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JP5387884B2 - 定着装置及び画像形成装置 - Google Patents

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JP5387884B2 JP2008265083A JP2008265083A JP5387884B2 JP 5387884 B2 JP5387884 B2 JP 5387884B2 JP 2008265083 A JP2008265083 A JP 2008265083A JP 2008265083 A JP2008265083 A JP 2008265083A JP 5387884 B2 JP5387884 B2 JP 5387884B2
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Description

この発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、又は、それらの複合機等の画像形成装置と、そこに設置される定着装置と、に関するものである。
従来から、複写機、プリンタ等の画像形成装置に設置される定着装置において、ウォームアップ時間やファーストプリント時間が短く、装置を高速化した場合であっても定着不良を生じさせないことを目的として、無端状のベルト部材(定着部材)の内周面に対向するようにパイプ状の金属熱伝導体からなる加熱部材を設置して、加熱部材をヒータ(加熱手段)で加熱することでベルト部材を全体的に加熱する技術が知られている(例えば、特許文献1等参照。)。
特許文献1等の定着装置は、無端状のベルト部材(定着部材)、ベルト部材の内周面に対向するとともにベルト部材を介して加圧回転体(加圧部材)に圧接してニップ部を形成する加熱部材(対向部材)、加熱部材の内部に固設されて加熱部材及びベルト部材を介して加圧回転体(加圧部材)に圧接してニップ部における加熱部材を補強する補強部材、加熱部材の内部に設置されたヒータ(加熱手段)、等で構成されている。そして、ニップ部に向けて搬送された記録媒体上のトナー像は、ニップ部にて熱と圧力とを受けて記録媒体上に定着される。
特開2008−158482号公報
上述した特許文献1等の定着装置は、加熱手段によって加熱部材が周方向に均一に加熱されずに、ベルト部材を空走行するウォームアップ時間を充分に確保しないとベルト部材に周方向の温度ムラが生じてしまい、出力画像上に定着ムラや局所的なホットオフセットが生じてしまう不具合が生じる可能性があった。さらに、加熱手段によって加熱部材が周方向に均一に加熱されないことにより、加熱部材が均一に熱膨張せずに局所的に膨張変形する部分が生じて、その部分がベルト部材に強く摺接してベルト部材の走行性や耐久性を低下させてしまう不具合が発生する可能性があった。
本願発明者は研究を重ねた結果、加熱手段によって加熱部材が周方向に均一に加熱されないのは、加熱部材に、加熱手段によって直接的に加熱される加熱主部と、加熱主部からの熱伝導によって加熱される加熱従部と、が周方向に形成されることによるものであることを知得した。特に、特許文献1等のように、加熱手段としてのヒータの輻射熱(又は、励磁コイルによる磁力)が補強部材によって遮られる部分が加熱部材に生じてしまう場合には、上述した問題が無視できない問題になる。
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、ウォームアップ時間やファーストプリント時間が短く、装置を高速化した場合であっても定着不良が生じることなく、加熱手段によって加熱部材が周方向に均一に加熱されて、出力画像上に定着ムラやホットオフセットが生じてしまったりベルト部材の走行性や耐久性が低下してしまったりすることのない、定着装置及び画像形成装置を提供することにある。
この発明の請求項1記載の発明にかかる定着装置は、所定方向に走行してトナー像を加熱・溶融するとともに、可撓性を有する無端状のベルト部材と、前記ベルト部材に圧接して記録媒体が搬送されるニップ部を形成する加圧回転体と、前記ベルト部材の内周面に対向するように固設されるとともに、加熱手段に加熱されて前記ベルト部材を加熱する加熱部材と、を備え、前記加熱部材は、前記加熱手段に対向して前記加熱手段によって直接的に加熱される加熱主部と、前記加熱手段による直接的な加熱を遮る遮蔽部材を介して前記加熱手段に対向して前記加熱主部からの熱伝導によって加熱される加熱従部と、を周方向に具備し、前記加熱従部の熱容量が前記加熱主部の熱容量に比べて低くなるように形成されたものである。
また、請求項2記載の発明にかかる定着装置は、前記請求項1に記載の発明において、前記加熱部材は、前記加熱従部の肉厚が前記加熱主部の肉厚に比べて薄くなるように形成されたものである。
また、請求項3記載の発明にかかる定着装置は、前記請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記加熱部材は、前記加熱従部を形成する材料の熱伝導率が前記加熱主部を形成する材料の熱伝導率に比べて高くなるように形成されたものである。
また、請求項4記載の発明にかかる定着装置は、前記請求項2又は請求項3に記載の発明において、前記ベルト部材と前記加熱部材との間に潤滑剤を介在させたものである。
また、請求項5記載の発明にかかる定着装置は、前記請求項1〜請求項3のいずれかに記載の発明において、前記加熱部材は、前記加熱従部に複数の貫通穴が形成されたものである。
また、請求項6記載の発明にかかる定着装置は、前記請求項1〜請求項5のいずれかに記載の発明において、前記加熱部材は、前記加熱従部の内周面に黒塗装を施さずに前記加熱主部の内周面に黒塗装を施したものである。
また、請求項7記載の発明にかかる定着装置は、前記請求項1〜請求項6のいずれかに記載の発明において、前記ベルト部材の走行方向に対して前記加熱従部が前記ニップ部の下流側に配設されて前記加熱主部が前記ニップ部の上流側に配設されるように構成され、前記加熱部材は、前記加熱主部の外周面に低摩擦材料で形成された摺動層を具備したものである。
また、請求項8記載の発明にかかる画像形成装置は、前記請求項1〜請求項7のいずれかに記載の発明において、前記ベルト部材の内周面側に固設されて、当該ベルト部材を介して前記加圧回転体に圧接して前記ニップ部を形成する固定部材と、前記加熱部材の内周面側に固設されて、前記固定部材に直接的又は間接的に当接して当該固定部材を補強する補強部材と、を備え、前記遮蔽部材は、前記補強部材であって、前記加熱手段は、前記補強部材と前記加熱主部との間に配設されたものである。
また、この発明の請求項9記載の発明にかかる画像形成装置は、請求項1〜請求項8のいずれかに記載の定着装置を備えたものである。
なお、本願において、固定部材や加熱部材や補強部材が「固設」された状態とは、固定部材や加熱部材や補強部材が回転駆動されることなく非回転で保持されている状態であるものと定義する。したがって、例えば、固定部材がスプリング等の付勢部材によってニップ部に向けて付勢されている場合であっても固定部材が非回転で保持されていれば、固定部材が「固設」された状態となる。
また、本願において、「加熱主部」は、加熱手段によって直接的に加熱される比率が高いものであって、熱伝導による加熱がある場合であってもその比率が低いものも含むものと定義する。また、「加熱従部」は、加熱主部からの熱伝導によって加熱される比率が高いものであって、加熱手段による直接的な加熱がある場合であってもその比率が低いものも含むものと定義する。
本発明は、加熱手段によって直接的に加熱される加熱主部の熱容量に比べて、加熱主部からの熱伝導によって加熱される加熱従部の熱容量が低くなるように、加熱部材を形成している。これにより、ウォームアップ時間やファーストプリント時間が短く、装置を高速化した場合であっても定着不良が生じることなく、加熱手段によって加熱部材が周方向に均一に加熱されて、出力画像上に定着ムラやホットオフセットが生じてしまったりベルト部材の走行性や耐久性が低下してしまったりすることのない、定着装置及び画像形成装置を提供することができる。
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
実施の形態1.
図1〜図6にて、この発明の実施の形態1について詳細に説明する。
まず、図1にて、画像形成装置全体の構成・動作について説明する。
図1に示すように、本実施の形態1における画像形成装置1は、タンデム型カラープリンタである。画像形成装置本体1の上方にあるボトル収容部101には、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応した4つのトナーボトル102Y、102M、102C、102Kが着脱自在(交換自在)に設置されている。
ボトル収容部101の下方には中間転写ユニット85が配設されている。その中間転写ユニット85の中間転写ベルト78に対向するように、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応した作像部4Y、4M、4C、4Kが並設されている。
各作像部4Y、4M、4C、4Kには、それぞれ、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kが配設されている。また、各感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの周囲には、それぞれ、帯電部75、現像部76、クリーニング部77、除電部(不図示である。)等が配設されている。そして、各感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上で、作像プロセス(帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程、クリーニング工程)がおこなわれて、各感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上に各色の画像が形成されることになる。
感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kは、不図示の駆動モータによって図1中の時計方向に回転駆動される。そして、帯電部75の位置で、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面が一様に帯電される(帯電工程である。)。
その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、露光部3から発せられたレーザ光Lの照射位置に達して、この位置での露光走査によって各色に対応した静電潜像が形成される(露光工程である。)。
その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、現像装置76との対向位置に達して、この位置で静電潜像が現像されて、各色のトナー像が形成される(現像工程である。)。
その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、中間転写ベルト78及び第1転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kとの対向位置に達して、この位置で感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上のトナー像が中間転写ベルト78上に転写される(1次転写工程である。)。このとき、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上には、僅かながら未転写トナーが残存する。
その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、クリーニング部77との対向位置に達して、この位置で感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上に残存した未転写トナーがクリーニング部77のクリーニングブレードによって機械的に回収される(クリーニング工程である。)。
最後に、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、不図示の除電部との対向位置に達して、この位置で感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上の残留電位が除去される。
こうして、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上でおこなわれる、一連の作像プロセスが終了する。
その後、現像工程を経て各感光体ドラム上に形成した各色のトナー像を、中間転写ベルト78上に重ねて転写する。こうして、中間転写ベルト78上にカラー画像が形成される。
ここで、中間転写ユニット85は、中間転写ベルト78、4つの1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79K、2次転写バックアップローラ82、クリーニングバックアップローラ83、テンションローラ84、中間転写クリーニング部80、等で構成される。中間転写ベルト78は、3つのローラ82〜84によって張架・支持されるとともに、1つのローラ82の回転駆動によって図1中の矢印方向に無端移動される。
4つの1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kは、それぞれ、中間転写ベルト78を感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kとの間に挟み込んで1次転写ニップを形成している。そして、1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kに、トナーの極性とは逆の転写バイアスが印加される。
そして、中間転写ベルト78は、矢印方向に走行して、各1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kの1次転写ニップを順次通過する。こうして、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上の各色のトナー像が、中間転写ベルト78上に重ねて1次転写される。
その後、各色のトナー像が重ねて転写された中間転写ベルト78は、2次転写ローラ89との対向位置に達する。この位置では、2次転写バックアップローラ82が、2次転写ローラ89との間に中間転写ベルト78を挟み込んで2次転写ニップを形成している。そして、中間転写ベルト78上に形成された4色のトナー像は、この2次転写ニップの位置に搬送された記録媒体P上に転写される。このとき、中間転写ベルト78には、記録媒体Pに転写されなかった未転写トナーが残存する。
その後、中間転写ベルト78は、中間転写クリーニング部80の位置に達する。そして、この位置で、中間転写ベルト78上の未転写トナーが回収される。
こうして、中間転写ベルト78上でおこなわれる、一連の転写プロセスが終了する。
ここで、2次転写ニップの位置に搬送された記録媒体Pは、装置本体1の下方に配設された給紙部12から、給紙ローラ97やレジストローラ対98等を経由して搬送されたものである。
詳しくは、給紙部12には、転写紙等の記録媒体Pが複数枚重ねて収納されている。そして、給紙ローラ97が図1中の反時計方向に回転駆動されると、一番上の記録媒体Pがレジストローラ対98のローラ間に向けて給送される。
レジストローラ対98に搬送された記録媒体Pは、回転駆動を停止したレジストローラ対98のローラニップの位置で一旦停止する。そして、中間転写ベルト78上のカラー画像にタイミングを合わせて、レジストローラ対98が回転駆動されて、記録媒体Pが2次転写ニップに向けて搬送される。こうして、記録媒体P上に、所望のカラー画像が転写される。
その後、2次転写ニップの位置でカラー画像が転写された記録媒体Pは、定着装置20の位置に搬送される。そして、この位置で、定着ベルト21及び加圧ローラ31による熱と圧力とにより、表面に転写されたカラー画像が記録媒体P上に定着される。
その後、記録媒体Pは、排紙ローラ対99のローラ間を経て、装置外へと排出される。排紙ローラ対99によって装置外に排出された記録媒体Pは、出力画像として、スタック部100上に順次スタックされる。
こうして、画像形成装置における、一連の画像形成プロセスが完了する。
次に、図2〜図5にて、画像形成装置本体1に設置される定着装置20の構成・動作について詳述する。
図2は、定着装置20を示す構成図である。図3は、定着装置20を幅方向にみた図である。図4は、定着装置20のニップ部の近傍を示す拡大図である。図5は、加熱部材22を示す側面図である。
図2及び図4に示すように、定着装置20は、ベルト部材としての定着ベルト21、固定部材26、加熱部材22、補強部材23(支持部材)、加熱手段としてのヒータ25(熱源)、第1ステー29A、第2ステー29B、シート状部材28(シール部材)、加圧回転体としての加圧ローラ31、温度センサ40、接離機構51〜53、等で構成される。
ここで、ベルト部材としての定着ベルト21は、薄肉で可撓性を有する無端状ベルトであって、図2中の矢印方向(反時計方向)に回転(走行)する。定着ベルト21は、内周面21a(固定部材26との摺接面である。)側から、基材層、弾性層、離型層が順次積層されていて、その全体の厚さが1mm以下に設定されている。
定着ベルト21の基材層は、層厚が30〜50μmであって、ニッケル、ステンレス等の金属材料やポリイミド等の樹脂材料で形成されている。
定着ベルト21の弾性層は、層厚が100〜300μmであって、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム、フッ素ゴム、等のゴム材料で形成されている。弾性層を設けることで、ニップ部における定着ベルト21表面の微小な凹凸が形成されなくなり、記録媒体P上のトナー像Tに均一に熱が伝わりユズ肌画像の発生が抑止される。
定着ベルト21の離型層は、層厚が10〜50μmであって、PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、PES(ポリエーテルサルファイド)、等の材料で形成されている。離型層を設けることで、トナーT(トナー像)に対する離型性(剥離性)が担保される。
また、定着ベルト21の直径は15〜120mmになるように設定されている。なお、本実施の形態1では、定着ベルト21の直径が30mm程度に設定されている。
図2及び図4を参照して、定着ベルト21の内部(内周面側)には、固定部材26、加熱手段としてのヒータ25、加熱部材22、補強部材23、第1ステー29A、第2ステー29B、シート状部材28、等が固設されている。
ここで、固定部材26は、定着ベルト21の内周面に摺接するように固設(固定)されている。そして、固定部材26が定着ベルト21を介して加圧ローラ31に圧接することで、記録媒体Pが搬送されるニップ部が形成される。図3を参照して、固定部材26は、その幅方向両端部が定着装置20の側板43に固定支持されている。
図4を参照して、固定部材26は、金属材料からなる剛体部26a、ゴム材料からなる弾性部26b、剛体部26a及び弾性部26bを覆う潤滑シート26c、等で構成される。剛体部26aには、シート状部材28を介して補強部材23に当接するように突出した当接部が設けられている。剛性部26aは、加圧ローラ31による加圧力を受けても大きく撓むことがないように、ある程度剛性のある材料(例えば、高剛性の金属やセラミック等である。)で形成されている。弾性部26b(又は剛体部26a)は、加圧ローラ31側の面が加圧ローラ31の曲率にならうように凹状に形成されている。これにより、記録媒体Pは加圧ローラ31の曲率にならうようにニップ部から送出されるために、定着工程後の記録媒体Pが定着ベルト21に吸着して分離しないような不具合を抑止することができる。また、固定部材26のニップ部側に弾性部26bを設けることで、ニップ部に搬送される記録媒体Pのトナー画像の微小な凹凸に追従できて、良好な定着画像を得ることができる。また、固定部材26の外周には、フッ素グリス等の潤滑剤が含浸された潤滑シート26cが設けられているために、固定部材26と定着ベルト21との摺動抵抗が低減される。
なお、本実施の形態1では、ニップ部を形成する固定部材26の形状を凹状に形成したが、ニップ部を形成する固定部材26の形状を平面状に形成することもできる。すなわち、固定部材26の摺接面(加圧ローラ31に対向する面である。)が平面形状になるように形成することができる。これにより、ニップ部の形状が記録媒体Pの画像面に対して略平行になって、定着ベルト21と記録媒体Pとの密着性が高まるために定着性が向上する。さらに、ニップ部の出口側における定着ベルト21の曲率が大きくなるために、ニップ部から送出された記録媒体Pを定着ベルト21から容易に分離することができる。
図2及び図4を参照して、加熱部材22は、肉厚が0.1mmのパイプ状部材である。加熱部材22は、ニップ部を除く位置で定着ベルト21の内周面に直接的に対向するように形成され、ニップ部の位置には内部に凹状に形成されるとともに開口部22cが形成された凹部が設けられている。そして、この加熱部材22の凹部に、固定部材26がクリアランスをあけて挿設されている。図3を参照して、加熱部材22は、その幅方向両端部が定着装置20の側板43に固定支持されている。
そして、加熱部材22は、ヒータ25の輻射熱(輻射光)により加熱されて定着ベルト21を加熱する。すなわち、定着ベルト21は、加熱部材22を介してヒータ25によって間接的に加熱されることになる。加熱部材22の材料としては、アルミニウム、鉄、ステンレス等の金属熱伝導体(熱伝導性を有する金属である。)を用いることができる。加熱部材22の肉厚を0.2mm以下に設定することで、定着ベルト21(加熱部材22)の加熱効率を向上することができる。
なお、加熱部材22の構成・動作については、後でさらに詳しく説明する。
加熱手段としてのヒータ25(熱源)は、ハロゲンヒータやカーボンヒータであって、その両端部が定着装置20の側板43に固定されている(図3を参照できる。)。そして、装置本体1の電源部により出力制御されたヒータ25の輻射熱によって、加熱部材22が加熱される。さらに、加熱部材22によって定着ベルト21がニップ部を除く位置で全体的に加熱されて、加熱された定着ベルト21の表面から記録媒体P上のトナー像Tに熱が加えられる。なお、ヒータ25の出力制御は、定着ベルト21表面に対向するサーミスタ等の温度センサ40によるベルト表面温度の検知結果に基いておこなわれる。また、このようなヒータ25の出力制御によって、定着ベルト21の温度(定着温度)を所望の温度に設定することができる。
このように、本実施の形態1における定着装置20は、定着ベルト21の一部のみが局所的に加熱されるのではなく、加熱部材22によって定着ベルト21が周方向にわたって広い領域で加熱されることになるために、装置を高速化した場合であっても定着ベルト21が充分に加熱されて定着不良の発生を抑止することができる。すなわち、比較的簡易な構成で効率よく定着ベルト21を加熱できるために、ウォームアップ時間やファーストプリント時間が短縮化されるとともに、装置の小型化が達成される。
ここで、定着ベルト21と加熱部材22とのギャップδ(ニップ部を除く位置のギャップである。)は、0mmより大きく1mm以下とすることが好ましい(0mm<δ≦1mmである。)。これにより、加熱部材22と定着ベルト21とが摺接する面積が大きくなって定着ベルト21の磨耗が加速する不具合を抑止するとともに、加熱部材22と定着ベルト21とが離れ過ぎて定着ベルト21の加熱効率が低下する不具合を抑止することができる。さらに、加熱部材22が定着ベルト21に近設されることで、可撓性を有する定着ベルト21の円形姿勢がある程度維持されるため、定着ベルト21の変形による劣化・破損を軽減することができる。
また、加熱部材22と定着ベルト21(ベルト部材)とが摺接しても定着ベルト21の磨耗が軽減されるように、双方の部材21、22の間にはフッ素グリス、シリコーンオイル等の潤滑剤が塗布されている。
なお、本実施の形態1では、加熱部材22の断面形状が略円形になるように形成したが、加熱部材22の断面形状が多角形になるように形成することもできる。
補強部材23(支持部材)は、ニップ部を形成する固定部材26を補強・支持するためのもので、定着ベルト21の内周面側に固設されている。図3を参照して、補強部材23は、幅方向の長さが固定部材26と同等になるように形成されていて、その幅方向両端部が定着装置20の側板43に固定支持されている。そして、補強部材23がシート状部材28、固定部材26、定着ベルト21を介して加圧ローラ31(加圧回転体)に当接することで、ニップ部において固定部材26が加圧ローラ31の加圧力を受けて大きく変形する不具合を抑止している。
なお、補強部材23は、上述した機能を満足するために、ステンレスや鉄等の機械的強度が高い金属材料で形成することが好ましい。
また、補強部材23における、ヒータ25に対向する面の一部又は全部に、断熱部材を設けたり、BA処理や鏡面研磨処理を施したりすることもできる。これにより、ヒータ25から補強部材23に向かう熱(補強部材23を加熱する熱)が加熱部材22の加熱に用いられることになるために、定着ベルト21(加熱部材22)の加熱効率がさらに向上することになる。
ここで、図4を参照して、加熱部材22には、加圧ローラ31(加圧回転体)に対向する位置に開口部22cが形成されている。そして、この開口部22cには、シート状部材28(シール部材)が覆設されている。このシート状部材28は、開口部22cから加熱部材22の内部に潤滑剤が進入しないようにするためのものである。加熱部材22と定着ベルト21との間に介在された潤滑剤が加熱部材22の内部に進入してしまうと、潤滑剤の不足により双方の部材21、22の摺動抵抗が増加して双方の部材21、22の磨耗劣化が早まる不具合や、加熱部材22の内部に進入した潤滑剤がヒータ25に付着してヒータ25の機能を低下させてしまったり潤滑剤が気化したりする不具合が生じてしまうことになる。
さらに、本実施の形態1では、加熱部材22の内周面側に固設された補強部材23が、シート状部材28を介して固定部材26に当接して固定部材26(ニップ部形成部材)を補強・支持するように構成されている。詳しくは、シート状部材28はシリコーンゴム、フッ素ゴム、フッ素樹脂のいずれかで形成された変形可能な厚さが0.1〜0.5mm程度の薄膜部材(本実施の形態1では、シリコーンゴムにて形成されている。)であって、開口部22cから突き出した補強部材23の先端部がシート状部材28を変形させて固定部材26に接触している。
このような構成により、加熱部材22には加圧ローラ31による加圧力が作用しないことになり、加熱部材22を薄肉化したり加圧ローラ31による加圧力を大きく設定したり定着ベルト21に対して加圧ローラ31の接離動作をおこなっても加熱部材22に変形が生じることがない。
なお、加圧時に補強部材23に撓みが生じて固定部材26が図4の左方向に変位しても、固定部材26と加熱部材22の凹部とが接触しないように、固定部材26と加熱部材22の凹部との間にはクリアランスが設けられている。
ここで、本実施の形態1では、開口部22cの周囲に密着して加熱部材22とともにシート状部材28を挟持する第2ステー29Bが設けられている。第2ステー29Bは、厚さが0.5mmのステンレス板を箱状に形成したものであって、シート状部材28を挟んで加熱部材22の凹部に圧入される。これにより、シート状部材28の周辺部が加熱部材22に強固に密着して、潤滑剤が加熱部材22の内部に入る不具合が抑止される。
第1ステー29Aは、厚さが1.5mmのステンレス板をコの字状に形成したものであって、加熱部材22の内周面側から凹部を覆うように係合される。第1ステー29Aを設置することで、加熱部材22の凹部を高精度に形成することができる。なお、加熱部材22の加熱効率を向上させるために、第1ステー29Aのヒータ25に対向する面にBA処理や鏡面研磨処理を施すことが好ましい。
図2を参照して、ニップ部の位置で定着ベルト21の外周面に当接する加圧回転体としての加圧ローラ31は、直径が30mm程度であって、中空構造の芯金32上に弾性層33を形成したものである。加圧ローラ31(加圧回転体)の弾性層33は、発泡性シリコーンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の材料で形成されている。なお、弾性層33の表層にPFA、PTFE等からなる薄肉の離型層を設けることもできる。加圧ローラ31は定着ベルト21に圧接して、双方の部材間に所望のニップ部を形成する。また、図3を参照して、加圧ローラ31には不図示の駆動機構の駆動ギアに噛合するギア45が設置されていて、加圧ローラ31は図2中の矢印方向(時計方向)に回転駆動される。また、加圧ローラ31は、その幅方向両端部が定着装置20の側板43に軸受42を介して回転自在に支持されている。なお、加圧ローラ31の内部に、ハロゲンヒータ等の熱源を設けることもできる。
なお、加圧ローラ31の弾性層33を発泡性シリコーンゴム等のスポンジ状の材料で形成した場合には、ニップ部に作用する加圧力を減ずることができるために、固定部材26に生じる撓みを軽減することができる。さらに、加圧ローラ31の断熱性が高められて、定着ベルト21の熱が加圧ローラ31側に移動しにくくなるために、定着ベルト21の加熱効率が向上する。
また、本実施の形態1では、定着ベルト21の直径が加圧ローラ31の直径と同等になるように形成したが、定着ベルト21の直径が加圧ローラ31の直径よりも小さくなるように形成することもできる。その場合、ニップ部における定着ベルト21の曲率が加圧ローラ31の曲率よりも小さくなるために、ニップ部から送出される記録媒体Pが定着ベルト21から分離され易くなる。
また、定着ベルト21の直径が加圧ローラ31の直径よりも大きくなるように形成することもできるが、定着ベルト21の直径と加圧ローラ31の直径との関係によらず、加圧ローラ31の加圧力が加熱部材22に作用しないように構成されている。
ここで、図2を参照して、本実施の形態1における定着装置20には、定着ベルト21に対して加圧ローラ31を接離する接離機構51〜53が設けられている。
詳しくは、接離機構は、加圧レバー51、偏心カム52、加圧スプリング53、等で構成されている。加圧レバー51は、一端側に設けられた支軸51aを中心として定着装置20の側板43に回転自在に支持されている。加圧レバー51の中央部は、加圧ローラ31の軸受43(側板43に形成された長穴に移動可能に保持されている。)に当接している。また、加圧レバー51の他端側には加圧スプリング53が接続され、さらに加圧スプリング53の保持板に偏心カム52(不図示の駆動モータによって回転可能に構成されている。)が係合している。このような構成により、偏心カム52の回転により、加圧レバー51が支軸51aを中心にして回転して、加圧ローラ31が図2の破線矢印方向に移動することになる。すなわち、通常の定着工程時には、偏心カム52の回転方向の姿勢が図2の状態になって、加圧ローラ31は定着ベルト21を加圧して所望のニップ部を形成する。これに対して、通常の定着工程時以外のとき(ジャム処理時や待機時等である。)には、偏心カム52の回転方向の姿勢が図2の状態から180度回転して、加圧ローラ31は定着ベルト21から離脱する(又は、定着ベルト21を減圧する。)。
以下、上述のように構成された定着装置20の、通常時の動作について簡単に説明する。
装置本体1の電源スイッチが投入されると、ヒータ25に電力が供給されるとともに、加圧ローラ31の図2中の矢印方向の回転駆動が開始される。これにより、加圧ローラ31との摩擦力によって、定着ベルト21も図2中の矢印方向に従動(回転)する。
その後、給紙部12から記録媒体Pが給送されて、2次転写ローラ89の位置で、記録媒体P上に未定着のカラー画像が担持(転写)される。未定着画像T(トナー像)が担持された記録媒体Pは、不図示のガイド板に案内されながら図2の矢印Y10方向に搬送されて、圧接状態にある定着ベルト21及び加圧ローラ31のニップ部に送入される。
そして、加熱部材22(ヒータ25)によって加熱された定着ベルト21による加熱と、補強部材23によって補強された固定部材26と加圧ローラ31との押圧力とによって、記録媒体Pの表面にトナー像Tが定着される。その後、ニップ部から送出された記録媒体Pは、矢印Y11方向に搬送される。
以下、本実施の形態1における定着装置20において特徴的な構成・動作について、詳しく説明する。
図2及び図5を参照して、加熱部材22には、主にヒータ25(加熱手段)によって直接的に加熱される加熱主部22aと、主に加熱主部22aからの熱伝導によって加熱される加熱従部22bと、が周方向に形成されている。具体的に、加熱部材22の下半分が加熱主部22aであって、加熱部材22の上半分が加熱従部22bとなっている。
これは、補強部材23に対するヒータ25(加熱手段)の位置にも起因している。ヒータ25は、補強部材23に対して加熱主部22aの側に配設されている(ヒータ25は、補強部材23と加熱主部22aとの間に配設されている。)。加熱主部22aは、ヒータ25に直接的に対向して、ヒータ25の輻射光が直接的に達する領域M1であるために、ヒータ25の輻射熱によって直接的に加熱される。これに対して、加熱従部22bは、ヒータ25との間に補強部材23が介在していて、ヒータ25の輻射光が直接的に達しない領域M2であるために、ヒータ25の輻射熱によって加熱されることはほとんどなく、加熱主部22aから伝導される熱によって加熱される。したがって、加熱部材22を厚さが均一の単一材料で形成した場合には、加熱従部22bは加熱主部22aに比べて加熱効率が低くなってしまうことになる。
これに対して、本実施の形態1における加熱部材22は、加熱従部22bの熱容量が加熱主部22aの熱容量に比べて低くなるように形成されている。
詳しくは、本実施の形態1における加熱部材22は、加熱従部22bを形成する材料の熱伝導率が、加熱主部22aを形成する材料の熱伝導率に比べて、高くなるように形成されている。具体的に、図5を参照して、加熱主部22aは低熱伝導のステンレスにて形成されて、加熱従部22bは高熱伝導のアルミニウム(又は、銅、黄銅)にて形成されて、双方22a、22bが一体化されるように接合部22dはカシメにて接合されている。
このような構成により、加熱従部22bの加熱効率(熱伝導性)が高められて、加熱主部22aの加熱効率との差異がほとんどなくなる。すなわち、加熱部材22は、ヒータ25によって周方向にほぼ均一に加熱されることになる。したがって、定着ベルト21を空走行するウォームアップ時間を充分に確保しなくても定着ベルト21に周方向の温度ムラが生じにくくなり、出力画像上に定着ムラやホットオフセットが生じてしまう不具合が抑止される。また、加熱部材22が加熱主部22aにおいても加熱従部22bにおいてもほぼ均一に熱膨張することになり、局所的に膨張変形して定着ベルト21に強く摺接して定着ベルト21の走行性や耐久性を低下させてしまう不具合が抑止される。
以下、補足的に説明する。
本実施の形態1のように、定着ベルト21の内周面に対向する加熱部材22を固設した定着装置20は、加熱部材22の薄肉化が可能であるためウォームアップ時間が短縮化される。しかし、加熱部材22の厚さが所定値以下になると、加熱時の昇温により加熱部材22の熱変形が生じてしまう。特に、加熱部材22を急速に加熱した場合には、加熱部材22内に径方向(厚さ方向)の温度勾配が発生して熱膨張差で大きな熱変形が生じる。加熱部材22を形成する材料の弾性変形の範囲内の僅かな変形であれば、加熱部材22の温度勾配が解消されるとともに熱変形も無くなるが、弾性変形の範囲を超えた大きな変形は塑性変形となり、加熱部材22が凹んで元に戻らなくなってしまう。加熱部材22が変形してしまうと、定着ベルト21とのクリアランスが変化するために、定着ベルト21の加熱量にムラが生じてしまう。特に、加熱部材22に上述したような凹状の変形が生じると、その部分で定着ベルト21とのクリアランスが大きくなって定着ベルト21が加熱されにくくなるので、局所的な定着不良が発生する。このような不具合を解消するために、加熱部材22の材料として、変形が生じにくい材料を使用する方策が考えられるが、そのような特殊な材料を使用することにより装置20が高コスト化してしまう。
加熱部材22の熱変形は、局所加熱による熱膨張が生じたり、加熱部材22の加工時に残留応力の開放が生じることにより発生する。したがって、加熱部材22の熱変形を防止するためには、変形する力に耐えうる強度(厚さ)を持った加熱部材22である必要がある。しかし、加熱部材22においてヒータ25によって直接的に加熱されない加熱従部22b(熱伝導によって加熱される部分である。)は、加熱主部22aに比べて急速な昇温がないので、強度(厚さや面積)が小さくてよい。つまり、加熱部材22の加熱従部22bの熱容量は加熱主部22aの熱容量よりも低くてよい。
本実施の形態1における定着装置20は、加熱従部22bの熱容量が加熱主部22aの熱容量に比べて低くなるように形成されているために、加熱部材22の変形が定着性に影響を与えない程度の大きさ(弾性変形の範囲内)に抑えられ、加熱部材22全体の低熱容量化が実現されてウォームアップ時間を短縮することが可能となる。すなわち、加熱部材22の熱膨張による塑性変形を防止しつつ、加熱部材22全体の低熱容量化を達成することができる。
ここで、本実施の形態1では、加熱主部22aと加熱従部22bとの熱容量に差異を設けるために、熱伝導率の異なる2つの金属材料を接合部22dで接合(カシメや溶接等による接合方法を用いることができる。)している。したがって、加熱主部22aと加熱従部22bとを別々に加工した後の接合(一体化)が可能になり、加熱部材22の製造コストが比較的安価になる。
本実施の形態1では、ステンレスからなる加熱主部22aと、加熱主部22aと同じ厚さのアルミニウムからなる加熱従部22bと、で加熱部材22を形成している。このような場合、同じ厚さのステンレスで加熱部材22全体を形成した場合に比べて、加熱部材22全体の熱容量を10〜20%低減させることができる。したがって、昇温特性に優れた定着装置20を提供することができる。アルミニウムで形成された加熱従部22bの熱伝導率はステンレスで形成した場合に比べて3倍ほど高いので、周方向にも幅方向にも熱伝導性が高められて、加熱部材22における周方向の温度ムラが抑制されるとともに、小サイズ紙(幅方向のサイズが小さな記録媒体Pである。)を連続通紙した場合であっても加熱部材22の両端部の温度上昇を低減することができる。
なお、本実施の形態1では、上述したように、定着ベルト21と加熱部材22との間に潤滑剤を介在させて、双方の部材21、22の摺動抵抗を低減している。加熱従部22bを低熱容量化する方策としては加熱従部22bに穴を開けたものも考えられるが、このような場合には加熱従部22bの穴から加熱部材22内に潤滑剤が進入してしまう。これに対して、本実施の形態1では、加熱従部22bに穴を形成することなく加熱従部22bを低熱容量化しているために、加熱部材22内に潤滑剤が進入する不具合を抑止することができる。
ここで、図5を参照して、本実施の形態1における加熱部材22は、加熱従部22bの内周面に黒塗装を施さずに、加熱主部22aの内周面にのみ黒塗装を施している(図5中の一点鎖線で示す範囲が黒塗装面22a1である。)。
ヒータ25から輻射熱を受ける被加熱体は受光面に黒塗装を施すことで、熱の吸収性を向上させることができる。しかし、黒塗装を施すことで、輻射熱の吸収を向上させる反面、輻射熱を発散させやすくなるというデメリットがある。輻射熱を発散させやすいということは、それだけ余分に加熱する必要が生じるために、省エネルギー化の妨げになってしまう。そこで、本実施の形態1では、加熱部材22においてヒータ25によって直接的に加熱されない加熱従部22bに黒塗装を施さないことで、熱の発散を抑制している。また、黒塗装をしないことにより、加熱従部22bにおいて塗装膜分の熱容量を低減することができる。
具体的に、加熱従部22bの内周面は光沢のある金属面となっている。加熱部材22の内周面から放熱される熱量を減少させるためには、加熱部材22の内周面の放射熱を抑制する必要がある。加熱従部22bの内周面が金属光沢面であれば0.04〜0.1程度の放射率になり、加熱従部22bの内周面を黒塗装面(カーボンブラック)としたときの放射率が0.95〜1.0であることから、大幅に輻射熱を抑制できることがわかる。なお、加熱主部22aに施す黒塗装の材料としては、高分子材料にカーボンブラックを分散させた塗膜剤を用いることができる。
また、図5を参照して、本実施の形態1における定着装置20は定着ベルト21の走行方向に対して、加熱従部22bがニップ部の下流側に配設されて、加熱主部22aがニップ部の上流側に配設されている。そして、加熱部材22は、加熱主部22aの外周面にのみ、低摩擦材料で形成された摺動層が設けられている(図5中の二点鎖線で示す範囲が摺動層22a2である。)。
加熱部材22と定着ベルト21との摺接による摩擦抵抗を防止するために、加熱部材22の外周面にフッ素コート等の摺動層を設けることが好ましい。特に、加熱主部22aは熱膨張が大きくなって定着ベルト22との摺動抵抗が大きくなる可能性があるために、摺動層22a2を設けることが好ましい。このとき、ニップ部の入口側(上流側)のみに摺動層22a2を設けることにより、その他の部分では摺動層分の低熱容量化を実現することができる。また、定着ベルト21は対向する加圧ローラ31から回転駆動力を受けるので、定着ベルト21が加熱部材22と摩擦する部分は主としてニップ部の入口側であり、その他の部分では双方の部材21、22の接触は低くなっている。したがって、ニップ部の出口側(下流側)においては、摺動層を設けなくても定着ベルト21の回転性能に影響を与えない。
また、フッ素樹脂を含んだ摺動層は径方向に対して熱抵抗が大きくなる(定着ベルト21への熱の伝わりが遅くなる。)。したがって、ヒータ25の輻射熱によって直接的に加熱されない加熱従部22bだけでも摺動層を形成しないことにより、装置のウォームアップ時間を短縮することができる。すなわち、加熱従部22bに摺動層を設けないことにより熱容量が低減して、加熱部材22から定着ベルト21への熱伝導性向上により昇温時間が短縮化される。
具体的に、加熱主部22aの外周面の摺動層22a2としては、フッ素樹脂を分散させた塗装膜や、フッ素分子を共析させたメッキ面とすることができる。
繰り返しになるが、定着ベルト21は加圧ローラ31との摩擦抵抗によって連れ周りで回転するため、ニップ部で回転トルクが与えられる。定着ベルト21は、主にニップ部の入口側で加熱部材22に摺接しながら回転して、ニップ部の出口側では加熱部材22に対して離れている(又は、軽接触している。)。また、ニップ部の入口側の加熱部材22は直接的に加熱されており、熱膨張により定着ベルト21の内周面と接触しやすい。したがって、定着ベルト21に接触しやすいニップ部入口側に潤滑性が要求されることになる。つまり、ニップ部出口側では、摺動層を設けなくても、定着ベルト21の回転性には影響を及ぼさない。ニップ部出口側の加熱部材22の外周面に摺動層を設けないようにすることで、加熱部材22全体の熱容量が減少して熱抵抗も少なくなるので、ウォームアップ時間が短縮化させる。
なお、本実施の形態1では、加熱主部22aと加熱従部22bとの熱容量に差異を設けるために、熱伝導率の異なる2つの金属材料で双方の部材22a、22bを形成したが、同一材料で厚さの異なる2つの金属材料で双方の部材22a、22bを形成することもできる。すなわち、図6に示すように、加熱従部22bの肉厚t2が加熱主部22bの肉厚t1に比べて薄くなるように、加熱部材22を形成することができる(t2<t1)。
具体的に、図6を参照して、加熱従部22bの肉厚t2を加熱主部22bの肉厚t1の1/2に設定した場合には、加熱従部22bの肉厚t2が加熱主部22bの肉厚t1と同じ場合に比べて、ウォームアップ時間が10〜15%短縮化された。なお、加熱主部22aと加熱従部22bとは同じ材料を用いることができるために、双方の部材22a、22bの接合部22dを安価な溶接にて接合することができる。また、厚さの異なる2つの部材22a、22bを接合するのではなく、1つの板材にプレス加工を施して薄肉部(加熱従部22b)を形成することもできる。その際、プレス加工によって薄肉部に残留応力が生じて熱変形が発生しないように、焼鈍処理を施すことが好ましい。
以上説明したように、本実施の形態1における定着装置20は、ヒータ25(加熱手段)によって直接的に加熱される加熱主部22aの熱容量に比べて、加熱主部22aからの熱伝導によって加熱される加熱従部22bの熱容量が低くなるように、加熱部材22が形成されている。これにより、ウォームアップ時間やファーストプリント時間が短く、装置を高速化した場合であっても定着不良が生じることなく、ヒータ25によって加熱部材22が周方向に均一に加熱されて、出力画像上に定着ムラやホットオフセットが生じてしまったり定着ベルト21(ベルト部材)の走行性や耐久性が低下してしまったりする不具合が抑止される。
なお、本実施の形態1では、加圧回転体として加圧ローラ31を用いた定着装置に対して本発明を適用したが、加圧回転体として加圧ベルトを用いた定着装置に対しても本発明を適用することができる。そして、そのような場合にも、本実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
また、本実施の形態1では、ベルト部材として複層構造の定着ベルト21を用いたが、ベルト部材としてポリイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、金属等からなる無端状の定着フィルムを用いることもできる。そして、その場合にも、本実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
また、本実施の形態1では、加熱手段としてのヒータ25が加熱部材22に内設されたヒータ加熱方式の定着装置20に対して本発明を適用した。これに対して、加熱部材22を加熱する加熱手段として励磁コイルを用いた電磁誘導加熱方式の定着装置や、加熱部材22を加熱する加熱手段として抵抗発熱体を用いた定着装置であっても、主として加熱手段によって直接的に加熱される加熱主部と、主として加熱主部からの熱伝導によって加熱される加熱従部と、が形成される定着装置であれば、本発明を適用することができる。そして、そのような場合にも、加熱従部を低熱容量化することで、本実施の形態1と同様の効果を得ることができる。例えば、電磁誘導加熱方式の定着装置における加熱部材において、加熱主部とは励磁コイルの磁力により渦電流が生じて抵抗発熱する部分であり、加熱従部はそれ以外の部分となる。
また、本実施の形態1では、加熱主部22aと加熱従部22bとが加熱部材22の周方向にそれぞれ1つずつ形成された定着装置に対して、本発明を適用した。これに対して、加熱部材22の周方向に、複数の加熱主部22aや、複数の加熱従部22bが形成された定着装置(例えば、ヒータ25が複数個所に設置されたり、輻射光が複数箇所で遮られたりする定着装置である。)に対しても、本発明を適用することができる。その場合にも、複数の加熱主部22aや加熱従部22bに対して、それぞれ、熱容量を最適化することで、本実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
また、本実施の形態1では、補強部材23が加熱部材23に内設された定着装置20に対して、本発明を適用した。これに対して、加熱部材22の内部に補強部材23が内設されていない定着装置であって、加熱主部22aと加熱従部22bとが形成されてしまう定着装置(例えば、ヒータ25の周方向の一部に反射板が設置されたり、ヒータ25が加熱部材22の中心からズレた位置に配設された定着装置である。)に対しても、本発明を適用することができる。その場合にも、加熱主部22aや加熱従部22bに対して、それぞれ、熱容量を最適化することで、本実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
実施の形態2.
図7及び図8にて、この発明の実施の形態2について詳細に説明する。
図7は、実施の形態2における定着装置を示す構成図であって、前記実施の形態1における図2に相当する図である。図8は、加熱部材22を示す斜視図である。
本実施の形態2における定着装置は、加熱部材22や補強部材23の構成や、固定部材26の周囲の構成が、前記実施の形態1のものとは相違する。
図7を参照して、本実施の形態2における定着装置20も、前記実施の形態1のものと同様に、定着ベルト21(ベルト部材)、固定部材26、加熱部材22、補強部材23、ヒータ25、加圧ローラ31(加圧回転体)、等で構成される。ここで、本実施の形態2における補強部材23はT字状に形成されている。
また、本実施の形態2では、固定部材26に多孔質状の潤滑剤保持部材30が設置されている。詳しくは、潤滑剤保持部材30は、フッ素繊維を編み込んだメッシュ状のシート部材であって、シリコーンオイルやフッ素グリス等の潤滑剤が保持(含浸)されている。そして、潤滑剤保持部材30は、ニップ部において定着ベルト21の内周面に当接するように配設されている。すなわち、潤滑剤保持部材30は、固定部材26と定着ベルト21との間に配設されている。
このような構成により、潤滑剤保持部材30から定着ベルト21の内周面に潤滑剤が供給されて、固定部材26と定着ベルト21との摺動抵抗や、加熱部材22と定着ベルト21との摺動抵抗が低減されて、それらの部材の磨耗が軽減されることになる。
また、固定部材26の周りには断熱部材27が設置されていて、潤滑剤保持部材30は加熱部材22によって直接的に加熱されにくいために、潤滑剤保持部材30に保持された潤滑剤が熱によって揮発・劣化する不具合が抑止される。すなわち、経時においても、潤滑剤保持部材30から定着ベルト21の内周面に潤滑剤が安定的に供給されることになる。なお、断熱部材27の材料としては、耐熱・高断熱性材料であって、ゴム、樹脂、フェルト、セラミックシート等を用いることができる。
ここで、図8を参照して、本実施の形態2における加熱部材22は、加熱主部22aと加熱従部22bとの熱容量に差異を設けるために、加熱従部22bに複数の貫通穴22b1が形成されている。
具体的に、ヒータ25(ハロゲンヒータ)の出力が1200Wで、加熱部材22の材質がアルミ(肉厚が0.4mmである。)で、加熱主部22aに対する加熱従部22bの面積率が50%になるように貫通穴22b1を設けた場合、加熱従部22bに貫通穴22b1を設けない場合に比べて、ウォームアップ時間が10%〜15%短縮化された。
このように加熱従部22bに複数の貫通穴22b1を形成する構成は、加熱部材22と定着ベルト21との間に潤滑剤を介在させない場合(例えば、ニップ部以外の位置で双方の部材21、22のギャップがある程度確保されていて、ニップ部の位置で潤滑剤保持部材30による摩擦低減がおこなわれている場合である。)に有用となる。
以上説明したように、本実施の形態2における定着装置20も、前記実施の形態1のものと同様に、ヒータ25(加熱手段)によって直接的に加熱される加熱主部22aの熱容量に比べて、加熱主部22aからの熱伝導によって加熱される加熱従部22bの熱容量が低くなるように、加熱部材22が形成されている。これにより、ウォームアップ時間やファーストプリント時間が短く、装置を高速化した場合であっても定着不良が生じることなく、ヒータ25によって加熱部材22が周方向に均一に加熱されて、出力画像上に定着ムラやホットオフセットが生じてしまったり定着ベルト21(ベルト部材)の走行性や耐久性が低下してしまったりする不具合が抑止される。
なお、本発明が前記各実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、前記各実施の形態の中で示唆した以外にも、前記各実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、前記構成部材の数、位置、形状等は前記各実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。
この発明の実施の形態1における画像形成装置を示す全体構成図である。 定着装置を示す構成図である。 定着装置を幅方向にみた図である。 ニップ部の近傍を示す拡大図である。 加熱部材を示す側面図である。 別の加熱部材を示す側面図である。 この発明の実施の形態2における定着装置を示す構成図である。 加熱部材を示す斜視図である。
符号の説明
1 画像形成装置本体(装置本体)、
20 定着装置、
21 定着ベルト(ベルト部材)、
22 加熱部材、
22a 加熱主部、
22a1 黒塗装面、 22a2 摺動層、
22b 加熱従部、
22b1 貫通穴、
22c 開口部、 22d 接合部、
23 補強部材、
25 ヒータ(加熱手段)、
26 固定部材、
31 加圧ローラ(加圧回転体)、 P 記録媒体。

Claims (9)

  1. 所定方向に走行してトナー像を加熱・溶融するとともに、可撓性を有する無端状のベルト部材と、
    前記ベルト部材に圧接して記録媒体が搬送されるニップ部を形成する加圧回転体と、
    前記ベルト部材の内周面に対向するように固設されるとともに、加熱手段に加熱されて前記ベルト部材を加熱する加熱部材と、
    を備え、
    前記加熱部材は、前記加熱手段に対向して前記加熱手段によって直接的に加熱される加熱主部と、前記加熱手段による直接的な加熱を遮る遮蔽部材を介して前記加熱手段に対向して前記加熱主部からの熱伝導によって加熱される加熱従部と、を周方向に具備し、
    前記加熱従部の熱容量が前記加熱主部の熱容量に比べて低くなるように形成されたことを特徴とする定着装置。
  2. 前記加熱部材は、前記加熱従部の肉厚が前記加熱主部の肉厚に比べて薄くなるように形成されたことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
  3. 前記加熱部材は、前記加熱従部を形成する材料の熱伝導率が前記加熱主部を形成する材料の熱伝導率に比べて高くなるように形成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の定着装置。
  4. 前記ベルト部材と前記加熱部材との間に潤滑剤を介在させたことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の定着装置。
  5. 前記加熱部材は、前記加熱従部に複数の貫通穴が形成されたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の定着装置。
  6. 前記加熱部材は、前記加熱従部の内周面に黒塗装を施さずに前記加熱主部の内周面に黒塗装を施したことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の定着装置。
  7. 前記ベルト部材の走行方向に対して前記加熱従部が前記ニップ部の下流側に配設されて前記加熱主部が前記ニップ部の上流側に配設されるように構成され、
    前記加熱部材は、前記加熱主部の外周面に低摩擦材料で形成された摺動層を具備したことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の定着装置。
  8. 前記ベルト部材の内周面側に固設されて、当該ベルト部材を介して前記加圧回転体に圧接して前記ニップ部を形成する固定部材と、
    前記加熱部材の内周面側に固設されて、前記固定部材に直接的又は間接的に当接して当該固定部材を補強する補強部材と、
    を備え、
    前記遮蔽部材は、前記補強部材であって、
    前記加熱手段は、前記補強部材と前記加熱主部との間に配設されたことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の定着装置。
  9. 請求項1〜請求項8のいずれかに記載の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
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