマー(t)としては、たとえば、炭素数が4以上のアルキル基、ジメチルシロキサン基およびフッ素原子を有する官能基の少なくとも一つの基を有する重合体などが挙げられる。より好ましくは、油溶性ポリマー(t)は、絶縁性液体(L)に親和性を有するアルキル基、ジメチルシロキサン基およびフッ素原子を有する官能基の少なくとも一つの基を有すると共に、コア樹脂(b)に親和性を有する化学構造を有する。
油溶性ポリマー(t)は、前記重合性二重結合を有する単量体(1)〜(9)のうち、炭素数が4以上のアルキル基を有する単量体、ジメチルシロキサン基を有する単量体(または反応性オリゴマー)およびフッ素原子を有する単量体の少なくとも一つの単量体が重合または共重合されたものであることがより好ましい。
有機溶剤(u)としては、絶縁性液体(L)であっても良いし、絶縁性液体(L)以外の有機溶剤(たとえば、後述の有機溶剤(M)のうち絶縁性液体(L)以外の溶剤など)であっても良い。絶縁性液体(L)以外の溶剤は、シェル粒子(A)の分散液(W)の調製後に留去されるため、容易に留去されるものであることが好ましく、たとえば絶縁性液体(L)よりも低沸点であることが好ましい。
可塑剤(v)は、シェル粒子(A)を分散させる際に必要に応じて絶縁性液体(L)に加えられても良いし、コア樹脂(b)などを含む溶剤に加えられても良い。
可塑剤(v)としては、特に限定されず、下記可塑剤(v1)〜(v6)に示すものが挙げられる。
可塑剤(v1)としては、たとえば、フタル酸エステル(たとえば、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ブチルベンジルまたはフタル酸ジイソデシルなど)などが挙げられる。
可塑剤(v2)としては、たとえば、脂肪族2塩基酸エステル(たとえば、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシルまたはセバシン酸2−エチルヘキシルなど)などが挙げられる。
可塑剤(v3)としては、たとえば、トリメリット酸エステル(たとえば、トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシルまたはトリメリット酸トリオクチルなど)などが挙げられる。
可塑剤(v4)としては、たとえば、リン酸エステル(たとえば、リン酸トリエチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシルまたはリン酸トリクレジールなど)などが挙げられる。
可塑剤(v5)としては、たとえば、脂肪酸エステル(たとえばオレイン酸ブチルなど)などが挙げられる。
可塑剤(v6)としては、上記可塑剤(v1)〜(v5)に列挙された材料の併用が挙げられる。
絶縁性液体(L)としては、上記<絶縁性液体(L)>で列挙した材料の中でも20℃における比誘電率が1以上4以下である材料を用いることが好ましい。これにより、液体現像剤の帯電維持性を高めることができる。
<コア樹脂(b)形成用溶液(Y)の調製>
コア樹脂(b)形成用溶液(Y)の調製工程では、コア樹脂(b)またはコア樹脂(b)の前駆体(b0)を有機溶剤(M)に溶解させる。ここで、コア樹脂(b)の構成成分としては、たとえば、炭素数が4以上の直鎖状のアルキル骨格もつ単量体が好ましい。これにより、得られた液体現像剤(X)に含まれる第2樹脂(b)のDSCによる融解熱が上記式(1)〜(2)を満たすこととなる。炭素数が4以上の直鎖状のアルキル骨格もつ単量体の具体例としては、上記<コア樹脂(b)>で列挙した通りである。これにより、コア樹脂(b)またはコア樹脂(b)の前駆体(b0)が溶解されてなるコア樹脂(b)形成用溶液(Y)が調製される。
コア樹脂(b)またはコア樹脂(b)の前駆体(b0)を有機溶剤(M)に溶解させる方法としては、いかなる方法でも良く、公知の方法を用いることができる。たとえば、有機溶剤(M)にコア樹脂(b)またはコア樹脂(b)の前駆体(b0)を入れてから撹拌する方法、および、有機溶剤(M)にコア樹脂(b)またはコア樹脂(b)の前駆体(b0)を入れてから加熱する方法などが挙げられる。
有機溶剤(M)は、コア樹脂(b)を常温または加熱下で溶解し得る溶剤であれば特に限定されないが、有機溶剤(M)のSP値は、好ましくは8.5〜20(cal/cm3)1/2であり、より好ましくは10〜19(cal/cm3)1/2である。有機溶剤(M)として混合溶剤を使用する場合、加成性が成立すると仮定して各々の溶剤のSP値から計算したSP値の加重平均値が上記範囲内にあれば良い。有機溶剤(M)のSP値が上記範囲外であれば、コア樹脂(b)またはコア樹脂(b)の前駆体(b0)の溶解性が不足することがある。
有機溶剤(M)は、上記範囲内のSP値を有することが好ましく、コア樹脂(b)の材料またはコア樹脂(b)の前駆体(b0)の材料に応じて適宜選択されることが好ましい。有機溶剤(M)としては、たとえば、トルエン、キシレン、エチルベンゼンおよびテトラリンなどの芳香族炭化水素系溶剤;n−ヘキサン、n−ヘプタン、ミネラルスピリットおよびシクロヘキサンなどの脂肪族または脂環式炭化水素系溶剤;塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル、メチレンジクロライド、四塩化炭素、トリクロロエチレンおよびパークロロエチレンなどのハロゲン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテート、メチルセロソルブアセテートおよびエチルセロソルブアセテートなどのエステル系またはエステルエーテル系溶剤;ジエチルエーテル、THF、ジオキサン、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ−n−ブチルケトンおよびシクロヘキサノンなどのケトン系溶剤;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、2−エチルヘキシルアルコールおよびベンジルアルコールなどのアルコール系溶剤;ジメチルホルムアミドおよびジメチルアセトアミドなどのアミド系溶剤;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶剤;N−メチルピロリドンなどの複素環式化合物系溶剤;上記溶剤のうちの2種以上が混合された混合溶剤などが挙げられる。
臭気の観点から、また、樹脂粒子の分散液(X’)(下記<コア樹脂(b)形成用溶液(Y)をシェア粒子(A)の分散液(W)に分散>で得られる分散液)からの留去のし易さという観点から、有機溶剤(M)の沸点は、好ましくは100℃以下であり、より好ましくは90℃以下である。
コア樹脂(b)としてポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂またはエポキシ樹脂を選択した場合、好ましい有機溶剤(M)としては、たとえば、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドンおよびこれら2種以上の混合溶剤などが挙げられる。
トナー粒子(C)の粒度分布の観点から、コア樹脂(b)形成用溶液(Y)の粘度は、好ましくは10〜50000mPa・sであり、より好ましくは100〜10000mPa・sである。ここで、コア樹脂(b)形成用溶液(Y)の粘度は、たとえばB型粘度計を用いて測定されることが好ましい。コア樹脂(b)形成用溶液(Y)の粘度が上記範囲内となるように有機溶剤(M)を選択することが好ましい。
コア樹脂(b)の前駆体(b0)としては、化学反応によりコア樹脂(b)になり得るものであれば特に限定されない。たとえば、コア樹脂(b)がビニル樹脂である場合には、コア樹脂(b)の前駆体(b0)としては、前記重合性二重結合を有する単量体(1)〜(9)(単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い)が挙げられる。
コア樹脂(b)の前駆体(b0)として前記重合性二重結合を有する単量体(1)〜(9)を用いた場合、コア樹脂(b)の前駆体(b0)を反応させてコア樹脂(b)にする方法としては、たとえば、油溶性開始剤および単量体を含む油相を有機溶剤(M)中に分散且つ懸濁させ、得られた懸濁液を加熱によりラジカル重合反応させるという方法などが挙げられる。
上記油溶性開始剤としては、たとえば、油溶性パーオキサイド系重合開始剤(I)、および、油溶性アゾ系重合開始剤(II)などが挙げられる。また、油溶性パーオキサイド系重合開始剤(I)に還元剤を併用して得られたレドックス系重合開始剤(III)を用いても良い。さらに、油溶性パーオキサイド系重合開始剤(I)、油溶性アゾ系重合開始剤(II)およびレドックス系重合開始剤(III)のうちの2種以上を併用しても良い。
油溶性パーオキサイド系重合開始剤(I)としては、たとえば、アセチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイドおよびクメンパーオキサイドなどが挙げられる。
油溶性アゾ系重合開始剤(II)としては、たとえば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)および2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)などが挙げられる。
非水系レドックス系重合開始剤(III)としては、たとえば、ヒドロペルオキシド、過酸化ジアルキルまたは過酸化ジアシルなどの油溶性過酸化物に、3級アミン、ナフテン酸塩、メルカプタン類または有機金属化合物(たとえばトリエチルアルミニウム、トリエチルホウ素またはジエチル亜鉛など)などの油溶性還元剤を併用して得られたものなどが挙げられる。
コア樹脂(b)が縮合系樹脂(たとえば、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂またはポリエステル樹脂など)である場合は、コア樹脂(b)の前駆体(b0)としては、反応性基を有するプレポリマー(α)(以下では「プレポリマー(α)」と略記する)と硬化剤(β)との組み合わせなどが挙げられる。
プレポリマー(α)が有する「反応性基」とは、硬化剤(β)と反応可能な基のことをいう。この場合、コア樹脂(b)の前駆体(b0)を反応させてコア樹脂(b)を得る方法としては、プレポリマー(α)および硬化剤(β)を絶縁性液体(L)に分散させてから加熱することによりプレポリマー(α)と硬化剤(β)とを反応させるという方法などが挙げられる。
プレポリマー(α)が有する反応性基と硬化剤(β)との組み合わせとしては、下記[14]〜[15]などが挙げられる
[14]:プレポリマー(α)が有する反応性基は、活性水素化合物と反応可能な官能基(α1)であり、硬化剤(β)は、活性水素基含有化合物(β1)である
[15]:プレポリマー(α)が有する反応性基は、活性水素含有基(α2)であり、硬化剤(β)は、活性水素含有基と反応可能な化合物(β2)である。
上記の組合せ[14]において、活性水素化合物と反応可能な官能基(α1)としては、たとえば、イソシアネート基(α1a)、ブロック化イソシアネート基(α1b)、エポキシ基(α1c)、酸無水物基(α1d)および酸ハライド基(α1e)などが挙げられる。これらのうち官能基(α1)として好ましいのは、イソシアネート基(α1a)、ブロック化イソシアネート基(α1b)およびエポキシ基(α1c)であり、これらのうち官能基(α1)としてより好ましいのは、イソシアネート基(α1a)およびブロック化イソシアネート基(α1b)である。
ブロック化イソシアネート基(α1b)は、ブロック化剤によりブロックされたイソシアネート基のことをいう。ブロック化剤としては、たとえば、オキシム類(たとえば、アセトオキシム、メチルイソブチルケトオキシム、ジエチルケトオキシム、シクロペンタノンオキシム、シクロヘキサノンオキシムまたはメチルエチルケトオキシムなど);ラクタム類(たとえば、γ−ブチロラクタム、ε−カプロラクタムまたはγ−バレロラクタムなど);炭素数が1〜20の脂肪族アルコール類(たとえば、エタノール、メタノールまたはオクタノールなど);フェノール類(たとえば、フェノール、m−クレゾール、キシレノールまたはノニルフェノールなど);活性メチレン化合物(たとえば、アセチルアセトン、マロン酸エチルまたはアセト酢酸エチルなど);塩基性窒素含有化合物(たとえば、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン、2−ヒドロキシピリジン、ピリジンN−オキサイドまたは2−メルカプトピリジンなど);これらの併用などが挙げられる。これらのうちブロック化イソシアネート基(α1b)として好ましいのはオキシム類であり、より好ましいのはメチルエチルケトオキシムである。
反応性基を有するプレポリマー(α)の構成単位としては、たとえば、ポリエーテル(αw)、ポリエステル(αx)、エポキシ樹脂(αy)およびポリウレタン(αz)などが挙げられる。これらのうちプレポリマー(α)の構成単位として好ましいのは、ポリエステル(αx)、エポキシ樹脂(αy)およびポリウレタン(αz)であり、より好ましいのは、ポリエステル(αx)およびポリウレタン(αz)である。
ポリエーテル(αw)としては、たとえば、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリブチレンオキサイドおよびポリテトラメチレンオキサイドなどが挙げられる。
ポリエステル(αx)としては、たとえば、前記ジオール(11)と前記ジカルボン酸(13)との重縮合物、および、ポリラクトン(たとえばε−カプロラクトンの開環重合物など)などが挙げられる。
エポキシ樹脂(αy)としては、たとえば、ビスフェノール類(たとえば、ビスフェノールA、ビスフェノールFまたはビスフェノールSなど)とエピクロルヒドリンとの付加縮合物などが挙げられる。
ポリウレタン(αz)としては、たとえば、前記ジオール(11)と前記ポリイソシアネート(15)との重付加物、および、前記ポリエステル(αx)と前記ポリイソシアネート(15)との重付加物などが挙げられる。
ポリエステル(αx)、エポキシ樹脂(αy)およびポリウレタン(αz)などに反応性基を含有させる方法としては、下記[16]〜[17]に示す方法が挙げられる
[16]:二以上の構成成分のうちの一つを過剰に用いることで、構成成分の官能基を末端に残存させる
[17]:二以上の構成成分のうちの一つを過剰に用いることで構成成分の官能基を末端に残存させ(プレポリマーが得られる)、残存した官能基と当該官能基と反応可能な官能基とを反応させる、または、残存した官能基と当該官能基と反応可能な官能基を含む化合物とを反応させる。
上記[16]の方法では、水酸基含有ポリエステルプレポリマー、カルボキシル基含有ポリエステルプレポリマー、酸ハライド基含有ポリエステルプレポリマー、水酸基含有エポキシ樹脂プレポリマー、エポキシ基含有エポキシ樹脂プレポリマー、水酸基含有ポリウレタンプレポリマーおよびイソシアネート基含有ポリウレタンプレポリマーなどが得られる。
たとえば水酸基含有ポリエステルプレポリマーを得る場合、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]との当量比([OH]/[COOH])が、好ましくは2/1〜1/1となるように、より好ましくは1.5/1〜1/1となるように、さらに好ましくは1.3/1〜1.02/1となるように、ポリオール成分とポリカルボン酸成分との比率を設定すればよい。骨格が変わっても、または、末端基を有するプレポリマーを得る場合であっても、構成成分が変わるだけで構成成分の比率は上記記載と同様であることが好ましい。
上記[17]の方法では、上記方法[16]で得られたプレプリマーに、ポリイソシアネートを反応させることでイソシアネート基含有プレポリマーが得られ、ブロック化ポリイソシアネートを反応させることでブロック化イソシアネート基含有プレポリマーが得られ、ポリエポキシドを反応させることでエポキシ基含有プレポリマーが得られ、ポリ酸無水物を反応させることで酸無水物基含有プレポリマーが得られる。
たとえば水酸基含有ポリエステルプレポリマーにポリイソシアネートを反応させてイソシアネート基含有ポリエステルプレポリマーを得る場合、イソシアネート基[NCO]と水酸基含有ポリエステルの水酸基[OH]との当量比([NCO]/[OH])が、好ましくは5/1〜1/1となるように、より好ましくは4/1〜1.2/1となるように、さらに好ましくは2.5/1〜1.5/1となるように、水酸基含有ポリエステルプレポリマーに対するポリイソシアネートの比率を設定すればよい。骨格が変わっても、または、末端基を有するプレポリマーを得る場合であっても、構成成分が変わるだけで構成成分の比率は上記記載と同様であることが好ましい。
プレポリマー(α)の1分子当たりに含まれる反応性基の個数は、好ましくは1個以上であり、より好ましくは平均1.5〜3個であり、さらに好ましくは平均1.8〜2.5個である。プレポリマー(α)の1分子当たりに含まれる反応性基の個数が上記範囲内であれば、硬化剤(β)と反応させて得られる硬化物の分子量が大きくなる。
プレポリマー(α)のMnは、好ましくは500〜30000であり、より好ましくは1000〜20000であり、さらに好ましくは2000〜10000である。
プレポリマー(α)のMwは、好ましくは1000〜50000であり、より好ましくは2000〜40000であり、さらに好ましくは4000〜20000である。
プレポリマー(α)の粘度は、100℃において、好ましくは200Pa・s以下であり、より好ましくは100Pa・s以下である。プレポリマー(α)の粘度を200Pa・s以下にすることにより、粒度分布における分布幅の狭いコア粒子(B)が得られる。
上記の組合せ[14]における活性水素基含有化合物(β1)としては、たとえば、脱離可能な化合物でブロック化されていてもよいポリアミン(β1a)(以下「ポリアミン(β1a)」と略記する);ポリオール(β1b);ポリメルカプタン(β1c);水などが挙げられる。これらのうち活性水素基含有化合物(β1)として好ましいのは、ポリアミン(β1a)および水であり、さらに好ましいのは、ブロック化されたポリアミン類および水である。
ポリアミン(β1a)としては、たとえば、前記ポリアミン(15)の具体例として列挙したものと同様のものが挙げられる。ポリアミン(β1a)は、好ましくは、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンまたはこれらの混合物などである。
ポリアミン(β1a)が脱離可能な化合物でブロック化されたポリアミンである場合には、当該ポリアミンとしては、たとえば、前記ポリアミン類と炭素数が3〜8のケトン類(たとえば、アセトン、メチルエチルケトンまたはメチルイソブチルケトンなど)とから得られるケチミン化合物;炭素数が2〜8のアルデヒド化合物(たとえば、ホルムアルデヒドまたはアセトアルデヒドなど)から得られるアルジミン化合物;エナミン化合物;オキサゾリジン化合物などが挙げられる。
ポリオール(β1b)としては、たとえば、前記ジオール(10)および前記ポリオール(11)の具体例として列挙したものと同様のものが挙げられる。これらのうちポリオール(β1b)として好ましいのは、前記ジオール(10)単体および前記ジオール(10)と少量のポリオール(11)との混合物である。
ポリメルカプタン(β1c)としては、たとえば、エタンジチオール、1,4−ブタンジチオールおよび1,6−ヘキサンジチオールなどが挙げられる。
必要に応じて、活性水素基含有化合物(β1)と共に反応停止剤(βs)を用いることができる。一定の比率で反応停止剤(βs)を活性水素基含有化合物(β1)と併用することにより、コア樹脂(b)の分子量を所定の値に調整することが可能である。同様の理由から、上記の組合せ[15]における活性水素含有基と反応可能な化合物(β2)とともに反応停止剤(βs)を用いることもできる。
反応停止剤(βs)としては、たとえば、モノアミン(たとえば、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミン、モノエタノールアミンまたはジエタノールアミンなど);モノアミンをブロックしたもの(たとえばケチミン化合物など);モノオール(たとえば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールまたはフェノールなど);モノメルカプタン(たとえば、ブチルメルカプタンまたはラウリルメルカプタンなど);モノイソシアネート(たとえば、ラウリルイソシアネートまたはフェニルイソシアネートなど);モノエポキシド(たとえばブチルグリシジルエーテルなど)などが挙げられる。
上記の組合せ[15]におけるプレポリマー(α)が有する活性水素含有基(α2)としては、たとえば、アミノ基(α2a)、水酸基(たとえば、アルコール性水酸基またはフェノール性水酸基など)(α2b)、メルカプト基(α2c)、カルボキシル基(α2d)、および、それらが脱離可能な化合物でブロック化された有機基(α2e)などが挙げられる。これらのうち好ましいのは、アミノ基(α2a)、水酸基(α2b)および有機基(α2e)であり、より好ましいのは、水酸基(α2b)である。
アミノ基が脱離可能な化合物でブロック化された有機基(α2e)としては、前記ポリアミン(β1a)の具体例として列挙したものと同様のものが挙げられる。
上記の組合せ[15]における活性水素含有基と反応可能な化合物(β2)としては、たとえば、ポリイソシアネート(β2a)、ポリエポキシド(β2b)、ポリカルボン酸(β2c)、ポリ酸無水物(β2d)およびポリ酸ハライド(β2e)などが挙げられる。これらのうち化合物(β2)として好ましいのは、ポリイソシアネート(β2a)およびポリエポキシド(β2b)であり、より好ましいのは、ポリイソシアネート(β2a)である。
ポリイソシアネート(β2a)としては、たとえば、前記ポリイソシアネート(14)の具体例として列挙したものと同様のものが挙げられ、ポリイソシアネート(β2a)として好ましいものも前記ポリイソシアネート(14)の好ましい具体例として列挙したものと同様である。
ポリエポキシド(β2b)としては、たとえば、前記ポリエポキシド(18)の具体例として列挙したものと同様のものが挙げられ、ポリエポキシド(β2b)として好ましいものも前記ポリエポキシド(18)の好ましい具体例として列挙したものと同様である。
ポリカルボン酸(β2c)としては、たとえば、ジカルボン酸(β2c−1)および3価以上のポリカルボン酸(β2c−2)などが挙げられ、これらのうちポリカルボン酸(β2c)として好ましいのは、ジカルボン酸(β2c−1)単体およびジカルボン酸(β2c−1)と少量のポリカルボン酸(β2c−2)との混合物である。
ジカルボン酸(β2c−1)としては、たとえば、前記ジカルボン酸(12)および前記ポリカルボン酸(13)の具体例として列挙したものと同様のものが挙げられ、ジカルボン酸(β2c−1)として好ましいものも前記ジカルボン酸(12)および前記ポリカルボン酸(13)の好ましい具体例として列挙したものと同様である。
ポリカルボン酸無水物(β2d)としては、たとえばピロメリット酸無水物などが挙げられる。
ポリ酸ハライド類(β2e)としては、たとえば、前記ポリカルボン酸(β2c)の酸ハライド(たとえば、酸クロライド、酸ブロマイドまたは酸アイオダイドなど)などが挙げられる。
コア樹脂(b)の前駆体(b0)における硬化剤(β)の比率は、特に限定されない。プレポリマー(α)中の反応性基[α]と硬化剤(β)中の活性水素含有基[β]との当量比([α]/[β])が、好ましくは1/2〜2/1となるように、より好ましくは1.5/1〜1/1.5となるように、さらに好ましくは1.2/1〜1/1.2となるように、コア樹脂(b)の前駆体(b0)における硬化剤(β)の比率を設定すればよい。なお、硬化剤(β)が水である場合には、水は2価の活性水素化合物として取り扱う。
<着色剤の分散液の調製>
着色剤の分散液を調製する工程では、シェル粒子(A)の分散液(W)およびコア樹脂(b)形成用溶液(Y)のうちの少なくとも一方に着色剤を分散させても良いし、所定の有機溶剤に着色剤を分散させてから当該分散液をシェル粒子(A)の分散液(W)およびコア樹脂(b)形成用溶液(Y)のうちの少なくとも一方に混合させても良い。
着色剤としては、上記<着色剤>で列挙した顔料の少なくとも一つを用いることができる。着色剤を溶解または分散する溶液としては、たとえば、アセトンなどの有機溶剤を用いることができる。
<コア樹脂(b)形成用溶液(Y)をシェル粒子(A)の分散液(W)に分散>
コア樹脂(b)形成用溶液(Y)をシェル粒子(A)の分散液(W)に分散させる工程では、シェル粒子(A)の分散液(W)とコア樹脂(b)形成用溶液(Y)とを混合する。これにより、コア樹脂(b)形成用溶液(Y)がシェル粒子(A)の分散液(W)内に分散され、コア・シェル構造を有するトナー粒子(C)[つまり、シェル粒子(A)がコア樹脂(b)を含むコア粒子(B)の表面に付着または被覆されてなるトナー粒子(C)]が得られる。なお、コア樹脂(b)形成用溶液(Y)がコア樹脂(b)の前駆体(b0)を含む場合には、コア樹脂(b)の前駆体(b0)が反応してコア樹脂(b)となり、そのコア樹脂(b)を含むコア粒子(B)が形成される。
コア樹脂(b)形成用溶液(Y)をシェル粒子(A)の分散液(W)に分散させる方法は特に限定されないが、分散装置を用いてコア樹脂(b)形成用溶液(Y)をシェル粒子(A)の分散液(W)に分散させることが好ましい。
分散装置としては、一般に、乳化機または分散機などとして市販されているものであれば特に限定されずに使用することができる。分散装置としては、たとえば、ホモジナイザー(IKA社製)、ポリトロン(キネマティカ社製)およびTKオートホモミキサー(特殊機化工業(株)製)などのバッチ式乳化機;エバラマイルダー((株)荏原製作所製)、TKフィルミックス、TKパイプラインホモミキサー(特殊機化工業(株)製)、コロイドミル(神鋼パンテック(株)製)、スラッシャー、トリゴナル湿式微粉砕機(三井三池化工機(株)製)、キャビトロン(ユーロテック社製)およびファインフローミル(太平洋機工(株)製)などの連続式乳化機;マイクロフルイダイザー(みずほ工業(株)製)、ナノマイザー(ナノマイザー社製)およびAPVガウリン(ガウリン社製)などの高圧乳化機;膜乳化機(冷化工業(株)製)などの膜乳化機;バイブロミキサー(冷化工業(株)製)などの振動式乳化機;超音波ホモジナイザー(ブランソン社製)などの超音波乳化機などが挙げられる。これらの装置のうちトナー粒子の粒度分布の観点から好ましいのは、APVガウリン、ホモジナイザー、TKオートホモミキサー、エバラマイルダー、TKフィルミックスおよびTKパイプラインホモミキサーである。
コア樹脂(b)形成用溶液(Y)をシェル粒子(A)の分散液(W)に分散させるときの温度は、特に限定されないが、好ましくは0〜150℃(加圧下)であり、より好ましくは5〜98℃である。コア樹脂(b)形成用溶液(Y)をシェル粒子(A)の分散液(W)に分散させて得られた溶液(樹脂粒子の分散液(X’))の粘度が高い場合には、コア樹脂(b)形成用溶液(Y)をシェル粒子(A)の分散液(W)に分散させるときの温度を上げることによりコア樹脂(b)形成用溶液(Y)の粘度を好ましい範囲にまで低下させることが好ましい。コア樹脂(b)形成用溶液(Y)の粘度の好ましい範囲とは、上記<コア樹脂(b)形成用溶液(Y)の調製>で記載したとおりであり、10〜50000mPa・s(B型粘度計で測定された粘度)である。
シェル粒子(A)の分散液(W)とコア樹脂(b)形成用溶液(Y)との混合比率については、特に限定されない。しかし、シェル粒子(A)の分散液(W)は、コア樹脂(b)形成用溶液(Y)に溶解されているコア樹脂(b)またはコア樹脂(b)の前駆体(b0)100質量部に対して、50〜2000質量部含まれていることが好ましく、100〜1000質量部含まれていることがより好ましい。コア樹脂(b)またはコア樹脂(b)の前駆体(b0)100質量部に対してシェル粒子(A)の分散液(W)が50質量部以上含まれていれば、樹脂粒子の分散液(X’)におけるコア樹脂(b)またはコア樹脂(b)の前駆体(b0)の分散状態が良好になる。コア樹脂(b)またはコア樹脂(b)の前駆体(b0)100質量部に対してシェル粒子(A)の分散液(W)が2000質量部以下含まれていれば、経済的である。
コア樹脂(b)形成用溶液(Y)をシェル粒子(A)の分散液(W)に分散させることによりコア・シェル構造が形成されるが、コア粒子(B)に対するシェル粒子(A)の吸着力は下記[18]〜[20]に示す方法にしたがって制御されることが好ましい
[18]:シェル粒子(A)とコア粒子(B)とに極性が逆の電荷を持たせる。このとき、シェル粒子(A)およびコア粒子(B)のそれぞれの電荷を大きくすればするほど、コア粒子(B)に対するシェル粒子(A)の吸着力が強くなり、よって、コア粒子(B)の表面に対するシェル粒子(A)の被覆率が高くなる
[19]:シェル粒子(A)とコア粒子(B)とに同じ極の電荷を持たせると、コア粒子(B)の表面に対するシェル粒子(A)の被覆率は低くなる。このとき、前記界面活性剤(s)および前記油性ポリマー(t)の少なくとも一方(特にシェル粒子(A)とコア粒子(B)とで極性が逆となるもの)を使用すると、コア粒子(B)に対するシェル粒子(A)の吸着力が強くなり、よって、コア粒子(B)の表面に対するシェル粒子(A)の被覆率が高くなる
[20]:シェル粒子(A)の分散液(W)とコア樹脂(b)形成用溶液(Y)とでSP値差を小さくすると、コア粒子(B)に対するシェル粒子(A)の吸着力が強くなり、よって、コア粒子(B)の表面に対するシェル粒子(A)の被覆率が高くなる。
シェル粒子(A)がコア粒子(B)の表面に付着されてなるコア・シェル構造が形成されるか、または、シェル粒子(A)がコア粒子(B)の表面に被覆されてなるコア・シェル構造が形成されるかは、コア樹脂(b)形成用溶液(Y)に含まれる有機溶剤(M)の物性、具体的には有機溶剤(M)に対するシェル粒子(A)および/またはコア樹脂(b)の溶解性に依存する。
詳細には、有機溶剤(M)としてコア樹脂(b)を溶解するがシェル粒子(A)を溶解しないものを選択すれば、シェル粒子(A)がコア粒子(B)の表面に付着される。
一方、有機溶剤(M)としてシェル粒子(A)およびコア樹脂(b)の双方を溶解するものを選択すると、シェル粒子(A)は、有機溶剤(M)に溶融した状態でコア粒子(B)の表面に付着する。そのため、後の工程において有機溶剤(M)を留去すると、コア粒子(B)の表面に付着している有機溶剤(M)も留去され、よって、コア粒子(B)の表面にはシェル粒子(A)が膜状に形成される。以下では、コア粒子(B)の表面にシェル粒子(A)を膜状に形成することを「被膜化処理」と記す。
被膜化処理を行なうためには、有機溶剤(M)として、THF、トルエン、アセトン、メチルエチルケトンまたは酢酸エチルなどを選択することが好ましく、アセトンまたは酢酸エチルなどを選択することがより好ましい。
被膜化処理を行なうとき、樹脂粒子の分散液(X’)における有機溶剤(M)の含有率は、好ましくは10〜50質量%であり、より好ましくは20〜40質量%である。そして、被膜化処理の後に有機溶剤(M)を留去するときには、40℃以下の温度において、樹脂粒子の分散液(X’)における有機溶剤(M)の含有率が好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下となるまで有機溶剤(M)を除去すれば良い。これにより、コア粒子(B)で構成されるコア層の表面に、有機溶剤(M)に溶解していたシェル粒子(A)からなるシェル層が形成される。
被膜化処理が行なわれるときに、当該被膜化処理で使用される有機溶剤を樹脂粒子の分散液(X’)に添加することができる。しかし、コア樹脂(b)形成用溶液(Y)に含まれている有機溶剤(M)を、コア粒子(B)の形成後に除去せずに被膜化処理用有機溶剤として用いる方が好ましい。なぜならば、有機溶剤(M)がコア粒子(B)に含まれているため、シェル粒子(A)を有機溶剤(M)に容易に溶解させることができ、よって、コア粒子(B)の凝集が起こりにくくなるからである。
シェル粒子(A)を有機溶剤(M)に溶解させるときには、樹脂粒子の分散液(X’)における有機溶剤(M)の濃度は、好ましくは3〜50質量%であり、より好ましくは10〜40質量%であり、さらに好ましくは15〜30質量%である。また、樹脂粒子の分散液(X’)をたとえば1〜10時間撹拌することが好ましい。さらには、シェル粒子(A)を有機溶剤(M)に溶解させるときの温度は、15〜45℃であることが好ましく、15〜30℃であることがより好ましい。
シェル粒子(A)を有機溶剤(M)に溶解させてコア粒子(B)の表面に被膜させるとき、樹脂粒子の分散液(X’)における固形分の含量率(溶剤以外の成分の含有率)は、好ましくは1〜50質量%であり、より好ましくは5〜30質量%である。また、被膜化処理前における有機溶剤(M)の含有率は、好ましくは2質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下であり、さらに好ましくは0.5質量%以下である。樹脂粒子の分散液(X’)における固形分の含量率が高い場合、および、被膜化処理前における有機溶剤(M)の含有率が2質量%を越える場合には、樹脂粒子の分散液(X’)を60℃以上に昇温すると凝集物が発生することがある。また、シェル粒子(A)の溶融方法は、特に限定されず、たとえば、撹拌下において、好ましくは40〜100℃、より好ましくは60〜90℃、さらに好ましくは60〜80℃で、好ましくは1〜300分間加熱する方法などが挙げられる。
被膜化処理を行なうとき、被膜化処理前における有機溶剤(M)の含有率が2質量%以下の樹脂粒子の分散液(X’)を加熱してシェル粒子(A)をコア粒子(B)の表面上で溶融させることが好ましい。これにより、表面がより平滑なトナー粒子(C)を得ることができる。このときの加熱温度は、シェル樹脂(a)のTg以上であることが好ましく、80℃以下であることがより好ましい。加熱温度がシェル樹脂のTg未満であれば、加熱により得られる効果(つまり、トナー粒子の表面がさらに平滑となるという効果)が得られないことがある。一方、加熱温度が80℃を越えると、シェル層がコア層から剥がれることがある。
被膜化処理として好ましい方法は、シェル粒子(A)を溶融させる方法、および、シェル粒子(A)を溶解させる方法とシェル粒子(A)を溶融させる方法との併用である。
<コア樹脂(b)形成用溶液(Y)に含まれていた有機溶剤(M)の留去>
コア樹脂(b)形成用溶液(Y)に含まれていた有機溶剤(M)の留去工程では、樹脂粒子の分散液(X’)から有機溶剤(M)を留去させる。
樹脂粒子の分散液(X’)から有機溶剤(M)を留去させる方法としては、特に限定されないが、たとえば0.02〜0.066MPaの減圧下で、20℃以上有機溶剤(M)の沸点以下の温度で、当該有機溶剤(M)を留去させるという方法などが挙げられる。
有機溶剤(M)の留去後の分散液における有機溶剤(M)の含有率は、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下である。なお、有機溶剤(M)と共に絶縁性液体(L)の一部(たとえば絶縁性液体(L)のうち低沸点成分)も留去されても良い。
このようにして得られた液体現像剤(X)に含まれる第2樹脂(b)のDSCによる融解熱は上記数式(1)〜(2)を満たす。これにより、定着性に優れたトナー粒子を提供することができる。また、コア樹脂(b)の結晶化速度が最適化されるため、コア樹脂(b)の性能の変化を伴うことなく当該コア樹脂(b)を速やかに結晶化させることができる。
また、得られた液体現像剤(X)に含まれるトナー粒子(C)の形状およびトナー粒子(C)の表面の平滑性は、シェル樹脂(a)とコア樹脂(b)とのSP値差、および、シェル樹脂(a)の分子量の少なくとも一方を制御することにより、制御される。上記SP値差が小さすぎると、形状は歪だが表面は平滑なトナー粒子が得られやすい。逆に、上記SP値差が大きすぎると、形状は球形だが表面にザラつきのあるトナー粒子が得られやすい。シェル樹脂(a)の分子量が大きすぎると、表面にザラつきのあるトナー粒子が得られやすく、シェル樹脂(a)の分子量が小さすぎると、表面が平滑なトナー粒子が得られやすい。また、上記SP値差が小さすぎても大きすぎても、造粒困難を招く。また、シェル樹脂(a)の分子量が小さすぎても、造粒困難を招く。以上のことから、上記SP値差は、好ましくは0.01〜5.0であり、より好ましくは0.1〜3.0であり、さらに好ましくは0.2〜2.0である。また、シェル樹脂(a)のMwは、好ましくは100〜1000000であり、より好ましくは1000〜500000であり、さらに好ましくは2000〜200000であり、最も好ましくは3000〜100000である。
なお、本実施の形態におけるコア・シェル構造を製造するとき、上記[7]〜[13]のいずれかの製造方法に倣ってコア粒子(B)を製造してから、当該コア粒子(B)の表面にシェル粒子(A)を付着または被覆させても良い。
また、本実施の形態に係る液体現像剤(X)の製造方法では、着色剤以外の添加剤(たとえば、充填剤、帯電防止剤、離型剤、荷電制御剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、ブロッキング防止剤、耐熱安定剤および難燃剤など)を添加してシェル粒子(A)の分散液(W)、コア樹脂(b)形成用溶液(Y)および着色剤の分散液の少なくとも一つを調製しても良い。この場合も、着色剤以外の添加剤が溶解または分散された溶液をシェル粒子(A)の分散液(W)などに添加することにより当該添加剤をシェル粒子(A)の分散液(W)などに添加することができる。これにより、着色剤以外の添加剤もコア層およびシェル層の少なくとも一方の層に含まれたトナー粒子(C)を得ることができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<製造例1>[ポリエステル樹脂の製造]
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、冷却管および窒素導入管を備えた反応容器に、ドデカン二酸286質量部、1,6−ヘキサンジオール190質量部および縮合触媒としてのチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)1質量部を入れて、180℃で窒素気流下で、生成する水を留去しながら8時間反応させた。次いで220℃まで徐々に昇温しながら、窒素気流下で、生成する水を留去しながら4時間反応させた。更に0.007〜0.026MPaの減圧下で、1時間反応させた。これにより、ポリエステル樹脂を得た。得られたポリエステル樹脂については、融点は68℃であり、Mnは4900であり、Mwは10000であった。融点は、上記<融点>に記載の方法にしたがって測定された。MnおよびMwは、上記<MnおよびMw>に記載の方法にしたがって測定された。
<製造例2>[シェル粒子(A1)の分散液(W1)の製造]
ガラス製ビーカーに、(メタ)アクリル酸2−デシルテトラデシル100質量部、メタクリル酸30質量部、メタクリル酸ヒドロキシエチルとフェニルイソシアネートとの等モル反応物70質量部、および、アゾビスメトキシジメチルバレロニトリル0.5質量部を入れ、20℃で撹拌して混合した。これにより、単量体溶液を得た。
次に、撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、滴下ロート、脱溶剤装置および窒素導入管を備えた反応容器を準備した。その反応容器にTHF195質量部を入れ、反応容器が備える滴下ロートに上記単量体溶液を入れた。反応容器の気相部を窒素で置換した後、密閉下70℃で1時間かけて単量体溶液を反応溶液内のTHFに滴下した。単量体溶液の滴下終了から3時間後、アゾビスメトキシジメチルバレロニトリル0.05質量部とTHF5質量部との混合物を反応容器に入れ、70℃で3時間反応させた後、室温まで冷却した。これにより、共重合体溶液を得た。
得られた共重合体溶液400質量部を撹拌下のアイソパーL(エクソンモービル社製)600質量部に滴下してから、0.039MPaの減圧下で40℃でTHFを留去した。これにより、シェル粒子(A1)の分散液(W1)を得た。レーザー式粒度分布測定装置((株)堀場製作所製の「LA−920」)を用いて分散液(W1)中のシェル粒子(A1)の体積平均粒径を測定すると0.12μmであった。
<製造例3>[シェル粒子(A2)の分散液(W2)の製造]
ガラス製ビーカーに、(メタ)アクリル酸2−デシルテトラデシル80質量部、メタクリル酸メチル10質量部、メタクリル酸10質量部、イソシアネート基含有モノマー「カレンズMOI」[昭和電工(株)製] 質量部と上記製造例1で得られたポリエステル樹脂との等モル反応物10質量部、および、アゾビスメトキシジメチルバレロニトリル0.5質量部を入れ、20℃で撹拌して混合した。これにより、単量体溶液を得た。
次に、撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、滴下ロート、脱溶剤装置および窒素導入管を備えた反応容器を準備した。その反応容器にTHF195質量部を入れ、反応容器が備える滴下ロートに上記単量体溶液を入れた。反応容器の気相部を窒素で置換した後、密閉下70℃で1時間かけて単量体溶液を反応溶液内のTHFに滴下した。単量体溶液の滴下終了から3時間後、アゾビスメトキシジメチルバレロニトリル0.05質量部とTHF5質量部との混合物を反応容器に入れ、70℃で3時間反応させた後、室温まで冷却した。これにより、共重合体溶液を得た。
得られた共重合体溶液400質量部を撹拌下のアイソパーL(エクソンモービル社製)600質量部に滴下してから、0.039MPaの減圧下で40℃でTHFを留去した。これにより、シェル粒子(A2)の分散液(W2)を得た。上記製造例2で記載された方法にしたがって分散液(W2)中のシェル粒子(A2)の体積平均粒径を測定すると0.13μmであった。
<製造例4>[コア樹脂(b1)形成用溶液(Y1)の製造]
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計および窒素導入管を備えた反応容器に、エチレングリコール746質量部、セバシン酸288質量部および縮合触媒としてのテトラブトキシチタネート3質量部を入れた。常圧下で230℃で6時間重縮合させ、重縮合体を得た。反応容器内を減圧し、重縮合体の酸価が1.0になった時点で反応容器の内圧を常圧に戻して180℃に冷却した。180℃下で反応容器に無水トリメリット酸28質量部を入れ、180℃下で1時間反応させた。これにより、ポリエステル樹脂であるコア樹脂(b1)を得た。
得られたコア樹脂(b1)については、Tgが72℃であり、Mnが2400であり、水酸基価が40であり、酸価が15であった。ここで、1gのコア樹脂(b1)中のOH基を無水酢酸でアセチル化し、使用されなかった酢酸を水酸化カリウム溶液で滴定した。これにより、コア樹脂(b1)の水酸基価を得た。また、1gのコア樹脂(b1)を水酸化カリウムにより中和し、中和に使用された水酸化カリウムの質量(mg)を求めた。これにより、コア樹脂(b1)の酸価を得た。なお、Tgは、上記<Mn、融点、ガラス転移温度(以下「Tg」と略記する)およびSP値>に記載の方法にしたがって測定された。また、Mnは、上記<MnおよびMw>に記載の方法にしたがって測定された。
示差走査熱量計(セイコーインスツル(株)製の「DSC210」)を用いて0℃から180℃まで10℃/分の速度で標準試料とコア樹脂(b1)とを加熱して、標準試料とコア樹脂(b1)との熱量差(H1)を測定した。次に、冷却速度を90℃/分として0℃まで冷却してから、上記示差走査熱量計を用いて0℃から180℃まで10℃/分の速度で標準試料とコア樹脂(b1)とを加熱して、標準試料とコア樹脂(b1)との熱量差(H2)を測定した。そして、H2/H1を算出した。
次いで、ビーカーにコア樹脂(b1)1000質量部およびアセトン1000質量部を入れて攪拌し、コア樹脂(b1)をアセトンに均一に溶解させた。これにより、コア樹脂(b1)形成用溶液(Y1)を得た。
<製造例5>[コア樹脂(b2)形成用溶液(Y2)の製造]
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、脱溶剤装置および窒素導入管を備えた反応容器に、1,2−プロピレングリコール(以下PGと略記する)701質量部、テレフタル酸ジメチルエステル716質量部、アジピン酸180質量部および縮合触媒としてのテトラブトキシチタネート3質量部を入れた。180℃で窒素気流下で、メタノールを留去しながら8時間反応させた。その後、窒素気流下で、230℃まで徐々に昇温しながら、PGおよび水を留去しながら、4時間反応させた。更に、0.007〜0.026MPaの減圧下で反応させ、得られた生成物の軟化点が150℃になった時点で当該生成物を取り出した。このようにして、ポリエステル樹脂であるコア樹脂(b2)を得た。なお、回収されたPGは316質量部であった。
上記製造例4に記載の方法にしたがってコア樹脂(b2)のTg、Mn、水酸基価および酸価を求めたところ、Tgが64℃であり、Mnが8800であり、水酸基価が13であり、酸価が0.2であった。また、上記製造例4に記載の方法にしたがってコア樹脂(b2)のH1およびH2/H1を求めたところ、H1は110であり、H2/H1は0.2であった。
次いで、ビーカーにコア樹脂(b2)1000質量部およびアセトン1000質量部を入れて攪拌し、コア樹脂(b2)をアセトンに均一に溶解させた。これにより、コア樹脂(b2)形成用溶液(Y2)を得た。
<製造例6>[コア樹脂(b3)形成用溶液(Y3)の製造]
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、脱溶剤装置および窒素導入管を備えた耐圧反応容器に、キシレン452質量部を入れて窒素ガスで置換した。その後、170℃下で、スチレン845質量部とアクリル酸n−ブチル155質量部とを混合して得られた単量体溶液と、開始剤であるジ−t−ブチルパーオキサイド6.4質量部とキシレン125質量部とを混合して得られた溶液とを、それぞれ3時間かけて、耐圧反応容器内のキシレンに滴下した。滴下後170℃で1時間熟成させてから、0.026MPaの減圧下でキシレンを留去した。これにより、ビニル樹脂であるコア樹脂(b3)を得た。
上記製造例4に記載の方法にしたがってコア樹脂(b3)のTgおよびMnを求めたところ、Tgが60℃であり、Mnが14000であった。また、上記製造例4に記載の方法にしたがってコア樹脂(b3)のH1およびH2/H1を求めたところ、H1は検出不能であり、よって、H2/H1は算出不能であった。
次いで、ビーカーにコア樹脂(b3)1000質量部およびアセトン1000質量部を入れて攪拌し、コア樹脂(b3)をアセトンに均一に溶解させた。これにより、コア樹脂(b3)形成用溶液(Y3)を得た。
<製造例7>[コア樹脂(b4)形成用溶液(Y4)の製造]
撹拌装置、加熱冷却装置および温度計を備えた反応容器に、アジピン酸と1,4−ブタンジオール(モル比1:1)とから得られたポリエステル(Mn:1000)177質量部、PG7質量部、ジメチロールプロピオン酸72質量部およびアセトン500質量部を入れて撹拌し、均一に溶解させた。この溶液にイソホロンジイソシアネート(IPDI)246質量部を入れ、55℃で11時間反応させた。次いで、55℃でエチレンジアミン9質量部およびn−ブチルアミン6質量部を入れて、4時間伸長反応を行った。これにより、ウレタン樹脂であるコア樹脂(b4)のアセトン溶液[コア樹脂(b4)形成用溶液(Y4)]を得た。
上記製造例4に記載の方法にしたがってコア樹脂(b4)のTgを求めたところ、Tgは62℃であった。高化式フローテスターを用いてコア樹脂(b4)の軟化開始温度を測定すると、その軟化開始温度は105℃であった。同様に高化式フローテスターを用いてコア樹脂(b4)の流出温度を測定すると、その流出温度は180℃であった。また、上記製造例4に記載の方法にしたがってコア樹脂(b4)のH1およびH2/H1を求めたところ、H1は60であり、H2/H1は0.7であった。
<製造例8>[コア樹脂(b5)形成用溶液(Y5)の製造]
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計および窒素導入管を備えた反応容器に、ビスフェノールAのEO2モル付加物746質量部、テレフタル酸288質量部および縮合触媒としてのテトラブトキシチタネート3質量部を投入した。常圧下で230℃で6時間重縮合させ、重縮合体を得た。反応容器内を減圧し、重縮合体の酸価が1.0になった時点で反応容器の内圧を常圧に戻して180℃に冷却した。180℃下で反応容器に無水トリメリット酸60質量部を入れ、180℃下で1時間反応させた。これにより、ポリエステル樹脂であるコア樹脂(b5)を得た。
上記製造例4に記載の方法にしたがってコア樹脂(b5)のTg、Mn、水酸基価および酸価を求めたところ、Tgが72℃であり、Mnが2400であり、水酸基価が51であり、酸価が31であった。また、上記製造例4に記載の方法にしたがってコア樹脂(b5)のH1およびH2/H1を求めたところ、H1は検出不能であり、よって、H2/H1は算出不能であった。
次いで、ビーカーにコア樹脂(b5)1000質量部およびアセトン1000質量部を入れて攪拌し、コア樹脂(b5)をアセトンに均一に溶解させた。これにより、コア樹脂(b5)形成用溶液(Y5)を得た。
<製造例9>[コア樹脂(b6)形成用溶液(Y6)の製造]
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計および窒素導入管を備えた反応容器に、エチレングリコール846質量部、セバシン酸188質量部および縮合触媒としてのテトラブトキシチタネート3質量部を入れた。常圧下で230℃で6時間重縮合させ、重縮合体を得た。反応容器内を減圧し、重縮合体の酸価が1.0になった時点で反応容器の内圧を常圧に戻して180℃に冷却した。180℃下で反応容器に無水トリメリット酸28質量部を入れ、180℃下で1時間反応させた。これにより、ポリエステル樹脂であるコア樹脂(b6)を得た。
上記製造例4に記載の方法にしたがってコア樹脂(b6)のTg、Mn、水酸基価および酸価を求めたところ、Tgが60℃であり、Mnが1200であり、水酸基価が60であり、酸価が15であった。また、上記製造例4に記載の方法にしたがってコア樹脂(b6)のH1およびH2/H1を求めたところ、H1は45であり、H2/H1は0.8であった。
次いで、ビーカーにコア樹脂(b6)1000質量部およびアセトン1000質量部を入れて攪拌し、コア樹脂(b6)をアセトンに均一に溶解させた。これにより、コア樹脂(b6)形成用溶液(Y6)を得た。
<製造例10>[コア樹脂(b7)形成用溶液(Y7)の製造]
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計および窒素導入管を備えた反応容器に、エチレングリコール746質量部、テレフタル酸288質量部および縮合触媒としてのテトラブトキシチタネート3質量部を入れた。常圧下で230℃で6時間重縮合させ、重縮合体を得た。反応容器内を減圧し、重縮合体の酸価が1.0になった時点で反応容器の内圧を常圧に戻して180℃に冷却した。180℃下で反応容器に無水トリメリット酸28質量部を入れ、180℃下で1時間反応させた。これにより、ポリエステル樹脂であるコア樹脂(b7)を得た。
上記製造例4に記載の方法にしたがってコア樹脂(b7)のTg、Mn、水酸基価および酸価を求めたところ、Tgが120℃であり、Mnが1200であり、水酸基価が60であり、酸価が15であった。また、上記製造例4に記載の方法にしたがってコア樹脂(b7)のH1およびH2/H1を求めたところ、H1は130であり、H2/H1は0.1であった。
次いで、ビーカーにコア樹脂(b7)1000質量部およびアセトン1000質量部を入れて攪拌し、コア樹脂(b7)をアセトンに均一に溶解させた。これにより、コア樹脂(b7)形成用溶液(Y7)を得た。
<製造例11>[ウレタンプレポリマーの製造]
撹拌装置、加熱冷却装置、脱水装置および温度計を備えた反応容器に、水酸基価が56のポリカプロラクトンジオール「プラクセルL220AL」[ダイセル化学工業(株)製]2000質量部を入れて110℃に加熱し、0.026MPaの減圧下で1時間脱水を行った。次いで反応容器にIPDI457質量部を入れ、110℃で10時間反応を行った。これにより、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを得た。ウレタンプレポリマーのNCO含量(ウレタンプレポリマー1モル中のNCO基の質量/ウレタンプレポリマーの分子量)は3.6質量%であった。
<製造例12>[硬化剤の製造]
撹拌装置、加熱冷却装置および温度計を備えた反応容器に、エチレンジアミン50質量部およびメチルイソブチルケトン300質量部を入れて50℃で5時間反応させた。これにより、ケチミン化合物である硬化剤を得た。
<製造例13>[着色剤の分散液の製造]
ビーカーに、銅フタロシアニン25質量部、着色剤用分散剤「アジスパーPB−821」(味の素ファインテクノ(株)製)4質量部およびアセトン75質量部を入れて撹拌し、銅フタロシアニンを均一に分散させた。その後、ビーズミルによって銅フタロシアニンを微分散させた。これにより、着色剤の分散液を得た。レーザー式粒度分布測定装置((株)堀場製作所製の「LA−920」)を用いて着色剤の分散液中の着色剤(銅フタロシアニン)の体積平均粒径を測定すると0.2μmであった。
<実施例1>
ビーカーに、コア樹脂(b1)形成用溶液(Y1)45質量部および上記製造例13で得られた着色剤の分散液15質量部を入れ、25℃でTKオートホモミキサー[特殊機化工業(株)製]を用いて8000rpmで撹拌させた。これにより、着色剤が均一に分散された樹脂溶液(Y11)を得た。
別のビーカーに、アイソパーL(エクソンモービル社製)67質量部とシェル粒子(A1)の分散液(W1)6質量部とを入れて、シェル粒子(A1)を均一に分散させた。次いで、25℃でTKオートホモミキサーを用いて10000rpmで撹拌させながら、樹脂溶液(Y11)60質量部を入れて2分間撹拌させた。
このようにして得られた混合液を、撹拌装置、加熱冷却装置、温度計および脱溶剤装置を備えた反応容器に入れ、35℃に昇温した。35℃で0.039MPaの減圧下で、上記混合液におけるアセトン濃度が0.5質量%以下になるまでアセトンを留去した。これにより、液体現像剤(X−1)が得られた。
なお、液体現像剤(X−1)におけるアセトン濃度は、ガスクロマトグラフィー「GC2010」[FID方式、(株)島津製作所製]を用いて、定量された。また、以下の方法にしたがって液体現像剤(X−1)における絶縁性液体(L)へのシェル樹脂(a)の溶解度(25℃)を測定すると、3質量%であった。
<溶解度の測定方法>
液体現像剤10gを、25℃、10000rpmで30分間遠心分離し、上澄み液を全量回収した。残った固形分に10mlの絶縁性液体(L)を加え、トナー粒子(C)を再度分散させた。その後、25℃、10000rpmで30分間遠心分離し、上澄み液を全量回収した。この操作をさらに繰り返し、計3回上澄み液を回収した。上澄み液を、減圧乾燥機で、20mmHgの減圧下、絶縁性液体(L)の沸点と同じ温度で、1時間乾燥させ、残渣の質量を秤量した。このときの残渣の質量Y(g)と液体現像剤10g中のシェル樹脂(a)の質量y(g)とを下記数式(5)へ代入して、液体現像剤(X−1)における絶縁性液体(L)へのシェル樹脂(a)の溶解度(25℃)を算出した
溶解度(重量%)=(Y/y)×100・・・数式(5)。
<実施例2、参考例3、実施例4〜5および比較例1〜5>
表1に示したコア樹脂形成用溶液、ウレタンプレポリマー、硬化剤、着色剤の分散液、流動パラフィン、および、シェル粒子の分散液を使用したことを除いては上記実施例1と同様にして、実施例2、参考例3、実施例4〜5の液体現像剤(X−2)〜(X−5)および比較例1〜5の液体現像剤(X−11)〜(X−15)を得た。なお、比較例4では、シェル粒子(A)の分散液を用いる代わりにトナー用分散剤「ソルスパーズS11200」(ルーブリゾール製)を用いた。
[トナー粒子(C)の体積平均粒径の測定]
実施例1〜2、参考例3、実施例4〜5の液体現像剤(X−1)〜(X−5)および比較例1〜5の液体現像剤(X−11)〜(X−15)をアイソパーL(エクソンモービル社製)に希釈した。レーザー式粒度分布測定装置((株)堀場製作所製の「LA−920」)を用いて希釈液中のトナー粒子(C)の粒度分布を測定した。その結果を表1の「トナー粒子の体積平均粒径(μm)」に示す。
[トナー粒子(C)におけるシェル粒子(A)の状態の評価]
走査型電子顕微鏡(SEM、株式会社日立ハイテクマニファクチャ&サービス製の「S−4800」)を用いてトナー粒子(C)の表面を観察し、シェル粒子(A)がコア粒子(B)の表面に付着しているか又は被覆されているかを判定した。その結果を表1の「トナー粒子におけるシェル粒子の状態」に示す。
[トナー粒子(C)におけるシェル粒子(A)によるコア粒子(B)の表面被覆率の測定]
上記走査型電子顕微鏡(SEM)で得られた画像を解析し、且つ、上記数式(3)を用いて、トナー粒子(C)におけるシェル粒子(A)によるコア粒子(B)の表面被覆率を求めた。その結果を表1の「コア粒子の表面被覆率(%)」に示す。
[定着性の評価]
図1に示した画像形成装置を用いて、実施例1〜2、参考例3、実施例4〜5の液体現像剤(X−1)〜(X−5)ならびに比較例1〜3および5の液体現像剤(X−11)〜(X−13)および(X−15)のべたパターン(10cm×10cm、付着量:2mg/m2)を記録紙であるコート紙(商品名:「OKトップコートプラス」、王子製紙社製、128g/cm2)の上に形成した。そして、ヒートローラで定着(温度:180℃、ニップ時間:30msec)することにより、コート紙上にべたパターン画像が形成されたサンプルを得た。なお、実施例、参考例および比較例毎に、2枚ずつサンプルを作製した。
その後、押圧荷重1kgfで消しゴム(商品名:砂消し「LION 26111」、ライオン事務器社製)を上記べたパターン画像に2回擦り、画像濃度の残存率を反射濃度計(商品名:「X−Rite model 404」、X−Rite社製)により測定した。画像濃度の残存率が高いほど、画像の定着強度が高いため、トナー粒子が定着性に優れることを示す。なお、比較例4については、造粒できなかった(コア・シェル構造を有さなかった)ため、定着性および下記ドキュメントオフセットを評価しなかった。
表1に結果を示す。表1では、画像濃度の残存率が90%以上であった場合に「A1」と記し、画像濃度の残存率が80%以上90%未満であった場合に「B1」と記し、画像濃度の残存率が80%未満であった場合に「C1」と記す。
[ドキュメントオフセット性の評価]
図1に示した画像形成装置を用いて、実施例1〜2、参考例3、実施例4〜5の液体現像剤(X−1)〜(X−5)ならびに比較例1〜3および5の液体現像剤(X−11)〜(X−13)および(X−15)のべたパターン(10cm×10cm、付着量:2mg/m2)を記録紙であるコート紙(商品名:「OKトップコートプラス」、王子製紙社製、128g/cm2)の上に形成した。そして、ヒートローラで定着(温度:180℃、ニップ時間:30msec)することにより、コート紙上にべたパターン画像が形成されたサンプルを得た。なお、実施例、参考例および比較例毎に、2枚ずつサンプルを作製した。
そして、べたパターン画像同士が重なるようにサンプルをセットし、べたパターン画像が形成されていない方のいずれか一方の表面に10g/cm2の重りを載せ、50℃に設定した恒温槽で1週間放置した。
その後、サンプルを恒温槽から取り出して、室温まで冷却した。それから、サンプルを剥がしてべたパターン画像の剥離の有無を調べた。べたパターン画像の剥離が少ないほど、ドキュメントオフセットが発生し難い(液体現像剤がドキュメントオフセット性に優れる)ことを示す。
なお、上記で用いた画像形成装置のプロセス条件およびプロセスの概略は以下の通りである。
<プロセス条件>
システム速度:40cm/s
感光体:負帯電OPC
帯電電位:−700V
現像電圧(現像ローラ印加電圧):−450V
転写電圧(転写ローラ印加電圧):+600V
現像前コロナCHG:針印加電圧−3〜5kVで適宜調整。
<プロセスの概略>
図1は、電子写真方式の画像形成装置1の概略概念図である。まず、液体現像剤2は、供給ローラ3によりくみあげられ、規制ブレード4によりすりきられることにより、供給ローラ3上で所定厚みの液体現像剤の薄層が形成される(なお、アニロックスローラの場合は、ローラの掘り込みに液体現像剤が充填されており、規制ローラによって規定量が計量される)。
次いで、供給ローラ3から現像ローラ5上に液体現像剤の薄層が移動し、現像ローラ5と感光体6とのニップでトナー粒子が感光体6上に移動することにより、感光体6上にトナー画像が形成される。その後、感光体6とバックアップローラ10とのニップで記録材11上にトナー画像が転写され、ヒートローラ12によりその画像が定着される。なお、画像形成装置1は、上記以外にもクリーニングブレード7、クリーニングブレード8、荷電装置9を備えている。
表1に結果を示す。表1では、べたパターン画像の剥離が確認されなかった場合に「A2」と記し、べたパターン画像またはコート紙におけるコート層が全体的に剥落した場合に「B2」と記す。
表1に示すように、実施例1〜2、参考例3、実施例4〜5では、定着性に優れ、ドキュメントオフセットの発生を防止可能な液体現像剤を提供できた。この理由としては、実施例1〜2、参考例3、実施例4〜5の液体現像剤(X−1)〜(X−5)に含まれるコア樹脂(b1,b4,b6)が上記数式(1)〜(2)を満たすことが挙げられる。
一方、比較例1では、トナー粒子の定着性が若干低下し、液体現像剤のドキュメントオフセット性が低下した。この理由としては、比較例1の液体現像剤(X−11)に含まれるコア樹脂(b2)のH1が70よりも大きいことが考えられる。
比較例2では、トナー粒子の定着性が低下した。この理由としては、比較例2の液体現像剤(X−12)に含まれるコア樹脂(b3)が融解熱を持たない非晶性樹脂であってシャープメルト性を有さないことが考えられる。
比較例3では、比較例2よりも液体現像剤のドキュメントオフセット性が低下した。この理由としては、比較例2での上記理由に加えて、比較例3の液体現像剤(X−13)に含まれるコア樹脂(b5)の分子量が比較例2よりも小さいために溶融粘度が低いことが考えられる。
比較例5では、比較例3と同様の結果が得られた。この理由としては、比較例5の液体現像剤(X−15)に含まれるコア樹脂(b7)のH1が0.5よりも小さいため、樹脂粒子中の結晶成分を速やかに結晶化させることができず、その結果、樹脂粒子の性能が設計時の性能と異なったことが考えられる。