以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式のプリンタ(以下、単にプリンタという)の一実施形態について説明する。
まず、本プリンタの基本的な構成について説明する。図1は、本プリンタの概略構成図であり、プリンタをその正面方向から示している。図において、このプリンタ100は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック(以下、Y、M、C、Kと記す)のトナー像を生成するための4つのプロセスカートリッジ6Y,M,C,Kを備えている。これらは、画像形成物質として、互いに異なる色のY,M,C,Kトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっており、寿命到達時に交換される。Yトナー像を生成するためのプロセスカートリッジ6Yを例にすると、図2に示すように、像担持体たるドラム状の感光体1Y、ドラムクリーニング装置2Y、除電装置3Y、帯電装置4Y、現像装置5Y等を備えている。感光体1Yは、直径30〜100[mm]のアルミ製円筒に、光導電性物質である有機半導体の表面層が被覆されている。アモルファスシリコン性の表面層が被覆されたものであってもよい。また、ドラム状ではなく、ベルト状のものであってもよい。帯電装置4Yは、図示しない駆動手段によって図中時計回りに回転せしめられる感光体1Yの表面を一様帯電せしめる。一様帯電せしめられた感光体1Yの表面は、レーザ光Lによって露光走査されてY用の静電潜像を担持する。このYの静電潜像は、Yトナーを用いる現像装置5YによってYトナー像に現像される。そして、後述の第1中間転写ベルト8上に1次転写される。ドラムクリーニング装置2Yは、中間転写工程を経た後の感光体1Y表面に残留したトナーを除去する。また、除電装置3Yは、クリーニング後の感光体1Yの残留電荷を除電する。この除電により、感光体1Yの表面が初期化されて次の画像形成に備えられる。他のプロセスカートリッジ6M,C,Kにおいても、同様にして感光体1M,C,K上にM,C,Kトナー像が形成され、第1中間転写ベルト8上に1次転写される。なお、現像装置は、トナーと磁性キャリアとを含有する2成分現像剤を用いるものでも、トナー粉体だけを用いるものでもよい。また、トナーは、粉砕法によって製造された粉砕トナーでも、球形に形成されたトナーでもよく、粒径で6[μm]程度のものが良好である。
上記プロセスカートリッジ6Y,M,C,Kの図中下方には露光装置7が配設され、その図中左側方には画像データ処理装置E1が配設されている。画像データ処理装置E1は、パーソナルコンピュータ等から送られてくる画像情報信号に基づいて、露光走査制御信号を生成して露光装置7に送る。潜像形成手段たる露光装置7は、この露光走査制御信号に基づいて発したレーザ光Lを、プロセスカートリッジ6Y,M,C,Kにおけるそれぞれの感光体に照射する。この照射を受けて露光された感光体1Y,M,C,K上には、Y,M,C,K用の静電潜像が形成される。なお、露光装置7は、光源から発したレーザ光(L)を、モータによって回転駆動したポリゴンミラーで走査しながら、複数の光学レンズやミラーを介して感光体に照射するものである。かかる構成の露光装置7に代えて、LEDアレイからのLED光を照射する露光手段を採用しても良い。また、露光装置7の筐体には、その上方に配設された各感光体1Y,M,C,Kから落下してくるトナーによる内部部品の汚染を防止するために、図示しないシール部材を設けている。
上記露光装置7の図中下側には、第1給紙ローラ28を有する第1紙カセット25と、第2給紙ローラ29を有する第2紙カセット26とが、鉛直方向に重なるように配設されている。これらカセットはそれぞれ内部には記録体たる転写紙Pを複数枚重ねた転写紙束の状態で収容している。第2紙カセット26の図中右側方には、手差し給紙ローラ30を有する手差しトレイ25が、プリンタ本体の筐体内でなく、筐体の側面から延出するように設けられており、この上にも転写束が載置される。
2つの給紙カセット(25,26)と、上記手差しトレイ25との間には、レジストローラ対31を有する給紙路32や、これに合流する給紙案内路33が配設されている。給紙案内路33は、搬送ローラ対34を有している。第1給紙ローラ28、第2給紙ローラ29は、それぞれ上記第1紙カセット25、第2紙カセット26内に収容されている転写紙束の一番の転写紙Pに当接している。そして、図示しない駆動手段によって回転駆動せしめられることで、その一番上の転写紙Pを給紙路32に向けて送り出す。送り出された転写紙Pは、給紙路32の末端付近に配設されたレジストローラ対の第1レジストローラ31aと第2レジストローラ31bとの間に挟まれる。レジストローラ対31は、転写紙Pを挟み込むべく両ローラを互いに順方向に回転駆動させるが、ローラ間に記録体を挟み込むとすぐに両ローラの回転を一旦停止させる。そして、適切なタイミングで回転を再開して転写紙Pを後述の2次転写ニップに向けて送り出す。タイミングローラ対として機能しているのである。一方、手差し給紙ローラ30は、上記手差しトレイ27に載置されている転写紙束の一番上の転写紙Pに当接している。そして、図示しない駆動手段によって回転駆動せしめられることで、その一番上の転写紙Pを給紙案内路33に向けて送り出す。送り出された転写紙Pは、図示しない駆動手段によって互いに当接しながら順方向に回転せしめられる搬送ローラ対34のローラ間を経由して給紙路32の末端付近に至る。そして、第1レジストローラ31aと第2レジストローラ31bとの間に挟まれる。
各感光体1Y,M,C,K上に形成されたY,M,C,K用の静電潜像は、転写装置による転写工程を経る。この転写装置は、第1転写ユニット15と第2転写ユニット24とを有している。第1転写ユニット15は、上述のプロセスカートリッジ6Y,M,C,Kの図中上方に配設されており、第1中間転写ベルト8、4つの1次転写ローラ9Y,M,C,K、第1クリーニング装置10などを備えている。また、2次転写バックアップローラ12、第1クリーニングバックアップローラ13、テンションローラ14なども備えている。第1中間転写体たる第1中間転写ベルト8は、これら3つのローラに張架されながら、少なくとも何れか1つのローラの回転駆動によって図中反時計回りに無端移動せしめられる。転写バイアスローラたる4つの1次転写ローラ9Y,M,C,Kは、このように無端移動せしめられる第1中間転写ベルト8を感光体1Y,M,C,Kとの間に挟み込んでそれぞれ1次転写ニップを形成している。そして、図示しない電源の供給を受けて、トナーとは逆極性(例えばプラス)の1次転写バイアスを第1中間転写ベルト8の裏面(ループ内周面)に印加する。これら4つの1次転写ローラ9Y,M,C,Kの他に配設された上述の3つのローラは、全て電気的に接地されている。第1中間転写ベルト8は、その無端移動に伴ってY,M,C,K用の1次転写ニップを順次通過していく。各1次転写ニップでは、感光体1Y,M,C,K上のY,M,C,Kトナー像がニップ圧や1次転写バイアスの作用によって重ね合わせて1次転写される。これにより、第1中間転写ベルト8上に4色重ね合わせトナー像(以下、4色トナー像という)が形成される。第1中間転写ベルト8を張架している2次転写バックアップローラ12は、後述の第2中間転写ベルト16に食い込むような配設位置になっている。このような食い込み配置により、第1中間転写ベルト8と第2中間転写ベルト16とをそれぞれ周長方向に広く当接させる2次転写ニップが形成されている。この2次転写ニップでは、第1転写ベルト8と第2中間転写ベルト16とが、それぞれ互いの表面を同方向に移動させながら当接させる。第1中間転写ベルト8上に形成された可視像たる4色トナー像は、2次転写ニップで第2中間転写ベルト16あるいは転写紙Pに2次転写される。2次転写ニップを通過した後の第1中間転写ベルト8には、第2中間転写ベルト16あるいは転写紙Pに2次転写されなかった転写残トナーが付着している。これは、第1クリーニング装置10によってクリーニングされる。具体的には、第1中間転写ベルト8は、そのループ外面(おもて面)側に当接するように配設された第1クリーニング装置10と、そのループ内面側に配設された第1クリーニングバックアップローラ13との間に挟まれる。そして、おもて面上の転写残トナーが第1クリーニング装置10に機械的あるいは静電的に回収されてクリーニングされる。なお、バイアス印加方式の4つの1次転写ローラ9Y,M,C,Kに代えて、電極から放電させるチャージャ方式のものを用いてもよい。
上記転写装置の第2転写ユニット24は、上記第1転写ユニット15の図中右側方に配設されており、第2中間転写ベルト16、第2クリーニング装置18、転写チャージャ23などを備えている。また、2次転写ローラ17、ニップ拡張ローラ19、テンションローラ20、バックアップローラ21なども備えている。第2中間転写ベルト16は、これら4つのローラに張架されながら、少なくとも何れか1つのローラの回転駆動によって図中時計回りに無端移動せしめられる。上述した第1転写ユニット15の2次転写バックアップローラ12は、2次転写ローラ17とニップ拡張ローラ19との間の第2中間転写ベルト16架橋部分に食い込んで2次転写ニップを形成している。対記録体用転写バイアスローラたる2次転写ローラ17は、金属製ローラか、あるいは芯金に導電性のゴム層が被覆されたローラで、図示しない電源によってトナーと反対極性(例えばプラス極性)の2次転写バイアスが供給される。第2転写ユニット24におけるこれ以外のローラは全て接地されている。
上述のレジストローラ対31は、ローラ間に挟み込んだ転写紙Pを、第1中間転写ベルト8上に1次転写された上記4色トナー像に密着させ得るタイミングで上記2次転写ニップに向けて送り出す。但し、この4色トナー像が、転写紙Pの一方の面である第1面(後述のスタック部40上で上を向く面)に転写されるべき第1トナー像である場合には、転写紙Pを送り出さない。よって、このとき、第1中間転写ベルト8上の第1トナー像は、ニップたる2次転写ニップでニップ圧や2次転写バイアスの作用を受けて第2中間転写ベルト16上に2次転写される。これに対し、第1中間転写ベルト8上の4色トナー像が転写紙Pの第2面(スタック部40上で下を向く面)に転写されるべき第2トナー像である場合には、レジストローラ対31は、この第2トナー像に同期させて転写紙Pを送り出す。よって、第2トナー像は、2次転写ニップで転写紙Pのもう一方の面である第2面に2次転写され、転写紙Pの白色と相まってフルカラー画像となる。このとき、先に第2中間転写ベルト16に転写されていた第1トナー像は、2次転写ニップに送り込まれた転写紙Pの第1面に密着せしめられる。但し、この第1トナー像は、2次転写バイアスの作用によってベルト側に引き寄せられるため、転写紙Pの第1面に密着しているが、そこに2次転写されるわけではない。
上述の第1転写ユニット15において、2次転写バックアップローラ12は、第1中間転写ベルト8を、その移動方向をほぼ反転させるような形状で張架している。そして、移動方向を反転させつつある第1中間転写ベルト部分を第2中間転写ベルト16に当接させて2次転写ニップを形成している。よって、2次転写ニップの出口では、第1中間転写ベルト8が転写紙Pから離間し、転写紙Pが第2中間転写ベルト16の表面だけに保持されて搬送されるようになる。そして、第2転写ユニット24内において、第2中間転写ベルト16の無端移動に伴って、3次転写部に送られる。第2転写ユニット24の3次転写部では、第2中間転写ベルト16のバックアップローラ21による張架部分に対し、転写チャージャ23が所定の間隙を介して配設されている。第2中間転写ベルト16上の転写紙Pは、転写チャージャ23によって第2面側にトナーと反対極性(例えばプラス極性)の電荷が付与される。この電荷の付与により、転写紙Pの第1面と第2中間転写ベルト16との間に挟まれていた第1トナー像が転写紙Pの第1面に3次転写されてフルカラー画像になる。2つの転写ユニット(15,24)からなる転写装置は、転写紙Pに対して上記2次転写ニップでその第2面に第2トナー像を前段転写した後、上記3次転写部でその第1面に第1トナー像を後段転写するのである。なお、1次転写バイアスや2次転写バイアスが印加される部材として、ローラ(9,17)ではなく、ブラシなど他の形状のものを用いてもよい。また、転写バイアスを部材に印加する静電転写方式ではなく、非接触放電式を採用してもよい。
上記第2転写ユニット24において、3次転写によって両面転写が完了した転写紙Pは、第2中間転写ベルト16から分離されて後述の定着装置35に送られる。上記3次転写部を通過した後の第2中間転写ベルト16は、バックアップローラ21と第2クリーニング装置18との間に挟み込まれて、表面の転写残トナーが機械的又は静電的にクリーニングされる。この第2クリーニング装置18が第2中間転写ベルト16に常に当接していると、第2中間転写ベルト16上に2次転写された第1トナー像もクリーニングしてしまうことになる。そこで、第2クリーニング装置18は、図示しない揺動機構によって揺動軸18aを中心に図中矢印方向に揺動せしめられることで、第2中間転写ベルト16に接離するようになっている。そして、少なくともそのクリーニング位置を第1トナー像が通過する間は、第2中間転写ベルト16から離間して、第1トナー像のクリーニングを回避する。
第2転写ユニット24の図中上方には、定着手段たる定着装置35が配設されている。この定着装置35は、互いに順方向に回転しながら当接して定着ニップを形成する2つの定着ローラ35a,bを有している。これら定着ローラ35a,bは、何れも図示しないハロゲンランプ等の発熱手段を有しており、定着ニップに挟み込まれた転写紙Pを両面から加熱する。この加熱により、転写紙Pの両面にそれぞれ形成されたフルカラー画像が、これを構成するトナーの軟化によって転写紙Pに定着せしめられる。定着後の転写紙Pは、反転ガイド部材36に沿って反転せしめられた後、排紙ローラ対37を経て機外へと排出される。そして、プリンタ本体の筺体の上面に形成されたスタック部40にスタックされる。
2つの定着ローラ35a,bは、それぞれ図示しない温度検知手段によって表面温度が検知される。この温度検知手段は、プリンタ本体の筺体内の最上部に配設された制御部E2に送信する。制御部E2は、温度検知手段から送られてくる表面温度の検知結果に基づいて、定着ローラ35a,bの上記発熱手段に対する電源供給をON/OFF制御して、定着ローラ35a,bの表面温度を一定範囲(目標範囲)に維持する。但し、転写紙Pの片面にだけ画像を形成する片面プリントモードが実行されている場合には、両面プリントモードの場合に比べて少ない熱量で画像を定着させることができる。片面にしか画像が形成されていないため、両面のときよりも転写紙P上のトナー量が少なくなるからである。よって、片面プリントモードのときに、両面プリントモードのときよりも上記表面温度の目標範囲を低くすれば、省エネルギー化を図ることが可能になる。また、単色画像はフルカラー画像よりもトナー量が少なくなるので、単色プリントモードとフルカラープリントモードとの違いに応じて上記表面温度の目標範囲を切り替えることによっても、省エネルギー化を図ることが可能になる。
以上のようにして、本プリンタ100は、転写紙Pを2次転写ニップからこれよりもベルト移動方向下流側に搬送する過程で、転写紙Pに対して上記転写装置によってその両面側からトナー像の転写処理を施す。よって、転写紙Pの両面に対してワンパス方式での画像形成を行うことができる。また、転写紙Pを像担持体たる感光体(1Y,M,C,K)に直接接触させることがないので、感光体への紙粉の付着を抑えることができる。なお、本プリンタ100のように、感光体等の像担持体を複数並べて配設し、それぞれで形成した可視像を連続的に重ね合わせ転写して多色画像等の重ね合わせ画像を形成する方式をタンデム方式という。これに対し、1つの像担持体に可視像を形成して中間転写体に転写した後、再び像担持体に可視像を形成して中間転写体上の可視像に重ね合わせ転写する工程を繰り返して重ね合わせ画像を形成する方式もある。この方式では、可視像の形成、転写という工程を繰り返し行わなくてはならない。一方、タンデム方式では、重ね合わせ転写すべき複数の可視像をそれぞれに対応する像担持体上でほぼ同時に形成することができるので、画像形成時間を大幅に短縮することができる。
上述したように、上記第1トナー像は上記第2トナー像に先行して形成される。そして、2次転写ニップで第1中間転写ベルト8から第2中間転写ベルト16に2次転写された後、上記3次転写部で転写紙の第1面に3次転写される。この第1面とは、上記スタック部40で上方を向く面である。よって、スタック部40にスタックされる転写紙Pは、先行して形成された第1トナー像を上に向け、且つその後に形成された第2トナー像を上に向けた状態で順次スタックされていく。本プリンタ100は、このようにスタックされていく転写紙Pの頁番号を小さい方から順に揃えるべく、奇数、偶数と連続する2つの頁番号の画像について、頁番号の大きい方を先に上記第1トナー像として形成する。例えば1頁目の画像に先行して2頁目の画像を第1トナー像として形成するのである。そうすると、数頁にわたる原稿を連続して出力しても、スタック部40において、頁番号を下から順に揃えることが可能になる。但し、転写紙Pの第2面だけに画像を形成する片面プリントモードを実行する際には、頁番号の小さい画像から順に形成していき、それぞれ転写紙Pの第2面に2次転写せしめる。このことにより、片面プリントモードにおいても、スタック部40で頁番号を下から順に揃えることができる。
4つの感光体1Y,M,C,Kにおいて、上記第2トナー像用に形成される各色トナー像は非鏡像(以下、正像という)として形成される。これは、形成された各色トナー像が、1次転写、2次転写という2回の転写工程を経て転写紙Pに至る過程で鏡像、正像と変化するからである。各感光体上で正像として形成されることで、転写紙Pの第2面においても正像になるのである。これに対し、第1トナー像用に形成される各色トナー像は、3次転写まで行われるため、第2トナー像よりも転写工程が1回多くなる。よって、各感光体上で鏡像として形成される。このことにより、転写毎に正像、鏡像、正像と変化して、転写紙Pの第1面において正像となることができる。
上述の第1転写ユニット15の図中上方には、ボトル収容器54が配設されている。このボトル収容器54内には、各プロセスカートリッジ(6Y,M,C,K)内の現像器に補給するためのトナーを内包するトナーボトルBY,BM,BC,BKが収められている。
本プリンタ100は、図3に示すように、パーソナルコンピュータ(以下、パソコンという)200などから送られてくる画像情報信号に基づいて画像を形成する。図3では、パソコン200とプリンタ100とを通信ケーブルによって接続した画像形成システムの例を示したが、無線方式による接続を採用してもよい。プリンタ本体の前面左隅には、タッチパネル等からなる操作表示器51が固定されている。ユーザーは、この操作表示器51のディスプレイに現れるガイド表示に従って、作像プロセス条件や用紙条件等の各種パラメータを入力することができる。上述の片面プリントモードと、両面プリントモードとの切替については、この操作表示器51に用意されているモード切替ボタンを操作することによって行う。また、紙種の選択(紙収容カセットの選択)も、この操作表示器51に対する操作によって行う。但し、これらモードの切替や紙種の選択については、パーソナルコンピュータ200から設定信号を送信させることによっても行うことができる。
プリンタ本体の前面には、前扉52が開閉自在に設けられている。前扉52が開かれると、図示しない上記第1転写ユニット(15)を支持する支持体53が大きく露出する。この支持体53は、図示しないガイドレール上をプリンタ本体の前後方向にスライド移動可能に構成され、プリンタ本体内から前面側に向けて引き出されることで、上記第1転写ユニット(15)を露出させる。そして、この露出により、上記第1転写ユニットの保守点検作業を容易にしている。また、前扉52が開かれると、支持体53の上方に配設されたボトル収容器54内のトナーボトルBY、BM、BC、BKの端面が露出する。それぞれ端面を露出させたトナーボトルBY、BM、BC、BKは、ボトル収容器54に対してプリンタ前後方向に着脱可能される。前扉52を開けば、プリンタ本体に対するトナーボトルBY、BM、BC、BKの前後方向への着脱が可能になる構成である。スタック部40が形成されているプリンタ本体上面を開閉自在な上扉とし、これを開いてトナーボトルBY、BM、BC、BKを上下方向に着脱するといった構成ではない。このため、オプションの図示しないスキャナ装置をプリンタ100の上方に配設してコピー機を構成する場合でも、トナーボトルBY、BM、BC、BKを着脱することができる。上述の第1紙カセット25、第2紙カセット26は、前扉52の下方に配設され、前後方向のスライド移動によってプリンタ本体から着脱されるように構成されている。前扉52を開いても、第1紙カセット25、第2紙カセット26の着脱や、操作表示器51への入力の操作性を損ねることはない。
次に、本実施形態に係るプリンタ100の特徴的な構成について説明する。
上記第1中間転写ベルト8及び第2中間転写ベルト16として、それぞれ厚み方向の変形のし易さが同程度に良好であるものを用いたとする。すると、上記2次転写ニップ、とりわけ2次転写バックアップローラ12と2次転写ローラ17とに挟まれる領域において、両ベルトの表面がローラによる押圧の影響を受けて複雑に弾性変形する。そして、図4に示すように、2次転写ニップにて両ベルトの表面を複雑な形状に弾性変形させて互いに楔状(波打ち状)に食い込ませてしまう。このように両ベルトの表面が互いに楔状(波打ち状)に食い込んでいる2次転写ニップに転写紙Pを通すと、その楔の形状にならって転写紙Pに皺を発生させてしまう。
そこで、本プリンタ100では、第2中間転写ベルト16として、第1中間転写ベルト8よりも厚み方向に変形し難いものを用いている。かかる構成では、第2中間転写ベルト16が第1中間転写ベルト8よりも厚み方向に変形し難いことにより、2次転写ニップにて主に第1中間転写ベルト8が変形し難い第2中間転写ベルト16にならって変形しようとする。すると、図5に示すように、2次転写ニップにおける両ベルトの楔状(波打ち状)の食い込みが抑えられて両ベルトがより平滑的に当接するようになるため、2次転写ニップに挟まれる転写紙Pに発生する皺を抑えることができる。また、平滑に当接するようになることで、より低いニップ圧で両ベルト面を確実に密着させることができるようになるので、転写時に過剰な圧を加えてトナーを凝集させてしまうことによる転写不良を抑えることもできる。
本実施形態では、第2中間転写ベルト16として、樹脂材料を基材にしたもので、その表面硬度がJIS−Aで95[度]のものを用いている。これに対し、第1中間転写ベルト8については、ゴムを基材にしたもので、表面硬度がJIS−Aで50[度]のものを用いている。多層構造のベルトを用いる場合には、必ず多層構造のベルト全体を用いて表面硬度を測定する。このように測定した表面硬度は、ベルトにおける厚み方向への変形のし難さを示す。よって、表面硬度の大きなベルトほど、厚み方向に変形し難いことになる。なお、2つのベルトのうち、厚み方向に変形し易い方のベルト(本例では第1中間転写ベルト8)については、2次転写ニップでの両ベルトの密着性をある程度確保するという観点から、表面硬度がJIS−Aで65[度]以下のものを用いることが望ましい。
第1中間転写ベルト8と第2中間転写ベルト16とのうち、少なくとも、より厚み方向に変形し難い方とは異なる他方のベルトである第1中間転写ベルト8については、多層構造のものを用いている。これは次に説明する理由による。即ち、他方のベルト、即ち変形し易い方のベルトである第1中間転写ベルト8については、それに良好な弾性を発揮させつつ、静電転写を実現し得る程度の電気抵抗をも発揮させなければならない。そこで、ベルトの基材として弾性材料を用い、これにカーボンブラック等の導電物質を抵抗調整剤として分散せしめて所望の電気抵抗を発揮させるのが一般的である。ところが、一般に、弾性材料は抵抗調整剤の含有量が多くなるほど固くなってしまう。このため、所望の電気抵抗を発揮させ得る程度まで抵抗調整剤の分散量を多くしてしまうと、弾性材料に所望の弾性を発揮させることができなくなる場合がある。そこで、多層構造にするわけである。そうすると、弾性材料からなる基材層については抵抗調整剤の分散量をある程度少なく抑える一方で、他の層(例えば表面層や下層)については抵抗調整剤を多量に分散せしめることが可能になる。そして、このことにより、ベルト全体として良好な弾性を発揮させつつ、所望の電気抵抗を発揮させることができる。また、この他の層の材料として、基材層よりも表面エネルギーの低いものを用い、この他の層を像保持面となる表面層として設ければ、トナー像の離型促進層として機能させることもできる。そして、このことにより、2次転写ニップにおける第1中間転写ベルト8からのトナー離れを促して、ベルトに転写残トナーを残すことによる転写不良を抑えることも可能になる。なお、第2中間転写ベルト16についても、多層構造のものを使用できることは言うまでもない。また、ベルトの基材とは、単層構造のベルトではそれを構成するベルト材のことである。また、多層構造のベルトでは、もっとも厚い層(基層)を構成する材料のことである。また、多層構造のベルトには、基材に離型促進層を被覆しただけのものや、その他に、良好な弾性を発揮させるためのゴム層等を設けたものなどがある。
第2中間転写ベルト16の基材に用いる樹脂材料について特に制限はない。但し、本実施形態では、ポリイミドを用いている。これは、耐熱性に優れたポリイミドを第2中間転写ベルト16の基材に用いることにより、ベルト全体に耐熱性を発揮させるためである。耐熱性を発揮させ得る樹脂材料としては、ポリイミドの他にポリアミドが挙げられる。また、ベルト全体に耐熱性を発揮させる必要がない場合には、様々な樹脂材料を用いることが可能である。例えば、ポリカーボネート、フッ素系樹脂(ETFE、PVDF)、メタクリル酸メチル樹脂、メタクリル酸ブチル樹脂、アクリル酸エチル樹脂、アクリル酸ブチル樹脂などを用いてもよい。また例えば、変性アクリル樹脂(シリコーン変性アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂変性アクリル樹脂、アクリル・ウレタン樹脂等)、塩化ビニル樹脂、スチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体などでもよい。また例えば、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニリデン、アイオノマー樹脂などでもよい。また例えば、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂及びポリビニルブチラール樹脂、変性ポリフェニレンオキサイド樹脂などでもよい。また例えば、スチレン系樹脂(スチレンまたはスチレン置換体を含む単重合体または共重合体)でもよい。このスチレン系樹脂とは、例えば、ポリスチレン、クロロポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体などである。また例えば、スチレン−アクリル酸エステル共重合体(スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−アクリル酸フェニル共重合体等)である。また例えば、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体(スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニル共重合体等)などである。更には、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体等などである。以上に列記した樹脂材料の2種類以上を混合して用いることもできる。
第1中間転写ベルト8に用いるゴム材料やエラストマーについても特に制限はない。例示するならば、ブチルゴム、フッ素系ゴム、アクリルゴム、EPDM、NBR、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンゴム天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴムなどが挙げられる。また、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレンターポリマー、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴム、シンジオタクチック1、2−ポリブタジエンなどでもよい。また、エピクロロヒドリン系ゴム、リコーンゴム、フッ素ゴム、多硫化ゴム、ポリノルボルネンゴム、水素化ニトリルゴムなどでもよい。また、熱可塑性エラストマー(例えばポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリアミド系、ポリウレア、ポリエステル系、フッ素樹脂系)でもよい。以上に列記した材料を2種類以上混合して用いることも可能である。
先に例示した樹脂材料を基材とする層の表側(転写面側)あるいは裏側に、先に例示したゴム材料やエラストマーからなる層を被覆して第2中間転写ベルト16を多層構造で構成することも可能である。また、例示したゴム材料やエラストマーを基材とする層の表側(転写面側)あるいは裏側に、例示した樹脂材料からなる層を被覆して第1中間転写ベルト8を多層構造で構成することも可能である。また、第1中間転写ベルト8や第2中間転写ベルトの表面に離型促進層を設けてもよい。離型促進層を設ければ、トナーとベルトとの付着力を小さくして、トナー像のクリーニング性を高めつつ、2次転写時や3次転写時における転写不良を抑えることができる。かかる離型促進層の材料については、基材よりも表面エネルギーの低いものであれば特に制限はない。例えば、フッ素樹脂が挙げられる。また例えば、フッ素化合物、フッ化炭素、2酸化チタン、シリコンカーバイト等の粉体や粒子を樹脂やゴム等の素材に1種類又は2種類以上分散せしめたものでもよい。なお、フッ素系ゴム材料を用いた場合には、熱処理を行うことで表面にフッ素をリッチに偏在させてよりエネルギーを小さくすることが可能である。
ベルト材料に分散せしめる抵抗調整剤についても特に制限はない。例えば、カーボンブラック、グラファイト、アルミニウムやニッケル等の金属粉末、酸化錫、酸化チタン、酸化アンチモン、酸化インジウムなどが挙げられる。また例えば、チタン酸カリウム、酸化アンチモン−酸化錫複合酸化物(ATO)、酸化インジウム−酸化錫複合酸化物(ITO)等の導電性金属酸化物、導電性金属酸化物などでもよい。また例えば、これまで列記した導電性のものとは逆に、硫酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の絶縁性微粒子でもよい。この場合には、素材の電気抵抗値を上げるために用いることは言うまでもない。
第1中間転写ベルト8や第2中間転写ベルト16の製造方法についても特に制限はない。例えば、回転する円筒形の型に材料を流し込みベルトを形成する遠心成型法が挙げられる。また例えば、液体塗料を噴霧し膜を形成させるスプレイ塗工法や、円筒形の型を材料の溶液の中に浸けて引き上げるディッピング法などでもよい。また例えば、内型、外型の中に材料を注入する注型法や、円筒形の型にコンパウンドを巻き付けて加硫研磨を行う方法などでもよい。更には、これら例示した方法を2つ以上組み合わせてベルトを製造してもよい。
図8は、基層と離型促進層からなる中間転写ベルト(8、16)を示す断面図である。また、図11は、基層の上に、ゴム等の弾性に優れた材料からなる弾性層と、トナー離型性に優れた材料からなる離型促進層とを順次積層した3層構造の中間転写ベルト(8、16)を示す断面図である。基層は、例えば、伸びの少ないフッ素樹脂や、伸びの大きなゴムに帆布などといった伸び難いものを入れた材料から構成されている。かかる材料は、上述した基材である。
上記弾性層の材料としては、先に列記したゴム材料や熱可塑性エラストマーを用いることができる。その厚さは、材料の硬度にもよるが、厚すぎると表面の伸縮が過剰に大きくなって離型促進層に亀裂を発生させ易くなる。また、伸縮量が大きくなることから、画像に伸び縮みを発生させ易くなる。弾性層の硬度HSについては、10≦HS≦65[°:JIS−A]に設定することが望ましい。硬度HSを10[°:JIS−A]よりも低くすると、ベルトを寸法精度良く成形することが困難になるからである。
上記弾性層の伸びを抑える方法としては、種々のものが考えられる。例えば、基層にフッ素樹脂等の伸びの少ない材料から構成される樹脂層を被覆し、その上に弾性層を形成する方法などである。また、基層に伸びの大きなゴム材料に帆布などの伸びを防止する材料を入れて芯体として働かせ、この芯体を含む基層の上に弾性層を形成してもよい。
このように芯体として機能させる材料としては、例えば、綿、絹、などの天然繊維が挙げられる。また、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、炭素繊維、ガラス繊維、ボロン繊維等の無機繊維、鉄繊維、銅繊維等の金属繊維などでもよい。更には、これらから選ばれる1種あるいは2種以上を、糸状あるいは織布状に加工したものでもよい。糸状のものとしては、1本または複数のフィラメントを撚ったもの、片撚糸、諸撚糸、双糸など、どのような撚り方であってもよい。これらの材料に導電処理を施すことも可能である。
本実施形態では、第1中間転写体や第2中間転写体として、それぞれ複数のローラに張架されながら無端移動せしめられる中間転写ベルトを用いた例について説明したが、ローラやドラムなどの他の形状のものを用いてもよい。但し、それぞれ中間転写ベルトを用いる場合には、次のような利点がある。即ち、図1に示した2次転写ニップのように、一方のベルトを、他方のベルトの張架部材による張架部分に巻き付けるように変形させて張架することにより、かなり長い2次転写ニップを形成することができる。このことにより、4色トナー像と転写紙Pや第2中間転写ベルト16との接触時間を長く確保できるため、プロセス線速を速めて画像形成時間の短縮化を図ることができる。また、両ベルトを様々な張架形状で配設することができるので、ローラやドラム形状のものを用いる場合に比べて、本体内のレイアウト自由度を高めることもできる。
上記第1中間転写ベルト8や第2中間転写ベルト16は、それぞれ表面抵抗が105〜1012[Ω/□]の範囲に調整されている。これは次に説明する理由による。即ち、表面抵抗が105[Ω/□]未満になると、ベルト裏面に印加された転写バイアスがベルト表面からこれに接触する感光体や接地部材にリークして静電転写を実現することが困難になるからである。また、表面抵抗が1012[Ω/□]を越えるとベルトに流れる電流が不足して静電転写を実現することが困難になるからである。
上述のように、本実施形態では、第2中間転写ベルト16の基材を構成する樹脂材料として、ポリイミドを用いている。これは次に説明する理由による。即ち、第2中間転写ベルト16に保持されながら搬送される転写紙Pは、トナー像の定着処理のために定着装置35に送られる。この定着装置35からは140[℃]程度の高温が発せられるため、定着装置35と第2中間転写ベルト16との配設距離が近いと、第2転写ベルト16が定着装置35からの熱によって加熱されてしまう。すると、中間転写ベルト16が耐熱性に劣る場合には、加熱によって劣化して種々の不具合を発生してしまう。かかる不具合を抑えるべく、第2中間転写ベルト16と定着装置35とを十分に離して配設することが考えられる。しかしながら、第2中間転写ベルト16と定着装置35とを離して配設する場合、重力の影響で自在に撓んでしまう転写紙Pをベルトから定着装置35に直接的に受け渡すことができなくなるため、両者間に紙ガイド部材を設ける必要がある。第2中間転写ベルト16に保持される転写紙Pは、そのおもて面だけではなく裏面にもトナー像を担持しており、裏面のトナー像が紙ガイド部材に擦られて乱れてしまう。そこで、本実施形態では、基材の材料にポリイミドを用いることで、第2中間転写ベルト16を全体として耐熱性のものにしている。かかる構成では、紙ガイド部材を省略し得る距離まで第2中間転写ベルト16と定着装置35とを近づけて配設して、かかるトナー像の乱れを回避しながら、定着装置35で第2中間転写ベルト16を加熱することによる種々の不具合を抑えることができる。
第2中間転写ベルト16の厚みについては、50〜600[μm]の範囲内に調整している。これは次に説明する理由による。即ち、厚みを50[μm]未満にすると、中間転写ベルト16を脆弱にして破き易くなるからである。また、厚みを600[μm]よりも大きくすると、弾性を発揮する樹脂材料からなる基材の厚みを大きくし過ぎて、第2中間転写ベルト16に第1中間転写ベルト8よりも厚み方向に変形し難くなるという性質を発揮させることが困難になるからである。厚みを600[μm]以下にすることで、かかる性質を容易に発揮させることができる。
図6は本実施形態に係るプリンタの第1変形例装置を示す概略構成図である。この第1変形例装置100Aにおいては、第1転写ユニット15に対する各プロセスカートリッジ6Y,M,C,Kや露光装置7の位置関係が、図1に示したプリンタ100と逆になっている。具体的には、第1転写ユニット15の上方に各プロセスカートリッジ6Y,M,C,Kが配設され、その更に上方に露光装置7が配設されている。
第1転写ユニット15において、第1中間転写ベルト8は、図1に示したプリンタと同様に、そのJIS−Aによる表面硬度が50[度]に調整されている。このように比較的柔らかい表面硬度を実現すべく、図7に示すような単層構造ではなく、図8や図11に示すような多層構造となっており、何れかの層に弾性材料が用いられている。また、本第1変形例装置100Aにおける第1転写ユニット15では、第1中間転写ベルト8を張架する複数のローラとして、第2テンションローラ60と、3次転写バックアップローラ61とが増設されている。
先に示した図6において、第2中間転写ベルト16は、図1に示したプリンタと同様に、そのJIS−Aによる表面硬度が95[度]に調整されている。第2中間転写ベルト16を張架する複数のローラのうち、ニップ拡張ローラ(図1の19)と、バックアップローラ(図1の21)とが無くなっている。また、第2中間転写ベルト16を介してバックアップローラに対向配設された転写チャージャ(図1の23)も無くなっている。その代わりに、3次転写ローラ62、分離ローラ63、第2テンションローラ64が増設されている。3次転写ローラ62は、第1転写ユニット15内の3次転写バックアップローラ61との間に2つの中間転写ベルトを挟み込んで3次転写ニップを形成している。この3次転写ニップは、これよりも上流側にて、2次転写バックアップローラ12と2次転写ローラ17との間に2つの中間転写ベルトが挟み込まれて形成されている2次転写ニップに連続している。分離ローラ63は、図1に示したプリンタ100のバックアップローラに代わるもので、その曲率にならって移動方向を約90[°]変える第2中間転写ベルト16上から転写紙Pを分離せしめて、定着装置35に送る。第2クリーニング装置18は、テンションローラ20によってバックアップされながら、第2中間転写ベルト16上の転写残トナーをクリーニングする。
図9は、本第1変形例装置100Aにおける2次転写ニップとその周囲を示す拡大構成図である。第1中間転写ベルト8の裏面から2つの中間転写ベルトを対記録体用転写バイアス部材たる2次転写ローラ17に向けて押圧している2次転写バックアップローラ12は、アース接続されている。これに対し、2次転写ローラ17には、電源によってトナーと逆極性(図示の例ではプラス極性)の2次転写バイアスが印加されている。第1中間転写ベルト8上の上記第1トナー像は、この2次転写バイアスの影響により、2次転写ローラ17側に静電的に引き寄せられて、第2中間転写ベルト16上に静電転写される。2次転写においては、トナーを対記録体用転写バイアス部材たる2次転写ローラ17に向けて静電的に引き寄せる転写方式を採用しているのである。
図10は、本第1変形例装置100Aにおける3次転写ニップとその周囲を示す拡大構成図である。第1中間転写ベルト8の裏面から2つの中間転写ベルトを対記録体用転写バイアス部材たる3次転写ローラ62に向けて押圧している3次転写バックアップローラ61は、2次転写バックアップローラと同様にアース接続されている。これに対し、3次転写ローラ62には、電源によってトナーと同極性(図示の例ではマイナス極性)の3次転写バイアスが印加されている。上記2次転写ニップで第2中間転写ベルト16上に2次転写された上記第1トナー像は、この3次転写バイアスの影響により、3次転写バックアップローラ61側に向けて静電的に押し出される。そして、2つの中間転写ベルトに挟まれている転写紙Pの第1面に3次転写される。対記録体用転写バイアス部材たる3次転写ローラ62側から転写紙Pに向けてトナーを静電的に押し出す静電押し出し転写方式を採用しているのである。従来、かる転写方式では、3次転写の際、先に2次転写ニップで転写紙Pの第2面に2次転写された第2トナー像も、第1トナー像と同様に静電的に押し出して第1中間転写ベルト8に逆戻りさせると本発明者らは考えていた。ところが、実際に試験してみたところ、驚いたことに、第2トナー像については静電的に押し出すことなく、転写紙Pの第2面上に留めることができた。かかる3次転写方式では、図1に示したプリンタ100の転写チャージャとは異なり、第1トナー像、第2トナー像ともに転写紙Pに密着させながら、第1トナー像を3次転写することができる。よって、露出させた転写紙Pの第2面にチャージをかけることによるトナーチリを回避して、より品質の良い画像を形成することができる。また、コロナチャージに伴うオゾンの発生を回避することもできる。
なお、同図中の3次転写バックアップローラ61にトナーと逆極性の3次転写バイアスを印加し、3次転写ローラ62をアース接続して3次転写バックアップローラ61に引き寄せる方法では、上手くいかなかった。第2中間転写ベルト16上の第1トナー像を転写紙Pの第1面に静電的に引き寄せると同時に、第2トナー像を転写紙Pの第2面から第1中間転写ベルト8上に引き寄せて逆戻りさせてしまったのである。よって、3次転写ニップにおける3次転写については、押し出し方式の静電転写で行う必要がある。つまり、2つの対記録体用転写バイアス部材のうち、両中間転写ベルトの表面移動方向のより下流側に配設する方に対しては、トナー像をその対記録体用転写バイアス部材側から転写紙Pに向けて遠ざけるように静電移動させる極性の転写バイアスを印加するのである。
以上のように構成した本第1変形例装置のプリンタ100Aにおいても、転写紙Pを2次転写ニップからこれよりも下流側に搬送する過程で、転写紙Pに対してその両面側からトナー像の転写処理を施す。よって、転写紙Pの両面に対してワンパス方式での画像形成を行うことができる。また、転写紙Pを各感光体(1Y,M,C,K)に直接接触させることがないので、感光体への紙粉の付着を抑えることができる。更に、2つの中間転写ベルトのうち、一方(第2中間転写ベルト16)が他方よりも厚み方向に変形し難いことにより、2次転写ニップや3次転写ニップにて主にその変形し易い方の表面が変形し難い方の表面にならって変形しようとする。このことにより、2次転写ニップや3次転写ニップにおける両ベルトの楔状(波打ち状)の食い込みが抑えられ、これらニップに挟まれた転写紙Pに発生する皺を抑えることができる。本変形例のプリンタ100Aでは、2つのベルトの当接によるニップとして、2次転写ニップに加えて3次転写ニップも形成するので、一方のベルトを変形させ難くしてニップでの転写紙Pの皺を抑える本発明は特に有効である。
図12は、実施形態に係るプリンタの第2変形例装置を示す概略構成図である。この第2変形例装置100Bにおいては、第1転写ユニット15、第2転写ユニット24が、それぞれ、第1中間転写ベルト8、第2中間転写ベルト16を横長の形状で張架している。そして、第1中間転写ベルト8と、これの図中下方に配設された第2中間転写ベルト16とを、互いに横長の張架箇所で当接させて2次転写ニップを形成している。
本第2変形例装置100Bは、各色についてプロセスカートリッジを2つずつ備えている。第1系統用のものと、第2系統用のものである。これらのうち、第1系統用のプロセスカートリッジ6Y,M,C,Kは、第1転写ユニット15の図中上方にて、それぞれ第1中間転写ベルト8に感光体1Y,M,C,Kを当接させるように配設されている。そして、第1中間転写ベルト8に重ね合わせ1次転写するためのY,M,C,Kトナー像を形成する。この重ね合わせ1次転写によって得られた4色トナー像は、実施形態に係るプリンタにおける第2トナー像に相当する。そして、第1中間転写ベルト8の図中時計回りの無端移動に伴って、第1中間転写ベルト8と第2中間転写ベルト16とが当接する2次転写ニップに送られる。
一方、第2系統用のプロセスカートリッジ76Y,M,C,Kは、第2転写ユニット24の図中下方にて、それぞれ第2中間転写ベルト16に感光体71Y,M,C,Kを当接させるように配設されている。そして、第2中間転写ベルト16に重ね合わせ1次転写するためのY,M,C,Kトナー像を形成する。この重ね合わせ1次転写によって得られた4色トナー像は、実施形態に係るプリンタにおける第1トナー像に相当する。そして、第2中間転写ベルト16の図中反時計回りの無端移動に伴って上述の2次転写ニップに送られる。なお、第2系統用のプロセスカートリッジ76Y,M,C,Kの感光体71Y,M,C,Kに対する光書込は、第2系統用の露光装置77によってなされる。この露光装置77は、第2系統用のプロセスカートリッジ76Y,M,C,Kの図中下方に配設されている。一方、第1系統用の露光装置7は、第1系統用のプロセスカートリッジ6Y,M,C,Kの図中上方に配設されている。
本第2変形例装置100Bは、転写紙P上に画像をプリントするためのプリンタ部90と、このプリンタ部に供給するための転写紙Pを収容する記録体収容手段たる給紙部91とが別体で構成されている。給紙部91は、内部に収容している転写紙束の一番上の転写紙Pに押し当てている給紙ローラ92を所定のタイミングで回転駆動させることで、その転写紙Pをプリンタ部90の給紙路88に向けて送り出す。送り出された転写紙Pは、複数の搬送ローラ対を経た後、給紙路88の末端付近に配設されたレジストローラ対31のローラ間に挟まれる。そして、第1転写ユニット15の第1中間転写ベルト8上の第2トナー像や、第2転写ユニット25の第2中間転写ベルト16上の第1トナー像に同期するように、2次転写ニップに向けて送り出される。
図13は、本第2変形例装置100Bにおける2次転写ニップとその周囲構成とを示す模式図である。第1転写ユニット8は、第1中間転写ベルト8を張架する複数の張架ローラのうちの2本として、上流側2次転写対向ローラ82と、下流側2次転写対向ローラ84とを有している。また、第2転写ユニットは、第2中間転写ベルト16を張架する複数の張架ローラのうちの2本として、上流側2次転写ローラ81と、下流側2次転写ローラ84とを有している。2次転写ニップは、第1中間転写ベルト8における両2次転写対向ローラ(82、84)間の展張部分が、第2中間転写ベルト16における両2次転写ローラ(81、83)間の展張部分に形成されている。なお、両2次転写対向ローラ(82、84)は、何れも接地されている。
本第2変形例装置100Bにおいては、2次転写ニップ内にて、上流側2次転写、下流側2次転写という2段階の2次転写が行われる。具体的には、2次転写ニップに送り込まれた転写紙Pは、ニップ内において、まず上流側2次転写部を通過する。この上流側2次転写部においては、両中間転写ベルト(8、16)が、上流側2次転写対向ローラ82と上流側2次転写ローラ84との間に挟み込まれている。そして、両ローラ間に形成される上流側2次転写電界の影響を受けて、いずれか一方の中間転写ベルト上のトナー像が、転写紙Pの何れか一方の面に2次転写される。図示の例では、上流側2次転写部において、第2中間転写ベルト16の裏面に当接している上流側2次転写ローラ81に、トナーの帯電極性とは逆極性のプラスの上流側2次転写バイアスが印加されている。よって、第1中間転写ベルト8上の第2トナー像が、上流側2次転写ローラ81に向けて静電的に引き寄せられて、転写紙Pのもう一方の面である第2面(図中上を向く面)に2次転写される。図示の例では、上流側2次転写の方式として、静電引き寄せ転写方式が採用されているのである。
このようにして上流側2次転写が施された転写紙Pは、次に、下流側2次転写部に進入する。この下流側2次転写部においては、両中間転写ベルト(8、16)が、下流側2次転写対向ローラ84と下流側2次転写ローラ83との間に挟み込まれている。そして、両ローラ間に形成される下流側2次転写電界の影響を受けて、何れか一方の中間転写ベルト上のトナー像が、転写紙Pの何れか一方の面に2次転写される。図示の例では、下流側2次転写部において、第2中間転写ベルト16の裏面に当接している下流側2次転写ローラ83に、トナーの帯電極性と同じマイナスの下流側2次転写バイアスが印加されている。よって、第2中間転写ベルト16上の第1トナー像が、下流側2次転写ローラ83側から下流側2次転写対向ローラ84側に向けて静電的に押し出されて、転写紙Pの一方の面である第1面(図中下を向く面)に2次転写される。図示の例では、下流側2次転写の方式として、静電押し出し転写方式が採用されているのである。本発明者らは、図示のような二段階の次転写を採用した場合に、次のような逆転写を引き起こさないことを実験によって確かめた。即ち、先に転写紙Pの第2面に転写しておいた第2トナー像を、下流側2次転写の際に、第2面から第1中間転写ベルト8に向けて逆転写してしまうといった現象である。
上記2次転写ニップで両面にトナー像が2次転写された転写紙Pは、両中間転写ベルト(8、16)の無端移動に伴って図中右側から左側に移動して、定着装置35に受け渡される。定着装置35は、2本の定着ローラ35a,bの他に、2本の張架ローラ、第1定着ベルト35c、第2定着ベルト35dなどを有している。第1定着ベルト35cは、定着ローラ35aと一方の張架ローラとに張架されながら図中時計回りに無端移動せしめられる。また、第2定着ベルト35dは、定着ローラ35bともう一方の張架ローラとに張架されながら図中反時計回りに無端移動せしめられる。このようにして無端移動せしめられる第1定着ベルト35c、第2定着ベルト35dは、それぞれ定着ローラ35a,bによって裏面側から加熱されながら、互いに当接して定着ニップを形成している。上記2次転写ニップから定着装置35に送られてくる転写紙Pは、この定着ニップに挟み込まれて図中左側から右側に搬送される過程で、両面側から加熱されたり加圧されたりして、両面のトナー像が定着せしめられる。
定着装置35によって定着処理が施された転写紙Pは、定着装置35の図中左側方に配設されている排紙ローラ対37を経由した後、プリンタの図中左側面に固定されたスタック部40上に排出される。
上記2次転写ニップよりもベルト移動方向上流側では、第1中間転写ベルト8と第2中間転写ベルト16とが非接触で対向しており、2次転写ニップに向けて互いのベルトが徐々に近づいていくように移動する。給紙路88は、このように両中間転写ベルトが非接触で対向している領域に配設されている。給紙路88の末端付近に配設されたレジストローラ対31から排出された転写紙Pは、両中間転写ベルトが2次転写ニップにむけて互いに近づくように移動する領域を経由することで、2次転写ニップに向けて確実且つ円滑に案内される。よって、転写紙Pとして薄厚で腰の著しく弱いものが用いられても、ジャム等が発生し難くなっている。
一方、2次転写ニップよりもベルト移動方向下流側においても、両中間転写ベルトが非接触で対向しており、互いに徐々に遠ざかって行くように移動する。定着装置35は、このように両中間転写ベルトが非接触で対向している領域に転写紙受入側の端部を進入させるように配設されている。2次転写ニップから送り出される転写紙Pは、かかる領域に進入している定着装置35に確実且つ円滑に案内される。よって、このことによっても、ジャム等が発生し難くなっている。
本第2変形例装置100Bのように、上流側2次転写、下流側2次転写という二段階の2次転写をそれぞれニップ内で行う場合においては、2次転写ニップやその周囲構成として図14に示す構成を採用してもよい。図13に示した構成と比較すると、第1転写ユニット15における2本の2次転写対向ローラ(82、84)と、第2転写ユニット24における2本の2次転写ローラ(81、83)とが、ユニット間で置き換わっていることがわかる。上流側2次転写部では、第1中間転写ベルト8の裏面に当接している上流側2次転写ローラ81に、トナーの帯電極性とは逆極性の上流側2次転写バイアスが印加されている。そして、第2中間転写ベルト16上の第1トナー像が、上流側2次転写ローラ81に向けて静電的に引き寄せられて転写紙Pの第1面に2次転写される(静電引き寄せ転写方式)。これに対し、下流側2次転写部では、第1中間転写ベルト8の裏面に当接している下流側2次転写ローラ83に、トナーの帯電極性と同じマイナスの下流側2次転写バイアスが印加されている。そして、第1中間転写ベルト8上の第2トナー像が、下流側2次転写ローラ83側から下流側2次転写対向ローラ84側に向けて静電的に押し出されて、転写紙Pの第2面に2次転写される(静電押し出し転写方式)。本発明者らは、図示のような二段階の2次転写を採用した場合に、次のような逆転写を引き起こさないことを実験によって確かめた。即ち、先に転写紙Pの第1面に転写しておいた第1トナー像を、下流側2次転写の際に、第1面から第2中間転写ベルト16に向けて逆転写してしまうといった現象である。
また、2次転写ニップやその周囲構成として図15に示す構成を採用してもよい。同図においては、上流側2次転写ローラ81が第2中間転写ベルト16を張架しているのに対し、下流側2次転写ローラ83が第1中間転写ベルト8を張架している。上流側2次転写部では、第2中間転写ベルト16の裏面に当接している上流側2次転写ローラ81に、トナーの帯電極性と同じマイナスの上流側2次転写バイアスが印加されている。そして、第2中間転写ベルト16上の第1トナー像が、上流側2次ローラ81側から上流側2次転写対向ローラ82側に向けて静電的に押し出されて、転写紙Pの第1面に2次転写される(静電押し出し転写方式)。これに対し、下流側2次転写部では、第1中間転写ベルト8の裏面に当接している下流側2次転写ローラ83に、トナーの帯電極性と同じマイナスの下流側2次転写バイアスが印加されている。そして、第1中間転写ベルト8上の第2トナー像が、下流側2次転写ローラ83側から下流側2次転写対向ローラ84側に向けて静電的に押し出されて、転写紙Pの第2面に2次転写される(静電押し出し転写方式)。本発明者らは、図示のような二段階の2次転写を採用した場合に、次のような逆転写を引き起こさないことを実験によって確かめた。即ち、先に転写紙Pの第1面に転写しておいた第1トナー像を、下流側2次転写の際に、第1面から第2中間転写ベルト16に向けて逆転写してしまうといった現象である。
また、2次転写ニップやその周囲構成として図16に示す構成を採用してもよい。同図においては、上流側2次転写ローラ81が第1中間転写ベルト8を張架しているのに対し、下流側2次転写ローラ83が第2中間転写ベルト16を張架している。上流側2次転写部では、第1中間転写ベルト8の裏面に当接している上流側2次転写ローラ81に対し、トナーの帯電極性と同じマイナスの上流側2次転写バイアスが印加されている。そして、第1中間転写ベルト8上の第2トナー像が、上流側2次転写ローラ81側から上流側2次転写対向ローラ82側に向けて静電的に押し出されて、転写紙Pの第2面に2次転写される(静電押し出し方式)。これに対し、下流側2次転写部では、第2中間転写ベルト16の裏面に当接している下流側2次転写ローラ83に対し、トナーの帯電極性と同じマイナスの下流側2次転写バイアスが印加されている。そして、第2中間転写ベルト16上の第1トナー像が、下流側2次転写ローラ83側から下流側2次転写対向ローラ84側に向けて静電的に押し出されて、転写紙Pの第1面に2次転写される(静電押し出し転写方式)。本発明者らは、図示のような二段階の2次転写を採用した場合に、次のような逆転写を引き起こさないことを実験によって確かめた。即ち、先に転写紙Pの第2面に転写しておいた第2トナー像を、下流側2次転写の際に、第2面から第1中間転写ベルト8に向けて逆転写してしまうといった現象である。
図13から図16までを用いて、対記録体用転写バイアス部材として、ローラ(81、83)を採用した例について説明したが、非ローラ状のものを採用してもよい。また、対記録体用転写バイアス部材に対向する対向電極部材として、ローラ(82、84)を採用した例について説明したが、非ローラ状の対向電極部材を採用してもよい。図17は、非ローラ状の対記録体用転写バイアス部材と、非ローラ状の対向電極部材とを採用した場合における2次転写ニップとその周囲構成とを示す模式図である。同図においては、第1中間転写ベルト8における張架ローラ85と下流側2次転写ローラ83との間の展張部分が、第2中間転写ベルト16における2つの張架ローラ86,87間の展張部分に当接して、2次転写ニップが形成されている。前者の展張部分の裏面には、下流側2次転写ローラ83よりもベルト移動方向上流側で、非ローラ状の対記録体用転写バイアス部材である上流側2次転写ブレード88が当接している。これは、導電性のゴム材料からなり、図示しない支持部材によってベルト裏面との当接状態を維持するように支持されている。一方、後者の展張部分の裏面には、非ローラ状の対向電極部材である対向電極板89が、第1転写ユニット15の上流側2次転写ブレード88と下流側2次転写ローラ83との両方に対向するように当接している。これは、金属板、導電性樹脂板、非導電性基板の表面に導電性樹脂シートが被覆された板などであり、図示しない支持部材によってベルト裏面との当接状態を維持するように支持されている。また、対向電極板89は、アース接続されている。
同図において、上流側2次転写部では、第1中間転写ベルト8の裏面に当接している上流側2次転写ブレード88に対し、トナーの帯電極性とは逆極性のプラスの上流側2次転写バイアスが印加されている。そして、第2中間転写ベルト16上の第1トナー像が、対向電極板89側から上流側2次転写ブレード88側に向けて静電的に引き寄せられて、転写紙Pの第1面に2次転写される(静電引き寄せ方式)。これに対し、下流側2次転写部では、第1中間転写ベルト8の裏面に当接している下流側2次転写ローラ83に対し、トナーの帯電極性と同じマイナスの下流側2次転写バイアスが印加されている。そして、第1中間転写ベルト8上の第2トナー像が、下流側2次転写ローラ83側から対向電極板89側に向けて静電的に押し出されて、転写紙Pの第2面に2次転写される(静電押し出し転写方式)。本発明者らは、このような場合でも、下流側2次転写時における逆転写を引き起こさないことを実験によって確かめた。
ところで、2次転写ニップやその周囲構成として図18に示す構成を採用したとする。同図において、2次転写ニップにおける各ローラの配設位置は、図15に示した構成と同様である。但し、下流側2次転写ローラ83に印加する下流側2次転写バイアスの極性が図15に示したものと異なり、トナーの帯電極性とは逆のプラスになっている。かかる構成では、下流側2次転写において、第2中間転写ベルト16上の第1トナー像を下流側2次転写バイアスに向けて静電的に引き寄せて転写紙Pの第1面に2次転写することができる(静電引き寄せ転写方式)。ところが、同時に、先に転写紙Pの第1面に転写しておいた第2トナー像も静電的に引き寄せて、第1面から第1中間転写ベルト8に逆転写してしまうことを、本発明者らは実験によって確かめた。
二段階の2次転写では、上流側で第1中間転写ベルト8上から転写紙Pの第2面への転写を行った後に、下流側で第2中間転写ベルト16上から転写紙Pの第2面への転写を行う場合と、その逆の順序で行う場合との2通りが成立する。また、上流側、下流側にて、それぞれ静電引き寄せ方式又は静電押し出し方式という2通りの転写方式が成立する。よって、これらを組み合わせると、8通りの二段階2次転写方法が成立し得る。本発明者らは、これら8通りの二段階2次転写方法を全て試験して、下流側の2次転写時における逆転写の有無を調べてみた。次に示す表1は、これら8通りの二段階2次転写方法と、下流側の2次転写時における逆転写の有無との関係を示している。
表1に示すように、8通りの二段階2次転写方法において、下流側の2次転写時における2次転写が発生しなかったのは、実験番号3、4、7、8の4通りだけであった。これらは、先に図13、図16、図14(又は図17)、図15に示した二段階2次転写方法である。これらに着目すると、下流側2次転写が全て静電押し出し方式で行われていることがわかる。一方、逆転写が発生した実験番号1、2、5、6に注目すると、これらは全て下流側2次転写が静電引き寄せ方式で行われていることがわかる。よって、二段階2次転写方法を行う場合、下流側2次転写に静電押し出し転写方式を採用しないと、逆転写を引き起こしてしまうことが判明した。なお、先に説明した第1実施例装置100Aにおいても、ニップ内における連続転写(「2次、3次」又は「3次、2次」)に、同様の8通りの方法が成立する。本発明者らは、これら8通りについても全て試験した結果、連続転写における後段の転写時に押し出し静電転写方式を採用しないと、逆転写を引き起こしてしまうという同様の結果を得た。
先に示した図12において、プリンタ部90の筺体内には、記録体排出路たる紙搬送路が形成されている。この紙搬送路は、次に列記する搬送路から構成されている。即ち、上述の給紙路88と、2次転写ニップと、定着装置の第2定着ベルト35dによる定着搬送路と、定着ニップと、これから排紙ローラ対37に至るまでの排紙路とである。これらから構成される紙搬送路は、同図に示すように、曲がりのない直線状になっており、水平方向からの傾きが0[°]、即ち、水平方向の搬送を行うようになっている。一方、プリンタ部90の給紙路88に向けて転写紙Pを排出する給紙部91は、排出途中の転写紙Pの先端側における水平方向からの傾斜角度を、0[°]にするようになっている。即ち、転写紙Pを先端側が水平になる姿勢で、給紙路88に向けて送り出すのである。かかる構成では、転写紙Pを給紙部91から排出してから、プリンタ部90内を経由させてその外部に排出するまで、紙搬送路内で曲げることがない。よって、転写紙Pとして曲がりにくい厚紙等を用いた場合でも、それを紙搬送路内で曲げ癖を付けることなく搬送して、ジャムの発生を抑えることができる。
これまで、潜像担持体としてドラム状の感光体を用いた例について説明したが、ベルト状の感光体など、他の方式のものを用いてもよい。また、第2中間転写ベルト16を第1中間転写ベルト8よりも変形させ難くした例について説明したが、第1中間転写体を第2中間転写体よりも変形させ難くしてもよい。また、粉体トナーではなく、トナーと液体キャリアとを含有する液体現像剤を用いる画像形成装置にも本発明の適用が可能である。また、電子写真方式のプリンタについて説明したが、直接記録方式の画像形成装置にも本発明の適用が可能である。この直接記録方式とは、潜像担持体によらず、トナー飛翔装置からドット状に飛翔させたトナー群を中間転写体や記録体に直接付着させて画素像を形成することで、画像を直接形成する方式である。また、1次転写、2次転写、3次転写を何れも静電転写にて行うプリンタについて説明したが、少なくとも何れか1つの転写を加熱転写によって行う画像形成装置にも本発明の適用が可能である。なお、加熱転写とは、第1中間転写体等の転写元と、第2中間転写体等の転写先とを加熱しながら密着せしめてトナー像を軟化させた後、両者を離間させることで、トナー像を転写元から転写先に転写する方式である。
以上、実施形態に係るプリンタ100や第1変形例装置100Aにおいては、像担持体たる感光体1Y,M,C,Kから第1中間転写ベルト8を介して第2中間転写ベルト16に転写した第1可視像たる第1トナー像を転写紙Pの一方の面である第1面に転写している。この一方で、感光体1Y,M,C,Kから第1中間転写ベルト8に転写した第2可視像たる第2トナー像を転写紙Pのもう一方の面である第2面に転写している。かかる構成では、転写紙Pの第1面に転写するための第1トナー像と、第2面に転写するための第2トナー像とを、同じ感光体群(感光体1Y,M,C,K)で形成することができる。よって、それぞれのトナー像を個別に形成するための感光体を設けることによるコストアップを回避することができる。
また、第2変形例装置においては、第1系統用の感光体1Y,M,C,Kから第1中間転写ベルト8に転写した第2トナー像を転写紙Pの第2面に転写する一方で、別の像担持体である第2系統用の感光体71Y,M,C,Kから第2中間転写ベルト16に転写した第1トナー像を転写紙Pの第1面に転写している。かかる構成では、両方のトナー像を同一の感光体群で形成するプリンタ100や第2変形例装置100Aとは異なり、両トナー像の形成をほぼ並行して行うことができる。そして、このことにより、プリンタ100や第1変形例装置100Bに比べて、両面転写速度を速めることができる。
また、プリンタ100や各変形例装置においては、少なくとも一方の中間転写体である第1中間転写ベルト8及び第2中間転写ベルト16として多層構造のものを用いているので、ベルト全体として良好な弾性を発揮させつつ、所望の電気抵抗を発揮させることができる。
また、その多層構造における表面層が、他の層よりもトナー離型性に優れた材料からなる離型促進層であるので、ベルトから転写紙Pへの転写の際に、トナー像をベルト表面から良好に離間させて転写中抜け等の不良画像を抑えることができる。
また、第1中間転写体及び第2中間転写体として、それぞれ複数の張架部材たるローラに張架されながら無端移動せしめられる中間転写ベルトを用いているので、ローラやドラム形状のものを用いる場合よりも、2次転写ニップを長くすることができる。そして、このことにより、プロセス線速を速めて画像形成時間の短縮化を図ることができる。更に、両ベルトを様々な張架形状で配設することができるので、ローラやドラム形状のものを用いる場合に比べて、本体内のレイアウト自由度を高めることもできる。
また、第1中間転写ベルト8を張架する複数の張架部材のうち、4つが、感光体1Y,M,C,K上のトナー像を第1中間転写ベルト8に静電転写せしめるべくそのベルト裏面に転写バイアスを付与する転写バイアス部材たる1次転写ローラ(9Y,M,C,K)になっている。かかる構成では、感光体(1Y,M,C,K)から第1中間転写ベルト8にトナー像を静電1次転写することができる。
また、第2変形例装置100Bにおいては、第1中間転写ベルト16に転写する第2トナー像を形成するための第1系統用の感光体1Y,M,C,Kとは別に、第2中間転写ベルト16に転写するための第1トナー像を形成するための第2系統用の感光体71Y,M,C,Kを備えている。そして、第2中間転写ベルト16を張架する複数の張架部材のうち、4つが、第2系統用の感光体71Y,M,C,K上のトナー像を第2中間転写ベルト16に静電転写せしめるべくそのベルト裏面に転写バイアス部材を付与する転写部材部材たる1次転写ローラ(79Y,M,C,K)になっている。かかる構成では、第2系統用の感光体(71Y,M,C,K)から第2中間転写ベルト16にトナー像を静電1次転写することができる。
また、第2変形例装置100Bにおける図13から図16までに示した各態様においては、第1中間転写ベルト8を張架する複数の張架部材の少なくとも1つが、何れか一方の中間転写ベルト上のトナー像を転写紙Pに静電転写せしめるべく第1中間転写ベルト8の裏面に転写バイアスを付与する対記録体用転写バイアス部材になっている(81、83)。かかる構成では、第1中間転写ベルト8の張架部材を対記録体用転写バイアス部材として利用して、トナー像を何れか一方の中間転写ベルトから転写紙Pに静電転写することができる。
また、プリンタ100や各変形例装置においては、第2中間転写ベルト16を張架する複数の張架部材の少なくとも1つが、何れか一方の中間転写ベルト上のトナー像を転写紙Pに静電転写せしめるべく第2中間転写ベルト16の裏面に転写バイアスを付与する対記録体用転写バイアス部材になっている(17、62、81、83)。かかる構成では、第2中間転写ベルト16の張架部材を対記録体用転写バイアス部材として利用して、トナー像を何れか一方の中間転写ベルトから転写紙Pに静電転写することができる。
また、各変形例装置においては、2つの対記録体用転写部材部材たる2次転写ローラ17と3次転写ローラ62とが(あるいは上流側2次転写ローラ81と下流側2次転写ローラ83とが)、それぞれ2次転写ニップの箇所で中間転写ベルトの裏面に当接するように配設されている。かかる構成では、プリンタ100とは異なり、転写紙Pの両面に対してそれぞれニップ内でトナー像を静電転写することができる。よって、ニップに挟み込んでいない転写紙Pに対して転写チャージャによって電荷を付与して何れか一方の面にトナー像を転写する際に、トナーなどの異物が転写チャージャの電極を汚染して、画像品質を劣化させるといった事態を回避することができる。
また、プリンタ100や各変形例装置においては、第1中間転写ベルト8として、表面抵抗が105〜1012[Ω/□]であるものを用いているので、感光体から第1中間転写ベルト8への静電1次転写を確実に実現することができる。
また、第2中間転写ベルト16として、表面抵抗が105〜1012[Ω/□]であるものを用いているので、第1中間転写ベルト8から第2中間転写ベルト16や転写紙Pへの静電2次転写を確実に実現することができる。
また、第2中間転写ベルト16として、その基材がポリイミドからなるものを用いていることで、第2中間転写ベルト16に耐熱性を発揮させている。そして、このことにより、紙ガイド部材を省略し得る距離まで第2中間転写ベルト16と定着装置35とを近づけて配設して、紙ガイド部材との擦接によるトナー像の乱れを回避しながら、定着装置35で第2中間転写ベルト16を加熱することによる種々の不具合を抑えることができる。
また、変形し難い方の中間転写ベルトである第2中間転写ベルト16について、厚みを50〜600[μm]に調整したものを用いているので、その破れを抑えつつ、第1中間転写ベルト8よりも厚み方向に変形し難いという性質を容易に発揮させることができる。
また、第1中間転写ベルト8を張架する転写バイアス部材や、第2中間転写ベルト16を張架する転写バイアス部材として、それぞれ回転可能な転写バイアスローラたる1次転写ローラ(9Y,M,C,K)、2次転写ローラ17を用いている。かかる構成では、転写バイアス部材として、ベルトの無端移動に伴って回転することのない非回転体を用いる場合に生ずる転写バイアス部材との擦接によるベルトの摩耗や劣化を回避することができる。
また、第2変形例装置においては、上流側2次転写ローラ81と下流側2次転写ローラとのうち、両中間転写ベルトの表面移動方向のより下流側に配設する方である下流側2次転写ローラ81に対しては、トナー像を下流側2次転写ローラ81側から転写紙Pに向けて遠ざけるように静電移動させる、即ち、静電押し出し転写方式を実現し得る極性のバイアスを印加させるようにしている。かかる構成では、下流側2次転写を静電引き寄せ転写方式で転写紙Pに2次転写することによるトナー像の逆転写を回避することができる。
また、第2変形例装置においては、転写紙Pを給紙部91から受け入れた後、2次転写ニップに送り込んでからプリンタ部90外に排出するまでの記録体搬送路たる紙搬送路について、曲がりのない直線状の形状にしている。そして、その紙搬送路の水平方向からの傾斜角度を、記録体収容手段たる給紙部91から排出される最中の転写紙Pの先端側における水平方向からの傾斜角度と同じにしている。かかる構成では、上述した理由により、転写紙Pとして曲がりにくい厚紙等を用いた場合でも、それを紙搬送路内で曲げ癖を付けることなく搬送して、ジャムの発生を抑えることができる。
また、実施形態に係るプリンタ100や各変形例装置においては、像担持体たる感光体として、第1中間転写ベルト8に転写されるトナー像を担持する複数のもの(1Y,M,C,K)を用いている。そして、第1転写ユニット15と第2転写ユニット24とを有する転写装置として、それら各感光体に担持されるトナー像を第1中間転写ベルト8にそれぞれ重ね合わせて転写するように構成したものを用いている。かかる構成では、第1中間転写ベルト8にそれぞれ色の異なるトナー像を重ね合わせて転写して他色トナー像を形成することができる。しかも、いわゆるタンデム方式によるトナー像の重ね合わせを行うことで、1つの感光体に順次異なる色のトナー像を形成して第1中間転写ベルト8に重ね合わせ転写していく構成のものに比べて、他色トナー像の形成速度を速めることができる。
また、第2変形例装置100Bにおいては、像担持体たる第1系統用の感光体から第1中間転写ベルト8に転写した第2トナー像を転写紙Pの第2面に転写する一方で、別の像担持体たる第2系統用の感光体から第2中間転写ベルト16に転写した第1トナー像を転写紙Pの第1面に転写するように構成されている。そして、第2系統用の感光体として、第2中間転写ベルト16に転写されるトナー像を担持する複数のもの(71Y、M、C、K)を用いている。かかる構成では、転写紙Pの両面に対して、それぞれ多色トナー像を形成するための複数の感光体を備えることで、第1トナー像用の各色トナー像と、第2トナー像用の各色トナー像とを並行して形成することができる。よって、両トナー像(第1及び第2)を並行して形成することができないプリンタ100や第1変形例装置100Aに比べて、プリント速度を速めつつ、転写紙Pの両面に多色トナー像を形成することができる。