JP5041455B2 - 太陽電池用リード線及びその製造方法 - Google Patents
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Description
そのため、リード線の強度を下げずに半田接合時に発生する熱応力を低減させることが求められている。
さらに、本発明の無酸素銅又はタフピッチ銅からなるリード線はその内層部に粗大な結晶粒を残しているためリード線(銅線)全体の耐力は小さく、Siウェハとの半田接続時に生じる熱応力を緩和し、ウェハの反りや割れを防ぐことができ、太陽電池相互を容易につなぐことができる優れた効果を有するものである。
本発明は、表層部を微細な組織とすることで耐クラック性を向上させ熱サイクル負荷に対する寿命を従来のものよりも長くしたものである。表層部の結晶粒径が10μm未満では耐力が大きくなるため好ましくなく、また、60μm以上では耐クラック性が不十分であり好ましくない。表層部結晶粒径の上限は、耐クラック性の向上と、耐力抑制のバランスの観点から、40μm未満であることが特に好ましい。
本発明では表層部の結晶粒径が内層の結晶粒径の80%未満に規定している。表層部の結晶粒径が内層部の結晶粒径の80%を超えると耐クラック性は向上するが耐力も大きくなり過ぎてSiウェハとの半田接続時の熱応力を緩和することができなくなり、好ましくないためである。なお、耐クラック性の向上と耐力の抑制のバランスは、表層部の結晶粒径が内層部の結晶粒径の50%未満とすることが好ましく、50%未満とすることでSiウェハとの半田接続時の熱応力を好ましく緩和することができる。
結晶粒径の微細な表層部の厚さが厚すぎると銅線全体の耐力が高くなりSiウェハとの半田接続時に割れを生じやすくなる。一方、表層部の厚さが薄すぎると耐クラック性向上の効果が小さく、熱サイクル負荷に対して割れを生じてしまうため、表層部の厚さは全体の5%〜50%であることが好ましい。
耐力が大きすぎるとSiウェハと半田接合する際に熱膨張係数の差から生じる熱応力によりSiウェハを破損する。しかし、耐力値が小さければ熱応力に対して塑性変形を起こしやすいためSiウェハにかかる負荷を小さくすることができ割れを防止できる。Siウェハを破損せず、Siウェハにかかる負荷を小さくでき、割れを防止するには材料の0.2%耐力が150MPa以下とすることが好ましい。
本発明の太陽電池用平角銅線の製造方法は、無酸素銅又はタフピッチ銅の鋳塊を圧延で薄板とし、該薄板を適宜な幅にスリットして平角状とする製造方法(以下、スリット製法という)と、丸線を圧延して平角状に整形する方法(以下、丸線製法という)で製造することができる。なお、丸線を引抜き圧延して丸線に整形する方法(以下、丸線製法という)で丸線のリード線も製造したが、その性能は平角線と極めて類似していたので、本明細書では平角線についてのみ以下に説明する。
前処理工程1(均質化熱処理工程)
無酸素銅又はタフピッチ銅の鋳塊に均質化熱処理を施す。均質化処理は例えば900℃で30分程度保持する。
前処理工程2(熱間圧延工程)
均質化処理後熱間圧延、水冷、面削を行い、板厚10mm程度の銅板とする。
冷間圧延工程1(任意の工程)
厚さ10mm程度とした板材を所定のサイズまで冷間圧延する。この工程は任意の工程であり、省いてもよい。
中間焼鈍工程(任意の工程)
冷間圧延工程1を行った場合は通電方式若しくはバッチ式の熱処理により300〜700℃で1秒〜1時間中間焼鈍を行う。この工程は、上記冷間圧延工程1に付随する任意の工程であり、省いてもよい。
冷間圧延工程2
前処理工程2を行った板材若しくは中間焼鈍工程を経た板材に、さらに1パスの加工率1〜15%で冷間圧延を行い、所定の厚さにする。なお、中間焼鈍工程を経た場合、望ましくは中間焼鈍してから冷間圧延工程2終了までの総加工率を20%以上とする。
スリット加工
所定の厚さまで圧延された銅平板をスリット加工して所定の幅の平角線形状とする。
最終焼鈍工程
最後に、スリットした平角銅線を通電方式若しくはバッチ式の熱処理により200〜500℃で1秒〜1時間の焼鈍を行う。
半田めっき工程
必要によりでき上がった平角銅線に半田めっきを施す。
前処理工程(荒引き線の製造工程)
溶融した無酸素銅又はタフピッチ銅をベルト&ホイール法、双ベルト法、アップキャスト法で、あるいは鋳塊を熱間押出し法等によって直径約8mmの線材(荒引き線)とする。
冷間加工工程1(任意の工程)
製造された荒引き線を所定のサイズまで冷間引抜き若しくは冷間圧延する。この工程は任意の工程であり、省いてもよい。
中間焼鈍工程(任意の工程)
冷間引抜き若しくは冷間圧延を行った場合は所定のサイズに伸ばされた線材を通電方式若しくはバッチ式の熱処理で300〜700℃で1秒〜1時間の中間焼鈍を行う。この工程は、上記冷間加工工程1に付随する任意の工程であり、省いてもよい。
冷間加工工程2
前処理工程を経た線材若しくは中間焼鈍工程を経た線材を、1〜15%の冷間引抜き圧延若しくは冷間圧延して平角銅線とする。なお、中間焼鈍工程を経た場合、望ましくは中間焼鈍してから冷間圧延工程2終了までの総加工率を20%以上とする。
最終焼鈍工程
平角銅線に成形後通電方式若しくはバッチ式の熱処理で200〜500℃で1秒〜1時間の焼鈍を行う。
半田めっき工程
必要によりでき上がった平角銅線に半田めっきを施す。
冷間圧延工程に次いで200〜500℃の最終焼鈍処理を行うと表層部の加工歪が多く入った場所は再結晶の核が多いために結晶粒径が微細となり、加工歪の入っていない内層部は結晶粒が粗大となる。
また、加工歪が多く入っている方が再結晶粒径は微細となり、耐クラック性に優れた製品となる
また、冷間圧延工程2での1パス加工率が20%以上であると内部まで加工が入るため比較的均一な組織となるが、すべて微細な組織だと耐力が高くなってしまい半田接続時に割れを生じてしまう。また、すべて粗大な組織とすると銅線表面の耐クラックが低下してしまうため長期の熱サイクル負荷に対して割れを生じてしまう。
ベルト&ホイール法によって製造した直径8mmの無酸素銅からなる荒引線を所定の径まで冷間引抜き又は冷間圧延加工を施し、次いで300〜700℃の中間焼鈍を行った。このときの加工率は1パスに付き20%で行った。その後、1パス1〜15%の冷間加工を数回行い、板厚0.2mmの平角線とし、200〜500℃で30分の熱処理を行った。この平角銅線を250℃に保持したSn−3%Ag−0.5%Cuの半田浴槽に浸漬させることで約20μmの半田めっきを施し供試材(リード線)とした。
(1)表層部の結晶粒径、
(2)中心部の結晶粒径、
(3)表層と内層の結晶粒径の比率、
(4)表層の占める厚さ割合、
(5)0.2%耐力、
(6)半田接続時の熱収縮による割れ判定、
(7)熱サイクル試験の割れ判定
表層部の占める厚さ割合は平角線幅方向の中心でその厚さを測定し、全体の厚さに占める割合とした。
半田接続時の熱収縮による割れ判定は、150mm×150mm、板厚:0.18mmのSi板に、供試材を半田接続した際にSiウェハに割れが発生していないかを顕微鏡により観察し判定した。
熱サイクル試験の割れ判定は20℃⇔150℃×10000回の熱サイクル試験を行い供試材表面にクラックが発生しているか否かを顕微鏡により表面観察を行い、判定した。判定は全てに割れが発生しなかったサンプルは「○」、割れが発生したサンプルは「×」として表2、3に示した。
これに対し比較例1〜56は仕上げ焼鈍の温度が高すぎるため加工歪が多く入っている表層部の結晶粒が内層よりさらに粗大化してしまうため熱サイクル負荷に対する耐性が低下している。また、比較例57〜63は熱処理が不十分であるために耐力が大きく、Siウェハとの半田接続時に熱収縮によりSiウェハが破損してしまった。
これに対し比較例65〜120は仕上げ焼鈍の温度が高すぎるため加工歪が多く入っている表層部の結晶粒が内層よりさらに粗大化してしまうため熱サイクル負荷に対する耐性が低下している。また、比較例121〜127は熱処理が不十分であるために耐力が大きく、Siウェハとの半田接続時に熱収縮によりSiウェハが破損してしまった。
さらに、本発明の無酸素銅又はタフピッチ銅からなるリード線はその内層部に粗大な結晶粒を残しているためリード線(銅線)全体の耐力は小さく、Siウェハとの半田接続時に生じる熱応力を緩和し、ウェハの反りや割れを防ぐことができ、太陽電池相互を容易につなぐことができる優れた効果を有するものである。
Claims (6)
- 太陽電池モジュールのセル間同士を接続する無酸素銅又はタフピッチ銅からなる太陽電池用リード線であって、該リード線の表層部の平均結晶粒径が10μm以上60μm未満であり、かつ、内層部の結晶粒径の80%未満である太陽電池用リード線。
- 太陽電池モジュールのセル間同士を接続する無酸素銅又はタフピッチ銅からなる太陽電池用リード線であって、該リード線の表層部の平均結晶粒径が10μm以上40μm未満であり、かつ、内層部の結晶粒径の50%未満である太陽電池用リード線。
- 表層部の平均結晶粒径が10μm以上60μm未満である表層部の厚さが、リード線全体の厚さの5%〜50%である請求項1に記載の太陽電池用リード線。
- 太陽電池モジュールのセル間同士を接続する無酸素銅又はタフピッチ銅からなる太陽電池用リード線であって、該リード線の0.2%耐力が150MPa以下である請求項1〜3のいずれかに記載の太陽電池用リード線。
- 無酸素銅又はタフピッチ銅の鋳塊を冷間圧延後300〜700℃で1秒〜1時間の中間焼鈍又は熱間圧延を施した後、1パスの加工率1〜15%で冷間圧延又は冷間引抜き圧延でリード線に加工し、該リード線を200〜500℃で1秒〜1時間焼鈍する太陽電池用リード線の製造方法。
- 1パスの加工率1〜15%で実施する冷間圧延又は冷間引抜き圧延の加工率の合計が20%以上である請求項5に記載の太陽電池用リード線の製造方法。
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