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JP3944875B2 - カルボン酸エステル合成用触媒及びカルボン酸エステルの製造方法 - Google Patents

カルボン酸エステル合成用触媒及びカルボン酸エステルの製造方法 Download PDF

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JP3944875B2 JP2001294233A JP2001294233A JP3944875B2 JP 3944875 B2 JP3944875 B2 JP 3944875B2 JP 2001294233 A JP2001294233 A JP 2001294233A JP 2001294233 A JP2001294233 A JP 2001294233A JP 3944875 B2 JP3944875 B2 JP 3944875B2
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  • Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、カルボン酸エステル合成用触媒及びカルボン酸エステルの製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】
アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等のカルボン酸エステルは、各種の合成樹脂の原料となる重合用モノマーとして工業的に重要な化合物である。
【0003】
アルコールからカルボン酸エステルを合成する方法の一つとして、分子状酸素の存在下で酸素とアルコールとを反応させる方法が知られている。例えば、下記の式(1)(分子間反応)及び式(2)(分子内反応)に示す2種の反応が利用されている。
【0004】
RCH2OH+R’OH+O2→RCOOR’+2H2O …(1)
2RCH2OH+O2→RCOOCH2R+2H2O …(2)
これらの反応に用いられる触媒としては、パラジウムを主体とする化合物が提案されている。例えば、パラジウムと鉛、水銀、タリウム又はビスマスより選ばれた少なくとも1種の元素とを含む金属間化合物を含有してなる触媒が提案されている(特公昭62−7903号)。また、液相懸濁パラジウム触媒も提案されている(日本化学学会誌1973,pp.454〜458)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来技術で挙げられている触媒はいずれも触媒活性がなお低い。このため、前記の特公昭62−7903号に開示された技術のように、アルコールと同量又はそれよりも多い量の触媒を用いなければならず、生産コストが高くならざるを得ない。このような点から、より効率的にカルボン酸エステルを合成するためにはさらなる改良が必要とされている。
【0006】
従って、本発明の主な目的は、より触媒活性に優れたカルボン酸エステル合成用触媒を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、かかる従来技術の問題点を解決するために鋭意研究を重ねた結果、金微粒子を主体とする触媒が上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、下記のカルボン酸エステル合成用触媒及びカルボン酸エステルの製造方法に係るものである。
【0009】
1.1種又は2種以上のアルコールと酸素との反応によりカルボン酸エステルを合成するために用いられる触媒であって、
1)Auからなる微粒子及び/又は
2)周期表第4から第6周期のIIB族、IIIB族、IVB族、VB族及びVIB族の少なくとも1種の第二元素とAuとからなる微粒子
が担体上に担持されていることを特徴とするカルボン酸エステル合成用触媒。
【0010】
2.微粒子の平均粒子径が10nm以下である前記項1記載のカルボン酸エステル合成用触媒。
【0011】
3.前記項1又は2に記載の触媒の存在下、1種又は2種以上のアルコールと酸素との反応によりカルボン酸エステルを合成することを特徴とするカルボン酸エステルの製造方法。
【0012】
【発明の実施の形態】
1.カルボン酸エステル合成用触媒
本発明のカルボン酸エステル合成用触媒は、1種又は2種以上のアルコールと酸素との反応によりカルボン酸エステルを合成するために用いられる触媒であって、
1)Auからなる微粒子及び/又は
2)周期表第4から第6周期のIIB族、IIIB族、IVB族、VB族及びVIB族の少なくとも1種の第二元素とAuとからなる微粒子
が担体上に担持されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の触媒は、1種又は2種以上のアルコールと酸素との反応によりカルボン酸エステルを合成する場合に用いることができる。特に、本発明触媒により製造できるカルボン酸エステルとしては、鎖状のカルボン酸エステルのほか、例えばラクトンのような環状のカルボン酸エステルも包含される。
(1)触媒活性成分
本発明触媒における触媒活性成分としては、上記のように、金単独からなる微粒子ならびに金と上記第二元素からなる微粒子の少なくとも1種の金属微粒子が用いられる。本発明では、金単独からなる微粒子と、金と第二元素からなる微粒子とが混在していても良い。なお、本発明では、これらの微粒子中には、本発明の効果を妨げない範囲内の不純物が含まれていても良い。
【0014】
金と第二元素からなる微粒子の場合は、各微粒子のいずれにも金と第二元素とが含まれていることが望ましい。第二元素は、周期表第4から第6周期のIIB族、IIIB族、IVB族、VB族及びVIB族の少なくとも1種である。具体的には、上記IIB族としてZn、Cd、Hg;IIIB族としてGa、In、Tl;IVB族としてGe、Sn、Pb;VB族としてAs、Sb、Bi;VIB族としてSe、Te、Po等が例示される。本発明では、周期表第4から第6周期のIIB族、IVB族、VB族の少なくとも1種が好ましい。特に、Zn、Pb及びBiの少なくとも1種が好ましい。
【0015】
また、第二元素と金とは、本発明の効果が得られる限り、一部又は全部が合金、金属間化合物等を形成していても良い。金と第二元素との含有比率は、特に限定されず、例えば触媒の使用目的、使用条件等に応じて適宜決定すれば良い。
【0016】
微粒子は、通常はミクロンオーダー以下の粒子径をもつ粒子が好ましい。微粒子を触媒として使用する際には、粒子表面に露出している構成元素が多いほど高活性が期待できるため、安定性を考慮しながら小さい粒子径とすることが望ましい。かかる見地より、本発明の微粒子では平均粒子径10nm以下(特に6nm以下)であることが好ましい。平均粒子径を10nm以下に規定することによって、いっそう高い触媒活性を得ることができる。平均粒子径の下限値は特に制限されないが、物理的安定性の見地より約1nm程度とすれば良い。
【0017】
なお、本発明における微粒子の平均粒子径は、担体上の微粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)による観察により任意に選んだ100個の粒子径の算術平均値を示す。
【0018】
本発明触媒における微粒子の担持量は、最終製品の用途、担体の種類等に応じて適宜決定すれば良いが、通常は担体100重量部に対して0.01〜20重量部程度、特に0.1〜10重量部とすることが好ましい。
(2)担体
担体としては、従来のカルボン酸エステル合成に用いられる触媒担体として用いられるもの又は市販品を使用することができ、特に限定されない。また、公知の製法によって得られるものも使用できる。例えば、金属酸化物(シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、マグネシア等)、複合金属酸化物(シリカ・アルミナ、チタニア・シリカ、シリカ・マグネシア等)、ゼオライト(ZSM−5等)、メソポーラスシリケート(MCM−41等)、天然鉱物(粘土、珪藻土、軽石等)の各種担体を挙げることができる。
【0019】
本発明では、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Sn、Pb、La及びCeの少なくとも1種の元素を含む酸化物からなる無機酸化物担体を好ましく用いることができる。上記酸化物は、単体元素の酸化物が2以上混合された混合酸化物であっても良いし、あるいは複酸化物(又は複合酸化物)であっても良い。
【0020】
特に、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Sn、Pb、La及びCeの少なくとも1種とSiとを含む無機酸化物担体を好ましく用いることができる。
【0021】
担体の製法も限定されず、公知の製法を用いることができる。例えば、含浸法、共沈法、イオン交換法、気相蒸着法、混練法、水熱合成法等が挙げられる。
【0022】
例えば、上記の無機酸化物担体は、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Sn、Pb、La及びCeの少なくとも1種を含む水溶性化合物の水溶液をシリカに含浸させた後、得られた含浸体を焼成することによって得られる。かかる無機酸化物担体は、触媒活性成分である微粒子をより確実に担持できるとともに、微粒子との相乗的な作用によっていっそう高い触媒活性を得ることができる。
【0023】
上記の製法で用いられる化合物は限定されない。例えば、硝酸塩、硫酸塩、水酸化物等の無機化合物、カルボン酸塩、アルコキサイド、アセチルアセトナート等の有機化合物が挙げられる。
【0024】
上記の水溶性化合物も、水溶性であれば限定的でない。例えば、硝酸亜鉛、硝酸ランタン、硝酸鉄、硝酸ニッケル、硝酸アルミニウム等の等の無機酸塩、酢酸鉛、酢酸マグネシウム等の有機酸塩を挙げることができる。これらの塩は無水物又は水和物のいずれであっても良い。また、上記水溶液の濃度は、用いる水溶性化合物の種類等に応じて適宜設定できる。
【0025】
上記水溶液をシリカに含浸させる量は限定的ではないが、通常はシリカ100重量部に対して1〜20重量部程度となるようにすれば良い。
【0026】
本発明では、無機酸化物担体は多孔質であることが好ましく、特にその比表面積(BET法)が通常50m2/g以上、特に100m2/g以上であることがより好ましい。担体の形状・大きさは限定的でなく、最終製品の用途等に応じて適宜決定すれば良い。
2.本発明触媒の製造方法
(1)金微粒子を担持する場合
金微粒子を担持する場合は、金微粒子を担体上に固定化できる方法であれば特に限定されない。担持方法自体は、例えば共沈法、析出沈殿法、含浸法、気相蒸着法等の公知の方法を利用できる。本発明では、担持方法として共沈法、析出沈殿法等を好適に使用でき、特に析出沈殿法がより好ましい。析出沈殿法を用いて本発明触媒を製造する場合、例えば、金を含む水溶性化合物の水溶液と無機酸化物担体とを混合した後、回収された固形分を焼成することによって本発明触媒を得ることができる。
【0027】
上記の金を含む水溶性化合物は水溶性であれば限定されない。例えば、テトラクロロ金(III)酸「H〔AuCl4〕」、テトラクロロ金(III)酸ナトリウム「Na〔AuCl4〕」、ジシアノ金(I)酸カリウム「K〔Au(CN)2〕」、ジエチルアミン金(III)三塩化物「(C252NH〔AuCl3〕」等の錯体;シアン化金(I)等の金化合物が挙げられる。これらの化合物は少なくとも1種を用いることができる。
【0028】
上記水溶液の金濃度は、用いる化合物の種類等によって異なるが、通常は0.1〜100mmol/L程度とすれば良い。また、上記水溶液のpHは、通常5〜10程度、好ましくは6〜9の範囲内に設定すれば良い。上記pHは、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、アンモニア等のアルカリにより調節することができる。また、必要により、塩酸等の酸を使用することもできる。これらのアルカリ又は酸は、必要に応じて水溶液の形態で使用しても良い。
【0029】
必要により、上記水溶液に界面活性剤を添加することもできる。界面活性剤は、上記水溶液に応じて公知のもの又は市販品の中から適宜選択すれば良い。例えば、長鎖アルキルスルホン酸及びその塩、長鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩、長鎖アルキルカルボン酸及びその塩、アリールカルボン酸及びその塩等のアニオン性界面活性剤;長鎖アルキル4級アンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤;ポリアルキレングリコール、ポリオキシエチレンノニルフェノール等のノニオン性界面活性剤;等が挙げられる。これら界面活性剤は少なくとも1種を用いることができる。本発明では、アニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤が好ましく、特にアニオン性界面活性剤が好ましい。アニオン性界面活性剤の中でも、とりわけ、炭素数8以上の長鎖アルキルスルホン酸及びその塩、炭素数8以上の長鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩、炭素数8以上の長鎖アルキルカルボン酸及びその塩、アリールカルボン酸及びその塩等がより好ましい。
【0030】
界面活性剤の使用量は、所望の分散性、用いる界面活性剤の種類等により適宜決定することができるが、通常は界面活性剤の濃度が0.1〜10mmol/L程度とすれば良い。
【0031】
上記水溶液と混合する担体は、顆粒状、造粒体等のいずれの形態で使用しても良い。上記担体の使用量は、上記水溶液の濃度、用いる担体の種類等に応じて適宜設定すれば良い。上記水溶液と担体とを混合する際には、必要に応じて上記水溶液を加温しても良い。この場合の温度は、通常10〜100℃程度とすれば良い。
【0032】
続いて、この担体と金を含む水溶性化合物の水溶液とを混合した後、固形分を回収する。固形分の回収方法は限定的でなく、例えば上澄液の回収により行ったり、あるいは公知の固液分離法に従って実施することができる。回収された固形分は、残留イオンが実質的になくなるまでイオン交換水等で洗浄することが好ましい。
【0033】
次いで、上記固形分(金固定化物)の焼成を行う。必要に応じて、焼成に先立って予め所定温度に加熱して乾燥しても良い。乾燥温度は、通常150℃未満とすれば良い。焼成温度は、通常150〜800℃程度、好ましくは200〜700℃、最も好ましくは250〜600℃とすれば良い。この温度範囲内で所定の微粒子が得られるように適宜設定すれば良い。焼成雰囲気は空気(大気)中又は酸化性雰囲気中でも良く、またアルゴンガス、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気中、水素ガス等の還元性雰囲気中のいずれであっても良い。また、焼成時間は、焼成温度、固形分の大きさ等に応じて適宜決定すれば良い。かかる焼成によって、本発明の触媒を得ることができる。
【0034】
特に、シリカ担体又はシリカを含む担体に微粒子を担持した触媒にあっては、触媒表面を有機シリル化処理しても良い。かかる処理によって触媒性能の向上、寿命安定性の改善等を図ることが可能である。有機シリル化処理自体は公知の方法を適用でき、例えばメトキシトリメチルシラン、トリメチルシリルクロライド、ヘキサメチルジシラザン等のシリル化剤を用いて気相法又ろは液相法によって実施すれば良い。有機シリル化処理は、後記の(2)(3)についても同様に適用できる。
(2)金と第二元素からなる微粒子を担持する場合
この場合は、第二元素と金からなる微粒子が担体上に固定化できる限りその制限はない。例えば、金及びその化合物の少なくとも1種ならびに第二元素及びその化合物の少なくとも1種を含む担体を熱処理することによって得ることができる。金の化合物、第二元素の化合物は、いずれも水酸化物、塩化物、カルボン酸塩、硝酸塩、アルコキサイド、アセチルアトナート塩等のいずれであっても良い。
【0035】
また、担体に金及び第二元素を担持させる順序も限定的でなく、いずれが先であっても良いし、また同時であっても良い。すなわち、以下に示す製法(A)〜(C)のいずれの方法を用いることができる。すなわち、(A)金を担体に担持した後、第二元素を担持する方法、(B)第二元素を担体に担持した後、金を担持する方法、(C)金と第二元素とを同時に担体に担持する方法が適用できる。以下、各方法について説明する。
【0036】
製法(A)
上記(A)の方法は、金を担体に担持した後、第二元素を担持する方法である。まず、金が担持されてなる金担持体を製造する。金担持体の製法は限定的でなく、例えば共沈法、析出沈殿法、含浸法、気相蒸着法等の従来の方法をいずれも適用できる。本発明では、前記(1)の金微粒子を担持する方法と同様にすることが好ましい。すなわち、金を含む水溶性化合物の水溶液と無機酸化物担体とを混合した後、回収された固形分を焼成することによって金担持体を得ることができる。製造条件は前記(1)と同様にすれば良い。
【0037】
次に、第二元素及びその化合物の少なくとも1種を金担持体に担持した後、熱処理することにより金と第二元素とを複合化させる。
【0038】
上記の担持方法は限定的でなく、従来方法に従って行うことができる。例えば、含浸法、イオン交換法、気相蒸着法等が挙げられる。このうち、含浸法が好適に使用できる。例えば、第二元素を含む化合物が溶解した溶液と上記金担持体との混合物を調製した後、当該混合物から回収された固形分を熱処理することにより好適に第二元素を担持することができる。
【0039】
第二元素を含む化合物としては、特に限定されないが、硝酸塩、硫酸塩、水酸化物、塩化物等の無機化合物、ギ酸塩、酢酸塩、アセチルアセトナート塩、アルコキサイド等の有機化合物を例示することができる。より具体的には、酢酸鉛、硝酸亜鉛、硝酸ビスマス等を挙げることができる。
【0040】
第二元素を含む化合物が溶解した溶液は、第二元素を含む化合物及びそれが溶解する溶媒の組合せを用いることにより調製できる。溶媒としては特に限定はないが、水、有機溶媒等を用いることができる。有機溶媒としては、例えばアルコール。ケトン、芳香族炭化水素、カルボン酸エステル、ニトリル等を挙げることができる。特に、水及びアルコール(特にメタノール及びエタノール)の少なくとも1種を用いることが好ましい。従って、上記組合せは、水又はアルコールに溶解する上記化合物を用いることが好ましい。例えば、第二元素としてPbを用いる場合は、酢酸鉛(水和物でも良い。)をメタノールに溶解させた溶液を好適に用いることができる。
【0041】
第二元素を含む化合物が溶解した溶液の第二元素濃度は、上記化合物の種類、溶媒の種類等に応じて適宜決定できるが、通常は0.01〜10mmol/L程度にすれば良い。
【0042】
また、上記金担持体と、第二元素を含む化合物が溶解した溶液との混合割合は、上記溶液の濃度、金又は第二元素の所望の担持量等に応じて適宜決定することができる。
【0043】
上記金担持体と、第二元素を含む化合物が溶解した溶液との混合物を調製した後、当該混合物から固形分を回収する。固形分の回収方法は限定的ではないが、例えば第二元素を含む化合物を金担持体に担持されるようにすれば良い。例えば、エバポレーター等により溶媒を留去することが好ましい。
【0044】
次いで、固形分の熱処理を実施する。熱処理温度は、得られる各金属粒子が金及び第二元素から構成されるような温度とすれば良い。すなわち、最終的に得られる担持物を触媒として用いた場合に金と第二元素との複合化による触媒活性が発現されるように熱処理すれば良い。
【0045】
かかる熱処理温度は、第二元素の種類等によって異なるが一般的には50〜800℃程度、好ましくは100〜600℃とすれば良い。
【0046】
熱処理雰囲気は特に限定されず、還元性雰囲気、酸化性雰囲気、不活性雰囲気等のいずれでも良い。還元性雰囲気とするためには、例えば水素、一酸化炭素、アルコール等の還元性ガスのほか、これらの還元性ガスを窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスで希釈した混合ガスを使用すれば良い。また、酸化性雰囲気とするためには、酸素、空気等を含むガスを使用すれば良い。不活性雰囲気とするためには、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスを使用すれば良い。本発明では、特に還元性雰囲気とすることが望ましい。また、酸化性雰囲気で熱処理した後、還元性雰囲気で熱処理することもできる。
【0047】
また、熱処理時間は、熱処理の温度等によって適宜変更することができるが、通常10分〜24時間程度とすれば良い。
【0048】
第二元素の種類によっては、金との複合化をさらに促進するために、上記熱処理に先立ってホルマリン、ヒドラジン、水素化ホウ素ナトリウム、ギ酸等の還元剤を用いて固形分を還元処理しても良い。
【0049】
方法(B)
上記(B)の方法では、第二元素を担体に担持した後、金を担持する方法である。第二元素に担持する方法は限定的でなく、例えば上記(A)と同様の方法を使用できる。すなわち、担体にまず上記(A)と同様の方法にて第二元素を担持すれば良い。第二元素の原料、担持条件等も、上記(A)で掲げた条件と同様にすれば良い。
【0050】
ただし、場合によっては、その後の金担持操作上好ましい付加的処理として、酸化性雰囲気下(空気又は酸素を含むガスの存在下)300〜900℃程度で焼成することにより第二元素を担体に強固に固定化することができる。
【0051】
こうして製造された第二元素担持体への金の担持は、上記(A)と同様の方法にて実施できる。すなわち、析出沈殿法等により金を担持した後、乾燥及び焼成を上記(A)と同様にして実施すれば良い。また、上記(A)と同様、金と第二元素との複合化をより十分なものとするために、上記(A)と同様の還元性雰囲気下での熱処理を行うことが望ましい。また、必要に応じて、さらに還元剤を用いた還元処理を組み合わせることもできる。
【0052】
方法(C)
上記(C)の方法は、金と第二元素とを同時に担体に担持する方法である。例えば、析出沈殿法により金と第二元素とを同時に担体に担持することができる。具体的には、上記(A)において析出沈殿法により金を担体に担持させる場合に、系内に第二元素を含む化合物を共存させることによって、両者を担持することができる。さらに、両者を担持したものを上記(A)(B)と同様に熱処理を実施できる。
(3)金微粒子と、第二元素と金とからなる微粒子とを担持する場合
この場合は、前記(1)及び(2)の方法を適宜組み合わせれば良い。例えば、前記(2)の方法により第二元素と金とからなる微粒子とを担体に担持した後、前記(1)の方法でさらに金微粒子を担持することができる。
3.カルボン酸エステルの製造方法
本発明のカルボン酸エステルの製造方法は、本発明触媒の存在下、1種又は2種以上のアルコールと酸素との反応によりカルボン酸エステルを合成することを特徴とする。
【0053】
上記アルコールとしては、酸素との反応によりカルボン酸エステルを生成するものであれば限定されず、公知のカルボン酸エステル合成の原料として用いられるアルコールも使用できる。アルコールは、1価アルコール及び多価アルコールのいずれであっても良い。また、アルコールは第一級アルコールが好ましい。多価アルコールは、第一級アルコールを分子内に1つ以上含んでいれば第二級アルコールを分子内に含んでいても良い。すなわち、多価アルコールは、第一級アルコールを分子内に1つ以上含んでいるものが好ましい。これらアルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、オクタノール等の炭素数1〜10の脂肪族アルコール;1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール等の炭素数2〜10のジオール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の分子内にエーテル結合を有する炭素数2〜10のアルコール;アリルアルコール、メタリルアルコール等の炭素数3〜10の脂肪族不飽和アルコール;ベンジルアルコール等の芳香族アルコール等が挙げられる。好ましくは、炭素数1〜10の脂肪族アルコール等が使用できる。これらアルコールは、1種又は2種以上で用いることができる。
【0054】
本発明の製造方法では、原料であるアルコールの種類を特定することにより、目的とするカルボン酸エステルを得ることができる。すなわち、アルコールは、目的とするカルボン酸エステルの種類等によって適宜選択すれば良い。例えば、a)酢酸エチルを合成する場合:エタノール、b)ヒドロキシ酢酸2−ヒドロキシエチルを合成する場合:エチレングリコール、c)1,4−ジオキサン−2−オンを合成する場合:ジエチレングリコール、d)グリコール酸メチルを合成する場合:エチレングリコールとメタノール、e)ピルピン酸メチル及び乳酸メチル(混合物)を合成する場合:プロピレングリコールとメタノールをそれぞれ原料として使用することができる。
【0055】
アルコールを2種以上用いる場合の各アルコールの使用量は、各反応に応じて適宜決定とすれば良い。例えば、エチレングリコール及びメタノールを酸素と反応させてグリコール酸メチルを合成する場合には、エチレングリコール及びメタノールをモル比で1:1を基準とすれば良い。
【0056】
本発明方法では、アルコールと酸素との反応を本発明触媒の存在下に行う。上記反応は、液相反応、気相反応等のいずれであっても良い。酸素(酸素ガス)は、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、二酸化炭素ガス等の不活性ガスで希釈されていても良い。また、酸素は、空気を用いることもできる。酸素の反応系への供給方法は特に限定されず、公知の方法を適用できる。
【0057】
上記反応の形態としては、連続式、回分式、半回分式等のいずれであっても良く、特に限定されるものではない。触媒は、反応形態として回分式を採用する場合には、反応装置に原料とともに一括して仕込めば良い。また、反応形態として連続式を採用する場合には、反応装置に予め上記触媒を充填しておくか、あるいは反応装置に原料とともに触媒を連続的に仕込めば良い。触媒は、固定床、流動床、懸濁床等のいずれの形態であっても良い。
【0058】
上記触媒の使用量は、用いるアルコールの種類、触媒の種類(組成等)、反応条件等に応じて適宜決定すれば良い。反応時間は特に限定されるものではなく、設定した条件により異なるが、通常は反応時間又は滞留時間(反応器内滞留液量/液供給量)として0.5〜20時間程度とすれば良い。
【0059】
上記反応は、溶媒の存在下で実施することができる。溶媒を用いることにより、目的とするカルボン酸エステルを効率良く製造できる場合がある。使用できる溶媒としては、原料であるアルコールを溶解し、反応条件下で自ら反応しにくいものであれば限定的でなく、アルコールの種類、反応条件等に応じて適宜選択すれば良い。例えば、水のほか、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルム、二塩化エチレン等のハロゲン含有化合物等を挙げることができる。溶媒の使用量は、溶媒の種類、アルコールの種類、触媒の種類等に応じて適宜設定すれば良い。
【0060】
反応温度、反応圧力等の諸条件は、用いるアルコールの種類、触媒の種類等に応じて適宜決定すれば良い。反応温度は、通常0〜180℃程度、好ましくは20〜150℃、より好ましくは50〜120℃とすれば良い。この範囲内の温度に設定することにより、いっそう効率的に反応を進行させることができる。反応圧力は、減圧、常圧又は加圧のいずれであっても良いが、通常は0.05〜2MPa(ゲージ圧)の範囲内が好適である。また、反応系のpHは、副生成物抑制等の見地よりpH6〜9程度とすることが望ましい。pH調節のために、例えばアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物(カルボン酸塩)を反応系への添加剤として使用することもできる。
【0061】
上記の反応後は、反応系から触媒を分離した後、生成したカルボン酸エステルを公知の分離精製手段等を用いて回収すれば良い。触媒の分離方法は公知の方法に従えば良い。例えば、反応系が触媒(固形分)と反応生成物(液状成分)からなる場合は、ろ過、遠心分離等の公知の固液分離方法を用いて触媒と反応生成物を分離することができる。このようにして得られるカルボン酸エステルは、従来法で得られるカルボン酸エステルと同様の用途に使用することができる。
【0062】
【発明の効果】
本発明触媒は、特に、特定の金属微粒子が担体上に担持されていることから、アルコールと酸素との反応によりカルボン酸エステルを合成するための触媒として従来より優れた触媒活性を発揮することができる。しかも、繰り返し使用しても、従来技術のように容易に性能劣化せず、比較的高い活性を維持することができる。
【0063】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴を一層明確にする。但し、本発明の範囲は、実施例の範囲に限定されるものではない。
【0064】
なお、実施例及び比較例における転化率、選択率及び収率は、次の各式に基づいて算出した。
【0065】
転化率(%)=(1−B/A)×100
選択率(%)={C/(A−B)}×100
収 率(%)=(C/A)×100
(但し、上記3式において、A:仕込みアルコールのモル数、B:残存アルコールのモル数、C:生成したカルボン酸エステルのモル数をそれぞれ示す。)
実施例1
(1)触媒の調製
▲1▼ Au担持
濃度20mmol/Lのテトラクロロ金酸水溶液0.5リットルを65〜70℃に保持しながら、0.5N水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH7に調節した。この水溶液に市販γ−アルミナ(製品名「ネオビード」水沢化学製)40gを撹拌下に投入し、65〜70℃に保持しながら1時間撹拌を続けた。その後、静置して上澄液を除去し、残った金固定化物にイオン交換水0.8リットルを加えて室温で5分間撹拌した後、上澄液を除去するという洗浄工程を3回繰り返した。ろ過によって得られた金固定化物を100℃で10時間乾燥し、さらに空気中400℃で3時間焼成することにより、アルミナ担体上に金が担持された金担持物(Au/γ−アルミナ)を得た。
【0066】
▲2▼ Pb複合化
次に、酢酸鉛3水塩0.74gを含むメタノール溶液30mlに金担持物10gを加えた後、エバポレータにて常圧下でメタノールを留去した。残った固体を内径10mmのガラス製管に充填し、充填層を350℃に加温しながら水素10%及びアルゴン90%からなる混合ガスを流量6L/hで6時間流通させた。こうして金と鉛とを含有する金属微粒子をアルミナ担体上に担持させたPb−Au/γ−アルミナ触媒を得た。
【0067】
この触媒における金及び鉛の担持量を蛍光X線分析により測定した結果、担体に対してそれぞれ4.6重量%及び4.0重量%であった。また、この触媒の金属微粒子の状態分析を透過型電子顕微鏡(TEM)(装置名「HF−2000」日立製作所、加速電圧200kV)(以下同じ。))で調べた。その結果、金属微粒子がほとんどすべて5nm以下の粒子径で高分散しており、粒子径2〜3nm付近に極大をもつ狭い粒子径分布を示し、平均粒子径が5nm以下であることが確認できた。また、金属微粒子1個ごとの組成分析をランダムで行ったところ、いずれの金属微粒子にも金と鉛の両方の成分が検出された。
(2)カルボン酸エステルの合成
前記(1)で得られたPb−Au/γ−アルミナ触媒を用いてカルボン酸エステルの合成を行った。
【0068】
100ml回転撹拌付きオートクレーブにメタリルアルコール3g、メタノール24g及び上記触媒1gを入れて密封した。次いで、系内を酸素にて0.3MPaに加圧した後、撹拌下90℃に加温し、この温度を3時間保持した。その間、上記内圧を維持できるように酸素を供給し続けた。その後、冷却し、開封し、反応物をガスクロマトグラフィーで分析した。その結果、メタリルアルコールの転化率86%、生成物であるメタクリル酸メチルの選択率及び収率はそれぞれ81%及び70%であった。
【0069】
実施例2
実施例1において、メタリルアルコール3gの代わりにα−ヒドロキシメチルアクリル酸メチル3gを用いたほかは、実施例1(2)と同様にしてカルボン酸エステルの合成を行った。その結果、α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチルの転化率26%、生成物であるメチレンマロン酸ジメチルの選択率及び収率はそれぞれ88%及び23%であった。
【0070】
実施例3
実施例1において、メタリルアルコール3gの代わりにエチレングリコール3gを用いたほかは、実施例1(2)と同様にしてカルボン酸エステルの合成を行った。その結果、エチレングリコールの転化率43%、生成物であるグリコール酸メチルの選択率及び収率はそれぞれ84%及び36%であった。
【0071】
実施例4
実施例1において、メタリルアルコール3gの代わりに1,3−プロパンジオール3gを用いたほかは、実施例1(2)と同様にしてカルボン酸エステルの合成を行った。その結果、1,3−プロパンジオールの転化率36%、生成物であるマロン酸ジメチルの選択率及び収率はそれぞれ85%及び31%であった。
【0072】
実施例5
(1)触媒の調製
▲1▼ La−シリカ担体の製造
硝酸ランタン6水和物3.12gを含む水溶液25mlを、市販のシリカ担体(製品名「キャリアクトQ−10」富士シリシア製)10gに温浴上にて含浸させた。その後、120℃で120分乾燥し、さらに空気中600℃で4時間焼成した。これにより、ランタンがシリカ担体上に担持されたLa−シリカ担持体を得た。
【0073】
▲2▼ Au担持
濃度100mmol/Lのテトラクロロ金酸水溶液250mlを65〜70℃に保持しながら、0.5N水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH7に調節した。この水溶液に上記担体5gを撹拌下に投入し、65〜70℃に保持しながら1時間撹拌を続けた。その後、静置して上澄液を除去し、残った金固定化物にイオン交換水0.8リットルを加えて室温で5分間撹拌した後、上澄液を除去するという洗浄工程を3回繰り返した。ろ過によって得られた金固定化物を100℃で10時間乾燥し、さらに空気中400℃で3時間焼成することにより、La−シリカ担体上に金が担持された触媒(Au/La−シリカ)を得た。
【0074】
この触媒における金及びランタンの担持量を蛍光X線分析により測定した結果、担体に対してそれぞれ8.4重量%及び10.1重量%であった。また、この触媒の金属微粒子の状態分析をTEMで調べた。その結果、金属微粒子がほとんどすべて5nm以下の粒子径で高分散しており、その平均粒子径が明らかに5nm以下であることが確認できた。
(2)カルボン酸エステルの合成
前記(1)で得られたAu/La−シリカ触媒を用いてカルボン酸エステルの合成を行った。
【0075】
100ml回転撹拌付きオートクレーブにエタノール15g及び上記触媒0.5gを入れて密封した。次いで、系内を酸素にて0.2MPaに加圧した後、撹拌下100℃に加温し、この温度を4時間保持した。その間、上記内圧を維持できるように酸素を供給し続けた。その後、冷却し、開封し、反応物をガスクロマトグラフィーで分析した。その結果、エタノールの転化率18%、生成物である酢酸エチルの選択率及び収率はそれぞれ90%及び16%であった。
【0076】
実施例6
(1)触媒の調製
▲1▼ Al担持
硝酸アルミニウム9水塩7.03g含む水溶液25mlを用い、市販シリカ担体(製品名「キャリアクトQ−15」富士シリシア化学製)10gに温浴上でアルミニウム化合物を含浸担持した。その後、得られた含浸物を120℃で12時間乾燥し、さらに空気中600℃で4時間焼成した。これにより、アルミニウムがシリカに担持されたAl−シリカ担持体を得た。
【0077】
▲2▼ Au及びPb担持
次いで、濃度10mmol/Lのテトラクロロ金酸水溶液250mlを65〜70℃に保持しながら、0.5mol/L水酸化カリウム水溶液を用いて上記水溶液をpH7に調節した。この水溶液に上記Al−シリカ担持体10gを撹拌下に投入し、65〜70℃に保持しながら1時間撹拌を続けた。その後、静置して上澄液を除去し、残った固形物にイオン交換水0.8Lを加えて室温で5分間撹拌した後、上澄液を除去するという洗浄工程を3回繰り返した。ろ過によって得られた金固定化物を100℃で10時間乾燥し、さらに空気中400℃で3時間焼成した。その後、酢酸鉛3水塩0.93g含有するメタノール溶液25mlを加え、常圧下エバポレーターにてメタノールを除去した後、メタノール蒸気10〜20%含む窒素ガスを流量約7.5L/時で400℃で4時間流通させた。こうして金及び鉛を含有する金属粒子がAl−シリカ担体に担持された担持物(Pb−Au/Al/シリカ)を得た。この組成物における金及び鉛の担持量を蛍光X線分析により測定した結果、担体に対してそれぞれ4.5重量%及び5.0重量%であった。担体(Al/シリカ)中のAl含有量は、5.0重量%であった。
【0078】
また、この担持物の金属種の状態分析を透過型電子顕微鏡(TEM)で調べた。その結果、金属種がすべて5nm以下の粒子径で高分散しており、平均粒子径が5nm以下であることが確認できた。さらに、金属粒子1個ごとの組成を調べた結果、どの金属粒子にも金と鉛の両方の成分が検出された。
(2)カルボン酸エステルの合成
前記(1)で得られた触媒(Pb−Au/Al/シリカ)を用いてカルボン酸エステルの合成を行った。
【0079】
100ml回転撹拌付きオートクレーブにエチレングリコール1.5g、ジオキサン15ml及び上記組成物(Pb−Au/Al/シリカ)0.5gを入れて密封した。次いで、系内を酸素にて0.3MPaに加圧した後、撹拌下80℃に加温し、この温度を1時間保持した。その後、冷却し、開封し、触媒と反応液とをろ過により分離し、反応液をガスクロマトグラフィーで分析した。その結果、エチレングリコールの転化率25%、生成物であるグリコール酸ヒドロキシエチルの選択率及び収率はそれぞれ91%及び23%であった。
【0080】
実施例7
(1)触媒の調製
硝酸ビスマス5水塩1.05gを含有する塩化金酸水溶液(10mM)250mlを攪拌下60℃に加温した。市販のチタニア(商品名「P−25」日本アエロジル製)10gを加えた後、0.5mol/L水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH6〜7に維持しながら1時間攪拌を続けた。その後、固形分をろ過して500mlのイオン交換水にて3回水洗した。得られた固形分を空気中500℃で4時間焼成した後、水素20%窒素80%の混合ガスを流量6L/時で流通させながら450℃で4時間処理した。こうして金及びビスマスを含有する金属粒子がチタニア担体に担持された担持物(Au−Bi/チタニア)を得た。この担持物における金及び鉛の担持量を蛍光X線分析により測定した結果、担体に対してそれぞれ4.5重量%及び1.6重量%であった。
【0081】
また、この担持物の金属種の状態分析を透過型電子顕微鏡(TEM)で調べた。その結果、金属種がすべて3〜6nmの粒子径で高分散しており、平均粒子径が6nm以下であることが確認できた。さらに、金属粒子1個ごとの組成を調べた結果、どの金属粒子にも金とビスマスの両方の成分が検出された。
【0082】
(2)カルボン酸エステルの合成
前記(1)で得られた担持物(Au−Bi/チタニア)を用いてカルボン酸エステルの合成を行った。
【0083】
100ml回転撹拌付きオートクレーブにジエチレングリコール1.5g、ジイソプロピルエーテル20ml及び上記組成物(Au−Bi/チタニア)0.5gを入れて密封した。次いで、系内を酸素にて0.3MPaに加圧した後、撹拌下90℃に加温し、この温度を4時間保持した。その後、冷却し、開封し、触媒と反応液とをろ過により分離し、反応液をガスクロマトグラフィーで分析した。その結果、ジエチレングリコールの転化率24%、生成物である1,4−ジオキサン−2−オンの選択率及び収率はそれぞれ88%及び21%であった。
【0084】
実施例8
(1)触媒の調製
▲1▼ Zn担持
硝酸亜鉛6水塩1.51g含む水溶液25mlを用い、市販シリカ担体(製品名「キャリアクトQ−15」富士シリシア化学製)10gに温浴上で亜鉛化合物を含浸担持した。その後、得られた含浸物を120℃で12時間乾燥し、さらに空気中600℃で4時間焼成した。これにより、亜鉛がシリカに担持されたZn−シリカ担持体を得た。
【0085】
▲2▼ Au担持
次いで、濃度10mmol/Lのテトラクロロ金酸水溶液200mlを65〜70℃に保持しながら、0.5mol/L水酸化カリウム水溶液を用いて上記水溶液をpH7に調節した。この水溶液に上記Zn−シリカ担持体10gを撹拌下に投入し、65〜70℃に保持しながら1時間撹拌を続けた。その後、静置して上澄液を除去し、残った金固定化物にイオン交換水0.8Lを加えて室温で5分間撹拌した後、上澄液を除去するという洗浄工程を3回繰り返した。ろ過によって得られた金固定化物を100℃で10時間乾燥し、さらに空気中450℃で3時間焼成した。さらに、金と亜鉛との複合化を促進するために水素10%及びアルゴン90%からなる混合ガスを用いて500℃で4時間還元処理を行った。こうして金及び亜鉛を含有する金属粒子がシリカ担体に担持された担持物(Au/Zn/シリカ)を得た。この組成物における金及び亜鉛の担持量を蛍光X線分析により測定した結果、担体に対してそれぞれ3.2重量%及び3.3重量%であった。
【0086】
また、この担持物の金属種の状態分析を透過型電子顕微鏡(TEM)で調べた。その結果、金属種がすべて2〜6nmの粒子径で高分散しており、平均粒子径が6nm以下であることが確認できた。さらに、金属粒子1個ごとの組成を調べた結果、どの金属粒子にも金と亜鉛の両方の成分が検出された。
(2)カルボン酸エステルの合成
前記(1)で得られた担持物(Au/Zn/シリカ)を用いてカルボン酸エステルの合成を行った。
【0087】
100ml回転撹拌付きオートクレーブに1,6−ヘキサンジオール1.5g、トルエン15ml及び上記組成物(Au/Zn/シリカ)1.0gを入れて密封した。次いで、系内を酸素にて0.3MPaに加圧した後、撹拌下65℃に加温し、この温度を5時間保持した。その後、冷却し、開封し、触媒と反応液とをろ過により分離し、反応液をガスクロマトグラフィーで分析した。その結果、1,6−ヘキサンジオールの転化率18%、生成物であるε−カプロラクトンの選択率及び収率はそれぞれ82%及び15%であった。
【0088】
実施例9
(1)触媒の調製
濃度5mmol/Lのテトラクロロ金酸水溶液500mlを65〜70℃に保持しながら、0.5N水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH7に調節した。この水溶液に市販チタニア担体(ノートン社製、アナターゼ型チタニア)10gを撹拌下に投入し、65〜70℃及びpH7〜8に保持しながら1時間撹拌を続けた。その後、静置して上澄液を除去し、残った金固定化物にイオン交換水0.8リットルを加えて室温で5分間撹拌した後、上澄液を除去するという洗浄工程を3回繰り返した。ろ過によって得られた金固定化物を100℃で10時間乾燥し、さらに空気中400℃で3時間焼成することにより、チタニア担体上に金が担持された金担持物(Au/チタニア)を得た。
【0089】
この触媒における金担持量を蛍光X線分析により測定した結果、担体に対して4.7重量%であった。また、この触媒の金属微粒子の状態分析をTEMで調べた。その結果、金属微粒子がほとんどすべて5nm以下の粒子径で高分散しており、平均粒子径が明らかに5nm以下であることが確認できた。
(2)カルボン酸エステルの合成
前記(1)で得られたAu/チタニア触媒を用いてカルボン酸エステルの合成を行った。
【0090】
100ml回転撹拌付きオートクレーブにn−プロパノール15ml及び上記触媒0.5gを入れて密封した。次いで、系内を酸素にて0.3MPaに加圧した後、撹拌下80℃に加温し、この温度を5時間保持した。その間、上記内圧を維持できるように酸素を供給し続けた。その後、冷却し、開封し、反応物をガスクロマトグラフィーで分析した。その結果、n−プロパノールの転化率23%、生成物であるプロピオン酸プロピルの選択率及び収率はそれぞれ81%及び19%であった。
【0091】
実施例10
(1)触媒の調製
実施例9において、担体としてチタニアの代わりにジルコニア(ノートン社製)を用いたほかは、実施例9(1)と同様にしてAu/ジルコニア触媒を製造した。金担持量を実施例9と同様にして測定した結果、担体に対して4.4重量%であった。また、この触媒の金属微粒子の状態分析をTEMで調べた。その結果、金属微粒子がほとんどすべて5nm以下の粒子径で高分散しており、平均粒子径が明らかに5nm以下であることが確認できた。
(2)カルボン酸エステルの合成
前記(1)で得られたAu/ジルコニア触媒を用いてカルボン酸エステルの合成を行った。
【0092】
100ml回転撹拌付きオートクレーブにn−ブタノール15ml及び上記触媒0.5gを入れて密封した。次に、系内を酸素にて0.3MPaに加圧した後、撹拌下90℃に加温し、この温度を5時間保持した。その間、上記内圧を維持できるように酸素を供給し続けた。その後、冷却し、開封し、反応物をガスクロマトグラフィーで分析した。その結果、n−ブタノールの転化率28%、生成物であるn−酪酸ブチルの選択率及び収率はそれぞれ79%及び22%であった。
【0093】
実施例11
(1)触媒の調製
テトラクロロ金酸4水和物0.88g及び硝酸鉄9水和物40.4gが溶解した水溶液500ml(70℃)を、炭酸ナトリウム19.6gが溶解した水溶液500ml(65〜70℃)に攪拌下約1分間で全量を注いだ。得られた混合溶液を65〜70℃に保持しながら、遠心分離により上澄液を除去した。1リットルのイオン交換水を用いた攪拌洗浄(10分間)を3回繰り返した。得られた固形分を120℃で12時間乾燥し、さらに空気中450℃で4時間焼成することにより、酸化鉄担体上に金が担持された金担持物(Au/Fe23)を得た。
【0094】
この触媒における金担持量を蛍光X線分析により測定した結果、担体に対して4.8重量%であった。また、この触媒の金属微粒子の状態分析をTEMで調べた。その結果、金属微粒子がほとんどすべて5nm以下の粒子径で高分散しており、平均粒子径が明らかに5nm以下であることが確認できた。
(2)カルボン酸エステルの合成
前記(1)で得られたAu/Fe23触媒を用いてカルボン酸エステルの合成を行った。
【0095】
100ml回転撹拌付きオートクレーブに3−ヒドロキシプロピオン酸エチル1.5g、エタノール15ml及び上記触媒0.5gを入れて密封した。次いで、系内を酸素にて0.3MPaに加圧した後、撹拌下80℃に加温し、この温度を5時間保持した。その間、上記内圧を維持できるように酸素を供給し続けた。その後、冷却し、開封し、反応物をガスクロマトグラフィーで分析した。その結果、3−ヒドロキシプロピオン酸エチルの転化率19%、生成物であるマロン酸ジエステルの選択率及び収率はそれぞれ82%及び16%であった。
【0096】
実施例12
(1)触媒の調製
実施例11において、硝酸鉄9水和物40.4gの代わりに硝酸亜鉛6水和物29.8gを用い、またテトラクロロ金酸4水和物及び炭酸ナトリウムの使用量をそれぞれ0.51g及び13.2gとしたほかは、実施例11(1)と同様にしてAu/ZnO触媒を製造した。金担持量を実施例9と同様にして測定した結果、担体に対して2.9重量%であった。また、この触媒の金属微粒子の状態分析をTEMで調べた。その結果、金属微粒子がほとんどすべて5nm以下の粒子径で高分散しており、その平均粒子径が明らかに5nm以下であることが確認できた。
(2)カルボン酸エステルの合成
前記(1)で得られたAu/ZnO触媒を用いてカルボン酸エステルの合成を行った。
【0097】
100ml回転撹拌付きオートクレーブにアリルアルコール15ml及び上記触媒0.5gを入れて密封した。次に、系内を酸素にて0.3MPaに加圧した後、撹拌下85℃に加温し、この温度を5時間保持した。その間、上記内圧を維持できるように酸素を供給し続けた。その後、冷却し、開封し、反応物をガスクロマトグラフィーで分析した。その結果、アリルアルコールの転化率23%、生成物であるアクリル酸アリルの選択率及び収率はそれぞれ76%及び17%であった。

Claims (2)

  1. 1種又は2種以上のアルコールと酸素との反応によりカルボン酸エステルを合成するために用いられる触媒であって、
    1)Auからなる微粒子及び/又は
    2)周期表第4から第6周期のIIB族、IIIB族、IVB族、VB族及びVIB族の少なくとも1種の第二元素とAuとからなる微粒子
    が担体上に担持されていることを特徴とするカルボン酸エステル合成用触媒。
  2. 請求項1記載の触媒の存在下、1種又は2種以上のアルコールと酸素との反応によりカルボン酸エステルを合成することを特徴とするカルボン酸エステルの製造方法。
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