JP6147077B2 - 圧延銅箔および圧延銅箔の製造方法 - Google Patents
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Description
尚、フレキシブルフラットケーブルの導体部分には、従来から広く圧延銅箔が用いられている。
また、特許文献2は、最終の平角導体を得るまでに、条を連続して圧延させて製造することから、線引き加工された丸線を最終段階で圧延する製法に比べて高コストとなる問題を抱えている。
さらに、特許文献3は、条圧延による高コスト化、冷間加工と焼鈍を繰り返すことによる高コスト化のほか、平均粒径が大きく、FFC用として必要な強度ならびに屈曲特性を満足しないとの問題がある。
<1> 銅または銅合金からなる丸線材が圧延された圧延銅箔であって、
前記圧延銅箔の表面の平均結晶粒径の比率が前記圧延銅箔の厚みに対して1%以上6%以下であり、
且つ前記圧延銅箔の長手方向に直行する断面をEBSD(electron backscatter diffraction)解析した際における下記式(1)により求められる粒内歪み率が10%を超え50%未満である圧延銅箔。
式(1) 粒内歪み率(%)=(A)/(B)×100
(上記式(1)において、(A)は、画像解析により方位差1度以上15度以下と識別される領域の面積を、(B)は、画像解析により方位差0度以上15度以下と識別される領域の面積を、表す。)
銅または銅合金からなる丸線材を圧延して箔とする第一圧延工程と、
300℃以上500℃以下の温度範囲で、1秒以上10秒以下の熱処理を施す中間焼鈍工程と、
最終的な箔厚まで圧延する第二圧延工程と、
をこの順で行う圧延銅箔の製造方法。
・表面の平均結晶粒径の比率が前記圧延銅箔の厚みに対して1%以上6%以下
・前記圧延銅箔の長手方向に直行する断面をEBSD(electron backscatter diffraction)解析した際における下記式(1)により求められる粒内歪み率が10%を超え50%未満
式(1) 粒内歪み率(%)=(A)/(B)×100
(上記式(1)において、(A)は、画像解析により方位差1度以上15度以下と識別される領域の面積を、(B)は、画像解析により方位差0度以上15度以下と識別される領域の面積を、表す。)
また上記の通り、表面の平均結晶粒径が圧延銅箔の厚みに対する比率で1%以上6%以下であり、最表面の結晶粒子の粒子径が圧延銅箔の厚みに対して非常に小さい。
また、適度な引張強度を有するため、本発明の圧延銅箔を絶縁性のフィルム等でラミネートする際の熱処理や、使用環境下にて受ける熱等による強度の低下が抑制される。更に、適度な引張強度を有するため、圧延にて製造する際に圧延ロールへのダメージが抑制され圧延ロールの長寿命化も図れる。
本発明においては、圧延銅箔の長手方向に直行する断面をEBSD(electron backscatter diffraction)解析した際における前記式(1)により求められる粒内歪み率が10%を超え50%未満である。粒内歪み率が50%以上の場合、例えば105℃、48時間程度の熱負荷を受けると強度が低下する欠点を生じる。一方、10%以下の場合、引張り強度が低くなるため、絶縁性のフィルム等でラミネートする際の導体張力に耐えられずに、導体が伸び、変形、破断などが起きやすくなる欠点を生じる。
圧延銅箔を長手方向に直行する方向に切断しその断面についてEBSD(electron backscatter diffraction)解析を行う。EBSD解析によって、隣り合う測定領域の方位差が15度を超える部分は結晶粒界と識別し、且つ、方位差が15度までのものを粒内歪みと認定する。ただし、0度以上1度未満と測定される方位差については、問題とならない程度の粒内歪みと捉える。その理由は、この範囲の歪みは、通常、焼鈍処理等を行っても消失することが少ないためである。そこで、0度から15度までの方位差を有する領域のうち、1度以上15度以下の領域を計算することによって圧延銅箔の歪み状態を評価する。
本発明においては、圧延銅箔の表面を構成する結晶粒子の平均結晶粒径の圧延銅箔の厚みに対する比率が1%以上6%以下である。前記平均結晶粒径の比率が6%を超える場合、繰返して屈曲変形が加えられた際にクラックの発生が問題となる。一方、前記平均結晶粒径の比率が1%未満である場合、圧延銅箔は柔軟性に劣り容易に配索できない問題が生じる。
一方、良好な柔軟性という視点では、前述の平均結晶粒径の比率が大きいほど耐力が低く柔軟であるという観点から、平均結晶粒径の比率が大きい以下の範囲の順(3%以上6%以下、2%を超え3%未満、1%以上2%以下)に優れる。
一方、前記平均結晶粒径が0.2μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましく、1.0μm以上であることが更に好ましい。前記平均結晶粒径が上記範囲であることにより、圧延銅箔の柔軟性が得られ配索をより容易に行うことができる。
圧延銅箔を長手方向に直行する方向に切断しその断面についてEBSD解析を行う。EBSD解析によって、方位差が15度を超える部分を粒界と識別し、結晶粒子の画像を得る。この画像において、特定の幅方向長さ(H)(少なくとも40μm以上)内における最表面を構成する結晶粒子の数(K)を求め、前記幅方向長さ(H)を前記結晶粒子の数(K)で割ることで、表面を構成する結晶粒子の平均結晶粒径を求める。更にこの平均結晶粒径の値を圧延銅箔の厚みで割ることで、圧延銅箔の厚みに対する表面を構成する結晶粒子の平均結晶粒径の比率が求められる。
本発明に係る圧延銅箔の製造においては、銅または銅合金からなる丸線材(丸線型の銅材)を圧延によって所定の銅箔状に成形(圧延工程)することで製造する。
尚、前記所定の銅箔状に成形する工程では、前記圧延は多段階で行なってもよく、また圧延以外の方法を併用して成形を行なってもよい。ただし、前記所定の銅箔状に成形する前(最終的な形状に成形する前)の工程で熱処理を施す。特に、第一の圧延工程と第二の圧延工程との間に熱処理(焼鈍)工程を設ける。更に、所定の銅箔状に成形した後に熱処理(焼鈍)および冷却を行う工程(焼鈍工程)を設けてもよい。
本発明の圧延銅箔は、表面を構成する前記結晶粒子の平均結晶粒径の圧延銅箔の厚みに対する比率、および粒内歪み率が前述の範囲である。例えば、前記圧延の際の減面率を高くしつまり圧延による断面積の減少量を高くするほど上記粒内歪み率が大きくなる傾向にある。また、銅箔に対し熱が付与されると粒内歪みは除去される傾向があり、特に最終的な形状に成形した後つまり全ての圧延工程が済んだ後においては、加熱による粒内歪みの除去への影響が強くなる傾向にある。また、加熱温度を低くするほど、加熱時間を短くするほど結晶粒子の平均結晶粒径が小さく保持される傾向にあり、つまり結晶粒子の平均結晶粒径の圧延銅箔の厚みに対する比率が小さくなる傾向にある。
従って、圧延前の投入線径の調質、線径、圧延後の板厚等に応じた適切な条件設定が必要である。
・第一圧延工程
まず所定の径(例えばΦ0.24mm)を有する軟銅線(丸線型)を準備する。例えば上記Φ0.24mmの軟銅線は、それよりも径の大きい軟銅線(例えばΦ8.0mm)を伸線した後、更に熱処理を施す(例えば300℃2時間)ことで形成することができる。
次いで、第一の圧延によって銅箔状に成形されたものに中間熱処理(中間焼鈍)を施す。熱処理の条件としては、300℃以上500℃以下の温度範囲で、加熱時間1秒以上10秒以下で行う(例えば、加熱温度300℃で加熱時間5秒の条件で行われる)。その後、冷却する。尚、冷却の方法としては水冷等の急冷却の方法が好ましい。この水冷等の急冷却を施すことで、結晶粒径の粗大化を防ぐことができる。
次いで、中間焼鈍工程を経た銅箔(例えば厚さ0.050mm×幅0.74mmの箔状)に第二の圧延を施して、最終的な銅箔状(例えば厚さ0.035mm×幅0.8mmの箔状)に成形することで、図3に示すような圧延銅箔2が作製される。
・第一圧延工程
まず所定の径(例えばΦ0.20mm)を有する軟銅線(丸線型)を準備する。例えば上記Φ0.20mmの軟銅線は、それよりも径の大きい軟銅線(例えばΦ8.0mm)を伸線した後、更に熱処理を施す(例えば300℃2時間)ことで形成することができる。
次いで、第一の圧延によって銅箔状に成形されたものに中間熱処理(中間焼鈍)を施す。中間焼鈍の条件としては、300℃以上500℃以下の温度範囲で、1秒以上10秒以下の範囲で行う(例えば、加熱温度300℃で加熱時間5秒の条件で行われる)。その後、冷却する。尚、冷却の方法としては水冷等の急冷却の方法が好ましい。この水冷等の急冷却を施すことで、結晶粒径の粗大化を防ぐことができる。
次いで、中間焼鈍工程を経た銅箔(例えば厚さ0.040mm×幅0.70mmの箔状)に第二の圧延を施して、最終的な銅箔状(例えば厚さ0.035mm×幅0.8mmの箔状)に成形する。
次いで、第二の圧延によって最終的な銅箔状に成形されたものに最終熱処理(最終焼鈍)を施す。最終焼鈍の条件としては、前記中間焼鈍よりも加熱温度を低くしたり加熱時間を短くするなどして付与される総熱量を下げて行われ、具体的には100℃以上300℃以下の温度範囲で、1秒以上10秒以下の範囲で行う(例えば、加熱温度100℃で加熱時間5秒の条件で行われる)。
その後、冷却することで図3に示すような圧延銅箔2が作製される。尚、冷却の方法としては水冷等の急冷却の方法が好ましい。この水冷等の急冷却を施すことで、結晶粒径の粗大化を防ぐことができる。
また、熱処理(焼鈍)を行う方法としては、ソルトバスを用いた熱処理や、バッチ炉による熱処理、その他インライン中の電流焼鈍等の方法が挙げられる。但し、圧延の方法や熱処理の方法は上記の方法に限定されるものではない。
本発明に係る圧延銅箔は、可撓性に優れ且つ耐屈曲性に優れることから、電子機器等への実装形態における自由度が高く、フレキシブルフラットケーブル(FFC)として好適に用いられる。例えば、自動車におけるエアバックシステムの構成部品であるステアリング・ロール・コネクタ(SRC)、ルーフハーネス、ドアハーネス、フロアハーネス等として好適に用いられる。
Φ8.0mmの軟銅線(タフピッチ銅)を伸線した後、更に300℃2時間の熱処理を施すことでΦ0.24mmの軟銅線(丸線型)を準備した。この軟銅線に、Φ100mmのロールを有する圧延機(無潤滑)を用いて圧延を施して、厚さ0.050mm×幅0.74mmの箔状に成形した。
Φ8.0mmの軟銅線(タフピッチ銅)を伸線した後、更に300℃2時間の熱処理を施すことでΦ0.20mmの軟銅線(丸線型)を準備した。この軟銅線に、Φ100mmのロールを有する圧延機(無潤滑)を用いて圧延を施して、厚さ0.040mm×幅0.70mmの箔状に成形した。
Φ0.6mmの軟銅線(タフピッチ銅)を伸線しΦ0.22mmの硬銅線(丸線型)を準備した。この硬銅線に、Φ100mmのロールを有する圧延機(無潤滑)を用いて圧延を施して、厚さ0.050mm×幅0.74mmの箔状に成形した。
Φ0.6mmの軟銅線(タフピッチ銅)を伸線しΦ0.22mmの硬銅線(丸線型)を準備した。この硬銅線に、Φ100mmのロールを有する圧延機(無潤滑)を用いて圧延を施して、厚さ0.050mm×幅0.74mmの箔状に成形した。
Φ8.0mmの軟銅線(タフピッチ銅)を伸線した後、更に300℃2時間の熱処理を施すことでΦ0.6mmの軟銅線(丸線型)を準備した。この軟銅線に、Φ100mmのロールを有する圧延機(無潤滑)を用いて圧延を施して、厚さ0.19mm×幅1.3mmの箔状に成形した。
Φ8.0mmの軟銅線(タフピッチ銅)を伸線した後、更に300℃2時間の熱処理を施すことでΦ0.6mmの軟銅線(丸線型)を準備した。この軟銅線に、Φ100mmのロールを有する圧延機(無潤滑)を用いて圧延を施して、厚さ0.19mm×幅1.3mmの箔状に成形した。
Φ8.0mmの軟銅線(タフピッチ銅)を伸線した後、更に300℃2時間の熱処理を施すことでΦ0.23mmの軟銅線(丸線型)を準備した。この軟銅線に、Φ100mmのロールを有する圧延機(無潤滑)を用いて圧延を施して、厚さ0.050mm×幅0.74mmの箔状に成形した。
Φ8.0mmの軟銅線(タフピッチ銅)を伸線した後、更に300℃2時間の熱処理を施すことでΦ0.23mmの軟銅線(丸線型)を準備した。この軟銅線に、Φ100mmのロールを有する圧延機(無潤滑)を用いて圧延を施して、厚さ0.050mm×幅0.74mmの箔状に成形した。
タフピッチ銅の鋳塊を用意し、熱間圧延後、圧延、焼鈍を適宜繰り返して行い、厚さ0.4mm×幅200mmの銅条を得て、これをさらに圧延とスリット加工を適宜繰り返して、最終的に厚さ0.035mm×幅0.80mmの箔状に成形した。
Φ8.0mmの軟銅線(タフピッチ銅)を伸線しΦ0.23mmの硬銅線(丸線型)を準備した。この硬銅線に、Φ100mmのロールを有する圧延機(無潤滑)を用いて圧延を施して、厚さ0.050mm×幅0.74mmの箔状に成形した。
Φ8.0mmの軟銅線(タフピッチ銅)を伸線した後、更に300℃2時間の熱処理を施すことでΦ0.6mmの軟銅線(丸線型)を準備した。この軟銅線に、Φ100mmのロールを有する圧延機(無潤滑)を用いて圧延を施して、厚さ0.19mm×幅1.3mmの箔状に成形した。
図4に示す上島製作所製FPC屈曲試験機(FT−2130)を用い、試料固定板4および稼動板6に圧延銅箔2を固定し、モーター8により稼動板6を稼働させて屈曲試験を行った。尚、屈曲R:12.5mmまたは7.5mm(表1に記載の値)、ストロークS:±13mm、環境温度:85℃、回転速度:900rpm、断線定義:初期抵抗値+500Ωとし、断線が確認されるまで屈曲試験を繰返した。
200万回以上を評価:Aと、100万回以上200万回未満を評価:Bと、100万回未満を評価:Cとした。
圧延銅箔に引張試験を行い、引張強度を測定した。
試験方法はJIS−Z2241(1998年)に準拠して行った。
300MPa以上を評価:Aと、300MPa未満を評価:Bとした。
得られた圧延銅箔のコバ部(短手方向の端部)にばりが生じているかを目視で確認し、コバ部が滑らかに形成されているかを評価した。
ばりが生じていない場合を評価:Aと、ばりが生じている場合を評価:Bとした。
得られた圧延銅箔を105℃で48時間保持した後、引張試験を行い引張強度を測定した。引張試験方法はJIS−Z2241(1998年)に準拠して行った。
250MPa以上を評価:Aと、250MPa未満を評価:Bとした。
4 試料固定板
6 稼動板
8 モーター
10 圧延銅箔の側面
Claims (5)
- 銅からなる丸線材が圧延された圧延銅箔であって、
前記圧延銅箔の表面の平均結晶粒径の比率が前記圧延銅箔の厚みに対して1%以上6%以下であり、
且つ前記圧延銅箔の長手方向に直行する断面をEBSD(electron backscatter diffraction)解析した際における下記式(1)により求められる粒内歪み率が10%を超え50%未満である圧延銅箔。
式(1) 粒内歪み率(%)=(A)/(B)×100
(上記式(1)において、(A)は、画像解析により方位差1度以上15度以下と識別される領域の面積を、(B)は、画像解析により方位差0度以上15度以下と識別される領域の面積を、表す。) - 前記表面の平均結晶粒径が3μm以下である請求項1に記載の圧延銅箔。
- 前記圧延銅箔の厚みが0.02mm以上0.2mm以下である請求項1または請求項2に記載の圧延銅箔。
- 請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の圧延銅箔の製造方法であって、
銅からなる丸線材を圧延して箔とする第一圧延工程と、
300℃以上500℃以下の温度範囲で、1秒以上10秒以下の熱処理を施す中間焼鈍工程と、
最終的な箔厚まで圧延する第二圧延工程と、
をこの順で行う圧延銅箔の製造方法。 - 前記第二圧延工程後に、100℃以上300℃以下の温度範囲で、1秒以上10秒以下の熱処理を施す最終焼鈍工程を行う請求項4に記載の圧延銅箔の製造方法。
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