JP4286501B2 - 潤滑油組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は低硫黄の潤滑油組成物に関し、詳しくは摩耗防止性及びロングドレイン性に優れた、特に内燃機関用として好適な低硫黄の潤滑油組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の潤滑油、特に内燃機関用潤滑油には、摩耗防止性及び酸化防止性に極めて優れるジアルキルジチオリン酸亜鉛等の硫黄及びリン含有添加剤がほぼ必須の添加剤として使用されてきたが、近年の環境問題に対応して内燃機関に装着されている三元触媒や酸化触媒、NOx吸蔵還元触媒等の排ガス触媒、あるいはDPF(ディーゼルパティキュレートフィルタ)等の排ガス後処理装置への影響を緩和する必要に迫られ、さらなる潤滑油の低硫黄化、低リン化及び低灰化が強く要望され始めている。
【0003】
これまでに開示されている低リン油あるいは無リン油としては、例えば、特開昭62−253691号公報、特開平1−500912号公報、特開平6−41568号公報、特開昭63−304095号公報、特開昭63−304096号公報、特開昭52−704号公報、特開昭62−243692号公報、特開昭62−501917号公報、特開昭62−501572号公報、特開2000−63862号公報等に記載のものが挙げられ、低灰油としては、特開平8−48989号公報、特開平8−253782号公報、特開平9−111275号公報、特開2000−256690号公報等に記載のものが挙げられる。しかしながら、これら従来技術においては、ジチオリン酸亜鉛を低減した場合あるいは使用しない場合には、摩耗防止性を維持するために硫黄含有化合物を配合する必要があり、低灰油においては、ジチオリン酸亜鉛が必須となっている。従って、摩耗防止性に優れた低硫黄油、さらには低リン化、低灰化がなされた潤滑油はこれまでにあまり見出されていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、モノ又はジアルキルリン酸亜鉛、ジアルキルモノチオリン酸亜鉛あるいはリン酸トリエステル等のリン含有化合物を配合した低硫黄の潤滑油組成物が、ジチオリン酸亜鉛を単独で使用した場合に比べ、摩耗防止性を維持しつつ、低摩擦性、高温清浄性、酸化安定性、塩基価維持性等に極めて優れることを既に見出し、既に特許出願をしている(特願2002−015351号、特願2001−315941号、特願2002−086145、特願2002−086146号、特願2002−086147号、特願2002-191090号、特願2002−191091号、特願2002−191092号)。しかしながら、金属系清浄剤として金属比が5以下のサリシレート系清浄剤、特に金属比が3以下に調製されたサリシレート系清浄剤を使用した場合には、低摩擦性、高温清浄性、酸化安定性、塩基価維持性等に極めて優れる組成物を得ることができるものの、低硫黄化のためにジチオリン酸亜鉛等の硫黄及びリン含有摩耗防止剤の含有量を低減したり、硫黄を含有しないリン含有摩耗防止剤を使用した場合、内燃機関の動弁系摩耗、特にロッカーアームパッドのスカッフィング防止性能やカム摩耗防止性能が充分発揮されない恐れがあることがわかってきた。
本発明は、以上のような事情に鑑み、サリシレート系清浄剤を含有するロングドレイン型の低硫黄の潤滑油組成物において、摩耗防止性能にも極めて優れた潤滑油組成物を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、鋭意研究した結果、特定のサリシレート系清浄剤とリン含有摩耗防止剤を含有する低硫黄かつ低リンの潤滑油組成物が、上記課題を解決できることを見出し本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、潤滑油基油に、組成物全量基準で、(A)下記一般式(1)で表わされる化合物の構成比が10mol%以上であるアルカリ金属又はアルカリ土類金属サリシレート、及び/又はその(過)塩基性塩を金属元素換算量で0.005〜0.2質量%、及び(B)リン含有摩耗防止剤をリン元素換算量で0.005〜0.2質量%含有してなり、かつ組成物の全硫黄含有量が0.3質量%以下であることを特徴とする潤滑油組成物にある。
【化4】
(一般式(1)において、R 1 及びR 2 が同一であり、炭素数10〜40の第2級アルキル基であり、Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属、nは金属の価数により1又は2を示す。)
【0006】
前記(B)成分が、下記一般式(2)で表されるリン化合物、下記一般式(3)で表されるリン化合物、及びそれらの金属塩又はアミン塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
【化5】
(一般式(2)において、X1、X2及びX3は、それぞれ個別に酸素原子又は硫黄原子を示し、R3、R4及びR5は、それぞれ個別に水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示す。)
【化6】
(一般式(3)において、X4、X5、X6及びX7は、それぞれ個別に酸素原子又は硫黄原子を示し、R6、R7及びR8は、それぞれ個別に水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示す。)
【0007】
前記(B)成分が、前記一般式(2)におけるX1、X2及びX3が全て酸素原子であるリン化合物の金属塩及び前記一般式(3)におけるX4、X5、X6及びX7が全て酸素原子であるリン化合物の金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
前記(B)成分が、前記一般式(3)におけるX4、X5、X6及びX7の全てが酸素原子であり、R6、R7及びR8がそれぞれ個別に炭素数1〜30の炭化水素基であるリン化合物であることが好ましい。
前記(B)成分が、前記一般式(3)におけるX4、X5、X6及びX7の2つが酸素原子であり、R6、R7及びR8がそれぞれ個別に炭素数1〜30の炭化水素基であるリン化合物の亜鉛塩であることが好ましい。
【0008】
前記(B)成分の含有量が組成物全量基準で、リン元素換算量で0.08質量%以下であることが好ましい。
本発明の潤滑油組成物は、(C)無灰分散剤及び(D)酸化防止剤から選ばれる少なくとも1種を含有していることが好ましい。
潤滑油基油の全硫黄分が0.05質量%以下であることが好ましい。
本発明の潤滑油組成物は、内燃機関用であることが好ましい。
本発明の潤滑油組成物は、組成物の硫酸灰分が1.0質量%以下であることが好ましい。
本発明の潤滑油組成物は、組成物の硫酸灰分が0.5質量%以下、全硫黄分が0.05質量%以下及びリン含有量が0.05質量%以下から選ばれるいずれか1つ以上の要件を満たすことが好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の潤滑油組成物について詳述する。
本発明の潤滑油組成物における潤滑油基油としては、特に制限はなく、通常の潤滑油に使用される鉱油系基油、合成系基油が使用できる。
鉱油系基油としては、具体的には、原油を常圧蒸留して得られる常圧残油を減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、水素化精製等の処理を1つ以上行って精製したもの、あるいはワックス異性化鉱油、GTL WAX(ガストゥリキッドワックス)を異性化する手法で製造される基油等が例示できる。
【0010】
鉱油系基油中の硫黄分は、組成物における全硫黄含有量が0.3質量%以下となる限りにおいて特に制限はないが、0.05質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以下であることがさらに好ましく、0.005質量%以下であることが特に好ましい。鉱油系基油の硫黄分を低減することで、よりロングドレイン性に優れ、内燃機関用潤滑油として使用した場合には、排ガス後処理装置への悪影響を極力回避可能な低硫黄の潤滑油組成物を得ることができる。
また、鉱油系基油の全芳香族含有量は、特に制限はないが、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは6質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下、特に好ましくは2質量%以下である。基油の全芳香族含有量を10質量%以下とすることでより酸化安定性に優れる組成物を得ることができる。
なお、上記全芳香族含有量とは、ASTM D2549に準拠して測定した芳香族留分(aromatic fraction)含有量を意味する。通常この芳香族留分には、アルキルベンゼン、アルキルナフタレンの他、アントラセン、フェナントレン、及びこれらのアルキル化物、ベンゼン環が四環以上縮合した化合物、又はピリジン類、キノリン類、フェノール類、ナフトール類等のヘテロ芳香族を有する化合物等が含まれる。
【0011】
合成系基油としては、具体的には、ポリブテン又はその水素化物;1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー等のポリ−α−オレフィン又はその水素化物;ジトリデシルグルタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、及びジ−2−エチルヘキシルセバケート等のジエステル;ネオペンチルグリコールエステル、トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール−2−エチルヘキサノエート、及びペンタエリスリトールペラルゴネート等のポリオールエステル;アルキルナフタレン、アルキルベンゼン、及び芳香族エステル等の芳香族系合成油又はこれらの混合物等が例示できる。
【0012】
本発明における潤滑油基油としては、上記鉱油系基油、上記合成系基油又はこれらの中から選ばれる2種以上の任意混合物等が使用できる。例えば、1種以上の鉱油系基油、1種以上の合成系基油、1種以上の鉱油系基油と1種以上の合成系基油との混合油等を挙げることができる。
【0013】
本発明において用いる潤滑油基油の動粘度は特に制限はないが、その100℃での動粘度は、20mm2/s以下であることが好ましく、より好ましくは10mm2/s以下である。一方、その動粘度は、1mm2/s以上であることが好ましく、より好ましくは2mm2/s以上である。潤滑油基油の100℃での動粘度が20mm2/sを越える場合は、低温粘度特性が悪化し、一方、その動粘度が1mm2/s未満の場合は、潤滑箇所での油膜形成が不十分であるため潤滑性に劣り、また潤滑油基油の蒸発損失が大きくなるため、それぞれ好ましくない。
【0014】
潤滑油基油の蒸発損失量としては、NOACK蒸発量で、20質量%以下であることが好ましく、16質量%以下であることがさらに好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。潤滑油基油のNOACK蒸発量が20質量%を超える場合、潤滑油の蒸発損失が大きいだけでなく、内燃機関用潤滑油として使用した場合、組成物中の硫黄化合物やリン化合物、あるいは金属分が潤滑油基油とともに排ガス浄化装置へ堆積する恐れがあり、排ガス浄化性能への悪影響が懸念されるため好ましくない。なお、ここでいうNOACK蒸発量とは、CEC L−40−T−87に準拠して、潤滑油試料60gを250℃、−20mmH2Oの減圧下にて1時間保持した後の蒸発量を測定したものである。
【0015】
潤滑油基油の粘度指数は特に制限はないが、低温から高温まで優れた粘度特性が得られるようにその値は、80以上であることが好ましく、更に好ましくは100以上であり、更に好ましくは120以上である。その粘度指数が80未満である場合、低温粘度特性が悪化するため好ましくない。
【0016】
本発明の潤滑油組成物における(A)成分は、下記一般式(1)で表わされる化合物の構成比が10mol%以上であるアルカリ金属又はアルカリ土類金属サリシレート、及び/又はその(過)塩基性塩である。
【化7】
【0017】
一般式(1)において、R1、R2は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数10〜40のアルキル基又はアルケニル基であり、Mはナトリウム、カリウム、マグネシウム、バリウム、カルシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属示し、特にマグネシウム及び/又はカルシウムが好ましく用いられる。また、nは金属の価数により1又は2を示す。
【0018】
上記炭素数10〜40のアルキル基又はアルケニル基としては、具体的には、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基、及びトリアコンチル基等の炭素数10〜40のアルキル基(これらは直鎖状であっても分枝状であっても良い)、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基等の炭素数10〜40のアルケニル基(これらアルケニル基は直鎖状でも分枝状でもよく、また二重結合の位置も任意である)を挙げることができる。
【0019】
本発明においては、R1又はR2が炭素数10〜40の第2級アルキル基であることが好ましく、より好ましくは炭素数10〜20未満又は20〜30の第2級アルキル基、酸化防止性能への水分の影響を受けにくい点で炭素数14〜18の第2級アルキル基であることが特に好ましく、R1及びR2が同一であることが望ましい。
なお、上記第2級アルキル基としては、具体的には、エチレン、プロピレン、ブチレン等の重合体又は共重合体等から誘導される炭素数10〜40の第2級アルキル基であることが好ましい。
【0020】
本発明の(A)成分は、現在市販されていないため入手性は良くないが、例えば、特公昭48−35325号公報、特公昭50−3082号公報等に開示されている公知の方法等を用いて得ることができる。3,5−ジアルキルサリチル酸の構成比が10mol%以上、好ましくは15mol%以上、より好ましくは20mol%以上、さらに好ましくは40mol%以上、特に100mol%の3,5−ジアルキルサリチル酸をアルカリ金属又はアルカリ土類金属の酸化物や水酸化物等の金属塩基と反応させたり、又はナトリウム塩やカリウム塩等のアルカリ金属塩としたり、さらにアルカリ金属塩をアルカリ土類金属塩と置換させること等により得られる。
【0021】
なお、上記3,5−ジアルキルサリチル酸の製造法としては、特に制限はないが、具体的には、フェノールを出発原料として、炭素数10〜40、好ましくは炭素数10〜20未満又は炭素数20〜30のオレフィンを用い、例えば、フェノール1モルに対し1.1〜4モル、好ましくは2〜4モル、特に好ましくは2〜3モルの当該オレフィンを使用してアルキレーションし、炭酸ガス等を用いてカルボキシレーションする方法や、サリチル酸1モルに上記オレフィンを1.1〜4モル、好ましくは2〜4モル、特に好ましくは2〜3モル使用してアルキレーションする方法等により得られる。
なお、モノアルキルサリシレートを主成分とする市販の中性サリシレートに副生物として少量(通常10mol%未満)含まれる3,5−ジアルキルサリシレートを、選択的に単離又は濃縮して、その構成比を高めたりする方法等により得ることもできる。
【0022】
本発明の(A)成分は、上記のようにして得られたアルカリ金属又はアルカリ土類金サリシレート(中性塩)に、さらに過剰のアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩やアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩基(アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物や酸化物)を水の存在下で加熱することにより得られる塩基性塩や、炭酸ガス又はホウ酸若しくはホウ酸塩の存在下で上記中性塩をアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物等の塩基と反応させることにより得られる過塩基性塩も含まれる。
なお、これらの反応は、通常、溶媒(ヘキサン等の脂肪族炭化水素溶剤、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤、軽質潤滑油基油等)中で行われ、その金属含有量が1.0〜20質量%、好ましくは2.0〜16質量%のものを用いるのが望ましい。
【0023】
本発明において、(A)成分の全塩基価は、通常0〜500mgKOH/g、好ましくは20〜450mgKOH/gであり、これらの中から選ばれる1種又は2種以上併用することができる。なお、ここでいう全塩基価とは、JIS K2501「石油製品及び潤滑油−中和価試験法」の7.に準拠して測定される過塩素酸法による全塩基価を意味する。
【0024】
また、本発明の(A)成分としては、その金属比に特に制限はなく、通常20以下のものを1種又は2種以上混合して使用できるが、金属比が5以下、さらには3以下、より好ましくは2.3以下、特に1.5以下に調製されてなるサリシレートである場合、酸化安定性や高温清浄性、低摩擦性等により優れるため特に好ましい。なお、金属比が5以下であり、炭素数20未満のアルキル基を有するモノアルキルサリシレートを内燃機関用潤滑油の動弁系に使用した場合には、特にロッカーアームパッドのスカッフィング防止性やカム摩耗防止性が十分発揮されない恐れがあるため、金属比が上記のような(A)成分は極めて有用である。なお、ここでいう金属比とは、サリシレート系清浄剤における金属元素の価数×金属元素含有量(mol%)/せっけん基含有量(mol%)で表され、金属元素とは、カルシウム、マグネシウム等、せっけん基とはサリチル酸基等を意味する。
【0025】
本発明において、(A)成分の含有量の上限値は、金属元素換算量で0.4質量%以下であり、組成物の硫酸灰分を1.0質量%以下に低減するためには、(A)成分の含有量を0.3質量%以下とするのが好ましい。また、内燃機関用潤滑油として使用する場合、排ガス後処理装置への悪影響を極力回避するために、(A)成分の含有量を0.2質量%以下、好ましくは0.15質量%、さらに好ましくは0.10質量%以下とすることが最も望ましく、硫酸灰分が0.5質量%以下の低灰型の潤滑油組成物を得ることも可能となる。また、(A)成分の含有量の下限値は、0.005質量%以上であり、好ましくは0.01質量%以上であり、さらに好ましくは0.02質量%以上、特に好ましくは0.05質量%以上である。(A)成分の含有量が上記上限値を超える場合、組成物の硫酸灰分が高くなり、内燃機関用潤滑油として使用する場合、排ガス後処理装置への悪影響が懸念されるため好ましくない。また、(A)成分の含有量が上記下限値未満である場合、金属系清浄剤としての基本性能が発揮されず、高温清浄性や酸化安定性、塩基価維持性などのロングドレイン性能が得にくくなるため好ましくない。なお、ここでいう硫酸灰分とは、JIS K2272の5.「硫酸灰分の試験方法」に規定される方法により測定される値を示し、主として金属含有添加剤に起因するものである。
【0026】
本発明における(B)成分はリン含有摩耗防止剤であり、リンを分子中に含有する摩耗防止剤であれば特に制限はない。
本発明におけるリン含有摩耗防止剤としては、一般式(2)で表されるリン化合物、一般式(3)で表されるリン化合物、及びそれらの金属塩又はアミン塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
【0027】
【化8】
一般式(2)において、X1、X2及びX3は、それぞれ個別に酸素原子又は硫黄原子を示し、R3、R4及びR5は、それぞれ個別に水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示す。
【0028】
【化9】
一般式(3)において、X4、X5、X6及びX7は、それぞれ個別に酸素原子又は硫黄原子を示し、R6、R7及びR8は、それぞれ個別に水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示す。
【0029】
上記R3〜R8で表される炭素数1〜30の炭化水素基としては、具体的には、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキル置換シクロアルキル基、アリール基、アルキル置換アリール基、及びアリールアルキル基を挙げることができる。
【0030】
上記アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等のアルキル基(これらアルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい)を挙げることができる。
上記シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の炭素数5〜7のシクロアルキル基を挙げることができる。また上記アルキルシクロアルキル基としては、例えば、メチルシクロペンチル基、ジメチルシクロペンチル基、メチルエチルシクロペンチル基、ジエチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、メチルエチルシクロヘキシル基、ジエチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘプチル基、ジメチルシクロヘプチル基、メチルエチルシクロヘプチル基、ジエチルシクロヘプチル基等の炭素数6〜11のアルキルシクロアルキル基(アルキル基のシクロアルキル基への置換位置も任意である)を挙げることができる。
【0031】
上記アルケニル基としては、例えば、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基等のアルケニル基(これらアルケニル基は直鎖状でも分枝状でもよく、また二重結合の位置も任意である)を挙げることができる。
【0032】
上記アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等のアリール基を挙げることができる。また上記アルキルアリール基としては、例えば、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基、ドデシルフェニル基等の炭素数7〜18のアルキルアリール基(アルキル基は直鎖状でも分枝状でもよく、またアリール基への置換位置も任意である)を挙げることができる。
上記アリールアルキル基としては、例えばベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基等の炭素数7〜12のアリールアルキル基(これらアルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい)を挙げることができる。
【0033】
上記R3〜R8で表される炭素数1〜30の炭化水素基は、炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数6〜24のアリール基であることが好ましく、更に好ましくは炭素数3〜18、更に好ましくは炭素数4〜12のアルキル基である。
【0034】
一般式(2)で表されるリン化合物としては、例えば、以下のリン化合物を挙げることができる。
亜リン酸、モノチオ亜リン酸、ジチオ亜リン酸、トリチオ亜リン酸;上記炭素数1〜30の炭化水素基を1つ有する亜リン酸モノエステル、モノチオ亜リン酸モノエステル、ジチオ亜リン酸モノエステル、トリチオ亜リン酸モノエステル;上記炭素数1〜30の炭化水素基を2つ有する亜リン酸ジエステル、モノチオ亜リン酸ジエステル、ジチオ亜リン酸ジエステル、トリチオ亜リン酸ジエステル;上記炭素数1〜30の炭化水素基を3つ有する亜リン酸トリエステル、モノチオ亜リン酸トリエステル、ジチオ亜リン酸トリエステル、トリチオ亜リン酸トリエステル;及びこれらの混合物。
本発明においては、高温清浄性や酸化安定性、塩基価維持性などのロングドレイン性能をより高めるために、一般式(2)のX1〜X3は、2つ以上が酸素原子であることが好ましく、それらの全てが酸素原子であることが特に好ましい。
【0035】
一般式(3)で表されるリン化合物としては、例えば、以下のリン化合物を挙げることができる。
リン酸、モノチオリン酸、ジチオリン酸、トリチオリン酸、テトラチオリン酸;上記炭素数1〜30の炭化水素基を1つ有するリン酸モノエステル、モノチオリン酸モノエステル、ジチオリン酸モノエステル、トリチオリン酸モノエステル、テトラチオリン酸モノエステル;上記炭素数1〜30の炭化水素基を2つ有するリン酸ジエステル、モノチオリン酸ジエステル、ジチオリン酸ジエステル、トリチオリン酸ジエステル、テトラチオリン酸ジエステル;上記炭素数1〜30の炭化水素基を3つ有するリン酸トリエステル、モノチオリン酸トリエステル、ジチオリン酸トリエステル、トリチオリン酸トリエステル、テトラチオリン酸トリエステル;及びこれらの混合物。
本発明においては、高温清浄性や酸化安定性、塩基価維持性などのロングドレイン性能をより高めるために、一般式(3)のX4〜X7は、2つ以上が酸素原子であることが好ましく、3つ以上が酸素原子であることがさらに好ましく、それらの全てが酸素原子であることが特に好ましい。
【0036】
一般式(2)又は(3)で表されるリン化合物の塩としては、リン化合物に金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、金属塩化物等の金属塩基、アンモニア、炭素数1〜30の炭化水素基又はヒドロキシル基含有炭化水素基のみを分子中に有するアミン化合物等の窒素化合物を作用させて、残存する酸性水素の一部又は全部を中和した塩を挙げることができる。
【0037】
上記金属塩基における金属としては、具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム、バリウム等のアルカリ土類金属、亜鉛、銅、鉄、鉛、ニッケル、銀、マンガン、モリブデン等の重金属等が挙げられる。これらの中ではカルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属及び亜鉛が好ましい。
【0038】
上記リン化合物の金属塩は、金属の価数やリン化合物のOH基あるいはSH基の数に応じその構造が異なり、従ってその構造については何ら限定されないが、例えば、酸化亜鉛1molとリン酸ジエステル(OH基が1つ)2molを反応させた場合、下記式で表わされる構造の化合物が主成分として得られると考えられるが、ポリマー化した分子も存在していると考えられる。
【0039】
【化10】
【0040】
また、例えば、酸化亜鉛1molとリン酸モノエステル(OH基が2つ)1molとを反応させた場合、下記式で表わされる構造の化合物が主成分として得られると考えられるが、ポリマー化した分子も存在していると考えられる。
【0041】
【化11】
【0042】
上記窒素化合物としては、具体的には、アンモニア、モノアミン、ジアミン、ポリアミンが挙げられる。より具体的には、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、ジウンデシルアミン、ジドデシルアミン、ジトリデシルアミン、ジテトラデシルアミン、ジペンタデシルアミン、ジヘキサデシルアミン、ジヘプタデシルアミン、ジオクタデシルアミン、メチルエチルアミン、メチルプロピルアミン、メチルブチルアミン、エチルプロピルアミン、エチルブチルアミン、及びプロピルブチルアミン等の炭素数1〜30のアルキル基(これらのアルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい)を有するアルキルアミン;
【0043】
エテニルアミン、プロペニルアミン、ブテニルアミン、オクテニルアミン、及びオレイルアミン等の炭素数2〜30のアルケニル基(これらのアルケニル基は直鎖状でも分枝状でもよい)を有するアルケニルアミン;メタノールアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、ブタノールアミン、ペンタノールアミン、ヘキサノールアミン、ヘプタノールアミン、オクタノールアミン、ノナノールアミン、メタノールエタノールアミン、メタノールプロパノールアミン、メタノールブタノールアミン、エタノールプロパノールアミン、エタノールブタノールアミン、及びプロパノールブタノールアミン等の炭素数1〜30のアルカノール基(これらのアルカノール基は直鎖状でも分枝状でもよい)を有するアルカノールアミン;
【0044】
メチレンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、及びブチレンジアミン等の炭素数1〜30のアルキレン基を有するアルキレンジアミン;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン等のポリアミン;ウンデシルジエチルアミン、ウンデシルジエタノールアミン、ドデシルジプロパノールアミン、オレイルジエタノールアミン、オレイルプロピレンジアミン、ステアリルテトラエチレンペンタミン等の上記モノアミン、ジアミン、ポリアミンに炭素数8〜20のアルキル基又はアルケニル基を有する化合物やN−ヒドロキシエチルオレイルイミダゾリン等の複素環化合物;これらの化合物のアルキレンオキシド付加物;及びこれらの混合物等が例示できる。
これら窒素化合物の中でもデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン、オレイルアミン及びステアリルアミン等の炭素数10〜20のアルキル基又はアルケニル基を有する脂肪族アミン(これらは直鎖状でも分枝状でもよい)が好ましい例として挙げることができる。
【0045】
(B)成分としては、一般式(2)におけるX1、X2及びX3が全て酸素原子であるリン化合物の金属塩及び一般式(3)におけるX4、X5、X6及びX7が全て酸素原子であるリン化合物の金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることが、酸化安定性、高温清浄性等のロングドレイン性、低摩擦性等に優れる点で好ましい。
また、(B)成分が、一般式(3)におけるX4、X5、X6及びX7の全てが酸素原子であり、R6、R7及びR8がそれぞれ個別に炭素数1〜30の炭化水素基であるリン化合物であることが、酸化安定性、高温清浄性等のロングドレイン性に優れ、さらなる低摩擦性、さらなる低灰化が可能となる点で好ましい。
さらに、(B)成分が、一般式(3)におけるX4、X5、X6及びX7の2つが酸素原子であり、R6、R7及びR8がそれぞれ個別に炭素数1〜30の炭化水素基であるリン化合物の亜鉛塩であることが、摩耗防止性により優れ、さらなる低リン化が可能となる点で好ましい。
これらは前述の本発明者による一連の特許出願内容を参照すれば明らかである。
【0046】
これらの(B)成分の中では、炭素数3〜18のアルキル基又はアリール基を2個有する亜リン酸ジエステルと亜鉛又はカルシウムとの塩、炭素数3〜18のアルキル基又はアリール基、好ましくは炭素数6〜12のアルキル基を3個有する亜リン酸トリエステル、炭素数3〜18のアルキル基又はアリール基を1個有するリン酸のモノエステルと亜鉛又はカルシウムとの塩、炭素数3〜18のアルキル基又はアリール基を2個有するリン酸のジエステルと亜鉛又はカルシウムとの塩、あるいは炭素数3〜18のアルキル基又はアリール基、好ましくは炭素数6〜12のアルキル基を3個有するリン酸トリエステルであることが好ましい。
これらの(B)成分は、1種類あるいは2種類以上を任意に配合することができる。
【0047】
なお、炭素数3〜18のアルキル基又はアリール基を2個有するジチオリン酸のジエステルと亜鉛との塩を使用する場合は、内燃機関の動弁系の摩耗防止性を維持しやすいため、さらにその含有量を低減し、組成物全量基準で、リン元素換算量で0.08質量%以下、さらには0.05質量%以下とすることが可能であるが、酸化安定性や高温清浄性、低摩擦性等の諸性能をより高めることができる点で、硫黄を分子中に含有しないリン含有摩耗防止剤を使用することが最も好ましい。
【0048】
本発明の潤滑油組成物において(B)成分の含有量は、組成物全量基準でリン元素換算量として0.005質量%以上であり、好ましくは0.01質量%以上、特に好ましくは0.02質量%以上であり、一方、その含有量は、0.2質量%以下であり、好ましくは0.1質量%以下、さらに好ましくは0.08質量%以下である。(B)成分の含有量が、リン元素として0.005質量%未満の場合は、摩耗防止性に対して効果がなく好ましくない。一方、(B)成分の含有量が、リン元素として0.2質量%を超える場合では、排ガス後処理装置への悪影響が懸念されるため好ましくない。
【0049】
本発明の潤滑油組成物は、上記構成とすることで優れた摩耗防止性を有し、さらに低摩擦性、高温清浄性や塩基価維持性、酸化安定性などのロングドレイン性能をも発揮し得るが、さらに潤滑油組成物の性能を向上させるために、(C)無灰分散剤及び(D)酸化防止剤から選ばれる少なくとも1種を含有させることができる。
【0050】
(C)無灰分散剤としては、潤滑油に用いられる任意の無灰分散剤を用いることができるが、例えば、炭素数40〜400の直鎖若しくは分枝状のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有する含窒素化合物又はその誘導体、あるいはアルケニルコハク酸イミドの変性品等が挙げられる。これらの中から任意に選ばれる1種類あるいは2種類以上を配合することができる。
このアルキル基又はアルケニル基の炭素数は40〜400、好ましくは60〜350である。アルキル基又はアルケニル基の炭素数が40未満の場合は化合物の潤滑油基油に対する溶解性が低下し、一方、アルキル基又はアルケニル基の炭素数が400を越える場合は、潤滑油組成物の低温流動性が悪化するため、それぞれ好ましくない。このアルキル基又はアルケニル基は、直鎖状でも分枝状でもよいが、好ましいものとしては、具体的には、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン等のオレフィンのオリゴマーやエチレンとプロピレンのコオリゴマーから誘導される分枝状アルキル基や分枝状アルケニル基等が挙げられる。
【0051】
(C)成分の具体的としては、例えば、下記の化合物が挙げられる。これらのの中から選ばれる1種又は2種以上の化合物を用いることができる。
(C−1)炭素数40〜400のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するコハク酸イミド、あるいはその誘導体
(C−2)炭素数40〜400のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するベンジルアミン、あるいはその誘導体
(C−3)炭素数40〜400のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するポリアミン、あるいはその誘導体
【0052】
上記(C−1)コハク酸イミドとしては、より具体的には、下記の一般式(4)及び一般式(5)で示される化合物等が例示できる。
【0053】
【化12】
【0054】
一般式(4)において、R20は炭素数40〜400、好ましくは60〜350のアルキル基又はアルケニル基を示し、hは1〜5、好ましくは2〜4の整数を示す。
【0055】
【化13】
【0056】
一般式(5)において、R21及びR22は、それぞれ個別に炭素数40〜400、好ましくは60〜350のアルキル基又はアルケニル基を示し、ポリブテニル基であることが好ましい。iは0〜4、好ましくは1〜3の整数を示す。
なお、コハク酸イミドには、ポリアミンの一端に無水コハク酸が付加した一般式(4)で表される、いわゆるモノタイプのコハク酸イミドと、ポリアミンの両端に無水コハク酸が付加した一般式(5)で表される、いわゆるビスタイプのコハク酸イミドとが含まれるが、本発明の組成物には、それらのいずれでも、あるいはこれらの混合物が含まれていても良い。
【0057】
これらのコハク酸イミドの製法は特に制限はないが、例えば炭素数40〜400のアルキル基又はアルケニル基を有する化合物を無水マレイン酸と100〜200℃で反応させて得たアルキル又はアルケニルコハク酸をポリアミンと反応させることにより得ることができる。ポリアミンとしては、具体的には、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、及びペンタエチレンヘキサミン等が例示できる。
【0058】
上記(C−2)ベンジルアミンとしては、より具体的には、下記の一般式(6)で表される化合物等が例示できる。
【0059】
【化14】
【0060】
一般式(6)において、R23は、炭素数40〜400、好ましくは60〜350のアルキル基又はアルケニル基を示し、jは1〜5、好ましくは2〜4の整数を示す。
このベンジルアミンの製造方法は何ら限定されるものではないが、例えば、プロピレンオリゴマー、ポリブテン、及びエチレン−α−オレフィン共重合体等のポリオレフィンをフェノールと反応させてアルキルフェノールとした後、これにホルムアルデヒドとジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、及びペンタエチレンヘキサミン等のポリアミンをマンニッヒ反応により反応させることにより得ることができる。
【0061】
上記(C−3)ポリアミンとしては、より具体的には、下記の一般式(7)で表される化合物等が例示できる。
R24−NH−(CH2CH2NH)k−H (7)
一般式(7)において、R24は、炭素数40〜400、好ましくは60〜350のアルキル基又はアルケニル基を示し、kは1〜5、好ましくは2〜4の整数を示す。
このポリアミンの製造法は何ら限定されるものではないが、例えば、プロピレンオリゴマー、ポリブテン、及びエチレン−α−オレフィン共重合体等のポリオレフィンを塩素化した後、これにアンモニアやエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、及びペンタエチレンヘキサミン等のポリアミンを反応させることにより得ることができる。
【0062】
また、(C)成分の1例として挙げた含窒素化合物の誘導体としては、例えば、前述の含窒素化合物に炭素数1〜30のモノカルボン酸(脂肪酸等)やシュウ酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の炭素数2〜30のポリカルボン酸、ヒドロキシ(ポリ)アルキレンカーボネート等を作用させて、残存するアミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部を中和したり、アミド化した、いわゆる酸変性化合物;前述の含窒素化合物にホウ酸を作用させて、残存するアミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部を中和したり、アミド化した、いわゆるホウ素変性化合物;前述の含窒素化合物にリン酸を作用させて、残存するアミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部を中和したり、アミド化した、いわゆるリン酸変性化合物;前述の含窒素化合物に硫黄化合物を作用させた硫黄変性化合物;及び前述の含窒素化合物に酸変性、ホウ素変性、リン酸変性、硫黄変性から選ばれた2種以上の変性を組み合わせた変性化合物;等が挙げられる。これらの誘導体の中でもアルケニルコハク酸イミドのホウ酸変性化合物は耐熱性、酸化防止性に優れ、本発明の潤滑油組成物においても塩基価維持性及び高温清浄性をより高めるために有効である。
【0063】
本発明の潤滑油組成物において(C)成分を含有させる場合、その含有量は、通常潤滑油組成物全量基準で、0.01〜20質量%であり、好ましくは0.1〜10質量%である。(C)成分の含有量が0.01質量%未満の場合は、高温清浄性に対する効果が少なく、一方、20質量%を越える場合は、潤滑油組成物の低温流動性が大幅に悪化するため、それぞれ好ましくない。
【0064】
酸化防止剤(D)としては、フェノール系酸化防止剤やアミン系酸化防止剤、金属系酸化防止剤等の潤滑油に一般的に使用されているものであれば使用可能である。酸化防止剤の添加により、潤滑油組成物の酸化防止性をより高められるため、本発明の組成物の塩基価維持性及び高温清浄性をより高めることができる。
【0065】
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、2,2’−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−4(N,N’−ジメチルアミノメチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルベンジル)スルフィド、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、2,2’−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル置換脂肪酸エステル類等を好ましい例として挙げることができる。これらは二種以上を混合して使用してもよい。
【0066】
アミン系酸化防止剤としては、例えば、フェニル−α−ナフチルアミン、アルキルフェニル−α−ナフチルアミン、及びジアルキルジフェニルアミンを挙げることができる。これらは二種以上を混合して使用してもよい。
上記フェノール系酸化防止剤とアミン系酸化防止剤は組み合せて配合しても良い。
【0067】
本発明の潤滑油組成物において(D)成分を含有させる場合、その含有量は、通常潤滑油組成物全量基準で5質量%以下であり、好ましくは3質量%以下であり、さらに好ましくは2.5質量%以下である。その含有量が5質量%を超える場合は、配合量に見合った十分な酸化防止性が得られないため好ましくない。一方、その含有量は、潤滑油劣化過程における高温清浄性や酸化安定性、塩基価維持性などのロングドレイン性能をより高めるためには潤滑油組成物全量基準で好ましくは0.1質量%以上であり、好ましくは1質量%以上である。
【0068】
なお、本発明の(B)成分のうち、潤滑油へ溶解しない、あるいは溶解性が低い化合物、例えば常温で固体であるジアルキルリン酸亜鉛等を使用する場合、(B)成分の溶解性や潤滑油組成物の製造時間の短縮の点から、アミン化合物、例えば(C)成分や、(D)成分のうちのアミン系酸化防止剤あるいはこれらの混合物と(B)成分とを、ヘキサン、トルエン、デカリン等の有機溶媒中で15〜150℃、好ましくは30〜120℃、特に好ましくは40〜90℃で10分〜5時間、好ましくは20分〜3時間、特に好ましくは30分〜1時間混合して溶解又は反応させ、減圧蒸留等で溶媒を留去して得られた油溶性添加剤として潤滑油組成物に配合することが特に好ましい(特願2002−191089号参照)。
【0069】
本発明の潤滑油組成物は、その性能をさらに向上させるために、その目的に応じて潤滑油に一般的に使用されている任意の添加剤を添加することができる。このような添加剤としては、例えば、(A)成分以外の金属系清浄剤、(B)成分以外の摩耗防止剤、摩擦調整剤、粘度指数向上剤、腐食防止剤、防錆剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、消泡剤、及び着色剤等の添加剤等を挙げることができる。
【0070】
(A)成分以外の金属系清浄剤としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属スルホネート、アルカリ金属又はアルカリ土類金属フェネートの他、(A)成分以外のアルカリ金属又はアルカリ土類金属サリシレート、すなわち、炭素数10〜40の炭化水素基と炭素数1〜10未満の炭化水素基を有するアルカリ金属又はアルカリ土類金属サリシレート、炭素数10〜40の炭化水素基を1つ有するアルカリ金属又はアルカリ土類金属サリシレート等が挙げられる。これら(A)成分以外の金属系清浄剤は通常、組成物全量基準で、金属元素換算量で0.005〜0.4質量%であるが、(A)成分との合計量で、0.4質量%以下とすることが好ましい。
なお、(A)成分以外のアルカリ金属又はアルカリ土類金属サリシレートを併用する場合、(A)成分も含め、少なくとも3位に置換基を有するサリシレートの構成比を合計で65mol%以上とすることが好ましく、70mol%以上とすることがより好ましく、80mol%以上とすることが特に好ましい。
【0071】
(B)成分以外の摩耗防止剤としては、例えば、ジスルフィド類、硫化オレフィン類、硫化油脂類、ジチオカルバミン酸亜鉛等の硫黄含有化合物等が挙げられる。これらは組成物の全硫黄含有量が0.3質量%以下となる限りにおいて、0.005〜5質量%の範囲で本発明の組成物に含有させることが可能であるが、低硫黄化及びロングドレイン性の点から配合しないことが好ましい。
【0072】
摩擦調整剤としては、潤滑油用の摩擦調整剤として通常用いられる任意の化合物が使用可能であり、例えば、ジチオカルバミン酸モリブデン、ジチオリン酸モリブデン、モリブデンアミン錯体、モリブデン−コハク酸イミド錯体、二硫化モリブデン等のモリブデン系摩擦調整剤、炭素数6〜30のアルキル基又はアルケニル基、特に炭素数6〜30の直鎖アルキル基又は直鎖アルケニル基を分子中に少なくとも1個有する、アミン化合物、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪族エーテル等の無灰摩擦調整剤等が挙げられ、通常0.1〜5質量%の範囲で含有させることが可能であるが、硫黄含有モリブデン錯体の場合、組成物の全硫黄含有量が0.3質量%以下となる範囲内で含有させることができる。また、無灰摩擦調整剤の中では、オレイン酸アミド等の脂肪酸アミドを使用することで摩耗防止性をより高めることができ、グリセリンモノオレートやソルビタンモノオレート等の脂肪酸エステルを使用することで摩擦低減効果をより高めることが可能となるので、本発明の実施例に示す組成物と同等以上に低硫黄化、低リン化あるいは低灰化された組成物を得ることが可能となるため、特に好ましい。
【0073】
粘度指数向上剤としては、具体的には、各種メタクリル酸エステルから選ばれる1種又は2種以上のモノマーの重合体又は共重合体若しくはその水添物などのいわゆる非分散型粘度指数向上剤、又はさらに窒素化合物を含む各種メタクリル酸エステルを共重合させたいわゆる分散型粘度指数向上剤、非分散型又は分散型エチレン−α−オレフィン共重合体(α−オレフィンとしてはプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン等が例示できる)若しくはその水素化物、ポリイソブチレン若しくはその水添物、スチレン−ジエン共重合体の水素化物、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体及びポリアルキルスチレン等が挙げられる。
【0074】
これら粘度指数向上剤の分子量は、せん断安定性を考慮して選定することが必要である。具体的には、粘度指数向上剤の数平均分子量は、例えば分散型及び非分散型ポリメタクリレートの場合では、通常5,000〜1,000,000、好ましくは100,000〜900,000のものが、ポリイソブチレン又はその水素化物の場合は通常800〜5,000、好ましくは1,000〜4,000のものが、エチレン‐α‐オレフィン共重合体又はその水素化物の場合は通常800〜500,000、好ましくは3,000〜200,000のものが用いられる。
【0075】
またこれらの粘度指数向上剤の中でもエチレン−α−オレフィン共重合体又はその水素化物を用いた場合には、特にせん断安定性に優れた潤滑油組成物を得ることができる。上記粘度指数向上剤の中から任意に選ばれた1種類あるいは2種類以上の化合物を任意の量で含有させることができる。粘度指数向上剤の含有量は、通常潤滑油組成物基準で0.1〜20質量%である。
【0076】
腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリルトリアゾール系、チアジアゾール系、及びイミダゾール系化合物等が挙げられる。
【0077】
防錆剤としては、例えば、石油スルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、ジノニルナフタレンスルホネート、アルケニルコハク酸エステル、及び多価アルコールエステル等が挙げられる。
【0078】
抗乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、及びポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル等のポリアルキレングリコール系非イオン系界面活性剤等が挙げられる。
【0079】
金属不活性化剤としては、例えば、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、アルキルチアジアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール又はその誘導体、1,3,4−チアジアゾールポリスルフィド、1,3,4−チアジアゾリル−2,5−ビスジアルキルジチオカーバメート、2−(アルキルジチオ)ベンゾイミダゾール、及びβ−(o−カルボキシベンジルチオ)プロピオンニトリル等が挙げられる。
【0080】
消泡剤としては、例えば、シリコーン、フルオロシリコール、及びフルオロアルキルエーテル等が挙げられる。
【0081】
これらの添加剤を本発明の潤滑油組成物に含有させる場合には、その含有量は潤滑油組成物全量基準で、腐食防止剤、防錆剤、抗乳化剤ではそれぞれ0.005〜5質量%、金属不活性化剤では0.005〜1質量%、消泡剤では0.0005〜1質量%の範囲で通常選ばれる。
【0082】
なお、本発明の潤滑油組成物は、組成物の全硫黄含有量が0.3質量%以下の摩耗防止性に優れた潤滑油組成物であり、好ましくは、潤滑油基油や(B)成分及び各種添加剤の選択によって、組成物の全硫黄含有量が0.2質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、さらに好ましくは0.05質量%以下の摩耗防止性に優れた低硫黄潤滑油組成物とすることも可能である。特に0.01質量%以下あるいは0.005質量%以下、実質的に硫黄を含有しない潤滑油組成物を得ることも可能である。
また、本発明の潤滑油組成物は、(A)成分、(B)成分あるいはその他金属を含有する添加剤の含有量を調整することで、組成物の硫酸灰分を1.0質量%以下とすることも可能であり、0.8質量%以下、さらには0.6質量%以下、特に0.5質量%以下とすることも可能である。
【0083】
本発明の潤滑油組成物は、低硫黄であり、摩耗防止性に優れるだけでなく、低摩擦性、ロングドレイン性(酸化安定性、塩基価維持性等)及び高温清浄性にも優れ、二輪車、四輪車、発電用、舶用等のガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、ガスエンジン等の内燃機関用潤滑油として好ましく使用することができ、低硫黄、さらには低リン、低灰分の潤滑油とすることで、特に排ガス後処理装置を装着した内燃機関に好適である。また、低硫黄燃料、例えば、硫黄分が50質量ppm以下、さらに好ましくは30質量ppm以下、特に好ましくは10質量ppm以下のガソリンや軽油や灯油、LPG、天然ガス、あるいは硫黄分を実質的に含有しない燃料(水素、ジメチルエーテル、アルコール、GTL(ガストゥリキッド)燃料等)を用いる内燃機関用潤滑油、特にガソリンエンジン用やガスエンジン用潤滑油として特に好ましく使用することができる。
また、本発明の上記のような性能のいずれかが要求されるような潤滑油、自動又は手動変速機等の駆動系用潤滑油、グリース、湿式ブレーキ油、油圧作動油、タービン油、圧縮機油、軸受け油、冷凍機油等の潤滑油としても好適に使用することができる。
【0084】
【実施例】
以下に本発明の内容を実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例になんら限定されるものではない。
【0085】
(実施例1、比較例1)
表1に示されるように本発明の潤滑油組成物(実施例1)、比較用の潤滑油組成物(比較例1)をそれぞれ調製した。
【0086】
【表1】
【0087】
得られた各組成物に対して下記の性能評価試験を行った。
(1)動弁摩耗試験
JASO M 328−95に準拠した動弁系摩耗試験を行い100時間経過後のロッカーアームパッドスカッフィング面積、ロッカーアーム摩耗量、カム摩耗量を測定した。その評価結果を表1に示す。なお、試験燃料には硫黄分が10質量ppm以下のガソリンを用いた。
【0088】
表1の結果から明らかな通り、炭素数10〜20未満のアルキル基を1つ有するモノアルキルサリシレートを使用した場合(比較例1)、ロッカーアームの摩耗防止性には優れているものの、ロッカーアームパッドのスカッフィング防止性及びカム摩耗防止性は充分ではないことがわかる。
一方、本発明の潤滑油組成物(実施例1)は、全硫黄含有量が0.3質量%以下の低硫黄潤滑油組成物であり、全硫黄含有量が0.01質量%以下まで低硫黄化され、リン含有量が0.08質量%以下まで低リン化しても極めて優れた摩耗防止性(ロッカーアームパッドのスカッフィング防止性、ロッカーアーム摩耗防止性及びカム摩耗防止性)を有していることがわかり、組成物の硫酸灰分を0.5質量%以下とすることも可能である。なお、比較例1の組成物におけるモノアルキルサリシレートの一部を、サリシレートにおける3,5−ジアルキルサリシレートの構成比が10mol%以上、好ましくは20mol%以上、より好ましくは、(A)成分を含め、少なくとも3位に置換基を有するサリシレートの合計の構成比が65mol%、さらに好ましくは70mol%、特に好ましくは80mol%以上となるように本発明の(A)成分に置換しても著しい摩耗防止性の改善効果が認められる。これは、少なくとも3位に置換基を有するサリシレート、特に(A)成分が(B)成分の摩耗防止性能を阻害しにくいためであると考えられる。
なお、(B)成分としてジチオリン酸亜鉛等の硫黄及びリン含有摩耗防止剤を使用する場合、硫黄を含有しないリン含有摩耗防止剤と比べ摩耗防止性能を維持しやすいため、実施例1の組成物よりもさらに優れた摩耗防止性を発揮でき、例えばリン含有量0.05質量%以下の低リン化、全硫黄含有量0.1質量%以下の低硫黄化、あるいは硫酸灰分0.5質量%以下の低灰化がなされた、摩耗防止性に優れた組成物が得られると考えられる。
また、その他の本願発明で規定する(B)成分、例えば金属を含有しないリン酸トリエステル等を使用しても、同様に(A)成分が(B)成分の有する摩耗防止性能を阻害しにくいため、比較例1で使用したサリシレートを使用した場合に比べ、摩耗防止性を格段に向上させることが可能となり、さらなる低灰化が可能となる。
【0089】
【発明の効果】
本発明の潤滑油組成物は、摩耗防止性に極めて優れた性能を発揮できるとともに、低硫黄化、さらには低リン化、低灰化を図ることができ、低摩擦性、ロングドレイン性にも優れたものである。従って内燃機関用潤滑油としてだけでなく、このような性能のいずれかが要求される潤滑油、例えば、自動又は手動変速機等の駆動系用潤滑油、グリース、湿式ブレーキ油、油圧作動油、タービン油、圧縮機油、軸受け油、冷凍機油等の潤滑油としても好適に使用することができる。
Claims (11)
- 前記(B)成分が、前記一般式(2)におけるX1、X2及びX3が全て酸素原子であるリン化合物の金属塩及び前記一般式(3)におけるX4、X5、X6及びX7が全て酸素原子であるリン化合物の金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の潤滑油組成物。
- 前記(B)成分が、前記一般式(3)におけるX4、X5、X6及びX7の全てが酸素原子であり、R6、R7及びR8がそれぞれ個別に炭素数1〜30の炭化水素基であるリン化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の潤滑油組成物。
- 前記(B)成分が、前記一般式(3)におけるX4、X5、X6およびX7の2つが酸素原子であり、R6、R7及びR8がそれぞれ個別に炭素数1〜30の炭化水素基であるリン化合物の亜鉛塩であることを特徴とする請求項1又は2に記載の潤滑油組成物。
- 前記(B)成分の含有量が、組成物全量基準で、リン元素換算量で、0.08質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の潤滑油組成物。
- (C)無灰分散剤及び(D)酸化防止剤から選ばれる少なくとも1種を含有していることを特徴とする請求項1に記載の潤滑油組成物。
- 潤滑油基油の全硫黄分が0.05質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の潤滑油組成物。
- 内燃機関用であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかの項に記載の潤滑油組成物。
- 組成物の硫酸灰分が1.0質量%以下であることを特徴とする請求項9に記載の潤滑油組成物。
- 組成物の硫酸灰分が0.5質量%以下、全硫黄分が0.05質量%以下、及びリン含有量が0.05質量%以下から選ばれるいずれか1つ以上の要件を満たすことを特徴とする請求項9に記載の潤滑油組成物。
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