以下に、添付図面を参照して、本発明にかかる金属板接合装置および金属板接合方法の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本実施の形態により、本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1にかかる金属板接合装置の一構成例を示すブロック図である。図2は、図1に示す金属板接合装置の誘導加熱部を上方から見た上面図である。なお、図1には、本実施の形態1にかかる金属板接合装置10が設置される熱間圧延ラインの一部分が図示されている。以下では、図1、2を参照しつつ、まず、金属板接合装置10を適用した熱間圧延ラインの概略構成を説明し、つぎに、金属板接合装置10の構成を説明する。
図1に示すように、本実施の形態1にかかる金属板接合装置10は、熱間圧延ラインの粗圧延部1と仕上圧延部2との間に設置される。具体的には、熱間圧延ラインの搬送経路3における鋼板の搬送方向(図1の破線矢印参照)に沿って、粗圧延部1と、金属板接合装置10と、仕上圧延部2とが配置される。なお、搬送経路3は、複数の搬送ロール等を用いて実現される。
粗圧延部1は、加熱炉(図示せず)によって加熱された鋼スラブを板状に粗圧延して鋼板を得る。粗圧延後の鋼板は、搬送経路3に沿って粗圧延部1から金属板接合装置10へ搬送される。金属板接合装置10は、トランスバース方式の誘導加熱法によって鋼板を順次誘導加熱し、誘導加熱後の各鋼板の対向端部同士を加熱接合する。これによって、金属板接合装置10は、複数の鋼板を帯状に一体化した一連の鋼板を得る。このような一連の鋼板は、搬送経路3に沿って金属板接合装置10から仕上圧延部2へ搬送される。
仕上圧延部2は、上述したように金属板接合装置10によって帯状に接合された一連の鋼板を仕上圧延して、所望の厚さの熱延鋼板を得る。この場合、仕上圧延部2は、一連の鋼板を形成する複数の鋼板を連続して仕上圧延するエンドレス圧延を行う。仕上圧延部2は、このエンドレス圧延を行うことによって、複数の鋼板を切れ目なく連続して仕上圧延できるとともに、圧延稼働中の仕上圧延部2の入側に仕上圧延前の鋼板を停滞させてしまう事態を防止できる。この結果、仕上圧延部2は、複数の鋼板を能率よく仕上圧延できる。なお、仕上圧延後の熱延鋼板は、仕上圧延部2の出側から送出され、その後、熱間圧延ラインによる各種処理が適宜施される。
つぎに、上述した金属板接合装置10の構成を説明する。金属板接合装置10は、搬送経路3に沿って搬送される複数の鋼板を加熱接合する装置であり、図1に示すように、切断部11と、誘導加熱部12と、押圧部16,17と、制御部18とを備える。また、図1に示す熱間圧延ラインの搬送経路3に沿って、粗圧延部1の後段に切断部11が配置され、切断部11の後段に、押圧部16,17および誘導加熱部12が配置される。
切断部11は、各鋼板の先端部および尾端部(以下、纏めて、先尾端部という場合がある)を切断成形する。具体的には、切断部11は、複数の刃11cが設けられた切断ローラ11a,11bを備える。切断ローラ11a,11bは、図1に示すように、搬送経路3を挟んで鋼板の板厚方向に配置されて対をなす。切断ローラ11a,11bの各外周面には、各刃11cが、切断ローラ11a,11bの回転軸を中心にして互いに点対称に配置される。切断部11は、このような切断ローラ11a,11bをその外周方向に回転させつつ、切断ローラ11a,11bの各刃11cによって鋼板の先尾端部をその板厚方向に挟み込む。これによって、切断部11は、鋼板の先尾端部をその板厚方向に切断(剪断)する。切断部11は、順次搬送される各鋼板の先尾端部に対して、上述した切断処理を繰り返し、これによって、各鋼板の先尾端部同士の各対向面を略平坦状に成形する。このように先尾端部が切断成形された各鋼板は、搬送経路3に沿って切断部11から誘導加熱部12側へ順次搬送される。
誘導加熱部12は、トランスバース方式の誘導加熱法によって各鋼板の先尾端部を誘導加熱する。具体的には、図1、2に示すように、誘導加熱部12は、コイル13a,13bと、コア14と、電源15とを備える。コイル13a,13bは、搬送経路3を挟んで鋼板の板厚方向に対向し且つ各コイル軸方向を互いに略同じ方向にするように配置される。また、コイル13a,13bは、電源15に対して直列に接続される。これらのコイル13a,13bの各々には、電源15から略同じ量の交流電流が供給される。コア14は、図1に示すようにコイル13a,13bを巻回されるC型コアである。コア14は、電磁鋼板等の磁性体を用いて形成され、巻回したコイル13a,13bによる交番磁界の磁束を強化し且つ整える。なお、このようなコア14に巻回されたコイル13a,13bは、上述したように対向配置されてコイル対13をなす。電源15は、高周波または中周波の交流電流をコイル対13に供給する。
このような構成を有する誘導加熱部12において、コイル対13の各コイル13a,13bは、電源15から供給された交流電流に応じて、鋼板をその板厚方向に貫通する交番磁界を発生させる。誘導加熱部12は、図1の実線矢印に示されるように、先行板4の尾端部と後行板5の先端部とに対し、このコイル対13による交番磁界を印加する。なお、鋼板の板幅方向について、コイル対13のサイズ、すなわち、コイル13a,13bの各サイズは、図2に示すように、先行板4および後行板5の先尾端部の板幅に比して長く、先行板4および後行板5の先尾端部は、コイル対13の内側におさまる。このため、コイル対13による交番磁界は、先行板4および後行板5の先尾端部の全板幅に亘って印加される。誘導加熱部12は、このように先行板4および後行板5の先尾端部に交番磁界を印加することによって、先行板4および後行板5の先尾端部に渦電流8a,8bを誘導する。詳細には図2の破線矢印に示されるように、先行板4の尾端部に渦電流8aが誘導され、後行板5の先端部に渦電流8bが誘導される。渦電流8a,8bは、コイル対13に流れる交流電流の通電方向に対して反対方向に流れる。誘導加熱部12は、このような渦電流8a,8bに由来するジュール熱によって、先行板4の尾端部と後行板5の先端部とを誘導加熱する。誘導加熱部12は、搬送経路3に沿って先行板4および後行板5の先尾端部が搬送される都度、上述したように先尾端部を誘導加熱する。
ここで、上述した先行板4および後行板5は、搬送経路3に沿って搬送される複数の鋼板のうちの2つである。詳細には、先行板4は、搬送経路3上において先行する鋼板であり、後行板5は、先行板4に後続する鋼板である。先行板4の尾端部および後行板5の先端部は、図1、2に示すように、鋼板の搬送方向に互いに対向する。
押圧部16,17は、誘導加熱部12によって誘導加熱された鋼板の先尾端部同士を押圧する。具体的には、押圧部16,17は、クランプ機構および押圧機構等を用いて各々実現される。図1に示すように、押圧部16は、誘導加熱部12の入側に配置され、押圧部17は、誘導加熱部12の出側に配置される。押圧部16は後行板5をクランプし、押圧部17は先行板4をクランプする。また、押圧部16は、図1の太線矢印に示されるように、誘導加熱部12によって誘導加熱された後行板5の先端部を先行板4の尾端部に向けて押圧する。これに並行して、押圧部17は、図1の太線矢印に示されるように、誘導加熱部12によって誘導加熱された先行板4の尾端部を後行板5の先端部に向けて押圧する。すなわち、押圧部16,17は、誘導加熱後の先行板4の尾端部と後行板5の先端部とを互いに押圧する。これによって、押圧部16,17は、先行板4と後行板5とを接合する。押圧部16,17は、搬送経路3に沿って搬送される複数の鋼板に対して、上述した押圧処理を順次行う。
制御部18は、切断部11、誘導加熱部12、および押圧部16,17を制御する。具体的には、制御部18は、搬送経路3上の各鋼板の搬送情報(搬送速度等)をもとに、搬送経路3における各鋼板の位置を把握する。制御部18は、把握した各鋼板の位置をもとに、切断部11、誘導加熱部12、および押圧部16,17の各動作タイミングを制御する。例えば、制御部18は、鋼板の先端部が切断部11へ搬送されるタイミングに、この先端部を切断成形するように切断部11を制御し、鋼板の尾端部が切断部11へ搬送されるタイミングに、この尾端部を切断成形するように切断部11を制御する。一方、制御部18は、誘導加熱部12のコイル対13(図2参照)の内側に先行板4および後行板5の先尾端部が位置するタイミングに、先行板4をクランプするように押圧部17を制御し且つ後行板5をクランプするように押圧部16を制御する。制御部18は、このクランプ動作によって位置固定され且つ互いに離間した状態で対向する先行板4の尾端部と後行板5の先端部とを誘導加熱するように誘導加熱部12を制御する。なお、このように先行板4の尾端部と後行板5の先端部とが互いに離間した状態において行われた誘導加熱は、この先行板4および後行板5に対する初回の誘導加熱である。
また、制御部18は、時間情報をもとに誘導加熱部12および押圧部16,17の各動作を制御する。具体的には、制御部18は、互いに離間した状態の先行板4の尾端部と後行板5の先端部との誘導加熱を所定の時間、実行したタイミングに、この誘導加熱を停止するように誘導加熱部12を制御する。ついで、制御部18は、この誘導加熱の停止期間に、誘導加熱後の先行板4の尾端部と後行板5の先端部とを押圧するように押圧部16,17を制御する。制御部18は、押圧部16,17の押圧によって先行板4の尾端部と後行板5の先端部とが互いに接触したタイミングに、この互いに接触した状態の先行板4の尾端部と後行板5の先端部とに対して誘導加熱を再開するように誘導加熱部12を制御する。ついで、制御部18は、上述した押圧後の先行板4の尾端部と後行板5の先端部とをさらに押圧しつつ誘導加熱するように、誘導加熱部12および押圧部16,17を制御する。この場合、制御部18は、押圧部16,17によって押圧された状態の先行板4の尾端部と後行板5の先端部とに対し、上述したように再開した誘導加熱を所定の時間、継続するように誘導加熱部12を制御する。これに並行して、制御部18は、この再開した誘導加熱の継続時間以上の時間、先行板4の尾端部と後行板5の先端部との押圧を継続するように押圧部16,17を制御する。
さらに、制御部18は、誘導加熱部12による先行板4および後行板5の先尾端部の誘導加熱強度を制御する。具体的には、制御部18は、誘導加熱部12のコイル対13(コイル13a,13b)に対する交流電流の供給量を増減するように電源15を制御し、この電源15の制御を通して、コイル対13による交番磁界の強度を制御する。これによって、制御部18は、先行板4および後行板5の先尾端部に誘導する渦電流8a,8b(図2参照)の強度を制御し、この渦電流8a,8bの制御を通して、先行板4および後行板5の先尾端部の誘導加熱強度を制御する。例えば、制御部18は、誘導加熱部12の制御により、先行板4および後行板5の先尾端部に対する初回の誘導加熱時に比して再開後の誘導加熱時の交番磁界を強め、これにより、初回の誘導加熱に比して再開後の誘導加熱を強める。
つぎに、本発明の実施の形態1にかかる金属板接合方法について説明する。図3は、本実施の形態1にかかる金属板接合方法の一例を示すフローチャートである。図4は、互いに離間した状態の先行板の尾端部と後行板の先端部とを誘導加熱する状態を示す模式図である。図5は、初回の誘導加熱後の先行板および後行板の先尾端部同士を押圧する状態を示す模式図である。図6は、初回の誘導加熱後の先行板および後行板の先尾端部同士を加熱押圧する状態を示す模式図である。図7は、実施の形態1における先行板および後行板の先尾端部同士の加熱接合を説明するための模式図である。
図1に示した金属板接合装置10は、図3に示す各処理ステップを順次行って、先行板4の尾端部と後行板5の先端部とを加熱接合する。すなわち、金属板接合装置10は、図3に示すように、まず、先行板4と後行板5との対向端部、すなわち先尾端部を成形する(ステップS101)。ステップS101において、切断部11は、切断ローラ11a,11bを回転させつつ、各刃11cによって先行板4の尾端部を上下方向から挟み込み、これら各刃11cの作用によって、先行板4の尾端部をその板厚方向に切断する。ついで、切断部11は、先行板4の尾端部の場合と同様に、切断ローラ11a,11bの各刃11cによって後行板5の先端部をその板厚方向に切断する。この結果、先行板4の尾端部と後行板5の先端部との各対向面は、略直線状に成形される。
つぎに、金属板接合装置10は、先行板4の尾端部と後行板5の先端部とを誘導加熱する(ステップS102)。ステップS102において、誘導加熱部12は、先行板4の尾端部と後行板5の先端部とに対し、鋼板をその板厚方向に貫通する交番磁界を印加して、互いに離間した状態で対向する先行板4の尾端部と後行板5の先端部とを誘導加熱する。
詳細には、図2に示したように先行板4の尾端部がコイル対13の内側に位置するタイミングに、押圧部17は、先行板4をクランプして先行板4の位置を固定する。これに並行して、押圧部16は、後行板5の先端部がコイル対13の内側に位置し且つ先行板4の尾端部と所定の距離だけ離間するタイミングに、後行板5をクランプして後行板5の位置を固定する。この状態において、コイル対13は、電源15から供給された交流電流に応じて、先行板4および後行板5の先尾端部をその板厚方向に貫通する交番磁界を発生させる。このような交番磁界は、図4に示すように、コイル対13の内側において互いに離間し且つ対向する先行板4の尾端部と後行板5の先端部とに印加される。これによって、この交番磁界に由来する渦電流8aが先行板4の尾端部に誘導されるとともに、この交番磁界に由来する渦電流8bが後行板5の先端部に誘導される。誘導加熱部12は、渦電流8aのジュール熱によって先行板4の尾端部を誘導加熱するとともに、渦電流8bのジュール熱によって後行板5の先端部を誘導加熱する。
ここで、先行板4の尾端部および後行板5の先端部は、上述したようにコイル対13の内側において互いに離間している。このため、渦電流8a,8bは、互いに結合せず、図4に示すように、先行板4の尾端部と後行板5の先端部とに別れて各々渦状に流れる。この場合、渦電流8a,8bは、互いに同じ方向に周回する。また、渦電流8a,8bは、先行板4および後行板5の先尾端部同士の対向面近傍に集中して流れる。一方、渦電流8aは、渦状に周回するため、先行板4の尾端部の板幅方向の両端部、すなわち、両角部4a,4bに流れない。これと同様に、渦電流8bは、後行板5の先端部の板幅方向の両端部、すなわち、角部5a,5bに流れない。このような渦電流8a,8bのジュール熱によって、誘導加熱部12は、図4の斜線部に示されるように、先行板4の尾端部のうちの両角部4a,4bに挟まれた中間部分と、後行板5の先端部のうちの両角部5a,5bに挟まれた中間部分とを十分に加熱する。なお、これら先行板4および後行板5の各中間部分は、先行板4および後行板5の先尾端部における板幅方向の大部分を占める。誘導加熱部12は、上述したステップS102において、先行板4および後行板5の先尾端部のうちの両角部4a,4b,5a,5bを除く大部分を、鋼板同士の加熱接合に十分な温度まで誘導加熱する。
つぎに、金属板接合装置10は、上述したように互いに離間した状態の先行板4の尾端部と後行板5の先端部とに対する誘導加熱を停止する(ステップS103)。ステップS103において、制御部18は、ステップS102の誘導加熱を開始してからの経過時間が所定の時間に達したタイミングに、コイル対13に対する交流電流の供給を停止するように電源15を制御する。制御部18は、この電源15の制御を通して、コイル対13による先行板4および後行板5の先尾端部への交番磁界の印加を停止する。この制御部18の制御に基づいて、誘導加熱部12は、ステップS102の誘導加熱、すなわち、先行板4および後行板5の先尾端部に対する初回の誘導加熱を停止する。
その後、金属板接合装置10は、上述したステップS102による初回の誘導加熱後の先行板4の尾端部と後行板5の先端部とを押圧する(ステップS104)。ステップS104において、押圧部16,17は、先行板4および後行板5の先尾端部に対する誘導加熱の停止期間に、上述した初回の誘導加熱によって部分的に加熱された先行板4および後行板5の先尾端部同士を押圧する。押圧部16,17は、この先尾端部同士の押圧によって、この先尾端部のうちの初回の誘導加熱によって十分に加熱された部分同士(図5の斜線部参照)を加熱接合する。この結果、先行板4および後行板5の先尾端部同士は、図5に示すように、この加熱接合による接合部分6を介し、互いに接触して導通可能な状態になる。
なお、この接合部分6は、図5の斜線部に示されるように、先行板4および後行板5の先尾端部のうちの一方の角部4a,5aと他方の角部4b,5bとの間の部分であり、この先尾端部の板幅方向の大部分を占める。すなわち、ステップS104において、角部4a,5a同士および角部4b,5b同士は、加熱接合されておらず、若干離間した状態である。
つぎに、金属板接合装置10は、ステップS104の押圧によって互いに接触した状態の先行板4の尾端部と後行板5の先端部とに対して誘導加熱を再開する(ステップS105)。ステップS105において、制御部18は、上述したステップS104によって先行板4および後行板5の先尾端部同士が押圧され始めてからの経過時間が所定の時間に達したタイミングに、コイル対13に対する交流電流の供給を再開するように電源15を制御する(図6参照)。制御部18は、この電源15の制御を通して、コイル対13による先行板4および後行板5の先尾端部への交番磁界の印加を再開する。この結果、先行板4および後行板5の先尾端部には、図6に示すように、この先尾端部を跨いで大きく周回する渦電流9の周回路が形成される。誘導加熱部12は、この渦電流9のジュール熱によって、互いに部分接触した状態の先行板4および後行板5の先尾端部の誘導加熱を再開する。
ここで、渦電流9は、図4に示した先行板4の渦電流8aと後行板5の渦電流8bとが接合部分6の導通に基づいて互いに結合したものである。このような渦電流9は、図6に示すように、接合部分6の板幅方向の両端部、すなわち、接合部分6の角部4a,5a側の端部と角部4b,5b側の端部とを通って、先行板4の尾端部と後行板5の先端部とを周回する。なお、この接合部分6の両端部は、接合部分6の導通領域と角部4a,4b,5a,5bの離間領域(すなわち非導通領域)との境界部分である。
ついで、金属板接合装置10は、ステップS104の押圧後の先行板4の尾端部と後行板5の先端部とをさらに押圧しつつ誘導加熱して、この先行板4および後行板5の先尾端部同士を加熱押圧する(ステップS106)。
ステップS106において、制御部18は、先行板4および後行板5の先尾端部同士の押圧を継続するように押圧部16,17を制御する。これとともに、制御部18は、この押圧によって互いに接触した状態の先行板4および後行板5の先尾端部に対して再開した誘導加熱を継続するように誘導加熱部12を制御する。また、制御部18は、ステップS102の誘導加熱(初回の誘導加熱)に比してコイル対13に対する交流電流の供給量を増加させるように、電源15を制御する。これによって、コイル対13は、初回の誘導加熱に比して強い交番磁界を先行板4および後行板5の先尾端部に印加する。この結果、図6に示す渦電流9は、初回の誘導加熱時の渦電流8a,8bに比して強力になる。
このような制御部18の制御に基づいて、押圧部16,17は、図6に示すように、接合部分6において互いに接触した状態の先行板4の尾端部と後行板5の先端部とを押圧し続ける。これと同時に、誘導加熱部12は、この押圧されている先行板4および後行板5の先尾端部に対してコイル対13による交番磁界を印加し続ける。この交番磁界由来の渦電流9のジュール熱によって、誘導加熱部12は、この先行板4の尾端部と後行板5の先端部との誘導加熱をその再開以後、継続する。
ここで、先行板4および後行板5の先尾端部は、図6に示すように、その全板幅に亘ってコイル対13の内側に位置する。このため、コイル対13による交番磁界は、この先尾端部の全板幅以上の領域に広く分布する。この結果、渦電流9は、図6に示すように、接合部分6の角部4a,5a側の端部と角部4b,5b側の端部とに集中して流れつつ、先行板4および後行板5の先尾端部を周回する。また、この渦電流9の周回路(通電経路)は、先行板4と後行板5との導通領域の外周側に集中して流れ易い。
このような性質の渦電流9のジュール熱と押圧部16,17による押圧との相乗作用(以下、加熱押圧作用という)によって、先行板4および後行板5の先尾端部は、その全板幅に亘って加熱接合される。具体的には、図7に示すように、先行板4および後行板5の先尾端部同士が押圧されつつ、渦電流9は、この先尾端部における接合部分6の角部4a,5a側の端部に集中して流れる。この結果、この接合部分6の端部において部分的に、この先尾端部同士が加熱接合される。この加熱押圧作用による新たな接合部分7は、先の接合部分6と連続する部分であるとともに、先行板4と後行板5とを導通可能にする導通領域でもある。このような接合部分7は、図7に示すように、接合部分6の端部から角部4a,5aに向けて広がり始める(状態Lv1)。この接合部分7の拡張に追随して、渦電流9の通電経路は外周側へ移行する。すなわち、渦電流9は、図7に示すように、接合部分7の角部4a,5a側の端部に集中して流れる。この結果、この接合部分7の端部において部分的に、この先尾端部同士が加熱接合される。このように接合部分7に対して加熱押圧作用を繰り返すことにより、接合部分7は、図7に示すように、角部4a,5aに向けてさらに広がり(状態Lv2)、最終的には、接合部分7は、角部4a,5aに達する(状態Lv3)。なお、このような接合部分7の拡張現象は、図6に示す接合部分6の角部4b,5b側の端部においても同様に発生する。
金属板接合装置10は、上述した加熱押圧作用によって、先行板4および後行板5の先尾端部同士の接合を、先の接合部分6の両端部から両角部4a,4b,5a,5bまで進行させる。この結果、金属板接合装置10は、この先尾端部同士をその全板幅に亘って良好に加熱接合する。その後、金属板接合装置10は、この先行板4および後行板5の先尾端部同士の加熱接合を完了する。この場合、制御部18は、ステップS104の押圧から所定の時間が経過したタイミングに、先行板4および後行板5の先尾端部同士の押圧を停止して、先行板4および後行板5のクランプを解除するように押圧部16,17を制御する。また、制御部18は、ステップS105の誘導加熱の再開から所定の時間が経過したタイミングに、先行板4および後行板5の先尾端部の誘導加熱を停止するように誘導加熱部12を制御する。なお、上述したように先尾端部同士の加熱接合が完了した先行板4および後行板5は、図1に示した搬送経路3に沿って仕上圧延部2側へ搬送される。
このような金属板接合装置10は、搬送経路3(図1参照)に沿って順次搬送される複数の鋼板に対し、上述したステップS101〜S106の各処理ステップを行う。これによって、金属板接合装置10は、これら複数の鋼板の各対向端部同士をその全板幅に亘って確実に加熱接合する。この結果、金属板接合装置10は、これら複数の鋼板を帯状に一体化した一連の鋼板を得る。
つぎに、本発明の実施の形態1にかかる金属板接合装置10および金属板接合方法の具体的な実施例1を説明する。本実施例1では、接合対象の先行板4および後行板5として、厚さが30〜44[mm]であり、幅が1200〜1800[mm]である鋼板を用いた。一方、金属板接合装置10(図1参照)において、電源15は、周波数が1100[Hz]であり、出力が3[MW]である高周波電源を用いた。また、誘導加熱部12のコイル13a,13bとして、鋼板の板幅方向に2200[mm]の長さを有し且つ鋼板の搬送方向(板幅方向に対する垂直方向)に800[mm]の長さを有する電磁コイルを用いた。
上述した条件の下、図1に示した熱間圧延ラインの搬送経路3に沿って、先行板4および後行板5を順次搬送し、この先行板4および後行板5の先尾端部に対して、図3に示したステップS101〜S106の処理ステップを行った。
詳細には、先行板4および後行板5の先尾端部に対する初回の誘導加熱(ステップS102)において、図4に示したように、先行板4および後行板5の先尾端部に渦電流8a,8bを各々誘導した。この先尾端部のうちの両角部4a,4b,5a,5bの間の中間部分(図4の斜線部分参照)には、渦電流8a,8bが集中して流れた。このため、渦電流8a,8bのジュール熱によって、この中間部分を加熱接合に十分な温度に誘導加熱できた。一方、このステップS102において、渦電流8a,8bは、両角部4a,4b,5a,5bまで流れなかった。このため、両角部4a,4b,5a,5bは、温度上昇しなかった。
その後、初回の誘導加熱後の先行板4および後行板5の先尾端部同士の押圧(ステップS104)において、この先尾端部のうち、上述した初回の誘導加熱によって十分に温度上昇した中間部分同士は、押圧後に直ちに接合できた。この結果、図5に示したように、一方の角部4a,5aと他方の角部4b,5bとの間に接合部分6が形成された。一方、このステップS104において、角部4a,5a同士および角部4b,5b同士は結合できなかった。
ステップS104による押圧後の先行板4および後行板5の先尾端部同士は、接合部分6において部分的に接合されるとともに、接合部分6を介して導通可能になった。このような先尾端部に対して交番磁界の印加を再開して、先尾端部の各々に渦電流8a,8bを再度誘導した。この結果、先行板4の渦電流8aと後行板5の渦電流8bとが、接合部分6の接合面を通じて結合し、これによって、図6に示したような一つの周回路をなす渦電流9が生じた。この渦電流9のジュール熱によって、先行板4および後行板5の先尾端部の誘導加熱を再開した。
その後、ステップS106によって、先行板4および後行板5の先尾端部同士の加熱押圧を継続した。このステップS106の開始直後において、先行板4の尾端部と後行板5の先端部とは接合部分6を介して電気的に導通しているが、角部4a,5a同士および角部4b,5b同士は、接合が不十分であるため、電気的に導通していない。このため、渦電流9は、図6、7に示したように、接合部分6の両端部を通電するように大きく屈曲して流れる。この場合、渦電流9の通電経路のうち、接合部分6の両端部近傍において、渦電流9の電流密度が大きくなった。渦電流9の電流密度の増加に伴い、渦電流9のジュール熱が増加するため、接合部分6の両端部は強く加熱される。この結果、この接合部分6の両端部は高温になり、継続的な加熱押圧作用によって、先行板4および後行板5の先尾端部同士の接合が、接合部分6の両端部から板幅方向に広がった(図7の状態Lv1,Lv2参照)。最終的には、この先尾端部同士の接合は、その板幅方向の両端部、すなわち、両角部4a,4b,5a,5bまで進行した(図7の状態Lv3参照)。このようにして、接合すべき先行板4および後行板5の先尾端部同士をその全板幅に亘って良好に加熱接合できた。
以上、説明したように、本発明の実施の形態1では、互いに離間した状態で対向する先行板の尾端部と後行板の先端部とを誘導加熱し、この誘導加熱後の先行板の尾端部と後行板の先端部とを押圧し、この押圧後の先行板の尾端部と後行板の先端部とをさらに押圧しつつ誘導加熱している。
このため、先行板および後行板の先尾端部に対する初回の誘導加熱によって、この先尾端部のうちの両角部を除く対向部分を、加熱接合に十分な高温状態にし、これら両角部に先行して、高温状態の対向部分同士を加熱接合できる。これによって、先行板および後行板の先尾端部のうちの両角部の間に導通可能な接合部分を形成でき、この接合部分の板幅方向の両端部に渦電流を集中して流すことができる。この渦電流のジュール熱と先尾端部同士の押圧との相乗作用によって、この接合部分の両端部に対する誘導加熱と押圧とを繰り返すことができる。これにより、この接合部分の両端部から両角部に向かって、先行板および後行板の先尾端部同士の接合を進行させて、この先尾端部同士の接合面積を板幅方向に増加できる。この結果、先行板および後行板の先尾端部同士をその全板幅に亘って確実に加熱接合できることから、この先尾端部同士の十分な接合強度を確保でき、これによって、先行板と後行板との接合部分の破断を抑制できる。
本発明の実施の形態1にかかる金属板接合装置および金属板接合方法を用いることによって、搬送される複数の鋼板の先尾端部同士を順次、その全板幅に亘って良好に加熱接合することができる。これによって、これら複数の鋼板を一体的に連続した一連の鋼板に能率よく加工できるとともに、この一連の鋼板における各鋼板同士の十分な接合強度を確保して、この一連の鋼板の破断を抑制できる。このような一連の鋼板は、例えば、複数の鋼板を途切れることなく連続して仕上圧延するエンドレス圧延に有用である。
一方、先行板の尾端部と後行板の先端部とを誘電加熱しつつ押し付けた場合、先行板側の渦電流と後行板側の渦電流とが瞬間的に結合し、この結果、先尾端部における渦電流の通電経路が瞬間的変化する。これに起因して、誘導加熱部の電源電圧が急激に変化することから、各コイルに過大な交流電流が流れるとともに、電源に過度な負荷変動が発生する。この結果、意図せず誘導加熱部の電源遮断が発生して先尾端部の誘導加熱に支障を来たす可能性がある。また、上述したような過度な負荷に起因して各コイルまたは電源が破損する可能性もある。
これに対し、本発明の実施の形態1では、先行板の尾端部と後行板の先端部とを互いに離間させて誘導加熱した後、この離間状態の先行板および後行板の先尾端部同士を押圧する前に、この先尾端部に対する誘導加熱を停止し、この誘導加熱の停止期間に、この離間状態の先行板の尾端部と後行板の先端部とを互いに押し付けて、初回の誘導加熱後の先行板および後行板の先尾端部同士を接触させている。このため、上述した渦電流の通電経路の瞬間的変化を引き起こすことなく、初回の誘導加熱後の先行板および後行板の先尾端部同士を押圧して接触させることができる。これによって、誘導加熱部の意図しない電源遮断を防止できるとともに、過大な負荷変動に起因する各コイルおよび電源の破損を防止できる。この結果、電源遮断や設備破損等に起因して意図せず誘導加熱を中断することなく、先行板および後行板の先尾端部同士を安全且つ能率よく加熱接合できる。
(実施の形態2)
つぎに、本発明の実施の形態2について説明する。上述した実施の形態1では、先行板4および後行板5の先尾端部同士の対向面を略平坦上に切断成形していたが、本実施の形態2では、先行板4および後行板5の先尾端部同士の対向面を凹凸状に切断成形して、この対向面に凸曲部を形成している。
図8は、本発明の実施の形態2にかかる金属板接合装置の一構成例を示すブロック図である。図9は、本実施の形態2における切断成形後の先行板および後行板の先尾端部の一形状例を示す模式図である。図8に示すように、本実施の形態2にかかる金属板接合装置20は、上述した実施の形態1にかかる金属板接合装置10の切断部11に代えて切断部21を備える。その他の構成は実施の形態1と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
切断部21は、各鋼板の先尾端部のうちの少なくとも一方を凹凸状に切断成形する。具体的には、図8に示すように、切断部21は、上述した実施の形態1における切断部11(図1参照)の一対の刃11cに代えて一対の曲線刃21cを備える。その他の構成は実施の形態1における切断部11と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
すなわち、切断部21は、図8に示すように、切断ローラ11a,11bの各外周面に、刃11cと曲線刃21cとを有する。切断ローラ11a,11b上の各曲線刃21cは、切断ローラ11a,11bの回転軸を中心に各々、刃11cに対して点対称に配置される。このような切断ローラ11a,11b上の各曲線刃21cは、搬送経路3を挟んで対をなす。なお、残りの各刃11cは、曲線刃21cの場合と同様に、搬送経路3を挟んで対をなす。切断部21は、このような切断ローラ11a,11bをその外周方向に回転させつつ、一対の刃11cまたは一対の曲線刃21cによって鋼板の先尾端部をその板厚方向に順次挟み込む。切断部21は、一対の刃11cの剪断作用によって、鋼板の先尾端部の一方をその板厚方向に直線状に切断し、一対の曲線刃21cの剪断作用によって、この先尾端部の他方をその板厚方向に曲線状に切断する。切断部21は、順次搬送される各鋼板の先尾端部に対して、上述した直線状および曲線状の各切断処理を繰り返し、これによって、各鋼板の先尾端部同士の各対向面を略平坦状と曲線状とに各々成形する。
より具体的には、本実施の形態2において、切断部21は、図9に示すように、先行板4の尾端部を一対の曲線刃21cによって曲線状に切断成形する。これによって、切断部21は、先行板4の尾端部における両角部4a,4bの間に、その板厚方向に沿って、2つの凸曲部4cを含む曲線状の凹凸部を形成する。一方、切断部21は、上述した実施の形態1の切断部11と同様に、一対の刃11cによって、後行板5の先端部を直線状に切断成形する。
ここで、2つの凸曲部4cの各々は、先行板4の尾端部の一部分であって、この尾端部から後行板5の先端部に向けて曲線状に突出する部分である。切断部21は、先行板4の尾端部における板幅方向の中央部を境にして、この尾端部における板幅方向の両端部(すなわち両角部4a,4b)の近傍に凸曲部4cを各々形成する。このような先行板4の曲線的な凹凸形状の尾端部と後行板5の直線状の先端部とを、押圧部16,17(図8参照)が押圧して互いに接触させた状態において、先行板4および後行板5の先尾端部における板幅方向の両端部および中央部に、先行板4の尾端部と後行板5の先端部との隙間が生じる。すなわち、図9に示すように、先行板4の尾端部の角部4aと後行板5の先端部の角部5aとの間に隙間25aが生じ、先行板4の尾端部の角部4bと後行板5の先端部の角部5bとの間に隙間25bが生じる。また、この先行板4の尾端部における中央部(具体的には2つの凸曲部4c間の凹曲部)と後行板5の先尾端部における中央部との間に、隙間25cが生じる。
つぎに、本発明の実施の形態2にかかる金属板接合方法について説明する。図10は、本実施の形態2にかかる金属板接合方法の一例を示すフローチャートである。図11は、初回の誘導加熱後の先行板の凸曲部と後行板の先端部とを加熱接合する状態を示す模式図である。図12は、実施の形態2における先行板および後行板の先尾端部同士の加熱接合を説明するための模式図である。
図8に示した金属板接合装置20は、図10に示す各処理ステップを順次行って、先行板4の尾端部と後行板5の先端部とを加熱接合する。すなわち、金属板接合装置20は、図10に示すように、まず、先行板4と後行板5との対向端部を曲線状に成形する(ステップS201)。
ステップS201において、切断部21は、切断ローラ11a,11bを回転させつつ、各曲線刃21cによって先行板4の尾端部を上下方向から挟み込み、これら各曲線刃21cの作用によって、先行板4の尾端部をその板厚方向に切断する。これによって、切断部21は、先行板4の尾端部を曲線的な凹凸状に切断成形する。この結果、先行板4の尾端部には、図9に示したように、その板幅方向に沿って2つ、この尾端部から後行板5の先端部に向けて曲線状に突出する凸曲部4cが形成される。このような凸曲部4cは、先行板4の尾端部のうち、その板幅方向の中央部を境にして両端部、すなわち、両角部4a,4bの近傍に各々形成される。ついで、切断部21は、切断ローラ11a,11bの各刃11cの作用によって後行板5の先端部をその板厚方向に切断する。この結果、先行板4に対する後行板5の先端部の対向面は、略直線状に成形される。
上述したステップS201によって切断成形された先行板4および後行板5の先尾端部の間には、先行板4の尾端部と後行板5の先端部とを押圧して接触させた状態において、この先尾端部の板幅方向の両端部および中央部に隙間が生じる。詳細には図9に示したように、この状態において、先行板4および後行板5の一方の角部4a,5a間に隙間25aが生じ、他方の角部4b,5b間に隙間25bが生じる。また、この先行板4の尾端部における中央部と後行板5の先尾端部における中央部との間に、隙間25cが生じる。
ステップS201を実行後、金属板接合装置20は、上述した実施の形態1におけるステップS102〜S106(図3参照)と同様に、ステップS202〜S206の処理ステップを実行する。すなわち、金属板接合装置20は、ステップS102と同様に、先行板4の尾端部と後行板5の先端部とを誘導加熱し(ステップS202)、ついで、ステップS103と同様に、このステップS202の誘導加熱を停止する(ステップS203)。続いて、金属板接合装置20は、ステップS104と同様に、誘導加熱の停止期間に先行板4の尾端部と後行板5の先端部とを押圧し(ステップS204)、ステップS105と同様に、この押圧後の先行板4および後行板5の先尾端部に対して誘導加熱を再開する(ステップS205)。その後、金属板接合装置20は、ステップS106と同様に、先行板4の尾端部と後行板5の先端部とを加熱押圧する(ステップS206)。
特に、ステップS202において、先行板4の尾端部は、その両角部4a,4bの間の中間部分であって、2つの凸曲部4cを含む曲線的な凹凸部分を、加熱接合に十分な温度に誘導加熱される。なお、後行板5の先端部は、実施の形態1の場合と同様に、その両角部5a,5bの間の中間部分を十分に誘導加熱される。
また、ステップS204において、先行板4および後行板5の先尾端部同士は、図11に示すように、ステップS202によって十分に誘導加熱された部分(図11の斜線部参照)において部分的に加熱接合される。すなわち、先行板4の尾端部における2つの凸曲部4cと後行板5の先端部における加熱部分とが、互いに加熱接合される。この結果、先行板4および後行板5の先尾端部同士は、図11に示すように、後行板5の先端部と2つの凸曲部4cとの各接合部分6を介し、互いに接触して導通可能な状態になる。なお、この接合状態において、先行板4および後行板5の先尾端部は、これら2箇所の接合部分6以外、離間した状態である。すなわち、先行板4の尾端部の角部4aと後行板5の先端部の角部5aとの間には隙間25aが生じ、先行板4の尾端部の角部4bと後行板5の先端部の角部5bとの間には隙間25bが生じている。且つ、先行板4および後行板5の先尾端部における中央部には、隙間25cが生じている。
さらに、ステップS205において、先行板4および後行板5の先尾端部には、2つの凸曲部4cにおける2箇所の接合部分6を介してこの先尾端部を跨ぐ渦電流9の周回路(図12参照)が形成される。このように2箇所の接合部分6を通って先行板4および後行板5の先尾端部を周回する渦電流9のジュール熱によって、この先尾端部の誘導加熱は再開される。なお、これら2箇所の接合部分6は、先行板4および後行板5の先尾端部同士の導通領域と非導通領域(具体的には図11に示す隙間25a,25b,25c)との境界部分である。
また、ステップS206において、渦電流9は、図12に示すように、2箇所の接合部分6に集中して流れつつ、先行板4および後行板5の先尾端部を周回する。また、この渦電流9の周回路(通電経路)は、先行板4と後行板5との導通領域の外周側に集中して流れ易い。このような性質の渦電流9のジュール熱と押圧部16,17による押圧との加熱押圧作用によって、先行板4および後行板5の先尾端部は、その全板幅に亘って加熱接合される。
具体的には、上述した加熱押圧作用によって各接合部分6の角部4a,5a側の端部と角部4b,5b側の端部とが新たに加熱接合され、この結果、図12に示すように、各接合部分6と連続する新たな接合部分7が、各接合部分6の両端部に形成される。このような接合部分7は、上述した加熱押圧作用の繰り返しによって、接合部分6の端部から両角部4a,4b,5a,5bに向けて各々広がり(状態Lv21)、最終的には、両角部4a,4b,5a,5bに各々達する(状態Lv22)。これと並行して、各接合部分6の他端部は、上述したステップS202によって既に、加熱接合に十分な温度まで誘導加熱されているため、上述した加熱押圧作用の繰り返しによって、その接合面積を増加させる。すなわち、先行板4および後行板5の先尾端部は、図12に示すように、隙間25c側に向かって各接合部分6の接合を進行し、最終的に、その板幅方向の中央部まで接合部分6を広げて隙間25cを埋める。以上の結果、先行板4および後行板5の先尾端部同士は、その全板幅に亘って良好に加熱接合される。
なお、金属板接合装置20は、上述した実施の形態1の場合と同様の制御に基づいて、先行板4および後行板5の先尾端部同士の加熱接合を完了し、その後、搬送経路3(図8参照)に沿って順次搬送される複数の鋼板に対し、上述したステップS201〜S206の各処理ステップを行う。これによって、金属板接合装置20は、これら複数の鋼板の各対向端部同士をその全板幅に亘って確実に加熱接合し、この結果、先行板4および後行板5を含む複数の鋼板を帯状に一体化した一連の鋼板を得る。なお、このような一連の鋼板は、搬送経路3に沿って仕上圧延部2側へ搬送される。
つぎに、本発明の実施の形態2にかかる金属板接合装置20および金属板接合方法の具体的な実施例2を説明する。本実施例2では、切断部21の曲線刃21cとして、図9に示したように、先行板4の尾端部にその板幅方向に沿って2つの凸曲部4cを形成できるように、曲線的な凹凸形状の刃を用いた。また、この曲線刃21cの曲線形状の凹凸差は、20[mm]に調整した。その他の条件は、上述した実施例1と同じに設定した。このような条件の下、図8に示した熱間圧延ラインの搬送経路3に沿って、先行板4および後行板5を順次搬送し、この先行板4および後行板5の先尾端部に対して、図10に示したステップS201〜S206の処理ステップを行った。
詳細には、先行板4および後行板5の先尾端部の切断成形(ステップS201)において、図9に示したように、先行板4の尾端部の中央部を境にして角部4a,4b寄りに凸曲部4cを各々形成できた。また、これら各凸曲部4cの間に形成される後行板5との隙間25cは、曲線刃21cの刃物形状の凹凸差(=20[mm])に相当するサイズとなった。
このように切断成形した先行板4および後行板5の先尾端部のうち、両角部4a,4b,5a,5bを除く先尾端部の大部分を誘導加熱し、その後、先行板4および後行板5の先尾端部同士を部分的に接合した。この結果、図11に示したように、先行板4の尾端部における2つの凸曲部4cと後行板5の先端部とを他の部分に先行して加熱接合できた。この場合、先尾端部の角部4a,5a間および角部4b,5b間に隙間25a,25bを各々形成でき、且つ、先尾端部の中央部に隙間25cを形成できた。
その後、上述した部分接合後の先行板4および後行板5の先尾端部に対して誘導加熱を再開し、この誘導加熱を継続しつつ、この先尾端部同士を加熱押圧した。この結果、継続的な加熱押圧作用によって、先行板4および後行板5の先尾端部の接合部分6,7は、図12に示したように、その板幅方向に各々進行し、最終的に、先尾端部間の隙間25a,25b,25cを全て埋めるまで進行した。このようにして、接合すべき先行板4および後行板5の先尾端部同士をその全板幅に亘って良好に加熱接合できた。
以上、説明したように、本発明の実施の形態2では、先行板の尾端部と後行板の先端部とを押圧して接触させた場合に、先行板および後行板の板幅方向の両端部および中央部に先尾端部間の隙間が生じるように、この先行板および後行板の先尾端部同士の対向面を曲線状に切断成形し、その他を実施の形態1と同様に構成した。
このため、上述した実施の形態1の場合と同様の作用効果を享受するとともに、先行板および後行板の先尾端部のうちの他の部分に先行して加熱接合した部分に渦電流を集中して通電することができる。すなわち、先尾端部同士の対向面の曲線形状によって、先尾端部間の境界における渦電流の導通位置を容易に決定することができる。これによって、先尾端部同士の対向面の中から渦電流の導通位置を容易に特定できるとともに、たとえ鋼に比して高い融点の酸化物(スケール)が先尾端部間に生成されて導通位置が不確定になり易い場合であっても、この特定した導通位置に渦電流を確実に集中通電することができる。この結果、加熱接合時にスケールを生成し易いステンレス鋼や高張力鋼等を含む各種鋼材について、先行板および後行板の先尾端部同士の部分的な接合端部からその板幅方向に向かって確実に接合面積を増やすことができ、最終的に、その全板幅に亘って先尾端部同士を良好に加熱接合することができる。
なお、上述した実施の形態1,2では、一対のコイル13a,13bおよび単一のコア14を備えた誘導加熱部12を例示したが、これに限らず、誘導加熱部12は、鋼板をその板厚方向に貫通する交番磁界を用いて鋼板を誘導加熱するものであれば、コイルおよびコアの各保有数は問わない。例えば、誘導加熱部12は、搬送経路3を挟んで鋼板の板厚方向に対向する複数対のコイルを備えてもよいし、これら複数対のコイルに対応して、複数のコアを備えてもよい。
また、上述した実施の形態1,2では、本発明にかかる金属板接合装置を熱間圧延ラインに適用した場合を例示したが、これに限らず、本発明にかかる金属板接合装置は、熱間圧延ライン以外の鉄鋼材加工ラインまたは鉄鋼材処理ラインに適用してもよい。
さらに、上述した実施の形態2では、先行板4の尾端部を曲線状に切断成形していたが、これに限らず、後行板5の先端部を曲線状に切断成形してもよいし、先行板4の尾端部および後行板5の先端部の双方を曲線状に切断成形してもよい。この場合、先行板4の尾端部と後行板5の先端部とを押圧して接触させた状態において、先行板4および後行板5の板幅方向の両端部および中央部に尾端部と先端部との隙間が生じるように、先行板4の尾端部および後行板5の先端部の少なくとも一方を曲線状に切断成形すればよい。
また、上述した実施の形態2では、先行板4の尾端部に2つの凸曲部4cを形成していたが、これに限らず、3つ以上の凸曲部4cを先行板4の尾端部に形成してもよい。あるいは、後行板5の先端部から先行板4の尾端部に向けて曲線状に突出する凸曲部を、後行板5の先端部の板幅方向に沿って複数、形成してもよいし、先行板4および後行板5の先尾端部の双方に、互いの対向方向に曲線状に突出する複数の凸曲部を形成してもよい。また、上述した凸曲部に限らず、先行板4および後行板5の先尾端部同士の対向方向に尖形な複数の凸部を、これら先尾端部の少なくとも一方に形成してもよい。すなわち、これら先尾端部の少なくとも一方に、互いの対向方向に凹凸する凹凸部を形成することが重要であって、その凹凸部の形状が曲線であることは重要ではない。例えば、このような凹凸部分は、一対の屈曲刃等を用いた直線状の切断によって形成されてもよいし、直線状の切断と曲線状の切断とを組み合わせて形成されてもよい。何れの場合であっても、先行板4の尾端部と後行板5の先端部とを押圧して接触させた状態において、先行板4および後行板5の板幅方向の両端部および中央部に尾端部と先端部との隙間が生じるように、これら先尾端部のうちの少なくとも一方を凹凸状に切断成形すればよい。
さらに、上述した実施の形態2では、先行板4の尾端部を曲線状の凹凸部に切断成形していたが、これに限らず、この尾端部に形成される凹凸部は、直線状の凹部と凸曲部とを組み合わせたものでもよいし、曲線状の凹部と直線状の凸部(例えば尖形の凸部)とを組み合わせたものでもよい。このことは、後行板5の先端部に凹凸部を形成する場合も同様である。
また、上述した実施の形態2では、先行板4の尾端部の両角部4a,4bの近傍に凸曲部を各々形成していたが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、先行板4および後行板5の先尾端部同士の接合の進行し易さという観点から、両角部4a,4bの近傍に凸曲部を各々形成することが望ましい。しかし、先行板4の尾端部の中央部寄りに凸曲部4cを形成してもよいし、この尾端部の中央を境にしていずれか一方側のみに凸曲部4cを形成してもよい。このことは、後行板5の先端部に複数の凸曲部を形成する場合も同様である。
さらに、先行板4の尾端部および後行板5の先端部のいずれか一方に形成する凸曲部の曲率半径等のサイズは、先行板4の尾端部と後行板5の先端部との接触面積、渦電流の電流密度、接合部分に発生させる渦電流のジュール熱量等を考慮して適宜設定すればよい。
また、上述した実施の形態により本発明が限定されるものではなく、上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。例えば、加熱接合対象の金属板は、上述したように鋼板であってもよいし、交番磁界によって渦電流を誘起可能な金属板であれば、銅板または鉄板等の鋼板以外の金属板であってもよい。その他、上述した実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例および運用技術等は全て本発明に含まれる。