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JP2022142437A - ポリオール組成物の製造方法、及び難燃性硬質ポリウレタンフォームの製造方法 - Google Patents

ポリオール組成物の製造方法、及び難燃性硬質ポリウレタンフォームの製造方法 Download PDF

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JP2022142437A JP2021042599A JP2021042599A JP2022142437A JP 2022142437 A JP2022142437 A JP 2022142437A JP 2021042599 A JP2021042599 A JP 2021042599A JP 2021042599 A JP2021042599 A JP 2021042599A JP 2022142437 A JP2022142437 A JP 2022142437A
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達也 奥谷
Tatsuya Okuya
貴臣 江原
Takaomi Ebara
幸雄 久保田
Yukio Kubota
昭 沼澤
Akira Numazawa
勇也 平本
Yuya Hiramoto
優貴 新宅
Yuki Shintaku
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Kansai Paint Co Ltd
Nisshinbo Chemical Inc
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Kansai Paint Co Ltd
Nisshinbo Chemical Inc
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Abstract

【課題】粉体難燃剤を含むポリオール組成物に関し、保管時又は輸送時には、ポリオール組成物中の粉体の沈降及び凝集が抑制され、難燃性硬質ポリウレタンフォームの施工時には、取り扱いやすい粘度で、撹拌性や施工性が良好となり、優れた難燃性を有する硬質ポリウレタンフォームを得ることができるポリオール組成物の製造方法、及び前記ポリオール組成物を用いた難燃性硬質ポリウレタンフォームの製造方法を提供する。【解決手段】難燃性硬質ポリウレタンフォームの製造に用いられるポリオール組成物の製造方法において、ポリオール化合物、粉体難燃剤及び沈降防止剤を含む予備組成物を調製して保管する工程1と、保管された予備組成物に減粘剤を添加して、ポリオール組成物を得る工程2とを含む、ポリオール組成物の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、難燃性硬質ポリウレタンフォームの製造に用いられるポリオール組成物の製造方法、及び、前記ポリオール組成物を用いた難燃性硬質ポリウレタンフォームの製造方法に関する。
硬質ポリウレタンフォームの断熱材は、優れた断熱性能や簡便な施工性等の観点から、建築物用途として幅広く使用されているが、建築施工や改修工事、解体工事中に、溶接溶断作業における火花を原因とした断熱材の延焼による火災事故も、しばしば発生している。
このような火災事故を低減させるために、硬質ポリウレタンフォーム自体の難燃化が進められており、硬質ポリウレタンフォームの原料液に難燃剤を添加して、難燃性を向上させることが検討されている。
難燃剤としては、粉体難燃剤である赤リンやリン酸塩、ホスフィン酸塩等が知られている。これらの粉体難燃剤は、難燃性硬質ポリウレタンフォームの原料液中で沈降や凝集を生じやすいため、保管安定性や現場での施工性等の観点から、沈降防止剤が併用される。
例えば、特許文献1に、赤リンの沈降防止剤として酸化金属微粒子を配合することが記載されている。また、特許文献2には、難燃性硬質ポリウレタンフォームの原料液であるポリオール組成物のチクソ性を高めて、保管安定性を向上させるために、微粉シリカを添加することが記載されている。
特開2020-63396号公報 特開2017‐78167号公報
しかしながら、ポリオール組成物に、上記のような沈降防止剤を添加するのみでは、粉体難燃剤等の固体成分(粉体)の凝集抑制効果は必ずしも十分ではなく、硬質ポリウレタンフォームの施工時に、難燃性硬質ポリウレタンフォームの原料液中の粉体を再分散させるための撹拌等の作業負担が大きいという課題を有していた。
また、スプレー発泡等による現場施工では、原料液の圧送能力が低い小型設備が用いられる場合もあり、原料液のスムーズな供給のため、原料液が低粘度であることが求められる。
しかしながら、難燃性硬質ポリウレタンフォームの原料液であるポリオール組成物の粘度が低いと、保管時の静置状態において、また、施工現場への輸送時の振動により、ポリオール組成物中の粉体の沈降や凝集が生じやすくなる。
したがって、ポリオール組成物は、保管時又は輸送時には、ポリオール組成物中の粉体の沈降及び凝集が抑制され、難燃性硬質ポリウレタンフォームの施工時には、取り扱いやすい粘度で、撹拌性や施工性が良好であることが求められる。
本発明は、上記技術的課題を解決するためになされたものであり、粉体難燃剤を含むポリオール組成物に関し、保管時又は輸送時には、ポリオール組成物中の粉体の沈降及び凝集が抑制され、難燃性硬質ポリウレタンフォームの施工時には、取り扱いやすい粘度で、撹拌性や施工性が良好となり、優れた難燃性を有する硬質ポリウレタンフォームを得ることができるポリオール組成物の製造方法、及び、前記ポリオール組成物を用いた難燃性硬質ポリウレタンフォームの製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、粉体難燃剤を含むポリオール組成物において、難燃性硬質ポリウレタンフォームの施工時における減粘剤の適用により、保管時又は輸送時における粉体の沈降及び凝集の抑制と、施工時における難燃性硬質ポリウレタンフォームの良好な撹拌性や施工性、かつ、優れた難燃性を満たすことができることを見出したことに基づく。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[9]を提供する。
[1]難燃性硬質ポリウレタンフォームの製造に用いられるポリオール組成物の製造方法において、ポリオール化合物、粉体難燃剤及び沈降防止剤を含む予備組成物を調製して保管する工程1と、保管された予備組成物に減粘剤を添加して、ポリオール組成物を得る工程2とを含む、ポリオール組成物の製造方法。
[2]前記粉体難燃剤は、リン酸塩及びホスフィン酸塩から選ばれる1種以上を含む、上記[1]に記載のポリオール組成物の製造方法。
[3]前記減粘剤は、リン酸基含有ポリマー型減粘剤である、上記[1]又は[2]に記載のポリオール組成物の製造方法。
[4]前記沈降防止剤は、有機ベントナイト、脂肪族アマイドワックス及び水添ひまし油ワックスから選ばれる1種以上を含む、上記[1]~[3]のいずれか1項に記載のポリオール組成物の製造方法。
[5]前記ポリオール化合物は、マンニッヒ系ポリオールを含む、上記[1]~[4]のいずれか1項に記載のポリオール組成物の製造方法。
[6]前記予備組成物が分散剤を含む、上記[1]~[5]のいずれか1項に記載のポリオール組成物の製造方法。
[7]前記予備組成物が、発泡剤、触媒及び整泡剤から選ばれる1種以上を含む、上記[1]~[6]のいずれか1項に記載のポリオール組成物の製造方法。
[8]前記発泡剤が、ハイドロフルオロオレフィン及びハイドロクロロフルオロオレフィンから選ばれる1種以上を含む、上記[7]に記載のポリオール組成物の製造方法。
[9]上記[1]~[8]のいずれか1項に記載のポリオール組成物の製造方法により製造されたポリオール組成物と、ポリイソシアネート化合物とを、難燃性硬質ポリウレタンフォームを製造する現場で施工直前に混合して、発泡及び硬化させる工程を含む、難燃性硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
本発明によれば、保管時又は輸送時には、ポリオール組成物中の粉体の沈降及び凝集が抑制され、難燃性硬質ポリウレタンフォームの施工時には、取り扱いやすい粘度で、撹拌性や施工性が良好となり、優れた難燃性を有する硬質ポリウレタンフォームを得られるポリオール組成物及び難燃性硬質ポリウレタンフォームを製造することができる。
以下、本発明のポリオール組成物の製造方法、及び難燃性硬質ポリウレタンフォームの製造方法について詳細に説明する。
[ポリオール組成物の製造方法]
本発明のポリオール組成物の製造方法は、難燃性硬質ポリウレタンフォームの製造に用いられるポリオール組成物の製造方法において、ポリオール化合物、粉体難燃剤及び沈降防止剤を含む予備組成物を調製して保管する工程1と、保管された予備組成物に減粘剤を添加して、ポリオール組成物を得る工程2とを含む。
このように、減粘剤を後添加してポリオール組成物を製造することにより、保管時又は輸送時には、ポリオール組成物の予備組成物中の粉体の沈降及び凝集を抑制することができ、かつ、難燃性硬質ポリウレタンフォームの施工時には、取り扱いやすい粘度で、撹拌性や施工性が良好となり、優れた難燃性を有する硬質ポリウレタンフォームを得ることができる。
〔工程1〕
工程1では、ポリオール化合物、粉体難燃剤及び沈降防止剤を含む予備組成物を調製して保管する。
沈降防止剤により増粘された予備組成物は、粉体の沈降及び凝集が抑制された状態を保持しやすい。このため、ポリオール組成物を予備組成物の状態で保管することにより、保管時の静置状態において、また、施工現場への輸送時の振動によって、粉体の沈降及び凝集が生じることを、抑制することができる。
<ポリオール化合物>
ポリオール化合物は、難燃性硬質ポリウレタンフォームの原料化合物の主成分である。ポリオール化合物は、水酸基を2個以上有するアルコール化合物であり、ポリイソシアネート化合物との重付加反応により、ポリウレタン樹脂を生成する。
難燃性硬質ポリウレタンフォームの製造に用いられるポリオール化合物としては、優れた難燃性の観点から、好ましくは、主として、ポリエステルポリオールを含み、より好ましくは、芳香族ポリエステルポリオールを含む。
ポリエステルポリオールは、一般的なポリウレタンフォーム原料として用いられるポリプロピレングリコール等と比較して、より優れた難燃性を付与し得る。
前記ポリエステルポリオールは、優れた難燃性を有する難燃性硬質ポリウレタンフォームを得る観点から、水酸基価が、好ましくは100~900mgKOH/g、より好ましくは150~800mgKOH/g、さらに好ましくは180~700mgKOH/gである。
また、前記ポリオール化合物は、より好ましくは、マンニッヒ系ポリオールを含み、さらに好ましくは、芳香族ポリエステルポリオール及びマンニッヒ系ポリオールを含む。
予備組成物中及びポリオール組成物中の粉体の凝集の抑制の観点から、ポリオール組成物は、後述する分散剤を含んでいてもよく、また、分散剤とともに、ポリオール化合物としてマンニッヒ系ポリオールも含むことにより、さらに効果的に粉体の凝集を抑制することができる。
前記ポリオール化合物は、ポリエステルポリオール及びマンニッヒ系ポリオール以外に、例えば、マンニッヒ系ポリオール以外の芳香族ポリエーテルポリオール等を含んでいてもよい。また、優れた難燃性を有する硬質ポリウレタンフォームを得る観点から、脂肪族ポリオールは、できる限り含まないことが好ましい。ポリオール化合物100質量部中の芳香族ポリオールの合計含有量が、好ましくは90質量部以上、より好ましくは95質量部以上、さらに好ましくは100質量部である。
予備組成物中のポリオール化合物の合計含有量は、優れた難燃性及び適度な硬度を有する難燃性硬質ポリウレタンフォームを得る観点から、ポリオール組成物100質量部に対して、好ましくは10~60質量部、より好ましくは20~55質量部、さらに好ましくは25~50質量部である。
(ポリエステルポリオール)
ポリエステルポリオールとしては、優れた難燃性及び適度な硬度を有する難燃性硬質ポリウレタンフォームを得る観点から、好ましくは芳香族ポリエステルポリオールであり、例えば、芳香族多価カルボン酸と多価アルコールとの重縮合により得られる化合物等が挙げられる。芳香族ポリエステルポリオールは、1種単独でも、2種以上が併用されてもよい。
芳香族多価カルボン酸の具体例としては、フタル酸、テレフタル酸、オルトフタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、ヘミメリット酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
多価アルコールの具体例としては、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ビスフェノールA等が挙げられる。
また、芳香族ポリエステルポリオールとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリアルキレンテレフタレートを、多価アルコールでエステル交換したもの等も挙げられる。
前記ポリオール化合物は、優れた難燃性を有する硬質ポリウレタンフォームを得る観点から、芳香族ポリエステルポリオールの占める割合が最も多いことが好ましく、ポリオール化合物中の芳香族ポリエステルポリオールの含有量は、ポリオール化合物100質量部中、好ましくは50質量部以上、より好ましくは55~98質量部、さらに好ましくは60~95質量部である。
(マンニッヒ系ポリオール)
本発明におけるマンニッヒ系ポリオールとは、フェノール化合物、アルデヒド化合物及びアミン化合物のマンニッヒ反応により得られる生成物(マンニッヒ縮合物)である芳香族ポリオールに、アルキレンオキサイドを付加重合させた芳香族ポリエーテルポリオールを言う。マンニッヒ系ポリオールは、1種単独でも、2種以上が併用されてもよい。
フェノール化合物としては、例えば、フェノール;クレゾール、ノニルフェノール等のアルキルフェノール等が一般的に用いられる。
アルデヒド化合物としては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等が一般的に用いられる。
アミン化合物としては、例えば、脂肪族第一級又は第二級のモノアミン類が挙げられ、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、1-アミノ-2-プロパノール等のアルカノールアミン;メチルアミン、ジエチルアミン等のアルキルアミン等が一般的に用いられる。
アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等が一般的に用いられる。
マンニッヒ系ポリオールは、具体的には、国際公開第2010/147091号等に記載されている製造方法により製造することができる。
前記ポリオール化合物中にマンニッヒ系ポリオールが含まれる場合、その含有量は、予備組成物及びポリオール組成物中の粉体の凝集の抑制、また、優れた難燃性を有する硬質ポリウレタンフォームを得る観点から、ポリオール化合物100質量部に対して、好ましくは1~25質量部、より好ましくは2~20質量部、さらに好ましくは3~15質量部である。
また、同様の観点から、芳香族系ポリエステルポリオールの含有量に対するマンニッヒ系ポリオールの含有量の比率が、好ましくは0.02~1.00、より好ましくは0.05~0.80、さらに好ましくは0.08~0.50である。
<粉体難燃剤>
予備組成物に用いられる粉体難燃剤は、難燃性硬質ポリウレタンフォームにおいて公知の粉体難燃剤でよい。
ここで、粉体難燃剤とは、15℃、1気圧で固体であり、かつ、ポリオール組成物中で溶解せずに粉体(固体)として存在する難燃剤を言う。
粉体難燃剤としては、例えば、赤リン、リン酸塩、ホスフィン酸塩等が挙げられる。これらのうち、取り扱い時の安全性や、沈降及び凝集の抑制のしやすさ、硬質ポリウレタンフォームへの優れた難燃性の付与等の観点から、リン酸塩及びホスフィン酸塩から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。粉体難燃剤は、1種単独でも、2種以上を併用してもよい。
リン酸塩は、無機リン酸塩であっても、有機リン酸塩であってもよく、例えば、周期表第1族~第14族の金属、アンモニア、脂肪族アミン及び芳香族アミンから選ばれる1種以上の金属又は化合物の、各種リン酸塩が挙げられる。
各種リン酸としては、例えば、オルトリン酸、ピロリン酸、ポリリン酸等が挙げられ、また、アルキルリン酸等の有機リン酸であってもよい。
金属の具体例としては、リチウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、鉄、アルミニウム、チタン、亜鉛等が挙げられる。脂肪族アミンの具体例としては、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、ピペラジン等が挙げられる。芳香族アミンの具体例としては、ピリジン、トリアジン、メラミン等が挙げられる。
ホスフィン酸塩は、無機ホスフィン酸塩であっても、有機ホスフィン酸塩であってもよく、例えば、周期表第1族~第14族の金属、アンモニア、脂肪族アミン及び芳香族アミンから選ばれる1種以上の金属又は化合物の、各種ホスフィン酸塩が挙げられる。
各種ホスフィン酸としては、ホスフィン酸の他、アルキルホスフィン酸等の有機ホスフィン酸であってもよい。
金属、脂肪族アミン及び芳香族アミンの具体例としては、上述したリン酸塩についてのものと同様のものが挙げられる。
リン酸塩及びホスフィン酸塩は、例えば、シランカップリング剤処理、メラミン被覆処理等の表面処理が施されていてもよい。
前記粉体難燃剤中には、さらなる難燃性向上の観点から、リン酸塩及びホスフィン酸塩の他に、難燃助剤として作用し得る成分が含まれていてもよく、例えば、フタル酸メラミン、シアヌル酸メラミン、ベンゾグアナミン等の窒素含有化合物が含まれていることが好ましい。
前記粉体難燃剤中に窒素含有化合物が含まれる場合、その含有量は、リン酸塩及びホスフィン酸塩の合計100質量部に対して、好ましくは200質量部以下、より好ましくは100質量部以下、さらに好ましくは50質量部以下である。
前記粉体難燃剤は、優れた難燃性を有する硬質ポリウレタンフォームを得る観点から、ポリオール組成物100質量部に対して、好ましくは10~55質量部、より好ましくは15~50質量部、さらに好ましくは20~40質量部である。
<液体難燃剤>
予備組成物は、粉体難燃剤に加えて、好ましくは液体難燃剤を含む。
ここで、液体難燃剤は、15℃、1気圧で、液体である、又は、ポリオール組成物に溶解する難燃剤を言う。
前記液体難燃剤としては、硬質ポリウレタンフォームの加熱や燃焼時の初期の炭化抑制効果の観点から、好ましくはリン酸エステルを含む。
リン酸エステルは、モノリン酸エステルであっても、縮合リン酸エステルであってもよい。
モノリン酸エステルとしては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、また、含ハロゲンリン酸エステルであるトリス(β-クロロプロピル)ホスフェート等が挙げられる。
縮合リン酸エステルとしては、例えば、トリアルキルポリホスフェート、レゾルシノールビスフェニルホスフェート、ビスフェノールAビスジフェニルホスフェート等が挙げられる。
予備組成物が液体難燃剤を含む場合、その含有量は、硬質ポリウレタンフォームの加熱や燃焼時の初期の炭化抑制効果の観点から、ポリオール組成物100質量部に対して、好ましくは1~50質量部、より好ましくは2~45質量部、さらに好ましくは5~40質量部である。
<沈降防止剤>
沈降防止剤は、予備組成物及びポリオール組成物中の粉体難燃剤等の比重が大きい粉体粒子の沈降を抑制する役割を有し、揺変剤とも呼ばれる。
沈降防止剤の作用機構の詳細は明らかではないが、予備組成物中で、水素結合を形成したり、粉体粒子の吸着基を介して架橋構造を形成したり、ポリマー鎖が絡み合うこと等により、予備組成物を増粘させて、粉体の沈降を抑制する作用を奏すると推測される。水素結合や架橋構造、また、ポリマー鎖の絡み合いは、保管時の静置状態や輸送時の振動下では、増粘作用を保持するが、撹拌等の強いシェアがかかると解放されるものと考えられる。
なお、予備組成物の粘度は、TV型粘度計で回転速度6rpm、25℃での測定値が、好ましくは3000mPa・s以上、より好ましくは3500mPa・s以上、さらに好ましくは4000mPa・s以上である。また、予備組成物の粘度の上限は、撹拌性の観点から、好ましくは10000mPa・s以下である。
本発明で用いられる沈降防止剤としては、好ましくは、有機ベントナイト、脂肪族アマイドワックス及び水添ひまし油ワックスから選ばれる1種以上を含む。これらは、1種単独でも、2種以上を併用してもよい。
これらの沈降防止剤は、ポリオール組成物の予備組成物中の含有量が少量でも、粉体の沈降を効果的に抑制することができるため好適である。
予備組成物中の沈降防止剤の含有量は、ポリオール組成物100質量部に対して、好ましくは0.01~5.00質量部、より好ましくは0.02~2.00質量部、さらに好ましくは0.05~1.00質量部である。
なお、赤リンの沈降防止剤として、カーボンブラックやシリカ粉末等が知られているが、これらは、リン酸塩及びホスフィン酸塩から選ばれる1種以上を含む粉体難燃剤を用いる場合は、増粘作用を示すものの、粉体の凝集が生じやすくなる傾向がある。このため、前記粉体難燃剤と併用する沈降防止剤としては、有機ベントナイト、脂肪族アマイドワックス及び水添ひまし油ワックスから選ばれる1種以上が好ましい。
有機ベントナイトは、粘土鉱物であるモンモリロナイトの結晶層間の陽イオンを第四級アンモニウムイオンとイオン交換させて変性した有機変性粘土である。有機ベントナイトは、親水性が低く、水には分散しにくい一方で、ポリオール化合物との親和性が高く、予備組成物中の粉体に対して、優れた沈降抑制作用を奏する。
脂肪酸アマイドワックスは、分子内に長鎖脂肪酸基とアミド基を持ち、熱にも化学的にも安定である。水添ひまし油ワックスは、精製ひまし油に水素添加して得られる飽和脂肪酸のトリグリセリドである。水添ひまし油ワックス及び脂肪酸アマイドワックスは、ワックス系の沈降防止剤であり、いずれも、ポリオール組成物の予備組成物中の粉体に対して、優れた沈降抑制作用を奏する。
<分散剤>
予備組成物は、好ましくは分散剤を含む。
分散剤は、予備組成物中及びポリオール組成物中の粉体粒子が凝集して、固結したり、ゲル化したりすることを抑制する役割を有する。
分散剤を沈降防止剤と併用することにより、予備組成物中の粉体の沈降や凝集を効果的に抑制することができる。
本発明における分散剤は、予備組成物中で、粉体粒子の表面に吸着し、粉体粒子間に立体障害による距離を生じさせることにより、粉体の凝集を抑制する作用を奏するものである。分散剤を用いることにより、予備組成物中の粉体が一旦沈降した場合であっても、該予備組成物を再撹拌等することで、粉体を分散させやすくすることができる。
予備組成物が分散剤を含む場合、その含有量は、沈降防止剤よりも少ない量でよく、ポリオール組成物100質量部に対して、好ましくは0.05~5.00質量部、より好ましくは0.10~2.00質量部、さらに好ましくは0.15~1.00質量部である。
前記分散剤としては、ポリエステルやポリエーテル、ポリカルボン酸等を主鎖とするポリマー型分散剤であり、粉体難燃剤に吸着しやすい基を有するもの(ただし、リン酸基を除く。)が好ましく、例えば、有機アンモニウム塩のポリマー型分散剤が挙げられる。分散剤は、1種単独でも、2種以上を併用してもよい。
<調製・保管>
予備組成物の調製操作は、特に限定されるものではなく、予備組成物に含まれる各成分を配合して、例えば、ホモディスパー、遊星式撹拌機等の公知の撹拌装置を用いて撹拌混合して、粉体を分散させることにより、予備組成物を得ることができる。
得られた予備組成物の保管は、通常、予備組成物を密封容器内に入れて、常温、常圧下で、静置した状態とする。
保管及び施工現場への輸送等を含めたポリオール組成物の使用までの期間、すなわち、予備組成物の状態での保持期間は、通常、約20日以内であり、好ましくは1~10日間である。
〔工程2〕
工程2では、保管された予備組成物に減粘剤を添加して、ポリオール組成物を得る。
保管された予備組成物は、高粘度であり、難燃性硬質ポリウレタンフォームの施工現場で、そのままの状態で、ポリイソシアネート化合物と混合して、均一な状態の硬質ポリウレタンフォームの原料液を得ることは難しい。
このため、本発明では、予備組成物に減粘剤を添加してポリオール組成物を調製し、難燃性硬質ポリウレタンフォームの製造に供する。
このような工程を経て、ポリオール組成物を製造することにより、ポリイソシアネート化合物との混合液の撹拌性が良好となり、施工性及び難燃性に優れた難燃性硬質ポリウレタンフォームを得ることができる。
なお、保管された予備組成物は、保管場所でそのまま使用されてもよく、また、保管後に強制撹拌等の強いシェアを受けても受けなくてもよく、難燃性硬質ポリウレタンフォームの施工現場に輸送された後に、使用されてもよい。
<減粘剤>
減粘剤は、予備組成物の粘度を低減し、ポリオール組成物及び難燃性硬質ポリウレタンフォームの原料液の撹拌性を良好にする役割を有する。
減粘剤は、ポリオール組成物中で、粉体粒子の表面に吸着し、粉体粒子間に電気的な反発による距離を生じさせることにより、粉体粒子同士の相互作用を弱めることにより、ポリオール組成物の粘度を低減させることができるものと推測される。
ポリオール組成物中の減粘剤の含有量は、分散剤と同等程度でよく、ポリオール組成物100質量部中、好ましくは0.05~5.00質量部、より好ましくは0.10~2.00質量部、さらに好ましくは0.15~1.00質量部である。
前記減粘剤としては、ポリエステルやポリエーテル、ポリカルボン酸等を主鎖とするポリマー型減粘剤であり、粉体難燃剤に吸着しやすい基を有し、ポリオール組成物中で上述したような粉体粒子間での電気的な反発を生じさせやすいものが好ましく、例えば、リン酸基を有するものが好適に用いられる。リン酸基は、沈降防止剤に対しても吸着しやすく、沈降防止剤の増粘作用を阻害することによって、ポリオール組成物の良好な撹拌性が得られるような減粘作用を奏するものと考えられる。
したがって、前記減粘剤としては、リン酸基含有ポリマー型減粘剤が好ましく、例えば、リン酸基含有塩ポリマー型減粘剤、リン酸エステルポリマー型減粘剤、リン酸エステル塩ポリマー型減粘剤等が好適に用いられる。減粘剤は、1種単独でも、2種以上を併用してもよい。
<その他の成分>
難燃性硬質ポリウレタンフォームの製造原料としては、主原料である、ポリオール化合物、難燃剤及びポリイソシアネート化合物以外に、発泡剤、触媒、整泡剤等を配合することが好ましい。これらの成分は、難燃性硬質ポリウレタンフォームの製造時に、ポリオール組成物とは別に添加されてもよいが、難燃性硬質ポリウレタンフォームの施工時の作業負担を軽減する観点から、予備組成物中又はポリオール組成物中に含まれていることが好ましく、より好ましくは、施工時の作業負担の一層の軽減の観点から、予備組成物中に含まれる。すなわち、工程1における予備組成物調製時に、発泡剤、触媒及び整泡剤から選ばれる1種以上を添加することが好ましい。
さらに、予備組成物中又はポリオール組成物中には、必要に応じて、本発明の効果を妨げない範囲内で、溶剤や、フィラー、着色剤、酸化防止剤等の添加剤等が含まれていてもよい。
(発泡剤)
発泡剤は、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とが反応してウレタン結合を形成する樹脂化反応の発熱により気体を発生させ、ポリウレタン樹脂を発泡させる作用を有する。
発泡剤としては、例えば、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)、ハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、水等が挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらのうち、HFOやHCFOは、地球温暖化防止等の観点から、HFCに代わり、今後、需要の増加が見込まれる発泡剤であり、これらを用いることが好ましい。具体的には、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(トランス-HFO-1234ze)、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(HFO-1336mzz)、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロぺン(HCFO-1233zd)等が挙げられる。
ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基は、水と反応してウレア結合を形成し、炭酸ガスを発生する泡化反応も生じる。水は、硬質ポリウレタンフォームの生成反応の初期段階における発泡の誘因となり、また、製造される硬質ポリウレタンフォームの密度を低減させる観点から、発泡剤として水が含まれていてもよい。
発泡剤の添加量は、適度にポリウレタン樹脂を発泡させる観点から、ポリイソシアネート化合物100質量部に対して、好ましくは5.0~40.0質量部、より好ましくは10.0~30.0質量部、さらに好ましくは12.0~25.0質量部である。
なお、発泡剤として水を含む場合、ポリオール化合物の加水分解を抑制する観点から、水の含有量は、水以外の発泡剤よりも少ないことが好ましく、水以外の発泡剤の合計100質量部に対して、好ましくは20.0質量部以下、より好ましくは15.0質量部、さらに好ましくは10.0質量部以下である。
(触媒)
硬質ポリウレタンフォームの生成反応では、樹脂化反応及び泡化反応を促進する観点から、第三級アミン触媒、金属系ウレタン化触媒等が好適に用いられる。また、一部ヌレート化による難燃性向上の観点から、好ましくは、ヌレート化触媒(三量化触媒)も用いられる。これらの各種触媒としては、硬質ポリウレタンフォームの製造における公知の触媒を用いることができる。これらの触媒は、1種単独でも、2種以上を併用してもよい。
第三級アミン触媒としては、例えば、ジメチルエタノールアミン、トリエチレンジアミン、メチルジシクロヘキシルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、ジエチルメチルベンゼンジアミン、1,2-ジメチルイミダゾール、1-イソブチル-2-メチルイミダゾール、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられる。これらは、1種単独でも、2種以上を併用してもよい。
第三級アミン触媒の添加量は、硬質ポリウレタンフォームの樹脂化反応及び泡化反応を適度に促進させる観点から、ポリイソシアネート化合物100質量部に対して、好ましくは0.1~10.0質量部、より好ましくは0.2~8.0質量部、さらに好ましくは0.5~5.0質量部である。
金属系ウレタン化触媒としては、例えば、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、アセチルアセトンアルミニウム、アセチルアセトンジルコニウム、2-エチルヘキシル酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス、ナフテン酸鉛、オクチル酸鉛、ナフテン酸亜鉛、オクチル酸亜鉛等が挙げられる。これらは、1種単独でも、2種以上を併用してもよい。
金属系ウレタン化触媒の添加量は、硬質ポリウレタンフォームの樹脂化反応及び泡化反応を適度に促進させる観点から、ポリイソシアネート化合物100質量部に対して、好ましくは0.01~2.0質量部、より好ましくは0.02~1.0質量部、さらに好ましくは0.05~0.5質量部である。
ヌレート化触媒としては、例えば、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4-ビス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジアルキルアミノアルキル)ヘキサヒドロ-S-トリアジン等の窒素含有芳香族化合物;酢酸カリウム、2-エチルヘキシル酸カリウム等のカルボン酸アルカリ金属塩;トリメチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩、トリフェニルアンモニウム塩等の第三級アンモニウム塩;テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム、テトラフェニルアンモニウム塩等の第四級アンモニウム塩等が挙げられる。これらは、1種単独でも、2種以上を併用してもよい。
ヌレート化触媒の添加量は、イソシアネートのヌレート化反応を適度に促進させる観点から、ポリイソシアネート化合物100質量部に対して、好ましくは0.1~10.0質量部、より好ましくは0.2~8.0質量部、さらに好ましくは0.5~5.0質量部である。
(整泡剤)
整泡剤は、均質な難燃性硬質ポリウレタンフォームを得る観点から添加され、硬質ポリウレタンフォームの製造における公知の整泡剤を用いることができる。一般的には、シリコーン系整泡剤が好適に用いられ、例えば、シロキサン-ポリアルキレンオキサイド共重合体等が挙げられる。
整泡剤の添加量は、生成するポリウレタン樹脂の種類に応じて適宜設定されるが、ポリイソシアネート化合物100質量部に対して、好ましくは0.1~10.0質量部、より好ましくは0.2~8.0質量部、さらに好ましくは0.5~5.0質量部である。
なお、工程2におけるポリオール組成物の製造の操作も、予備組成物の調製と同様に行うことができる。すなわち、予備組成物に、減粘剤及び上記のその他の成分を適宜添加して、予備組成物の調製に用いられる撹拌装置と同様の装置を用いて撹拌混合することにより、ポリオール組成物を得ることができる。
[難燃性硬質ポリウレタンフォームの製造方法]
本発明の難燃性硬質ポリウレタンフォームの製造方法は、上述したポリオール組成物の製造方法により製造されたポリオール組成物と、ポリイソシアネート化合物とを、難燃性硬質ポリウレタンフォームを製造する現場で施工直前に混合して、発泡及び硬化させる工程を含む。
本発明のポリオール組成物の製造方法により得られたポリオール組成物を用いて、難燃性硬質ポリウレタンフォームを製造する現場で施工直前に、難燃性硬質ポリウレタンフォームの原料液、すなわち、ポリオール組成物とポリイソシアネート化合物との混合液を調製することにより、撹拌性及び難燃性硬質ポリウレタンフォームの施工性に優れた均一な原料液が容易に得られ、全体的に優れた難燃性を有する均質な硬質ポリウレタンフォームを得ることができる。
<ポリイソシアネート化合物>
ポリイソシアネート化合物は、イソシアネート基を2個以上有するイソシアネート化合物であり、ポリオール化合物との重付加反応によりポリウレタン樹脂を生成する。
前記ポリイソシアネート化合物は、芳香族ポリイソシアネート又は脂肪族ポリイソシアネートのいずれでもよく、これらのうち1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、ジフェニルエーテル-2,4’-ジイソシアネート、ジフェニルエーテル-4,4’-ジイソシアネート、トリレン-2,4-ジイソシアネート、トリレン-2,6-ジイソシアネート、4,6-ジメチル-1,3-フェニレンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,2’-MDI)、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’-MDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’-MDI)等のモノメリックMDI、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI又はポリメリックMDI)、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、非環式又は脂環式のポリイソシアネートのいずれでもよく、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
これらのうち、反応性、及び製造される硬質ポリウレタンフォームの難燃性等の観点から、好ましくは、2,2’-MDI、2,4’-MDI、4,4’-MDI等のモノメリックMDI、クルードMDI又はポリメリックMDIが用いられ、さらに、入手容易性やコスト等の観点から、より好ましくは、クルードMDI又はポリメリックMDIが用いられる。
難燃性硬質ポリウレタンフォームの原料液中のポリイソシアネート化合物の含有量は、ポリイソシアネート化合物の種類に応じて適宜設定されるが、ポリオール化合物との十分な反応性、原料液の撹拌性及び難燃性硬質ポリウレタンフォームの施工性等の観点から、ポリオール組成物100質量部に対して、好ましくは50~200質量部、より好ましくは70~150質量部、さらに好ましくは80~120質量部である。
<発泡及び硬化>
難燃性硬質ポリウレタンフォームを得るための発泡及び硬化方法は、特に限定されるものではなく、例えば、スラブ成形、モールド成形、ラミネート成形、注入成形等の各種成形、また、スプレー発泡等の公知の方法を適用することができる。これらの各種成形及び発泡方法において、ポリオール組成物とポリイソシアネート化合物とを混合した難燃性硬質ポリウレタンフォームの原料液を、発泡及び硬化させることにより、全体的に優れた難燃性を有する均質な硬質ポリウレタンフォームが得られる。
なお、難燃性硬質ポリウレタンフォームの原料液の調製における混合操作も、予備組成物の調製と同様に行うことができる。すなわち、ポリオール組成物とポリイソシアネート化合物とを、予備組成物の調製に用いられる撹拌装置と同様の装置を用いて撹拌混合することにより、原料液を得ることができる。あるいはまた、スプレー発泡においては、スプレー発泡装置にポリオール組成物とポリイソシアネート化合物とを同時に供給して、混合と同時に発泡させることができる。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
[硬質ポリウレタンフォームの製造]
下記実施例及び比較例において硬質ポリウレタンフォームの製造に用いた各原料の詳細を以下に示す。
<ポリオール化合物>
・ポリエステルポリオール(RFK-556):テレフタル酸系ポリエステルポリオール;「マキシモール(登録商標) RFK-556」、川崎化成工業株式会社製;水酸基価224mgKOH/g
・マンニッヒ系ポリオール(NB-622):「エクセノール(登録商標) NB-622」、AGC株式会社製、水酸基価500mgKOH/g
<粉体難燃剤>
・ホスフィン酸塩(CM-6R):「フランCM-6R」、大和化学工業株式会社製;窒素含有化合物
<液体難燃剤>
・含ハロゲンリン酸エステル(TMCPP):トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート;「TMCPP」、大八化学工業株式会社製
<沈降防止剤>
・有機ベントナイト(BENTONE 38);「BENTONE(登録商標) 38」、エレメンティス スペシャリティーズ社製、粉体
<分散剤>
・有機アンモニウム塩(BYK-2155):「DISPERBYK(登録商標;以下、同様。)-2155」、ビックケミー・ジャパン株式会社;塩基性基を有するブロック共重合体
<減粘剤>
・リン酸基含有塩ポリマー型減粘剤(BYK-180):「DISPERBYK-180」、ビックケミー・ジャパン株式会社;リン酸基を含む共重合物のアルキロールアンモニウム塩
・リン酸エステルポリマー型減粘剤(BYK-111):「DISPERBYK-111」、ビックケミー・ジャパン株式会社;共重合体の両末端にリン酸基を有するリン酸エステル
・リン酸エステル塩ポリマー型減粘剤(BYK-145):「DISPERBYK-145」、ビックケミー・ジャパン株式会社;共重合物のリン酸エステル塩
<ポリイソシアネート化合物>
・ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI):「ミリオネート(登録商標) MR-200」、東ソー株式会社製
<発泡剤>
・HCFO(LBA):トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロぺン(HCFO-1233zd);「ソルスティス(登録商標)LBA」、ハネウェル・インターナショナル株式会社製
<触媒>
・第三級アミン触媒(KL-120);1-イソブチル-2-メチルイミダゾール;「カオーライザー(登録商標) No.120」、花王株式会社製
・金属系ウレタン化触媒(DINP17);オクチル酸鉛;「ニッカオクチックス(登録商標) 鉛17%DINP」、日本化学産業株式会社製;Pb含有量17質量%
・ヌレート化触媒(U-18X);トリエチルメチルアンモニウム 2-エチルヘキサン塩;「U-CAT 18X」、サンアプロ株式会社製
<整泡剤>
・L-6100:シリコーン系整泡剤;「Niax(登録商標) silicone L-6100」、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ株式会社製
(実施例1)
500mLポリ瓶に、ポリオール化合物として、ポリエステルポリオールRFK-556 27.58質量部、及び液体難燃剤TMCPP 20.16質量部を入れ、かご型アタッチメントを装着した電気ドリルにて3000rpmで20秒間撹拌した(以下、撹拌の方法は同様。)。
これに、粉体難燃剤CM-6R 30.0質量部、沈降防止剤BENTONE 38 0.76質量部、分散剤BYK-2155 0.46質量部、発泡剤(HCFO) LBA 14.0質量部、触媒として、KL-120 1.26質量部、DINP17 0.14質量部、及びU-18X 3.78質量部、並びに整泡剤L-6100 1.4質量部を添加して、20秒間撹拌し、予備組成物を調製した。
予備組成物を、温度20℃の下で静置保管し、7日間経過後、減粘剤としてBYK‐180 0.46質量部を添加し、20秒間撹拌して、ポリオール組成物を調製した。なお、予備組成物の保管期間は、難燃性硬質ポリウレタンフォームの施工現場での準備や、原料液の調製及び輸送に要する時間等を考慮して、7日間とした。
次いで、ポリオール組成物100質量部を15℃で撹拌し、ポリイソシアネート化合物90質量部とともに1Lデスカップに入れ、5秒間撹拌混合して発泡させた。30分間静置後、硬化物をデスカップから取り出して、硬質ポリウレタンフォームを得た。
(実施例2~6)
下記表1に示すポリオール組成物の原料配合組成で、実施例1と同様にして、ポリオール組成物の調製、及び硬質ポリウレタンフォームの製造を行った。
(比較例1~5)
下記表1に示すポリオール組成物の原料配合組成で、減粘剤を添加せずに、それ以外は実施例1と同様にして、ポリオール組成物の調製、及び硬質ポリウレタンフォームの製造を行った。
(比較例6~8)
下記表1に示すポリオール組成物の原料配合組成で、減粘剤を分散剤と同時に添加した後、7日間保管し、それ以外は実施例1と同様にして、ポリオール組成物の調製、及び硬質ポリウレタンフォームの製造を行った。
[評価]
上記各実施例及び各比較例で調製した予備組成物、ポリオール組成物、硬質ポリウレタンフォームの原料液(混合液)、及び混合液を用いて製造した硬質ポリウレタンフォームについて、下記の項目の評価を行った。これらの評価結果を、下記表1に示す。
<沈降性>
実施例1~6の予備組成物又は比較例1~8のポリオール組成物30gをそれぞれ、50mLバイアル瓶に入れて、室温(25℃)で静置した。外観観察にて、7日間保管後の粉体(固体)の沈降物の上面の高さ位置(液面基準)を測定した。
これらの測定値を、下記の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
A:沈降物の上面の高さ位置が液面から1mm未満
B:沈降物の上面の高さ位置が液面から1mm以上3mm未満
C:沈降物の上面の高さ位置が液面から3mm以上5mm未満
D:沈降物の上面の高さ位置が液面から5mm以上
評価Aの場合、ほとんど沈降は進行していないと見なすことができる。評価Bの場合は、沈降が良好に抑制されていると言える。評価Cの場合は、沈降が進行しており、また、評価Dの場合は、著しく沈降が進行していると判定した。
<凝集性>
上記の<沈降性>の評価における沈降物の状態を目視にて外観観察し、下記の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
A:バイアル瓶を横に倒すと、沈降物がスムーズに流動する。
B:バイアル瓶を横に倒すと、沈降物が多少は流動する。
評価Aの場合は、粉体の凝集が良好に抑制されており、評価Bの場合は、十分な凝集抑制効果が得られていないと判定した。
<粘度>
混合液調製時に撹拌して均一にした状態のポリオール組成物を、2時間静置した後、TV-25形粘度計(東機産業株式会社製;温度25℃、THM型ロータ、回転数6rpm)にて、測定開始後5~7分における平均値を測定値とした。
ポリオール組成物の粘度が300~3200mPa・sであれば、ポリイソシアネート化合物との混合液調製時の取り扱い性が良好であると言える。前記粘度は、好ましくは400~3000mPa・s、より好ましくは500~2500mPa・sである。
<撹拌性>
硬質ポリウレタンフォームの原料液(混合液)調製時の撹拌の状態を下記の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
A:容易に撹拌でき、均一な混合液が得られる。
B:容易に撹拌できるが、沈降物の分散が不均一である。
C:撹拌できるが、凝集した沈降物が残る。
D:沈降物が凝集し、撹拌が困難である。
評価A又はBの場合、混合液の撹拌性が良好であると言える。評価C又はDの場合は、混合液の撹拌性が不良であると判定した。
<施工性>
スプレー発泡機を用いて、圧力6~8MPaで、液温38~40℃の原料液(混合液)を吐出させ、15±3℃の温度下で、鉛直に立てた繊維強化セメント板(910mm×910mm、厚さ8mm)の平板面に垂直に吹き付けて、硬質ポリウレタンフォームを製造した際の施工性を、下記の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
A:スプレーパターンが常に円形で安定している。施工面が平坦である。
B:スプレーパターンがほぼ円形であるが、時々楕円形となる。施工面の一部に凹凸がある。
C:スプレーパターンが常に楕円形又は線状である。施工面全体に凹凸がある。
評価A又はBの場合、硬質ポリウレタンフォーム製造時の施工性が良好であると言える。評価Cの場合は、施工性が不良であると判定した。
<難燃性>
上記において製造した硬質ポリウレタンフォームから、98mm×98mm×厚さ(高さ)25mmの試料を切り出した。
ISO 5660-1に準じて、コーンカロリーメーター(「コーンカロリーメーターIII」、株式会社東洋精機製作所製;基材の不燃材:石膏ボード(厚さ12.5mm))にて、コーンにより50KW/m2の熱量を試料に加え、同時に、着火プラグにより10秒間着火させ、20分間加熱したときの総発熱量を測定した。
これらの測定値を、下記の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
A:総発熱量8MJ/m2未満
B:総発熱量8MJ/m2以上11MJ/m2未満
C:総発熱量11MJ/m2以上20MJ/m2未満
D:総発熱量20MJ/m2以上
評価Aの場合、最も難燃性が高く、不燃材料と言えるレベルである。次いで、評価Bの場合も、十分に難燃性は高く、準不燃材料と言えるレベルである。評価C又はDの場合は、十分な難燃性を有していないと判定した。
Figure 2022142437000001
表1に示した結果から分かるように、粉体難燃剤及び沈降防止剤を含むポリオール組成物に、難燃性硬質ポリウレタンフォームの施工直前に減粘剤を添加することにより、ポリオール組成物の予備組成物における粉体の沈降及び凝集が抑制され、かつ、硬質ポリウレタンフォームの原料液(混合液)の調製時には、ポリオール組成物を適度な粘度で取り扱うことができ、混合液の撹拌性、及び難燃性硬質ポリウレタンフォームの施工性が良好となることが認められた。さらに、得られる硬質ポリウレタンフォームが、不燃材料相当以上の難燃性を有していることが確認された。
一方、減粘剤を添加しない場合(比較例1~5)は、混合液調製時に、良好な減粘効果が得られず、混合液の撹拌性、硬質ポリウレタンフォームの施工性及び難燃性のいずれもが良好な評価結果を示すポリオール組成物は得られなかった。また、減粘剤を沈降防止剤と同時に添加して保管した後のポリオール組成物を用いた場合(比較例6~8)は、保管時に粉体の沈降が著しく、硬質ポリウレタンフォームの難燃性が良好なポリオール組成物を得られなかった。

Claims (9)

  1. 難燃性硬質ポリウレタンフォームの製造に用いられるポリオール組成物の製造方法において、
    ポリオール化合物、粉体難燃剤及び沈降防止剤を含む予備組成物を調製して保管する工程1と、
    保管された予備組成物に減粘剤を添加して、ポリオール組成物を得る工程2とを含む、ポリオール組成物の製造方法。
  2. 前記粉体難燃剤は、リン酸塩及びホスフィン酸塩から選ばれる1種以上を含む、請求項1に記載のポリオール組成物の製造方法。
  3. 前記減粘剤は、リン酸基含有ポリマー型減粘剤である、請求項1又は2に記載のポリオール組成物の製造方法。
  4. 前記沈降防止剤は、有機ベントナイト、脂肪族アマイドワックス及び水添ひまし油ワックスから選ばれる1種以上を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリオール組成物の製造方法。
  5. 前記ポリオール化合物は、マンニッヒ系ポリオールを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリオール組成物の製造方法。
  6. 前記予備組成物が分散剤を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のポリオール組成物の製造方法。
  7. 前記予備組成物が、発泡剤、触媒及び整泡剤から選ばれる1種以上を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のポリオール組成物の製造方法。
  8. 前記発泡剤が、ハイドロフルオロオレフィン及びハイドロクロロフルオロオレフィンから選ばれる1種以上を含む、請求項7に記載のポリオール組成物の製造方法。
  9. 請求項1~8のいずれか1項に記載のポリオール組成物の製造方法により製造されたポリオール組成物と、ポリイソシアネート化合物とを、難燃性硬質ポリウレタンフォームを製造する現場で施工直前に混合して、発泡及び硬化させる工程を含む、難燃性硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
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