JP4624500B2 - 非水電解質電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は非水電解質電池に関するもので、さらに詳しくはその負極活物質に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より非水電解質電池用の負極活物質として、リチウムを用いることが代表的であったが、充電時に生成するリチウムの樹枝状析出(デンドライト)のため、サイクル寿命の点で問題があった。また、このデンドライトはセパレーターを貫通し内部短絡を引き起こしたり、発火の原因ともなっている。
【0003】
また、上記のような充電時に生成するデンドライトを防止する目的で金属リチウムとの合金も用いられたが、充電量が大きくなると負極の微細粉化や、負極活物質の脱落などの問題があった。
【0004】
現在、長寿命化及び安全性のために負極に炭素材料を用いる電池などが注目を集め一部実用化されている。しかしながら、負極に用いられる炭素材料は、急速充電時に内部短絡や充電効率の低下が生じるという問題があった。これらの炭素材料は一般的に、炭素材料へのリチウムのドープ電位が0Vに近いため、急速充電を行う場合、電位が0V以下になり電極上にリチウムを析出することがあった。そのため、セルの内部短絡を引き起こしたり、放電効率が低下する原因となる。また、このような炭素材料は、サイクル寿命の点でかなりの改善がなされているが、密度が比較的小さいため、体積当たりの容量が低くなってしまうことになる。つまり、この炭素材料は高エネルギー密度という点からは未だ不十分である。その上、炭素上に被膜を形成する必要があるものについては初期充放電効率が低下し、この被膜形成に使われる電気量は不可逆であるため、その電気量分の容量低下につながる。
【0005】
一方、金属リチウムやリチウム合金または炭素材料以外の負極活物質として、ケイ素とリチウムを含有する複合酸化物Lix Si1-y My Oz (特開平7−230800号)や、非晶質カルコゲン化合物M1 M2 p M4 q (特開平7−288123号)を用いることが提唱されており、高容量、高エネルギー密度の点で改善されている。
【0006】
しかしながら、上記のような複合酸化物は、活物質自身の電気伝導度が低いため、急速充電及び負荷特性に問題があった。この問題を解決する目的で導電剤の添加が試みられているが、満足が得られる充放電特性を得るためには、密度の低い炭素材料を導電剤として十分な量を用いる必要があり、体積当たりの容量が低下することになる。
【0007】
また、複合酸化物等は材料自身が酸化物であるため、酸化物の還元を経てリチウムとの反応が進行すると考えられるため、特に初期での不可逆的な還元が起こり、初期充放電効率が低くなることがあった。従って、さらなる高容量、高エネルギー密度で、サイクル寿命が長く、安全な非水電解質電池用負極材料の開発が望まれている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
即ち、負極としてリチウム金属やリチウムと金属の合金を用いる場合は高電圧や、高容量、高エネルギー密度としての利点はあるものの、サイクル性や安全性の上で問題があり、炭素材料を用いる場合は、高電圧や、安全性の面で有利であるものの、高容量、高エネルギー密度の面で不十分である。さらに、酸化物負極を用いる場合は、高容量、高エネルギー密度の点は改善されているようであるが、高電圧、充放電効率特性、サイクル寿命や安全性の点では満足がいかないものである。
【0009】
このため、高電圧、高エネルギー密度で、優れた充放電サイクル特性を示し、安全性の高い二次電池を得るには、充放電時のリチウムの吸蔵放出の際に結晶系の変化や体積変化が少なく、できるだけリチウム電位に近い作動領域で、かつ可逆的にリチウムを吸蔵放出可能な導電性のある化合物が望まれている。
【0010】
本発明は、拡散法により、ドナー原子あるいはアクセプター原子となりうる原子を不純物としてシリコン原子104個に対して1個以上の割合でドープし、電気伝導度σが20℃で1Scm-1以上としたシリコン結晶を負極活物質の主構成物質として用いた非水電解質二次電池である。
【0011】
また、本発明は、前記シリコン結晶が、単結晶であることを特徴としている。
また、本発明は、前記シリコン結晶が、粉末状であることを特徴としている。
【0012】
先に、リチウムとケイ素の合金としてはBinary Alloy Phase Diagrams(p2465)にあるように、Li22Si5 までの組成で合金化することが知られている。また、特開平5−74463号では、負極にシリコンの単結晶を用いることで、サイクル特性が向上することを報告している。しかしながら、急速充放電用非水電解質電池の負極材としてシリコンにリチウムをドープさせようと試みると、ほとんどドープが起こらずにリチウムが析出してしまうことが分かった。そこで、本発明者らは、共有結合結晶に関して電子伝導性向上の検討を行った結果、リチウムの析出といった現象が起こらずにリチウムの吸蔵、放出がスムーズに進行することが分かった。さらに、この反応は約0.1Vという極めてリチウム電位に近い電位で進行し、理論容量に近い高容量が得られ、可逆性に優れることが分かった。
【0013】
つまり、リチウムとシリコンの合金は知られているものの、シリコン自身は元来共有結合結晶の真性半導体であり、そのままでは電子伝導性が低く、電池負極材料としての特性が悪かった。そのため、研究の対象になりにくい素材であったが、電池内部に組み込む材料としてシリコンにドナー原子、アクセプター原子となり得る原子をドープすることにより、電子伝導性が向上してリチウムの吸蔵放出が容易に起こることを見い出した。特に、シリコンを単結晶とすることで結晶の崩壊や微粉末化や脱落といった現象が見られず、サイクル特性が向上することが分かった。
【0014】
【発明の実施の形態】
ここで言う共有結合結晶としては、Si,Ge,GaAs,GaP,InSb,GaP,SiC,BN等が挙げられ、それらのうち本発明に用いるシリコンについては特に優れた充放電特性が得られ、資源的に豊富であり、毒性が低いため特に好ましい。また、その結晶系については、単結晶、多結晶、アモルファス等が挙げられ、それらのうち単結晶については特に優れた充放電特性が得られるので好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0015】
さらに、この共有結合結晶は、電子伝導性を向上させる目的で不純物を含むものとする。ここで言う不純物とは周期律表のすべての元素のうち、ドナー原子、アクセプター原子となり得るものであり、好ましくはP,Al,As,Sb,B,Ga,In等であるが、これらに限定されるものではない。
【0016】
シリコンの単結晶を得る方法としては、CZ法(チョクラルスキ法、または引き上げ法)、FZ(フローティング・ゾーン)法、煙法等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0017】
混在する不純物の濃度については、通常シリコン原子107 個から106 個にドナー原子あるいはアクセプター原子1個の割合であるが、好ましくは高濃度のドーピングが適しており、本発明においては、シリコン原子104 個にドナー原子あるいはアクセプター原子1個の割合、またはそれ以上の高濃度とする。この様な不純物をドープすること等により得られる電気伝導度σは20℃で、10-5Scm-1以上が好ましく、さらに好ましくは10-2Scm-1以上であり、本発明においては、最も好ましい1Scm-1以上である。
【0018】
本発明に用いる共有結合結晶は、平均粒子サイズ0.1〜500μmである粉体が望ましい。所定の形状の粉体を得るためには粉砕機や分級機が用いられる。例えば乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、ジェットミル、カウンタージェットミル、旋回気流型ジェットミルや篩等が用いられる。粉砕時には水、あるいはヘキサン等の有機溶剤を共存させた湿式粉砕を用いることもできる。分級方法としては特に限定はなく、篩や風力分級機などが乾式、湿式ともに必要に応じて用いられる。
【0019】
本発明に併せて用いることができる負極材料としては、リチウム金属、リチウム合金などや、リチウムイオンまたはリチウム金属を吸蔵放出できる焼成炭素質化合物やカルコゲン化合物、メチルリチウム等のリチウムを含有する有機化合物等が挙げられる。また、リチウム金属やリチウム合金、リチウムを含有する有機化合物を併用することによって、本発明に用いる共有結合結晶とリチウムの合金に、さらにリチウムを電池内部で挿入することも可能である。
【0020】
本発明の共有結合結晶とリチウムの合金を粉末として用いる場合、電極合剤として導電剤や結着剤やフィラー等を添加することができる。導電剤としては、電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば何でも良い。通常、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛、土状黒鉛など)、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウイスカー、炭素繊維や金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金など)粉、金属繊維、金属の蒸着、導電性セラミックス材料等の導電性材料を1種またはそれらの混合物として含ませることができる。これらの中で、黒鉛とアセチレンブラックとケッチェンブラックの併用が望ましい。その添加量は1〜50重量%が好ましく、特に2〜30重量%が好ましい。
【0021】
結着剤としては、通常、テトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、カルボキシメチルセルロース等といった熱可塑性樹脂、ゴム弾性を有するポリマー、多糖類等を1種または2種以上の混合物として用いることができる。また、多糖類の様にリチウムと反応する官能基を有する結着剤は、例えばメチル化するなどしてその官能基を失活させておくことが望ましい。その添加量としては、1〜50重量%が好ましく、特に2〜30重量%が好ましい。
【0022】
フィラーとしては、電池性能に悪影響を及ぼさない材料であれば何でも良い。通常、ポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン系ポリマー、アエロジル、ゼオライト、ガラス、炭素等が用いられる。フィラーの添加量は0〜30重量%が好ましい。
【0023】
電極活物質の集電体としては、構成された電池において悪影響を及ぼさない電子伝導体であれば何でもよい。例えば、正極集電体の材料としては、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス等の他に、接着性、導電性、耐酸化性向上の目的で、アルミニウムや銅等の表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀等で処理したものを用いることができる。負極集電体の材料としては、銅、ステンレス鋼、ニッケル、アルミニウム、チタン、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス、Al−Cd合金等の他に、接着性、導電性、耐酸化性向上の目的で、銅等の表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀等で処理したものを用いることができる。これらの材料については表面を酸化処理することも可能である。これらの形状については、フォイル状の他、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされた形状、ラス体、多孔質体、発砲体、繊維群の形成体等が用いられる。厚みは特に限定はないが、1〜500μmのものが用いられる。
【0024】
この様にして得られる共有結合結晶とリチウムの合金を負極活物質として用いることができる。一方、正極活物質としては、MnO2 ,MoO3 ,V2 O5 ,Lix CoO2 ,Lix NiO2 ,Lix Mn2 O4 ,等の金属酸化物や、TiS2 ,MoS2 ,NbSe3 等の金属カルコゲン化物、ポリアセン、ポリパラフェニレン、ポリピロール、ポリアニリン等のグラファイト層間化合物及び導電性高分子等のアルカリ金属イオンや、アニオンを吸放出可能な各種の物質を利用することができる。
【0025】
特に本発明の共有結合結晶とリチウムの合金を負極活物質として用いる場合、高エネルギー密度という観点からV2 O5 ,MnO2 ,Lix CoO2 ,Lix NiO2 ,Lix Mn2 O4 ,Lix Fe2 (SO4 )3 ,Lix FePO4 ,Li1+x Ti2 (PO4 )3 ,Li3+x Fe2 (PO4 )3 等の2〜4Vの電極電位を有するものが望ましい。特にLix CoO2 ,Lix NiO2 ,Lix Mn2 O4 等のリチウム含有遷移金属酸化物が好ましい。
【0026】
また、電解質としては、例えば有機電解液、高分子固体電解質、無機固体電解質、溶融塩等を用いることができ、この中でも有機電解液を用いることが好ましい。この有機電解液の有機溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン等のエステル類や、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等の置換テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、メトキシエトキシエタン等のエーテル類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、ギ酸メチル、酢酸メチル、N−メチルピロリドン、ジメチルフォルムアミド等が挙げられ、これらを単独又は混合溶媒として用いることができる。また支持電解質塩としては、LiClO4 、LiPF6 、LiBF4 、LiAsF6 、LiCF3 SO3 、LiN(CF3 SO2 )2 等が挙げられる。一方、高分子固体電解質としては、上記のような支持電解質塩をポリエチレンオキシドやその架橋体、ポリフォスファゼンやその架橋体等といったポリマーの中に溶かし込んだものを用いることができる。さらに、Li3 N,LiI等の無機固体電解質も使用可能である。つまり、リチウムイオン導伝性の非水電解質であればよい。
【0027】
セパレーターとしては、イオンの透過度が優れ、機械的強度のある絶縁性薄膜を用いることができる。耐有機溶剤性と疎水性からポリプロピレンやポリエチレンといったオレフィン系のポリマー、ガラス繊維、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等からつくられたシート、微孔膜、不織布が用いられる。セパレーターの孔径は、一般に電池に用いられる範囲のものであり、例えば0.01〜10μmである。また、その厚みについても同様で、一般に電池に用いられる範囲のものであり、例えば5〜300μmである。
【0028】
本発明の共有結合結晶を粉体として用いる場合、その粉体の少なくとも表面層部分を修飾することも可能である。例えば、金、銀、カーボン、ニッケル、銅等の電子伝導性のよい物質や、炭酸リチウム、ホウ素ガラス、固体電解質等のイオン伝導性の良い物質をメッキ、焼結、メカノフュージョン、蒸着等の技術を応用してコートすることが挙げられる。
【0029】
この様な優れた充放電特性が得られる理由としては、必ずしも明確ではないが以下のように考察される。すなわち、共有結合を有する結晶はリチウムとの合金が可能であり、その合金中のリチウムの存在比は大きいことが窺える。しかしながら共有結合を有する結晶は半導体であるものの真性半導体であり、その常温での電気伝導度は低く充放電時の分極が比較的大きい。これに対し、共有結合結晶中にドナー原子、アクセプター原子となりうる不純物がドープされると電子伝導性が向上して充放電時の分極が小さくなり、容易にリチウムイオンに電子を与えることにより、リチウム合金として吸蔵し、また吸蔵されたリチウム合金は容易に電子を放出してリチウムイオンとして放出される。つまり、共有結合結晶が電子を流すメカニズムを得ることによって結晶内部での電子の流れがスムーズになり、リチウムイオンの吸蔵放出を容易にすると推定される。また、シリコンやガリウムの結晶構造はダイヤモンドと同じ面心立方構造であるため、結晶の結合が非常に強固であり、リチウムの吸蔵放出に関わる膨脹収縮に追随し、活物質自身の微細化や脱落といったことが見られず、充放電の可逆性を向上させているものと考えられる。さらに、単結晶を用いると、結晶内部に粒界が存在しないため、リチウムの吸蔵放出時に結晶の膨脹収縮が生じても粒界にストレスがたまることが無く、その結果活物質自身の微粉化や脱落といったことが見られず、充放電の可逆性が向上しているものと考えられる。
【0030】
本発明の共有結合結晶を主構成物質とする負極活物質は、非水電解質中において金属リチウムに対し少なくとも0〜2Vの範囲でリチウムイオンを吸蔵放出することができる。また、共有結合結晶が強固なことから、通常の合金に見られる充放電時の微細粉化や負極活物質の部分的な電気的孤立化が抑えられる。また、あらかじめ共有結合結晶にドナー原子、アクセプター原子となりうる不純物がドープされると電子伝導性が向上し、共有結合結晶とリチウムの合金化をスムーズにする。また、このような共有結合結晶を粉末状として取り扱うことにより、集電体上にコーティングすることが可能となり、円筒、角形、扁平、コイン、フィルム状といった種々の電池形状の設計が可能となる。また、導電剤と併用することも可能となり、充放電のレート特性も向上する。さらに、負極電位がリチウム電位に近く低いため、電池としての電圧が高電圧となり、その上、リチウムを吸蔵できる量が大きいことから、高エネルギー密度が達成される。特に共有結合結晶として単結晶を用いると、結晶内部に粒界が存在しないためにリチウムの吸蔵放出時に結晶の膨脹収縮が生じても、粒界にストレスがたまることが無く、その結果活物質自身の微細化や脱落といったことが見られず充放電の可逆性を向上させているものと考えられる。その上、負極材料としてシリコンを用いることは、シリコン自身の毒性が低く、資源的に豊富な材料であるため特に優れている。このような負極活物質を電極材料として用いることにより、高電圧、高エネルギー密度で、優れた充放電サイクル特性を示し、安全性の高い非水電解質電池を得ることができる。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例について説明する。
(実施例1)
拡散法により、シリコン原子104 個にP原子1個の割合でドープしたn型半導体であるシリコン単結晶を(a)、シリコン原子104 個にP原子1個の割合でドープしたn型半導体であるシリコン多結晶を(b)、シリコン原子104 個にB原子1個の割合でドープしたp型半導体であるシリコン単結晶を(c)、シリコン原子104 個にB原子1個の割合でドープしたp型半導体であるシリコン多結晶を(d)とする。この固有抵抗は20℃で、n型半導体は33Scm-1、p型半導体は20Scm-1であった。それぞれの共有結合性結晶について乳鉢で粉砕し、これらの負極活物質を用いて次のようにしてコイン型リチウム二次電池を試作した。負極活物質とアセチレンブラック及びポリテトラフルオロエチレン粉末とを重量比85:10:5で混合し、トルエンを加えて十分混練した。これをローラープレスにより厚み0.3mmのシート状に成形した。次にこれを直径16mmの円形に打ち抜き、減圧下200℃で15時間熱処理して負極2を得た。負極2は負極集電体7の付いた負極缶5に圧着して用いた。
【0032】
正極1は、正極活物質としてLiCoO2 とアセチレンブラック及びポリテトラフルオロエチレン粉末とを重量比85:10:5で混合し、トルエンを加えて十分混練したものを用いた。これをローラープレスにより厚み0.8mmのシート状に成形した。次にこれを直径16mmの円形に打ち抜き、減圧下200℃で15時間熱処理して正極1を得た。正極1は正極集電体6の付いた正極缶4に圧着して用いた。 エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの体積比1:1の混合溶剤にLiPF6 を1mol/リットルの濃度に溶解した電解液を用い、セパレータ3にはポリプロピレン製微多孔膜を用いた。上記正極、負極、電解液及びセパレータを用いて直径20mm、厚さ1.6mmのコイン型リチウム電池を作製した。これら共有結合性結晶(a)〜(d)を用いた電池をそれぞれ(A)〜(D)とする。
【0033】
(比較例1)
不純物を含まない共有結合性結晶としてガリウム・ヒ素の単結晶(e)を用いた。この固有抵抗は20℃で10-8Scm-1であった。これ以外は上記実施例1と同様にしてコイン型リチウム電池を作製した。得られた電池を(E)とする。
【0034】
(比較例2)
共有結合性結晶の代わりにアルミニウム粉末を用い、それ以外は上記実施例1と同様にしてコイン型リチウム電池を作製した。得られた電池を(F)とする。
この様に作製したコイン型リチウム電池の容量試験を行った。共有結合性結晶を用いた(A)〜(E)と、金属結晶を用いた(F)についてはリチウムの吸蔵放出が確認されたが、20℃で10-5Scm-1より低い共有結合結晶を用いたセル(D)についてはほとんどリチウムの放出ができなかった。このときの初期の容量と10サイクル目の容量を表1に示した。20℃で10-5Scm-1より低い共有結合結晶を用いたセル(E)については抵抗が大きく、シリコンへのリチウムの吸蔵放出が起こり難かったことが伺える。また、金属結晶を用いた(F)については、この結果から明らかなように充放電の可逆性に乏しいことが伺える。おそらく金属結晶とリチウムの合金化の際に生じる微粉化により電気的に孤立化した活物質が増えるためであろうと考えられる。本発明である不純物をドープし電子伝導性が向上した共有結合性結晶を用いた負極については、充放電サイクル性に優れ、高容量であることが分かる。さらに同じ不純物をドープし電子伝導性が向上した共有結合性結晶(A)〜(D)において、単結晶を用いた(A),(C)においては多結晶を用いた(B),(D)よりサイクル特性が向上していることが伺える。即ち、単結晶は結晶内部に粒界が存在しないため、リチウムの吸蔵、放出時に結晶の膨張、収縮が生じても粒界にストレスがたまることなく、活物質自身の微粉化や脱落といったことが抑制できたためであり、その結果としてサイクル特性が向上したと考えられる。
【0035】
【表1】
【0036】
実施例においては、電気伝導度σが20℃で10-5Scm-1以上の共有結合結晶としてシリコンを挙げたが、同様の効果が他の共有結合結晶についても確認された。なお、本発明は上記実施例に記載された活物質の出発原料、製造方法、正極、負極、電解質、セパレータ及び電池形状などに限定されるものではない。
【0037】
【発明の効果】
本発明は上述の如く構成されているので、高電圧、高容量、高エネルギー密度で、優れた充放電サイクル特性を示し、安全性の高い非水電解質電池を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例2に係るコイン型非水電解質電池の断面図である。
【符号の説明】
1 負極
2 正極
3 セパレータ
4 負極缶
5 正極缶
6 負極集電体
7 正極集電体
8 絶縁パッキング
Claims (3)
- 拡散法により、ドナー原子あるいはアクセプター原子となりうる原子を不純物としてシリコン原子104個に対して1個以上の割合でドープし、電気伝導度σが20℃で1Scm-1以上としたシリコン結晶を負極活物質の主構成物質として用いた非水電解質二次電池。
- 前記シリコン結晶が、単結晶である請求項1に記載の非水電解質二次電池。
- 前記シリコン結晶が、粉末状である請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池。
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