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JP5482747B2 - 誘電体磁器組成物およびセラミック電子部品 - Google Patents

誘電体磁器組成物およびセラミック電子部品 Download PDF

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JP5482747B2 JP2011185017A JP2011185017A JP5482747B2 JP 5482747 B2 JP5482747 B2 JP 5482747B2 JP 2011185017 A JP2011185017 A JP 2011185017A JP 2011185017 A JP2011185017 A JP 2011185017A JP 5482747 B2 JP5482747 B2 JP 5482747B2
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Description

本発明は、誘電体磁器組成物および該誘電体磁器組成物が誘電体層に適用されたセラミック電子部品に関し、特に誘電体層を薄層化した場合であっても、良好な特性を示す誘電体磁器組成物および該誘電体磁器組成物が適用されたセラミック電子部品に関する。
セラミック電子部品の一例としての積層セラミックコンデンサは、小型、高性能、高信頼性の電子部品として広く利用されており、電気機器および電子機器の中で使用される個数も多数にのぼる。近年、機器の小型かつ高性能化に伴い、積層セラミックコンデンサに対する更なる小型化、高性能化、高信頼性化への要求はますます厳しくなっている。
このような要求に対し、たとえば、特許文献1には、チタン酸バリウムに2種類の希土類酸化物とその他の金属酸化物とを含有させた誘電体セラミック層を有する積層セラミックコンデンサが記載されている。そして、この積層セラミックコンデンサは、誘電率、絶縁抵抗、温度特性および高温負荷寿命等の耐候性能に優れている旨が記載されている。
しかしながら、特許文献1の実施例に記載された積層セラミックコンデンサの誘電体層の厚みは8μmであり、この誘電体層をさらに薄層化した場合、特性の向上が実現できないという問題があった。
特開平10−223471号公報
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、誘電体層を薄層化した場合であっても、良好な特性を示す誘電体磁器組成物、および該誘電体磁器組成物が誘電体層に適用されたセラミック電子部品を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明に係る誘電体磁器組成物は、
一般式ABO(AはBa、CaおよびSrから選ばれる少なくとも1つであり、BはTiおよびZrから選ばれる少なくとも1つである)で表されるペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を、主成分として含有し、
前記化合物100モルに対して、副成分として
RAの酸化物(RAは、Dy、GdおよびTbからなる群から選ばれる少なくとも1つである)を、RA換算で、0.6〜2.5モル、
RBの酸化物(RBは、HoおよびYからなる群から選ばれる少なくとも1つである)を、RB換算で、0.2〜1.0モル、
RCの酸化物(RCは、YbおよびLuからなる群から選ばれる少なくとも1つである)を、RC換算で、0.1〜1.0モル、
Mgの酸化物を、Mg換算で、0.8〜2.0モル、
Siを含む化合物を、Si換算で、1.2〜3.0モル、含有し、
前記化合物100モルに対する前記RAの酸化物の含有量、前記RBの酸化物の含有量および前記RCの酸化物の含有量を、それぞれ、α、βおよびγとすると、1.2≦α/β≦5.0、0.5≦β/γ≦10.0である関係を満足することを特徴とする。
本発明では、各成分の含有量を上記の範囲内とすることで、誘電体層を薄層化した場合であっても、種々の特性が良好な誘電体磁器組成物を得ることができる。特に、希土類元素を3つのグループに分け、その含有比率を上記の範囲とすることで、主成分(ABO)における希土類元素の固溶状態を制御することで、相反する特性を両立させることができる。
好ましくは、副成分として、さらにV、MoおよびWからなる群から選ばれる少なくとも1つの酸化物を、V、MoおよびW換算で、0.03〜0.12モル含有する。
好ましくは、副成分として、さらにMnおよび/またはCrの酸化物を、MnおよびCr換算で、0.10〜0.2モル含有する。
本発明に係る誘電体磁器組成物が、さらに上記の成分を含有することで、より特性を向上させることができる。
好ましくは、前記ABOがBaTiOである。このようにすることで、大容量かつ信頼性の高い誘電体磁器組成物を得ることができる。
また、本発明に係るセラミック電子部品は、上記のいずれかに記載の誘電体磁器組成物から構成される誘電体層と、電極とを有する。前記誘電体層の厚みが5.0μm以下であることが好ましい。セラミック電子部品としては、特に限定されないが、積層セラミックコンデンサ、圧電素子、チップインダクタ、チップバリスタ、チップサーミスタ、チップ抵抗、その他の表面実装(SMD)チップ型電子部品が例示される。
図1は、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの断面図である。
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
(積層セラミックコンデンサ1)
図1に示すように、積層セラミック電子部品の一例としての積層セラミックコンデンサ1は、誘電体層2と、内部電極層3と、が交互に積層された構成のコンデンサ素子本体10を有する。内部電極層3は、各端面がコンデンサ素子本体10の対向する2端部の表面に交互に露出するように積層してある。一対の外部電極4は、コンデンサ素子本体10の両端部に形成され、交互に配置された内部電極層3の露出端面に接続されて、コンデンサ回路を構成する。
コンデンサ素子本体10の形状に特に制限はないが、図1に示すように、通常、直方体状とされる。また、その寸法にも特に制限はなく、用途に応じて適当な寸法とすればよい。
(誘電体層2)
誘電体層2は、本実施形態に係る誘電体磁器組成物から構成されている。本実施形態に係る誘電体磁器組成物は、主成分として、一般式ABO(AはBa、CaおよびSrから選ばれる少なくとも1つであり、BはTiおよびZrから選ばれる少なくとも1つである)で表される化合物を有している。また、該誘電体磁器組成物は、主成分がABOである誘電体粒子を有している。
ABOとしては、たとえば{(Ba(100−x−y)CaSr)O}(Ti(100−z)Zrで表される化合物が例示される。なお、u,v,x,y,zは、いずれも任意の範囲であるが、以下の範囲であることが好ましい。
上記式中、xは好ましくは0≦x≦10、より好ましくは0≦x≦5である。xはCa原子数を表し、xを上記範囲とすることにより、容量温度係数や比誘電率を任意に制御することができる。xが大きすぎると、比誘電率が低くなってしまう傾向にある。本実施形態においては、必ずしもCaを含まなくてもよい。
上記式中、yは好ましくは0≦y≦10、より好ましくは0≦y≦5である。yはSr原子数を表し、yを上記範囲とすることにより、比誘電率を向上させることができる。yが大きすぎると、温度特性が悪化する傾向にある。本実施形態においては、必ずしもSrを含まなくてもよい。
上記式中、zは好ましくは0≦z≦30、より好ましくは0≦z≦15である。zはZr原子数を表し、zを上記範囲とすることにより、比誘電率を向上させることができる。zが大きすぎると、温度特性が悪化する傾向にある。本実施形態においては、必ずしもZrを含まなくてもよい。
本実施形態では、ABOとしては、特に、チタン酸バリウム(好ましくは、組成式BaTiで表され、u/vが0.995≦u/v≦1.010である)が好適に使用できる。
本実施形態に係る誘電体磁器組成物は、上記の主成分に加え、副成分として、RAの酸化物と、RBの酸化物と、RCの酸化物と、Mgの酸化物と、Siを含む化合物と、を含有する。RA、RBおよびRCは、特定の希土類元素を3つに分けたグループである。
RAの酸化物の含有量をαとすると、αは、ABO 100モルに対して、RA換算で、0.6〜2.5モル、好ましくは1.2〜2.5モルである。αが多すぎると、比誘電率が低下したり、温度特性が悪化する傾向にある。逆に、少なすぎると、高温負荷寿命が悪化する傾向にある。RAは、Dy、GdおよびTbからなる群から選ばれる少なくとも1つであり、DyまたはGdであることが特に好ましい。RAがGdである場合には、RAの酸化物の含有量(α)が比較的少ない場合、あるいは、後述するα/βが比較的小さい場合であっても、上記の効果が十分に得られる。
RBの酸化物の含有量をβとすると、βは、ABO 100モルに対して、RB換算で、0.2〜1.0モル、好ましくは0.2〜0.6モルである。βが多すぎると、比誘電率が低下したり、高温負荷寿命が悪化する傾向にある。逆に、少なすぎると、温度特性が悪化する傾向にある。RBは、HoおよびYからなる群から選ばれる少なくとも1つであり、Hoであることが特に好ましい。
RCの酸化物の含有量をγとすると、γは、ABO 100モルに対して、RC換算で、0.1〜1.0モル、より好ましくは0.1〜0.6モルである。γが多すぎると、比誘電率が低下したり、高温負荷寿命が悪化する傾向にある。逆に、少なすぎると、温度特性が悪化する傾向にある。RCは、YbおよびLuからなる群から選ばれる少なくとも1つであり、Ybであることが特に好ましい。
また、α、βおよびγは、1.2≦α/β≦5.0、かつ0.5≦β/γ≦10.0である関係を満足する。
特に、RAがDyの場合、「α/β」は、3.0≦α/β≦4.25である関係を満足することが好ましい。また、「β/γ」は、0.5≦β/γ≦6.0である関係を満足することが好ましい。さらに、3.0≦α/β≦4.25、かつ0.5≦β/γ≦6.0である関係を満足することがより好ましい。上記の関係を満足しない場合には、温度特性と高温負荷寿命との両立が困難となる傾向にある。
さらには、「β/γ」が、0.5≦β/γ≦2.0である関係、好ましくは0.5≦β/γ<1.0である関係、より好ましくは0.5≦β/γ≦0.95である関係を満足することで、温度特性と高温負荷寿命を両立しつつ、使用するRB量を少なくすることが可能であり、コストを安くできるという利点がある。
また、RAがGdの場合、「α/β」は、1.4≦α/β≦3.0である関係を満足することが好ましい。また、「β/γ」は、0.5≦β/γ≦6.0である関係を満足することが好ましい。さらに、1.4≦α/β≦3.0、かつ0.5≦β/γ≦6.0である関係を満足することがより好ましい。上記の関係とすることで、温度特性と高温負荷寿命とを両立しつつ、使用するRA量を少なくすることが可能となり、コストを安くできるという利点がある。
さらには、「β/γ」が、0.5≦β/γ≦2.0である関係、好ましくは0.5≦β/γ<1.0である関係、より好ましくは0.5≦β/γ≦0.95である関係を満足することで、温度特性と高温負荷寿命を両立しつつ、使用するRB量を少なくすることが可能であり、コストを安くできるという利点がある。
本実施形態では、ABOが主成分である誘電体粒子には、副成分の金属元素、たとえばRA、RBおよびRCが固溶している。なお、誘電体粒子は、いわゆるコアシェル構造を有していてもよいし、完全固溶系構造を有していてもよい。
本実施形態では、特定の希土類元素を、6配位時の有効イオン半径の値に基づき、3つのグループ(RA、RBおよびRC)に分けている。希土類元素は、通常、ABOのAサイトを置換して、ABOに固溶する。このとき、希土類元素の有効イオン半径とAサイト原子の有効イオン半径との差が小さいものは、Aサイトを置換(固溶)しやすく、差が大きいものは、Aサイトを置換(固溶)しにくい傾向にある。
本実施形態では、Aサイト原子とのイオン半径の差が小さい元素がRAに該当し、差の大きい元素がRCに該当する。RAとRCとでは、ABOへの固溶度合いが異なる。RAはABOに完全に固溶しやすい傾向にあり、RCはABOの周辺部のみに固溶し、いわゆるコアシェル構造を形成しやすい傾向にある。その結果、RAは、誘電体磁器組成物の寿命を向上させるものの、温度特性が悪化する傾向にある。一方、RCは、誘電体磁器組成物の温度特性を良好にできるものの、寿命が悪化する傾向にある。
そのため、RAおよびRCの含有量および比率を制御することで、RCの添加によりRAがABOに過剰に固溶することを抑制し、温度特性と寿命との両立を図ることが考えられるが、十分ではなかった。
そこで、本実施形態では、RAとRCとの中間の有効イオン半径を有する希土類元素(RB)を含有させることで、3種類の希土類元素の固溶状態を制御し、温度特性と寿命との両立を実現している。しかも、RA、RBおよびRCのそれぞれの含有量(α、βおよびγ)の比率を上記の範囲とすることで、温度特性と寿命とを両立させつつ、他の特性(比誘電率、CR積等)をも向上させることができる。
Mgの酸化物の含有量は、ABO100モルに対して、各元素換算で、0.8〜2.0モル、より好ましくは1.3〜2.0モルである。上記の酸化物の含有量が多すぎると、高温負荷寿命が悪化する傾向にある。逆に、少なすぎると、粒成長しすぎて温度特性が悪化する傾向にある。
Siを含む化合物は、主に焼結助剤としての役割を有している。また、Siを含む化合物の含有量は、ABO100モルに対して、Si換算で、1.2〜3.0モル、より好ましくは1.2〜1.9モルである。なお、Siを含む化合物としては、Siを含む複合酸化物等であってもよいが、ABOのAサイトを置換する元素(たとえば、Ca、Ba)を含まないことが好ましく、より好ましくはSiO単独である。Aサイトを置換する元素が含まれると、主成分であるABOのA/B比が変動するおそれがあるからである。
本実施形態に係る誘電体磁器組成物は、副成分として、V、MoおよびWからなる群から選ばれる少なくとも1つの酸化物と、Mnおよび/またはCrの酸化物と、をさらに含有することが好ましい。
V、MoおよびWからなる群から選ばれる少なくとも1つの酸化物の含有量は、ABO100モルに対して、V、MoおよびW換算で、好ましくは0.03〜0.12モル、より好ましくは0.07〜0.12モルである。上記の酸化物の含有量が多すぎると、絶縁抵抗(CR積)が低下する傾向にある。逆に、少なすぎると、高温負荷寿命が低下する傾向にある。本実施形態では、Vであることが好ましい。
Mnおよび/またはCrの酸化物の含有量は、ABO100モルに対して、Mnおよび/またはCr換算で、好ましくは0.10〜0.2モル、より好ましくは0.15〜0.2モルである。Mnおよび/またはCrの酸化物の含有量が多すぎると、温度特性が悪化する傾向にある。逆に、少なすぎると、絶縁抵抗が低下する傾向にある。本実施形態では、Mnであることが好ましい。
本実施形態に係る誘電体磁器組成物に含まれる誘電体粒子の結晶粒子径は特に制限されないが、誘電体層の薄層化の要求に応えるため、好ましくは0.15〜0.30μmである。また、本実施形態に係る誘電体磁器組成物は、さらに、所望の特性に応じて、その他の成分を含有してもよい。
誘電体層2の厚みは、誘電体層の薄層化の要求に応えるため、一層あたり5.0μm以下であることが好ましい。
誘電体層2の積層数は、特に限定されないが、20以上であることが好ましく、より好ましくは50以上、特に好ましくは、100以上である。積層数の上限は、特に限定されないが、たとえば2000程度である。
(内部電極層3)
内部電極層3に含有される導電材は特に限定されないが、誘電体層2を構成する材料が耐還元性を有するため、比較的安価な卑金属を用いることができる。導電材として用いる卑金属としては、NiまたはNi合金が好ましい。Ni合金としては、Mn,Cr,CoおよびAlから選択される1種以上の元素とNiとの合金が好ましく、合金中のNi含有量は95重量%以上であることが好ましい。なお、NiまたはNi合金中には、P等の各種微量成分が0.1重量%程度以下含まれていてもよい。内部電極層3の厚さは用途等に応じて適宜決定すればよいが、通常、0.1〜3μm、特に0.2〜2.0μm程度であることが好ましい。
(外部電極4)
外部電極4に含有される導電材は特に限定されないが、本実施形態では安価なNi,Cuや、これらの合金を用いることができる。外部電極4の厚さは用途等に応じて適宜決定すればよいが、通常、10〜50μm程度であることが好ましい。
(積層セラミックコンデンサ1の製造方法)
本実施形態の積層セラミックコンデンサ1は、従来の積層セラミックコンデンサと同様に、ペーストを用いた通常の印刷法やシート法によりグリーンチップを作製し、これを焼成した後、外部電極を印刷または転写して焼成することにより製造される。以下、製造方法について具体的に説明する。
まず、誘電体原料(誘電体磁器組成物粉末)を準備し、これを塗料化して、誘電体層を形成するためのペースト(誘電体層用ペースト)を調製する。
誘電体原料として、まずABOの原料とRの酸化物の原料とを準備する。これらの原料としては、上記した成分の酸化物やその混合物、複合酸化物を用いることができる。また、焼成により上記した酸化物や複合酸化物となる各種化合物、たとえば、炭酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物等から適宜選択し、混合して用いることもできる。
ABOの原料は、いわゆる固相法の他、各種液相法(たとえば、シュウ酸塩法、水熱合成法、アルコキシド法、ゾルゲル法など)により製造されたものなど、種々の方法で製造されたものを用いることができる。
誘電体原料中の各化合物の含有量は、焼成後に上記した誘電体磁器組成物の組成となるように決定すればよい。塗料化する前の状態で、誘電体原料の粒径は、通常、平均粒径0.1〜1μm程度である。
誘電体層用ペーストは、誘電体原料と有機ビヒクルとを混練した有機系の塗料であってもよいし、水系の塗料であってもよい。
有機ビヒクルとは、バインダを有機溶剤中に溶解したものである。有機ビヒクルに用いるバインダは特に限定されず、エチルセルロース、ポリビニルブチラール等の通常の各種バインダから適宜選択すればよい。用いる有機溶剤も特に限定されず、印刷法やシート法など、利用する方法に応じて、テルピネオール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエン等の各種有機溶剤から適宜選択すればよい。
また、誘電体層用ペーストを水系の塗料とする場合には、水溶性のバインダや分散剤などを水に溶解させた水系ビヒクルと、誘電体原料とを混練すればよい。水系ビヒクルに用いる水溶性バインダは特に限定されず、たとえば、ポリビニルアルコール、セルロース、水溶性アクリル樹脂などを用いればよい。
内部電極層用ペーストは、上記した各種導電性金属や合金からなる導電材、あるいは焼成後に上記した導電材となる各種酸化物、有機金属化合物、レジネート等と、上記した有機ビヒクルとを混練して調製する。また、内部電極層用ペーストには、共材が含まれていてもよい。共材としては特に制限されないが、主成分と同様の組成を有していることが好ましい。
外部電極用ペーストは、上記した内部電極層用ペーストと同様にして調製すればよい。
上記した各ペースト中の有機ビヒクルの含有量に特に制限はなく、通常の含有量、たとえば、バインダは1〜5重量%程度、溶剤は10〜50重量%程度とすればよい。また、各ペースト中には、必要に応じて各種分散剤、可塑剤、誘電体、絶縁体等から選択される添加物が含有されていてもよい。これらの総含有量は、10重量%以下とすることが好ましい。
印刷法を用いる場合、誘電体層用ペーストおよび内部電極層用ペーストを、PET等の基板上に印刷、積層し、所定形状に切断した後、基板から剥離してグリーンチップとする。
また、シート法を用いる場合、誘電体層用ペーストを用いてグリーンシートを形成し、この上に内部電極層用ペーストを印刷し内部電極パターンを形成した後、これらを積層してグリーンチップとする。
焼成前に、グリーンチップに脱バインダ処理を施す。脱バインダ条件としては、昇温速度を好ましくは5〜300℃/時間、保持温度を好ましくは180〜400℃、温度保持時間を好ましくは0.5〜24時間とする。また、脱バインダ雰囲気は、空気もしくは還元性雰囲気とする。
脱バインダ後、グリーンチップの焼成を行う。焼成では、昇温速度を好ましくは100〜500℃/時間とする。焼成時の保持温度は、好ましくは1300℃以下、より好ましくは1150〜1280℃であり、その保持時間は、好ましくは0.5〜8時間、より好ましくは2〜3時間である。保持温度が上記範囲未満であると緻密化が不十分となり、この範囲を超えると、内部電極層の異常焼結による電極の途切れや、内部電極層構成材料の拡散による容量温度特性の悪化、誘電体磁器組成物の還元が生じやすくなる。
焼成雰囲気は、還元性雰囲気とすることが好ましく、雰囲気ガスとしてはたとえば、NとHとの混合ガスを加湿して用いることができる。
また、焼成時の酸素分圧は、内部電極層用ペースト中の導電材の種類に応じて適宜決定されればよいが、導電材としてNiやNi合金等の卑金属を用いる場合、焼成雰囲気中の酸素分圧は、10−14〜10−10MPaとすることが好ましい。酸素分圧が上記範囲未満であると、内部電極層の導電材が異常焼結を起こし、途切れてしまうことがある。また、酸素分圧が上記範囲を超えると、内部電極層が酸化する傾向にある。降温速度は、好ましくは50〜500℃/時間である。
還元性雰囲気中で焼成した後、コンデンサ素子本体にはアニールを施すことが好ましい。アニールは、誘電体層を再酸化するための処理であり、これによりIR寿命(絶縁抵抗の寿命)を著しく長くすることができるので、信頼性が向上する。
アニール雰囲気中の酸素分圧は、10−9〜10−5MPaとすることが好ましい。酸素分圧が上記範囲未満であると誘電体層の再酸化が困難であり、上記範囲を超えると内部電極層の酸化が進行する傾向にある。
アニールの際の保持温度は、1100℃以下、特に1000〜1100℃とすることが好ましい。保持温度が上記範囲未満であると誘電体層の酸化が不十分となるので、IRが低く、また、IR寿命が短くなりやすい。一方、保持温度が前記範囲を超えると、内部電極層が酸化して容量が低下するだけでなく、内部電極層が誘電体素地と反応してしまい、容量温度特性の悪化、IRの低下、IR寿命の低下が生じやすくなる。なお、アニールは昇温過程および降温過程だけから構成してもよい。すなわち、温度保持時間を零としてもよい。この場合、保持温度は最高温度と同義である。
これ以外のアニール条件としては、温度保持時間を好ましくは0〜20時間、より好ましくは2〜4時間、降温速度を好ましくは50〜500℃/時間、より好ましくは100〜300℃/時間とする。また、アニールの雰囲気ガスとしては、たとえば、加湿したNガス等を用いることが好ましい。
上記した脱バインダ処理、焼成およびアニールにおいて、Nガスや混合ガス等を加湿するには、たとえばウェッター等を使用すればよい。この場合、水温は5〜75℃程度が好ましい。
脱バインダ処理、焼成およびアニールは、連続して行なっても、独立に行なってもよい。
上記のようにして得られたコンデンサ素子本体に、たとえばバレル研磨やサンドブラストなどにより端面研磨を施し、外部電極用ペーストを塗布して焼成し、外部電極4を形成する。そして、必要に応じ、外部電極4表面に、めっき等により被覆層を形成する。
このようにして製造された本実施形態の積層セラミックコンデンサは、ハンダ付等によりプリント基板上などに実装され、各種電子機器等に使用される。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々に改変することができる。
たとえば、上述した実施形態では、本発明に係るセラミック電子部品として、積層セラミックコンデンサを例示したが、このようなセラミック電子部品としては、積層セラミックコンデンサに限定されず、上記構成を有する電子部品であれば何でも良い。
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
(実施例1)
まず、ABOの原料粉体としてBaTiO粉末を、RAの酸化物の原料としてDy粉末を、RBの酸化物の原料としてHo粉末を、RCの酸化物の原料としてYb粉末を、それぞれ準備した。また、Mgの酸化物の原料としてMgCO粉末 、Mnの酸化物の原料としてMnO粉末、Vの酸化物の原料としてV粉末、焼結助剤としてSiO粉末を、それぞれ準備した。
次に、上記で準備した各原料粉末を、表1に示す量となるように秤量し、ボールミルで10時間湿式混合・粉砕し、乾燥して、誘電体原料を得た。なお、試料番号7および8については、RAの酸化物の原料として、Tb粉末(試料番号7)およびGd粉末(試料番号8)を準備した。試料番号12については、RBの酸化物の原料として、Y粉末を準備した。試料番号16については、RCの酸化物の原料として、Lu粉末を準備した。また、MgCOは、焼成後には、MgOとして誘電体磁器組成物中に含有されることとなる。
次いで、得られた誘電体原料:100重量部と、ポリビニルブチラール樹脂:10重量部と、可塑剤としてのジオクチルフタレート(DOP):5重量部と、溶媒としてのアルコール:100重量部とをボールミルで混合してペースト化し、誘電体層用ペーストを得た。
また、Ni粒子:44.6重量部と、テルピネオール:52重量部と、エチルセルロース:3重量部と、ベンゾトリアゾール:0.4重量部とを、3本ロールにより混練し、ペースト化して内部電極層用ペーストを作製した。
そして、上記にて作製した誘電体層用ペーストを用いて、PETフィルム上に、乾燥後の厚みが4.5μmとなるようにグリーンシートを形成した。次いで、この上に内部電極層用ペーストを用いて、電極層を所定パターンで印刷した後、PETフィルムからシートを剥離し、電極層を有するグリーンシートを作製した。次いで、電極層を有するグリーンシートを複数枚積層し、加圧接着することによりグリーン積層体とし、このグリーン積層体を所定サイズに切断することにより、グリーンチップを得た。
次いで、得られたグリーンチップについて、脱バインダ処理、焼成およびアニールを下記条件にて行って、積層セラミック焼成体を得た。
脱バインダ処理条件は、昇温速度:25℃/時間、保持温度:260℃、温度保持時間:8時間、雰囲気:空気中とした。
焼成条件は、昇温速度:200℃/時間、保持温度:1240℃とし、保持時間を2時間とした。降温速度は200℃/時間とした。なお、雰囲気ガスは、加湿したN+H混合ガスとし、酸素分圧が10−12MPaとなるようにした。
アニール条件は、昇温速度:200℃/時間、保持温度:1000℃、温度保持時間:2時間、降温速度:200℃/時間、雰囲気ガス:加湿したNガス(酸素分圧:10−7MPa)とした。
なお、焼成およびアニールの際の雰囲気ガスの加湿には、ウェッターを用いた。
次いで、得られた積層セラミック焼成体の端面をサンドブラストにて研磨した後、外部電極としてCuを塗布し、図1に示す積層セラミックコンデンサの試料を得た。得られたコンデンサ試料のサイズは、3.2mm×1.6mm×0.6mmであり、誘電体層の厚み3.0μm、内部電極層の厚み1.1μm、内部電極層に挟まれた誘電体層の数は4とした。
得られたコンデンサ試料について、比誘電率、CR積、容量温度特性および高温負荷寿命(HALT)の測定を、それぞれ下記に示す方法により行った。
(比誘電率ε)
比誘電率εは、コンデンサ試料に対し、基準温度25℃において、デジタルLCRメータ(YHP社製4274A)にて、周波数1kHz,入力信号レベル(測定電圧)1.0Vrmsの条件下で測定された静電容量から算出した(単位なし)。比誘電率は高いほうが好ましく、本実施例では1500以上を良好とした。結果を表1に示す。
(CR積)
コンデンサ試料に対し、絶縁抵抗計(アドバンテスト社製R8340A)を用いて、20℃において10V/μmの直流電圧を、コンデンサ試料に1分間印加した後の絶縁抵抗IRを測定した。CR積は、上記にて測定した静電容量C(単位はμF)と、絶縁抵抗IR(単位はMΩ)との積を求めることにより測定した。本実施例では500以上を良好とした。結果を表1に示す。
(静電容量の温度特性)
コンデンサ試料に対し、−55〜125℃における静電容量を測定し、静電容量の変化率ΔCを算出し、EIA規格のX7R特性を満足するか否かについて評価した。すなわち、上記温度域における変化率ΔCが、±15%以内であるか否かを評価した。結果を表1に示す。
(高温負荷寿命)
コンデンサ試料に対し、195℃にて、48V/μmの電界下で直流電圧の印加状態に保持し、寿命時間を測定することにより、高温負荷寿命を評価した。本実施例においては、印加開始から絶縁抵抗が一桁落ちるまでの時間を寿命と定義した。また、本実施例では、上記の評価を20個のコンデンサ試料について行い、その平均値を高温負荷寿命とした。本実施例では3時間以上を良好とした。結果を表1に示す。
また、表1では、焼成温度が1300℃以下の試料を「○」、1300℃よりも高い試料を「×」と表記した。
Figure 0005482747
表1より、Mg酸化物、RA酸化物、RB酸化物、RC酸化物およびSi酸化物の含有量およびその比率が本発明の範囲内の場合には、X7R特性を満足しつつ、良好な高温負荷寿命が得られ、しかも高い比誘電率を得られることが確認できた。また、RA、RBおよびRCとして、Dy、HoおよびYb以外の元素を用いた場合であっても、同様の効果が得られることが確認できた。
(実施例2)
各成分の含有量を表2に示す量とした以外は、実施例1と同様にして、積層セラミックコンデンサの試料を作製し、実施例1と同様の特性評価を行った。結果を表2に示す。なお、試料番号47については、RAの酸化物の原料として、Tb粉末、RBの酸化物の原料として、Y粉末を準備した。試料番号48については、RBの酸化物の原料として、Y粉末を準備した。
Figure 0005482747
表2より、Mg酸化物、RA酸化物、RB酸化物、RC酸化物およびSi酸化物の含有量およびその比率が本発明の範囲外の場合には(試料番号31〜40a)、比誘電率、X7R特性および高温負荷寿命のいずれか1つ以上が悪化していることが確認できた。また、希土類元素(RA、RBおよびRC)が1種類あるいは2種類のみ含有されている場合には(試料番号41〜48)、X7R特性および高温負荷寿命を両立できないことが確認できた。また、Mg酸化物、RA酸化物、RB酸化物、RC酸化物およびSi酸化物の含有量が本発明の範囲内であっても、その比率が本発明の範囲外の場合には(試料番号49)、たとえば高温負荷寿命が悪化していることが確認できた。
(実施例3)
Vの酸化物およびMnの酸化物の含有量を変化させた以外は、実施例1と同様にして、積層セラミックコンデンサの試料を作製し、実施例1と同様の特性評価を行った。結果を表3に示す。
Figure 0005482747
表3より、Vの酸化物およびMnの酸化物の含有量が本発明の好ましい範囲外の場合(試料番号61、65、66および70)、CR積、X7R特性および高温負荷寿命のいずれか1つが悪化する傾向にあることが確認できた。
(実施例4)
試料番号2、47および48の誘電体層の厚み(層間厚み)を、表4に示す厚みとした以外は、実施例1と同様にして、積層セラミックコンデンサの試料を作製し、実施例1と同様の特性評価を行った。結果を表4に示す。
Figure 0005482747
表4より、試料番号2の誘電体層の厚みを薄層化した場合であっても、良好な高温負荷寿命が得られるだけでなく、X7R特性を満足しつつ、しかも高い比誘電率を得られることが確認できた。
これに対し、試料番号47の誘電体層の厚みを薄層化した場合、X7R特性を満足しないことに加え、高温負荷寿命が悪化する傾向にあることが確認できた。また、試料番号48の誘電体層の厚みを薄層化した場合、X7R特性は満足するものの、高温負荷寿命が極めて悪化することが確認できた。
1… 積層セラミックコンデンサ
2… 誘電体層
3… 内部電極層
4… 外部電極
10… コンデンサ素子本体

Claims (6)

  1. 一般式ABO(AはBa、CaおよびSrから選ばれる少なくとも1つであり、BはTiおよびZrから選ばれる少なくとも1つである)で表されるペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を、主成分として含有し、
    前記化合物100モルに対して、副成分として
    RAの酸化物(RAは、DyおよびGdからなる群から選ばれる少なくとも1つである)を、RA換算で、0.6〜2.5モル、
    RBの酸化物(RBは、HoおよびYからなる群から選ばれる少なくとも1つである)を、RB換算で、0.2〜1.0モル、
    RCの酸化物(RCは、YbおよびLuからなる群から選ばれる少なくとも1つである)を、RC換算で、0.1〜1.0モル、
    Mgの酸化物を、Mg換算で、0.8〜2.0モル、
    Siを含む化合物を、Si換算で、1.2〜3.0モル、含有し、
    前記化合物100モルに対する前記RAの酸化物の含有量、前記RBの酸化物の含有量および前記RCの酸化物の含有量を、それぞれ、α、βおよびγとすると、1.2≦α/β≦5.0、0.5≦β/γ<1.0である関係を満足することを特徴とする誘電体磁器組成物。
  2. 副成分として、さらにV、MoおよびWからなる群から選ばれる少なくとも1つの酸化物を、V、MoおよびW換算で、0.03〜0.12モル含有する請求項1に記載の誘電体磁器組成物。
  3. 副成分として、さらにMnおよび/またはCrの酸化物を、MnおよびCr換算で、0.10〜0.2モル含有する請求項1または2に記載の誘電体磁器組成物。
  4. 前記ABOがBaTiOである請求項1〜3のいずれかに記載の誘電体磁器組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の誘電体磁器組成物から構成される誘電体層と、電極とを有するセラミック電子部品。
  6. 前記誘電体層の厚みが5.0μm以下である請求項5に記載のセラミック電子部品。
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