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JP4069242B2 - 金属粒子担持体及びカルボン酸エステルの製造方法 - Google Patents

金属粒子担持体及びカルボン酸エステルの製造方法 Download PDF

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JP4069242B2
JP4069242B2 JP2002163348A JP2002163348A JP4069242B2 JP 4069242 B2 JP4069242 B2 JP 4069242B2 JP 2002163348 A JP2002163348 A JP 2002163348A JP 2002163348 A JP2002163348 A JP 2002163348A JP 4069242 B2 JP4069242 B2 JP 4069242B2
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  • Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、周期表第4から第6周期の2B族、3B族、4B族、5B族、6B族及び第4周期8族の少なくとも1種の第二元素とAuとを含む新規な金属粒子担持体に関する。また、本発明は、かかる金属粒子担持体からなる触媒及びこの触媒を用いるカルボン酸エステルの製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】
アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等のカルボン酸エステルは、各種の合成樹脂の原料となる重合用モノマーとして工業的に重要な化合物である。
【0003】
アルデヒドからカルボン酸エステルを合成する方法としては、特に酸素の存在下にアルデヒド(アクロレイン、メタクロレイン等)とアルコール(メタノール等)とを反応させる方法が知られている。そして、この反応においては、触媒活性成分として特定の金属を用い、これを担体上に担持させた触媒を用いることが知られている。
【0004】
例えば、酸素の存在下にアルデヒドとアルコールを反応させてカルボン酸エステルを製造するにあたり、パラジウムと、鉛及び鉛化合物の少なくとも1種とからなる触媒を用いることを特徴とするカルボン酸エステルの製造方法が知られている(特公昭57−35859号)
また、アルデヒドとアルコールを含酸素ガス存在下に反応させてカルボン酸エステルを製造するに際し、金を担体上に担持した触媒の存在下に反応させることを特徴とするカルボン酸エステルの製造方法が提案されている(特開2000−154164)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来技術で挙げられている触媒はいずれも触媒活性がなお低く、十分なものとは言えない。上記のような酸化反応用触媒として利用するためにはさらなる改良が必要とされている。
【0006】
従って、本発明の主な目的は、新規な金属粒子担持体を提供することにある。詳しくは、より触媒活性に優れた酸化反応用触媒を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、かかる従来技術の問題点を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の金属粒子担持体が上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、下記の金属粒子担持体及びカルボン酸エステルの製造方法に係るものである。
【0009】
1.周期表第4周期から第6周期の2B族、3B族、4B族、5B族、6B族及び第4周期8族の少なくとも1種の第二元素と金とを含有する金属粒子が担体上に担持された金属粒子担持体。
【0010】
2.周期表第4周期から第6周期の2B族、3B族、4B族、5B族及び6B族の少なくとも1種の第二元素と金とを含有する金属粒子が担体上に担持された金属粒子担持体。
【0011】
3.金及びその化合物の少なくとも1種ならびに第二元素及びその化合物の少なくとも1種を含む担体を熱処理することによって得られる前記項1又は2に記載の金属粒子担持体。
【0012】
4.析出沈殿法により金が担持上に担持されてなる金担持体と、第二元素を含む化合物が溶解した溶液との混合物を調製した後、当該混合物から回収された固形分を熱処理することによって得られる前記項1〜3のいずれかに記載の金属粒子担持体。
【0013】
5.第二元素として少なくともPbを含む前記項1〜4のいずれかに記載の金属粒子担持体。
【0014】
6.担体が、Si、Al、Ti及びZrの少なくとも1種の元素を含む酸化物である前記項1〜5のいずれかに記載の金属粒子担持体。
【0015】
7.前記項1〜6のいずれかに記載の金属粒子担持体からなる酸化反応用触媒。
【0016】
8.酸素の存在下に、アルデヒドとアルコールを反応させることによりカルボン酸エステルを合成する反応に用いる、前記項1〜6のいずれかに記載の金属粒子担持体からなる酸化反応用触媒。
【0017】
9.前記項7又は8に記載の触媒と酸素の存在下に、アルデヒドとアルコールを反応させることを特徴とするカルボン酸エステルの製造方法。
【0018】
10.金属粒子の平均粒子径が6nm以下である前記項1又は2に記載の金属粒子担持体。
【0019】
11.金属粒子がAu及びPbを含む前記項1又は2に記載の金属粒子担持体。
【0020】
12.アルデヒドがアクロレイン及びメタクロレインの少なくとも1種である前記項8記載の酸化反応用触媒。
【0021】
13.アルデヒドがアクロレイン及びメタクロレインの少なくとも1種である前記項9記載の製造方法。
【0022】
14.アルコールがメタノール及びエタノールの少なくとも1種である前記項8記載の酸化反応用触媒。
【0023】
15.アルコールがメタノール及びエタノールの少なくとも1種である前記項9記載の製造方法。
【0024】
16.アルデヒドがグリオキザール及びビルビックアルデヒドの少なくとも1種、かつ、アルコールが炭素数1〜4の1級アルコールの少なくとも1種である前記項8記載の酸化反応用触媒。
【0025】
17.アルデヒドがグリオキザール及びビルビックアルデヒドの少なくとも1種、かつ、アルコールが炭素数1〜4の1級アルコールの少なくとも1種である前記項9記載の製造方法。
【0026】
18.金が担体上に担持されてなる金担持体と、第二元素を含む化合物が溶解した溶液との混合物を調製した後、当該混合物から回収された固形分を熱処理することによって得られる前記項1又は2に記載の金属粒子担持体。
【0027】
【発明の実施の形態】
1.金属粒子担持体
本発明の金属粒子担持体は、周期表第4から第6周期の2B族、3B族、4B族、5B族、6B族及び第4周期8族の少なくとも1種の第二元素と金とを含有する金属粒子が担体上に担持された点に特徴を有する。
【0028】
本発明担持体の金属粒子は、少なくとも、第一元素としてのAuと、第二元素とから主に構成される。すなわち、個々の金属粒子がいずれも第一元素及び第二元素の双方を含有することが好ましい。また、本発明所定の効果が得られる限り、金と第二元素が合金又は金属間化合物を形成していても良い。
【0029】
上記の第二成分としては周期表(「化学分析便覧 改訂第5版」丸善(2001年))の第4から第6周期の2B族、3B族、4B族、5B族及び6B族の少なくとも1種を用いることができる。具体的には、2B族(亜鉛族)としてZn、Cd、Hg、3B族(ホウ素族)としてGa、In、Tl、4B族(炭素族)としてGe、Sn、Pb、5B族(窒素族)としてAs、Sb、Bi、6B族(酸素族)としてSe、Te、Po、第4周期8族としては、Fe、Co、Ni等が例示できる。本発明では、第二元素として少なくともPbを含むことが好ましい。例えば、Au及びPbを含む金属粒子が担体上に担持されている金属粒子担持体を好適に用いることができる。
【0030】
なお、本発明の金属粒子は、本発明の効果を妨げない範囲内で第二元素以外の元素又は不純物が含まれていても良い。
【0031】
本発明担持体における金属粒子の粒子径は、所定の触媒活性が得られる限り限定的ではないが、特に平均粒子径が6nm以下、特に5nmであることが好ましい。この範囲内に設定すれば、より確実に優れた触媒活性を得ることができる。なお、本発明における金属粒子の平均粒子径は、担体上の金属粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)による観察により任意に選んだ120個のうち、1)大きい順に上から10個及び2)小さい順に下から10個の合計20個を除いた100個の粒子径の算術平均値を示す。また、本発明の金属粒子の粒子径分布の極大値が1〜6nm、特に1〜5nmの範囲にあることが好ましい。粒子径の分布は狭い方が好ましく、上記120個の粒子径の標準偏差(Standard Deviation)が2以下、特に1.5以下であることが好ましい。
【0032】
担体としては、上記の金属粒子を担持できるものであれば特に限定されず、従来のカルボン酸エステル合成に用いられる触媒担体を用いることもできる。例えば、金属酸化物(シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、マグネシア等)、複合金属酸化物(シリカ・アルミナ、チタニア・シリカ、シリカ・マグネシア等)、ゼオライト(ZSM−5等)、メソポーラスシリケート(MCM−41等)、天然鉱物(粘土、珪藻土、軽石等)、炭素材料(活性炭、黒鉛等)の各種担体を挙げることができる。
【0033】
また、担体は多孔質であることが好ましく、特にその比表面積(BET法)が通常50m2/g以上、特に100m2/g以上であることがより好ましい。担体の形状・大きさは限定的でなく、最終製品の用途等に応じて適宜決定すれば良い。
【0034】
本発明担持体では、本発明の効果を妨げない限り、他の成分が含まれていても良い。例えば、アルカリ金属(Na、K等)、アルカリ土類金属(Ca、Mg等)が含まれていても良い。
【0035】
本発明担持体における金の担持量は、最終製品の用途、担体の種類等に応じて適宜決定すれば良いが、通常は担体100重量部に対して0.01〜20重量部程度、好ましくは0.1〜10重量部とすることが好ましい。
【0036】
また、本発明担持体における第二元素の担持量は、第二元素の種類、担体の種類等に応じて適宜決定すれば良いが、通常は担体100重量部に対して0.01〜20重量部程度、好ましくは0.1〜10重量部とすることが好ましい。
【0037】
金と第二元素との担持割合はそれぞれ上記担持量の範囲内であれば限定的ではないが、通常は原子比で金:第二元素=1:0.01〜100程度、好ましくは1:0.1〜10、最も好ましくは1:0.2〜5とする。この範囲内に設定することにより、いっそう優れた触媒活性を得ることができる。
【0038】
本発明担持体の製造方法は、上記のような担持体が得られる限りその制限はない。例えば、金及びその化合物の少なくとも1種ならびに第二元素及びその化合物の少なくとも1種を含む担体を熱処理することによって得ることができる。金の化合物、第二元素の化合物は、いずれも水酸化物、塩化物、カルボン酸塩、硝酸塩、アルコキサイド、アセチルアトナート塩等のいずれであっても良い。
【0039】
また、担体に金及び第二元素を担持させる順序も限定的でなく、いずれが先であっても良いし、また同時であっても良い。すなわち、以下に示す製法(A)〜(C)のいずれの方法を用いることができる。すなわち、(A)金を担体に担持した後、第二元素を担持する方法、(B)第二元素を担体に担持した後、金を担持する方法、(C)金と第二元素とを同時に担体に担持する方法が適用できる。以下、各方法について説明する。
【0040】
製法(A)
上記(A)の方法は、金を担体に担持した後、第二元素を担持する方法である。まず、金が担持されてなる金担持体を製造する。金担持体の製法は限定的でなく、例えば共沈法、析出沈殿法、含浸法、気相蒸着法等の従来の方法を適用できる。本発明では、共沈法、析出沈殿法等が好ましく、この中でも析出沈殿法がより好ましい。
【0041】
本発明で析出沈殿法を用いる場合には、例えば金化合物を含む水溶液に担体を共存させ、金含有沈殿物を担体表面上に析出沈殿させた後、金含有沈殿物が析出した担体を焼成することによって金担持体を得ることができる。金含有沈殿物を担体表面上に析出沈殿させる場合には、上記水溶液の金濃度、温度、pH等の諸条件を適宜制御すれば良い。また、金含有沈殿物が析出した担体は、必要に応じて、焼成に先立って水洗、乾燥等を施しても良い。
【0042】
上記金化合物は水溶性であれば特に限定されない。例えば、テトラクロロ金(III)酸「H〔AuCl4〕」、テトラクロロ金(III)酸ナトリウム「Na〔AuCl4〕」、ジシアノ金(I)酸カリウム「K〔Au(CN)2〕」、ジエチルアミン金(III)三塩化物「(C252NH〔AuCl3〕」等の錯体;シアン化金(I)等の金化合物が挙げられる。これらの化合物は少なくとも1種を用いることができる。
【0043】
上記水溶液の金濃度は、用いる化合物の種類等によって異なるが、通常は0.1〜100mmol/L程度とすれば良い。また、上記水溶液のpHは、通常5〜10程度、好ましくは6〜9の範囲内に設定すれば良い。上記pHは、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、アンモニア等のアルカリにより調節することができる。また、必要により、塩酸等の酸を使用することもできる。これらのアルカリ又は酸は、必要により水溶液の形態で使用しても良い。
【0044】
必要により、上記水溶液に界面活性剤を添加することもできる。界面活性剤は、上記水溶液に応じて公知のもの又は市販品の中から適宜選択すれば良い。例えば、長鎖アルキルスルホン酸及びその塩、長鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩、長鎖アルキルカルボン酸及びその塩、アリールカルボン酸及びその塩等のアニオン性界面活性剤;長鎖アルキル4級アンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤;ポリアルキレングリコール、ポリオキシエチレンノニルフェノール等のノニオン性界面活性剤;等が挙げられる。これら界面活性剤は少なくとも1種を用いることができる。本発明では、アニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤が好ましく、特にアニオン性界面活性剤が好ましい。アニオン性界面活性剤の中でも、とりわけ、炭素数8以上の長鎖アルキルスルホン酸及びその塩、炭素数8以上の長鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩、炭素数8以上の長鎖アルキルカルボン酸及びその塩、アリールカルボン酸及びその塩等がより好ましい。
【0045】
界面活性剤の使用量は、所望の分散性、用いる界面活性剤の種類等により適宜決定することができるが、通常は界面活性剤の濃度が0.1〜10mmol/L程度とすれば良い。
【0046】
上記水溶液と混合する担体としては、前記のような各種担体を用いることができる。担体は、顆粒状、造粒体等のいずれの形態で使用しても良い。担体の使用量は、上記水溶液の濃度、用いる担体の種類等に応じて適宜設定すれば良い。上記水溶液と担体とを混合する際には、必要に応じて上記水溶液を加温しても良い。この場合の温度は、通常10〜100℃程度とすれば良い。また、上記水溶液と単体との混合時間は、担体の種類、構成元素等によって変更できるが、通常は1分〜24時間程度、好ましくは10分〜3時間の範囲内で、金を含む沈殿物ができるだけ多く担体上に担持されるように設定すれば良い。担体の使用量は、所定の担持量となるように適宜設定すれば良い。
【0047】
上記水溶液と担体とを混合・攪拌した後、固形分を回収する。固形分の回収は、上澄液の回収により行ったり、あるいは公知の固液分離法に従って実施することができる。回収された固形分は、残留イオンが実質的になくなるまでイオン交換水等で洗浄することが好ましい。
【0048】
次いで、上記固形分の焼成を行う。必要に応じて、焼成に先立って予め所定温度に加熱して乾燥しても良い。乾燥温度は、通常150℃未満とすれば良い。焼成温度は、通常150〜800℃程度、好ましくは200〜700℃、より好ましくは250〜600℃とすれば良い。焼成雰囲気は空気(大気)中又は酸化性雰囲気中でも良いし、あるいは窒素、アルゴンガス、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気中、水素ガス、一酸化炭素等の還元性雰囲気中のいずれであっても良い。また、焼成時間は、焼成温度、固形分の大きさ等に応じて適宜決定すれば良い。かかる焼成によって、金が担体表面に強固に固定された所定の金担持体を得ることができる。
【0049】
次に、第二元素及びその化合物の少なくとも1種を金担持体に担持した後、熱処理することにより金と第二元素とを複合化させる。
【0050】
上記の担持方法は限定的でなく、従来方法に従って行うことができる。例えば、含浸法、イオン交換法、気相蒸着法等が挙げられる。このうち、含浸法が好適に使用できる。例えば、第二元素を含む化合物が溶解した溶液と上記金担持体との混合物を調製した後、当該混合物から回収された固形分を熱処理することにより好適に第二元素を担持することができる。
【0051】
第二元素を含む化合物としては、特に限定されないが、硝酸塩、硫酸塩、水酸化物、塩化物等の無機化合物、ギ酸塩、酢酸塩、β−ジケトン化合物、アルコキサイド等の有機化合物を例示することができる。より具体的には、酢酸鉛、酢酸亜鉛、硝酸亜鉛、硝酸ビスマス、ゲルマニウム(III)ブトキシド、ニッケルビスマスアセチルアセトナート、酢酸鉄等を挙げることができる。
【0052】
第二元素を含む化合物が溶解した溶液は、第二元素を含む化合物及びそれが溶解する溶媒の組合せを用いることにより調製できる。溶媒としては特に限定はないが、水、有機溶媒等を用いることができる。有機溶媒としては、例えばアルコール。ケトン、芳香族炭化水素、カルボン酸エステル、ニトリル等を挙げることができる。特に、水及びアルコール(特にメタノール及びエタノール)の少なくとも1種を用いることが好ましい。従って、上記組合せは、水又はアルコールに溶解する上記化合物を用いることが好ましい。例えば、第二元素としてPbを用いる場合は、酢酸鉛(水和物でも良い。)をメタノールに溶解させた溶液を好適に用いることができる。
【0053】
第二元素を含む化合物が溶解した溶液の第二元素濃度は、上記化合物の種類、溶媒の種類等に応じて適宜決定できるが、通常は0.01〜10mmol/L程度にすれば良い。
【0054】
また、上記金担持体と、第二元素を含む化合物が溶解した溶液との混合割合は、上記溶液の濃度、金又は第二元素の所望の担持量等に応じて適宜決定することができる。
【0055】
上記金担持体と、第二元素を含む化合物が溶解した溶液との混合物を調製した後、当該混合物から固形分を回収する。固形分の回収方法は限定的ではないが、例えば第二元素を含む化合物を金担持体に担持されるようにすれば良い。例えば、エバポレーター等により溶媒を留去することが好ましい。
【0056】
次いで、固形分の熱処理を実施する。熱処理温度は、得られる各金属粒子が金及び第二元素から構成されるような温度とすれば良い。すなわち、最終的に得られる金属粒子担持体を触媒として用いた場合に金と第二元素との複合化による触媒活性が発現されるように熱処理すれば良い。
【0057】
かかる熱処理温度は、第二元素の種類等によって異なるが一般的には50〜800℃程度、好ましくは100〜600℃とすれば良い。
【0058】
熱処理雰囲気は特に限定されず、還元性雰囲気、酸化性雰囲気、不活性雰囲気等のいずれでも良い。還元性雰囲気とするためには、例えば水素、一酸化炭素、アルコール等の還元性ガスのほか、これらの還元性ガスを窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスで希釈した混合ガスを使用すれば良い。また、酸化性雰囲気とするためには、酸素、空気等を含むガスを使用すれば良い。不活性雰囲気とするためには、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスを使用すれば良い。本発明では、特に還元性雰囲気とすることが望ましい。また、酸化性雰囲気で熱処理した後、還元性雰囲気で熱処理することもできる。
【0059】
また、熱処理時間は、熱処理の温度等によって適宜変更することができるが、通常10分〜24時間程度とすれば良い。
【0060】
第二元素の種類によっては、金との複合化をさらに促進するために、上記熱処理に先立ってホルマリン、ヒドラジン、水素化ホウ素ナトリウム、ギ酸等の還元剤を用いて固形分を還元処理しても良い。
【0061】
方法(B)
上記(B)の方法では、第二元素を担体に担持した後、金を担持する方法である。第二元素に担持する方法は限定的でなく、例えば上記(A)と同様の方法を使用できる。すなわち、担体にまず上記(A)と同様の方法にて第二元素を担持すれば良い。第二元素の原料、担持条件等も、上記(A)で掲げたものと同様にすれば良い。
【0062】
ただし、場合によっては、その後の金担持操作上好ましい付加的処理として、酸化性雰囲気下(空気又は酸素を含むガスの存在下)300〜900℃程度で焼成することにより第二元素を担体に強固に固定化することができる。
【0063】
こうして製造された第二元素担持体への金の担持は、上記(A)と同様の方法にて実施できる。すなわち、析出沈殿法等により金を担持した後、乾燥及び焼成を上記(A)と同様にして実施すれば良い。また、上記(A)と同様、金と第二元素との複合化をより十分なものとするために、上記(A)と同様の還元性雰囲気下での熱処理を行うことが望ましい。また、必要に応じて、さらに還元剤を用いた還元処理を組み合わせることもできる。
【0064】
方法(C)
上記(C)の方法は、金と第二元素とを同時に担体に担持する方法である。その方法は、両者を同時に担持できれば限定されない。例えば、共沈法、析出沈殿法、含浸法、気相蒸着法等の従来の方法が使用できる。いずれの場合も、担体に金を担持する際に、系内に第二元素を含む化合物を共存させることによって両者を同時に担持することができる。さらに、両者を担持したものを上記の方法(A)又は(B)と同様に熱処理及び/又は還元処理を施すことにより、金及び第二元素を含む金属超微粒子が担体上に担持された本発明触媒を得ることができる。
【0065】
本発明では、析出沈殿法又は含浸法を好適に使用することができる。析出沈殿法では、金を含む化合物(例えば水酸化物)として析出し、沈殿を形成しやすい条件(例えば、上記化合物が水酸化物である場合、温度30〜100℃、pH5〜10、金濃度0.1〜100mmol/L)において、第二元素を含む化合物が析出し、沈殿を形成するように制御することが望ましい。この場合、第二元素を含む水溶性化合物を出発原料として用い、その水溶液から第二元素を含む水酸化物として沈殿を形成させることが望ましい。また、沈殿形成の際に、金と第二元素の各水酸化物が同時に沈殿を形成し、金及び第二元素とをともに含有する水酸化物を生成することが望ましい。これらの沈殿物は、さらに熱処理及び/又は還元処理を施すことによって本発明触媒を得ることができる。
【0066】
含浸法では、金化合物及び第二元素を含む化合物が有機溶媒中に溶解した溶液に担体を加え、必要により有機溶媒の留去等を行うことにより、金化合物及び第二元素を含む化合物を同時に担体上に付着させ、次いで熱処理及び/又は還元処理を施すことによって本発明触媒を得ることができる。典型例としては、金のアセチルアセトナート化合物(例えば、ジメチル金アセチルアセトナート)と第二元素のアセチルアセトナート化合物(例えば、ニッケルアセチルアセトナート)とを含有するメタノール溶液を担体に含浸させ、メタノールを留去した後、乾燥及び還元処理することによって、金及び第二元素を含有する金合金超微粒子(例えば、Au−Ni合金超微粒子)が担体に担持された本発明触媒を得ることができる。
【0067】
上記の析出沈殿法又は含浸法で使用される原料化合物、操作条件等は、前記ので示したものを適用できる。
【0068】
本発明の金属粒子担持体は、各種の酸化反応用触媒として応用できる。特に、分子状酸素を用いた有機化合物の部分酸化に広く有用である。アルコールやアルデヒドの酸化、特に酸素の存在下におけるアルデヒドとアルコールからのカルボン酸エステルの製造に好ましく用いることができる。
2.カルボン酸エステルの製造方法
本発明のカルボン酸エステルの製造方法は、本発明担持体からなる触媒と酸素の存在下に、アルデヒドとアルコールを反応させることを特徴とする。すなわち、酸素、アルテヒド及びアルコールを反応させる。
【0069】
上記アルデヒドとしては、例えばホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、イソブチルアルデヒド、グリオキザール、ピルビックアルデヒド等の炭素数1〜10の脂肪族アルデヒド;アクロレイン、メタクロレイン、クロトンアルデヒド等の炭素数3〜10のα、β−不飽和アルデヒド;ベンズアルデヒド、p−メトキシベンズアルデヒド、トルアルデヒド、フタルアルデヒド等の炭素数6〜20の芳香族アルデヒド等のほか、これらアルデヒドの誘導体が挙げられる。好ましくは、脂肪族アルデヒド、α、β−不飽和アルデヒド等が使用できる。これらアルデヒドは、1種又は2種以上で用いることができる。
【0070】
上記アルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、オクタノール等の炭素数1〜10の脂肪族アルコール;エチレングリコール、ブタンジオール等の炭素数2〜10のジオール;アリルアルコール、メタリルアルコール等の炭素数3〜10の脂肪族不飽和アルコール;ベンジルアルコール等の芳香族アルコール等が挙げられる。好ましくは、炭素数1〜10の脂肪族アルコール等が好適に使用できる。これらアルコールは、1種又は2種以上で用いることができる。
【0071】
本発明の製造方法では、目的とするカルボン酸エステルの種類等によって上記アルデヒド及びアルコールを適宜選択すれば良い。例えば、メチルメタクリレートを合成する場合には、アルデヒドとしてメタクロレイン、アルコールとしてメタノールを用いれば良い。
【0072】
アルデヒドとアルコールとの反応割合は特に限定されないが、アルデヒド/アルコールのモル比で10〜1/200程度が好ましく、特に1/2〜1/50の範囲がより好ましい。上記範囲内であれば、より効率的にカルボン酸エステルを合成することが可能になる。
【0073】
本発明では、アルデヒドとアルコールとの反応を本発明担持体からなる触媒と酸素(分子状酸素)の存在下に行う。
【0074】
上記反応は、液相反応、気相反応等のいずれであっても良い。酸素(酸素ガス)は、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、二酸化炭素ガス等の不活性ガスで希釈されていても良い。また、酸素、空気等の酸素含有ガスを用いることもできる。酸素含有ガスの反応系への供給方法は特に限定されず、公知の方法を採用できる。特に、液中へのバブリング等を好適に用いることができる。
【0075】
上記反応の形態としては、連続式、回分式、半回分式等のいずれであっても良く、特に限定されるものではない。触媒は、反応形態として回分式を採用する場合には、反応装置に原料とともに一括して仕込めば良い。また、反応形態として連続式を採用する場合には、反応装置に予め上記触媒を充填しておくか、あるいは反応装置に原料とともに触媒を連続的に仕込めば良い。触媒は、固定床、流動床、懸濁床等のいずれの形態であっても良い。
【0076】
上記触媒の使用量は、アルデヒドとアルコールとの組合せ、触媒の種類、反応条件等に応じて適宜決定すれば良い。反応時間は特に限定されるものではなく、設定した条件により異なるが、通常は反応時間又は滞留時間(反応器内滞留液量/液供給量)として0.5〜20時間程度とすれば良い。
【0077】
反応温度、反応圧力等の諸条件は、アルデヒドとアルコールとの組合せ、触媒の種類等に応じて適宜決定すれば良い。反応温度は、通常0〜180℃程度、好ましくは20〜150℃とすれば良い。この範囲内の温度に設定することにより、いっそう効率的に反応を進行させることができる。反応圧力は、減圧、常圧又は加圧のいずれであっても良いが、通常は0.05〜5MPa(ゲージ圧)、特に0.1〜2MPaの範囲内が好適である。反応器流出ガスの酸素濃度が爆発範囲(8%)を超えないように全圧を設定すれば良い。また、反応系のpHは、副生成物抑制等の見地よりpH6〜9程度とすることが望ましい。pH調節のために、例えばアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物(カルボン酸塩)を反応系への添加剤として使用することもできる。
【0078】
上記の反応後は、反応系から触媒を分離した後、生成したカルボン酸エステルを公知の分離精製手段等を用いて回収すれば良い。触媒の分離方法は公知の方法に従えば良い。例えば、反応系が触媒(固形分)と反応生成物(液状成分)からなる場合は、ろ過、遠心分離等の公知の固液分離方法を用いて触媒と反応生成物を分離することができる。
【0079】
本発明の製造方法で得られるカルボン酸エステルは、従来技術で得られるカルボン酸エステルと同様の用途に使用することができる。例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等のカルボン酸エステルは、各種アクリル樹脂の原料となる重合用モノマーとして有用である。
【0080】
【発明の効果】
本発明の金属粒子担持体は、特に、Auと第二元素とを含む金属粒子が担体上に担持されていることから、酸化反応用の触媒として使用する場合には従来より優れた触媒活性を発揮することができる。しかも、繰り返し使用しても、従来技術のように容易に性能劣化せず、高い活性を維持することができる。これらの点については、本発明担持体をアルデヒドとアルコールからカルボン酸エステルを合成する反応に触媒として用いる場合に特に有効である。
【0081】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴を一層明確にする。但し、本発明の範囲は、実施例の範囲に限定されるものではない。
【0082】
なお、実施例及び比較例における物性の測定等は、次のような方法で実施した。(1)金超微粒子又は金属超微粒子の担持量
蛍光X線分析により測定した。
(2)金超微粒子又は金属超微粒子の平均粒子径
透過型電子顕微鏡(TEM)(装置名「HF−2000」日立製作所、加速電圧200kV)で粒子径を観察し、付属のX線分析装置により粒子の成分分析を行った。
(3)反応生成物の定量
ガスクロマトグラフィー及び/又は液体クロマトグラフィーにより、反応液中の反応生成物の成分を定量分析した。
(4)転化率、選択率及び収率
転化率、選択率及び収率は、それぞれ次の各式に基づいて算出した。
【0083】
転化率(%)=(1−B/A)×100
選択率(%)={C/(A−B)}×100
収 率(%)=(C/A)×100
(但し、上記3式において、A:仕込みアルデヒド又は仕込みアルコールのモル数、B:残存アルデヒドのモル数、C:生成したカルボン酸エステルのモル数をそれぞれ示す。)
実施例1
(1)金属粒子担持体の調製
▲1▼ Au担持
濃度20mmol/Lのテトラクロロ金酸水溶液0.5Lを65〜70℃に保持しながら、0.5mol/L水酸化ナトリウム水溶液を用いて上記水溶液をpH7に調節した。この水溶液に市販γ−アルミナ(商品名「AC−12R」住友化学製)40gを撹拌下に投入し、65〜70℃に保持しながら1時間撹拌を続けた。その後、静置して上澄液を除去し、残った金固定化物にイオン交換水0.8Lを加えて室温で5分間撹拌した後、上澄液を除去するという洗浄工程を3回繰り返した。ろ過によって得られた金固定化物を100℃で10時間乾燥し、さらに空気中400℃で3時間焼成することにより、γ−アルミナ上に金が担持された金担持体(Au/γ−アルミナ)を得た。この担持体における金の担持量を測定した結果、担体に対して4.6重量%であった。
【0084】
▲2▼ Pbの複合化
酢酸鉛3水塩0.74g含むメタノール溶液30mlに上記▲1▼の金担持体10gを加えた後、エバポレータにて常温下メタノールを留去した。残った固体を内径10mmのガラス製管に充填し、充填層を450℃に加温しながら水素10%及びアルゴン90%からなる混合ガスを毎時6Lの流量で3時間流通させた。こうして金と鉛とを含有する金属粒子をアルミナ担体上に担持させた金属粒子担持体(Pb−Au/γ−アルミナ)を得た。この担持体における鉛の担持量を蛍光X線分析により測定した結果、担体に対して4.0重量%であった。
【0085】
また、この金属粒子担持体の金属粒子の粒子径を調べた結果、金属種がすべて5nm以下の粒子径で高分散しており、粒子径2〜3nm付近に極大をもつ狭い粒子径分布を示し、平均粒子径が5nm以下であることが確認された。さらに、金属粒子1個ごとの組成を調べた結果、どの金属粒子にも金と鉛の両方の成分が検出された。
(2)カルボン酸エステルの製造
前記(1)で得られた金属粒子担持体(Pb−Au/γ−アルミナ)を触媒として用いてカルボン酸エステルの製造を行った。
【0086】
100ml回転撹拌付きオートクレーブにメタクロレイン3ml、メタノール15ml及び上記金属粒子担持体(Pb−Au/γ−アルミナ)0.5gを入れて密封した。次いで、系内を酸素にて0.3MPaに加圧した後、撹拌下80℃に加温し、この温度を1時間保持した。その後、冷却し、開封し、触媒と反応液とをろ過により分離し、上記反応液を分析した結果、メタクロレインの転化率60%、メチルメタクリレートの選択率及び収率はそれぞれ91%及び55%、単位触媒重量当たりのメチルメタクリレート生成活性は39.6mol/h/kg−触媒であった。
【0087】
実施例2
実施例1の(1)▲2▼において、酢酸鉛3水塩の量を0.74gから0.46gに変更したほかは同様の操作により、金及び鉛を含有する金属粒子がアルミナ担体に担持された金属粒子担持体を得た。この金属粒子担持体における金及び鉛の含有量はそれぞれ4.6重量%及び2.5重量%であった。
【0088】
この金属粒子担持体を触媒として用い、実施例1の(2)と同様にしてカルボン酸エステルの製造を行った。生成した反応液を分析した結果、メタクロレインの転化率52%、メチルメタクリレートの選択率及び収率はそれぞれ90%及び47%、単位触媒重量当たりのメチルメタクリレート生成活性は33.9mol/h/kg−触媒であった。
【0089】
実施例3
実施例1の(1)▲2▼において、酢酸鉛3水塩の量を0.74gから1.39gに変更したほかは同様の操作により、金及び鉛を含有する金属粒子がアルミナ担体に担持された金属粒子担持体を得た。この金属粒子担持体における金及び鉛の含有量はそれぞれ4.6重量%及び7.5重量%であった。
【0090】
この金属粒子担持体を触媒として用い、実施例1の上記(2)と同様にしてカルボン酸エステルの製造を行った。生成した反応液を分析した結果、メタクロレインの転化率58%、メチルメタクリレートの選択率及び収率はそれぞれ88%及び51%、単位触媒重量当たりのメチルメタクリレート生成活性は36.7mol/h/kg−触媒であった。
【0091】
比較例1
実施例1の(1)▲1▼で得られた金担持体(Au/γ−アルミナ)を触媒として用いて、実施例1の上記(2)と同様にしてカルボン酸エステルの製造を行った。生成した反応液を分析した結果、メタクロレインの転化率24%、メチルメタクリレートの選択率及び収率はそれぞれ81%及び19%、単位触媒重量当たりのメチルメタクリレート生成活性は14.1mol/h/kg−触媒であった。この結果より、比較例1は、実施例1及び2よりも低活性であることから、実施例ではAuとPbとの複合効果が発揮されていることがわかる。
【0092】
比較例2
実施例1の(1)▲2▼において、金担持体(Au/γ−アルミナ)10gに代えてγ−アルミナ(商品名「AC−12R」住友化学製)10gを鉛担持体(Pb/γ−アルミナ)を調製した。この鉛担持体を触媒として用いて用い、実施例1の(2)と同様にしてカルボン酸エステルの製造を行った。反応後の内容物を分析した結果、メタクロレインの転化率5%、メチルメタクリレートは生成されず、その選択率及び収率はともに0%であった。鉛担持体では、カルボン酸エステルが全く生成しないことがわかる。
【0093】
比較例3
比較例1で調製した金担持体(Au/γ−アルミナ)0.5g及び比較例2で調製した鉛担持体(Pb/γ−アルミナ)0.5gを用い、実施例1の(2)と同様にしてカルボン酸エステルの製造を行った。生成した反応液を分析した結果、メタクロレインの転化率27%、メチルメタクリレートの選択率及び収率はそれぞれ71%及び19%、単位触媒重量当たりのメチルメタクリレート生成活性は14.0mol/h/kg−触媒であった。この結果より、金担持体と鉛担持体を組み合わせても比較例1と同様に低い活性しか得られないことがわかる。
【0094】
実施例4
(1)金属粒子担持体の調製
▲1▼ Pb担持
酢酸鉛3水塩0.80g含む水溶液25mlを用い、市販シリカ担体(製品名「キャリアクトQ−10」富士シリシア化学製)10gに温浴上で鉛化合物を含浸担持した。その後、得られた含浸物を120℃で12時間乾燥し、さらに空気中600℃で4時間焼成した。これにより、鉛がシリカに担持されたPb−シリカ担持体を得た。
【0095】
▲2▼ Au担持
次いで、濃度10mmol/Lのテトラクロロ金酸水溶液1.0Lを65〜70℃に保持しながら、0.5mol/L水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH7に調節した。この水溶液に上記Pb−シリカ担持体10gを撹拌下に投入し、65〜70℃に保持しながら1時間撹拌を続けた。その後、静置して上澄液を除去し、残った金固定化物にイオン交換水0.8Lを加えて室温で5分間撹拌した後、上澄液を除去するという洗浄工程を3回繰り返した。ろ過によって得られた金固定化物を100℃で10時間乾燥し、さらに空気中400℃で3時間焼成した。さらに、金と鉛との複合化を促進するために水素10%及び窒素90%からなる混合ガスを400℃で6時間流通させた。こうして金及び鉛を含有する金属粒子がシリカ担体に担持された金属粒子担持体(Au−Pb/シリカ)を得た。この金属粒子担持体における金及び鉛の担持量を測定した結果、担体に対してそれぞれ4.5重量%及び4.9重量%であった。
【0096】
また、この金属粒子担持体の金属粒子の粒子径を調べた結果、金属種がすべて5nm以下の粒子径で高分散しており、平均粒子径が5nm以下であることが確認された。さらに、金属粒子1個ごとの組成を調べた結果、どの金属粒子にも金と鉛の両方の成分が検出された。
(2)カルボン酸エステルの製造
前記(1)で得られた金属粒子担持体(Au−Pb/シリカ)を触媒として用いてカルボン酸エステルの製造を行った。
【0097】
100ml回転撹拌付きオートクレーブにメタクロレイン2ml、メタノール15ml及び上記金属粒子担持体(Au−Pb/シリカ)0.5gを入れて密封した。次いで、系内を酸素にて0.2MPaに加圧した後、撹拌下80℃に加温し、この温度を2時間保持した。その後、冷却し、開封し、触媒と反応液とをろ過により分離し、反応液を分析した結果、メタクロレインの転化率96%、メチルメタクリレートの選択率及び収率はそれぞれ88%及び84%、単位触媒重量当たりのメチルメタクリレート生成活性は20.4mol/h/kg−触媒であった。
【0098】
比較例4
実施例4の(1)▲2▼において、Pb−シリカ担持体の代わりにPbを担持していないシリカ(すなわち(1)▲1▼のシリカ)を用いたほかは、同様の操作により金がシリカに担持された金属粒子担持体を得た。この金属粒子担持体における金の含有量は0.8重量%であった。
【0099】
また、この金属粒子担持体の金属粒子の粒子径を調べた結果、金粒子径は10nm以上のものがほとんどであり、平均粒子径が6nmを上回ることが確認された。
【0100】
この金属粒子担持体を触媒として用い、実施例1の(2)と同様にしてカルボン酸エステルの製造を行った。反応液を分析した結果、メタクロレインの転化率8%、メチルメタクリレートの選択率及び収率はそれぞれ29%及び2%であった。
【0101】
比較例5
実施例4の(1)▲1▼において調製したPb−シリカ担持体を触媒として用い、実施例4の(2)と同様にしてカルボン酸エステルの製造を行った。その結果、メタクロレインの転化率5%、メチルメタクリレートは生成せず、その選択率及び収率はいずれも0%であった。
【0102】
実施例5
(1)金属粒子担持体の調製
1) Al担持
硝酸アルミニウム9水塩7.03g含む水溶液25mlを用い、市販シリカ担体(製品名「キャリアクトQ−15」富士シリシア化学製)10gに温浴上でアルミニウム化合物を含浸担持した。その後、得られた含浸物を120℃で12時間乾燥し、さらに空気中600℃で4時間焼成した。これにより、アルミニウムがシリカに担持されたAl−シリカ担持体を得た。
【0103】
▲2▼ Au担持
次いで、濃度10mmol/Lのテトラクロロ金酸水溶液250mlを65〜70℃に保持しながら、0.5mol/L水酸化カリウム水溶液を用いて上記水溶液をpH7に調節した。この水溶液に上記Al−シリカ担持体10gを撹拌下に投入し、65〜70℃に保持しながら1時間撹拌を続けた。その後、静置して上澄液を除去し、残った固形物にイオン交換水0.8Lを加えて室温で5分間撹拌した後、上澄液を除去するという洗浄工程を3回繰り返した。ろ過によって得られた金固定化物を100℃で10時間乾燥し、さらに空気中400℃で3時間焼成した。その後、酢酸鉛3水塩0.93g含有するメタノール溶液25mlを加え、常圧下エバポレーターにてメタノールを除去した後、メタノール蒸気10〜20%含む窒素ガスを流量約7.5L/時で400℃で4時間流通させた。こうして金及び鉛を含有する金属粒子がAl−シリカ担体に担持された金属粒子担持体(Pb−Au/Al/シリカ)を得た。この金属粒子担持体における金及び鉛の担持量を測定した結果、担体に対してそれぞれ4.5重量%及び5.0重量%であった。担体(Al/シリカ)中のAl含有量は、5.0重量%であった。
【0104】
また、この金属粒子担持体の金属粒子の粒子径を調べた結果、金属種がすべて5nm以下の粒子径で高分散しており、平均粒子径が5nm以下であることが確認された。さらに、金属粒子1個ごとの組成を調べた結果、どの金属粒子にも金と鉛の両方の成分が検出された。
(2)カルボン酸エステルの製造
前記(1)で得られた金属粒子担持体(Pb−Au/Al/シリカ)を触媒として用いてカルボン酸エステルの製造を行った。
【0105】
100ml回転撹拌付きオートクレーブにメタクロレイン3ml、メタノール12ml及び上記金属粒子担持体(Pb−Au/Al/シリカ)0.5gを入れて密封した。次いで、系内を酸素にて0.3MPaに加圧した後、撹拌下80℃に加温し、この温度を1時間保持した。その後、冷却し、開封し、触媒と反応液とをろ過により分離し、反応液を分析した結果、メタクロレインの転化率81%、メチルメタクリレートの選択率及び収率はそれぞれ86%及び70%、単位触媒重量当たりのメチルメタクリレート生成活性は50.7mol/h/kg−触媒であった。
【0106】
実施例6
実施例5で得られた金属粒子担持体を触媒として用い、原料をアクロレイン3ml及びメタノール13mlとし、反応条件を70℃で4時間としたほかは、実施例5と同様にしてカルボン酸エステルの製造を実施した。得られた反応液をガスクロマトグラフィーで分析した。その結果、アクロレインの転化率98%、メチルアクリレートの選択率及び収率はそれぞれ87%及び85%、単位触媒重量当たりのメチルアクリレート生成活性は19.1mol/h/kg−触媒であった。
【0107】
実施例7
実施例5で得られた金属粒子担持体を触媒として用い、原料を40%グリオキザール水溶液2g及びメタノール15mlとしたほかは、実施例5と同様にしてカルボン酸エステルの製造を実施した。得られた反応液を分析した結果、グリオキザールの転化率74%、グリオキシル酸メチルの選択率及び収率はそれぞれ88%及び65%、単位触媒重量当たりのグリオキシル酸メチル生成活性は17.9mol/h/kg−触媒であった。
【0108】
実施例8
(1)金属粒子担持体の調製
硝酸ビスマス5水塩1.05gを含有する塩化金酸水溶液(10mM)250mlを攪拌下60℃に加温した。市販のチタニア(商品名「P−25」日本アエロジル製)10gを加えた後、0.5mol/L水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH6〜7に維持しながら1時間攪拌を続けた。その後、固形分をろ過して500mlのイオン交換水にて3回水洗した。得られた固形分を空気中500℃で4時間焼成した後、水素20%窒素80%の混合ガスを流量6L/時で流通させながら450℃で4時間処理した。こうして金及びビスマスを含有する金属粒子がチタニア担体に担持された金属粒子担持体(Au−Bi/チタニア)を得た。この金属粒子担持体における金及びビスマスの担持量を測定した結果、担体に対してそれぞれ4.5重量%及び1.6重量%であった。
【0109】
また、この金属粒子担持体の金属粒子の粒子径を調べた結果、金属種がすべて3〜6nmの粒子径で高分散しており、平均粒子径が6nm以下であることが確認された。さらに、金属粒子1個ごとの組成を調べた結果、どの金属粒子にも金とビスマスの両方の成分が検出された。
【0110】
(2)カルボン酸エステルの製造
前記(1)で得られた金属粒子担持体(Au−Bi/チタニア)を触媒として用いてカルボン酸エステルの製造を行った。
【0111】
100ml回転撹拌付きオートクレーブにベンズアルデヒド3.0g、エタノール20ml及び上記金属粒子担持体(Au−Bi/チタニア)0.5gを入れて密封した。次いで、系内を酸素にて0.3MPaに加圧した後、撹拌下90℃に加温し、この温度を4時間保持した。その後、冷却し、開封し、触媒と反応液とをろ過により分離し、反応液を分析した結果、ベンズアルデヒドの転化率62%、カルボン酸エステルである安息香酸エチルの選択率及び収率はそれぞれ75%及び47%、
実施例9
(1)金属粒子担持体の調製
▲1▼ Zn担持
硝酸亜鉛6水塩1.51g含む水溶液25mlを用い、市販シリカ担体(製品名「キャリアクトQ−15」富士シリシア化学製)10gに温浴上で亜鉛化合物を含浸担持した。その後、得られた含浸物を120℃で12時間乾燥し、さらに空気中600℃で4時間焼成した。これにより、亜鉛がシリカに担持されたZn−シリカ担持体を得た。
【0112】
▲2▼ Au担持
次いで、濃度10mmol/Lのテトラクロロ金酸水溶液200mlを65〜70℃に保持しながら、0.5mol/L水酸化カリウム水溶液を用いて上記水溶液をpH7に調節した。この水溶液に上記Zn−シリカ担持体10gを撹拌下に投入し、65〜70℃に保持しながら1時間撹拌を続けた。その後、静置して上澄液を除去し、残った金固定化物にイオン交換水0.8Lを加えて室温で5分間撹拌した後、上澄液を除去するという洗浄工程を3回繰り返した。ろ過によって得られた金固定化物を100℃で10時間乾燥し、さらに空気中450℃で3時間焼成した。さらに、金と亜鉛との複合化を促進するために水素10%及びアルゴン90%からなる混合ガスを用いて500℃で4時間還元処理を行った。こうして金及び亜鉛を含有する金属粒子がシリカ担体に担持された金属粒子担持体(Au/Zn/シリカ)を得た。この金属粒子担持体における金及び亜鉛の担持量を測定した結果、担体に対してそれぞれ3.2重量%及び3.3重量%であった。
【0113】
また、この金属粒子担持体の金属粒子の粒子径を調べた結果、金属種がすべて2〜6nmの粒子径で高分散しており、平均粒子径が6nm以下であることが確認された。さらに、金属粒子1個ごとの組成を調べた結果、どの金属粒子にも金と亜鉛の両方の成分が検出された。
(2)カルボン酸エステルの製造
前記(1)で得られた金属粒子担持体(Au/Zn/シリカ)を触媒として用いてカルボン酸エステルの製造を行った。
【0114】
100ml回転撹拌付きオートクレーブにイソブチルアルデヒド3ml、エタノール20ml及び上記金属粒子担持体(Au/Zn/シリカ)1.0gを入れて密封した。次いで、系内を酸素にて0.3MPaに加圧した後、撹拌下65℃に加温し、この温度を5時間保持した。その後、冷却し、開封し、触媒と反応液とをろ過により分離し、反応液を分析した結果、イソブチルアルデヒドの転化率94%、エチルイソブチレートの選択率及び収率はそれぞれ89%及び84%であった。
【0115】
実施例10
実施例1で得られた金属粒子担持体(Pb−Au/γ−アルミナ)を触媒として用いてカルボン酸エステルの合成反応を繰り返し行った。
【0116】
100ml回転撹拌付きオートクレーブにメタクロレイン3.0ml、メタノール13ml及び上記金属粒子担持体(Pb−Au/γ−アルミナ)1.0gを入れて密封した。次いで、系内を酸素にて0.3MPaに加圧した後、撹拌下80℃に加温し、この温度を1時間保持した。その後、冷却し、開封し、触媒と反応液とをろ過により分離した後、反応液を分析した結果、メタクロレインの転化率は83%、メチルメタクリレートの選択率及び収率はそれぞれ88%及び73%、単位触媒重量当たりのメチルメタクリレート生成活性は26.5mol/h/kg−触媒であった。
【0117】
次に、ろ過された上記触媒をメタクロレイン3.0ml及びメタノール13mlとともに再度100ml回転撹拌付きオートクレーブに仕込んで密封し、上記と同様にして2回目の反応を行った。上記と同様にして反応液の分析を行った。その結果、メタクロレインの転化率は79%、メチルメタクリレートの選択率及び収率はそれぞれ86%及び68%、単位触媒重量当たりのメチルメタクリレート生成活性は24.6mol/h/kg−触媒であった。
【0118】
さらに、同様の操作を行い、3回目及び4回目の反応を実施し、上記と同様にそれぞれの反応液の分析を行った。3回目の反応の結果は、メタクロレインの転化率は81%、メチルメタクリレートの選択率及び収率はそれぞれ85%及び69%、単位触媒重量当たりのメチルメタクリレート生成活性は25.0mol/h/kg−触媒であった。4回目の反応の結果は、メタクロレインの転化率は80%、メチルメタクリレートの選択率及び収率はそれぞれ86%及び69%、単位触媒重量当たりのメチルメタクリレート生成活性は25.0mol/h/kg−触媒であった。
【0119】
以上の結果より、本発明の金属粒子担持体を酸化反応用触媒として用いる場合には、繰り返し反応でも性能劣化せず、比較的高い触媒活性を維持できることがわかる。
【0120】
実施例11
(1)触媒の調製
アルドリッチ試薬(チタニウムジイソプロポキシドビスアセチルアセトネートの75重量%プロパノール溶液)30.4gにメタノールを加えて全量200mlとした。次いで、これに市販のシリカ担体(富士シリシア化学製、比表面積179m2/g、100〜500メッシュ)50gを加え、エバポレーターにより常圧80℃で溶媒をできるだけ留去した。その後、固形分を120℃で10時間乾燥し、次いで空気中600℃で4時間焼成した。こうして得られたTi−シリカ担体について、蛍光X線による分析を行った。その結果、シリカに対してTiがTiO2として10重量%担持されていることを確認した。この担体を用いて実施例2−1と同様の操作によりAuを担持した。得られた金担持体2gにゲルマニウム(III)n−ブトキシド(Glest 試薬)0.178gを含有するメタノール溶液20mlを含浸した。その後、含浸物をガラス製チューブに充填し、水素と窒素の混合ガス(水素:窒素=1:9(体積比))を流通しながら400℃で3時間水素還元処理を行った。こうしてAuとGeを含有する金属粒子がTi−シリカ担体に担持された担持体(Ge−Au/Ti−シリカ)を得た。この金属粒子担持体におけるAu及びGeの担持量を調べた結果、それぞれ4.2重量%及び2.0重量%であった。また、この金属粒子担持体の金属粒子径を調べた結果、平均粒子径は6nm以下であり、各金属粒子にはAu及びGeのいずれの成分も検出された。
(2)カルボン酸エステルの製造
40重量%グリオキザール水溶液(和光純薬)60gに1−ブタノール300gを加え、エバポレーターにより常圧90℃にて大部分の水を1−ブタノールとの共沸組成として留出させた。こうしてグリオキザールのブタノール溶液(グリオキザール19.4重量%、ブタノール80.6重量%含有)を得た。次いで、上記ブタノール溶液5.17g、1−ブタノール8.90g及び上記の金属担持体0.6gをコンデンサー付きオートクレーブに仕込み、攪拌下80℃で内圧0.5MPaに維持しながら、酸素と窒素の混合ガス(酸素:窒素=1:9(体積比))を流量500ml/分で液中にバブリングしながら5時間反応を行った。反応後、得られた反応液を分析した結果、グリオキザールの転化率87%、生成物であるグリオキシル酸1−ブチルの選択率73%及び収率64%であった。
【0121】
実施例12
(1)触媒の調製
ゲルマニウム(III)n−ブトキシドの代わりにアンチモン(III)n−ブトキシド(Glest 試薬)0.121gを使用した以外は、実施例2−11と同様の操作により、AuとSbを含有する微粒子がTi−シリカ担体に担持された担持体(Sb−Au/Ti−シリカ)を得た。この金属粒子担持体におけるAu及びSbの担持量を調べた結果、それぞれ4.2重量%及び2.2重量%であった。また、この金属粒子担持体の金属粒子径を調べた結果、平均粒子径は6nm以下であり、各金属粒子にはAu及びSbのいずれの成分も検出された。
(2)カルボン酸エステルの製造
実施例2−11で得られたグリオキザールのブタノール溶液5.17g、1−オクタノール9.62g及び上記金属粒子担持体0.6gをオートクレーブに仕込み、実施例2−11と同様の操作で酸化反応を実施した。得られた反応液を分析した結果、グリオキザールの転化率90%、生成物であるグリオキシル酸1−ブチル及びグリオキシル酸1−オクチルの総和の選択率74%及び収率67%であった。 実施例13
(1)触媒の調製
実施例11で得られたTi−シリカ担体2gに酢酸インジウム(III) (Aldrich 触媒)0.118gを含有する水溶液を含浸した。次いで、得られた含浸体を空気中500℃で4時間焼成し、In−Ti−シリカ担体を得た。上記担体を用いて実施例2−1と同様の操作によりAuを担持することにより、金担持体を得た。その後、ガラス製チューブにこの金担持体を充填し、水素と窒素の混合ガス(水素:窒素=1:9(体積比))を流通しながら400℃で3時間水素還元処理を行った。こうしてAuとInを含有する金属粒子がTi−シリカ担体に担持された担持体(In−Au/Ti−シリカ)を得た。この金属粒子担持体におけるAu及びInの担持量を調べた結果、それぞれ3.7重量%及び2.3重量%であった。また、この金属粒子担持体の金属粒子径を調べた結果、平均粒子径は6nm以下であり、各金属粒子にはAu及びInのいずれの成分も検出された。
(2)カルボン酸エステルの製造
メタクロレイン1.7g、メタノール11.9g及び上記金属粒子担持体1gをオートクレーブに仕込み、内圧を1MPaとしたほかは実施例2−11と同様の操作で酸化反応を実施した。得られた反応物を分析した結果、メタクロレインの転化率72%、生成物であるメタクリル酸メチルの選択率89%及び収率64%であった。
【0122】
実施例14
(1)触媒の調製
実施例2−11で得られたTi−シリカ担体2gに酸化テルル(東京化成試薬)0.10gを含有する硝酸水溶液を含浸した。次いで、得られた含浸体を空気中500℃で4時間焼成し、Te−Ti−シリカ担体を得た。上記担体を用いて実施例2−1と同様の操作によりAuを担持することにより、金担持体を得た。その後、ガラス製チューブに上記金担持体を充填し、水素と窒素の混合ガス(水素:窒素=1:9(体積比))を流通しながら400℃で3時間水素還元処理を行った。こうしてAuとTeを含有する金属粒子がTi−シリカ担体に担持された金属粒子担持体(Au−Te/Ti−シリカ)を得た。この金属粒子担持体におけるAu及びTeの担持量を調べた結果、それぞれ4.6重量%及び4.0重量%であった。また、この金属粒子担持体の金属粒子の粒子径を調べた結果、平均粒子径は6nm以下であり、各金属粒子にはAu及びTeのいずれの成分も検出された。
(2)カルボン酸エステルの製造
ピルビックアルデヒド水溶液(和光純薬製、40重量%水溶液)3g、エタノール20g及び上記金属粒子担持体1gをオートクレーブに仕込み、実施例2−11と同様の操作で酸化反応を実施した。得られた反応物を分析した結果、ピルビックアルデヒドの転化率48%、生成物であるピルビン酸エチルの選択率86%及び収率41%であった。
【0123】
実施例15
(1)触媒の調製
濃度10mmol/Lの塩化金酸水溶液250mlを65〜70℃に保持しながら、0.5N水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH6.2に調節した。この水溶液に実施例1−23で得たTi−シリカ担体2gを加え、溶液のpHが6となった後、酢酸ニッケル(II)・4水和物(和光純薬製)0.21gを含有する水溶液50mlを加えた。その後、70℃・pH6.2に保持しながら1時間撹拌を続けた。その後、静置して上澄液を除去し、残った固形分にイオン交換水0.8Lを加えて室温で5分間撹拌した後、上澄液を除去するという洗浄工程を3回繰り返した。ろ過によって得られた固形分を120℃で10時間乾燥した。その後、ガラス製チューブに上記固形分を充填し、水素と窒素の混合ガス(水素:窒素=1:9(体積比))を流通しながら400℃で3時間水素還元処理を行った。こうしてAuとNiを含有する金属粒子がTi−シリカ担体に担持された金属担持体(Au−Ni/Ti−シリカ)を得た。この金属粒子担持体におけるAu及びNiの担持量を調べた結果、それぞれ4.0重量%及び2.4重量%であった。また、この金属粒子担持体の金属粒子径を調べた結果、平均粒子径は6nm以下であり、各金属粒子にはAu及びNiのいずれの成分も検出された。
(2)カルボン酸エステルの製造
触媒として上記金属粒子担持体を使用したほかは、実施例11と同様の操作で酸化反応を実施した。得られた反応物を分析した結果、グリオキザールの転化率94%、生成物であるグリオキシル酸1−ブチルの選択率75%及び収率71%であった。
【0124】
実施例16
(1)触媒の調製
酢酸ニッケルの代わりに酢酸コバルト4水和物(和光純薬製)0.22gを使用したほかは、実施例2−15と同様にしてAuとCoを含有する金属粒子がTi−シリカ担体に担持された金属粒子担持体を得た。この金属粒子担持体におけるAu及びCoの担持量を調べた結果、それぞれ4.1重量%及び2.6重量%であった。また、この金属粒子担持体の金属粒子径を調べた結果、平均粒子径は6nm以下であり、各金属粒子にはAu及びCoのいずれの成分も検出された。
(2)カルボン酸エステルの製造
ピルビックアルデヒド(和光純薬製、40重量%水溶液)4g、メタノール20g及び上記金属粒子担持体1gをオートクレーブに仕込み、実施例2−11と同様の操作で酸化反応を実施した。得られた反応物を分析した結果、ピルビックアルデヒドの転化率55%、生成物であるピルビン酸メチルの選択率81%及び収率45%であった。
【0125】
実施例17
(1)触媒の調製
ジメチル金アセチルアセトナート0.32gと鉄(III)アセチルアセトナート1.26gとを含有するメタノール溶液25mlに、Al−シリカ(Al含有量5重量%、シリカ担体、製品名「キャリアクトQ−30」富士シリシア化学製)5gを加えた。エバポレーターによりメタノールを常圧下40℃で留去した。残渣を空気中100℃で12時間乾燥させた後、空気中300℃で3時間焼成した。これをガラス製チューブに充填し、水素と窒素の混合ガス(水素:窒素=1:9(体積比))を流通しながら450℃で3時間水素還元処理を行った。こうしてAuとFeを含有する金属粒子がAl−シリカ担体に担持された金属粒子担持体(Au−Fe/Al−シリカ)を得た。この金属粒子担持体におけるAu及びFeの担持量を調べた結果、それぞれ4.0重量%及び4.1重量%であった。また、この金属粒子担持体の金属粒子の粒子径を調べた結果、ほとんどすべてが6nm以下の粒子径で高分散しており、平均粒子径は6nm以下であることが確認された。さらに、観察した各金属粒子にはAu及びFeのいずれの成分も検出された。
(2)カルボン酸エステルの製造
前記(1)で得られた金属粒子担持体(Au−Fe/Al−シリカ)を触媒として用いてカルボン酸エステルの製造を行った。100ml回転撹拌付きオートクレーブにメタクロレイン3ml、メタノール15ml及び上記金属粒子担持体1gを入れて密封した。次いで、系内を酸素0.5MPa及び窒素0.3MPaに加圧した後、撹拌下80℃に加温し、この温度を2時間保持した。反応後、得られた反応液を分析した結果、メタクロレインの転化率72%、メチルメタクリレートの選択率及び収率はそれぞれ85%及び61%であった。

Claims (4)

  1. 周期表第4周期から第6周期の2B族、3B族、4B族、5B族、6B族及び第4周期8族の少なくとも1種の第二元素と金とを含有する金属粒子が担体上に担持された金属粒子担持体からなる酸化反応用触媒であって、
    金と第二元素との担持割合が、原子比で金:第二元素=1:0.1〜10であり、
    該触媒が、酸素の存在下に、アルデヒドとアルコールを反応させることによりカルボン酸エステルを合成する反応に用いる触媒である、
    酸化反応用触媒
  2. 金属粒子の平均粒子径が6nm以下である請求項1に記載の酸化反応用触媒。
  3. 前記金属粒子担持体が、金及びその化合物の少なくとも1種ならびに第二元素及びその化合物の少なくとも1種を含む担体を熱処理することによって得られる請求項1又は2に記載の酸化反応用触媒
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の触媒と酸素の存在下に、アルデヒドとアルコールを反応させることを特徴とするカルボン酸エステルの製造方法。
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