JP4930690B2 - イオン伝導性ポリマ及びイミドモノマ - Google Patents
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Description
例えば、固体高分子型燃料電池や水電解装置などの各種電気化学デバイスにおいて、固体高分子電解質は、膜状に成形され、その両面に電極を接合した膜電極接合体(MEA)の状態で使用される。また、固体高分子型燃料電池において、電極は、一般に、拡散層と触媒層の二層構造をとる。拡散層は、触媒層に反応ガス及び電子を供給するためのものであり、カーボン繊維、カーボンペーパー等が用いられる。また、触媒層は、電極反応の反応場となる部分であり、一般に、電極触媒と固体高分子電解質との複合体からなる。
しかしながら、スルホンイミド基には有効なプロトンが1つしかない。一方、電解質中の有効なプロトン量を増加させるために、スルホンイミド基の導入量を増加させると、電解質の耐膨潤性・耐水溶解性が低下する。また、スルホンイミド基の親水性が不十分であるため、電解質中に有効なイオンチャンネルが形成されにくい。さらに、架橋によってスルホンイミド基を導入する方法では、架橋構造を導入する際に酸性基が消費される。
そのため、スルホンイミド基を備えた従来の電解質では、高い強度及び耐熱性と、高いプロトン伝導度とを同時に達成するには限界がある。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、強度及びイオン伝導度に加えて、高い耐膨潤性・耐水溶解性を有するイオン伝導性ポリマ及びこれを製造するためのイミドモノマを提供することにある。
さらに、本発明が解決しようとする他の課題は、強度、イオン伝導度及び/又は耐膨潤性・耐水溶解性に加えて、ラジカルに対する高い耐性を有するイオン伝導性ポリマ及びこれを製造するためのイミドモノマを提供することにある。
−SO2[N-SO2(M+)]X1− ・・・(1)
但し、X1 : 1<X 1 ≦4の整数、
M+: H+又はLi+。
Z1−SO2[N−SO2M+]Y−Z2 ・・・(A)
但し、Y : 2≦Y≦4の整数、
Z1: OH、F、Cl、Br、I、又は、NZ3Z4(但し、Z3、Z4は、それぞれ、H、M、又は、SiMe3。Mは、金属元素。)、
Z2: OH、F、Cl、Br、I、又は、NZ3Z4(但し、Z3、Z4は、それぞれ、H、M、又は、SiMe3。Mは、金属元素。)、
M+: H+/又はLi+。
さらに、本発明に係るイミドモノマの2番目は、(B)式で表されるものからなる。
Z1−SO2[N−SO2M+]Y1+1−Rf−SO2[N−SO2M+]Y2+1−Z2 ・・・(B)
但し、Y1: 0≦Y 1 ≦3の整数、
Y2: 0≦Y 2 ≦3の整数、
Rf: −(CF2)m−(但し、mは、1≦m<20の整数)
Z1: OH、F、Cl、Br、I、又は、NZ3Z4(但し、Z3、Z4は、それぞれ、H、M、又は、SiMe3。Mは、金属元素。)、
Z2: OH、F、Cl、Br、I、又は、NZ3Z4(但し、Z3、Z4は、それぞれ、H、M、又は、SiMe3。Mは、金属元素。)、
M+: H+又はLi+。
−SO2[N-SO2(M+)]X1− ・・・(1)
但し、X1>1の整数、
M+: H + 又はLi+。
ここで、「炭化水素骨格」とは、その骨格中にC−H結合を含み、かつ、C−F結合を含まないものをいう。「炭化フッ素骨格」とは、その骨格中にC−F結合を含むものをいう。「部分炭化フッ素骨格」とは、その骨格中にC−H結合とC−F結合の双方を含むものをいう。さらに、「全炭化フッ素骨格」とは、その骨格中にC−F結合を含み、かつ、C−H結合を含まないものをいう。本発明において、「全炭化フッ素骨格」というときは、その骨格中に、C−F結合以外に、C−Cl結合(例えば、−CFCl−、−CCl2−など)や、その他の構造(例えば、−O−、−S−、−C(=O)−、−N(R)−等。但し、「R」は、アルキル基。)を有するものも含まれる。
高分子鎖は、上述した各種の骨格の内、いずれか1種類のみを含むものであっても良く、あるいは、2種以上を含むものであっても良い。これらの中でも、炭化フッ素骨格(特に、全炭化フッ素骨格)は、ラジカルに対する高い耐性を有しているので、特に好適である。
一方、分子量が高くなりすぎると、溶融粘度が高くなりすぎたり、有機溶媒に対して難溶あるいは溶液粘度が高くなりすぎ、成膜が困難となる。高い耐膨潤性・耐水溶解性と、適度な製膜性を得るためには、その分子量は、1000万以下が好ましく、さらに好ましくは、500万以下、さらに好ましくは、100万以下である。
例えば、本発明に係るイオン伝導性ポリマと多孔膜とを複合化させる場合、多孔膜として、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリエチレン、ポリエチレンテトラフルオロエチレン、PFA(テトラフルオロエチレンパーフルオロビニルエーテル共重合体)、FEP(テトラフルオロエチレン六フッ化プロピレン共重合体)、多孔質シリカ、多孔質セラミックス等を用いることができる。
この場合、多孔膜の気孔率、平均気孔径、厚さ等は、複合体の用途、要求特性等に応じて最適な値を選択する。また、イオン伝導性ポリマは、多孔膜中に均一に分散していても良く、あるいは、多孔膜の表面又は内部に偏在していても良い。
イオン伝導性ポリマの第1の具体例は、次の(2)式で表されるユニット(以下、これを「ユニット(2)」という。)を含むものからなる。
−(CF2)n−SO2[N−SO2(M+)]X1− ・・・(2)
但し、n : 1≦n<20の整数、
X1: X1>1の整数、
M+: H+又はLi+。
一方、nが小さくなるほど、イオン伝導度は高くなるが、耐膨潤性・耐水溶解性や膜強度は低下する。適度なイオン伝導度と、適度な耐膨潤性・耐水溶解性・膜強度を得るためには、nは、8以上が好ましい。
(1)高分子鎖の一部に、ユニット(2)を含むもの、
(2)高分子鎖の一部に、2個以上のユニット(2)の繰り返しを含むもの、又は、
(3)高分子鎖が、実質的にユニット(2)の繰り返しのみからなるもの、
のいずれであっても良い。
この場合、単位重量当たりのマルチイミドユニットの量及びイオン伝導性ポリマの分子量は、(2)式中のnの値、高分子鎖にユニット(2)以外の構造を含むときはその構造、ユニット(2)の繰り返し数等を最適化することにより、調節することができる。
−(CF2)n−SO2[N−SO2(M+)]X1−(CF2)m−SO2[N−SO2(M+)]X2−
・・・(3)
但し、n : 1≦n<20の整数、
m : 1≦m<20の整数、
X1: X1>1の整数、
X2: X2>1の整数、
M+: H+又はLi+。
(1)高分子鎖の一部に、ユニット(3)を含むもの、
(2)高分子鎖の一部に、2個以上のユニット(3)の繰り返しを含むもの、又は、
(3)高分子鎖が、実質的にユニット(3)の繰り返しのみからなるもの、
のいずれであっても良い。
この場合、単位重量当たりのマルチイミドユニットの量及びイオン伝導性ポリマの分子量は、(3)式中のn及びmの値、高分子鎖にユニット(3)以外の構造を含むときはその構造、ユニット(3)の繰り返し数等を最適化することにより、調節することができる。
イオン伝導性ポリマは、一般に高分子鎖内に疎水基と親水基があり、親水基が会合することによって、ポリマ内部にイオンチャンネルが形成される。このイオンチャンネルが相対的に大きくなるほど、イオンの移動が容易になるので、高いイオン伝導度が得られる。
しかしながら、スルホンイミド基は親水性が不十分なため、これを備えた固体高分子電解質においては、有効なイオンチャンネルが形成されにくい。しかも、スルホンイミド基は、プロトン伝導に有効に寄与するプロトンがスルホンイミド基当たり1つしかない。そのため、これを備えたイオン伝導性ポリマでは、到達可能なプロトン伝導度には限界がある。
本発明に係るイミドモノマの第1の具体例は、次の(A)式で表されるものからなる。
Z1−SO2[N−SO2M+]Y−Z2 ・・・(A)
但し、Y: Y≧2の整数、
Z1: OH、F、Cl、Br、I、又は、NZ3Z4(但し、Z3、Z4は、それぞれ、H、M、又は、SiMe3。Mは、金属元素。)、
Z2: OH、F、Cl、Br、I、又は、NZ3Z4(但し、Z3、Z4は、それぞれ、H、M、又は、SiMe3。Mは、金属元素。)、
M+: H+又はLi+。
Z1−SO2[N−SO2M+]Y1+1−Rf−SO2[N−SO2M+]Y2+1−Z2 ・・・(B)
但し、Y1: Y1≧0の整数、
Y2: Y2≧0の整数、
Rf: −(CF2)m−(但し、mは、1≦m<20の整数)
Z1: OH、F、Cl、Br、I、又は、NZ3Z4(但し、Z3、Z4は、それぞれ、H、M、又は、SiMe3。Mは、金属元素。)、
Z2: OH、F、Cl、Br、I、又は、NZ3Z4(但し、Z3、Z4は、それぞれ、H、M、又は、SiMe3。Mは、金属元素。)、
M+: H+又はLi+。
なお、その他の点については、第1の具体例と同様であるので、説明を省略する。
(A)式において、Yが0又は1であるイミドモノマは、市販されている。また、(A)式及び(B)式で表されるイミドモノマは、市販のモノマを出発原料に用いて合成することができる。次の(a)〜(g)式に、合成スキームの一例を示す。
同様に、NH2SO2(NHSO2)Y+1−Rf−(SO2NH)Y+1SO2NH2(Yは、Y≧0の整数)は、(g)式に示すように、FO2S−Rf−SO2Fに対し、大過剰のNH2(SO2NH)YSO2NH2を加え、トリエチルアミンなどの塩基の存在下で反応させることにより得られる。
ここで、「イミドモノマ」とは、上述した(A)式又は(B)で表されるモノマ、及び、(A)式において、Yが0又は1であるモノマをいう。
「第2モノマ」とは、その分子内に2個以上の反応性官能基を備えたモノマをいう。また、「反応性官能基」とは、イミドモノマの官能基Z1又はZ2と反応することによってスルホンイミド基又はその誘導体(−SO2N−M+SO2−)を形成することが可能な官能基をいう。
例えば、官能基Z1、Z2がハライド系官能基である場合、反応性官能基は、イミド系官能基が好ましい。逆に、官能基Z1、Z2がイミド系官能基である場合、反応性官能基は、ハライド系官能基が好ましい。
ここで、「ハライド系官能基」とは、−SO2X(但し、Xは、F、Cl、Br、I又はOH。)をいう。また、「イミド系官能基」とは、−SO2NZ5Z6(但し、Z5、Z6は、それぞれ、H、M又はSiMe3。Mは、金属イオン。)をいう。イミド系官能基に金属イオンMが含まれる場合、金属イオンMは、Li、K、Na等の1価の金属イオンが好ましい。
また、ハライド系官能基の中でも、XがF、Cl、Br又はIからなるものは、高い反応性を有しているので、官能基Z1、Z2又は反応性官能基として好適である。さらに、イミド系官能基の中でも、(Z5、Z6)の組み合わせが、(H、H)、(H、M)、(SiMe3、M)、又は、(H、SiMe3)からなるものは、高い反応性を有しているので、官能基Z1、Z2又は反応性官能基として好適である。
イミドモノマと第2モノマを用いてマルチイミドユニットを形成するためには、イミドモノマ及び第2モノマのいずれかに、少なくとも1個のイミド系官能基(A)と、少なくとも1個のハライド系官能基(B)とを備えている必要がある。
また、マルチイミドユニットを備えたイオン伝導性ポリマを合成する場合において、高分子鎖内に複数個のマルチイミドユニットを導入するためには、イミドモノマ及び第2モノマのいずれかに、少なくとも2個のイミド系官能基(A)と、少なくとも2個のハライド系官能基(B)とを備えていることが好ましい。
「A−R−SO2[N−SO2M+]Y+2−R−A」
という構造を有するオリゴマが得られる。
「B−R−SO2[N−SO2M+]Y+2−R−B」
という構造を有するオリゴマが得られる。
「A−SO2[N−SO2M+]Y+1−R−SO2[N−SO2M+]Y+2−R−SO2[N−SO2M+]Y+1−A」
という構造を有するオリゴマが得られる。
このオリゴマ両端のイミド系官能基(A)にさらにハライド系官能基(B)が結合すると、結合点には、新たにマルチイミドユニットが形成される。その結果、
「B−{R−SO2[N−SO2M+]Y+2}3−R−B」
という構造を有するオリゴマが得られる。
以下、このような反応を順次繰り返すと、高分子鎖内に複数個のマルチイミドユニットを含むイオン伝導性ポリマが得られる。
(1) オリゴマ化したTFE(テトラフルオロエチレン)とヨウ素とを反応させ、I−(CF2)n−Iを合成し、
(2) −IをNa2S2O4で−SO2Naに変換し、
(3) −SO2NaをCl2で−SO2Clに変換する、
ことにより得られる。
また、得られた第2モノマと、KFとを反応させると、−SO2Clを−SO2Fに変換することができる。また、これとアンモニアとをさらに反応させると、−SO2Fを−SO2NH2に変換することができる。さらに、上記工程(2)の、−SO2Naと酸とを反応させると、−SO2Naを−SO3Hに変換することができる。
例えば、(A)式で表される1種類のイミドモノマと、炭素数の異なる2種類の第2モノマとを用いると、疎水基の大きさが部分的に異なり、かつ、マルチイミドユニットを備えたイオン伝導性ポリマが得られる。
また、例えば、イオン種(M+)の個数が異なる2種類のイミドモノマと、炭素数の異なる2種類の第2モノマとを用いると、疎水基の大きさが部分的に異なり、かつ、イオン種(M+)の個数が異なる2種類のマルチイミドユニットを備えたイオン伝導性ポリマが得られる。
但し、イミド系官能基(A)とハライド系官能基(B)の比率が理論値から大きく乖離すると、分子量が低下したり、イオン伝導性ポリマ内部に未反応のモノマ又は低分子量のオリゴマが残留し、使用中にこれらのモノマ又はオリゴマが溶出するおそれがあるので好ましくない。
このような試薬としては、具体的には、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、DBU(ジアザバイシクロウンデセン)等の塩基性化合物が好適である。触媒作用を有する試薬の量は、イオン伝導性ポリマの用途、要求特性等に応じて最適な量を選択する。試薬の量を最適化すると、混合液の粘度を調節することができる。
(1) 浅い容器の底に多孔膜を配置し、その上から少量の混合液を流し込み、多孔膜内部に混合液を含浸させ、多孔膜内部で反応させる方法、
(2) 塊状又は粉末状のポリマを合成した後、これを適当な溶媒に溶解させ、あるいは、加熱溶融させ、溶液又は融液を多孔質膜に含浸させる方法、
などにより作製することができる。
また、混合液に触媒作用を有する試薬が含まれている場合、既に混合液内部で反応がある程度進行し、混合液の粘度が増加している場合がある。このような混合液を用いて複合膜を作製する場合には、多孔膜の上から少量の混合液を流し込んだ後、圧力を加えて、混合液を多孔膜内部に圧入すればよい。この時、混合液の粘度及び/又は圧力を調節することによって、多孔質膜内部に混合液を均一に充填したり、あるいは、混合液を部分的に充填することが可能となる。
酸性基に変換する方法としては、例えば、
(1)合成されたポリマを硝酸等の酸で処理してプロトン化する方法、
(2)合成されたポリマをアルカリ溶液でケン化し、次いで酸で処理してプロトン化する方法、などがある。また、得られた酸性基を水素化リチウムと反応させると、酸性基のプロトンをリチウムイオンに交換することができる。
以下の手順に従い、組成式:−[(CF2)3−SO2NHSO2NHSO2]n−で表されるイオン伝導性ポリマを作製した。
(1) ポリテトラフルオロエチレンでコートされたマグネチック攪拌子、三方コック、及びArガス導入口を備えた100mLの丸底フラスコに、SA(スルホンアミド、3.12g、0.0325mol)を入れた。SAに対してDBU(1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−ウン−7−デカン、25mL)を加え、これらが完全に溶解するまで、混合物をAr中で混合した。
この混合物に対し、PPDSF(パーフルオロプロピルジスルホニルフロライド、10.27g、0.0325mol)を加えた。コックを閉じると、反応物は、攪拌できないほど粘性が高くなった。これをゆっくりと110℃に加熱し、16時間反応させた。黒色の混合物を室温まで冷却し、固化させた。
(2) 真空下(35Pa、110℃)で過剰のDBUを除去した。得られた混合物に対し、NaOH水溶液(44mL、2.93M溶液)を加え、残ったDBUは、エチルアセテートで抽出した。水性の溶離液がpH紙で酸性となるまで、水層をナフィオン(登録商標)コラム(250g、ナフィオン(登録商標)NR50 交換樹脂)を用いて酸性化した。ロータリーエバポレーションで水を除去すると、粘性のある褐色の液体が得られた。
(3) 残留物をエタノールに溶解し、ジエチルエーテルを加えて析出させた。エーテルを除去し、白い析出物を乾燥させると、黄褐色のポリマが得られた。
水中において、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)で測定されたポリマの重量平均分子量WMは、2.1×104であった。また、得られたポリマは、水溶性であった。次の化8の式に、合成スキームを示す。
以下の手順に従い、組成式:−[(CF2)3−SO2NHSO2NHSO2NHSO2]n−で表されるイオン伝導性ポリマを作製した。
(1) ワンピースリアクタにPPDSA(パーフルオロプロピルジスルホニルアミド、1.02g、3.29mmol)を入れた。これにTEA(トリエチルアミン、2.41mL、17.4mmol)を加えた。これを、均一な溶液が得られるまで、80℃で攪拌した。これにIBSCl(ビス(スルホニルクロライド)イミド、0.377mL、3.29mmol)を加えると、小さな黒色の固体が得られた。これを80℃で2時間保持し、室温まで冷却した。
(2) TEAを塩の形で除去するためにNaOH水溶液(2.25mL、6.6mmol)を使用し、TEAが放出されなくなるまで加熱した。次に、溶液を、ナフィオン(登録商標)(75g、ナフィオン(登録商標)NR50樹脂)コラムで酸性化した。得られた溶液から溶媒をロータリーエバポレーションで蒸発させ、暗黄褐色のポリマを得た。
水中において、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)で測定されたポリマの重量平均分子量WMは、1.3×104であった。また、得られたポリマは、水溶性であった。次の化9の式に、合成スキームを示す。
以下の手順に従い、組成式:−[(CF2)8−SO2NHSO2NHSO2]n−で表されるイオン伝導性ポリマを作製した。
(1)予め乾燥させ、重量を測定した反応ガラス瓶に、N2雰囲気下において、PODSF(パーフルオロオクチルジスルホニルフロライド、1.0g、1.77×10−3mol)及びSA(0.169g、1.76×10−3mol)を入れた。
(2) これに溶媒(THF(テトラヒドロフラン)、10.5mL)及び塩基(TEA、8.98g、8.8×10−2mol)をシリンジで加えた。
(3) この混合物を密閉された反応容器内において65℃で3日間加熱した。この間、混合物は、オレンジ色から褐色になった。
(4) 次に、溶媒を除去すると、粘性のある残留物が得られた。
(5) 残留物を25%HClで洗浄し、過剰の塩基を除去した。
(6) この試料を水で洗浄すると、有色のポリマが得られた。
得られたポリマは、水不溶であり、製膜することが可能であった。また、膜の導電率は、水中で0.1S/cmであった。次の化10の式に、合成スキームを示す。
以下の手順に従い、組成式:−[(CF2)8−SO2NHSO2NHSO2NHSO2]n−で表されるイオン伝導性ポリマを作製した。
(1) 100mL丸底フラスコに、攪拌子、不活性ガスバブラーシステム、並びに、無水CH3CNとTEAの溶液中にジアミン(PODSA(パーフルオロオクチルジスルホニルアミド))溶解させた溶液を入れた。これを90分間還流させ、5℃に冷却した。
(2) 別のフラスコに、不活性雰囲気下において、無水CH3CNとTEAの溶液中にジクロライド(IBSCl)を溶解させた溶液を用意した。
(3) 不活性雰囲気下において、滴下漏斗を用いて、ジクロライド溶液を1滴ずつジアミン溶液に加えた。すべてのジクロライド溶液が加えられた後、溶液を室温まで加温し、続いてさらに加熱して還流した。
(4) 得られた溶液から溶媒を除去し、HNO3による酸性化、洗浄、及び乾燥を行った。
得られたポリマは、水不溶であり、製膜することが可能であった。また、膜の導電率は、水中で0.14S/cmであった。次の化11の式に、合成スキームを示す。
以下の手順に従い、組成式:−[(CF2)3−SO2NHSO2]n−で表されるイオン伝導性ポリマを作製した。
(1) ガラステフロン(登録商標)コックとArガス導入口がはめ込まれた清浄で乾燥したガラス製反応容器に、THFに0.1796MのPPDSAを溶解させた溶液4.49mL(0.81mmol)を入れた。これに、0.5602mLのTEAを加えた。次いで、PPDSF(0.2804g、0.89mmol)をシリンジで加えた。さらに、フラスコをガス/酸素トーチで密封した。50℃で11日間加熱した後、試料を開け、揮発成分を除去し、粘性のある黄色がかった褐色の液体を得た。
(2) 得られた材料を、過剰のNaOH水溶液を用いてNa+型に変換し、TEAのすべての痕跡が除去されるまで加熱した。酸型は、濃HCl又はCF3CO2Hを用い、続いて4mmHgですべての揮発成分を除去することにより得た。得られたポリマは、塩を除去するために、少量の水で洗浄した。
水中において、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)で測定されたポリマの重量平均分子量WMは、1.3×104であった。また、得られたポリマは、水溶性であった。次の化12の式に、合成スキームを示す。
[1. ClSO2(CF2)8SO2Cl(PODSC)の合成]
30mLなすフラスコ中でI−(CF2)8−I(196mg、0.3mmol)をMeCNに溶かした後、H2O(2mL)を加えて、サスペンションを得た。これにNa2S2O4(270mg、1.3mmol)とNaHCO3(140mL、1.7mmol)を手早く加えた。室温で1時間攪拌後、無色2層に分離した。上層(MeCN)を分取して溶媒を蒸発させると、白色固体(200mg)が析出した。これをH2O(10mL)に溶かし、氷浴中、塩素ガスをヨウ素の黒紫色がなくなるまで吹き込むと、無色結晶が析出した。この無色のサスペンションを濾過後、風乾し、無色粉末(PODSC(パーフルオロオクチルジスルホニルクロライド))を得た。収量は125mg、収率は約70%であった。次の化13の式に、合成スキームを示す。
窒素風船、三方コックを付けた300mLナスフラスコ中にKF(168mg、2.8mmol)を入れ、減圧下、ヒートガンで乾燥した。そこへ無水MeCN(90mL)を加えて、PODSC(312mg、0.75mmol)を手早く加えた。室温で24時間攪拌し、無色サスペンションを得た。これを氷水600mLにあけて、析出した白色固体(PODSF)をろ取した。収量は120mg、収率は約48%であった。次の化14の式に、合成スキームを示す。
攪拌子、滴下漏斗、並びに、ガスの導入口及び排出口を備えた500mLの三口フラスコに、−196℃で液体アンモニア(200mL)を凝縮させた。次いで、これを−80℃に加温した。滴下漏斗にPODSFのTHF溶液(122mLに22.4g)を加えた。アンモニア溶液を−70℃から−80℃に保ちながら、PODSF溶液を4時間かけて一滴ずつ液体アンモニアに加えた。次いで、過剰のアンモニアを逃がしながら8時間かけて室温まで加温した。
得られた材料は、体積が500mLとなるまで25%HClで酸性化した。ロータリーエバポレーションで溶媒を除去すると、100mLの溶液が得られた。室温で16時間攪拌した後、ワックス状の結晶質固体が得られた。固体を、再度、沸騰した25%HClで酸性化し、濾過し、pH紙で中性となるまで洗浄した。これを真空下において80℃で一昼夜乾燥し、白色の結晶質固体を得た。収量は、10g、NMRに基づく純度は、97%であった。次の化15の式に、合成スキームを示す。
(1) 予め乾燥させ、重量を測定した反応ガラス瓶にPODSF(0.102g)、1.8×10−4mol)及びPODSA(0.101g、1.8×10−4mol)を加えた。
(2) これに溶媒(THF、1mL)及び塩基(TEA、0.072g、7.1×10−3mol)を含む溶液をシリンジで加えた。
(3) 混合物を揺動させて室温で試薬を溶解させ、次いで、50℃で3日間加熱した。
(4) 溶媒を除去し、残留物を25%HClで洗浄し、さらに水で洗浄した。
(5) 得られた材料は、粘性が極めて高く、引っ張ると、長く脆いファイバー状の糸になった。
(6) この材料を、0.5MのNaOHを用いてナトリウム型に変換し、80℃で4時間加熱した。
(7) この試料を15%HNO3を用いて、50℃で4時間酸性化した。
(8) 得られた材料を洗浄し、乾燥すると、白色ワックス状のポリマが得られた。
得られたポリマは水不溶であり、製膜することが可能であった。また、水中25℃でのプロトン導電率は、0.05S/cmであった。次の化16の式に、合成スキームを示す。
マルチイミドユニット及びスルホンイミド基を有する各種イオン伝導性ポリマについて、そのチャンネル構造をメソシミュレーションにより予測した。本シミュレーションは、粗視化分子モデルを用いているが、これは、ナフィオン(登録商標)等のチャンネル構造の推定に用いられている(参考:「メソスケールシミュレーションによる高分子電解質膜Nafionの構造予測」、山本他、高分子学会第50回高分子討論会)。シミュレーションを行ったイオン伝導性ポリマは、以下の4種類である。
(1) ポリマA:
−[SO2NHSO2−(CF2)n]−(但し、n=3、4、6、8、12)
(2) ポリマB:
−[SO2NHSO2−(CF2)3−SO2NHSO2−(CF2)n]−
(但し、n=6、8、12、16)
(3) ポリマC:
−[SO2NHSO2NHSO2NHSO2−(CF2)n]−
(但し、n=3、4、6、8、12)
(4) ポリマD:
−[SO2NHSO2NHSO2−(CF2)n]−(但し、n=3、4、6、8、12)
さらに、図1より、マルチイミドユニットを備えているポリマC、Dであっても、パーフルオロ骨格の炭素数が少なくなると、明確なチャンネル構造が形成されないことがわかる。これは、パーフルオロ骨格の炭素数がある値以下になると、ポリマが水溶性になることを示している。
図1のシミュレーション結果は、実施例1〜4及び比較例1〜3で得られた結果と良く一致している。
Claims (7)
- 高分子鎖中に(1)式で表されるユニットを含み、分子量が10000以上1000万以下であるイオン伝導性ポリマ(但し、(1)式で表される前記ユニットのみからなるものを除く)。
−SO2[N-SO2(M+)]X1− ・・・(1)
但し、X1 : 1<X 1 ≦4の整数、
M+: H+又はLi+。 - (2)式で表されるユニットを含み、分子量が10000以上1000万以下であるイオン伝導性ポリマ。
−(CF2)n−SO2[N-SO2(M+)]X1− ・・・(2)
但し、n : 1≦n<20の整数、
X1: 1<X 1 ≦4の整数、
M+: H+又はLi+。 - nは、8以上の整数である請求項2に記載のイオン伝導性ポリマ。
- (3)式で表されるユニットを含み、分子量が10000以上1000万以下であるイオン伝導性ポリマ。
−(CF2)n−SO2[N-SO2(M+)]X1−(CF2)m−SO2[N-SO2(M+)]X2−
・・・(3)
但し、n : 1≦n<20の整数、
m : 1≦m<20の整数、
X1: 1<X 1 ≦4の整数、
X2: 1<X 2 ≦4の整数、
M+: H+又はLi+。 - m又はnの少なくとも一方が、8以上の整数である請求項4に記載のイオン伝導性ポリマ。
- (A)式で表されるイミドモノマ。
Z1−SO2[N-SO2M+]Y−Z2 ・・・(A)
但し、Y: 2≦Y≦4の整数、
Z1: OH、F、Cl、Br、I、又は、NZ3Z4(但し、Z3、Z4は、それぞれ、H、M、又は、SiMe3。Mは、金属元素。)、
Z2: OH、F、Cl、Br、I、又は、NZ3Z4(但し、Z3、Z4は、それぞれ、H、M、又は、SiMe3。Mは、金属元素。)、
M+: H+又はLi+。 - (B)式で表されるイミドモノマ。
Z1−SO2[N-SO2M+]Y1+1−Rf−SO2[N-SO2M+]Y2+1−Z2 ・・・(B)
但し、Y1: 0≦Y 1 ≦3の整数、
Y2: 0≦Y 2 ≦3の整数、
Rf: −(CF2)m−(但し、mは、1≦m<20の整数)
Z1: OH、F、Cl、Br、I、又は、NZ3Z4(但し、Z3、Z4は、それぞれ、H、M、又は、SiMe3。Mは、金属元素。)、
Z2: OH、F、Cl、Br、I、又は、NZ3Z4(但し、Z3、Z4は、それぞれ、H、M、又は、SiMe3。Mは、金属元素。)、
M+: H+又はLi+。
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