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JP2004137180A - カルボン酸エステルの製造方法 - Google Patents

カルボン酸エステルの製造方法 Download PDF

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JP2004137180A
JP2004137180A JP2002302258A JP2002302258A JP2004137180A JP 2004137180 A JP2004137180 A JP 2004137180A JP 2002302258 A JP2002302258 A JP 2002302258A JP 2002302258 A JP2002302258 A JP 2002302258A JP 2004137180 A JP2004137180 A JP 2004137180A
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noble metal
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JP2002302258A
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Takahiro Inagaki
稲垣 貴大
Toshio Hayashi
林 利生
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Nippon Shokubai Co Ltd
Original Assignee
Nippon Shokubai Co Ltd
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Publication date
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  • Catalysts (AREA)
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Abstract

【課題】(1)貴金属担持触媒の存在下、1種又は2種以上のアルコールと酸素とを反応させるカルボン酸エステルの製造方法であって、貴金属担持触媒の経時的劣化が抑制された製造方法、及び(2)当該製造方法に使用して経時的劣化した貴金属担持触媒の再生方法を提供する。
【解決手段】(1)貴金属担持触媒の存在下、1種又は2種以上のアルコールと酸素とを反応させるカルボン酸エステルの製造方法であって、少なくともアルコールと酸素とを反応させる際に、反応系に塩基性化合物を共存させることを特徴とするカルボン酸エステルの製造方法、及び(2)貴金属担持触媒の存在下、1種又は2種以上のアルコールと酸素とを反応させるカルボン酸エステルの製造方法に使用した当該貴金属担持触媒を、塩基性化合物を含む溶液により洗浄することを特徴とする貴金属担持触媒の再生方法に係る。
【選択図】なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、カルボン酸エステルの製造方法及び貴金属担持触媒の再生方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等のカルボン酸エステルは、各種の合成樹脂の原料となる重合用モノマーとして工業的に重要な化合物である。その製造方法としては、例えば、下記に示す2種の反応を利用する、1種又は2種以上のアルコールと酸素とを反応させる方法が知られている;
(1)分子間反応:RCHOH+R´OH+O→RCOOR´+2H
(2)分子内反応:2RCHOH+O→RCOOCHR+2HO。
【0003】
これらの反応に用いられる触媒としては、例えば、金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、白金等を含む貴金属担持触媒が提案されている。具体的には、上記のような貴金属を必須成分として含み、必要に応じて、更に活性成分として、周期表第4から第6周期の2B族、3B族、4B族、5B族、6B族及び第4周期8族から選ばれる少なくとも1種の第二元素を含む貴金属担持触媒が知られている(未公開特許出願1参照)。
【0004】
このような貴金属担持触媒は、上記のカルボン酸エステル生成反応を促進できる点で有用である。しかしながら、当該触媒は高価な貴金属を含んでいるため、触媒の経時的劣化に対してその都度、新しい触媒と交換して対処することは経済的に不利であり望ましくない。
【0005】
従って、これら貴金属担持触媒の経時的劣化を抑制し、長期的に使用できるように製造方法を改善することが望まれている。また、経時的劣化した触媒を再利用するための再生技術の開発も望まれている。
【0006】
【未公開特許出願1】
特願2002−204748
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、(1)貴金属担持触媒の存在下、1種又は2種以上のアルコールと酸素とを反応させるカルボン酸エステルの製造方法であって、貴金属担持触媒の経時的劣化が抑制された製造方法、及び(2)当該製造方法に使用して経時的劣化した貴金属担持触媒の再生方法を提供することを主な目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、(1)1種又は2種以上のアルコールと酸素とを反応させるカルボン酸エステルの製造方法において、少なくともアルコールと酸素とを反応させる際に、反応系に特定の化合物を共存させることにより貴金属担持触媒の経時的劣化が抑制できること、及び(2)当該製造方法に使用して経時的劣化した貴金属担持触媒を、特定の化合物を含む溶液を用いて洗浄することにより再生できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、下記のカルボン酸エステルの製造方法及び貴金属担持触媒の再生方法に係るものである。
【0010】
1.貴金属担持触媒の存在下、1種又は2種以上のアルコールと酸素とを反応させるカルボン酸エステルの製造方法であって、少なくともアルコールと酸素とを反応させる際に、反応系に塩基性化合物を共存させることを特徴とするカルボン酸エステルの製造方法。
【0011】
2.貴金属担持触媒の存在下、1種又は2種以上のアルコールと酸素とを反応させるカルボン酸エステルの製造方法に使用した当該貴金属担持触媒を、塩基性化合物を含む溶液により洗浄することを特徴とする貴金属担持触媒の再生方法。
【0012】
3.上記項2に記載の再生方法により再生された貴金属担持触媒の存在下、1種又は2種以上のアルコールと酸素とを反応させることを特徴とするカルボン酸エステルの製造方法。
【0013】
4.上記項3に記載のカルボン酸エステルの製造方法において、少なくともアルコールと酸素とを反応させる際に、反応系に塩基性化合物を共存させることを特徴とするカルボン酸エステルの製造方法。
【0014】
5.塩基性化合物が無機塩基性化合物及び/又は有機塩基性化合物であって、無機塩基性化合物が水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムから選ばれる少なくとも1種であり、有機塩基性化合物がアンモニア及びアミン類から選ばれる少なくとも1種である上記項1に記載のカルボン酸エステルの製造方法。
【0015】
6.貴金属担持触媒が金担持触媒であり、1種又は2種以上のアルコールがエチレングリコールとメタノールとの組み合わせであることを特徴とする上記項1に記載のカルボン酸エステルの製造方法。
【0016】
7.貴金属担持触媒が金担持触媒であり、1種又は2種以上のアルコールがエチレングリコールとメタノールとの組み合わせであることを特徴とする上記項3又は4に記載のカルボン酸エステルの製造方法。
【0017】
【発明の実施の形態】
1.カルボン酸エステルの製造方法
本発明のカルボン酸エステルの製造方法は、貴金属担持触媒の存在下、1種又は2種以上のアルコールと酸素とを反応させるカルボン酸エステルの製造方法であって、少なくともアルコールと酸素とを反応させる際に、反応系に塩基性化合物を共存させることを特徴とする。
【0018】
このような特徴を有する本発明のカルボン酸エステルの製造方法は、反応系に共存させた塩基性化合物の作用により貴金属担持触媒の経時的劣化が抑制されており、貴金属担持触媒の交換頻度が従来よりも低減され、長期にわたり使用できる点において非常に有用性が高いものである。かかる本発明の製造方法では、鎖状のカルボン酸エステルのほか、例えば、ラクトン等のような環状のカルボン酸エステルも製造できる。
【0019】
(1)貴金属担持触媒
貴金属担持触媒としては特に限定されないが、例えば、金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、白金等の貴金属が担体に担持されてなる触媒が使用できる。これらの貴金属は、単独又は2種以上で使用できる。上記の貴金属の中でも、特に優れた触媒活性を有するという点で、金、パラジウム及びルテニウムから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0020】
貴金属担持触媒は、上記のような貴金属を必須成分として含むほか、必要に応じて、触媒活性を有する成分として、更に周期表第4から第6周期の2B族、3B族、4B族、5B族、6B族及び第4周期8族から選ばれる少なくとも1種の第二元素を含有してもよい。
【0021】
当該第二元素としては、例えば、2B族としては、Zn、Cd及びHg;3B族としては、Ga、In及びTl;4B族としては、Ge、Sn及びPb;5B族としては、As、Sb及びBi;6B族としては、Se、Te及びPo;8族としては、Fe、Co及びNiが挙げられる。これら第二元素は単独又は2種以上で使用できる。
【0022】
貴金属担持触媒が第二元素を含む場合には、第二元素として少なくともPbを含むことが好ましい。従って、第二元素を含む貴金属担持触媒としては、Au、Pd及びRuから選ばれる少なくとも1種の貴金属成分と第二元素であるPdとが担体上に担持されてなる金属担持体が好ましい。
【0023】
貴金属担持触媒が2種以上の貴金属を含む場合には、触媒活性が損なわれない限り、その一部又は全部が合金、金属間化合物等を形成してもよい。また、貴金属及び第二元素を含む場合にも、触媒活性が損なわれない限り、その一部又は全部が合金、金属間化合物等を形成してもよい。これら貴金属及び第二元素は、通常、微粒子の状態で担体に担持される。なお、貴金属担持触媒は、触媒活性を損なわない限り不可避不純物を含んでいてもよい。
【0024】
貴金属及び第二元素の形状は微粒子が好ましく、その粒子径は所定の触媒活性が得られる限り特に限定されないが、平均粒子径は、通常10nm以下が適当であり、6nm以下が好ましく、5nm以下がより好ましく、1〜5nm程度が最も好ましい。平均粒子径を10nm以下に設定すれば、優れた触媒活性が得られる。平均粒子径の下限値は特に限定されないが、物理的安定性の見地より1nm程度とすればよい。なお、金属粒子(貴金属・第二元素)の平均粒子径は、担体上の金属粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて任意に120個選び、▲1▼大きい順に上から10個と▲2▼小さい順に下から10個との合計20個を除いた100個の粒子径の算術平均値である。
【0025】
金属粒子の粒子径分布の極大値は、1〜6nmの範囲内が適当であり、特に1〜5nm程度の範囲内が好ましい。粒子径分布は狭い方が好ましく、例えば、上記120個の粒子径の標準偏差(Standard Deviation)は、2以下が適当であり、1.5以下が好ましい。
【0026】
上記した触媒活性を有する金属(貴金属・第二元素)を担持させる担体としては特に限定されず、従来、触媒担体として用いられている材料が使用できる。かかる材料は、市販品でも公知の製造方法により製造できるものでもよい。
【0027】
担体としては、例えば、金属酸化物、複合金属酸化物、ゼオライト、メソポーラスシリケート等の無機酸化物;天然鉱物;炭素材料等が挙げられる。具体的には、金属酸化物としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、マグネシア等が挙げられる。複合金属酸化物としては、例えば、シリカ・アルミナ、チタニア・シリカ、シリカ・マグネシア等が挙げられる。ゼオライトとしては、例えば、ZSM−5等が挙げられる。メソポーラスシリケートとしては、例えば、MCM−41等が挙げられる。天然鉱物としては、例えば、粘土、珪藻土、軽石等が挙げられる。炭素材料としては、例えば、活性炭、黒鉛等が挙げられる。
【0028】
上記の中でも、無機酸化物が好ましく、特にMg、Ca、Sr、Ba、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Sn、Pb、La及びCeから選ばれる少なくとも1種の元素を含む無機酸化物が好ましい。その中でも、更にSi、Al、Ti及びZrから選ばれる少なくとも1種の元素を含む無機酸化物が好ましい。無機酸化物は、単体元素の酸化物が2種以上混合された混合酸化物でもよく、複合酸化物でもよい。無機酸化物は、触媒活性を有する金属(貴金属・第二元素)の微粒子を確実に担持でき、しかも微粒子との相乗的な作用によって一層高い触媒活性を発揮できる。
【0029】
このような担体の製造方法は特に限定されないが、一般的には、含浸法、共沈法、イオン交換法、気相蒸着法、混練法、水熱合成法等により製造できる。例えば、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Sn、Pb、La及びCeから選ばれる少なくとも1種の元素を含む無機酸化物であれば、含浸法により好適に製造できる。具体的には、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Sn、Pb、La及びCeから選ばれる少なくとも1種の元素を含む水溶性化合物の水溶液をシリカに含浸させた後、含浸体を焼成する製造方法が挙げられる。以下、当該担体製造方法について説明する。
【0030】
当該水溶性化合物としては、具体的には、硫酸チタニル、硝酸ジルコニル、硝酸亜鉛、硝酸ランタン、硝酸鉄、硝酸ニッケル、硝酸アルミニウム等の無機酸塩;チタンn−ブトキシド、チタンアセチルアセトナート、ジルコニウムアセチルアセトナート、酢酸鉛、酢酸マグネシウム等の有機酸塩が使用できる。この塩は無水物及び水和物のいずれでもよい。水溶性化合物の水溶液の濃度としては、通常0.1〜90質量%が適当であり、1〜80質量%程度が好ましい。但し、当該濃度は水溶性化合物の種類等により適宜調整できる。
【0031】
シリカに含浸させる当該水溶液の量は特に限定されないが、シリカ100重量部に対して、通常1〜120重量部程度とすればよい。
【0032】
得られた含浸体の焼成条件は特に限定されないが、焼成温度としては、通常100〜900℃が適当であり、200〜700℃程度が好ましい。焼成時間は焼成温度によって異なるが、通常1〜20時間が適当であり、2〜10時間程度が好ましい。焼成雰囲気は特に限定されず、酸化性雰囲気、還元性雰囲気及び賦活性雰囲気のいずれでもよい。
【0033】
なお、無機酸化物担体は、担持できる面積を広く確保するために多孔質であることが好ましい。具体的には、BET比表面積50m/g以上が好ましく、100m/g以上がより好ましく、100〜800m/gが最も好ましい。かかるBET比表面積は、担体表面に窒素を吸着させることを特徴とするBET法により測定した値である。担体の形状及び大きさは特に限定されず、触媒の実際の使用態様を考慮して適宜設定できる。
【0034】
以上説明した担体に、貴金属、必要に応じて第二元素を担持させることにより貴金属担持触媒が得られる。触媒活性を有する金属(貴金属・第二元素)の担持量は特に限定されないが、担体100重量部に対して、貴金属及び第二元素の合算量として、通常0.01〜20重量部が適当であり、0.1〜10重量部程度が好ましい。但し、担持量は金属、担体等の種類に応じて適宜調整できる。
【0035】
触媒活性を有する金属の担持方法は特に限定されず、例えば、貴金属又は第二元素を単独で含む金属化合物、或いはその両方を含む金属化合物の少なくとも1種を含む担体を熱処理して担持できる。当該金属化合物としては、例えば、水酸化物、塩化物、カルボン酸塩、硝酸塩、アルコキサイド、アセチルアトナート塩等が挙げられる。
【0036】
担体に貴金属及び第二元素の両方を担持する場合には、担持させる順序は特に限定されない。従って、担持方法は(A)貴金属を担持後に第二元素を担持する方法、(B)第二元素を担持後に貴金属を担持する方法、(C)貴金属及び第二元素を同時に担持する方法のいずれでもよい。以下、(A)〜(C)の各方法について説明する。
【0037】
方法(A)
方法(A)では、貴金属を担体に担持後に第二元素を担持させる。先ず、貴金属が担持された貴金属担持体を製造する。貴金属担持体の製造方法は特に限定されず、例えば、共沈法、イオン交換法、析出沈殿法、含浸法、気相蒸着法等が挙げられる。この中でも、特にイオン交換法、析出沈殿法及び含浸法が好ましい。
【0038】
イオン交換法では、例えば、貴金属のカチオン性錯塩を含む水溶液に担体を共存させ、貴金属のカチオン性錯体を担体表面上にカチオンとして結合付着させた後、焼成及び/又は還元処理を経て貴金属担持体を製造する。貴金属のカチオン性錯体をイオン交換により担体表面上に付着させる際は、上記水溶液の貴金属錯塩濃度、温度、pH等の諸条件を適宜制御すればよい。焼成及び/又は還元処理の前に、貴金属のカチオン性錯体を担体表面上にカチオンとして結合付着させた担体について、水洗、乾燥等を施してもよい。
【0039】
析出沈殿法では、例えば、貴金属化合物を含む溶液に担体を共存させ、貴金属含有沈殿物を担体表面上に析出沈殿させた後、貴金属含有沈殿物が析出した担体を焼成して貴金属担持体を製造する。貴金属含有沈殿物を担体表面上に析出沈殿させる場合には、上記溶液の貴金属濃度、温度、pH等の諸条件を適宜制御すればよい。焼成及び/又は還元処理の前に、貴金属含有沈殿物が析出した担体について、水洗、乾燥等を施してもよい。
【0040】
含浸法では、例えば、貴金属化合物を含む溶液に担体を共存させ、貴金属化合物を担体表面上に吸着させた後、焼成及び/又は還元処理等を経て貴金属担持体を製造する。貴金属化合物を担体表面上に吸着させる場合には、上記溶液の貴金属化合物濃度、温度、pH等の諸条件を適宜制御すればよい。焼成及び/又は還元処理の前に、貴金属化合物を担体表面上に吸着させた担体について、水洗、乾燥等を施してもよい。
【0041】
当該貴金属化合物としては、水又は有機溶媒に可溶な化合物であれば特に限定されない。金化合物としては、例えば、テトラクロロ金(III)酸「H〔AuCl〕」、テトラクロロ金(III)酸ナトリウム「Na〔AuCl〕」、ジシアノ金(I)酸カリウム「K〔Au(CN)〕」、ジエチルアミン金(III)三塩化物「(CNH〔AuCl〕」等の錯体;シアン化金(I)等が挙げられる。これらは少なくとも1種が使用できる。
【0042】
パラジウム化合物としては、例えば、酸化パラジウム、塩化パラジウム、臭化パラジウム、酢酸パラジウム、硝酸パラジウム、テトラアンミンパラジウム塩化物、テトラアンミンパラジウム硝酸塩、テトラアンミンパラジウム水酸塩、パラジウムアセチルアセトナート、テトラクロロパラジウム酸ナトリウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム等が挙げられる。これらは少なくとも1種が使用できる。
【0043】
ルテニウム化合物としては、例えば、酸化ルテニウム、塩化ルテニウム、臭化ルテニウム、硝酸ルテニウム、テトラアンミンルテニウム塩化物、テトラアンミンルテニウム硝酸塩、テトラアンミンルテニウム水酸塩、ルテニウムアセチルアセトナート、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム等が挙げられる。これらは少なくとも1種が使用できる。
【0044】
貴金属化合物を含む溶液の貴金属濃度としては、通常0.1〜100mmol/l程度とすればよい。当該溶液のpHは、通常5〜10が適当であり、6〜9が好ましい。pHは、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、アンモニア等のアルカリにより調整できる。また、塩酸等の酸も使用できる。これらのアルカリや酸は、水溶液の状態で使用してもよい。
【0045】
貴金属担持体を製造する際の焼成条件は特に限定されないが、焼成温度は、通常150〜800℃が適当であり、200〜700℃程度が好ましく、250〜600℃程度がより好ましい。焼成時間は焼成温度や固形分の大きさ等により異なるが、通常1〜20時間が適当であり、2〜10時間程度が好ましい。焼成雰囲気は空気(大気)中又は酸化性雰囲気中でもよく、窒素、アルゴンガス、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気中、水素ガス、一酸化炭素等の還元性雰囲気中でもよい。必要に応じて、焼成前に150℃未満程度の所定温度に加熱して乾燥させてもよい。
【0046】
上記の焼成によって、貴金属が担体表面に強固に固定された貴金属担持体が得られる。このような貴金属担持体は、このままでも触媒として使用できるが、更に第二元素を担持させることもできる。
【0047】
方法(A)では、次いで、貴金属担持体に第二元素を担持させる。第二元素の担持方法は特に限定されず、例えば、含浸法、イオン交換法、気相蒸着法等が挙げられる。この中でも、特に含浸法が好ましい。具体的には、第二元素を含む化合物が溶解した溶液と貴金属担持体との混合物を調製し、当該混合物から固形分を回収して熱処理することにより第二元素を担持できる。
【0048】
第二元素を含む化合物としては特に限定されず、例えば、硝酸塩、硫酸塩、水酸化物、塩化物等の無機化合物;ギ酸塩、酢酸塩、β−ジケトン化合物、アルコキサイド等の有機化合物が挙げられる。具体的には、酢酸鉛、酢酸亜鉛、硝酸亜鉛、硝酸ビスマス、ゲルマニウム(III)ブトキシド、ニッケルビスマスアセチルアセトナート、酢酸鉄等が挙げられる。
【0049】
第二元素を含む化合物が溶解した溶液は、第二元素を含む化合物とそれが可溶な溶媒とを組み合わせて調製できる。溶媒としては、例えば、水;アルコール、ケトン、芳香族炭化水素、カルボン酸エステル、ニトリル等の有機溶媒が使用できる。これらは少なくとも1種が使用できる。この中でも、特に、水及びアルコール(特にメタノール及びエタノール)の少なくとも1種が好ましい。第二元素と溶媒との組み合わせとしては、例えば、第二元素にPbを用いる場合には、酢酸鉛(水和物でもよい)とメタノールとの組み合わせが挙げられる。
【0050】
第二元素を含む化合物が溶解した溶液の第二元素濃度は、当該化合物や溶媒の種類により異なるが、通常0.01〜10mmol/l程度である。
【0051】
貴金属担持体と第二元素を含む化合物が溶解した溶液との混合割合は、当該溶液の濃度、第二元素の所望の担持量等に応じて適宜設定できる。
【0052】
貴金属担持体と第二元素を含む化合物が溶解した溶液との混合物を調製後、当該混合物から固形分を回収する。固形分の回収方法としては、例えば、エバポレーター等により溶媒を留去する方法が挙げられる。
【0053】
次いで、固形分の熱処理を行う。熱処理温度は、得られる金属担持体が貴金属及び第二元素から構成される温度とすればよく、好ましくは貴金属と第二元素との複合化による優れた触媒活性が発現されるように熱処理すればよい。
【0054】
熱処理温度は第二元素の種類等によって異なるが、通常50〜800℃が適当であり、100〜600℃程度が好ましい。熱処理時間は熱処理温度により異なるが、通常10分〜24時間程度である。熱処理雰囲気は特に限定されず、例えば、還元性雰囲気、酸化性雰囲気、不活性雰囲気等のいずれでもよい。還元性雰囲気としては、例えば、水素、一酸化炭素、アルコール等の還元性ガスのほか、これら還元性ガスを窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスで希釈した混合ガスが使用できる。酸化性雰囲気としては、例えば、酸素、空気等を含むガスが使用できる。不活性雰囲気としては、例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスが使用できる。この中でも、特に還元性雰囲気が好ましいが、酸化性雰囲気で熱処理した後に還元性雰囲気で熱処理してもよい。
【0055】
第二元素の種類によっては、貴金属との複合化を促進するために、当該熱処理前にホルマリン、ヒドラジン、水素化ホウ素ナトリウム、ギ酸等の還元剤を用いて固形分を還元処理してもよい。
【0056】
方法(B)
方法(B)では、第二元素を担体に担持後に貴金属を担持させる。第二元素を担体に担持する方法は限定されず、例えば、前記方法(A)で説明した方法が適用できる。第二元素の原料、担持条件等についても、前記方法(A)で説明したものと同様とできる。なお、必要に応じて、酸化性雰囲気下(空気又は酸素を含むガスの存在下)300〜900℃程度で焼成して第二元素を担体に強固に固定化してもよい。かかる処理は、後続の貴金属担持操作を円滑化できる点で好ましいものである。
【0057】
得られた第二元素担持体への貴金属の担持方法も限定されず、前記方法(A)で説明した方法が適用できる。即ち、イオン交換法、析出沈殿法、含浸法等により貴金属を付着等させた後、乾燥及び/又は焼成することにより貴金属を担持できる。貴金属と第二元素との複合化を促進するため、前記方法(A)と同様に、還元性雰囲気下での熱処理を行ってもよい。必要に応じて、更に還元剤を用いて還元処理を行うこともできる。
【0058】
方法(C)
方法(C)では、貴金属と第二元素とを同時に担体に担持させる。担持方法は特に限定されず、例えば、イオン交換法、共沈法、析出沈殿法、含浸法、気相蒸着法等が挙げられる。いずれの方法でも、担体に貴金属を担持させる際に、系内に第二元素を含む化合物を共存させておいて両者を同時に付着等させる。次に、前記方法(A)又は(B)と同様に、熱処理及び/又は還元処理を施すことにより、貴金属及び第二元素が担体上に担持された触媒が製造できる。
【0059】
担持方法としては、上記の中でも、特にイオン交換法、析出沈殿法及び含浸法が好適である。析出沈殿法では、貴金属を含む化合物(例えば水酸化物)として析出し、沈殿を形成しやすい条件(例えば、上記化合物が水酸化物である場合、温度30〜100℃程度、pH5〜10程度、貴金属濃度0.1〜100mmol/l程度)において、第二元素を含む化合物が析出し、沈殿を形成するように制御することが望ましい。この場合、第二元素を含む水溶性化合物を出発原料として使用し、その水溶液から第二元素を含む水酸化物として沈殿を形成させることが望ましい。また、沈殿形成の際に、貴金属と第二元素の各水酸化物が同時に沈殿を形成し、貴金属及び第二元素とを共に含有する水酸化物を生成することも望ましい。これらの沈殿物を担体上に付着等させたものを、熱処理及び/又は還元処理することにより触媒が製造できる。
【0060】
含浸法では、貴金属化合物及び第二元素を含む化合物が有機溶媒中に溶解した溶液に担体を加え、必要に応じて有機溶媒の留去等を行うことにより、貴金属化合物及び第二元素を含む化合物を同時に担体上に付着させ、次いで熱処理及び/又は還元処理を施すことによって触媒が製造できる。例えば、金のアセチルアセトナート化合物(例えば、ジメチル金アセチルアセトナート)と第二元素のアセチルアセトナート化合物(例えば、ニッケルアセチルアセトナート)とを含有するメタノール溶液を担体に含浸させた後にメタノールを留去し、次いで乾燥及び還元処理することによって、金及び第二元素を含む金合金超微粒子(例えば、Au−Ni合金超微粒子)が担体に担持された触媒を得ることができる。
【0061】
上記の析出沈殿法又は含浸法で使用する原料化合物、操作条件等は、前記方法(A)で説明したものが適用できる。
【0062】
(2)塩基性化合物
塩基性化合物としては、無機塩基性化合物及び/又は有機塩基性化合物が使用できる。無機塩基性化合物としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の塩が挙げられる。具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、リチウムメトキシド等が挙げられる。この中でも、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムから選ばれる少なくとも1種が好ましい。また、マグネシウム、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属の塩も使用できる。具体的には、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ベリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム等が挙げられる。
【0063】
有機塩基性化合物としては、例えば、アンモニア及びアミン類から選ばれる少なくとも1種を好適に使用できる。アミンとしては、一級、二級及び三級アミンのいずれも用いることができる。アミン類としては、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、N−メチルアニリン等が使用できる。
【0064】
上記の中でも、無機塩基性化合物が好ましく、特にアルカリ金属の塩、具体的にはナトリウムの塩が好ましい。
【0065】
このような塩基性化合物は、反応系に固形物のまま加えてもよく、水−アルコール混合溶液の状態又はアルコール溶液の状態で加えてもよい。液状の塩基性化合物は、必要に応じて、水−アルコール混合溶液又はアルコールに希釈した状態で加えることができる。アルコールとしては特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、n−プロパノール、オクタノール等の脂肪族アルコール;1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール等のジオール等が使用できる。
【0066】
塩基性化合物の使用量は特に限定されないが、貴金属担持触媒100重量部に対して、通常0.001〜100重量部が適当であり、0.005〜20重量部程度が好ましく、0.01〜10重量部程度がより好ましい。
【0067】
(3)カルボン酸エステルの製造
本発明のカルボン酸エステルの製造方法は、貴金属担持触媒の存在下、1種又は2種以上のアルコールと酸素とを反応させることを基本とし、少なくともアルコールと酸素とを反応させる際に、反応系に塩基性化合物を共存させる。
【0068】
当該アルコールとしては、酸素と反応してカルボン酸エステルを生成するものであればよく、従来、カルボン酸エステル製造原料として用いられているアルコールが使用できる。アルコールは1価アルコール及び多価アルコールのいずれでもよい。アルコールは第一級アルコールが好ましい。多価アルコールは、第一級アルコールを分子内に1つ以上含んでいれば第二級アルコールを分子内に含んでいてもよい。即ち、多価アルコールは、第一級アルコールを分子内に1つ以上含むものが好ましい。
【0069】
アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、オクタノール等の炭素数1〜10の脂肪族アルコール;1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール等の炭素数2〜10のジオール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の分子内にエーテル結合を有する炭素数2〜10のアルコール;アリルアルコール、メタリルアルコール等の炭素数3〜10の脂肪族不飽和アルコール;ベンジルアルコール等の芳香族アルコール等が挙げられる。この中でも炭素数1〜10の脂肪族アルコールが好ましく、炭素数1〜4の脂肪族アルコールがより好ましい。具体的には、メタノール、エタノール、エチレングリコール等が使用できる。これらアルコールは少なくとも1種が使用できる。
【0070】
本発明の製造方法では、原料であるアルコールの種類を特定することにより、目的とするカルボン酸エステルを得ることができる。即ち、アルコールは、目的とするカルボン酸エステルの種類等によって適宜選択すればよい。例えば;
a)酢酸エチルを製造する場合:エタノール、
b)ヒドロキシ酢酸2−ヒドロキシエチルを製造する場合:エチレングリコール、
c)1,4−ジオキサン−2−オンを製造する場合:ジエチレングリコール、
d)グリコール酸メチルを製造する場合:エチレングリコールとメタノール、
e)ピルピン酸メチル及び乳酸メチル(混合物)を製造する場合:プロピレングリコールとメタノール
をそれぞれ原料として使用できる。
【0071】
アルコールを2種以上用いる場合には、各アルコールの使用量は、反応性等を考慮して適宜調整できる。例えば、上記d)においてエチレングリコールとメタノールを組み合わせて用いる場合には、エチレングリコールとメタノールのモル比は1:1を基準とすればよい。
【0072】
本発明のカルボン酸エステルの製造方法では、貴金属担持触媒の存在下、1種又は2種以上のアルコールと酸素とを反応させる。当該反応は、液相反応、気相反応等のいずれでもよい。酸素(酸素ガス)は、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、二酸化炭素ガス等の不活性ガスで希釈されていてもよい。また、空気等の酸素含有ガスでもよい。酸素の反応系への供給方法は特に限定されず、例えば、液中へのバブリング等が挙げられる。
【0073】
上記反応の形態としては、連続式、回分式、半回分式等のいずれでもよい。触媒は、回分式の場合には反応装置に原料と共に一括で仕込めばよい。連続式の場合には反応装置に予め上記触媒を充填しておくか、又は反応装置に原料と共に触媒を連続的に仕込めばよい。
【0074】
触媒形態は、固定床、流動床、懸濁床等のいずれでもよい。触媒の使用量は、アルコールの種類、触媒の種類(組成等)、反応条件等に応じて適宜決定すればよい。反応時間は各種条件によって異なるが、通常は反応時間又は滞留時間(反応器内滞留液量/液供給量)として0.5〜20時間程度とすればよい。
【0075】
本発明の製造方法では、少なくともアルコールと酸素とを反応させる際に、反応系に塩基性化合物を共存させる。塩基性化合物の使用量は、触媒の種類に応じて適宜設定できるが、貴金属担持触媒100重量部に対して、通常0.001〜100重量部が適当であり、0.005〜20重量部程度が好ましく、0.01〜10重量部程度がより好ましい。このような塩基性化合物は、反応系に固形物のまま加えてもよく、水−アルコール混合溶液の状態又はアルコール溶液等の状態で加えることもできる。
【0076】
上記反応は、溶媒の存在下で実施することもできる。溶媒を用いる方が目的のカルボン酸エステルを効率良く製造できる場合がある。溶媒としては、原料アルコールを溶解し、反応条件下で自ら反応し難いものであればよく、アルコールの種類、反応条件等に応じて適宜選択できる。例えば、水;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルム、二塩化エチレン等のハロゲン含有化合物等が挙げられる。溶媒の使用量は、溶媒の種類、アルコールの種類、触媒の種類等に応じて適宜設定すればよい。
【0077】
反応温度、反応圧力等の諸条件は、アルコールや触媒の種類等に応じて適宜決定すればよい。反応温度は特に限定されないが、通常0〜180℃程度、好ましくは20〜150℃、より好ましくは50〜120℃である。この範囲内の温度であれば、効率的に反応が進行する。反応圧力は、減圧、常圧及び加圧のいずれでもよいが、通常は0.05〜2MPa(ゲージ圧)の範囲内が好ましい。反応系のpHは、副生成物抑制等の見地よりpH6〜9程度が好ましい。pH調節のために、例えば、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物(カルボン酸塩)を反応系に添加することもできる。
【0078】
上記の反応後は、反応系から触媒を分離後、生成したカルボン酸エステルを公知の分離精製手段により回収すればよい。触媒の分離方法は公知の方法に従えばよい。例えば、反応系が触媒(固形分)と反応生成物(液状成分)からなる場合は、ろ過、遠心分離等の公知の固液分離方法により触媒と反応生成物を分離できる。このようにして得られるカルボン酸エステルは、従来法で得られるカルボン酸エステルと同様の用途に使用することができる。
【0079】
このような本発明の製造方法では、塩基性化合物を共存させることにより、貴金属担持触媒の経時的劣化が抑制されている。経時的劣化の抑制効果は、貴金属担持触媒の種類によって異なるが、劣化速度を通常1〜90%程度、好ましくは50〜90%程度遅延させることができる。
2.貴金属担持触媒の再生方法
本発明の貴金属担持触媒の再生方法は、貴金属担持触媒の存在下、1種又は2種以上のアルコールと酸素とを反応させるカルボン酸エステルの製造方法に使用した貴金属担持触媒を、塩基性化合物を含む溶液により洗浄することを特徴とする。
【0080】
具体的には、経時的劣化した貴金属担持触媒を、無機塩基性化合物及び/又は有機塩基性化合物を含む溶液により洗浄して再生できる。無機塩基性化合物及び有機塩基性化合物としては、前記で説明したものが適用できる。
【0081】
塩基性化合物の溶液は塩基性化合物をそれが可溶な溶媒に溶解させることにより調製できる。溶媒は塩基性化合物の種類によって適宜選択できるが、極性溶媒が好ましく、例えば、水、アルコール、水−アルコール混合溶液が使用できる。溶液中の塩基性化合物濃度は特に限定されないが、通常0.001〜10質量%が適当であり、0.01〜1質量%程度が好ましい。
【0082】
貴金属担持触媒の洗浄は、塩基性化合物を含む溶液に貴金属担持触媒を浸漬する方法、塩基性化合物の溶液を貴金属担持触媒に噴霧する方法等により行える。洗浄する際の溶液の使用量は、触媒1gに対して1〜100gが適当であり、2〜50g程度が好ましい。洗浄時間は1分〜10時間が適当であり、1分〜2時間程度が好ましい。浸漬により洗浄する場合には、必要に応じて、撹拌してもよい。洗浄する際の溶液の温度は特に限定されないが、通常0〜100℃程度が適当であり、10〜50℃程度が好ましい。なお、洗浄後にアルコール等の極性溶媒で更に洗浄してもよい。
【0083】
再生された貴金属担持触媒は、繰り返し、1種又は2種以上のアルコールと酸素とを反応させるカルボン酸エステルの製造方法に使用できる。
【0084】
【発明の効果】
本発明のカルボン酸エステルの製造方法は、反応系に共存させた塩基性化合物の作用により貴金属担持触媒の経時的劣化が抑制されており、貴金属担持触媒の交換頻度が従来よりも低減され、長期にわたり使用できる点において非常に有用性が高い。かかる本発明の製造方法では、鎖状のカルボン酸エステルのほか、例えば、ラクトン等のような環状のカルボン酸エステルも製造できる。
【0085】
本発明の貴金属担持触媒再生方法では、経時的劣化した貴金属担持触媒を、塩基性化合物を含む溶液により洗浄することにより、触媒活性を十分に再生させることができる。かかる方法により再生された貴金属担持触媒は、1種又は2種以上のアルコールと酸素とを反応させるカルボン酸エステルの製造方法に繰り返し使用できる。
【0086】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は実施例の記載に限定されるものではない。
【0087】
触媒担体製造例1
チタニウム(IV)テトライソプロポキシド1.8gを2−プロパノール16.8gに溶解させ、当該溶液にSiO(商標名「CARIACT Q−10」富士シリシア化学株式会社製)10gを浸漬した。次いで、全体を80℃に加熱しながら2−プロパノールを濃縮した。残留固形分を空気中600℃で4時間焼成して触媒担体TiO/SiO(SiO:5質量%)を製造した。
【0088】
触媒製造例1
塩化金(III)酸・4水和物2.12gを400mlのイオン交換水に溶解し、撹拌しながら70℃に加熱した。70℃を保つように加熱しながら水酸化ナトリウム0.95gを加え、更に触媒担体製造例1で製造した担体10gを加えて1時間加熱・撹拌を続けた。次いで、固形分を200mlのイオン交換水にて3回洗浄した後、濾過した。得られた固形分を空気中400℃で3時間焼成して触媒Au/TiO/SiO(Au:5質量%、TiO5質量%)を製造した。
【0089】
基本反応
100mlオートクレーブにモノエチレングリコール2.4g、メタノール12.4g及び触媒製造例1で製造した触媒1gを仕込んだ。オートクレーブ内を窒素置換後、撹拌しながら加温して100℃に昇温した。次いで、窒素2Kg/cm及び酸素5Kg/cmを加えて加圧することにより反応を開始した。4時間加熱・撹拌を続けた後、内容物を冷却して反応を終了した。
【0090】
内容物の組成をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、エチレングリコールの転化率は77%であり、生成物であるグリコール酸メチルの選択率及び収率は、それぞれ89%及び68%であった。
【0091】
参考例1
基本反応に使用した触媒を、メタノール50mlにより3回洗浄し、乾燥させて再度触媒として用いることを繰り返し、基本反応を10回繰り返し行った。
【0092】
1〜10回目の反応では、経時的に触媒の性能は劣化し、5回目における反応成績は、エチレングリコールの転化率が43%であり、グリコール酸メチルの選択率及び収率は、それぞれ72%及び31%であった。
【0093】
また、10回目における反応成績は、エチレングリコールの転化率が40%であり、グリコール酸メチルの選択率及び収率は、それぞれ72%及び29%であった。
【0094】
実施例1
仕込み時に水酸化ナトリウム0.1gを加える以外は、参考例1と同様にして基本反応を5回繰り返し行った。
【0095】
5回目における反応成績は、エチレングリコールの転化率が76%であり、グリコール酸メチルの選択率及び収率は、それぞれ77%及び58%であった。
【0096】
実施例2
参考例1において基本反応を10回繰り返し行った後の触媒を、水酸化ナトリウム0.1質量%のメタノール溶液50mlにより3回洗浄後、メタノール150mlにより洗浄し、乾燥させて触媒を再生させた。
【0097】
再生させた触媒を用いて基本反応を行った結果、エチレングリコールの転化率は77%であり、グリコール酸メチルの選択率及び収率は、それぞれ80%及び62%であった。
【0098】
実施例3
参考例1と同様にして基本反応を5回繰り返し行い、エチレングリコール転化率が43%、グリコール酸メチルの選択率及び収率がそれぞれ72%及び31%となった触媒を、水酸化ナトリウム1質量%のメタノール溶液5mlに20分間浸漬した後、メタノール20mlに20分間浸漬して再生させた触媒を用いて基本反応を行った結果、エチレングリコールの転化率は71%、グリコール酸メチルの選択率及び収率は74%、53%となった。

Claims (4)

  1. 貴金属担持触媒の存在下、1種又は2種以上のアルコールと酸素とを反応させるカルボン酸エステルの製造方法であって、少なくともアルコールと酸素とを反応させる際に、反応系に塩基性化合物を共存させることを特徴とするカルボン酸エステルの製造方法。
  2. 貴金属担持触媒の存在下、1種又は2種以上のアルコールと酸素とを反応させるカルボン酸エステルの製造方法に使用した当該貴金属担持触媒を、塩基性化合物を含む溶液により洗浄することを特徴とする貴金属担持触媒の再生方法。
  3. 請求項2に記載の再生方法により再生された貴金属担持触媒の存在下、1種又は2種以上のアルコールと酸素とを反応させることを特徴とするカルボン酸エステルの製造方法。
  4. 請求項3に記載のカルボン酸エステルの製造方法において、少なくともアルコールと酸素とを反応させる際に、反応系に塩基性化合物を共存させることを特徴とするカルボン酸エステルの製造方法。
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