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JP3824111B2 - 非水電解質電池 - Google Patents

非水電解質電池 Download PDF

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  • Carbon And Carbon Compounds (AREA)
  • Secondary Cells (AREA)
  • Battery Electrode And Active Subsutance (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は非水電解質電池に係り、特に放電容量、出力密度が大であってサイクル特性に優れた非水電解質電池用負極に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より非水電解質電池用の負極活物質として、リチウムを用いることが代表的であったが、充電時に生成するリチウムの樹枝状析出(デンドライト)のため、サイクル寿命の点で問題があった。また、このデンドライトはセパレータを貫通し内部短絡を引き起こしたり、発火の原因ともなっている。また、上記のような充電時に生成するデンドライトを防止する目的で金属リチウムとの合金も用いられたが、充電量が大きくなると負極の微細粉化や、負極活物質の脱落などの問題があった。
【0003】
現在、長寿命化及び安全性のために負極に炭素材料を用いる電池などが注目を集め一部実用化されている。しかしながら、負極に用いられる炭素材料は、急速充電時に内部短絡や充電効率の低下という問題があった。これらの炭素材料は一般的に、炭素材料へのリチウムのドープ電位が0Vに近いため、急速充電を行う場合、電位が0V以下になり電極上にリチウムを析出することがあった。そのため、セルの内部短絡を引き起こしたり、放電効率が低下する原因となる。また、このような炭素材料は、サイクル寿命の点でかなりの改善がなされているが、密度が比較的小さいため、体積当たりの容量が低くなってしまうことになる。つまり、この炭素材料は高エネルギー密度という点からは未だ不十分である。その上、炭素上に被膜を形成する必要があるものについては初期充放電効率が低下し、この被膜形成に使われる電気量は不可逆であるため、その電気量分の容量が引き出せないことにつながる。
【0004】
一方、金属リチウムやリチウム合金または炭素材料以外の負極活物質として、シリコンとリチウムを含有する複合酸化物Lix Si1-y y z (特開平7−230800号)や、非晶質カルコゲン化合物M1 2 p 4 q (特開平7−288123号)を用いることが提唱されており、高容量、高エネルギー密度の点で改善されている。
【0005】
しかしながら、上記のような複合酸化物は、活物質自身の電気伝導度が低いため、急速充電及び負荷特性に問題があった。複合酸化物等は材料自身が酸化物であるため、酸化物の還元を経てリチウムとの反応が進行すると考えられるため、特に初期での不可逆的な還元が起こり初期充放電効率が低くなることがあった。さらなる高容量、高エネルギー密度で、サイクル寿命が長く、安全な非水電解質電池用負極材料の開発が望まれている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前述した如く、リチウムやリチウム合金、炭素材及び酸化物を負極として用いた場合、種々の問題があることがわかる。
【0007】
本発明は、前述の問題点を解決するため、負極活物質の主構成材料がリチウムを吸蔵、放出可能な共有結合結晶を用い、その結晶表面に炭素粒子を担持したことを特徴とすることにより、高容量で充放電サイクル特性に優れた非水電解質電池を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、非水電解質電池に使用される負極活物質の主構成物質が、リチウムを吸蔵、放出可能な共有結合結晶であって、その結晶表面に炭素粒子を担持してあることを特徴とする。本発明に用いられる共有結合結晶としては、電気伝導度σが20℃で10-5Scm-1以上であることが好ましく、さらにその共有結合結晶は、ホウ素等の不純物がドーピングされているシリコンを用いることがより好ましい。
【0009】
さらに、上記に挙げた炭素粒子がリチウムを吸蔵、放出可能であることが好ましい。
【0010】
また、非水電解質電池における電解質として、その主溶質が炭素を含有している塩であり、好ましくはその溶質中にC−Fの結合を有するものが優れた充放電特性を示すことが分かった。C−F結合を有する塩として、少なくとも一般式(1)
(R1Y1)(R2Y2)NLi ・・・・ 一般式(1)
(一般式(1)中のR1、R2がCn 2n+1で表され、nは1から4までの数であり、R1=R2あるいはR1≠R2であり、さらにY1,Y2がCO、SO、SO2 のいずれかで表され、Y1=Y2あるいはY1≠Y2である。)で表される塩を用いることが好ましい。
【0011】
先に、リチウムとケイ素の化合物としてはBinary Alloy Phase Diagrams(p2465)にあるように、Li22Si5 までの組成でリチウム化することが知られている。また、特開平5−74463号では、負極にシリコンの単結晶を用いることで、サイクル特性が向上することを報告している。しかしながら、急速充放電用非水電解質電池の負極材としてシリコンにリチウムを吸蔵させようと試みると、ほとんど吸蔵が起こらずにリチウムが析出してしまうことが分かった。
【0012】
つまり、リチウムとシリコン等の共有結合結晶の化合物は知られているものの、シリコン自身は元来真性半導体であり、そのままでは電子伝導性が低く、電池負極材料としての特性が悪かった。そのため、共有結合結晶と炭素等の導電剤を混合しただけでは、充放電における体積変化に追随できずに負極活物質が孤立化し、抵抗が増大することにより容量を低下させる原因となっていた。しかしながら、シリコンの結晶表面に炭素粒子を担持させることにより、シリコンの結晶と導電剤との孤立化を防ぎ、負極の抵抗が増大することを抑制できることが分かった。さらに、共有結合結晶にドナー原子、アクセプター原子となり得る原子をドープし、電気伝導度σを20℃で10-5Scm-1以上にすることにより、負極の抵抗を増大させることなくリチウムの吸蔵、放出が容易に起こることが分かった。特に、シリコンに不純物としてホウ素をドープすることにより、容量が向上することが分かった。
【0013】
ここで言う共有結合結晶としては、Si,Ge,GaAs,GaP,InSb,GaP,SiC,BN等が挙げられ、それらのうちSiについては、特に優れた充放電特性が得られ、資源的に豊富であり、毒性が低いため安全性に優れ特に好ましいが、これらに限定されるものではない。また、その結晶系については、単結晶、多結晶、微結晶等が挙げらるが、これらに限定されるものではない。
【0014】
さらに、この共有結合結晶は、電子伝導性を向上させる目的で不純物を含むことができる。ここで言う不純物とは周期律表のすべての元素のうち、ドナー原子、アクセプター原子となり得るものであるり、好ましくはP,Al,As,Sb,B,Ga,In等であるが、これらに限定されるものではない。また、共有結合結晶内部での不純物によらない格子欠陥の存在などによる電子伝導性の向上も好ましい。
【0015】
混在する不純物の濃度については、通常シリコン原子107 個から106 個にドナー原子あるいはアクセプター原子1個の割合であるが、好ましくは高濃度のドーピングが適しており、シリコン原子104 個にドナー原子あるいはアクセプター原子1個の割合、またはそれ以上のシリコンの面心立方構造を残存させる高濃度であることが望ましい。
【0016】
本発明に用いる共有結合結晶は、平均粒子サイズ100μm以下であることが望ましい。所定の形状を得る上で、粉体を得るためには粉砕機や分級機が用いられる。例えば、乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、ジェットミル、カウンタージェトミル、旋回気流型ジェットミルや篩等が用いられる。粉砕時には水、あるいはヘキサン等の有機溶剤を共存させた湿式粉砕を用いることもできる。分級方法としては、特に限定はなく、篩や風力分級機などが乾式、湿式ともに必要に応じて用いられる。
【0017】
本発明に用いられる共有結合結晶に炭素粒子を担持する方法としては、通常の混合も可能であるが、好ましくは、焼結法、蒸着法、熱プラズマ法、CVD法、スパッタリング法、ゾル−ゲル法等を用いた熱分解法、湿式還元法、電気化学的還元法、気相還元ガス処理法、メカノフュウジョン等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0018】
本発明に併せて用いることができる負極材料としては、リチウム金属、リチウム合金などや、メチルリチウム等のリチウムを含有する有機化合物等が挙げられる。また、リチウム金属やリチウム合金、リチウムを含有する有機化合物を併用することによって、本発明に用いる共有結合結晶とリチウムの化合物にさらにリチウムを電池内部で挿入することも可能である。
【0019】
本発明の炭素粒子を担持した共有結合結晶を用いる場合、電極合剤として導電剤や結着剤やフィラー等を添加することができる。導電剤としては、電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば何でも良い。通常、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛、土状黒鉛など)、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウイスカー、炭素繊維や金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金など)粉、金属繊維、金属の蒸着、導電性セラミックス材料等の導電性材料を1種またはそれらの混合物として含ませることができる。その添加量は1〜50重量%が好ましく、特に2〜30重量%が好ましい。
【0020】
結着剤としては、通常、テトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、カルボキシメチルセルロース等といった熱可塑性樹脂、ゴム弾性を有するポリマー、多糖類等を1種または2種以上の混合物として用いることができる。また、多糖類の様にリチウムと反応する官能基を有する結着剤は、例えばメチル化するなどしてその官能基を失活させておくことが望ましい。その添加量としては、1〜50重量%が好ましく、特に2〜30重量%が好ましい。
【0021】
フィラーとしては、電池性能に悪影響を及ぼさない材料であれば何でも良い。通常、ポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン系ポリマー、アエロジル、ゼオライト、ガラス、炭素等が用いられる。フィラーの添加量は30重量%以下が好ましい。
【0022】
電極活物質の集電体としては、構成された電池において悪影響を及ぼさない電子伝導体であれば何でもよい。例えば、正極材料としては、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス等の他に、接着性、導電性、耐酸化性向上の目的で、アルミニウムや銅等の表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀等で処理したものを用いることができる。負極材料としては、銅、ステンレス鋼、ニッケル、アルミニウム、チタン、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス、Al−Cd合金等の他に、接着性、導電性、耐酸化性向上の目的で、銅等の表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀等で処理したものを用いることができる。これらの材料については表面を酸化処理することも可能である。これらの形状については、フォイル状の他、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ、エキスパンドされたもの、ラス体、多孔質体、発砲体、繊維群の形成体等が用いられる。厚みは特に限定はないが、1〜500μmのものが用いられる。
【0023】
この様にして得られる共有結合結晶とリチウムの化合物を負極活物質として用いることができる。一方、正極活物質としては、MnO2 ,MoO3 ,V2 5 ,Lix CoO2 ,Lix NiO2 ,Lix Mn2 4 等の金属酸化物や、TiS2 ,MoS2 ,NbSe3 等の金属カルコゲン化物、ポリアセン、ポリパラフェニレン、ポリピロール、ポリアニリン等のグラファイト層間化合物、及び導電性高分子等のアルカリ金属イオンや、アニオンを吸放出可能な各種の物質を利用することができる。
【0024】
特に本発明の共有結合結晶とリチウムの化合物を負極活物質として用いる場合、高エネルギー密度という観点からV2 5 ,Lix CoO2 ,Lix NiO2 ,Lix Mn2 4 等の3〜4Vの電極電位を有するものが望ましい。特にLix CoO2 ,Lix NiO2 ,Lix Mn2 4 等のリチウム含有遷移金属酸化物が好ましい。
【0025】
また、電解質としては、例えば有機電解液、高分子固体電解質、無機固体電解質、溶融塩等を用いることができ、この中でも有機電解液を用いることが好ましい。この有機電解液の有機溶媒として、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン等のエステル類や、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等の置換テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、メトキシエトキシエタン等のエーテル類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、ギ酸メチル、酢酸メチル、N−メチルピロリドン、ジメチルフォルムアミド等が挙げられ、これらを単独又は混合溶媒として用いることができる。
【0026】
本発明に用いられる電解質の主構成溶質としては、炭素を含有する塩であればよい。好ましくは、前記溶質が、C−F結合を有することが好ましい。例えば、特開昭58−225045号で用いられている式:
(Cn 2n+1Y)2 - ,M+
で表せるものや、下記一般式(2)、(3):
(RSO2 3 - ,M+ ・・・・ 一般式(2)
(RSO2 )O- ,M+ ・・・・ 一般式(3)
で表せるものが好ましい。さらに好ましくは一般式(1)
(R1Y1)(R2Y2)NLi ・・・・ 一般式(1)
(一般式(1)中のR1、R2がCn 2n+1で表され、nは1から4までの数であり、R1=R2あるいはR1≠R2であり、さらにY1,Y2がCO、SO、SO2 で表され、Y1=Y2あるいはY1≠Y2である。)で表される塩であり、さらに好ましくは一般式(4)
(R1SO2 )(R2SO2 )NLi ・・・・ 一般式(4)
を用いることであり、ここで言う一般式(4)中のR1、R2がCn 2n+1で表され、nは1から4までの数であり、R1=R2あるいはR1≠R2である。最も好ましくはR1=R2=C2 5 、あるいはR1=CF3 、R2=C4 9 である。
【0027】
一方、固体電解質として、例えば無機固体電解質、有機固体電解質、無機固体電解質、溶融塩等を用いることができる。無機固体電解質には、リチウムの窒化物、ハロゲン化物、酸素酸塩、硫化リン化合物などがよく知られており、これらの1種または2種以上を混合して用いることができる。なかでも、Li3 N,LiI,Li5 NI2 ,Li3 N−LiI−LiOH,Li4 SiO4 ,Li4 SiO4 −LiI−LiOH,xLi3 PO4-(1-x) Li4 SiO4 ,Li2 SiS3 等が有効である。一方、有機固体電解質では、ポリエチレンオキサイド誘導体か少なくとも該誘導体を含むポリマー、ポリプロピレンオキサイド誘導体か少なくとも該誘導体を含むポリマー、ポリフォスファゼンや該誘導体、イオン解離基を含むポリマー、リン酸エステルポリマー誘導体、さらにポリビニルピリジン誘導体、ビスフェノールA誘導体、ポリアクリロニトリル、ポリビニリデンフルオライド、フッ素ゴム等に非水電解液を含有させた高分子マトリックス材料(ゲル電解質)等が有効である。
【0028】
セパレータとしては、イオンの透過度が優れ、機械的強度のある絶縁性薄膜を用いることができる。耐有機溶剤性と疎水性からポリプロピレンやポリエチレンといったオレフィン系のポリマー、ガラス繊維、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等からつくられたシート、微多孔膜、不織布が用いられる。セパレータの孔径は、一般に電池に用いられる範囲のものであり、例えば0.01〜10μmである。またその厚みについても同様で、一般に電池に用いられる範囲のものであり、例えば5〜300μmである。
【0029】
本発明の炭素粒子を担持した共有結合結晶を用いる場合、その粉体の少なくとも表面層部分をさらに炭素粒子以外の物質で修飾することも可能である。例えば、金、銀、カーボン、ニッケル、銅等の電子伝導性のよい物質や、炭酸リチウム、ホウ素ガラス、固体電解質等のイオン伝導性のよい物質をメッキ、焼結、メカノフュージョン、蒸着、熱プラズマ法等の技術を応用してコートすることが挙げられる。
【0030】
この様な優れた充放電特性が得られる理由として、必ずしも明確ではないが以下のように考察される。すなわち、共有結合を有する結晶はリチウムの吸蔵が可能であり、その化合物中のリチウムの存在比は大きいことがうかがえる。しかしながら、共有結合を有する結晶は半導体であるものの真性半導体であるため、その常温での電気伝導度は低く充放電時の分極が比較的大きい。これにに対し、共有結合結晶中にドナー原子、アクセプター原子となりうる不純物がドープされると電子伝導性が向上し充放電時の分極が小さくなり、容易にリチウムイオンに電子を与えることができリチウム化物として吸蔵し、また吸蔵されたリチウム化物は容易に電子を放出することができリチウムイオンを放出する。つまり、共有結合結晶が電子を流すメカニズムを得ることによって結晶内部での電子の流れがスムーズになり、リチウムの吸蔵、放出を容易にすると推定される。また、シリコンやガリウムの結晶構造はダイヤモンドと同じ面心立方構造であるため、結晶の結合が非常に強固であり、リチウムの吸蔵、放出に関わる膨脹収縮に追随し、活物質自身の微細化や脱落といったことが見られず、充放電の可逆性を向上しているものと考えられる。さらに、結晶表面に炭素粒子を担持させることで、粒子間における電子伝導性を向上させ、その上、リチウムを吸蔵、放出する際、一旦炭素粒子上ににリチウムを蓄積させることも可能となり、充放電特性が向上するものと考えられる。
【0031】
さらに、電解質に用いる主溶質として炭素を含有する塩を用いると、充放電効率が向上する理由として次のように考察している。従来、非水電解質電池に用いられてきたLiPF6 に代表される炭素を含有しない塩は、電池内部に微量に存在する水と反応しフッ化水素を発生する。このフッ化水素はシリコン等の表面処理に用いられ、シリコン表面に存在する被膜を浸食する働きがあると考えられる。従って、電池内部に存在するフッ化水素とシリコン表面の被膜が反応し、イオン伝導性の低い化合物として、その界面に残存し、負極の抵抗が増大することにより、充放電効率が低下すると考えられる。それに比べて、一般式(1)で表されるような炭素を含有する塩は、フッ化水素の発生がほとんどなく、よって負極の抵抗増大が抑制され、充放電効率が向上するものと考えられる。
【0032】
この様に本発明は、負極活物質の主構成物質が、リチウムを吸蔵、放出可能な共有結合結晶であり、その結晶表面に炭素粒子を担持したことを特徴とする非水電解質電池であり、該電解質の主構成溶質として炭素を含有する塩を用いることにより、金属リチウムに対し少なくとも0〜2Vの範囲でリチウムを吸蔵、放出することができ、また結晶が強固なことから、通常の合金にみられる充放電時の微細粉化や負極活物質の部分的な孤立化が抑えられ、このような塩を非水電解質として用いることにより、充放電効率に優れ、サイクル特性が良好な充放電特性に優れた非水電解質電池の負極として用いることができる。特にリチウムを吸蔵、放出可能な炭素粒子を担持させることにより、シリコンへのリチウムの吸蔵、放出をスムーズにし、充放電のレート特性が向上する。また、その容量が大きいことから高エネルギー密度が達成される。
【0033】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0034】
(本発明)
シリコン原子104 個にB原子1個の割合でドープしたp型半導体であるシリコン多結晶粉末(電子伝導度σは20℃で0.8Scm-1)と人造黒鉛(面間隔(d002)=3.37Å,c軸方向の結晶の大きさLc=360Å)を重量比85:10で混合し、窒素雰囲気下1500℃で一部焼結させた。得られた焼結粉末を乳鉢により粉砕し、炭素粒子を担持した共有結合結晶である負極活物質とした。この負極活物質とポリテトラフルオロエチレン粉末とを重量比95:5で混合し、トルエンを加えて十分混練した。これをローラープレスにより厚み0.1mmのシート状に成形した。次にこれを直径16mmの円形に打ち抜き、減圧下200℃で15時間乾燥して負極2を得た。負極2は負極集電体7の付いた負極缶5に圧着して用いた。正極1は、正極活物質としてLiCoO2 とアセチレンブラック及びポリテトラフルオロエチレン粉末とを重量比85:10:5で混合し、トルエンを加えて十分混練した。これをローラープレスにより厚み0.8mmのシート状に成形した。次にこれを直径16mmの円形に打ち抜き、減圧下200℃で15時間乾燥して正極1を得た。正極1は正極集電体6の付いた正極缶4に圧着して用いた。エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの体積比1:1の混合溶剤に(C2 5 SO2 2 NLiを1mol/l溶解した電解液を用い、セパレータ3にはポリプロピレン製微多孔膜を用いた。上記正極、負極、電解液及びセパレータを用いて直径20mm、厚さ1.6mmのコイン型リチウム電池を作製した。この電池を本発明電池(A)とする。
【0035】
(比較例1)
負極活物質として炭素粒子を担持していない、シリコン原子104 個にB原子1個の割合でドープしたp型半導体であるシリコン多結晶粉末(電子伝導度σは20℃で0.8Scm-1)を用いること以外は本発明と同様にして電池を作製した。得られた電池を比較電池(B)とする。
【0036】
(比較例2)
電解液の溶質として、(C2 5 SO2 2 NLiの代わりにLiBF4 を用い、それ以外は本発明と同様にして電池を作製した。得られた電池を比較電池(C)とする。
【0037】
このようにして作製した本発明電池(A)、比較電池(B)及び(C)を用いて充放電サイクル試験を行った。試験条件は、充電電流5mA、充電終止電圧4.1V、放電電流5mA、放電終止電圧3.0Vとした。これら作製した電池の充放電試験の結果を表1に示す。
【0038】
【表1】
Figure 0003824111
【0039】
表1から分かるように負極活物質に炭素粒子を担持させた共有結合結晶を用いた本発明電池(A)は、負極活物質に炭素粒子を担持させていない共有結合結晶を用いた比較電池(B)に比べて、充放電効率やサイクル特性といった電池特性が優れていることが分かる。また、電解液の溶質に炭素を含有する塩を用いた本発明電池(A)は、電解液の溶質にLiBF4 を用いた比較電池(C)に比べて充放電特性に優れており、10サイクル後の減少が小さかった。
【0040】
これらの結果についての理由は定かではないものの、シリコンの結晶表面で起こっている電子やイオンの授受が、電池特性に大きな影響を与えていることが考えられる。つまり、シリコン表面に炭素粒子を担持させることにより、粒子間の電子伝導性を向上させ、その炭素粒子自身がリチウムを吸蔵、放出することにより、シリコンへのリチウムの吸蔵、放出をスムーズにし、さらに電解質にフッ化水素を生成しにくい炭素を含有した塩を用いることで、負極活物質表面に生じるイオン伝導性の比較的低い化合物を作ることを抑制することで、充放電効率やサイクル特性の優れた、高出力で高エネルギー密度の非水電解質電池が得られたものと考えられる。また、シリコンは毒性が低く、安全性の上からも優れた材料であると考えられる。
【0041】
本発明の上記実施例においては、共有結合結晶としてシリコンを、電解液の溶質として(C2 5 SO2 2 NLiについて挙げたが、同様の効果が他の炭素を含有した塩についても確認された。なお、本発明は上記実施例に記載された活物質の出発原料、製造方法、正極、負極、電解質、セパレータ及び電池形状などに限定されるものではない。
【0042】
【発明の効果】
本発明は上述の如く構成されているので、優れた充放電効率、充放電サイクル特性、急速充放電特性を示し、高出力、高容量、高エネルギー密度で、安全性の高い非水電解質電池を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るコイン型非水電解質電池の断面図である。
【符号の説明】
1 正極
2 負極
3 セパレータ
4 正極缶
5 負極缶
6 正極集電体
7 負極集電体
8 絶縁パッキング

Claims (6)

  1. 真性半導体である共有結合結晶に、ドナー原子、アクセプター原子となり得る原子をドープしてなる、電気伝導度σが20℃で10 −5 Scm −1 以上の結晶の表面に、リチウムを吸蔵、放出可能な炭素粒子を担持した材料を負極活物質として用いたことを特徴とする非水電解質電池。
  2. 前記共有結合結晶が、Si,Ge,GaAs,GaP,InSb,GaP,SiC,BNのいずれかの共有結合結晶である請求項1記載の非水電解質電池。
  3. 前記ドナー原子、アクセプター原子となり得る原子が、P,Al,As,Sb,B,Ga,Inのいずれかである請求項1又は2記載の非水電解質電池。
  4. 前記共有結合結晶が、シリコンからなり、前記ドナー原子、アクセプター原子となり得る原子がホウ素である請求項1記載の非水電解質電池。
  5. 非水電解質に、少なくとも一般式(1)
    (R1Y1)(R2Y2)NLi ・・・・ 一般式(1)
    (一般式(1)中のR1、R2がC 2n+1 で表され、nは1から4までの数であり、R1=R2あるいはR1≠R2であり、さらにY1,Y2がCO、SO、SO のいずれかで表され、Y1=Y2あるいはY1≠Y2である。)で表される塩を用いたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の非水電解質電池。
  6. 前記非水電解質に用いる主溶質が、(C SO NLiである請求項1〜4のいずれかに記載の非水電解質電池。
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