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JP4945845B2 - 光学素子保持装置、鏡筒及び露光装置並びにマイクロデバイスの製造方法。 - Google Patents

光学素子保持装置、鏡筒及び露光装置並びにマイクロデバイスの製造方法。 Download PDF

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JP4945845B2 JP2001074702A JP2001074702A JP4945845B2 JP 4945845 B2 JP4945845 B2 JP 4945845B2 JP 2001074702 A JP2001074702 A JP 2001074702A JP 2001074702 A JP2001074702 A JP 2001074702A JP 4945845 B2 JP4945845 B2 JP 4945845B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば半導体素子、液晶表示素子、撮像素子、薄膜磁気ヘッド等のマイクロデバイス、あるいはレチクル、フォトマスク等のマスクなどの製造プロセスにおけるフォトリソグラフィ工程で使用される露光装置において、投影光学系等の光学素子を保持するための光学素子保持装置に関するものである。また、その光学素子保持装置を用いて光学素子を保持してなる鏡筒、及びその鏡筒を備えた露光装置に関するものである。さらに、この露光装置を用いて製造するマイクロデバイスの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の露光装置においては、マスクとしてのレチクル上のパターンが照明光学系により照明される。そして、そのパターンの像が投影光学系を介して、フォトレジスト等の感光材料を塗布してなる基板としてのウエハまたはガラスプレート等に区画された各ショット領域に転写されるようになっている。
【0003】
ところで、近年における半導体素子等の著しい高度集積化に伴って、パターンがますます微細化してきている。このため、前記のような露光装置では、波面収差やディストーションの極めて少ない投影光学系が要求されるようになってきている。このような要求に対応するため、従来から、例えば図23に示すように、投影光学系を構成する鏡筒内には、レンズ等の光学素子を光軸方向に移動させるとともに、その光学素子をチルト可能に保持するための光学素子保持装置を備える。そして、駆動機構により光学素子を移動して精密に位置決めするようにした構成が提案されている。
【0004】
すなわち、この図23に示す従来構成においては、鏡筒91内に収容される複数のレンズ92のうちで、レチクルRの近傍に位置するレンズ92aが光学素子保持装置93を介して、光軸方向に移動可能に、またはチルト可能に保持されている。また、複数のレンズ92のうちで、鏡筒91の中間部及びウエハWの近傍に位置する他のレンズ92bは、鏡筒91の鏡筒本体91a内に収容され、かつレンズ92aに対して固定されている。
【0005】
図23のレンズ92aを保持する構成を図25に示す。図23及び図25に示すように、前記光学素子保持装置93においては、鏡筒本体91a上にサブ鏡筒91bが案内機構としての3つの板バネ94を介して光軸方向へ移動可能に連結されている。これら板バネ94の一端は、ボルト98により鏡筒本体91aまたはサブ鏡筒91cに固定され、他端は、ボルト98によりサブ鏡筒91bに固定される。そして、このサブ鏡筒91b内に前記レンズ92aが保持されている。図23に示すように、鏡筒本体91aの側部には、圧電素子等よりなる駆動機構としての複数のアクチュエータ95が光軸方向と平行な方向へ延びるように配設されている。これらのアクチュエータ95により、サブ鏡筒91bを介してレンズ92aが光軸方向へ移動されるようになっている。各アクチュエータ95の外側近傍に位置するように、鏡筒本体91a上には複数のセンサ96が配設され、これらのセンサ96により、サブ鏡筒91bの位置及び姿勢が検出されるようになっている。
【0006】
このような構成の鏡筒91では、製造段階においてアクチュエータ95によりレンズ92aを収容したサブ鏡筒91bを光軸方向へ容易に移動することができて、投影光学系を効率よく製造することが可能となる。また、投影光学系を露光装置に搭載した後の実稼動時においても、大気圧変化及び照射熱等により発生する諸収差やディストーションの変化等を、露光中にリアルタイムで容易に補正することが可能となる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前記従来構成においては、鏡筒91内に収容される複数のレンズ92のうちで、アクチュエータ95によりサブ鏡筒91bを介して移動調整されるレンズ92aが、レチクルRの近傍に位置するものに限定されている。このため、補正できる収差の種類も限られるという問題があった。
【0008】
すなわち、鏡筒91の中間部に位置するレンズ群は、レチクルRに近い上端部のレンズ群に比較し、光軸方向への移動及びチルトにおいて結像性能に対し極めて敏感である。従って、中間部のレンズ群を駆動させる場合には、レチクルRに近いレンズ群よりその駆動性能及び案内精度ともにほぼ一桁上位の性能が要求される。よって、従来の鏡筒構造では、このような要求に対応することが困難であった。
【0009】
もし、投影光学系の中間部のレンズ92bを可動させる場合、上述したレンズ92aと同様にレンズ92bを収容するサブ鏡筒を設ける必要がある。そして、そのサブ鏡筒上に、サブ鏡筒91bを移動可能に支持することになる。このため、このような鏡筒91では、サブ鏡筒91bの駆動は容易であるが、サブ鏡筒91bが載置され、中間部のレンズ92bを収容するサブ鏡筒を駆動することは困難であった。
【0010】
このような問題に対処するため、図23の従来構成を変更した図24に示すような光学素子保持装置93では、サブ鏡筒91bを複数段積み上げて、中間部のレンズ群を可動に構成するようになっている。この変更構成では、レンズ92aを収容した駆動対象であるサブ鏡筒91b上に、レンズ92bを収容した非駆動対象であるサブ鏡筒91cを直接積み重ねることはできない。このため、支持部材97を介して上方の構造物を順に積層支持するようになっている。
【0011】
しかしながら、この図24に示す変更構成では、鏡筒91の外周に支持部材97が配置されているため、鏡筒91全体の外径が非常に大きなものになるという問題があった。また、各サブ鏡筒91bと対応するアクチュエータ95やセンサ96が、支持部材97の内側に入り込むため、それらの点検交換等のメンテナンスが困難になるという問題もあった。
【0012】
さらに、この変更構成のように、中間部のレンズ群を駆動対象とした場合、特定の波面収差やディストーション成分を、そのレンズの単一駆動で補正できることはほとんどなく、原理上最低5つの駆動箇所が必要となる。このため、サブ鏡筒91bを有する光学素子保持装置93を5段積み上げた場合、光軸方向にも大嵩になって鏡筒91が大型化してしまうことになる。そして、鏡筒91内に非駆動対象となる残りの複数のレンズ92bを支持するためのスペースを確保するのが困難になるという問題もあった。
【0013】
しかも、図24に示す変更構成では、各光学素子保持装置93のアクチュエータ95として、高精度、低発熱、高剛性及び高クリーン度の圧電素子を使用した場合、圧電素子自身の長さが光軸方向と平行な方向に長くなってしまう。このため、アクチュエータ95として、コンパクトで大きな可動範囲を有するボイスコイルモータや流体圧駆動部材を使用せざるを得なかった。
【0014】
ところが、ボイスコイルモータを使用した場合には、作動時に発熱を伴うため、レンズ92aを収容したサブ鏡筒91bを精密に位置決めすることができない上に、発熱に起因する諸収差を併発するという問題が生じた。また、流体圧駆動部材を使用した場合には、位置決め対象物であるサブ鏡筒91bの支持剛性が不足して、外部から侵入する振動の影響を受けやすく、サブ鏡筒91bの振動が増加するとともに、制御応答性が低下するという問題が生じた。特に、近年のスキャン型露光装置では、レチクルステージ及びウエハステージにおける駆動の高速度化が進み、投影光学系の鏡筒に加わる加速度も増加している。このような状況下では、サブ鏡筒91bを支持する剛性力を高く保つことは必須の要件とされている。
【0015】
一方、図23に示す従来構成及び図24に示す変更構成においては、光学素子保持装置93の案内機構として、板バネ94が使用されている。この板バネ94は図26に示すように、板バネ94の両端部と、それらの固定部材をなす鏡筒本体91a及びサブ鏡筒91b,91cとの間で滑りが生じるのを回避することができない。
【0016】
すなわち、アクチュエータ95により、レンズ92a及びサブ鏡筒91bが光軸方向へ移動されると、図26に示すように、板バネ94に撓みが生じる。この場合、板バネ94の両端と固定部材91a〜91cとの接合面間の滑りを、ボルト98の締付力のみにより、サブμmオーダで拘束することは事実上不可能である。この滑りを発生する大きな原因は、図27に示すように、板バネ94が変形された際に余弦誤差が生じることにある。つまり、水平に配置され、その一端が固定された長さLの板バネ94が、角度αだけ撓んだ場合、撓んだ板バネ94の両端間の水平距離は撓む前の板バネ94より余弦誤差 L(1−cosα)だけ短い。従って、板バネ94と固定部材91a〜91cとの間に、余弦誤差 L(1−cosα)を補償するようなサブμmオーダの滑りが生じる。
【0017】
また、この板バネ94よりなる案内機構では、3箇所の板バネ94の取付状態、材質、寸法等にばらつきがあるため、レンズ92a及びサブ鏡筒91bが光軸方向へ移動された際、図28に示すように、光軸方向の変位に付随して必ず一定量の径方向の変位が生じる。
【0018】
この変位量は、極微小であれば結像性能そのものには影響は小さいが、所定値を超えるとウエハW上で像シフトを生じて、重ね合わせ精度を悪化させることになる。この場合、予めそれらの変位量を測定しておき、ウエハステージで補正することにより、重ね合わせ精度を確保することができる。ただし、それを可能とするためには、光軸方向の変位と径方向の変位とが1対1で対応していること、すなわち光軸方向の変位に対する径方向の変位に再現性が得られて、ヒステリシスがないことが条件となる。なぜなら、前記ウエハステージによる像シフトの補正は、像の位置をリアルタイムで測定する閉ループ制御ではなく、光軸方向の変位をモニターする開ループ制御とならざるを得ないからである。
【0019】
ところが、板バネ94を用いた案内機構では、前記のように板バネ94の両端と固定部材91a〜91cとの接合面間で滑りが生じるため、図28に示すように、ヒステリシスが存在することは避け難い。このため、ウエハステージによる像シフトの補正が困難で、重ね合わせ精度を悪化させてしまうという問題があった。
【0020】
また、光学的見地からの径方向における変位の許容量は、一般にレチクルR付近では比較的大きいが、中間部付近では厳しくなる。このため、中間部付近のレンズ群を駆動させることは、レチクルR付近のレンズ群を駆動させることに比べて非常に高い精度が要求される。従って、図24の変更構成では、収差の補正を高精度に行うことができないという問題もあった。
【0021】
本発明は、前記のような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的としては、光学素子を高精度に駆動することができる光学素子保持装置を提供することにある。
【0022】
本発明のその他の目的は、鏡筒をコンパクトに構成することができるとともに、光学素子を高精度に駆動することができる光学素子保持装置を提供することにある。
【0023】
本発明のその他の目的は、全体がコンパクトであるとともに、内部の光学素子を容易かつ高精度に駆動調整することができる鏡筒を提供することにある。
本発明のさらにその他の目的は、投影光学系の光学素子の収差を高精度に調整することができて、パターンの像を基板上に正確に転写することができる露光装置を提供することにある。
【0024】
本発明のさらにその他の目的は、パターンの像を基板上に正確に転写して製造するマイクロデバイスの製造方法を提供することにある。
【0025】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するために、本願請求項1に記載の発明は、光学素子を保持する光学素子保持装置において、アウタリング部と、前記アウタリング部の内側に配置され、前記光学素子の周縁部を保持する保持部と、前記アウタリング部に設けられたアクチュエータと、前記アウタリング部に対して前記保持部を駆動する駆動機構とを備え、前記駆動機構は、前記アクチュエータの変位を前記保持部に伝達する第1リンク機構と、前記第1リンク機構とは別に設けられ、前記アクチュエータの変位が前記第1リンク機構を介して前記保持部に伝達されたときに、前記アウタリング部に対して前記保持部を所定方向に案内する第2リンク機構とを有することを特徴とするものである。
【0026】
この請求項1に記載の発明では、第1リンク機構と第2リンク機構とを有する駆動機構によりアウタリング部に対して保持部を移動させることで、光学素子が移動される。このため、光学素子に荷重がかかることなく、保持するとともに移動させることができる。特に、保持部とアウタリング部とを内側と外側とにずらして配置することで、鏡筒をコンパクトに構成することができるとともに、アウタリング部において光学素子の光軸方向へ順に積層配置することができる。このため、鏡筒の中間部付近に位置する光学素子であっても、駆動機構により高精度に駆動することができる。
また、駆動機構の変位に基づいて、アウタリング部に対して保持部を移動させる際に、その移動を第2リンク機構により所定の方向へ正確に案内することができる。よって、光学素子を高精度に駆動する構成として好適である。
加えて、アクチュエータの変位に基づいて、保持部とアウタリング部とを相対移動させる際に、その相対移動を第2リンク機構により所定の方向へより正確に案内することができる。このため、光学素子を、より正確にその光軸方向に駆動及びチルト駆動させることができる。
【0029】
本願請求項に記載の発明は、前記請求項1に記載の発明において、前記光学素子の移動量を計測する計測装置を備え、前記の計測装置の少なくとも一部を、断熱材を介して前記保持部及び前記アウタリング部の少なくとも一方に取り付けたことを特徴とするものである。
【0030】
この請求項に記載の発明では、計測装置にて光学素子の移動量を計測することにより、光学素子の移動量を適正に測定することができる。また、計測装置で発生する熱が光学素子に伝達されるのを断熱材にて抑制することができて、光学素子の駆動をより高精度に行うことができる。
【0031】
本願請求項に記載の発明は、前記請求項に記載の発明において、前記計測装置は、前記アウタリング部に対する前記保持部の変位量を計測し、その計測結果に基づいて、前記光学素子の移動量を求めることを特徴とするものである。
【0032】
この請求項に記載の発明では、計測装置により、アウタリング部に対する保持部の変位量を計測し、その計測結果に基づいて光学素子の移動量を求めることで、その移動量を適正に測定することができる。
本願請求項4に記載の発明は、前記請求項1に記載の発明において、前記駆動機構を前記アウタリング部に対して、等角度間隔をおいて少なくとも3つ設けたことを特徴とするものである。
この請求項4に記載の発明では、少なくとも3つの駆動機構により、光学素子を光軸方向へ高精度に駆動することができるとともに、チルトさせることができる。
【0033】
本願請求項5に記載の発明は、前記請求項1に記載の発明において、前記光学素子の移動量を計測する計測装置を備え、前記計測装置は、前記保持部に取り付けられた被測定部と、前記アウタリング部に取り付けられた計測ヘッドとを備える光学式エンコーダを含むことを特徴とするものである。
【0034】
この請求項5に記載の発明では、計測装置として光学式エンコーダを設けたことで、光学素子の移動量をドリフトの影響を回避しつつ高精度に計測することができる。
【0037】
本願請求項に記載の発明は、前記請求項に記載の発明において、前記駆動機構を前記アウタリング部に対して、等角度間隔をおいて少なくとも3つ設け、前記計測装置を前記等角度間隔をおいて設けられた前記駆動機構の中間に配置したことを特徴とするものである。
【0038】
この請求項に記載の発明では、例えば3つの駆動装置と3つの計測装置とを、アウタリング部の外周部に嵩張ることなく配置することができて、鏡筒を外径方向に対してコンパクトに構成することができる。また、駆動装置と計測装置とがアウタリング部の外周方向に交互に配置することもできて、それらのメンテナンスを容易に行うことができる。
【0039】
本願請求項に記載の発明は、前記請求項1〜請求項のうちいずれか一項に記載の発明において、前記アクチュエータは、前記アウタリング部に対して、前記アクチュエータの変位方向が前記アウタリング部の外周面の接線方向に沿うように配置されていることを特徴とするものである。
【0040】
この請求項に記載の発明では、駆動機構をアウタリング部の外周面から大きく突出することなく配置することができる。また、駆動機構が鏡筒を光学素子の光軸方向に大型化させることがない。このため、鏡筒をコンパクトに構成することができる。
【0041】
本願請求項に記載の発明は、前記請求項に記載の発明において、前記アクチュエータと前記アウタリング部との間に配置される回転ピボットをさらに備えることを特徴とするものである。
【0042】
この請求項に記載の発明では、アクチュエータの駆動力を歪みが生じることなく保持部に伝達することができて、光学素子を高精度に駆動させるのに好適である。
【0043】
本願請求項に記載の発明は、前記請求項に記載の発明において、前記回転ピボットは、前記光学素子の光軸に対して交差する方向に、かつ前記アウタリング部に切り欠いて形成される切り欠きばねを有することを特徴とするものである。
【0044】
この請求項に記載の発明では、回転ピボットの摩擦抵抗を低減することができて、アクチュエータの駆動力を保持部に歪みなく好適に伝達することができる。
【0045】
本願請求項1に記載の発明は、前記請求項〜請求項のうちいずれか一項に記載の発明において、前記アウタリング部は、前記アウタリング部を切り欠いて形成された開口部を有し、前記アクチュエータは、前記開口部に収容されることを特徴とするものである。
【0046】
この請求項1に記載の発明では、アクチュエータをアウタリング部の外周に突出することなく、開口部内に収容することができて、鏡筒を一層コンパクトに構成することができる。また、アクチュエータを開口部からアウタリング部の外表面に露出させることもでき、アクチュエータのメンテナンスを容易に行うこともできる。
【0047】
本願請求項1に記載の発明は、前記請求項〜請求項1のうちいずれか一項に記載の発明において、前記アクチュエータは、圧電素子を含むことを特徴とするものである。
【0048】
この請求項1に記載の発明では、光学素子を駆動するためのアクチュエータとして、高精度、低発熱、高剛性及び高クリーン度の優れた特性を発揮することができる。
【0051】
本願請求項1に記載の発明は、前記請求項7〜請求項9のうちいずれか一項に記載の発明において、前記第1リンク機構は、前記アクチュエータの変位を前記光学素子の光軸方向の変位に変換することを特徴とするものである。
【0052】
この請求項1に記載の発明では、第1リンク機構によりアクチュエータの変位を光学素子の光軸方向の変位に変換して保持部に伝達することができる。よって、構成の簡略化を図ることができる。
【0053】
本願請求項1に記載の発明は、前記請求項1〜請求項12のうちいずれか一項に記載の発明において、前記第1リンク機構は、前記アクチュエータの変位量を拡大する変位拡大機構を含むことを特徴とする
この請求項1に記載の発明では、駆動機構の僅かな変位を変位拡大機構により大きな変位に拡大することができて、保持部とアウタリング部とを大きな変位量で相対移動させることができる。よって、光学素子を高精度に駆動する構成として好適である。
【0054】
本願請求項1に記載の発明は、前記請求項1〜請求項13のうちいずれか一項に記載の発明において、前記第1リンク機構は、前記光学素子の光軸に対して交差する方向に延びるように、前記アウタリング部を切り欠いて形成される切り欠きばねを含むことを特徴とするものである。
【0055】
この請求項1に記載の発明では、第1リンク機構を保持部及びアウタリング部と一体の部材で形成することができて、構造を簡略化することができるとともに、部品点数を減少させることができる。
【0056】
本願請求項1に記載の発明は、前記請求項1に記載の発明において、前記切り欠きばねは、前記光学素子の光軸に対して交差する方向に形成された複数のスリットと複数の貫通孔とを有する弾性ヒンジリンクで構成されることを特徴とするものである。
【0057】
この請求項15に記載の発明では、第1リンク機構の構造が簡単で部品点数を減少させることができる
【0059】
本願請求項1に記載の発明は、前記請求項14または請求項15に記載の発明において、前記第2リンク機構は、前記光学素子の光軸に対して交差するように延びる複数の貫通孔と、前記複数の貫通孔に連続して形成された複数のスリットとにより区画された平行リンク機構を含むことを特徴とするものである。
【0060】
この請求項1に記載の発明では、第2リンク機構の構造が簡単で部品点数を減少させることができるとともに、光学素子の径方向変位をより確実に規制することができて、光学素子を光軸方向に沿ってより正確に移動させることができる。また、平行リンク機構の捩じれ方向の柔軟性が増すため、光学素子のチルト動作の可動範囲を拡大することができる。
【0061】
本願請求項1に記載の発明は、前記請求項1〜請求項1のうちいずれか一項に記載の発明において、前記アウタリング部は、軸線と交差する端面の少なくとも一方に、前記軸線方向に沿って隣接して配置される他の光学素子保持装置を取り付ける取付面を有することを特徴とするものである。
【0062】
この請求項1に記載の発明では、複数の光学素子保持装置のアウタリング部を、それらの取付面にて重合させることにより、光学素子の光軸方向へ安定状態で積層配置することができる。
【0063】
本願請求項1に記載の発明は、前記請求項1〜請求項1のうちいずれか一項に記載の発明において、前記第2リンク機構は、光学素子の光学的ピボタル位置とほぼ一致するように、前記保持部を案内することを特徴とするものである。
【0064】
この請求項1に記載の発明では、光学素子のチルト動作時等においても径方向変位が生じることなく、光学素子を光軸方向へより正確に移動させることができる。
【0065】
本願請求項19に記載の発明は、前記請求項1〜請求項1のうちいずれか一項に記載の発明において、前記保持部に接続され、前記保持部をその原点位置に復帰させる復帰機構を有することを特徴とするものである。
【0066】
この請求項19に記載の発明では、駆動機構による保持部の可動範囲を拡大することができて、光学素子を高精度に駆動する構成として好適である。
本願請求項2に記載の発明は、前記請求項1〜請求項19のうちいずれか一項に記載の発明において、前記保持部は、前記光学素子の周縁部を保持するインナリング部を有し、前記アウタリング部は、他のアウタリング部に取り付けられる取付部を有することを特徴とするものである。
【0067】
この請求項2に記載の発明では、保持部とアウタリング部とを内側のインナリング部と外側のアウタリング部とにずらして配置することで、鏡筒をコンパクトに構成することができる。また、アウタリング部において光学素子の光軸方向へ順に積層配置することができる。このため、鏡筒の中間部付近に位置する光学素子であっても、駆動機構により高精度に駆動することができる。
【0069】
本願請求項2に記載の発明は、前記請求項1〜請求項2のうちいずれか一項に記載の発明において、前記第1リンク機構及び前記第2リンク機構は、前記アウタリング部の側壁に形成されることを特徴とするものである。
【0070】
本願請求項2に記載の発明は、前記請求項2に記載の発明において、前記取付部は、前記アウタリング部の一端または他端の少なくとも一方に設けられることを特徴とするものである。
【0071】
この請求項2に記載の発明では、前記請求項1に記載の発明の作用とほぼ同様の作用が発揮される。
【0076】
本願請求項2に記載の発明は、内部に複数の光学素子を保持する鏡筒において、前記光学素子の少なくとも1つを、請求項1〜請求項2のうちいずれか一項に記載の光学素子保持装置を介して保持したことを特徴とするものである。
【0077】
この請求項2に記載の発明では、鏡筒全体をコンパクトに構成することができるとともに、その内部の光学素子を容易かつ高精度に駆動調整することができる。
【0078】
本願請求項2に記載の発明は、マスク上に形成されたパターンの像を投影光学系を介して基板上に転写する露光装置において、前記投影光学系は、複数の光学素子を収容する鏡筒を有し、前記複数の光学素子は、請求項1〜請求項2のうちいずれか一項に記載の光学素子保持装置で保持され、前記鏡筒は、前記光学素子保持装置の取付面を介して積層されて構成されることを特徴とするものである。
【0079】
この請求項2に記載の発明では、投影光学系の光学素子の収差を高精度に調整することができて、微細なパターンの像を基板上により正確に転写することができる。
【0080】
本願請求項2に記載の発明は、マイクロデバイスの製造方法において、請求項2に記載の露光装置を用いてマイクロデバイスを製造することを特徴とするものである。
【0081】
この請求項2に記載の発明では、露光精度を向上することができて、高集積度のデバイスを歩留まりよく生産することができる。
【0082】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
以下に、本発明の第1実施形態について図1〜図14に基づいて説明する。
【0083】
図1は、本実施形態の露光装置31の概略構成を示すものである。図1に示すように、この実施形態の露光装置31は、光源32と、照明光学系33と、マスクとしてのレチクルRを保持するレチクルステージ34と、投影光学系35と、基板としてのウエハWを保持するウエハステージ36とより構成されている。
【0084】
前記光源32は、高圧水銀灯、KrFエキシマレーザ光源、ArFエキシマレーザ光源、F2レーザ光源、金属蒸気レーザまたはYAGレーザ等の高調波を発振する光源等のいずれかからなっている。照明光学系33は、図示しないリレーレンズ、フライアイレンズ、コンデンサレンズ等の各種レンズ系や、開口絞り及び前記レチクルRのパターン面と共役な位置に配置されたブラインド等を含んで構成されている。そして、光源32から入射される露光光ELが、この照明光学系33を通過することにより、レチクルR上のパターンを均一に照明するように調整される。
【0085】
前記レチクルステージ34は、照明光学系33の下方において、そのレチクル載置面が投影光学系35の光軸方向と直交するように配置されている。投影光学系35は、鏡筒37内に複数の光学素子としてのレンズ38を収容して構成されている。ウエハステージ36は、投影光学系35の下方において、そのウエハ載置面が投影光学系35の光軸方向と交差するように配置されている。そして、露光光ELが投影光学系35を通過する際に、レチクルR上のパターンの像が所定の縮小倍率にて縮小された状態で、ウエハステージ36上のウエハWに転写されるようになっている。
【0086】
次に、前記投影光学系35の鏡筒37の構成について詳細に説明する。
図1に示すように、前記鏡筒37は露光装置のフレーム41上に載置され、鏡筒の一部を構成する複数の部分群鏡筒42を光軸方向に積層して構成されている。そして、中間部に位置する部分群鏡筒42及びそれよりも上方に位置する所定数の部分群鏡筒42は、光学素子保持装置43と、その光学素子保持装置43により光軸方向に移動可能で、かつチルト可能に保持されたレンズ38aとを備える。以下、光軸方向に移動可能で、かつチルト可能なレンズを可動レンズと称する。
【0087】
図2は、投影光学系35の鏡筒37の一部を構成する部分群鏡筒42を、一部を切り欠いて示した図である。図3は、その部分群鏡筒42の平面図である。また、図4は、その部分群鏡筒42の断面図である。図2〜図4に示すように、前記可動レンズ38aを備える部分群鏡筒42の鏡筒本体44は、保持部及び第1保持部として機能するインナリング部44aと、インナリング部44aが連結される連結部として機能するアウタリング部44bとを有する。アウタリング部44bは、後述するように、露光光ELの光軸方向に沿って配置される他の部分群鏡筒42に対する取付面48を備えているため、他の部分群鏡筒42に対する連結部として機能する。言い換えれば、アウタリング部44bは、外部装置としての他の部分群鏡筒42、または露光装置本体への連結機能を有する。このアウタリング部44bとインナリング部44aとは一体に形成されている。もしくは、アウタリング部44bとインナリング部44aとは同一部材で形成されている。アウタリング部44bは円筒状に形成され、その下端にはベースリング45が固定されている。インナリング部44aはその外径がアウタリング部44bの内径よりも僅かに小さくなるように円筒状に形成され、ベースリング45の内側において光軸方向へ移動可能及びチルト可能に配置されている。
【0088】
なお、鏡筒37を露光装置31のフレーム41上に載置する場合は、3点で、いわゆる「キネマティックに」支持されている。すなわち、鏡筒37のフランジ部37a(図1参照)の下面と、フレーム41の上面との間には、キネマティックカップリング機構が設置される。このキネマティックカップリング機構は、フランジ部37aとフレーム41との一方に取付けられ、V溝が形成された第1の係合部材と、フランジ部37aとフレーム41との他方に取付けられ、上記第1の係合部材に係合する凸部(例えば、ボール)を有する第2の係合部材とを備える。
【0089】
さらに、フランジ部37aとフレーム41との間には、鏡筒37の荷重をキャンセルするための荷重キャンセル機構(例えば、弾性部材としてのバネを利用したバネ機構)が取付けられている。また、荷重キャンセル機構の代わりに、エアパッド(ワッシャパッド)を用いてもよい。
【0090】
このように、フランジ部37aとフレーム41との間に、荷重キャンセル機構やエアパッドを設置することによって、鏡筒37をフランジ部37a上に載置するときに発生する応カの均一化を図ることができ、鏡筒37に対して不均一な応力がかからないようにすることができる。
【0091】
前記インナリング部44aには、光軸方向にインナリング部44aを介して移動される光学素子としての可動レンズ38aが第1レンズセル46を介して取り付けられている。可動レンズ38aは、第1レンズセル46に対してその周縁部が、例えば第1レンズセル46の内周面上に複数突設された受け座(図示略)に載置された状態で、レンズ押さえ部材等により固定されている。詳しくは、可動レンズ38aの周縁部は、互いに平行な面を有するフランジが形成されている。このフランジの下面は、第1レンズセル46の内方に突出する複数の受け座(図示略)に載置され、フランジの上面には、受け座とともにフランジを挟むためのレンズ押さえ部材が取付けられる。
【0092】
可動レンズ38aの上方に互いの光軸が一致または光学特性が最適化されるように、アウタリング部44bには常に静止状態に保たれる光学素子としてのレンズ38bが第2レンズセル47を介して取り付けられている。このレンズ38bは、鏡筒本体44に常に静止している状態であるため、以下、このレンズ38bを静止レンズと称する。第1レンズセル46により保持された可動レンズ38a及び第2レンズセル47により保持された静止レンズ38bの間に、レンズ室が区画される。
【0093】
前述したように、鏡筒37は、光軸方向に積層された複数の部分群鏡筒42により形成されている。ウエハステージ36側及びレチクルステージ34側における各部分群鏡筒42は、アウタリング部44bにおける一方の端面に取付面48を一つ備える。その間に配置される各部分群鏡筒42は、アウタリング部44bにおける両方の端面に取付面48を備える。詳述すると、前記アウタリング部44bの上端面及びベースリング45の下端面には、平面状の取付面48がそれぞれ形成されている。そして、複数の部分群鏡筒42間において、上下の取付面48が互いに接触して重合されることによって、複数の部分群鏡筒42の鏡筒本体44がインナリング部44aに荷重をかけることなく、光軸方向へ安定状態で積層配置されるようになっている。なお、複数の部分群鏡筒42の間、すなわち、各部分群鏡筒42の取付面48の間には、部分群鏡筒42間の間隔を調整するための間隔調整部材を配置してもよい。
【0094】
この問隔調整部材は、アウタリング部44bの径と略同径を有するリング状のワッシャ、または取付面48の径方向の長さより小さい径を有するワッシャで形成される。なお、後者のワッシャは、アウタリング部44bの取付面48内に、等間隔おきに複数個配置される。
【0095】
このようにワッシャを用いた場合は、複数の部分群鏡筒42を積層する際に、各部分群鏡筒42の取付面48は直接接触することがない。
図5は部分群鏡筒42の駆動機構の周辺を示す拡大図であり、図6はその断面図である。前記アウタリング部44bの周壁(側壁)には、開口部をなす3つの切欠部49(図2参照)が等角度間隔をおいて形成されている。図3及び図5に示すように、各切欠部49内には、アクチュエータ50が収容されている。各アクチュエータ50は、の長手軸がアウタリング部44bの接線方向に沿うように配置されている。また、各アクチュエータ50は、アウタリング部44bの周面に露出している。各アクチュエータ50は、好ましくは、高精度、低発熱、高剛性、高クリーン度の特性を有する圧電素子から構成される。制御装置51(図1参照)は、アクチュエータ50に制御信号に従う制御電圧を印加し、アクチュエータ50の伸縮を制御する。このアクチュエータ50の伸縮方向は、アウタリング部44bの接線方向に対して、略平行な方向である。
【0096】
図13は、アクチュエータ50とアウタリング部44bとの両端の結合構成を示す図である。図2、図5及び図13に示すように、前記各アクチュエータ50の一端に対応して、そのアクチュエータ50と同方向へ延びるように、アウタリング部44bの周壁には保持ボルト52が螺合されている。各アクチュエータ50の他端と対応するように、アウタリング部44bに形成された後述する変位拡大機構60の第1リンク62a上には結合具53が固定されている。そして、各アクチュエータ50の両端が、保持ボルト52の先端及び結合具53に対して、円錐溝55及びボール56よりなる回転ピボット機構54を介して相対回転可能に結合されている。
【0097】
図9は部分群鏡筒42の鏡筒本体44を示す斜視図であり、図10はその切欠部49周辺の拡大図である。また、図11は、アクチュエータ50の周辺の拡大図である。図10に示すように、前記各アクチュエータ50に対応して、インナリング部44aの上端面には3つの連結アーム部59が形成されている。各連結アーム部59の両側縁に連結配置されるように、アウタリング部44bにはリンク機構としての変位拡大機構60及び案内機構61がそれぞれ配設されている。そして、インナリング部44aがアウタリング部44bに対し、3箇所のアクチュエータ50、変位拡大機構60、案内機構61及び連結アーム部59を介して、光軸方向へ相対移動可能に連結されている。この変位拡大機構60が第1リンク機構の機能を備え、案内機構61が第2リンク機構の機能を備える。
【0098】
インナリング部44aは、3箇所のアクチュエータ50の伸縮量がそれぞれ異なった場合に、アウタリング部44bに対してチルトする。また、インナリング部44aは、3箇所のアクチュエータ50の伸縮量が略等しい場合に、アウタリング部44bに対して略平行に移動する。
【0099】
前述したように、可動レンズ38aは、第1レンズセル46を介してインナリング部44aに固定されるために、このインナリング部44aの移動に伴って、可動レンズ38aが、光軸方向への移動及びチルトする。
【0100】
前記各変位拡大機構60は、アクチュエータ50の伸縮量(変位)を拡大する変位拡大機構を構成するとともに、アクチュエータ50の変位の方向を可動レンズ38aの光軸方向への移動方向に変換する役割も担っている。また、各変位拡大機構60は、複数のスリット63と複数の貫通孔64とからなる弾性ヒンジリンク機構62で構成されている。
【0101】
ここで、弾性ヒンジリンク機構62について説明する。図14は、弾性ヒンジ部65の拡大図である。図11に示すように、各連結アーム部59の紙面右側においてアウタリング部44bには、光学素子の光軸に対して交差して延びる複数の貫通孔64と、複数の貫通孔64に接続された複数のスリット63がワイヤカット加工等により形成されている。すなわち、複数の貫通孔64は、アウタリング部44bの軸心に向かって延びるように形成されている。また、複数のスリット63は、アウタリング部44bの外面からその内面に向かって貫通孔64に沿って形成されている。これにより、近接する一対の貫通孔64間に弾性ヒンジ部65が形成される(図14参照)。そして、複数のスリット63及び貫通孔64によって、弾性ヒンジリンク機構62の第1リンク62a及び第2リンク62bが区画される。
【0102】
図12は、部分群鏡筒42におけるアクチュエータ50、変位拡大機構60及び案内機構61の動作を模式的に示したものである。図11及び図12に示すように、前記第1リンク62aは、図面において右端(アクチュエータ50の他端部を右端とする)の弾性ヒンジ部65aを支点P1として、アウタリング部44bの周壁に回動可能に連結されるとともに、連結点P2をなす前記回転ピボット機構54を介してアクチュエータ50の右端に連結されている。また、第2リンク62bは、右端の弾性ヒンジ部65bを連結点P3として、第1リンク62aの下端に連結されるとともに、左端の弾性ヒンジ部65cを連結点P4として、連結アーム部59の右側縁に連結されている。ここで、アクチュエータ50の一端部(図面において左端)の回転ピボット機構54は、支点P0に相当する。
【0103】
そして、アクチュエータ50が左端の回転ピボット機構54を支点P0として回転されながら伸長変位されたとき、第1リンク62aが支点P1を中心にして図12の時計方向に回転されるとともに、第2リンク62bが上方に移動されて、連結アーム部59が上方に移動変位される。この場合、第1リンク62a及び第2リンク62bの作動により、アクチュエータ50の変位が拡大されるとともに、その変位方向がアクチュエータ50の伸張方向に対して交差する方向への変位に変換されて連結アーム部59に伝達される。これにより、インナリング部44aに保持された可動レンズ38aが、光軸方向へ移動されるようになっている。
【0104】
一方、前記各案内機構61は、図11に示すように、各連結アーム部59の紙面左側に形成されている。そして、各案内機構61は、アウタリング部44bに対するインナリング部44aの相対移動を所定の方向、すなわち可動レンズ38aの光軸とほぼ平行な方向に案内する案内手段を構成している。そして、各案内機構61は、可動レンズ38aの光学的ピボタル位置、すなわち可動レンズ38aがチルト動作された場合に生じる像シフトがゼロとなる光軸上の位置とほぼ一致するように配置されている。また、各案内機構61は、前記弾性ヒンジリンク機構62とほぼ同様の複数のスリット63と複数の貫通孔64とからなる平行リンク機構66で構成される。
【0105】
詳述すると、複数のスリット63と複数の貫通孔64とは、光学系(例えば、可動レンズ38a)の光軸に対して交差する方向に、すなわち、複数のスリット63は、アウタリング部44bの軸線に向かって延びるように形成されている。また、複数のスリット63は、複数の貫通孔64に連続して形成されている。従って、複数のスリット63は、アウタリング部44bの外面からその内面に向かって貫通孔64に沿って形成されている。つまり、変位拡大機構60及び案内機構61を構成する複数の貫通孔64及び複数のスリット63は、アウタリング部44bのリング中心を含む中心軸(部分群鏡筒42が光学素子を保持している場合には光軸を示す)を含む仮想面上において、アウタリング部44bの外面から内面、もしくは内面から外面に向かって形成されている。
【0106】
ここで、近接対向する一対の貫通孔64間が弾性ヒンジ部65となっている。そして、これらのスリット63及び貫通孔64によって、平行リンク機構66の一対のレバー66a,66bが形成されている。各レバー66a,66bは、その長手方向が可動レンズ38aの接線に沿うように、すなわち、アウタリング部44bの周壁に沿って、アウタリング部44bに形成される。
【0107】
図11及び図12に示すように、前記一対のレバー66a,66bは、左端の弾性ヒンジ部65d,65eを支点P5,P6として、アウタリング部44bの周壁に回動可能に連結されるとともに、右端の弾性ヒンジ部65f,65gを連結点P7,P8として、連結アーム部59の左側縁に連結されている。そして、アクチュエータ50の伸長変位に伴い、変位拡大機構60及び連結アーム部59を介してインナリング部44aが光軸方向に移動されるとき、一対のレバー66a,66bが支点P5,P6を中心にして図12の反時計方向に回転される。これにより、可動レンズ38aを支持したインナリング部44aの移動が、可動レンズ38aの径方向及び接線方向に規制されながら、光軸方向のみに許容されるようになっている。
【0108】
図5及び図6に示すように、連結アーム部59の外面のそれぞれにはバネ受け67が取り付けられ、それらのバネ受け67と対応するように、ベースリング45の外周面にはバネ受け68が取り付けられている。バネ受け67,68間には、復帰機構としての一対の引張りバネ69がそれぞれ掛装されている。そして、これらの引張りバネ69の付勢力により、前記アクチュエータ50の非作動状態において、可動レンズ38aを支持するインナリング部44aが、その可動範囲の原位置に復帰移動されるようになっている。
【0109】
図7は部分群鏡筒42におけるセンサ72の周辺を示すものであり、図8は図7の8−8線に沿った断面図である。図2〜図4、図7及び図8に示すように、前記アウタリング部44bの外側部において、その外周方向に隣接するアクチュエータ50の中間位置には、アウタリング部44bに対するインナリング部44aの位置を計測するために、アウタリング部44bに切り欠いて形成された開口部が形成されている。この開口部に、計測装置としての3つのセンサ72が等角度間隔おきに配設されている。
【0110】
各センサ72は非接触式エンコーダ、例えば光学式エンコーダから構成され、スケールホルダ73を介してインナリング部44a上のスケール台44cに取り付けられた被測定部としてのスケール74と、そのスケール74に近接対応するように、ヘッドホルダ75を介してアウタリング部44b上に取り付けられた計測ヘッドとしての検出ヘッド76とを備えている。検出ヘッド76は、アウタリング部44bの周壁(側壁)に形成された切欠部に配置される。そして、検出ヘッド76は、前記切欠部の開口からインナリング部44aに取付けられたスケールの目盛74aを読み取る。また、各スケール74及び各検出ヘッド76は、アウタリング部44bの周壁の切欠部に、露出された状態で配置されている。すなわち、各センサ72のスケール74及び検出ヘッド76は、アウタリング部44bの外表面から露出している。
【0111】
そして、前記アクチュエータ50が非作動状態にあって、可動レンズ38aを支持するインナリング部44aが原位置に配置された状態で、検出ヘッド76にてスケール74上の目盛74aが読み取られることにより、移動量計測のための原点が検出されるようになっている。また、アクチュエータ50にてインナリング部44aが光軸方向に移動された状態で、検出ヘッド76にてスケール74上の目盛74aが読み取られることにより、前記原点に基づいてインナリング部44aの移動量が計測されるようになっている。検出ヘッド76とスケール74とは、光学式エンコーダを構成する。
【0112】
さらに、この実施形態においては、前記ヘッドホルダ75がセラミック等の断熱材で構成されている。これにより、センサ72の計測時に検出ヘッド76で発生する熱が、ヘッドホルダ75を介してアウタリング部44b上の静止レンズ38bや、インナリング部44a上の可動レンズ38aに伝達されるのが抑制されるようになっている。
【0113】
なお、図1に示すように、前記鏡筒37の中間部のフランジ部37a上には円筒状のジャケット79が配設され、このジャケット79によりフランジ部37aよりも上方に位置する部分群鏡筒42の外周が包囲されるようになっている。ジャケット79の周壁には制御装置51から延びるケーブル51aを挿通するための挿通孔80が形成され、その内周にはシール部材81が取り付けられている。これにより、鏡筒37の中間部より上方の部分が二重構造となって、鏡筒37の内部にその下端部等から導入される不活性ガスが充填状態に維持されるようになっている。鏡筒37の内部にその下端部から不活性ガスを導入し、導入された不活性ガスをアクチュエータ50が収容された切欠部49や複数のスリット63や複数の貫通孔64を介して排気する。そうすることによって、アクチュエータ50や案内機構61、平行リンク機構66などが変位する際に生じる不純物(露光光を吸収する吸光物質など)が光学レンズに付着することが抑制できる。なお、不活性ガスとしては、窒素ガス、ヘリウムなどの希ガスを使用することができる。
【0114】
次に、前記のように構成された光学素子保持装置43により、可動レンズ38aが光軸方向に移動される場合の動作について説明する。
図12に示すように、アクチュエータ50が電圧の印加に伴い、図面左端の回転ピボット機構54を支点P0として回転されながら変位量dLだけ伸長変位されると、変位拡大機構60を構成する弾性ヒンジリンク機構62の第1リンク62aが支点P1を中心にして時計方向に回転される。これにより、第2リンク62bに対する第1リンク62aの下端の連結点P3が、左方へ変位量dxだけ変位されるとともに、上方へ変位量dyだけ変位される。
【0115】
このとき、インナリング部44a上の連結アーム部59は、平行リンク機構66で構成された案内機構61によって、光軸方向のみに移動できるように案内保持されている。このため、第2リンク62bの右端の連結点P3に前記のような変位が加わると、その第2リンク62bは上方に突き上げられ、これによって連結アーム部59は上方へ変位量dYだけ移動変位される。従って、案内機構61と弾性ヒンジリンク機構62とは、アクチュエータ50の変位を互いに協働し合って、連結アーム部59を上方へ移動させる。
【0116】
この場合、前記アクチュエータ50の変位は、弾性ヒンジリンク機構62の第1リンク62a及び第2リンク62bにて、変位の方向を変換されながら2段階で拡大されて連結アーム部59に伝達される。よって、アクチュエータ50の僅かな変位に基づいて、インナリング部44aに支持された可動レンズ38aが光軸方向へ大きな変位量で移動変位されることになる。
【0117】
すなわち、アクチュエータ50が非作動状態にあって、第1リンク62aが原位置に配置された状態において、支点P1と連結点P2との垂直方向(光軸方向)への距離をa、支点P1と連結点P3との垂直方向への距離をb、支点P1と連結点P3との水平方向(光軸方向と直交する方向)への距離をcとしたとき、前記連結点P3の変位量dx,dyは、次の(1)式及び(2)式に示すようになる。
dx = (b/a)×dL …(1)
dy = (c/a)×dL …(2)
さらに、前記第2リンク62bが原位置に配置された状態において、連結点P3と連結点P4とを結ぶ線分の水平線に対する角度をαとしたとき、前記連結点P4すなわち連結アーム部59の変位量dYは、次の(3)式に示すようになる。
dY = (1/tanα)×dx+dy …(3)
よって、この(3)式に前記(1)及び(2)式を代入すると、前記連結アーム部59の変位量dYは、次の(4)式に示すようになる。
dY = {(1/tanα)×(b/a)+(c/a)}×dL …(4)
この(4)式において、各パラメータa〜c,αは比較的自由に設定することができるため、それらのパラメータa〜c,αを任意に設定することにより、変位量dLに対する変位量dYの拡大率を所望の値にすることができる。従って、光学素子保持装置43及びそれを備えた鏡筒37の設計の自由度を高めることができる。
【0118】
従って、本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(イ) この光学素子保持装置43では、可動レンズ38aの周縁に係合してその可動レンズ38aを保持するインナリング部44aと、そのインナリング部44aをアクチュエータ50の変位に基づいて相対移動可能に保持するアウタリング部44bとが設けられている。また、アウタリング部44bがインナリング部44aと一体の部材で形成されるとともに、そのインナリング部44aの外側に配置されている。そして、インナリング部44aとアウタリング部44bとが、アクチュエータ50の変位に基づいて可動レンズ38aの光軸にほぼ沿う方向に相対移動可能に連結されている。
【0119】
このため、光学素子保持装置43を備えた複数の部分群鏡筒42を、互いに積み重ねた際に可動レンズ38aが保持されたインナリング部44aに荷重をかけることなく、そのインナリング部44aの外側のアウタリング部44bにおいて、可動レンズ38aの光軸方向へ順に積層配置することができる。よって、鏡筒37の中間部付近に位置するレンズ38であっても、アクチュエータ50により光軸方向へ高精度に駆動することができる。また、可動レンズ38aを保持するインナリング部44aと、そのインナリング部44aを外部の装置に連結するアウタリング部44bとが、内側と外側とに位置をずらして配置されているため、鏡筒37をレンズ38の光軸方向に対してコンパクトに構成することができる。
【0120】
(ロ) この光学素子保持装置43では、アクチュエータ50の変位に基づいて移動する可動レンズ38aがインナリング部44aに保持されるとともに、常に静止状態に保たれる静止レンズ38bがアウタリング部44bに保持されている。そして、可動レンズ38aと静止レンズ38bとがほぼ重合状態になるように配置されている。このため、静止レンズ38bを保持するための部分群鏡筒42を別に設ける必要がなく、可動レンズ38aを保持した部分群鏡筒42内に、静止レンズ38bを重合状態で保持することができて、鏡筒37をコンパクトに構成することができる。
【0121】
(ハ) この光学素子保持装置43では、インナリング部44aとアウタリング部44bとの相対移動量を計測するセンサ72が設けられ、そのセンサ72の検出ヘッド76が断熱材よりなるヘッドホルダ75を介してアウタリング部44bに取着されている。このため、センサ72にてインナリング部44aとアウタリング部44bとの相対移動量を計測することにより、可動レンズ38aの光軸方向への移動量を適正に測定することができる。また、センサ72の計測時に検出ヘッド76で発生する熱が、部分群鏡筒42内のレンズ38に伝達されるのを断熱材にて抑制することができて、そのレンズ38の面精度等が低下するのを抑制することができる。
【0122】
(ニ) この光学素子保持装置43では、前記センサ72が、スケール74及び検出ヘッド76を備えた非接触式エンコーダから構成されている。このため、アクチュエータ50の変位に基づく可動レンズ38aの移動量を、ドリフトの影響を回避しつつ高精度に計測することができる。
【0123】
(ホ) この光学素子保持装置43では、センサ72のスケール74及び検出ヘッド76が、アウタリング部44bの外表面に露出するように配設されている。このため、アウタリング部44bの外表面から、スケール74及び検出ヘッド76の交換や調整等のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0124】
(ヘ) この光学素子保持装置43では、前記センサ72がスケール74及び検出ヘッド76から構成され、インナリング部44aとアウタリング部44bとの相対移動量を計測するための原点を検出する原点検出機能を備えている。このため、検出された原点に基づいて、可動レンズ38aの移動量計測を絶対位置計測にてより正確に行うことができる。
【0125】
(ト) この光学素子保持装置43では、前記アクチュエータ50がアウタリング部44bの外側部に等角度間隔をおいて3つ設けられている。このため、3つのアクチュエータ50により、可動レンズ38aを光軸方向へ高精度に駆動させることができるとともに、チルトさせることができる。
【0126】
(チ) この光学素子保持装置43では、前記センサ72がアウタリング部44bの外周方向に隣接するアクチュエータ50の中間にそれぞれ配置されている。このため、3つのアクチュエータ50と3つのセンサ72とを、アウタリング部44bの外側部に嵩張ることなく配置することができて、鏡筒37を外径方向に対してコンパクトに構成することができる。また、アクチュエータ50とセンサ72が、アウタリング部44bの径方向に並設されることなく、外周方向に交互に配置されているため、それらのメンテナンスを容易に行うことができる。
【0127】
(リ) この光学素子保持装置43では、前記アクチュエータ50が、その長手方向をアウタリング部44bの外周面の接線方向に沿わせるように配置されている。このため、アクチュエータ50をアウタリング部44bの外周面から大きく突出することなく配置することができる。また、前記アクチュエータ50の短手方向が、可動レンズ38aの光軸方向に一致するため、光学素子保持装置43内にアクチュエータ50を装着することでの部分群鏡筒42の光軸方向への大型化を最小限に留めることができる。従って、鏡筒37をコンパクトに構成することができる。
【0128】
(ヌ) この光学素子保持装置43では、前記アクチュエータ50の両端部が、アウタリング部44bに対して、相対回転可能な回転ピボット機構54を介して結合されている。このため、アクチュエータ50の駆動力を歪みが生じることなく伝達することができて、可動レンズ38aを高精度に駆動させることができる。
【0129】
(ル) この光学素子保持装置43では、アウタリング部44bの周壁に3つの切欠部49が形成され、それらの切欠部49内にアクチュエータ50が収容配置されている。このため、アクチュエータ50をアウタリング部44bの外周に突出することなく、切欠部49内に収容配置することができて、鏡筒37を一層コンパクトに構成することができる。また、アクチュエータ50が切欠部49からアウタリング部44bの外表面に露出するため、アクチュエータ50の交換や調整等のメンテナンスを容易に行うこともできる。
【0130】
(ヲ) この光学素子保持装置43では、前記アクチュエータ50が圧電素子からなっている。このため、可動レンズ38aを駆動するためのアクチュエータ50として、高精度、低発熱、高剛性及び高クリーン度の優れた特性を発揮させることができる。
【0131】
(ワ) この光学素子保持装置43では、前記インナリング部44aとアウタリング部44bとが、アクチュエータ50と、そのアクチュエータ50の変位を拡大する変位拡大機構60と、インナリング部44aの移動を所定の方向に案内する案内機構61とを介して連結されている。このため、アクチュエータ50の僅かな変位を、変位拡大機構60により大きな変位に拡大することができて、インナリング部44aを大きな変位量で移動させることができる。また、そのインナリング部44aの移動を案内機構61により所定の方向へより正確に案内することができる。よって、可動レンズ38aを高精度に駆動することができることになる。
【0132】
(カ) この光学素子保持装置43では、前記変位拡大機構60が、アクチュエータ50の変位の方向を可動レンズ38aの移動方向に変換して伝達する変換機能を備えている。このため、アクチュエータ50の変位の方向と可動レンズ38aの移動方向が異なる場合でも、変位拡大機構60により、アクチュエータ50の変位を拡大するとともに変位の方向を可動レンズ38aの移動方向に変換して伝達することができて、構成の簡略化を図ることができる。
【0133】
(ヨ) この光学素子保持装置43では、前記変位拡大機構60が、複数のスリット63と複数の貫通孔64とからなる弾性ヒンジリンク機構62で構成されている。このため、変位拡大機構60をインナリング部44a及びアウタリング部44bと一体の部材で、ワイヤカット加工等により容易に形成することができ、構造を簡単にして部品点数を減少させることができる。
【0134】
(タ) この光学素子保持装置43では、前記案内機構61が、複数のスリット63と複数の貫通孔64とからなる平行リンク機構66で構成され、そのレバー66a,66bが可動レンズ38aの接線に沿うように配置されている。このため、案内機構61をインナリング部44a及びアウタリング部44bと一体の部材で、ワイヤカット加工等により容易に形成することができ、構造を簡単にして部品点数を減少させることができる。
【0135】
また、レバー66a,66bの延長方向が可動レンズ38aの接線方向と一致しているため、レバー66a,66bの回転によって僅かな余弦誤差が生じても、その余弦誤差が可動レンズ38aの径方向への横シフトを誘発したり、可動レンズ38aのレンズセル46を歪ませたりすることはない。よって、可動レンズ38aの径方向変位をより確実に規制することができて、可動レンズ38aを光軸方向に沿ってより正確に移動させることができる。
【0136】
さらに、この平行リンク機構66からなる案内機構61では、隣接対向する一対の貫通孔64間の弾性ヒンジ部65において、捩じれ方向及び圧縮方向に弾性変形可能となっている。このため、その弾性変形を利用して、インナリング部44aを光軸方向に高精度に案内しながら、チルト方向にも必要な量だけ容易に移動させることができる。
【0137】
(レ) この光学素子保持装置43では、前記アウタリング部44bの上端面、及びそのアウタリング部44bの下部に固定されたベースリング45の下端面に、平面状の取付面48がそれぞれ形成されている。このため、複数の部分群鏡筒42を、それらの上下の取付面48を互いに重合させることによって、可動レンズ38aが支持されたインナリング部44aに荷重をかけることなく、光軸方向へ安定状態で積層配置することができる。
【0138】
(ソ) この光学素子保持装置43では、前記案内機構61が、アクチュエータ50の変位に基づいて駆動される可動レンズ38aの光学的ピボタル位置とほぼ一致するように配置されている。このため、可動レンズ38aのチルト動作時等においても径方向変位が生じることなく、その可動レンズ38aを光軸方向へより正確に移動させることができる。
【0139】
(ツ) この光学素子保持装置43では、前記アクチュエータ50の非作動状態において、インナリング部44aをその可動範囲の一端に復帰させるための引張りバネ69が設けられている。このため、アクチュエータ50の非作動状態における中立点の両側をインナリング部44aの可動範囲として使用することができて、インナリング部44aの可動範囲を拡大することができ、可動レンズ38aの移動調整が容易になる。
【0140】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について、前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0141】
この第2実施形態においては、図15〜図16に示すように、アクチュエータ50の変位を拡大するとともに変位方向を変換するための変位拡大機構60の構成が、第1実施形態と相違している。すなわち、この変位拡大機構60は、複数のスリット63と複数の貫通孔64とからなる弾性ヒンジリンク機構62で構成され、第1リンク62aと弾性片62cと備えている。そして、第1リンク62aの左端が、弾性片62cを介して、連結アーム部59の右側縁に連結されている。
【0142】
よって、図16に示すように、アクチュエータ50が電圧の印加に伴って変位量dLだけ伸長変位されると、第1リンク62aが支点P1を中心にして時計方向に回転され、弾性片62cを介して連結アーム部59が上方に引っ張られる。これにより、連結アーム部59が平行リンク機構66で構成された案内機構61により光軸方向に案内されながら、上方へ変位量dYだけ移動変位される。このとき、第1リンク62aと弾性片62cとの連結部には左方への変位も生じるが、この変位は弾性片62cの弾性変形によって吸収される。
【0143】
従って、アクチュエータ50の僅かな変位に基づいて、インナリング部44aに支持された可動レンズ38aが光軸方向へ大きな変位量で移動変位されることになる。ここで、第1リンク62aが原位置に配置された状態において、支点P1と連結点P2との垂直方向への距離をa、支点P1と連結点P3との水平方向への距離をcとしたとき、前記連結アーム部59の変位量dYは、次の(5)式に示すようになる。
dY = (c/a)×dL …(5)
この(5)式において、各パラメータa,cを適切に設定することにより、任意の拡大率を得ることができる。
【0144】
従って、本実施形態によれば、前記第1実施形態における(イ)〜(ツ)に記載の効果とほぼ同様の効果を得ることができる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について、前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0145】
この第3実施形態においては、図17〜図18に示すように、変位拡大機構60の構成が、第1実施形態と相違している。すなわち、この変位拡大機構60は、複数のスリット63と複数の貫通孔64とからなる弾性ヒンジリンク機構62で構成され、第1リンク62aと第2リンク62bと備えている。そして、第1リンク62aの右端、すなわち弾性ヒンジ部65aが支点P1としてアウタリング部44bの周壁に連結されるとともに、第1リンク62aの左端、すなわち弾性ヒンジ部65bが連結点P3として第2リンク62bの下端に連結されている。また、第2リンク62bの上端が連結点P2にてアクチュエータ50の右端に連結されるとともに、第2リンク62bの左端、すなわち弾性ヒンジ部65cが連結点P4として連結アーム部59の右側縁に連結されている。
【0146】
よって、図18に示すように、アクチュエータ50が電圧の印加に伴って変位量dLだけ伸長変位されると、第2リンク62bの上端の連結点P2に対して上方への引張り力が作用する。このとき、第2リンク62bの下端の連結点P3が、第1リンク62aにより垂直方向(光軸方向)のみに移動可能に案内される。同時に、第2リンク62bの左端の連結点P4が、連結アーム部59とともに平行リンク機構66で構成された案内機構61により垂直方向のみに移動可能に案内される。このため、第2リンク62bは、実質的に支点P1と連結点P3とを結ぶ線分の延長線上と、連結点P4から水平方向に延ばした線との交点Piを瞬間回転中心として時計方向に回転変位される。これによって、連結アーム部59が上方へ変位量dYだけ移動変位される。
【0147】
従って、アクチュエータ50の僅かな変位に基づいて、インナリング部44aに支持された可動レンズ38aが光軸方向へ大きな変位量で移動変位させることができる。ここで、第2リンク62bが原位置に配置された状態において、瞬間回転中心Piと連結点P2との垂直方向への距離をe、瞬間回転中心Piと連結点P4との水平方向への距離をfとしたとき、前記連結アーム部59の変位量dYは、次の(6)式に示すようになる。
dY = (f/e)×dL …(6)
この(6)式において、各パラメータe,fを適切に設定することにより、任意の拡大率を得ることができる。
【0148】
従って、本実施形態によれば、前記各実施形態における(イ)〜(ツ)に記載の効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(ネ) この光学素子保持装置43では、変位拡大機構60が第1リンク62aと第2リンク62bとを有する弾性ヒンジリンク機構62で構成されている。そして、アクチュエータ50の伸長変位に伴って、第2リンク62bが実際の支点P1よりも遠くに設定される架空の瞬間回転中心Piの周りで回転変位されるようになっている。このため、アクチュエータ50の変位量に対する可動レンズ38aの移動量の拡大率を大きくすることができる。
【0149】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について、前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0150】
この第4実施形態においては、図19に示すように、アクチュエータ50の右端部と変位拡大機構60の第1リンク62aとの間の回転ピボット機構54の構成が、第1実施形態と相違している。すなわち、この回転ピボット機構54は、ワイヤカット加工等によりアウタリング部44bにほぼ連続するように形成した複数のスリット63と、そのスリット63の対向端に所定の間隔をおいて形成した一対の貫通孔64とで構成されている。そして、隣接対向する一対の貫通孔64間が弾性ヒンジ部65hとなっている。
【0151】
従って、本実施形態によれば、前記各実施形態における(イ)〜(ツ)に記載の効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(ナ) この光学素子保持装置43では、アクチュエータ50の一端部の回転ピボット機構54が、アウタリング部44bにほぼ連続するように形成した複数のスリット63と、その対向端に所定の間隔をおいて形成した複数の貫通孔64とで構成されている。このため、アクチュエータ50の作動時に、回転ピボット機構54に摩擦抵抗が生じるのを低減することができて、アクチュエータ50の駆動力を歪みなく好適に伝達することができる。
【0152】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について、前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0153】
この第5実施形態においては、図20に示すように、インナリング部44aの移動を案内するための案内機構61の構成が、第1実施形態と相違している。すなわち、この案内機構61は、複数のスリット63と複数の貫通孔64とからなる1本のリンク機構85で構成されている。そして、そのリンク機構85のレバー85aが可動レンズ38aの接線に沿うように配置されている。
【0154】
よって、前記第1実施形態の場合とほぼ同様に、アクチュエータ50の伸長変位に伴い、変位拡大機構60を介して連結アーム部59が移動変位されるとき、リンク機構85のレバー85aが可動レンズ38aの接線に沿う面内で回転されて、連結アーム部59の移動が光軸方向に案内規制される。
【0155】
従って、本実施形態によれば、前記各実施形態における(イ)〜(ヨ)及び(レ)〜(ツ)に記載の効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(ラ) この光学素子保持装置43では、前記案内機構61が、複数のスリット63と複数の貫通孔64とからなる1本のリンク機構85で構成され、そのレバー85aが可動レンズ38aの接線に沿うように配置されている。このため、案内機構61の構造が簡単で部品点数を減少させることができるとともに、可動レンズ38aの径方向変位をより確実に規制することができて、可動レンズ38aを光軸方向に沿ってより正確に移動させることができる。また、リンク機構85の捩じれ方向の柔軟性が増すため、可動レンズ38aのチルト動作の可動範囲を拡大することができる。
【0156】
(変更例)
なお、前記各実施形態は、以下のように変更してもよい。
・ 前記各実施形態では、変位拡大機構60が変位の方向を変換するように構成したが、駆動機構の変位の方向を変換する変換機構を変位拡大機構60と別に設けてもよい。
【0157】
なお、前記各実施形態では、駆動機構(リンク機構)として、アクチュエータ50の変位量をインナリング部44aに伝達する変位拡大機構60(第1リンク機構)と、インナリング部44aとアウタリング部44bとの相対移動を、光軸方向に案内する案内機構61(第2リンク機構)とを含む構成について説明した。これに対して、変位拡大機構60に案内機構61の機能を持たせ、案内機構61を省略してもよい。また、案内機構61に変位拡大機構60の機能を持たせ、変位拡大機構60を省略してもよい。
【0158】
・ 前記各実施形態では、変位拡大機構60を介して、アクチュエータ50の変位を拡大してインナリング部44aに伝達したが、インナリング部44aの光軸方向への移動量が微小な場合には、変位拡大機構60を省略してもよい。
【0159】
・ 前記各実施形態では、駆動機構としてのアクチュエータ50を圧電素子で構成したが、これを磁歪アクチュエータや流体圧アクチュエータで構成してもよい。
【0160】
・ 前記各実施形態では、インナリング部44aとアウタリング部44bとの間に復帰機構としての引張りバネ69を設けたが、アクチュエータ50として復帰バネを内蔵した圧電素子を用いて、アクチュエータ50の非作動時に、インナリング部44aが可動範囲の一端側に復帰されるように構成してもよい。
【0161】
・ 前記各実施形態では光学素子としてレンズ38が例示されているが、この光学素子は平行平板、位相差板等の他の光学素子であってもよい。さらに、この光学素子は、露光光ELを偏向する偏向部材、露光光ELを反射する反射面を備えた反射光学部材であってもよい。
【0162】
・ 前記各実施形態では、複数の部分群鏡筒42を積層する際に、各部分群鏡筒42の取付面48の間に、間隔調整部材を配置したが、間隔調整部材を省略して、各部分群鏡筒42の取付面48同士を直接接触させてもよい。
【0163】
・ この発明の光学素子保持装置43は、前記実施形態の露光装置31の投影光学系35における横置きタイプのレンズ38の保持構成に限定されることなく、露光装置31における照明光学系33における各種光学素子の保持装置、あるいは縦置きタイプの光学素子の保持装置に具体化してもよい。さらに、他の光学機械、例えば顕微鏡、干渉計等の光学系における光学素子の保持装置に具体化してもよい。
【0164】
・ 本発明の露光装置は、半導体素子製造用の露光装置31に限定されるものではなく、また、縮小露光型の露光装置に限定されるものでもない。すなわち、この露光装置は、液晶表示素子、撮像素子、薄膜磁気ヘッド等の露光装置を含むものである。また、等倍露光型の露光装置、ステップ・アンド・リピート方式の一括露光型露光装置、ステップ・アンド・スキャン方式の走査露光型露光装置をも含むものである。
【0165】
このようにした場合でも、前記各実施形態に記載の効果とほぼ同様の効果が得られる。
また、露光装置として、投影光学系を用いることなく、マスクと基板とを密接させてマスクのパターンを露光するプロキシミティ露光装置にも適用することができる。また、投影光学系としては、全屈折タイプに限らず、反射屈折タイプであってもよい。
【0166】
なお、照明光学系、投影光学系を構成する複数のレンズ又は反射光学素子の少なくとも一部を本実施の形態の光学部材保持装置で保持し、この照明光学系及び投影光学系を露光装置本体に組み込み、光学調整をするとともに、多数の機械部品からなるウェハステージ(スキャンタイプの露光装置の場合は、レチクルステージも含む)を露光装置本体に取り付けて配線を接続し、露光光の光路内にガスを供給するガス供給配管を接続した上で、さらに総合調整(電気調整、動作確認など)をすることにより、実施形態の露光装置を製造することができる。また、光学部材保持装置を構成する各部品は、超音波洗浄などにより、加工油や、金属物質などの不純物を落としたうえで、組み上げられる。なお、露光装置の製造は、温度、湿度や気圧が制御され、かつクリーン度が調整されたクリーンルーム内で行うことが望ましい。
【0167】
本実施の形態における硝材として、蛍石、石英などを例に説明したが、フッ化リチウム、フッ化マグネシウム、フッ化ストロンチウム、リチウム−カルシウム−アルミニウム−フローライド、及びリチウム−ストロンチウム−アルミニウム−フローライド等の結晶や、ジルコニウム−バリウム−ランタン−アルミニウムからなるフッ化ガラスや、フッ素をドープした石英ガラス、フッ素に加えて水素もドープされた石英ガラス、OH基を含有させた石英ガラス、フッ素に加えてOH基を含有した石英ガラス等の改良石英を用いた場合にも、本実施の形態の光学部材保持装置を適用することができる。
【0168】
次に、上述した露光装置をリソグラフィ工程で使用したデバイスの製造方法の実施形態について説明する。
図21は、デバイス(ICやLSI等の半導体チップ、液晶パネル、CCD、薄膜磁気ヘッド、マイクロマシン等)の製造例のフローチャートを示す図である。図21に示すように、まず、ステップS101(設計ステップ)において、デバイス(マイクロデバイス)の機能・性能設計(例えば、半導体デバイスの回路設計等)を行い、その機能を実現するためのパターン設計を行う。引き続き、ステップS102(マスク製作ステップ)において、設計した回路パターンを形成したマスク(レクチル)を製作する。一方、ステップS103(ウエハ製造ステップ)において、シリコン等の材料を用いてウエハを製造する。
【0169】
次に、ステップS104(ウエハ処理ステップ)において、ステップS101〜S103で用意したマスクとウエハを使用して、後述するように、リソグラフィ技術等によってウエハ上に実際の回路等を形成する。次いで、ステップS105(デバイス組立ステップ)において、ステップS104で処理されたウエハを用いてデバイス組立を行う。このステップS105には、ダイシング工程、ボンディング工程、及びパッケージング工程(チップ封入)等の工程が必要に応じて含まれる。
【0170】
最後に、ステップS106(検査ステップ)において、ステップS105で作製されたデバイスの動作確認テスト、耐久性テスト等の検査を行う。こうした工程を経た後にデバイスが完成し、これが出荷される。
【0171】
図22は、半導体デバイスの場合における、図21のステップS104の詳細なフローの一例を示す図である。図22において、ステップS111(酸化ステップ)では、ウエハの表面を酸化させる。ステップS112(CVDステップ)では、ウエハ表面に絶縁膜を形成する。ステップS113(電極形成ステップ)では、ウエハ上に電極を蒸着によって形成する。ステップS114(イオン打込みステップ)では、ウエハにイオンを打ち込む。以上のステップS111〜S114のそれぞれは、ウエハ処理の各段階の前処理工程を構成しており、各段階において必要な処理に応じて選択されて実行される。
【0172】
ウエハプロセスの各段階において、上述の前処理工程が終了すると、以下のようにして後処理工程が実行される。この後処理工程では、まず、ステップS115(レジスト形成ステップ)において、ウエハに感光剤を塗布する。引き続き、ステップS116(露光ステップ)において、上で説明したリソグラフィシステム(露光装置)によってマスクの回路パターンをウエハに転写する。この転写の動作時に、大気圧変化及び照射熱により発生する収差やディストーションを上述した光学素子保持装置43によって補正する。そして、補正しながら転写されたウエハをステップS117において、現像する。ステップS118(エッチングステップ)において、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去る。そして、ステップS119(レジスト除去ステップ)において、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除く。
【0173】
これらの前処理工程と後処理工程とを繰り返し行うことによって、ウエハ上に多重に回路パターンが形成される。
以上説明した本実施形態のデバイス製造方法を用いれば、露光工程(ステップS116)において上記の露光装置が用いられ、真空紫外域の露光光により解像力の向上が可能となり、しかも露光量制御を高精度に行うことができる。従って、結果的に最小線幅が0.1μm程度の高集積度のデバイスを歩留まりよく生産することができる。
【0174】
【発明の効果】
以上詳述したように、本願請求項1に記載の発明によれば、鏡筒をコンパクトに構成することができるとともに、光学素子を高精度に駆動することができる。また、アクチュエータの変位に基づいて、保持部とアウタリング部とを相対移動させる際に、その相対移動を第2リンク機構により所定の方向へ正確に案内することができる。このため、光学素子を、より正確にその光軸方向に駆動及びチルト駆動させることができる。
【0176】
本願請求項に記載の発明によれば、前記請求項1に記載の発明の効果に加えて、光学素子の移動量を適正に測定することができる。また、計測装置で発生する熱が光学素子に伝達されるのを断熱材にて抑制することができて、光学素子の駆動をより高精度に行うことができる。
【0177】
本願請求項に記載の発明によれば、前記請求項に記載の発明の効果に加えて、光学素子の移動量を求めることで、その移動量を適正に測定することができる。
【0178】
本願請求項4に記載の発明によれば、前記請求項1に記載の発明の効果に加えて、光学素子を光軸方向へ高精度に駆動させることができるとともに、チルト駆動させることができる。
本願請求項5に記載の発明によれば、前記請求項1に記載の発明の効果に加えて、光学素子の移動量をドリフトの影響を回避しつつ高精度に計測することができる。
【0180】
本願請求項に記載の発明によれば、前記請求項に記載の発明の効果に加えて、駆動装置と計測装置とをアウタリング部の外周部に嵩張ることなく配置することができて、鏡筒を外径方向に対してコンパクトに構成することができる。また、駆動装置及び計測装置のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0181】
本願請求項に記載の発明によれば、前記請求項1〜請求項のうちいずれか一項に記載の発明の効果に加えて、駆動機構をアウタリング部の外周面から大きく突出することなく配置することができる。また、駆動機構が鏡筒を光学素子の光軸方向に大型化させることがなく、鏡筒をコンパクトに構成することができる。
【0182】
本願請求項に記載の発明によれば、前記請求項に記載の発明の効果に加えて、アクチュエータの駆動力を歪みが生じることなく保持部に伝達することができて、光学素子を高精度に駆動させるのに好適である。
【0183】
本願請求項に記載の発明によれば、前記請求項に記載の発明の効果に加えて、回転ピボットの摩擦抵抗を低減することができて、アクチュエータの駆動力を保持部に歪みなく好適に伝達することができる。
【0184】
本願請求項1に記載の発明によれば、前記請求項〜請求項のうちいずれか一項に記載の発明の効果に加えて、アクチュエータをアウタリング部の外周に突出することなく、開口部内に収容することができて、鏡筒を一層コンパクトに構成することができる。また、アクチュエータを開口部からアウタリング部の外表面に露出させることもでき、アクチュエータのメンテナンスを容易に行うこともできる。
【0185】
本願請求項1に記載の発明によれば、前記請求項〜請求項1のうちいずれか一項に記載の発明の効果に加えて、光学素子を駆動するためのアクチュエータとして、高精度、低発熱、高剛性及び高クリーン度の優れた特性を発揮することができる。
【0187】
本願請求項1に記載の発明によれば、前記請求項7〜9のうちいずれか一項に記載の発明の効果に加えて、第1リンク機構によりアクチュエータの変位を光学素子の光軸方向の変位に変換して保持部に伝達することができる。よって、構成の簡略化を図ることができる。
【0188】
本願請求項1に記載の発明によれば、前記請求項1〜請求項12のうちいずれか一項に記載の発明の効果に加えて、駆動機構の僅かな変位を変位拡大機構により大きな変位に拡大することができて、保持部とアウタリング部とを大きな変位量で相対移動させることができる。よって、光学素子を高精度に駆動する構成として好適である。
【0189】
本願請求項1に記載の発明によれば、前記請求項1〜請求項13のうちいずれか一項に記載の発明の効果に加えて、第1リンク機構を保持部及びアウタリング部と一体の部材で形成することができる。従って、構造を簡略化することができるとともに、部品点数を減少させることができる。
【0190】
本願請求項15に記載の発明によれば、前記請求項14に記載の発明の効果に加えて、第1リンク機構の構造が簡単で部品点数を減少させることができる
【0191】
本願請求項1に記載の発明によれば、前記請求項14または請求項15に記載の発明の効果に加えて、第2リンク機構の構造が簡単で部品点数を減少させることができるとともに、光学素子の径方向変位をより確実に規制することができて、光学素子を光軸方向に沿ってより正確に移動させることができる。また、平行リンク機構の捩じれ方向の柔軟性が増すため、光学素子のチルト動作の可動範囲を拡大することができる。
【0192】
本願請求項1に記載の発明によれば、前記請求項1〜請求項1のうちいずれか一項に記載の発明の効果に加えて、複数の光学素子保持装置のアウタリング部を、それらの取付面にて重合させることにより、光学素子の光軸方向へ安定状態で積層配置することができる。
【0193】
本願請求項1に記載の発明によれば、前記請求項1〜請求項1のうちいずれか一項に記載の発明の効果に加えて、光学素子のチルト動作時等においても径方向変位が生じることなく、光学素子を光軸方向へより正確に移動させることができる。
【0194】
本願請求項19に記載の発明によれば、前記請求項1〜請求項1のうちいずれか一項に記載の発明の効果に加えて、駆動機構による保持部の可動範囲を拡大することができて、光学素子を高精度に駆動する構成として好適である。
【0195】
本願請求項2に記載の発明によれば、前記請求項1〜請求項19のうちいずれか一項に記載の発明の効果に加えて、保持部とアウタリング部とを内側のインナリング部と外側のアウタリング部とにずらして配置することで、鏡筒をコンパクトに構成することができるとともに、アウタリング部において光学素子の光軸方向へ順に積層配置することができる。このため、鏡筒の中間部付近に位置する光学素子であっても、駆動機構により高精度に駆動することができる。
【0197】
本願請求項2に記載の発明によれば、前記請求項2に記載の発明の効果に加えて、前記請求項1に記載の発明の効果とほぼ同様の効果が得られる。
【0201】
本願請求項2に記載の発明によれば、鏡筒全体をコンパクトに構成することができるとともに、その内部の光学素子を容易かつ高精度に駆動調整することができる。
【0202】
本願請求項2に記載の発明によれば、投影光学系の光学素子の収差を高精度に調整することができて、微細なパターンの像を基板上により正確に転写することができる。
【0203】
本願請求項2に記載の発明によれば、露光精度を向上することができて、高集積度のデバイスを歩留まりよく生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1実施形態の露光装置を示す概略構成図。
【図2】 図1の投影光学系における部分群鏡筒の一部切欠斜視図。
【図3】 図2の部分群鏡筒の平面図。
【図4】 図3の4−4線における断面図。
【図5】 図2の部分群鏡筒の一部分を拡大して示す要部側面図。
【図6】 図5の6−6線における部分断面図。
【図7】 図2の部分群鏡筒の他部分を拡大して示す要部側面図。
【図8】 図7の8−8線における部分断面図。
【図9】 図2の部分群鏡筒の鏡筒本体を示す斜視図。
【図10】 図9の鏡筒本体の一部分を拡大して示す要部斜視図。
【図11】 図5の部分群鏡筒におけるアクチュエータ、変位拡大機構及び案内機構の部分をさらに拡大して示す要部側面図。
【図12】 図11の構成の動作を説明する説明図。
【図13】 アクチュエータの両端の結合構成を示す断面図。
【図14】 変位拡大機構及び案内機構の弾性ヒンジ構成を拡大して示す部分側面図。
【図15】 第2実施形態の部分群鏡筒の要部側面図。
【図16】 図15の構成の動作を説明する説明図。
【図17】 第3実施形態の部分群鏡筒の要部側面図。
【図18】 図17の構成の動作を説明する説明図。
【図19】 第4実施形態の部分群鏡筒の要部側面図。
【図20】 第5実施形態の部分群鏡筒の要部側面図。
【図21】 デバイスの製造例のフローチャート。
【図22】 半導体デバイスの場合における図21のウエハ処理に関する詳細なフローチャート。
【図23】 従来構成の投影光学系を示す概略構成図。
【図24】 図23の投影光学系の変更構成を示す概略構成図。
【図25】 図23の投影光学系の鏡筒の一部を示す分解斜視図。
【図26】 図23の鏡筒における案内機構を拡大して示す部分断面図。
【図27】 図26の案内機構の動作を説明する説明図。
【図28】 図26の案内機構の動作を説明する説明図。
【符号の説明】
31…露光装置、35…投影光学系、37…鏡筒、38…光学素子としてのレンズ、38a…光学素子としての(可動)レンズ、38b…光学素子としての(静止)レンズ、42…鏡筒の一部を構成する部分群鏡筒、43…光学素子保持装置、44a…保持部及び第1保持部を構成するインナリング部、44b…連結部及び第2保持部を構成するアウタリング部、48…取付面、49…開口部をなす切欠部、50…駆動機構としてのアクチュエータ、54…回転ピボット機構、60…第1リンク機構の機能を備える変位拡大機構、61…第2リンク機構の機能を備える案内手段としての案内機構、62…弾性ヒンジリンク機構、63…スリット、64…貫通孔、66…平行リンク機構、69…復帰機構としての引張りバネ、72…計測装置としてのセンサ、74…被測定部としてのスケール、75…計測ヘッドとしての検出ヘッド、85…リンク機構、85a…レバー、R…マスクとしてのレチクル、W…基板としてのウエハ。

Claims (25)

  1. 光学素子を保持する光学素子保持装置において、
    アウタリング部と、
    前記アウタリング部の内側に配置され、前記光学素子の周縁部を保持する保持部と、
    前記アウタリング部に設けられたアクチュエータと、
    前記アウタリング部に対して前記保持部を駆動する駆動機構とを備え、
    前記駆動機構は、前記アクチュエータの変位を前記保持部に伝達する第1リンク機構と、前記第1リンク機構とは別に設けられ、前記アクチュエータの変位が前記第1リンク機構を介して前記保持部に伝達されたときに、前記アウタリング部に対して前記保持部を所定方向に案内する第2リンク機構とを有することを特徴とする光学素子保持装置。
  2. 前記光学素子の移動量を計測する計測装置を備え、
    前記計測装置の少なくとも一部を、断熱材を介して前記保持部及び前記アウタリング部の少なくとも一方に取り付けたことを特徴とする請求項1に記載の光学素子保持装置。
  3. 前記計測装置は、前記アウタリング部に対する前記保持部の変位量を計測し、その計測結果に基づいて、前記光学素子の移動量を求めることを特徴とする請求項2に記載の光学素子保持装置。
  4. 前記駆動機構を前記アウタリング部に対して、等角度間隔をおいて少なくとも3つ設けたことを特徴とする請求項1に記載の光学素子保持装置。
  5. 前記光学素子の移動量を計測する計測装置を備え、
    前記計測装置は、前記保持部に取り付けられた被測定部と、
    前記アウタリング部に取り付けられた計測ヘッドとを備える光学式エンコーダを含むことを特徴とする請求項1に記載の光学素子保持装置。
  6. 前記駆動機構を前記アウタリング部に対して、等角度間隔をおいて少なくとも3つ設け、
    前記計測装置を前記等角度間隔をおいて設けられた前記駆動機構の中間に配置したこと
    を特徴とする請求項5に記載の光学素子保持装置。
  7. 前記アクチュエータは、前記アウタリング部に対して、前記アクチュエータの変位方向が前記アウタリング部の外周面の接線方向に沿うように配置されていることを特徴とする請求項1〜請求項6のうちいずれか一項に記載の光学素子保持装置。
  8. 前記アクチュエータと前記アウタリング部との間に配置される回転ピボットをさらに備えることを特徴とする請求項7に記載の光学素子保持装置。
  9. 前記回転ピボットは、前記光学素子の光軸に対して交差する方向に、かつ前記アウタリング部に切り欠いて形成される切り欠きばねを有することを特徴とする請求項8に記載の光学素子保持装置。
  10. 前記アウタリング部は、前記アウタリング部を切り欠いて形成された開口部を有し、前記アクチュエータは、前記開口部に収容されることを特徴とする請求項1〜請求項9のうちいずれか一項に記載の光学素子保持装置。
  11. 前記アクチュエータは、圧電素子を含むことを特徴とする請求項1〜請求項10のうちいずれか一項に記載の光学素子保持装置。
  12. 前記第1リンク機構は、前記アクチュエータの変位を前記光学素子の光軸方向の変位に変換することを特徴とする請求項7〜請求項9のうちいずれか一項に記載の光学素子保持装置。
  13. 前記第1リンク機構は、前記アクチュエータの変位量を拡大する変位拡大機構を含むことを特徴とする請求項1〜請求項12のうちいずれか一項に記載の光学素子保持装置。
  14. 前記第1リンク機構は、前記光学素子の光軸に対して交差する方向に延びるように、前記アウタリング部を切り欠いて形成される切り欠きばねを含むことを特徴とする請求項1〜請求項13のうちいずれか一項に記載の光学素子保持装置。
  15. 前記切り欠きばねは、前記光学素子の光軸に対して交差する方向に形成された複数のスリットと複数の貫通孔とを有する弾性ヒンジリンクで構成されることを特徴とする請求項14に記載の光学素子保持装置。
  16. 前記第2リンク機構は、前記光学素子の光軸に対して交差するように延びる複数の貫通孔と、前記複数の貫通孔に連続して形成された複数のスリットとにより区画された平行リンク機構を含むことを特徴とする請求項14または請求項15に記載の光学素子保持装置。
  17. 前記アウタリング部は、軸線と交差する端面の少なくとも一方に、前記軸線方向に沿って隣接して配置される他の光学素子保持装置を取り付ける取付面を有することを特徴とする請求項1〜請求項1のうちいずれか一項に記載の光学素子保持装置。
  18. 前記第2リンク機構は、光学素子の光学的ピボタル位置とほぼ一致するように、前記保持部を案内することを特徴とする請求項1〜請求項1のうちいずれか一項に記載の光学素子保持装置。
  19. 前記保持部に接続され、前記保持部をその原点位置に復帰させる復帰機構を有することを特徴とする請求項1〜請求項1のうちいずれか一項に記載の光学素子保持装置。
  20. 前記保持部は、前記光学素子の周縁部を保持するインナリング部を有し、
    前記アウタリング部は、他のアウタリング部に取り付けられる取付部を有することを特徴とする請求項1〜請求項19のうちいずれか一項に記載の光学素子保持装置。
  21. 前記第1リンク機構及び前記第2リンク機構は、前記アウタリング部の側壁に形成されることを特徴とする講求項1〜請求項2のうちいずれか一項に記載の光学素子保持装置。
  22. 前記取付部は、前記アウタリング部の一端または他端の少なくとも一方に設けられることを特徴とする請求項2に記載の光学素子保持装置。
  23. 内部に複数の光学素子を保持する鏡筒において、
    前記光学素子の少なくとも1つを、請求項1〜請求項2のうちいずれか一項に記載の光学素子保持装置を介して保持したことを特徴とする鏡筒。
  24. マスク上に形成されたパターンの像を投影光学系を介して基板上に転写する露光装置において、
    前記投影光学系は、複数の光学素子を収容する鏡筒を有し、
    前記複数の光学素子は、請求項1〜請求項2のうちいずれか一項に記載の光学素子保持装置で保持され、
    前記鏡筒は、前記光学素子保持装置の取付面を介して積層されて構成されることを特徴とする露光装置。
  25. 請求項2に記載の露光装置を用いてマイクロデバイスを製造するマイクロデバイスの製造方法。
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