JP3738228B2 - 潤滑油組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は潤滑油組成物に関し、詳しくは優れた塩基価維持性及び高温清浄性を示す内燃機関用に好適な潤滑油組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の資源有効利用や廃油の低減、潤滑油ユーザーのコスト削減等の観点から潤滑油のロングドレイン化がより一層求められている。
従来から、潤滑油のロングドレイン性能を高めるために潤滑油の基油としては、芳香族分や塩基性窒素、硫黄分の少ない、高度に精製された水素化精製鉱油や1−デセンオリゴマー、ポリオールエステル、芳香族エステル等の合成油を使用することが一般的であり、また特に高温やNOx雰囲気下における酸化安定性を向上させるために添加剤として、ジチオリン酸亜鉛(ZDTP)やジチオカルバミン酸モリブデン等の過酸化物分解剤やビスフェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等の酸化反応連鎖停止剤を組み合わせて使用することが一般に有効である。また金属系清浄剤の中では、過塩基性アルカリ土類金属サリシレートが酸中和性及び酸化安定性を向上させるために好ましく使用されている。
【0003】
一方、近年の内燃機関用燃料としては、排ガス浄化触媒やDPF(ディーゼルパティキュレートフィルタ)等の性能維持や粒子状物質(PM)を低減する観点から、例えば、硫黄分が50質量ppm以下である軽油や灯油やガソリンをさらに低硫黄化する検討が進められている。また、硫黄分が1質量ppm以下である燃料(例えば、LPG、天然ガス、硫黄分を実質的に含有しない水素、ジメチルエーテル、アルコール、GTL(ガストゥリキッド)等)の使用も増加していく傾向にある。このような低硫黄燃料を使用する内燃機関用潤滑油においては、燃料中の硫黄に起因する硫酸分等の酸性物質の混入量が少なくなるため、潤滑油の寿命は一般的に長くなる傾向にある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記過酸化物分解剤として知られるZDTPのような硫黄含有添加剤を比較的多く含む潤滑油は、硫黄含有添加剤其れ自体が酸化あるいは熱分解することで潤滑油中に硫酸が生成してしまうため、塩基価の消耗(劣化)が加速されやすく、潤滑油の寿命が早まることがわかってきた。このため、ZDTPのような硫黄含有添加剤を比較的多く含む潤滑油では、酸化安定性に優れる基油や酸化防止剤の最適化、あるいはさらに上記過塩基性サリシレートを使用したところで、潤滑油のロングドレイン化には自ずと限界がある。そして、特に上記低硫黄燃料を使用した内燃機関、特に燃焼温度が高いガスエンジンにおいて、更なる潤滑油のロングドレイン化を進めることは困難であった。また、前述の排ガス浄化装置の性能を維持するためには硫黄分の少ない内燃機関用潤滑油であることも望まれる。
【0005】
従って、本発明の課題は、金属系清浄剤及び摩耗防止剤等の最適化をはかり、高温下において塩基価維持性及び清浄性に極めて優れ、排ガス浄化装置を装着した内燃機関や低硫黄燃料を用いた内燃機関用、特にガスエンジン用に好適な低硫黄の潤滑油組成物を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ZDTPのような硫黄含有摩耗防止剤の含有量及び組成物中の硫黄分を一定値以下に低減し、かつ金属比が2.6以下のアルカリ金属又はアルカリ土類金属サリシレート系清浄剤を配合することで、あるいはZDTPのような硫黄含有摩耗防止剤の含有量を一定値以下に低減し、かつ金属比が1.5以下と1.5を越えるアルカリ金属又はアルカリ土類金属サリシレート系清浄剤を併用し、かつそれらの混合物としての金属比が2.6以下であるように配合することで、高温下においても極めて優れた塩基価維持特性及び清浄性を示す潤滑油組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は、潤滑油基油に、組成物全量基準で、(A)金属元素の価数×金属元素含有量(mol)/せっけん基含有量(mol)で表される金属比が2.6以下であるアルカリ金属又はアルカリ土類金属サリシレート系清浄剤を金属元素換算量で0.005〜1質量%、(B)ジチオリン酸亜鉛を硫黄元素換算量で0.1質量%以下含有し、かつ組成物中の硫黄分が0.2質量%以下であることを特徴とする潤滑油組成物にある。
【0008】
また本発明は、潤滑油基油に、組成物全量基準で、(A)金属元素の価数×金属元素含有量(mol)/せっけん基含有量(mol)で表される金属比が2.6以下であるアルカリ金属又はアルカリ土類金属サリシレート系清浄剤を金属元素換算量で0.005〜1質量%、(B)ジチオリン酸亜鉛を硫黄元素換算量で0.1質量%以下、及び(C)一般式(2)で表されるリン化合物、一般式(3)で表されるリン化合物、及びそれらの金属塩又はアミン塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物をリン元素換算量で0.005〜0.5質量%含有し、かつ組成物中の硫黄分が0.2質量%以下であることを特徴とする潤滑油組成物にある。
【0009】
【化3】
【0010】
(一般式(2)において、X1、X2、及びX3は、それぞれ個別に酸素原子又は硫黄原子を示し、これらのうちの少なくとも1つは酸素原子であり、R11、R12、及びR13は、それぞれ個別に水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示す。)
【0011】
【化4】
【0012】
(一般式(3)において、X4、X5、X6及びX7は、それぞれ個別に酸素原子又は硫黄原子を示し、かつこれらのうちの少なくとも3つが酸素原子であり、R14、R15及びR16は、それぞれ個別に水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示す。)
【0013】
さらに本発明は、潤滑油基油に、組成物全量基準で、
(A)金属元素の価数×金属元素含有量(mol)/せっけん基含有量(mol)で表される金属比が1.5以下のアルカリ金属又はアルカリ土類金属サリシレート系清浄剤と金属比が1.5を越えるアルカリ金属又はアルカリ土類金属サリシレート系清浄剤とを、それらの混合物としての金属比が2.6以下であるものを金属元素換算量で0.005〜1質量%、及び
(B)ジチオリン酸亜鉛を硫黄元素換算量で0.1質量%以下含有することを特徴とする潤滑油組成物にもある。
本発明の潤滑油組成物は、金属比が1.5以下のアルカリ金属又はアルカリ土類金属サリシレートを必須成分として含有することが好ましい。
本発明の潤滑油組成物において、(C)成分が、一般式(3)で表されるリン化合物及びその金属塩又はアミン塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であり、当該リン化合物が、一般式(3)におけるX4、X5、X6及びX7の全てが、酸素原子であり、R14、R15及びR16の内の少なくとも1つが炭素数1〜30の炭化水素基であることが好ましい。
本発明の潤滑油組成物は、(D)無灰分散剤及び(E)酸化防止剤から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。
本発明の潤滑油組成物において、潤滑油基油の硫黄分が0.005質量%以下であることが好ましい。
本発明の潤滑油組成物は、硫黄分が50質量ppm以下の燃料を使用する内燃機関に用いられることが好ましい。
本発明の潤滑油組成物は、ガスエンジンに用いられることが好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の潤滑油組成物における潤滑油基油は、特に制限はなく、通常の潤滑油に使用される鉱油系基油、合成系基油が使用できる。
鉱油系基油としては、具体的には、原油を常圧蒸留して得られる常圧残油を減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、水素化精製等の処理を1つ以上行って精製したもの、あるいはワックス異性化鉱油、GTL WAX(ガストゥリキッドワックス)を異性化する手法で製造される基油等が例示できる。
【0015】
鉱油系基油の全芳香族含有量は、特に制限はないが、好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、特に好ましくは2質量%以下である。基油の全芳香族含有量が15質量%を越える場合は、酸化安定性が劣るため、好ましくない。
なお、上記全芳香族含有量とは、ASTM D2549に準拠して測定した芳香族留分(aromatic fraction)含有量を意味する。通常この芳香族留分には、アルキルベンゼン、アルキルナフタレンの他、アントラセン、フェナントレン、及びこれらのアルキル化物、ベンゼン環が四環以上縮合した化合物、又はピリジン類、キノリン類、フェノール類、ナフトール類等のヘテロ芳香族を有する化合物等が含まれる。
また、鉱油系基油中の硫黄分は、特に制限はないが、0.01質量%以下であることが好ましく、0.005質量%以下であることがさらに好ましく、0.001質量%以下であることが特に好ましい。鉱油系基油の硫黄分を低減することで、よりロングドレイン性に優れる潤滑油組成物を得ることができる。
【0016】
合成系基油としては、具体的には、ポリブテン又はその水素化物;1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー等のポリ−α−オレフィン又はその水素化物;ジトリデシルグルタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、及びジ−2−エチルヘキシルセバケート等のジエステル;トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール−2−エチルヘキサノエート、及びペンタエリスリトールペラルゴネート等のポリオールエステル;アルキルナフタレン、アルキルベンゼン、及び芳香族エステル等の芳香族系合成油又はこれらの混合物等が例示できる。
【0017】
本発明では、上記鉱油系基油、上記合成系基油又はこれらの中から選ばれる2種以上の潤滑油の任意混合物等が使用できる。例えば、1種以上の鉱油系基油、1種以上の合成系基油、1種以上の鉱油系基油と1種以上の合成系基油との混合油等を挙げることができる。
【0018】
潤滑油基油の動粘度は特に制限はないが、その100℃での動粘度は、20mm2/s以下であることが好ましく、より好ましくは10mm2/s以下である。一方、その動粘度は、1mm2/s以上であることが好ましく、より好ましくは2mm2/s以上である。潤滑油基油の100℃での動粘度が20mm2/sを越える場合は、低温粘度特性が悪化し、一方、その動粘度が1mm2/s未満の場合は、潤滑箇所での油膜形成が不十分であるため潤滑性に劣り、また潤滑油基油の蒸発損失が大きくなるため、それぞれ好ましくない。
【0019】
潤滑油基油の蒸発損失量としては、NOACK蒸発量で、20質量%以下であることが好ましく、16質量%以下であることがさらに好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。潤滑油基油のNOACK蒸発量が20質量%を超える場合、潤滑油油の蒸発損失が大きいだけでなく、組成物中の硫黄化合物やリン化合物、あるいは金属分が潤滑油基油とともに排ガス浄化装置へ堆積する恐れがあり、排ガス浄化性能への悪影響が懸念されるため好ましくない。なお、ここでいうNOACK蒸発量とは、潤滑油試料60gを250℃、150mmH2Oの減圧下にて1時間保持した後の蒸発量を測定したものである。
【0020】
潤滑油基油の粘度指数は特に制限はないが、低温から高温まで優れた粘度特性が得られるようにその値は、80以上であることが好ましく、更に好ましくは100以上であり、更に好ましくは120以上である。その粘度指数が80未満である場合、低温粘度特性が悪化するため、好ましくない。
【0021】
本発明の潤滑油組成物における(A)成分は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属サリシレートであり、具体的には、アルキルサリチル酸のナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等の塩が挙げられ、特にマグネシウム、カルシウム等の塩が好ましい。例えば下記一般式(1)で表される化合物を挙げることができる。
【0022】
【化5】
【0023】
一般式(1)において、R1は炭素数4〜30、好ましくは6〜18の直鎖又は分枝のアルキル基を示し、nは1又は2を示し、Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属、好ましくはカルシウム、マグネシウム、特に好ましくはカルシウムを示す。
上記R1で表されるアルキル基としては、具体的には、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基、及びトリアコンチル基等が挙げられる。これらは直鎖でも分枝でもよい。これらはまた1級アルキル基、2級アルキル基又は3級アルキル基でもよい。
【0024】
上記(A)成分は、上記のアリキルサリチル酸等を直接アルカリ金属又はアルカリ土類金属の酸化物や水酸化物等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩基と反応させることにより得られる。また、このようにして得られた中性(正塩)アルカリ金属又はアルカリ土類金属サリシレートと過剰のアルカリ金属塩若しくはアルカリ土類金属塩やアルカリ金属塩基若しくはアルカリ土類金属塩基を水の存在下で加熱することにより得られる塩基性アルカリ金属又はアルカリ土類金属サリシレート、中性アルカリ金属又は土類金属サリシレートの存在下で、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物と炭酸ガス又はホウ酸若しくはホウ酸塩とを反応させることにより得られる過塩基性(超塩基性)アルカリ金属又はアルカリ土類金属サリシレートも含まれる。
【0025】
本発明において(A)成分は、金属比が2.6以下となるように調製される限りにおいて、上記のような中性アルカリ金属又はアルカリ土類金属サリシレート、塩基性アルカリ金属又はアルカリ土類金属サリシレート、過塩基性(超塩基性)アルカリ金属又はアルカリ土類金属サリシレートを1種又は2種以上の混合物として用いることができる。
本発明においては、得られる組成物の塩基価維持性及び高温清浄性を更に向上させるために、(A)成分の金属比を2.3以下とすることが好ましい。また、金属比が1.5以下、好ましくは1.2以下であるアルカリ金属又はアルカリ土類金属サリシレートを必須成分として含有させることがさらに好ましく、金属比が1、即ち中性アルカリ金属又はアルカリ土類金属サリシレートを必須成分として含有させることが特に好ましい。そして金属比が1.5以下のアルカリ金属又はアルカリ土類金属サリシレートと金属比が1.5、好ましくは2.6を超えるアルカリ金属又はアルカリ土類金属サリシレートとを併用し、(A)成分混合物における金属比が1.5以上、好ましくは1.9以上、2.6以下、好ましくは2.3以下とすることが特に好ましい。(A)成分の金属比を上記範囲に調製することにより、(A)成分の含有量に対する塩基価維持性及び高温清浄性の向上効果をより高めることができる。(A)成分の金属比が2.6を超える場合、その効果は高いものの、本発明の規定範囲に比べれば効果はより小さく、特にその金属比が4を超える場合はその効果がさらに小さくなる。
なお、ここでいう金属比とは、金属元素の価数×金属元素含有量(mol)/せっけん基(即ち、アルキルサリチル酸基)含有量(mol)で表され、即ち、金属比はアルカリ金属又はアルカリ土類金属サリシレート系清浄剤中のアルキルサリチル酸基含有量に対するアルカリ金属又はアルカリ土類金属含有量を示す。
【0026】
本発明の潤滑油組成物における(A)成分の含有量は、組成物全量基準で金属元素換算量で0.005質量%以上であり、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%、特に好ましくは0.25質量%以上である。一方、その含有量は、組成物全量基準で金属元素換算量で1質量%以下であり、好ましくは0.5質量%以下、特に好ましくは0.4質量%以下である。(A)成分の含有量が、上記換算量で0.005質量%未満の場合、優れた塩基価維持性及び高温清浄性が得られず、一方、その含有量が上記換算量で1質量%を超える場合、その含有量に見合うだけの効果が得られないため、好ましくない。
【0027】
上記(A)成分は、通常軽質潤滑油基油等で希釈された状態で市販されており、また入手可能であるが、一般的にその金属含有量が1.0〜20質量%、好ましくは1.5〜16質量%のものを用いる。
【0028】
本発明の潤滑油組成物における(B)成分は、ジチオリン酸亜鉛(ZDTP)である。ジチオリン酸亜鉛(ZDTP)としては、具体的には、ジプロピルジチオリン酸亜鉛、ジブチルジチオリン酸亜鉛、ジペンチルジチオリン酸亜鉛、ジヘキシルジチオリン酸亜鉛、ジヘプチルジチオリン酸亜鉛、及びジオクチルジチオリン酸亜鉛等の炭素数3〜18、好ましくは炭素数3〜10の直鎖状若しくは分枝状アルキル基を有するジアルキルジチオリン酸亜鉛;ジフェニルジチオリン酸亜鉛、及びジトリルジチオリン酸亜鉛などの炭素数6〜18、好ましくは炭素数6〜10のアリール基若しくはアルキルアリール基を有するジ((アルキル)アリール)ジチオリン酸亜鉛、及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0029】
本発明における(B)成分については、高温下における塩基価維持特性及び高温清浄性を向上させるためにはその含有量は、組成物全量基準で硫黄元素換算量で0.1質量%以下であり、好ましくは0.09質量%以下、さらに好ましくは0.08質量%以下である。一方、その下限は、0.005質量%以上であることが好ましく、更に好ましくは、0.01質量%以上である。
【0030】
本発明の潤滑油組成物における(C)成分は、一般式(2)で表されるリン化合物、一般式(3)で表されるリン化合物、及びそれらの金属塩又はアミン塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(リン含有摩耗防止剤)である。
【0031】
【化6】
【0032】
一般式(2)において、X1、X2、及びX3は、それぞれ個別に酸素原子又は硫黄原子を示し、そのうちの少なくとも1つが酸素原子であり、R11、R12、及びR13は、それぞれ個別に水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示す。
【0033】
【化7】
【0034】
一般式(3)において、X4、X5、X6及びX7は、それぞれ個別に酸素原子又は硫黄原子を示し、そのうちの少なくとも3つが酸素原子であり、R14、R15及びR16は、それぞれ個別に水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示す。
【0035】
上記R11〜R16で表される炭素数1〜30の炭化水素基としては、具体的には、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキル置換シクロアルキル基、アリール基、アルキル置換アリール基、及びアリールアルキル基を挙げることができる。
上記アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等のアルキル基(これらアルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい)を挙げることができる。
上記シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の炭素数5〜7のシクロアルキル基を挙げることができる。また上記アルキルシクロアルキル基としては、例えば、メチルシクロペンチル基、ジメチルシクロペンチル基、メチルエチルシクロペンチル基、ジエチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、メチルエチルシクロヘキシル基、ジエチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘプチル基、ジメチルシクロヘプチル基、メチルエチルシクロヘプチル基、ジエチルシクロヘプチル基等の炭素数6〜11のアルキルシクロアルキル基(アルキル基のシクロアルキル基への置換位置も任意である)を挙げることができる。
【0036】
上記アルケニル基としては、例えば、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基等のアルケニル基(これらアルケニル基は直鎖状でも分枝状でもよく、また二重結合の位置も任意である)を挙げることができる。
【0037】
上記アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等のアリール基を挙げることができる。また上記アルキルアリール基としては、例えば、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基、ドデシルフェニル基等の炭素数7〜18のアルキルアリール基(アルキル基は直鎖状でも分枝状でもよく、またアリール基への置換位置も任意である)を挙げることができる。
上記アリールアルキル基としては、例えばベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基等の炭素数7〜12のアリールアルキル基(これらアルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい)を挙げることができる。
【0038】
上記R11〜R16で表される炭素数1〜30の炭化水素基は、炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数6〜24のアリール基であることが好ましく、更に好ましくは炭素数3〜18、更に好ましくは炭素数4〜10のアルキル基である。
【0039】
一般式(2)で表されるリン化合物としては、例えば、以下のリン化合物を挙げることができる。
亜リン酸、モノチオ亜リン酸、ジチオ亜リン酸;上記炭素数1〜30の炭化水素基を1つ有する亜リン酸モノエステル、モノチオ亜リン酸モノエステル、ジチオ亜リン酸モノエステル;上記炭素数1〜30の炭化水素基を2つ有する亜リン酸ジエステル、モノチオ亜リン酸ジエステル、ジチオ亜リン酸ジエステル;上記炭素数1〜30の炭化水素基を3つ有する亜リン酸トリエステル、モノチオ亜リン酸トリエステル、ジチオ亜リン酸トリエステル;及びこれらの混合物。
本発明においては、一般式(2)のX1〜X3は、その内の2個以上が酸素原子であることが好ましく、より好ましくは3個全てが酸素原子である。
【0040】
一般式(3)で表されるリン化合物としては、例えば、以下のリン化合物を挙げることができる。
リン酸、モノチオリン酸;上記炭素数1〜30の炭化水素基を1つ有するリン酸モノエステル、モノチオリン酸モノエステル;上記炭素数1〜30の炭化水素基を2つ有するリン酸ジエステル、モノチオリン酸ジエステル;上記炭素数1〜30の炭化水素基を3つ有するリン酸トリエステル、モノチオリン酸トリエステル;及びこれらの混合物。
本発明においては、一般式(3)のX4〜X7は、好ましくは全てが酸素原子である。
【0041】
一般式(2)又は(3)で表されるリン化合物の塩としては、リン化合物に金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩等の金属塩基、アンモニア、炭素数1〜30の炭化水素基又はヒドロキシル基含有炭化水素基のみを分子中に有するアミン化合物等の窒素化合物を作用させて、残存する酸性水素の一部又は全部を中和した塩を挙げることができる。
【0042】
上記金属塩基における金属としては、具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム、バリウム等のアルカリ土類金属、亜鉛、銅、鉄、鉛、ニッケル、銀、マンガン、モリブデン等の重金属が挙げられる。これらの中では亜鉛、モリブデン、カルシウム等のアルカリ土類金属が好ましい。
なお、上記リン化合物の金属塩としては、金属の価数に応じリン化合物の配位数が異なり、例えば、2価の亜鉛、カルシウムでは、1つの金属原子に対しリン化合物が2つ配位する錯体を形成すると考えられる。
【0043】
上記窒素化合物としては、具体的には、アンモニア、モノアミン、ジアミン、ポリアミンが挙げられる。より具体的には、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、ジウンデシルアミン、ジドデシルアミン、ジトリデシルアミン、ジテトラデシルアミン、ジペンタデシルアミン、ジヘキサデシルアミン、ジヘプタデシルアミン、ジオクタデシルアミン、メチルエチルアミン、メチルプロピルアミン、メチルブチルアミン、エチルプロピルアミン、エチルブチルアミン、及びプロピルブチルアミン等の炭素数1〜30のアルキル基(これらのアルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい)を有するアルキルアミン;
【0044】
エテニルアミン、プロペニルアミン、ブテニルアミン、オクテニルアミン、及びオレイルアミン等の炭素数2〜30のアルケニル基(これらのアルケニル基は直鎖状でも分枝状でもよい)を有するアルケニルアミン;メタノールアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、ブタノールアミン、ペンタノールアミン、ヘキサノールアミン、ヘプタノールアミン、オクタノールアミン、ノナノールアミン、メタノールエタノールアミン、メタノールプロパノールアミン、メタノールブタノールアミン、エタノールプロパノールアミン、エタノールブタノールアミン、及びプロパノールブタノールアミン等の炭素数1〜30のアルカノール基(これらのアルカノール基は直鎖状でも分枝状でもよい)を有するアルカノールアミン;
【0045】
メチレンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、及びブチレンジアミン等の炭素数1〜30のアルキレン基を有するアルキレンジアミン;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン等のポリアミン;ウンデシルジエチルアミン、ウンデシルジエタノールアミン、ドデシルジプロパノールアミン、オレイルジエタノールアミン、オレイルプロピレンジアミン、ステアリルテトラエチレンペンタミン等の上記モノアミン、ジアミン、ポリアミンに炭素数8〜20のアルキル基又はアルケニル基を有する化合物やN−ヒドロキシエチルオレイルイミダゾリン等の複素環化合物;これらの化合物のアルキレンオキシド付加物;及びこれらの混合物等が例示できる。
これら窒素化合物の中でもデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン、オレイルアミン及びステアリルアミン等の炭素数10〜20のアルキル基又はアルケニル基を有する脂肪族アミン(これらは直鎖状でも分枝状でもよい)が好ましい例として挙げることができる。
【0046】
これらの(C)成分の中では、炭素数3〜18のアルキル基又はアリール基を2個有する亜リン酸ジエステルと亜鉛、モリブデン、カルシウム、又は炭素数2〜20のアルケニルアミンとの塩、炭素数3〜18のアルキル基又はアリール基を3個有する亜リン酸トリエステル、炭素数3〜18のアルキル基又はアリール基を2個有するリン酸のジエステルと亜鉛、モリブデン、カルシウム、又は炭素数2〜20のアルケニルアミンとの塩、あるいは炭素数3〜18のアルキル基又はアリール基を3個有するリン酸トリエステルであることが好ましい。
これらの(C)成分は、1種類あるいは2種類以上を任意に配合することができる。
【0047】
本発明の潤滑油組成物において(C)成分の含有量は、組成物全量基準でリン元素換算量として0.005質量%以上であり、好ましくは0.02質量%以上、特に好ましくは0.05質量%以上であり、一方、その含有量は、0.5質量%以下であり、好ましくは0.2質量%以下であり、特に好ましくは0.1質量%以下である。(C)成分の含有量が、リン元素として0.005質量%未満の場合は、耐摩耗性に対して効果がなく、0.5質量%を超える場合は、リンによる排ガス後処理装置への悪影響が懸念されるため、それぞれ好ましくない。
【0048】
なお、本発明における上記(C)成分のうち、硫黄を含有する化合物についても、上記リン元素量の範囲内で含有させることができるが、好ましくは、その含有量は、硫黄元素換算量で、0.1質量%以下であり、さらに好ましくは0.08質量%以下である。高温下における塩基価維持性及び清浄性を極めて向上させるためには、硫黄を含有する化合物を含有しないことが最も好ましい。
【0049】
本発明の潤滑油組成物にはさらに(D)無灰分散剤、及び(E)酸化防止剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の添加剤が含有されていることが好ましい。
【0050】
(D)無灰分散剤としては、潤滑油に用いられる任意の無灰分散剤を用いることができるが、例えば、炭素数40〜400の直鎖若しくは分枝状のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有する含窒素化合物又はその誘導体、あるいはアルケニルコハク酸イミドの変性品等が挙げられる。これらの中から任意に選ばれる1種類あるいは2種類以上を配合することができる。
このアルキル基又はアルケニル基の炭素数は40〜400、好ましくは60〜350である。アルキル基又はアルケニル基の炭素数が40未満の場合は化合物の潤滑油基油に対する溶解性が低下し、一方、アルキル基又はアルケニル基の炭素数が400を越える場合は、潤滑油組成物の低温流動性が悪化するため、それぞれ好ましくない。このアルキル基又はアルケニル基は、直鎖状でも分枝状でもよいが、好ましいものとしては、具体的には、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン等のオレフィンのオリゴマーやエチレンとプロピレンのコオリゴマーから誘導される分枝状アルキル基や分枝状アルケニル基等が挙げられる。
(D)成分の1例として挙げた含窒素化合物の窒素含有量は任意であるが、耐摩耗性、酸化安定性等の点から、通常その窒素含有量が0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜10質量%のものである。
【0051】
(D)成分の具体的としては、例えば、下記の化合物が挙げられる。これらのの中から選ばれる1種又は2種以上の化合物を用いることができる。
(D−1)炭素数40〜400のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するコハク酸イミド、あるいはその誘導体
(D−2)炭素数40〜400のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するベンジルアミン、あるいはその誘導体
(D−3)炭素数40〜400のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するポリアミン、あるいはその誘導体
【0052】
上記(D−1)コハク酸イミドとしては、より具体的には、下記の一般式(4)及び一般式(5)で示される化合物等が例示できる。
【0053】
【化8】
【0054】
一般式(4)において、R20は炭素数40〜400、好ましくは60〜350のアルキル基又はアルケニル基を示し、hは1〜5、好ましくは2〜4の整数を示す。
【0055】
【化9】
【0056】
一般式(5)において、R21及びR22は、それぞれ個別に炭素数40〜400、好ましくは60〜350のアルキル基又はアルケニル基を示し、ポリブテニル基であることが好ましい。iは0〜4、好ましくは1〜3の整数を示す。
なお、コハク酸イミドには、ポリアミンの一端に無水コハク酸が付加した式(4)で表される、いわゆるモノタイプのコハク酸イミドと、ポリアミンの両端に無水コハク酸が付加した式(5)で表される、いわゆるビスタイプのコハク酸イミドとが含まれるが、本発明の組成物には、それらのいずれでも、あるいはこれらの混合物が含まれていても良い。
これらのコハク酸イミドの製法は特に制限はないが、例えば炭素数40〜400のアルキル基又はアルケニル基を無水マレイン酸と100〜200℃で反応させて得たアルキル又はアルケニルコハク酸をポリアミンと反応させることにより得ることができる。ポリアミンとしては、具体的には、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、及びペンタエチレンヘキサミン等が例示できる。
【0057】
上記(D−2)ベンジルアミンとしては、より具体的には、下記の一般式(6)で表される化合物等が例示できる。
【0058】
【化10】
【0059】
一般式(6)において、R23は、炭素数40〜400、好ましくは60〜350のアルキル基又はアルケニル基を示し、jは1〜5、好ましくは2〜4の整数を示す。
このベンジルアミンの製造方法は何ら限定されるものではないが、例えば、プロピレンオリゴマー、ポリブテン、及びエチレン−α−オレフィン共重合体等のポリオレフィンをフェノールと反応させてアルキルフェノールとした後、これにホルムアルデヒドとジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、及びペンタエチレンヘキサミン等のポリアミンをマンニッヒ反応により反応させることにより得ることができる。
【0060】
上記(D−3)ポリアミンとしては、より具体的には、下記の一般式(7)で表される化合物等が例示できる。
R24‐NH−(CH2CH2NH)k‐H (7)
【0061】
一般式(7)において、R24は、炭素数40〜400、好ましくは60〜350のアルキル基又はアルケニル基を示し、kは1〜5、好ましくは2〜4の整数を示す。
このポリアミンの製造法は何ら限定されるものではないが、例えば、プロピレンオリゴマー、ポリブテン、及びエチレン−α−オレフィン共重合体等のポリオレフィンを塩素化した後、これにアンモニアやエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、及びペンタエチレンヘキサミン等のポリアミンを反応させることにより得ることができる。
【0062】
また、(D)成分の1例として挙げた含窒素化合物の誘導体としては、具体的には例えば、前述の含窒素化合物に炭素数1〜30のモノカルボン酸(脂肪酸等)やシュウ酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の炭素数2〜30のポリカルボン酸を作用させて、残存するアミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部を中和したり、アミド化した、いわゆる酸変性化合物;前述の含窒素化合物にホウ酸を作用させて、残存するアミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部を中和したり、アミド化した、いわゆるホウ素変性化合物;前述の含窒素化合物に硫黄化合物を作用させた硫黄変性化合物;及び前述の含窒素化合物に酸変性、ホウ素変性、硫黄変性から選ばれた2種以上の変性を組み合わせた変性化合物;等が挙げられる。これらの誘導体の中でもアルケニルコハク酸イミドのホウ酸変成化合物は耐熱性、酸化防止性に優れ、本発明の潤滑油組成物においても塩基価維持性及び高温清浄性をより高めるために有効である。
【0063】
本発明の潤滑油組成物において(D)成分を含有させる場合、その含有量は、通常潤滑油組成物全量基準で、0.01〜20質量%であり、好ましくは0.1〜10質量%である。(D)成分の含有量が0.01質量%未満の場合は、高温下における塩基価維持性に対する効果が少なく、一方、20質量%を越える場合は、潤滑油組成物の低温流動性が大幅に悪化するため、それぞれ好ましくない。
【0064】
酸化防止剤(E)としては、フェノール系酸化防止剤やアミン系酸化防止剤、金属系酸化防止剤等の潤滑油に一般的に使用されているものであれば使用可能である。酸化防止剤の添加により、潤滑油組成物の酸化防止性をより高められるため、本発明における塩基価維持性及び高温清浄性をより高めることができる。
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、2,2’−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−4(N,N’−ジメチルアミノメチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルベンジル)スルフィド、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、2,2’−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル置換脂肪酸エステル類等を好ましい例として挙げることができる。これらは二種以上を混合して使用してもよい。
【0065】
アミン系酸化防止剤としては、例えば、フェニル−α−ナフチルアミン、アルキルフェニル−α−ナフチルアミン、及びジアルキルジフェニルアミンを挙げることができる。これらは二種以上を混合して使用してもよい。
上記フェノール系酸化防止剤とアミン系酸化防止剤は組み合せて配合しても良い。
【0066】
本発明の潤滑油組成物において(E)成分を含有させる場合、その含有量は、通常潤滑油組成物全量基準で5.0質量%以下であり、好ましくは3.0質量%以下であり、さらに好ましくは2.5質量%以下である。その含有量が5.0質量%を超える場合は、配合量に見合った十分な酸化防止性が得られないため好ましくない。一方、その含有量は、潤滑油劣化過程における塩基価維持性及び高温清浄性をより高めるためには潤滑油組成物全量基準で好ましくは0.1質量%以上であり、好ましくは1質量%以上である。
【0067】
本発明の潤滑油組成物は高温下における塩基価維持性及び高温清浄性に優れるものであるが、その性能をさらに向上させるために、その目的に応じて潤滑油に一般的に使用されている任意の添加剤を添加することができる。このような添加剤としては、例えば、粘度指数向上剤、(A)成分以外の金属系清浄剤、(B)成分及び(C)成分以外の摩耗防止剤、摩擦調整剤、腐食防止剤、防錆剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、消泡剤、及び着色剤等の添加剤等を挙げることができる。
【0068】
粘度指数向上剤としては、具体的には、各種メタクリル酸エステルから選ばれる1種又は2種以上のモノマーの重合体又は共重合体若しくはその水添物などのいわゆる非分散型粘度指数向上剤、又はさらに窒素化合物を含む各種メタクリル酸エステルを共重合させたいわゆる分散型粘度指数向上剤、非分散型又は分散型エチレン−α−オレフィン共重合体(α−オレフィンとしてはプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン等が例示できる)若しくはその水素化物、ポリイソブチレン若しくはその水添物、スチレン−ジエン共重合体の水素化物、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体及びポリアルキルスチレン等が挙げられる。
【0069】
これら粘度指数向上剤の分子量は、せん断安定性を考慮して選定することが必要である。具体的には、粘度指数向上剤の数平均分子量は、例えば分散型及び非分散型ポリメタクリレートの場合では、通常5,000〜1,000,000、好ましくは100,000〜900,000のものが、ポリイソブチレン又はその水素化物の場合は通常800〜5,000、好ましくは1,000〜4,000のものが、エチレン‐α‐オレフィン共重合体又はその水素化物の場合は通常800〜500,000、好ましくは3,000〜200,000のものが用いられる。
【0070】
またこれらの粘度指数向上剤の中でもエチレン‐α‐オレフィン共重合体又はその水素化物を用いた場合には、特にせん断安定性に優れた潤滑油組成物を得ることができる。上記粘度指数向上剤の中から任意に選ばれた1種類あるいは2種類以上の化合物を任意の量で含有させることができる。粘度指数向上剤の含有量は、通常潤滑油組成物基準で0.1〜20.0質量%である。なお、粘度指数向上剤は一般に高温清浄性を悪化させるが、本発明においては、実施例に示す通り、粘度指数向上剤を含有させても優れた高温清浄性を示す。粘度指数向上剤を含有させない場合、あるいは少含有量(例えば1質量%以下)の場合、極めて優れた高温清浄性を示すことを確認している。
【0071】
(A)成分以外の金属系清浄剤としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属スルホネート、アルカリ金属又はアルカリ土類金属フェネート等が挙げられる。
【0072】
(B)成分及び(C)成分以外の摩耗防止剤としては、例えば、ジスルフィド類、硫化オレフィン類、硫化油脂類、ジチオカルバミン酸亜鉛等の硫黄含有化合物等が挙げられる。
【0073】
摩擦調整剤としては、例えば、ジチオカルバミン酸モリブデン、ジチオリン酸モリブデン、二硫化モリブデン、長鎖脂肪族アミン、長鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸エステル、長鎖脂肪酸アミド及び長鎖脂肪族アルコール等が挙げられる。
【0074】
腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリルトリアゾール系、チアジアゾール系、及びイミダゾール系化合物等が挙げられる。
【0075】
防錆剤としては、例えば、石油スルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、ジノニルナフタレンスルホネート、アルケニルコハク酸エステル、及び多価アルコールエステル等が挙げられる。
【0076】
抗乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、及びポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル等のポリアルキレングリコール系非イオン系界面活性剤等が挙げられる。
【0077】
金属不活性化剤としては、例えば、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、アルキルチアジアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール又はその誘導体、1,3,4−チアジアゾールポリスルフィド、1,3,4−チアジアゾリル−2,5−ビスジアルキルジチオカーバメート、2−(アルキルジチオ)ベンゾイミダゾール、及びβ−(o−カルボキシベンジルチオ)プロピオンニトリル等が挙げられる。
【0078】
消泡剤としては、例えば、シリコーン、フルオロシリコール、及びフルオロアルキルエーテル等が挙げられる。
【0079】
これらの添加剤を本発明の潤滑油組成物に含有させる場合には、その含有量は潤滑油組成物全量基準で、(A)成分以外の金属系清浄剤、(B)成分及び(C)成分以外の摩耗防止剤、摩擦調整剤、腐食防止剤、防錆剤、抗乳化剤ではそれぞれ0.005〜5質量%、金属不活性化剤では0.005〜1質量%、消泡剤では0.0005〜1質量%の範囲で通常選ばれる。
【0080】
本発明の潤滑油組成物は、上述の(B)成分(ZDTP)と共に硫黄を含有する摩耗防止剤((C)成分のうち硫黄を含有する化合物、ジスルフィド類、硫化オレフィン類、硫化油脂類、ジチオカルバミン酸亜鉛等)、あるいは、ジチオカルバミン酸モリブデン、ジチオリン酸モリブデン等の硫黄を含有する摩擦調整剤等、硫黄含有添加剤の合計含有量を制限することが好ましく、上述の硫黄含有摩耗防止剤の合計含有量を、組成物全量基準で、硫黄元素換算量で、0.1質量%以下とすることが好ましく、0.09質量%以下とすることがより好ましく、0.08質量%以下とすることが更に好ましい。上述のように硫黄含有添加剤の含有量を制限することにより、よりロングドレイン性能を高めることが可能となる。なお、市販添加剤には、添加剤を合成する際に使用する溶剤や添加剤のハンドリングを良くするための希釈油(例えば溶剤精製鉱油等)を含有している場合が一般的であり、ここでいう硫黄含有添加剤はこれら溶剤や希釈油に起因する硫黄化合物を意味するものではない。
【0081】
本発明においては、これら溶剤や希釈油に起因する硫黄分が含有されたとしても、組成物中の全硫黄分含有量を、0.3質量%以下、好ましくは0.2質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下、特に好ましくは0.05質量%以下とすることができ、これら溶剤や希釈油を硫黄分含量が0.005質量%以下である高度水素化分解基油、実質的に硫黄分を含有しないGTL Wax(ガス・トゥー・リキッド・ワックス)を異性化した手法で製造された基油等、あるいは合成油等を使用すれば、さらに硫黄分を低減でき高温下での塩基価維持性及び高温清浄性に優れ、排ガス浄化装置の性能維持を図れる組成物とすることができるため、より好ましい。
なお、本発明においては、組成物中の全硫黄分が0.2質量%以下、特に0.05質量%以下の組成物が得られている。
【0082】
本発明の潤滑油組成物は、二輪車、四輪車、発電用、舶用等のガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、ガスエンジン等の内燃機関用潤滑油として好ましく使用することができるが、低硫黄燃料、例えば、硫黄分が50質量ppm以下、さらに好ましくは30質量ppm以下、特に好ましくは10質量ppm以下のガソリンや軽油や灯油、あるいは硫黄分が1質量ppm以下の燃料(LPG、天然ガス、硫黄分を実質的に含有しない水素、ジメチルエーテル、アルコール、GTL(ガストゥリキッド)等)を用いる内燃機関用潤滑油、特にガスエンジン用潤滑油として特に好ましく使用することができる。また、本発明の潤滑油組成物は、高温下での酸化安定性(塩基価維持性及び高温清浄性)のみならず、NOx雰囲気下での塩基価維持性、耐摩耗性等にも優れるものであることを確認しており、このような性能が要求される潤滑油、例えば自動又は手動変速機等の駆動系用潤滑油、湿式ブレーキ、油圧作動油、タービン油、圧縮機油、軸受け油、冷凍機油等の潤滑油としても好適に使用することができる。
【0083】
【実施例】
以下に本発明の内容を実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例になんら限定されるものではない。
【0084】
(実施例1〜4、及び比較例1〜2)
表1に示されるように本発明の潤滑油組成物(実施例1〜4)及び比較用の潤滑油組成物(比較例1〜2)をそれぞれ調製した。
【0085】
【表1】
【0086】
得られた各組成物に対して下記の性能評価試験を行った。その結果を表1に示す。
(1)ISOTによる全塩基価の経時変化
JIS K 2514に準拠するISOT試験(150℃)にて試験油を強制劣化させたときの全塩基価(塩酸法)の残存率の経時変化を測定した。全塩基価の減少が小さいほど高温下における塩基価維持性能が高く、より長時間使用できるロングドレイン油であることを示す。
【0087】
(2)ホットチューブ試験でみた高温清浄性
JPI−5S−5599に準拠し、ホットチューブ試験を行った。評点は無色透明(汚れなし)を10点、黒色不透明を0点とし、この間をあらかじめ1刻みで作成した標準チューブを参照して評価した。290℃において当該評点が6以上であれば、通常のガソリンエンジン用、ディーゼルエンジン用の潤滑油として清浄性に優れたものであるが、ガスエンジン用の潤滑油としては、本試験において300℃以上においても優れた清浄性を示すことが好ましい。
【0088】
表1から明らかな通り、本発明の潤滑油組成物(実施例1〜4)は、高温下において優れた塩基価維持性及び高温清浄性を示すことがわかる。実施例4の組成物は金属比が1.5以下のカルシウムサリシレートと金属比が1.5を超えるカルシウムサリシレートを併用した(カルシウムサリシレート混合物としては、その金属比が2.1となる)ものであり、実施例2の組成物に比べカルシウムサリシレートの含有量を半減させたにもかかわらず、これとほぼ同等の塩基価維持性及び高温清浄性を示す。
【0089】
一方、実施例3の組成物におけるカルシウムサリシレートを金属比が本発明の規定を超えるもの(金属比=4.3)に置き換えた場合(比較例1)には、高温清浄性能が低下し、塩基価維持特性との両立を満足できない。なお、比較例1の組成物のZPをZDTPに置き換えると塩基価維持性及び高温清浄性はさらに低下することを確認している。また、金属比が2.6以下であるカルシウムサリシレートを含有させても、ZDTPの含有量が多い場合(比較例2)にも高温清浄性能が低下し、塩基価維持特性との両立を満足できない。
【0090】
なお、実施例に挙げた以外の(C)成分を含有する組成物についても同様の優れた性能を有すること、中でもモノチオリン酸ジエステルの亜鉛塩、リン酸ジエステル及びそのカルシウム塩、又はオレイルアミン塩、そしてリン酸トリエステルを含有する組成物等がZPを含有する組成物に次ぐ性能を示すことを確認している。
【0091】
【発明の効果】
本発明の潤滑油組成物は、ZDTPのような過酸化物分解剤としての酸化防止性能を有する硫黄含有添加剤を低減することで、酸化防止性を極めて向上させ、高温下における塩基価維持性、すなわちロングドレイン性能に極めて優れ、さらには優れた高温清浄性能をも有する。
また、本発明の潤滑油組成物は、その全硫黄分含有量を0.3質量%以下に低く抑えることができるので、排ガス浄化触媒等への硫黄による被毒を低減することができ、排ガス浄化触媒等の排ガス後処理装置を装着したエンジンに好適に用いることができる。
また、本発明の潤滑油組成物は、前述のような硫黄分が50質量ppm以下の燃料を用いるエンジン、特にガスエンジンに適用することで、さらにロングドレイン性能を伸ばすことが可能となり、廃油問題や省資源等に貢献することができる。
さらに、本発明の潤滑油組成物は、塩基価維持性、さらには摩耗防止性能及び高温清浄性が必要とされる潤滑油、例えば、自動又は手動変速機等の駆動系用潤滑油、湿式ブレーキ、油圧作動油、タービン油、圧縮機油、軸受け油、冷凍機油等の潤滑油としても好適に使用することができる。
Claims (9)
- 潤滑油基油に、組成物全量基準で、
(A)金属元素の価数×金属元素含有量(mol)/せっけん基含有量(mol)で表される金属比が2.6以下であるアルカリ金属又はアルカリ土類金属サリシレート系清浄剤を金属元素換算量で0.005〜1質量%、及び
(B)ジチオリン酸亜鉛を硫黄元素換算量で0.1質量%以下含有し、かつ組成物中の硫黄分が0.2質量%以下であることを特徴とする潤滑油組成物。 - 潤滑油基油に、組成物全量基準で、
(A)金属元素の価数×金属元素含有量(mol)/せっけん基含有量(mol)で表される金属比が2.6以下であるアルカリ金属又はアルカリ土類金属サリシレート系清浄剤を金属元素換算量で0.005〜1質量%、
(B)ジチオリン酸亜鉛を硫黄元素換算量で0.1質量%以下、及び
(C)一般式(2)で表されるリン化合物、一般式(3)で表されるリン化合物、及びそれらの金属塩又はアミン塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物をリン元素換算量で0.005〜0.5質量%含有し、かつ組成物中の硫黄分が0.2質量%以下であることを特徴とする潤滑油組成物。
- 潤滑油基油に、組成物全量基準で、
(A)金属元素の価数×金属元素含有量(mol)/せっけん基含有量(mol)で表される金属比が1.5以下のアルカリ金属又はアルカリ土類金属サリシレート系清浄剤と金属比が1.5を越えるアルカリ金属又はアルカリ土類金属サリシレート系清浄剤とを、それらの混合物としての金属比が2.6以下であるものを金属元素換算量で0.005〜1質量%、及び
(B)ジチオリン酸亜鉛を硫黄元素換算量で0.1質量%以下含有することを特徴とする潤滑油組成物。 - 金属比が1.5以下であるアルカリ金属又はアルカリ土類金属サリシレート系清浄剤を必須成分として含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の潤滑油組成物。
- (C)成分が、一般式(3)で表されるリン化合物及びその金属塩又はアミン塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物であり、当該リン化合物が、一般式(3)におけるX4、X5、X6及びX7の全てが、酸素原子であり、R14、R15及びR16の内の少なくとも1つが炭素数1〜30の炭化水素基であることを特徴とする請求項2に記載の潤滑油組成物。
- 更に(D)無灰分散剤及び(E)酸化防止剤から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかの項に記載の潤滑油組成物。
- 潤滑油基油の硫黄分が0.005質量%以下であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかの項に記載の潤滑油組成物。
- 硫黄分が50質量ppm以下の燃料を使用する内燃機関に用いられることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかの項に記載の潤滑油組成物。
- ガスエンジンに用いられることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかの項に記載の潤滑油組成物。
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