JP4816989B2 - ポリアミドフィルムの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、洞箔を代表とする金属箔または金属薄膜が積層された電気配線板の支持体として、またフレキシブル印刷回路保護用カバーレイフィルムとして使用されるポリイミドフィルムの製造方法に関する。より具体的には、長手方向に発生する突起状スジが改善されたポリイミドフィルムの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリイミドフィルムは高耐熱性、高電気絶縁性を有することから耐熱性を必要とする電気絶縁素材として広範な産業分野で使用されており、特に銅箔が積層された電気配線板の支持体としての用途においては例えばIC等の電気部品と銅箔との接続にはんだを使用することができ、電気配線の小型軽量化が可能となった。これに伴い、フレキシブル印刷回路基板は、その使用に範囲が広がり、ポリイミドフィルムの需要も伸びている。しかしながら電気配線板の用途の多様化と共に配線数の高密度化の進展に伴って電気絶縁支持体としての性能の向上及び加工性改善の要求が高まってきた。
【0003】
ポリイミドフィルムは従来より、アミド酸溶液をキャスティングドラム、ベルトの支持体上に押出しにより口金からキャストして、加熱し、化学的または、熱的に閉環または、乾燥して自己支持性を備える程度に固化させた後、キャスティングドラム又はエンドレスベルトからフィルム状の樹脂を剥離させてテンターで加熱、延伸、熱処理され製造されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、口金からフィルム状に押し出されるアミド酸溶液は、ミキサーにて事前に触媒を添加されてから口金へと送液されてくるため触媒添加直後から徐々にイミド化反応が進行する。このため、ミキサーから口金までの配管を十分冷却しイミド化反応の進行を極力抑えても口金内でのポリマー滞留時間が長いと局部的なイミド化反応の進行により、製品フィルムの表面上に細かな突起状スジを生じるという問題があった。この問題を解決する手段としては口金及びポリマーを極力冷却することが考えられたが、過度の冷却はアミド酸溶液中の溶媒凝固を招き製膜が困難になるという問題があり十分な効果が得られていない。
【0005】
このような突起状スジを生じたポリイミドフィルムは、耐熱フレキシブル印刷回路(FPC)等の電子部品などに使用される場合に、耐熱接着剤をポリイミドフィルム表面に塗布する際の塗布ムラや、接着剤のはじきを招くことになるため、完成した回路の電気特性に影響を与えることとなる。
【0006】
一方、突起状スジが改善されたポリエステルフィルムをフレキシブルプリント回路に使用することも試みられているが、この場合にははんだ耐熱性が悪いため電気配線の小型軽量化が達成できないといった問題があった。
【0007】
本発明の目的は、フィルム表面に発生する突起状スジが改善されたポリイミドフィルムの製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、閉環触媒及び脱水剤を含有するポリアミド酸溶液を、口金から回転する支持体へフィルム状にキャストする工程に於いて、口金内のポリマー滞留時間を150秒以下に規定し、さらに口金での圧力損失を1000kPa以下としたうえで、口金冷媒温度を−25〜−10℃、ポリマーの温度を−20〜−10℃の範囲に制御することを特徴とするポリイミドフィルムの製造方法である。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の好ましい実施の形態を説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではない。
【0010】
本発明におけるポリイミドの先駆体であるポリアミド酸は芳香族テトラカルボン酸類と芳香族ジアミン類とからなり次の式1に示される繰り返し単位で構成されものである。
【0011】
【化1】
上記式においてR1は少なくとも1個の芳香族環を有する4価の有機基で、その炭素数は25以下であり、R1に結合する2つのカルボキシル基の夫々はR1における芳香族環のアミド基が結合する炭素原子とは相隣接する炭素原子に結合しており、またR2は少なくとも1個の芳香族環を有する2価の有機基で、その炭素数は25以下であり、アミノ基はR2における芳香族環の炭素原子に結合している。
【0012】
上記の芳香族テトラカルボン酸類の具体例としては、ピロメリット酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3’,3,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンジカルボン酸、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル、ピリジンー2,3,5,6−テトラカルボン酸及びこれらのアミド形成性誘導体が挙げられる。ポリアミド酸の製造にあたってはこれらの酸無水物が好ましく使用される。
【0013】
上記の芳香族ジアミン類の具体例としては、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ベンチジン、パラキシリレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3’−ジメトキシベンチジン、1,4−ビス(3メチル−5アミノフェニル)ベンゼン及びこれらのアミド形成性誘導体が挙げられる。
【0014】
本発明で使用される有機溶媒の具体例としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなども有機極性アミド系溶媒が挙げられ、これらの有機溶媒は単独で、又は2つ又はそれ以上を組み合わせて使用しても、又はベンゼン、トルエン、キシレンのような非溶媒と組み合わせて使用してもよい。本発明で用いるポリアミド酸の有機溶媒溶液は固形分を5〜40重量%、好ましくは10〜30重量%を含有しており、またその粘度はブルックフィールド粘度計による測定値で10〜2000Pa・s、好ましくは、100〜1000Pa・sのものが安定した送液のために好ましい。また有機溶媒溶液中のポリアミド酸は部分的にイミド化されてもよく、少量の無機化合物を含有してもよい。
【0015】
本発明において芳香族テトラカルボン酸類と芳香族ジアミン類とはそれぞれのモル数が大略等しくなる割合で重合されるかその一方が10モル%、好ましくは5モル%の範囲内で他方に対して過剰に配合されてもよい。重合反応は有機溶媒中で攪拌そして/または混合しながら0〜80度の温度の範囲で10分〜30時間連続して進められるが、必要により重合反応を分割したり、温度を上下させてもかまわない。両反応体の添加順序には特に制限はないが、芳香族ジアミン類の溶液中に芳香族テトラカルボン酸類を添加するのが好ましい。重合反応中に真空脱泡することは良質なポリアミド酸の有機溶媒溶液を製造するのに有効な方法である。また重合反応の前に芳香族ジアミン類に少量の末端封止剤を添加して重合反応を制御することを行ってもよい。
【0016】
本発明で使用される閉環触媒の具体例としてはトリメチルアミン、トリエチレンジアミン等の脂肪族第3級アミン、及びイソキノリン、ピリジン、ベータピコリン等の複組環第3級アミンがあげられるが、複組環式第3級アミンから選ばれる少なくとも一種類のアミンを使用するのが好ましい。
【0017】
本発明で使用される脱水剤の具体例としては無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸等の脂肪族カルボン酸無水物、および無水安息香酸等の芳香族カルボン酸無水物があげられるが無水酢酸および/または無水安息香酸が好ましい。
【0018】
ポリアミド酸に対する閉環触媒及び脱水剤の含有量は次の数式を満たすことが好ましい。
【0019】
【数1】
またアセチルアセトン等のゲル化遅延剤を併用してもよい。
【0020】
ポリアミド酸の有機溶媒からポリイミドフィルムを製造する方法としては、閉環触媒及び脱水剤を含有せしめたポリアミド酸の有機溶媒をスリット付き口金から支持体上に流延してフィルム状に成形し、支持体上でイミド化を一部進行させて自己支持性を有するゲルフィルムとした後、支持体より剥離し、加熱乾燥/イミド化し、熱処理を行う化学閉環法が採用される。
【0022】
ただし、本発明のポリイミドフィルム製造方法においては、口金からポリアミド酸溶液を回転する支持体にフィルム状に連続して押出または塗布してキャストする工程に於いて、口金内のポリマー滞留時間を150秒以下とし、さらに口金での圧力損失を1000kPa以下に設定したうえで、口金冷媒温度を−25〜−10℃、ポリマーの温度を−20〜−10℃の範囲に制御することが必須の条件であり、これによりフィルム表面に発生する微細な突起状スジが改善されたフィルムの取得が可能になる。
【0023】
本発明では口金内のポリマー滞留時間を、150秒以下にすることが必要であるが、口金内部でイミド化反応が徐々に進行することによって突起状スジが発生していると考えられるため、出来るだけ反応を進行させずに口金から吐出させるのがよいことから、好ましくは100秒以下、さらに好ましくは80秒以下になるように口金を設計するとよい。また、圧力損失に伴う発熱が起きると口金内部で部分的にイミド化反応が進行しイソイミドのようなゲル状ポリマーが発生し欠点としてフィルムに発現してしまうため、製膜時の口金圧力損失は1000kPa以下であることが必要であり、好ましくは800kPa以下、さらに好ましくは500kPa以下として口金を設計するのがよい。
【0024】
本発明では口金冷媒温度を、−25〜−10℃に設定する必要があるが口金内でのイミド化反応進行を極力抑えるために好ましくは−25℃〜−15℃に設定するのがよい。冷却温度を−25℃より低く設定すると溶媒が凝固するおそれがあるので好ましくない。また、−10℃よりも高く設定すると口金内でのイミド化反応が進行するだけでなく、ゲル状ポリマーが発生して欠点となるので好ましくない。
【0025】
また、口金に入るポリマー温度は−20〜−10℃の範囲で管理する必要がある。これについても前述のとおり好ましくは−20〜−15℃の範囲で管理するのがよい。
【0026】
【実施例】
以下実施例により本発明を詳細に説明する。実施例中ODAは4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、PMDAはピロメリット酸二無水物、DMAcはN,N−ジメチルアセトアミドを表す。
【0027】
なお、本発明に於いて、ポリイミドフィルムの表面形状測定にはDigital Instruments社製の原子間力顕微鏡NanoScope IIを用いた。
実施例1
ODAに対し、PMDA99.3〜100mol%をDMAc溶液中にて反応させポリアミド酸溶液を得た。このポリアミド酸溶液にβ−ピコリン、無水酢酸を添加したのち−19℃まで冷却した。このポリマーを吐出時の口金滞留時間最大値を110秒、圧力損失を650kPaに設計した口金からドラム上へ流延して自己支持性のあるポリイミドゲルフィルムを得た。この際、口金冷媒温度は−20℃に設定し管理した。このゲルフィルムをドラム上からはがし、端部をピン止めした状態で長手方向(MD方向)と幅方向(TD方向)にそれぞれ延伸しながらテンター内で乾燥させ、フィルム幅2300mm、平均厚さ50μmのポリイミドフィルムを得た。得られたフィルムについて、長手方向に発生するスジで幅が35μm〜200μmかつ高さが0.1〜1.0μmの本数を測定したところ、18本/1000mmであった。また、このフィルムに、ポリエステル/エポキシ系の接着剤をロールコータで塗布して、160℃でドライヤーで乾燥した。このフィルムの該接着面を塗布した面に電解銅箔を130℃で加圧ラミネートし、24時間キュアーしてフレキシブル銅張りポリイミドシ−トを得た。接着剤のはじきは少なく、良好な歩留まりを得た。
実施例2
ODAに対し、PMDA99.3〜100mol%をDMAc溶液中にて反応させポリアミド酸溶液を得た。このポリアミド酸溶液にβ−ピコリン、無水酢酸を添加したのち−14℃まで冷却した。このポリマーを吐出時の口金滞留時間最大値を85秒、圧力損失を750kPaに設計した口金からドラム上へ流延して自己支持性のあるポリイミドゲルフィルムを得た。この際、口金冷媒温度は−12℃に設定し管理した。このゲルフィルムをドラム上からはがし、端部をピン止めした状態で長手方向(MD方向)と幅方向(TD方向)にそれぞれ延伸しながらテンター内で乾燥させ、フィルム幅2300mm、平均厚さ125μmのポリイミドフィルムを得た。得られたフィルムについて、長手方向に発生するスジで幅が35μm〜200μmかつ高さが0.1〜1.0μmの本数を測定したところ、36本/1000mmであった。また、このフィルムに、ポリエステル/エポキシ系の接着剤をロールコータで塗布して、160℃でドライヤーで乾燥した。このフィルムの該接着面を塗布した面に電解銅箔を130℃で加圧ラミネートし、24時間キュアーしてフレキシブル銅張りポリイミドシ−トを得た。接着剤のはじきは少なく、良好な歩留まりを得た。
比較例1
ODAに対し、PMDA99.3〜100mol%をDMAc溶液中にて反応させポリアミド酸溶液を得た。このポリアミド酸溶液にβ−ピコリン、無水酢酸を添加したのち−14℃まで冷却した。このポリマーを吐出時の口金滞留時間最大値を200秒、圧力損失を680kPaに設計した口金からドラム上へ流延して自己支持性のあるポリイミドゲルフィルムを得た。この際、口金冷媒温度は−20℃に設定し管理した。このゲルフィルムをドラム上からはがし、端部をピン止めした状態で長手方向(MD方向)と幅方向(TD方向)にそれぞれ延伸しながらテンター内で乾燥させ、フィルム幅1000mm、平均厚さ50μmのポリイミドフィルムを得た。得られたフィルムについて、長手方向に発生するスジで幅が35μm〜200μmかつ高さが0.1〜1.0μmの本数を測定したところ、46本/1000mmであった。また、このフィルムに、ポリエステル/エポキシ系の接着剤をロールコータで塗布して、160℃でドライヤーで乾燥した。このフィルムの該接着面を塗布した面に電解銅箔を130℃で加圧ラミネートし、24時間キュアーしてフレキシブル銅張りポリイミドシ−トを得た。接着剤のはじきは、多発して、歩留まりは悪かった。
比較例2
ODAに対し、PMDA99.3〜100mol%をDMAc溶液中にて反応させポリアミド酸溶液を得た。このポリアミド酸溶液にβ−ピコリン、無水酢酸を添加したのち−10℃まで冷却した。このポリマーを吐出時の口金滞留時間最大値を87秒、圧力損失を1250kPaに設計した口金からドラム上へ流延して自己支持性のあるポリイミドゲルフィルムを得た。この際、口金冷媒温度は−20℃に設定し管理した。このゲルフィルムをドラム上からはがし、端部をピン止めした状態で長手方向(MD方向)と幅方向(TD方向)にそれぞれ延伸しながらテンター内で乾燥させ、フィルム幅1000mm、平均厚さ50μmのポリイミドフィルムを得た。得られたフィルムについて、長手方向に発生するスジで幅が35μm〜200μmかつ高さが0.1〜1.0μmの本数を測定したところ、40本/1000mm未満ではあったがフィルムに無数のゲル欠点が発現してしまった。
比較例3
ODAに対し、PMDA99.3〜100mol%をDMAc溶液中にて反応させポリアミド酸溶液を得た。このポリアミド酸溶液にβ−ピコリン、無水酢酸を添加したのち−5℃まで冷却した。このポリマーを吐出時の口金滞留時間最大値を110秒、圧力損失を650kPaに設計した口金からドラム上へ流延して自己支持性のあるポリイミドゲルフィルムを得た。この際、口金冷媒温度は−5℃に設定し管理した。このゲルフィルムをドラム上からはがし、端部をピン止めした状態で長手方向(MD方向)と幅方向(TD方向)にそれぞれ延伸しながらテンター内で乾燥させ、フィルム幅1000mm、平均厚さ50μmのポリイミドフィルムを得た。得られたフィルムについて、長手方向に発生するスジで幅が35μm〜200μmかつ高さが0.1〜1.0μmの本数を測定したところ、40本/1000mm未満ではあったがフィルムに無数のゲル欠点が発現してしまった。
【0028】
【発明の効果】
本発明で得られるポリイミドフィルムはフィルム表面に発生する突起状スジが少なく、耐熱接着剤をフィルム表面に塗布する際の塗布ムラや、銅箔とラミネートする際のラミネートムラを招く確率がきわめて低く、完成した回路は電気特性に優れる。
Claims (1)
- 閉環触媒及び脱水剤を含有するポリアミド酸溶液を回転する支持体に口金からフィルム状に連続的に押し出すまたは塗布してキャストする工程に於いて、口金内ポリマーの滞留時間を150秒以下、同圧力損失を1000kPa以下とし、さらに口金冷媒温度を−25〜−10℃、ポリマーの温度を−20〜−10℃の範囲に制御することを特徴とするポリイミドフィルムの製造方法。
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