JP4105534B2 - 車両用シート - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シートバックを前方へ倒し込むことにより、シートクッションを前方へ移動させながら下降させ、その上にシートバックを重畳させて格納状態にすることが可能な形式の車両用シートに関する。
【０００２】
【従来の技術】
このような格納式のシートについては、例えば特許文献１に開示された技術が既に知られている。この技術では、シートクッションの前方側が、車体フロア側のブラケットに対してフロントリンクにより支持されているとともに、シートクッション側とシートバック側とがリンク部材によって連結されている。そこで、シートバックを、その起立位置から前方へ倒し込むことにより、リンク部材を通じてフロントリンクが回動し、シートクッションを前方へ移動させながら下降させる。このシートクッション上にシートバックが重畳され、シートは格納状態となる。
【０００３】
【特許文献１】
特開２００２−１５４３５９号公報
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
従来の格納式シートにおいては、シートバックを通常の起立位置から後方へ倒すリクライニング操作時にも、リンク部材を通じてフロントリンクが格納時とは反対方向へ回動する。このため、シートバックの動きにシートクッションが連動し、シートクッションが後方へ移動しながら上昇するといった、せり上がり現象を招き、着座姿勢が変化する。このようなシートクッションの動きを抑えるためには、リクライニング操作におけるシートバックの倒れ角度を小さく規制しなければならない。
本発明は、従来の課題を解決しようとするもので、その目的は、格納式シートであっても、リクライニング操作時におけるシートバックの倒れ角度を規制することなく、着座姿勢を正規の状態に保持可能とすることである。
【０００５】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記の目的を達成するためのもので、請求項１に記載の発明は、シートバックを前方へ倒し込む格納操作により、連結部材を通じてシートクッションを前方へ移動させながら下降させるとともに、前記シートバックが前記シートクッション上に重畳された格納状態にすることが可能な形式の車両用シートであって、前記連結部材が、シートクッション側に固定された第１部材と、シートバック側に回転軸によって連結された第２部材とを相対的に回動可能に連結した構成になっている。そして、前記シートバックを前方へ倒し込む格納操作時の前記第１部材と前記第２部材とは、相互の相対的な回動が規制されて一体関係で作動する。これに対し、前記シートバックを通常の起立位置から後方へ倒すリクライニング操作時における前記第１部材と前記第２部材とは、相互の相対的な回動が許容されて、前記シートクッションを定位置に保持するように構成されている。
このように格納操作時には、シートクッションがシートバックの動きに連動して前方へ移動しながら下降するといった、いわゆるシートクッションのチルトダウンが可能である。しかしながら、リクライニング操作時には、シートバックの動きにシートクッションが連動せず、シートクッションは後方へせり上がる現象を起こすことなく、定位置に保持される。したがって、簡単な構造によってリクライニング操作時におけるシートバックの倒れ角度を規制することなく、着座姿勢を正規の状態に保持することが可能となる。
【０００６】
請求項２に記載の発明は、請求項１に記載された車両用シートであって、シートバックが、車体フロア側のブラケットに対してリクライニング機構により前後方向へ倒すことができるように組み付けられている。前記シートバックを起立位置から後方へ倒すリクライニング操作の間においては、連結部材の第１部材と第２部材とを相対的な回動可能に連結している回転軸が、前記リクライニング機構の回転軸心と同軸線上に位置するように設定されている。
これにより、リクライニング操作時において、シートバックの動きに連動して例え僅かでもシートクッションが動くといった事態を防止できる。
【０００７】
請求項３に記載の発明は、請求項１または２に記載された車両用シートであって、シートクッションの前方側が、車体フロア側のブラケットに対してリンクにより前後方向への移動および昇降可能に支持されている。また、前記シートクッションの後方側は、車体フロア側に配置された支持体により、前記シートクッションを定位置で支持するように構成されている。
これにより、シートバックのリクライニング操作時において、連結部材を構成している第１部材と第２部材との一体的な規制が解除された状態になっても、シートクッションの後方側は支持体で受けられて定位置に保持される。
【０００９】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
図１は、格納式の車両用シートを表した側面図であり、図１（Ａ）は全体を示し、図１（Ｂ）は一部を拡大して示す。図１（Ａ）に示されているロアアーム１０は、シートトラック（図示省略）を介して車体フロア側に支持される。したがって、このロアアーム１０は、本発明における「車体フロア側のブラケット」に相当する。そして、このロアアーム１０に対し、シートを構成するシートクッション１２およびシートバック１４がそれぞれ装着されている。ロアアーム１０はシートの両サイドにそれぞれ配置され、その全体形状は、前方へ延びた前側端部１０ａと上方へ延びた立ち上がり端部１０ｂとを有する略Ｌ字状になっている。
【００１０】
シートクッション１２は、その前方側１２ａが前側のリンク２０によってロアアーム１０に支持され、かつ後方側１２ｂが後側のリンク３０によってシートバック１４に支持された格好になっている。また、シートクッション１２の後方側１２ｂ下面は、両ロアアーム１０の間にわたって配置された支持体４０によって受け止められるようになっている。なお、両リンク２０，３０についても、シートの両サイドにそれぞれ設けられている。一方、シートバック１４については、その下部がロアアーム１０の立ち上がり端部１０ｂに対し、リクライニング機構（図示省略）によって前後方向へ倒すことができるように組み付けられている。
【００１１】
前側のリンク２０については、その下端部がロアアーム１０の前側端部１０ａに回転軸２０ａによって連結され、上端部がシートクッション１２の前方側１２ａに回転軸２０ｂによって連結されている。すなわち、このリンク２０により、シートクッション１２はロアアーム１０に対し、前後方向へ移動しつつ、同時に昇降動作するように支持されている。
【００１２】
後側のリンク３０については、ロアリンク３１とアッパーリンク３２との二部材によって構成されている。ロアリンク３１の下部３１ａは、シートクッション１２の後方側１２ｂに固定され、アッパーリンク３２の上部３２ａは、シートバック１４に対して回転軸３３によって回動可能に連結されている。そして、ロアリンク３１の上端部３１ｂとアッパーリンク３２の下部３２ｂとは、回転軸３４によって回動可能に連結されている。なお、シートバック１４が少なくとも図１（Ａ）で示す通常の起立位置にあるとき、回転軸３４はリクライニング機構の回転軸心１６（図２）と同軸線上に位置するように設定されている。
【００１３】
図１（Ｂ）で明らかなように、ロアリンク３１はその上端部３１ｂから側方へ延びる突出部３１ｃを備えており、アッパーリンク３２の下部３２ｂには突出部３１ｃの先端部を下側から受け止めるピン形状のストッパー３６が固定されている。また、突出部３１ｃとストッパー３６との間には、テンションスプリング３８が設けられている。このスプリング３８により、常時は突出部３１ｃとストッパー３６とが接触状態に保たれ、結果としてロアリンク３１とアッパーリンク３２との相対的な位置関係が所定の状態に保たれている。
なお、後側のリンク３０が本発明における「連結部材」に相当し、ロアリンク３１とアッパーリンク３２とが「第１部材と第２部材」に相当する。
【００１４】
つづいてシートの格納操作について説明する。
まず、シートバック１４の上部に設けられているロック解除レバー１８を、図１（Ａ）の実線状態から仮想線状態に回動操作し、リクライニング機構のロックを解除する。そこで、シートバック１４をリクライニング機構によって図１（Ａ）で示す起立位置から前方へ倒し込むように操作する。このとき、後側のリンク３０を構成しているロアリンク３１とアッパーリンク３２とは、既に説明したように突出部３１ｃとストッパー３６とが接触した状態、つまり相互の相対的な回動が規制された一体関係に保たれている。
【００１５】
したがって、シートバック１４を前方へ倒すと、後側のリンク３０を通じてシートクッション１２が前方へ押され、この力を受けて前側リンク２０が図１（Ａ）の状態から図２、図３で示す順に回動する。この結果、シートクッション１２が、図２のように少し持ち上げられた状態で前方へ移動し、この移動を続けながら図３のように下降し始める。このようなシートクッション１２の動きが、いわゆるチルトダウンと称されている。
【００１６】
シートバック１４をさらに前方へ倒すことにより、最終的には図４で示すようになり、シートクッション１２は、最も前方で、かつ最も車体フロア側へ下降した状態になる。一方、シートバック１４はシートクッション１２上に重畳され、シートは格納状態となる。この格納状態において、シートバック１４の背面はほぼ水平になり、例えば荷室フロアのフラット化が可能となる。
【００１７】
シートを図４の格納状態から図１（Ａ）の使用状態に戻す場合、シートバック１４を図３、図２の順で起立させる。この起立操作時にも、後側のリンク３０のロアリンク３１とアッパーリンク３２とは、スプリング３８によって突出部３１ｃとストッパー３６とが接触した状態、つまり相互の相対的な回動が規制された一体関係に保たれている。したがって、シートバック１４の起立操作に伴い、後側のリンク３０を通じてシートクッション１２が後方へ移動しながら上昇する。この結果、図１（Ａ）で示すように、シートバック１４が通常の起立位置に戻されると、シートクッション１２も正規の着座位置に戻る。
【００１８】
つぎにシートのリクライニング操作について説明する。
まず、シートバック１４をリクライニング機構によって図１（Ａ）で示す起立位置から図５の実線で示すように後方へ倒す。このとき、後側のリンク３０におけるロアリンク３１とアッパーリンク３２との一体関係は解除され、相互の相対的な回動が許容された状態になる。つまり、シートバック１４が後方へ倒れることに伴い、アッパーリンク３２とロアリンク３１とは、リクライニング機構の回転軸心１６と同軸線上にある回転軸３４を支点として相対的に回動する。このときのロアリンク３１の突出部３１ｃと、アッパーリンク３２のストッパー３６とは、スプリング３８の弾性力に抗して互いに離れる。一方、シートクッション１２は、その前方側１２ａが前側リンク２０で支持され、後方側１２ｂが支持体４０によって下側から支持されたまま変化せず、定位置に保持されている。
【００１９】
このように、格納式のシートであっても、リクライニング操作によってシートバック１４を起立位置から後方へ倒す場合は、その動きにシートクッション１２が連動せず、定位置に保持される。したがって、リクライニング操作時におけるシートバック１４の倒れ角度を規制するなどの対策をとることなく、着座者の姿勢を正規の状態に保つことが可能となる。
【００２０】
また、リクライニング操作の間は、回転軸３４とリクライニング機構の回転軸心１６とが互いに同軸線上に位置するよう保持されている。このため、リクライニング操作によるシートバック１４の動きにより、僅かでもシートクッション１２が動くことはない。しかも、リクライニング操作時に後側のリンク３０におけるロアリンク３１とアッパーリンク３２との一体関係は解除されるが、シートクッション１２の後方側１２ｂは支持体４０で支持されているので、この後方側１２ｂが落ち込むことなく、定位置に保持される。
【図面の簡単な説明】
【図１】格納式の車両用シートを表した側面図
【図２】格納操作途中のシートを表した側面図
【図３】格納操作途中のシートを表した側面図
【図４】格納状態のシートを表した側面図
【図５】リクライニング操作時のシートを表した側面図
【符号の説明】
１２ シートクッション
１２ａ 前方側
１２ｂ 後方側
１４ シートバック
２０ リンク
３０ リンク（連結部材）
３１ ロアリンク（第１部材）
３２ アッパーリンク（第２部材）

Claims (3)

1. シートバックを前方へ倒し込む格納操作により、連結部材を通じてシートクッションを前方へ移動させながら下降させるとともに、前記シートバックが前記シートクッション上に重畳された格納状態にすることが可能な形式の車両用シートであって、前記連結部材が、シートクッション側に固定された第１部材と、シートバック側に回転軸によって連結された第２部材とを相対的に回動可能に連結した構成であり、前記シートバックを前方へ倒し込む格納操作時の前記第１部材と前記第２部材とは、相互の相対的な回動が規制されて一体関係で作動し、前記シートバックを通常の起立位置から後方へ倒すリクライニング操作時における前記第１部材と前記第２部材とは、相互の相対的な回動が許容されて、前記シートクッションを定位置に保持するように構成されている車両用シート。
2. 請求項１に記載された車両用シートであって、シートバックが、車体フロア側のブラケットに対してリクライニング機構により前後方向へ倒すことができるように組み付けられ、前記シートバックを起立位置から後方へ倒すリクライニング操作の間においては、連結部材の第１部材と第２部材とを相対的な回動可能に連結している回転軸が、前記リクライニング機構の回転軸心と同軸線上に位置するように設定されている車両用シート。
3. 請求項１または２に記載された車両用シートであって、シートクッションの前方側が、車体フロア側のブラケットに対してリンクにより前後方向への移動および昇降可能に支持され、前記シートクッションの後方側は、車体フロア側に配置された支持体により、前記シートクッションを定位置で支持するように構成されている車両用シート。

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