以下、本開示の実施形態を説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明および実質的に同一の構成に関する重複する説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、発明者は、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。以下の説明において、同一または類似の機能を有する構成要素については、同じ参照符号を付している。
以下の実施形態は例示であり、本開示の技術は、以下の実施形態に限定されない。例えば、以下の実施形態で示される数値、形状、材料、ステップ、そのステップの順序、表示画面のレイアウトなどは、あくまでも一例であり、技術的に矛盾が生じない限りにおいて種々の改変が可能である。また、技術的に矛盾が生じない限りにおいて、一の態様と他の態様とを組み合わせることが可能である。
以下、作業車両の一例であるトラクタに本開示の技術を適用した実施形態を説明する。本開示の技術は、トラクタに限らず、自動操舵で走行する任意の作業車両に適用することができる。作業車両は、例えば、田植機、コンバイン、草刈機、ハーベスタ、除雪車、または建設作業車であってもよい。
(実施形態1)
本開示の例示的な第1の実施形態における作業車両、および作業車両の制御システムを説明する。
本実施形態における作業車両は、自動操舵運転を実現するための制御を行う制御システムを備える。制御システムは、記憶装置と、制御装置とを備えるコンピュータシステムである。記憶装置は、1つ以上の記憶媒体を含み、作業車両の目標経路などの種々のデータを記憶する。制御装置は、1つ以上のプロセッサまたは制御回路を含み、作業車両の動作を制御する。制御装置は、測位装置によって特定された作業車両の位置、および記憶装置に記憶された目標経路に基づいて、作業車両が目標経路に沿って走行するように作業車両の操舵を制御する。測位装置は、作業車両の内部または外部に配置される。測位装置は、例えばGNSS受信機を含み、GNSS衛星からの信号に基づき、作業車両の位置を特定する。測位装置は、LiDARセンサまたはカメラなどの、GNSS受信機以外のデバイスを含んでいてもよい。LiDARセンサまたはカメラによって取得されたデータと、予め用意された環境地図とのマッチングにより、作業車両の位置を推定することができる。目標経路は、作業車両が走行する環境内に設定される走行の目標となる経路である。目標経路は、自動操舵運転を開始する前に設定され、記憶装置に記録される。目標経路は、並列する複数の主経路と、複数の主経路を接続する1つ以上の旋回経路とを含む。制御装置は、作業車両が圃場内を目標経路に沿って往復するように作業車両の操舵輪(例えば前輪)の操舵角を制御する。
主経路は、例えば圃場内で作業車両が耕耘、草刈り、播種、施肥、防除、その他の作業を実行する作業領域内に設定される。主経路は、直線状の経路でもよいし、曲線状の部分を含む経路でもよい。旋回経路は、例えば圃場の外周縁付近に位置する枕地に設定され得る。
自動操舵で枕地内を旋回するときに作業車両が目標の旋回経路から逸脱すると、旋回後に目標経路に復帰するまでに時間を要したり、場合によっては作業車両が圃場外に出てしまったりする可能性がある。経路の逸脱が生じた場合、ユーザに速やかに通知することが重要である。
作業車両が目標経路から逸脱したことをユーザに通知する方法として、自動操舵による走行中、作業車両に設けられた操作端末の表示装置(ディスプレイ)に、作業車両の位置と目標経路とのずれ量(距離)を表示させる方法が考えられる。しかし、単に表示装置にずれ量を表示するだけでは、ユーザが経路の逸脱に気付くまでに時間を要する可能性がある。
そこで、本実施形態では、作業車両が自動操舵によって旋回経路に沿って旋回しているとき、作業車両の位置が旋回経路から基準距離以上離れた場合に、警告装置に警告を出力させる。警告装置は、例えば、ブザーまたはスピーカなどの音声出力装置および/または表示装置を含み得る。警告は、例えば大きい音、強い光、または振動などの、ユーザの五感を強く刺激する方法で発出され得る。これにより、自動操舵による旋回時に、作業車両が目標経路から逸脱した場合に、その状況をユーザに早期に通知することができる。その結果、作業車両が目標経路から大きく逸脱する前に、ユーザが操作して逸脱を回避することができる。基準距離は、ユーザが要求する作業精度に応じて適切な値に設定される。上記の動作により、ユーザが要求する作業精度が満たされていない場合に、ユーザが早い段階で気付くことができる。
<構成>
図1は、本実施形態における作業車両100の外観の例を示す斜視図である。図2は、作業車両100、および作業車両100に連結された作業機300の例を模式的に示す側面図である。本実施形態における作業車両は、圃場で使用されるトラクタである。本実施形態および後述する他の実施形態における技術は、矛盾がない限り、トラクタ以外の作業車両にも適用できる。
本実施形態における作業車両100は、測位装置120と、1つ以上の障害物センサ130とを備える。図1には1つの障害物センサ130が例示されているが、障害物センサ130は作業車両100の複数の箇所に設けられていてもよい。
図2に示すように、作業車両100は、車両本体101と、原動機(エンジン)102と、変速装置(トランスミッション)103とを備える。車両本体101には、タイヤ104(車輪)と、キャビン105とが設けられている。タイヤ104は、一対の前輪104Fと一対の後輪104Rとを含む。キャビン105の内部に運転席107、操舵装置106、操作端末200、および操作のためのスイッチ群が設けられている。前輪104Fおよび後輪104Rの一方または両方は、タイヤではなくクローラであってもよい。作業車両100は、4つのタイヤ104を駆動輪として備える四輪駆動車であってもよいし、一対の前輪104Fまたは一対の後輪104Rを駆動輪として備える二輪駆動車であってもよい。以下の説明では、作業車両100が二輪駆動(2W)モードと四輪駆動(4W)モードとを切り替えることができるものとする。
本実施形態における測位装置120は、GNSS受信機を備える。GNSS受信機は、GNSS衛星からの信号を受信するアンテナと、アンテナが受信した信号に基づいて作業車両100の位置を決定する処理回路とを備える。測位装置120は、GNSS衛星から送信されるGNSS信号を受信し、GNSS信号に基づいて測位を行う。GNSSは、GPS(Global Positioning System)、QZSS(Quasi-Zenith Satellite System、例えばみちびき)、GLONASS、Galileo、およびBeiDouなどの衛星測位システムの総称である。本実施形態における測位装置120は、キャビン105の上部に設けられているが、他の位置に設けられていてもよい。
測位装置120は、GNSS受信機に代えて、あるいは加えて、LiDARセンサまたはカメラ(イメージセンサを含む)などの他の種類のデバイスを含んでいてもよい。作業車両100が走行する環境内に特徴点として機能する地物が存在する場合、LiDARセンサまたはカメラによって取得されたデータと、予め記憶装置170に記録された環境地図とに基づいて、作業車両100の位置を高い精度で推定することができる。LiDARセンサ110またはカメラをGNSS受信機と併用してもよい。LiDARセンサ110またはカメラが取得したデータを用いて、GNSS信号に基づく位置データを補正または補完することで、より高い精度で作業車両100の位置を特定できる。測位装置120は、さらに、慣性計測装置(IMU)からの信号を利用して位置データを補完することができる。IMUは、作業車両100の傾きおよび微小な動きを計測することができる。IMUによって取得されたデータを用いて、GNSS信号に基づく位置データを補完することにより、測位の性能を向上させることができる。
図1および図2に示す例では、車両本体101の後部に障害物センサ130が設けられている。障害物センサ130は、車両本体101の後部以外の部位にも配置され得る。例えば、車両本体101の側部、前部、およびキャビン105のいずれかの箇所に、1つまたは複数の障害物センサ130が設けられ得る。障害物センサ130は、作業車両100の周囲に存在する物体を検出する。障害物センサ130は、例えばレーザスキャナまたは超音波ソナーを備え得る。障害物センサ130は、障害物センサ130から所定の距離よりも近くに物体が存在する場合に、障害物が存在することを示す信号を出力する。複数の障害物センサ130が作業車両100の車体の異なる位置に設けられていてもよい。例えば、複数のレーザスキャナと、複数の超音波ソナーとが、車体の異なる位置に配置されていてもよい。そのような多くの障害物センサ130を備えることにより、作業車両100の周囲の障害物の監視における死角を減らすことができる。
原動機102は、例えばディーゼルエンジンである。ディーゼルエンジンに代えて電動モータが使用されてもよい。変速装置103は、変速によって作業車両100の推進力および移動速度を変化させることができる。変速装置103は、作業車両100の前進と後進とを切り換えることもできる。
操舵装置106は、ステアリングホイールと、ステアリングホイールに接続されたステアリングシャフトと、ステアリングホイールによる操舵を補助するパワーステアリング装置とを含む。前輪104Fは操舵輪であり、その切れ角(「操舵角」とも称する。)を変化させることにより、作業車両100の走行方向を変化させることができる。前輪104Fの操舵角は、ステアリングホイールを操作することによって変化させることができる。パワーステアリング装置は、前輪104Fの操舵角を変化させるための補助力を供給する油圧装置または電動モータを含む。自動操舵が行われるときには、作業車両100内に配置された制御装置からの制御により、油圧装置または電動モータの力によって操舵角が自動で調整される。
車両本体101の後部には、連結装置108が設けられている。連結装置108は、例えば3点支持装置(「3点リンク」または「3点ヒッチ」とも称する。)、PTO(Power Take Off)軸、ユニバーサルジョイント、および通信ケーブルを含む。連結装置108によって作業機300を作業車両100に着脱することができる。連結装置108は、例えば油圧装置によって3点リンクを昇降させ、作業機300の位置または姿勢を制御することができる。また、ユニバーサルジョイントを介して作業車両100から作業機300に動力を送ることができる。作業車両100は、作業機300を引きながら、作業機300に所定の作業を実行させることができる。連結装置は、車両本体101の前方に設けられていてもよい。その場合、作業車両100の前方に作業機を接続することができる。
図2に示す作業機300は、ロータリ耕耘機であるが、作業機300はロータリ耕耘機に限定されない。例えば、モーア(草刈機)、シーダ(播種機)、スプレッダ(施肥機)、レーキ作業機、ベーラ(集草機)、ハーベスタ(収穫機)、スプレイヤ、またはハローなどの、任意の作業機を作業車両100に接続して使用することができる。
図3は、作業車両100および作業機300の概略的な構成の例を示すブロック図である。作業車両100と作業機300は、連結装置108に含まれる通信ケーブルを介して互いに通信することができる。
図3の例における作業車両100は、測位装置120、障害物センサ130、操作端末200に加え、駆動装置140、ステアリングホイールセンサ150、切れ角センサ152、制御システム160、通信インタフェース(IF)190、操作スイッチ群210、およびブザー220を備える。測位装置120は、GNSS受信機121と、RTK受信機122と、慣性計測装置(IMU)125とを備える。制御システム160は、記憶装置170と、制御装置180とを備える。制御装置180は、複数の電子制御ユニット(ECU)181から186を備える。作業機300は、駆動装置340と、制御装置380と、通信インタフェース(IF)390とを備える。なお、図3には、作業車両100による自動操舵または自動走行の動作との関連性が相対的に高い構成要素が示されており、それ以外の構成要素の図示は省略されている。
図3に示す測位装置120は、RTK(Real Time Kinematic)-GNSSを利用して作業車両100の測位を行う。図4は、RTK-GNSSによる測位を行う作業車両100の例を示す概念図である。RTK-GNSSによる測位では、複数のGNSS衛星50から送信されるGNSS信号に加えて、基準局60から送信される補正信号が利用される。基準局60は、作業車両100が走行する圃場の周囲(例えば、作業車両100から10km以内の位置)に設置され得る。基準局60は、複数のGNSS衛星50から受信したGNSS信号に基づいて補正信号を生成し、測位装置120に送信する。測位装置120におけるGNSS受信機121は、複数のGNSS衛星50から送信されるGNSS信号を受信する。測位装置120におけるRTK受信機122は、基準局60から送信される補正信号を受信する。測位装置120は、GNSS信号および補正信号に基づき、作業車両100の位置を計算することにより、測位を行う。RTK-GNSSを用いることにより、例えば誤差数cmの精度で測位を行うことが可能である。緯度、経度および高度の情報を含む位置情報が、RTK-GNSSによる高精度の測位によって取得される。測位装置120は、例えば1秒間に1回から10回程度の頻度で、作業車両100の位置を計算する。
なお、測位方法はRTK-GNSSに限らず、必要な精度の位置情報が得られる任意の測位方法(干渉測位法または相対測位法など)を用いることができる。例えば、VRS(Virtual Reference Station)またはDGPS(Differential Global Positioning System)を利用した測位を行ってもよい。また、基準局60から送信される補正信号を用いなくても必要な精度の位置情報が得られる場合は、補正信号を用いずに位置情報を生成してもよい。その場合、測位装置120は、RTK受信機122を備えていなくてもよい。
本実施形態における測位装置120は、さらにIMU125を備えている。IMU125は、3軸加速度センサおよび3軸ジャイロスコープを備える。IMU125は、3軸地磁気センサなどの方位センサを備えていてもよい。IMU125は、モーションセンサとして機能し、作業車両100の加速度、速度、変位、および姿勢などの諸量を示す信号を出力することができる。測位装置120は、GNSS信号および補正信号に加えて、IMU125から出力された信号に基づいて、作業車両100の位置および向きをより高い精度で推定することができる。IMU125から出力された信号は、GNSS信号および補正信号に基づいて計算される位置の補正または補完に用いられ得る。IMU125は、GNSS信号よりも高い頻度で信号を出力する。その高頻度の信号を利用して、作業車両100の位置および向きをより高い頻度(例えば、10Hz以上)で計測することができる。IMU125に代えて、3軸加速度センサおよび3軸ジャイロスコープを別々に設けてもよい。IMU125は、測位装置120とは別の装置として設けられていてもよい。
測位装置120は、GNSS受信機121、RTK受信機122、およびIMU125に加えて、またはこれらに代えて、LiDARセンサまたはイメージセンサなどの他の種類のセンサを備えていてもよい。作業車両100が走行する環境によっては、これらのセンサからのデータに基づいて作業車両100の位置および向きを高い精度で推定することができる。
駆動装置140は、例えば前述の原動機102、変速装置103、デフロック機構を含む差動装置、操舵装置106、および連結装置108などの、作業車両100の走行および作業機300の駆動に必要な各種の装置を含む。原動機102は、例えばディーゼル機関などの内燃機関を備える。駆動装置140は、内燃機関に代えて、あるいは内燃機関とともに、トラクション用の電動モータを備えていてもよい。
ステアリングホイールセンサ150は、作業車両100のステアリングホイールの回転角を計測する。切れ角センサ152は、操舵輪である前輪104Fの切れ角を計測する。ステアリングホイールセンサ150および切れ角センサ152による計測値は、制御装置180による操舵制御に利用される。
記憶装置170は、フラッシュメモリまたは磁気ディスクなどの1つ以上の記憶媒体を含む。記憶装置170は、各センサ、および制御装置180が生成する各種のデータを記憶する。記憶装置170が記憶するデータには、作業車両100が走行する環境内の地図データ、および自動操舵の目標経路のデータが含まれ得る。記憶装置170は、制御装置180における各ECUに、後述する各種の動作を実行させるコンピュータプログラムも記憶する。そのようなコンピュータプログラムは、記憶媒体(例えば半導体メモリまたは光ディスク等)または電気通信回線(例えばインターネット)を介して作業車両100に提供され得る。そのようなコンピュータプログラムが、商用ソフトウェアとして販売されてもよい。
制御装置180は、複数のECUを含む。複数のECUは、速度制御用のECU181、ステアリング制御用のECU182、自動操舵制御用のECU183、作業機制御用のECU184、表示制御用のECU185、およびブザー制御用のECU186を含む。ECU181は、駆動装置140に含まれる原動機102、変速装置103、およびブレーキを制御することによって作業車両100の速度を制御する。ECU182は、ステアリングホイールセンサ150の計測値に基づいて、操舵装置106に含まれる油圧装置または電動モータを制御することにより、作業車両100のステアリングを制御する。ECU183は、測位装置120、ステアリングホイールセンサ150、および切れ角センサ152から出力される信号に基づいて、自動操舵運転を実現するための演算および制御を行う。自動操舵運転中、ECU183は、ECU182に操舵角の変更の指令を送る。ECU182は、当該指令に応答して操舵装置106を制御することによって操舵角を変化させる。ECU184は、作業機300に所望の動作を実行させるために、連結装置108の動作を制御する。ECU184はまた、作業機300の動作を制御する信号を生成し、その信号を通信IF190から作業機300に送信する。ECU185は、操作端末200の表示を制御する。ECU185は、例えば、操作端末200における表示装置に、圃場のマップ、マップ中の作業車両100の位置および目標経路、ポップアップ通知、設定画面などの様々な表示を実現させる。ECU186は、ブザー220による警告音の出力を制御する。
これらのECUの働きにより、制御装置180は、手動操舵または自動操舵による運転を実現する。自動操舵運転時において、制御装置180は、測位装置120によって計測または推定された作業車両100の位置と、記憶装置170に記憶された目標経路とに基づいて、駆動装置140を制御する。これにより、制御装置180は、作業車両100を目標経路に沿って走行させる。制御装置180は、作業車両100を、ユーザによって設定された基準速度で自動で走行させる機能も備える。この機能をオートクルーズコントロール機能または単にクルーズコントロール機能と称する。クルーズコントロール機能は、ECU181の働きによって実現される。
制御装置180に含まれる複数のECUは、例えばCAN(Controller Area Network)などのビークルバス規格に従って、相互に通信することができる。図3において、ECU181から186のそれぞれは、個別のブロックとして示されているが、これらのそれぞれの機能が、複数のECUによって実現されていてもよい。また、ECU181から186の少なくとも一部の機能を統合した車載コンピュータが設けられていてもよい。制御装置180は、ECU181から186以外のECUを備えていてもよく、機能に応じて任意の個数のECUが設けられ得る。各ECUは、1つ以上のプロセッサを含む制御回路を備える。
通信IF190は、作業機300の通信IF390と通信を行う回路である。通信IF190は、例えばISOBUS-TIM等のISOBUS規格に準拠した信号の送受信を、作業機300の通信IF390との間で実行する。これにより、作業機300に所望の動作を実行させたり、作業機300から情報を取得したりすることができる。通信IF190は、有線または無線のネットワークを介して外部のコンピュータと通信してもよい。外部のコンピュータは、例えば、圃場に関する情報をクラウド上で一元管理し、クラウド上のデータを活用して農業を支援する営農支援システムにおけるサーバコンピュータであってもよい。
操作端末200は、作業車両100の走行および作業機300の動作に関する操作をユーザが実行するための端末であり、バーチャルターミナル(VT)とも称される。操作端末200は、タッチスクリーンなどの表示装置、および/または1つ以上のボタンを備え得る。ユーザは、操作端末200を操作することにより、例えば自動操舵モードのオン/オフの切り替え、クルーズコントロールのオン/オフの切り替え、作業車両100の初期位置の設定、目標経路の設定、地図の記録または編集、2WD/4WDの切り替え、デフロックのオン/オフの切り替え、および作業機300のオン/オフの切り替えなどの種々の操作を実行することができる。これらの操作の少なくとも一部は、操作スイッチ群210を操作することによっても実現できる。操作端末200への表示は、ECU185によって制御される。
ブザー220は、ユーザに異常を報知するための警告音を発する音声出力装置である。ブザー220は、例えば、自動操舵運転時に、作業車両100が目標経路から所定距離以上逸脱した場合に警告音を発する。ブザー220の代わりに、操作端末200のスピーカによって同様の機能が実現されてもよい。ブザー220は、ECU186によって制御される。
作業機300における駆動装置340は、作業機300が所定の作業を実行するために必要な動作を行う。駆動装置340は、例えば油圧装置、電気モータ、またはポンプなどの、作業機300の用途に応じた装置を含む。制御装置380は、駆動装置340の動作を制御する。制御装置380は、通信IF390を介して作業車両100から送信された信号に応答して、駆動装置340に各種の動作を実行させる。また、作業機300の状態に応じた信号を通信IF390から作業車両100に送信することもできる。
図5は、キャビン105の内部に設けられる操作端末200および操作スイッチ群210の例を示す図である。キャビン105の内部には、ユーザが操作可能な複数のスイッチを含むスイッチ群210が配置される。スイッチ群210は、例えば、主変速または副変速の変速段を選択するためのスイッチ、自動操舵(オートステア)モードおよび手動操舵(マニュアルステア)モードを切り替えるためのスイッチ、前進および後進を切り替えるためのスイッチ、作業機300を昇降するためのスイッチ、および、一定速度を維持して走行するオートクルーズコントロール機能のオン/オフを切り替えるためのスイッチを含み得る。
<動作>
次に、作業車両100の動作を説明する。本実施形態における制御装置180は、作業車両100のユーザ(例えば運転者)の操作に応答して手動操舵モードと自動操舵モードとを切り替えることができる。手動操舵モードにおいて、制御装置180は、ユーザによるステアリングホイールの操作に応答してパワーステアリング装置を駆動することによって操舵を制御する。自動操舵モードにおいて、制御装置180は、測位装置120によって計測された作業車両100の位置と、予め記録された目標経路とに基づいてパワーステアリング装置を駆動することによって操舵を制御する。自動操舵モードにおいても、速度はユーザによるアクセル操作およびブレーキ操作によって調整される。ただし、クルーズコントロール機能が有効な状態では、制御装置180が速度制御も行い、ユーザによって設定された速度で作業車両100を走行させる。自動操舵モードで且つクルーズコントロール機能が有効な状態においては、ユーザの操作によらずに制御装置180が作業車両100を自動で走行させる。このように、本実施形態の作業車両100は、操舵のみを自動で制御することもできるし、操舵および速度を自動で制御することもできる。
図6は、自動操舵モードにおける作業車両100の走行の例を示す図である。図6の(a)は、直線状の目標経路Pに沿って作業車両100が走行する様子を模式的に示している。図6の(b)は、曲線状の目標経路Pに沿って作業車両100が走行する様子を模式的に示している。図6の(c)は、隣り合う2つの直線状の経路と、それらを接続する曲線状の経路とを含む目標経路Pに沿って作業車両100が走行する様子を模式的に示している。目標経路Pは、予め設定され、記憶装置170に記録される。作業車両100が自動操舵モードで走行しているとき、制御装置180は、測位装置120によって計測された作業車両100の位置および向きと、目標経路Pとの偏差を計算し、偏差を小さくするように操舵装置を制御する動作を繰り返す。これにより、目標経路Pに沿って作業車両100を走行させる。
図7は、圃場内を自動操舵で走行する作業車両100の目標経路の例を模式的に示す図である。この例において、圃場は、作業車両100および作業機300が作業を行う作業領域70と、圃場の外周縁付近に位置する枕地80とを含む。圃場の地図上でどの領域が作業領域70および枕地80に該当するかは、ユーザが操作端末200を用いた操作によって事前に設定され得る。目標経路は、並列する複数の主経路P1と、複数の主経路P1を接続する複数の旋回経路P2とを含む。主経路P1は、作業領域70内に位置し、旋回経路P2は、枕地80に位置する。図7における破線は、作業機300の作業幅を表している。作業幅は、予め設定され、記憶装置170に記録される。作業幅は、ユーザが操作端末200を操作することによって設定され、記憶装置170に記録され得る。あるいは、作業幅は、作業機300を作業車両100に接続したときに自動で認識され、記憶装置170に記録されてもよい。複数の主経路P1の間隔は、作業幅に合わせられる。目標経路は、自動操舵運転が開始される前に、ユーザの操作に基づいて決定され得る。
目標経路を設定する方法の一例を説明する。ユーザは、まず、圃場の端部(例えば枕地80と作業領域70との境界)に位置する始点Aおよび終点Bを操作端末200を操作して登録する。例えば、ユーザは、作業車両100を手動で運転し、始点Aから終点Bまで作業車両100を走行させる。ユーザは、始点Aおよび終点Bに作業車両100が位置するときに操作端末200に表示される登録ボタンを押す。これにより、始点Aおよび終点Bが登録される。この操作が行われると、制御装置180は、始点Aから終点Bを結ぶ基準線(ガイダンスライン)P0を決定する。図7に示す基準線P0は直線であるが、曲線を基準線として設定することも可能である。制御装置180は、予め記憶装置170に記録されている作業機300の作業幅に基づいて、基準線P0から等間隔に並ぶ複数の主経路P1と、それらの主経路P1を接続する複数の旋回経路P2を決定する。これにより、目標経路が決定される。目標経路は、例えば圃場内の作業領域70の全体をカバーするように決定され得る。なお、目標経路は、ユーザが手動運転で作業車両100を走行させることなく、操作端末200を操作することによって設定することもできる。例えば、作業領域70および枕地80の登録と同時に目標経路を設定することもできる。
本実施形態においては、作業領域70内での走行だけでなく、枕地80での旋回も自動操舵で実行することができる。枕地80での旋回時に、予め記録された一連の動作を作業車両100が実行するように設定することができる。この一連の動作を規定するプログラムを「動作シーケンス」と称する。動作シーケンスは、ユーザによって設定され、記憶装置170に記録される。制御装置180は、作業車両100が自動操舵によって旋回経路に沿って旋回するとき、予め記録された動作シーケンスに従って作業車両100に一連の動作を実行させる。主経路P1の端部で枕地旋回を開始するとき(フィールドイン時)と、枕地旋回を終了して次の主経路P1に沿って走行を開始するとき(フィールドアウト時)とで、それぞれ異なる動作シーケンスを記録することができる。動作シーケンスとして、例えば以下のような動作を記録することができる。
・3点リンクの上昇/下降
・PTO回転のオン/オフ
・デフロックのオン/オフ
・4WD/2WDの切り替え
・エンジン回転数の増加/低下
・変速装置の切り替え
制御システム160は、枕地旋回時に実行される一連の動作を管理する枕地管理システム(Headland Management System: HMS)として機能する。一連の動作は、旋回開始時に行われる第1の動作と、旋回終了時に行われる第2の動作とを含み得る。第1の動作は、作業車両100に連結される作業機300の上昇、作業機300への動力出力の停止、作業車両100が備えるデフロック機能の停止、二輪駆動モードから四輪駆動モードへの切り替え、および作業車両100のエンジン回転数の低下のうちの少なくとも1つの動作を含み得る。第2の動作は、作業機300の降下、作業機300への動力出力の開始、デフロック機能の開始、四輪駆動モードから二輪駆動モードへの切り替え、およびエンジン回転数の上昇のうちの少なくとも1つの動作を含み得る。制御装置180は、一連の動作の内容をユーザに設定させるための設定画面を表示装置に表示させることができる。制御装置180は、設定された一連の動作の内容に基づく動作シーケンスを記憶装置170に記憶させる。
動作シーケンスの記録は、自動操舵運転を開始する前に、目標経路を設定する動作とともに行うこともできる。以下、図8Aから図8Fを参照して、目標経路および動作シーケンスを記録する動作の流れの一例を説明する。
図8Aは、作業車両100が圃場の作業領域70内を手動運転によって走行している状況を示している。この時点では、図7に示す始点Aは既に登録されており、ユーザは基準線P0の終点Bに向かって作業車両100を手動で運転する。作業車両100が図8Bに示すように終点Bに到達すると、ユーザは、操作端末200を操作して、終点Bを登録する。さらに、ユーザは、旋回を開始するために、例えば、3点リンクを上昇させ、PTO回転をオフにし、デフロックをオフにし、エンジン回転数を低下させるなどの操作を行い、その一連の動作を操作端末200を操作して記録する。その後、ユーザは、作業車両100を手動で運転して旋回させる。図8Cは、作業車両100が旋回を終了し、枕地80から作業領域70に戻る状況を示している。このとき、ユーザは、作業を再開するために、例えば、3点リンクを下降させ、PTO回転をオンにし、デフロックをオンにし、エンジン回転数を増加させるなどの操作を行い、その一連の動作を操作端末200を操作して記録する。その後、ユーザは、操作端末200を操作して手動操舵モードから自動操舵モードに切り替える。すると、図8Dに示すように、作業車両100は、目標経路における主経路P1に沿って自動操舵で走行を開始する。自動操舵による走行中、ユーザは、アクセルおよびブレーキを手動で操作して作業車両100の速度を調整することができる。ユーザはまた、作業車両100が所望の速度で走行しているときに、そのときの速度を操作端末200を操作して記憶装置170に記録することができる。記録後、ユーザは、クルーズコントロール機能をオンにすることにより、記録した速度で作業車両100を自動で走行させることができる。図8Dの状態の後、作業車両が図8Eに示すように反対側の枕地80に到達すると、作業車両100の制御装置180は、記録されたフィールドアウト時の動作シーケンスを再生し、記録された一連の動作を自動で実行し、作業車両100に枕地旋回を自動で実行させる。旋回が完了すると、図8Fに示すように、制御装置180は、記録されたフィールドイン時の動作シーケンスを再生し、記録された一連の動作を自動で実行し、次の主経路P1に沿った自動操舵運転を開始させる。以後、同様の動作を繰り返すことにより、作業車両100は、目標経路に沿って圃場内を自動操舵で往復し、圃場の終端まで走行することができる。
次に、制御装置180による自動操舵時の制御の例を説明する。
図9は、制御装置180によって実行される自動操舵時の動作の例を示すフローチャートである。制御装置180は、作業車両100の走行中、図9に示すステップS121からS125の動作を実行することにより、自動操舵運転を行う。制御装置180は、まず、測位装置120によって生成された作業車両100の位置を示すデータを取得する(ステップS121)。次に、制御装置180は、作業車両100の位置と、目標経路との偏差を算出する(ステップS122)。偏差は、その時点における作業車両100の位置と、目標経路との距離を表す。制御装置180は、算出した位置の偏差が予め設定された閾値を超えるか否かを判断する(ステップS123)。偏差が閾値を超える場合、制御装置180は、偏差が小さくなるように、駆動装置140に含まれる操舵装置の制御パラメータを変更することにより、操舵角を変更する。ステップS123において偏差が閾値を超えない場合、ステップS124の動作は省略される。続くステップS125において、制御装置180は、動作終了の指令を受けたか否かを判断する。動作終了の指令は、例えばユーザが操作端末200を用いて自動操舵モードの停止を指示したり、作業車両100が目的地に到達したりした場合に出され得る。動作終了の指令が出されていない場合、ステップS121に戻り、新たに計測された作業車両100の位置に基づいて、同様の動作を実行する。制御装置180は、動作終了の指令が出されるまで、ステップS121からS125の動作を繰り返す。上記の動作は、制御装置180におけるECU183によって実行される。
図9に示す例では、制御装置180は、測位装置120によって特定された作業車両100の位置と目標経路との偏差のみに基づいて駆動装置140を制御するが、方位の偏差もさらに考慮して制御してもよい。例えば、制御装置180は、測位装置120によって特定された作業車両100の向きと、目標経路の方向との角度差である方位偏差が予め設定された閾値を超える場合に、その偏差に応じて駆動装置140の操舵装置の制御パラメータ(例えば操舵角)を変更してもよい。
以下、図10Aから図10Dを参照しながら、制御装置180による操舵制御の例をより具体的に説明する。
図10Aは、目標経路Pに沿って走行する作業車両100の例を示す図である。図10Bは、目標経路Pから右にシフトした位置にある作業車両100の例を示す図である。図10Cは、目標経路Pから左にシフトした位置にある作業車両100の例を示す図である。図10Dは、目標経路Pに対して傾斜した方向を向いている作業車両100の例を示す図である。これらの図において、測位装置120によって計測された作業車両100の位置および向きを示すポーズがr(x,y,θ)と表現されている。(x,y)は、地球に固定された2次元座標系であるXY座標系における作業車両100の基準点の位置を表す座標である。図10Aから図10Dに示す例において、作業車両100の基準点はキャビン上のGNSSアンテナが設置された位置にあるが、基準点の位置は任意である。θは、作業車両100の計測された向きを表す角度である。図示されている例においては、目標経路PがY軸に平行であるが、一般的には目標経路PはY軸に平行であるとは限らない。
図10Aに示すように、作業車両100の位置および向きが目標経路Pから外れていない場合には、制御装置180は、作業車両100の操舵角および速度を変更せずに維持する。
図10Bに示すように、作業車両100の位置が目標経路Pから右側にシフトしている場合には、制御装置180は、作業車両100の走行方向が左寄りに傾き、経路Pに近付くように、駆動装置140に含まれるステアリングホイールの回転角を変更して操舵角を変更する。このとき、操舵角に加えて速度も併せて変更してもよい。操舵角の大きさは、例えば位置偏差Δxの大きさに応じて調整され得る。
図10Cに示すように、作業車両100の位置が目標経路Pから左側にシフトしている場合には、制御装置180は、作業車両100の走行方向が右寄りに傾き、経路Pに近付くように、ステアリングホイールの回転角を変更して操舵角を変更する。この場合も、操舵角に加えて速度も併せて変更してもよい。操舵角の変化量は、例えば位置偏差Δxの大きさに応じて調整され得る。
図10Dに示すように、作業車両100の位置は目標経路Pから大きく外れていないが、向きが目標経路Pの方向とは異なる場合は、制御装置180は、方位偏差Δθが小さくなるように操舵角を変更する。この場合も、操舵角に加えて速度も併せて変更してもよい。操舵角の大きさは、例えば位置偏差Δxおよび方位偏差Δθのそれぞれの大きさに応じて調整され得る。例えば、位置偏差Δxの絶対値が小さいほど方位偏差Δθに応じた操舵角の変化量を大きくしてもよい。位置偏差Δxの絶対値が大きい場合には、経路Pに戻るために操舵角を大きく変化させることになるため、必然的に方位偏差Δθの絶対値が大きくなる。逆に、位置偏差Δxの絶対値が小さい場合には、方位偏差Δθをゼロに近づけることが必要である。このため、操舵角を決定するための方位偏差Δθの重み(すなわち制御ゲイン)を相対的に大きくすることが妥当である。
作業車両100の操舵制御および速度制御には、PID制御またはMPC制御(モデル予測制御)などの制御技術が適用され得る。これらの制御技術を適用することにより、作業車両100を目標経路Pに近付ける制御を滑らかにすることができる。
なお、走行中に1つ以上の障害物センサ130によって障害物が検出された場合には、制御装置180は、作業車両100を停止させるか、自動操舵モードから手動操舵モードに切り替える。制御装置180は、障害物が検出された場合に障害物を回避するように駆動装置140を制御してもよい。
次に、自動操舵モードにおいて、作業車両100が目標経路を逸脱した場合に警告を出力する動作の例を説明する。
本実施形態における制御装置180は、作業車両100が自動操舵モードで走行しているとき、作業車両100の位置が目標経路から基準距離以上離れた場合に、操作端末200の表示装置、およびブザー220に警告を出力させる。操作端末200の表示装置、およびブザー220は、警告装置として機能する。表示装置は、作業車両100が目標経路から逸脱していることを示す警告表示(例えばポップアップ通知)を表示する。ブザー220は、警告音を出力する。このような動作により、ユーザに、作業車両100が経路から逸脱していることを通知することができる。基準距離は、作業車両100が主経路P1に沿って走行しているときと、作業車両100が旋回経路P2に沿って走行しているときとで異なる値に設定されてもよい。以下の説明において、主経路P1に対応する基準距離を「第1基準距離」と表記し、旋回経路P2に対応する基準距離を「第2基準距離」と表記することがある。ユーザが操作端末200を操作することにより、第1基準距離および第2基準距離を個別に設定できるようにしてもよい。
図11Aは、経路逸脱の通知に関する設定画面の一例を示す図である。図11Aの例では、作業領域70と枕地80とで個別に基準距離(図11Aでは「経路ずれ量」と表記)を設定できる。ユーザは、操作端末200に表示される図11Aに示すような設定画面から、それぞれの基準距離を設定することができる。図11Aの例では、第1基準距離が0.5mに設定され、第2基準距離が1.1mに設定されている。各基準距離の値は、所定の範囲内でユーザが任意に変更することができる。
図11Bは、経路逸脱の通知に関する設定画面の他の例を示す図である。図11Bに示す例では、ユーザが設定可能な基準距離の値は1つである。すなわち、作業領域70と枕地80とで共通の基準距離が設定される。このように、作業領域70と枕地80とで共通の基準距離が設定されるように設定画面が構成されていてもよい。
本実施形態では、作業車両100が作業領域70内を走行しているときと枕地80で旋回しているときの両方で、経路逸脱時に警告が出力される。このような動作に代えて、例えば作業車両100が枕地80で旋回している場合のみ、経路逸脱時に警告が出力されるようにしてもよい。枕地80では、旋回が繰り返されることによって地面が荒れていることがあり、作業領域70よりも経路の逸脱が生じやすい傾向がある。また、枕地80は圃場の外周縁の近傍に位置するため、作業車両100が目標経路から逸脱することによる影響が作業領域70と比較して一般に大きい。このため、作業車両100が枕地80で旋回している場合にのみ、経路逸脱時に警告が出力される構成であっても、有益な効果が得られる。
経路逸脱時の通知は、1回だけでなく、複数回行ってもよい。例えば、制御装置180は、警告装置(本実施形態では表示装置またはブザー220)に警告を出力させてから一定時間が経過した後、依然として作業車両100の位置が目標経路(主経路または旋回経路)から基準距離以上離れている場合、最初の警告よりも高い警告効果を有する第2の警告を警告装置に出力させてもよい。例えば、先に出力された警告音よりも大きい音量の警告音をブザー220に出力させてもよい。あるいは、表示装置に、先に出力された警告表示よりも目立つ警告表示を出力させてもよい。
図12Aは、経路逸脱時に2回の警告を出力する動作の例を示すフローチャートである。この例では、制御装置180は、まず、作業車両100の位置と目標経路との偏差を取得する(ステップS131)。このステップS131は、図9に示すステップS122において算出された偏差の値を取得する動作を表す。制御装置180は、偏差が基準距離以上であるか否かを判断する(ステップS132)。偏差が基準距離未満である場合、ステップS131に戻る。偏差が基準距離以上である場合、制御装置180は、第1の警告を警告装置に出力させる(ステップS133)。第1の警告は、例えばブザー220による警告音、および/または表示装置に表示されるポップアップ通知であり得る。ステップS133の後、制御装置180は、予め設定された一定の時間(例えば2秒)が経過したかを判断する(ステップS134)。一定の時間が経過すると、制御装置180は、再び作業車両の位置と目標経路との偏差を取得する(ステップS135)。制御装置180は、偏差が基準距離以上であるか否かを判断する(ステップS136)。偏差が基準距離未満である場合、ステップS131に戻る。偏差が基準距離以上である場合、制御装置180は、第2の警告を警告装置に出力させる(ステップS137)。第2の警告は、第1の警告よりも高い警告効果を有する。例えば、より大音量の警告音、またはより目立つ警告表示が第2の警告として出力され得る。より目立つ警告表示は、例えば、より大きいウインドウのポップアップ通知、より明るい色のポップアップ通知、または点滅するポップアップ通知等であり得る。
図12Bは、経路逸脱時に2回の警告を出力する動作の他の例を示すフローチャートである。この例では、制御装置180は、警告装置に第1の警告を出力させた後、作業車両100の位置が目標経路(主経路または旋回経路)から、上記の基準距離(第1の基準距離と称する。)よりも大きい第2の基準距離以上に離れた場合、第1の警告よりも高い警告効果を有する第2の警告を警告装置に出力させる。第2の基準距離は、第1の基準距離に、1よりも大きい所定の定数(例えば1.5倍)を乗じた値であり得る。図12Bの例では、制御装置180は、作業車両100の位置と目標経路との偏差を取得する(ステップS141)。制御装置180は、偏差が第1の基準距離以上であるか否かを判断する(ステップS142)。偏差が第1の基準距離未満である場合、ステップS141に戻る。偏差が基準距離以上である場合、制御装置180は、第1の警告を警告装置に出力させる(ステップS143)。ステップS141からS143の動作は、図12Aに示すステップS131からS133の動作とそれぞれ同じである。ステップS143の後、制御装置180は、作業車両100の位置と目標経路との偏差を再び取得する(ステップS144)。制御装置180は、偏差が第1の基準距離に所定の定数(例えば1.5)を乗じた値(第2の基準距離)以上であるか否かを判断する(ステップS145)。偏差が第2の基準距離未満である場合、ステップS141に戻る。偏差が第2の基準距離以上である場合、制御装置180は、第1の警告よりも警告効果の高い第2の警告を出力する(ステップS146)。以上の動作により、第1の警告が出力された後、作業車両100が目標経路からさらに逸脱した場合に、より警告効果の高い第2の警告を出力することができる。
上記の各例では、作業車両100の位置が旋回経路から基準距離以上離れた場合、ブザー220等による通知が行われるが、作業車両100の走行は継続される。そのような動作に限らず、制御装置180は、作業車両100の位置が旋回経路から基準距離以上離れた場合に、ブザー220等による通知を行った上で、作業車両100を停止させてもよい。あるいは、図12Aまたは図12Bに示す例において、第1の警告を出力するときには走行を継続させ、第2の警告を出力するときに作業車両100を停止させてもよい。警告を出力する場合の基準距離と、停止させる場合の基準距離とを個別に設定できるようにしてもよい。作業車両100が目標経路から逸脱した場合に作業車両100を停止することにより、目標経路からのさらなる逸脱を回避することができる。なお、経路逸脱時の警告は3回以上出力されてもよい。
次に、操作端末200の表示装置に表示されるポップアップ通知の例を説明する。
図13Aは、経路逸脱時に表示されるポップアップ通知の例を示す図である。作業車両100が自動操舵で走行しているとき、操作端末200の表示装置には、図13Aに示すように、作業車両100および目標経路Pを含む圃場の地図が表示される。作業車両100が目標経路Pから基準距離以上離れた場合、ブザー220からビープ音が警告音として発出されるとともに、図13Aに示すようにポップアップ通知90が表示される。ポップアップ通知90は、例えば「経路を1m逸脱しています。」といったメッセージを含み得る。図13Aの例では、ポップアップ通知90に加えて、自動操舵モードから手動操舵モードに切り替えるか否かをユーザに確認する表示を含むポップアップ通知91も表示される。ユーザは、画面右下に表示されているボタン98を押すことで、自動操舵モードから手動操舵モードに切り替えることができる。ユーザは、ボタン98の右に表示されているボタン99を押すことで、自動操舵モードを継続することができる。
図13Bは、手動操舵モードに切り替えた後、ユーザの運転によって作業車両100が目標経路P上に正しく位置した状態における表示画面の例を示す図である。この例では、制御装置180は、手動操舵モードにおける旋回が終了した後、自動操舵モードに復帰するか否かをユーザに確認するためのポップアップ通知92を表示装置に表示させる。ユーザがボタン98を押すと、その操作に応答して、制御装置180は、自動操舵モードに復帰する。ユーザがボタン99を押すと、手動操舵モードが継続される。
作業車両100が自動操舵で旋回経路に進入する場合、クルーズコントロール機能が有効、すなわち制御装置180が速度を自動で制御している場合と、ユーザが手動で速度を制御している場合とがある。クルーズコントロール機能が有効である状態で作業車両100が旋回経路に進入し、経路の逸脱が生じ、ユーザがポップアップ通知91に従って自動操舵モードから手動操舵モードに切り替えた場合、制御装置180は、手動操舵モードにおける旋回が終了した後、クルーズコントロール機能を有効にした状態で自動操舵モードに復帰してもよい。そのような動作により、ユーザが再度クルーズコントロール機能を有効にする操作を行うことなく、クルーズコントロールが継続されるため、利便性を高めることができる。
本実施形態では、作業車両100が目標経路Pから逸脱した場合に操作端末200にポップアップ通知90が表示されるが、この機能を省略してもよい。その場合、経路の逸脱が生じた場合、ブザー220による警告音のみが警告として出力される。その場合であっても、ユーザは、ブザー220からの警告音によって経路の逸脱にすぐに気づくことができる。警告として、ブザー220またはスピーカなどの音声出力装置からの警告音が出力される形態では、ユーザが表示装置の画面を見ていなくても経路の逸脱に気付くことができる。ユーザは常に画面を見ているわけではないので、音声出力装置に警告音を出力させることで、経路の逸脱をユーザにより早く通知することができる。
以上の各例では、制御装置180は、作業車両100の位置と目標経路との偏差が基準距離以上になった場合に、ブザー220等の警告装置に警告を出力させる。そのような動作に加えて、制御装置180は、作業車両100が目標経路から大きく外れそうな場合に、作業車両100を減速させたり、ユーザに通知したりしてもよい。例えば、制御装置180は、警告装置に警告を出力させる前に、旋回中の作業車両100の位置と旋回経路との偏差の時間変化率、作業車両100の加速度の大きさ、作業車両100のピッチ角の時間変化率、および作業車両100のロール角の時間変化率の少なくとも1つが、それぞれの閾値を超えた場合に、警告装置に他の警告を出力させる動作、および/または作業車両100を減速させる動作を実行してもよい。そのような動作により、作業車両100が目標経路から逸脱しそうな場合に、逸脱を未然に防ぐことが容易になる。
制御装置180は、警告装置に警告を出力させたとき、その旋回経路を記憶装置170に記憶させてもよい。制御装置180は、次に作業車両100が旋回経路に隣接する旋回経路に沿って走行する場合、その旋回経路に到達する前に、警告装置に他の警告を出力させる動作、および/または作業車両100を減速させる動作を行ってもよい。作業車両100が目標の旋回経路から大きく外れる場合、その旋回経路の周辺では地面が荒れている可能性が高い。そのような荒れている可能性が高い枕地に位置する旋回経路を記録することにより、次にその周辺に位置する隣接する旋回経路を走行するときに、事前に通知したり、減速してから旋回したりすることで、荒れた枕地での旋回をより円滑に行うことができる。
以上のように、本実施形態によれば、作業車両100が自動操舵で旋回しているときに経路の逸脱が生じた場合に、ユーザに素早く通知することができる。これにより、例えばユーザが手動運転によって作業車両100を目標経路に戻す動作をすぐに実行することができる。その結果、例えば作業車両100が圃場外に出たり、目標経路への復帰までに長い時間を要したりするといった課題を解決することができる。また、ユーザが要求する自動操舵の精度が満たされていない場合に、ユーザが早い段階で気付くことができる。
(実施形態2)
次に、本開示の例示的な第2の実施形態を説明する。
本実施形態の作業車両100は、自動操舵によって旋回経路に沿って旋回するときに、旋回経路の曲率に応じて速度を制御する。これにより、旋回経路の曲率が大きい場合であっても、作業車両100が旋回経路から逸脱することを抑制することができる。本実施形態の作業車両100の構成は、実施形態1における作業車両100の構成と同じである。以下、実施形態1と異なる点を主に説明し、重複する事項についての説明は省略する。
図14Aは、作業車両100が高速で旋回するときに生じ得る目標経路Pからの逸脱の例を示す図である。旋回経路は、一般に曲率が大きい(すなわち曲率半径が小さい)。このため、作業車両100が枕地80において高速で旋回すると、作業車両の旋回性能によっては、制御の遅延等に起因して、作業車両100が目標の旋回経路から外れてしまう場合がある。図14Aの右の図において、実線の曲線は作業車両100の実際の走行経路の例を示している。このような逸脱が生じた場合、作業車両100が旋回時に圃場外に出てしまったり、本来の経路に復帰するまでに時間を要したりする可能性がある。
上記の課題は、旋回経路に限らず、主経路が急カーブの部分を含む場合にも同様に発生し得る。図14Bは、作業車両100が作業領域70内で急カーブを含む主経路に沿って高速で走行するときに生じ得る目標経路Pからの逸脱の例を示す図である。図14Bの右の図に示すように、作業車両100が目標経路Pから大きく外れる可能性がある。このように目標経路Pからの逸脱が生じると、作業箇所の重なりまたは抜けが生じ、作業のやり直しが必要になる場合がある。
そこで、本実施形態では、自動操舵モードにおいて、制御装置180が、目標経路Pの曲率に応じて作業車両100の速度を制御する。例えば、制御装置180は、目標経路Pの曲率が大きいほど(すなわち曲率半径が小さいほど)、作業車両100の速度を低くする。このような制御により、例えば枕地で旋回するときに、作業車両100が目標の旋回経路から逸脱することを抑制することができる。また、作業領域70において、目標経路Pに急カーブの箇所が含まれている場合であっても、作業箇所の重なりまたは抜けを少なくすることができる。
以下、本実施形態における速度制御の具体例を説明する。以下では、目標経路の曲率半径に基づいて作業車両100の速度を制御する例を説明する。曲率半径に代えて、その逆数である曲率を計算し、曲率に基づいて作業車両100の速度を制御してもよい。
まず、曲率半径の計算方法を説明する。
図15は、曲率半径の計算位置の例を示す図である。曲率半径は、例えば操舵制御の基準となる作業車両100の基準点の位置、またはその位置よりも所定距離(例えば数メートル程度)だけ前方の位置について計算され得る。基準点の位置は、例えば、測位装置120におけるGNSSアンテナが設置された位置、後車軸の中心位置、または作業機300の中心位置であり得る。基準点の位置よりも所定距離だけ前方の位置を曲率半径の計算位置にする場合、所定距離は固定値であってもよいし、作業車両100の速度に応じて所定距離を変化させてもよい。
図16は、曲率半径の計算方法の例を示す図である。曲率半径は、図15に示すいずれかの計算位置とその近傍の2点とを含む目標経路上の3点を決定し、それらの3点を通る円を決定することによって計算される。例えば、3点の座標を(x1,y1)、(x2,y2)、(x3,y3)とし、円の中心座標を(a,b)、半径をrとすると、以下の連立方程式を解くことによって円の中心座標(a,b)および半径rを求めることができる。
(x1-a)2+(y1-b)2=r2
(x2-a)2+(y2-b)2=r2
(x3-a)2+(y3-b)2=r2
制御装置180は、半径rを曲率半径として計算する。
次に、曲率半径に応じて作業車両100の速度を制限する動作の具体例を説明する。
図17は、曲率半径に応じて作業車両100の速度を制限する動作の第1の例を示すフローチャートである。前提として、作業車両100は自動操舵で走行し、速度はユーザによって調整されるか、またはオートクルーズコントロールによって一定の速度に維持されているものとする。制御装置180は、作業車両100が旋回経路に沿って旋回するとき、またはカーブを含む主経路に沿って走行するとき、図17に示す動作を実行する。図17の例では、制御装置180は、まず、作業車両100の速度(以下、「車速」とも称する。)が所定の制限速度(例えば10km/h)よりも高いか否かを判断する(ステップS201)。制限速度は、作業車両100の旋回性能および旋回経路の最小曲率半径に基づいて予め決定され、記憶装置170に記録される。車速が制限速度を超えていない場合、所定時間経過後(例えば0.2秒後)、再びステップS201の動作を実行する。車速が制限速度を超えている場合、制御装置180は、目標経路(旋回経路または主経路)の曲率半径を計算する(ステップS202)。制御装置180は、前述の方法により、目標経路上の、その時点での作業車両100の基準点の位置、または基準点から所定距離(例えば1メートル)だけ前方の位置での曲率半径を計算する。続いて、制御装置180は、計算した曲率半径が基準値未満であるか否かを判断する(ステップS203)。なお、曲率半径が基準値未満であるか否かを判断することは、曲率が基準値を超えるか否かを判断することと等価である。曲率半径または曲率の基準値は、作業車両100の旋回性能に応じて予め決定され、記憶装置170に記録される。曲率半径が基準値以上である場合(すなわち、曲率が基準値以下である場合)、ステップS201に戻る。曲率半径が基準値未満である場合(すなわち、曲率が基準値を超える場合)、制御装置180は、作業車両100の速度を制限速度以下に制限する(ステップS204)。制御装置180は、自動でブレーキ操作を行ったり、変速段の切り替えを行ったりすることにより、作業車両100を減速させる。制御装置180は、ユーザがアクセル操作を行っている場合であっても、強制的に作業車両100を減速させてもよい。あるいは、制御装置180は、ユーザがアクセル操作を行っている場合はユーザによるその操作を優先してもよい。言い換えれば、制御装置180は、オートクルーズコントロールによって自動で速度制御を行っている場合にのみ、曲率に応じた速度制限を行ってもよい。ステップS204の後、ステップS201に戻る。以上の動作が、作業車両100が自動操舵で走行している間、繰り返される。図17に示す動作を実行している間、自動操舵モードが解除されたり、動作停止の指令が出された場合、動作を終了する。このような動作により、作業車両100が旋回時またはカーブ走行時に目標経路から逸脱することを抑制することができる。
図18は、曲率半径に応じて作業車両100の速度を制限する動作の第2の例を示すフローチャートである。この例では、制限速度は固定値ではなく、曲率半径に応じて決定される可変値である。記憶装置170には、曲率半径と制限速度との対応関係を規定するテーブルまたは関数などのデータが予め記録されている。なお、曲率半径は曲率の逆数であるため、曲率半径と制限速度との対応関係を規定するデータは、曲率と制限速度との対応関係を規定するデータと等価である。図18の例において、制御装置180は、作業車両100が目標経路に沿って自動操舵で走行しているとき、目標経路の曲率半径を計算する(ステップS211)。次に、制御装置180は、記憶装置170に記録されたデータと、計算した曲率半径とに基づいて、制限速度を決定する(ステップS212)。制御装置180は、車速が制限速度を超えているか否かを判断する(ステップS213)。車速が制限速度を超えていない場合、ステップS211に戻る。車速が制限速度を超えている場合、制御装置180は、車速を制限速度以下に制限する(ステップS214)。ステップS214の後、ステップS211に戻る。以上の動作が、作業車両100が自動操舵で走行している間、繰り返される。図18に示す動作を実行している間、自動操舵モードが解除されたり、動作停止の指令が出された場合、動作を終了する。このような動作により、作業車両100が旋回時またはカーブ走行時に目標経路から逸脱することを抑制することができる。
続いて、図19Aから図19Dを参照して、曲率と制限速度との対応関係を規定するデータの例を説明する。
図19Aは、曲率半径の増加に対して制限速度が単調かつ線形的に増加する関数の例を示すグラフである。図19Bは、曲率半径の増加に対して制限速度が単調に増加する他の関数の例を示すグラフである。図19Bの例では、複数の点の間が線形補間された折れ線状の関数のデータが用いられる。図19Cは、曲率半径の増加に対して制限速度が非線形的に増加する関数の例を示すグラフである。図19Dは、制限速度が曲率半径の平方根に比例する関数の例を示すグラフである。図19Dの例では、作業車両100の横加速度が閾値以下になるように車速が制限される。操舵制御が適切に行われるのは、横加速度が小さい場合である。横加速度をa、車速をv、曲率半径をrとすると、v=√(r・a)の関係が成立する。曲率半径が小さい(すなわち曲率が大きい)場合でも横加速度aが一定値以下になるように、図19Dに示すような関数に従って制限速度を設定することが有効である。図19Aから図19Dのいずれかに示すような関数またはテーブルのデータが、曲率と制限速度との対応関係を規定するデータとして用いられ得る。これらの例のように、制限速度は、曲率半径が小さいほど(すなわち曲率が大きいほど)低い値に設定され得る。
制御装置180は、作業車両100の走行中、旋回経路の曲率を繰り返し計算し、曲率の時間的な変化率に応じて制限速度を変化させてもよい。曲率を計算することは、曲率半径を計算することと同義であり、曲率の変化率に応じて制限速度を変化させることは、曲率半径の変化率に応じて制限速度を変化させることと同義である。作業車両100が目標経路から逸脱するケースとして、作業車両100の速度に対して曲率半径が小さすぎる(すなわち曲率が大きすぎる)ために操舵角を最大にしても曲がり切れない場合だけでなく、速度に対して曲率の時間変化率が高すぎるために操舵速度を最大にしても曲がり切れない場合もある。このため、曲率(または曲率半径)の時間変化率に応じて制限速度を変化させることが有効である。例えば、曲率(または曲率半径)の時間変化率の大きさ(すなわち絶対値)が大きいほど、制限速度を高くすることが有効である。
図20は、曲率半径の時間変化率に応じて作業車両100の速度を制限する動作の例を示すフローチャートである。この例では、制御装置180は、作業車両100が自動操舵で走行しているときに、目標経路の曲率半径の時間変化率(すなわち微分値)を計算する(ステップS221)。次に、制御装置180は、予め記憶装置170に記録されたテーブルと、計算した曲率半径の時間変化率に基づいて、制限速度を決定する。制御装置180は、車速が制限速度を超えているか否かを判断する(ステップS223)。車速が制限速度を超えていない場合、ステップS221に戻る。車速が制限速度を超えている場合、制御装置180は、車速を制限速度以下に制限する(ステップS224)。ステップS224の後、ステップS221に戻る。以上の動作が、作業車両100が自動操舵で走行している間、繰り返される。図20に示す動作を実行している間、自動操舵モードが解除されたり、動作停止の指令が出された場合、動作を終了する。このような動作により、作業車両100が旋回時またはカーブ走行時に目標経路から逸脱することを抑制することができる。
図21Aから図21Cは、図20の例において使用されるテーブルが規定する関数の例を示すグラフである。これらのグラフにおいて、横軸は曲率半径の時間変化率の絶対値を示している。図21Aは、曲率半径の時間変化率の絶対値の増加に対して制限速度が単調かつ線形的に増加する関数の例を示している。図21Bは、曲率半径の時間変化率の絶対値の増加に対して制限速度が単調に増加する他の関係の例を示している。図21Bの例では、複数の点の間が線形補間された関数のデータが用いられる。図21Cは、曲率半径の時間変化率の絶対値の増加に対して制限速度が単調かつ非線形的に増加する関数の例を示している。図21Aから図21Cのいずれかに示すような関数またはテーブルのデータが、曲率の変化率と制限速度との対応関係を規定するデータとして用いられ得る。これらの例では、制限速度は、曲率の時間変化率の絶対値が大きいほど低い値に設定される。
次に、作業車両100が旋回経路に沿って旋回するときに速度を制限する動作の他の例を説明する。
図22は、作業車両100が作業領域70における1つの主経路P1に沿って枕地80に向かって走行している状況の例を表している。作業車両100が比較的高い速度で枕地80に向かっている場合、制御装置180は、旋回経路P2の曲率に応じた速度制限を行うことにより、作業車両100が旋回経路P2から逸脱することを抑制する。ある例において、制御装置180は、作業車両100が旋回経路P2の始点S0に到達したとき、作業車両100の速度が制限速度を超え、かつ旋回経路P2の曲率が基準値を超える場合、作業車両100の速度を制限速度以下に低下させる。旋回経路P2の曲率が大きすぎる場合、または、枕地80に進入する作業車両100の速度が高すぎる場合、旋回経路P2の始点S0に作業車両100が到達したタイミングで減速を開始しても間に合わない場合がある。そのような場合には、制御装置180は、旋回経路P2の始点から所定距離d1だけ手前の地点に到達したときに、作業車両100の減速を開始してもよい。所定距離d1は、旋回経路P2の曲率または作業車両100の速度に応じて決定され得る。
制御装置180は、クルーズコントロール機能が有効である場合にのみ、前述した経路の曲率に応じた速度制御を行ってもよい。あるいは、制御装置180は、クルーズコントロール機能が無効である場合、すなわちユーザがアクセル操作を自ら行っている場合であっても、前述した経路の曲率に応じた速度制御を行ってもよい。
制御装置180は、クルーズコントロール機能が有効である場合、ユーザによって設定された基準速度で作業車両100を主経路P1に沿って走行させる。その状態で作業車両100が旋回経路P2に近付くと、前述のように、制御装置180は、旋回経路P2に沿って作業車両100を旋回経路P2の曲率に応じて決定される速度に減速して旋回させる。旋回後、制御装置180は、作業車両100の速度を基準速度に戻し、クルーズコントロールを継続してもよい。すなわち、旋回後、制御装置180は、旋回経路P2に接続された他の主経路P1に沿って、作業車両100を基準速度で走行させてもよい。
本実施形態において、作業車両100の操舵は、図3に示すECU183からの指令に従い、ECU182によって制御される。作業車両100の速度は、ECU181によって制御される。ECU182は、作業車両100の操舵を制御する第1制御回路として機能する。ECU181は、作業車両の速度を制御する第2制御回路として機能する。
制御装置180は、作業車両100が旋回経路P2を含む所定範囲内に進入したとき、操作端末200の表示装置に、作業車両100が旋回経路P2に接近したことを示すポップアップ通知を表示させてもよい。旋回経路P2を含む所定範囲は、例えば、旋回経路P2の端部から予め設定された所定の距離に位置する範囲である。
図23は、作業車両100が旋回経路P2に接近したことを示すポップアップ通知の例を示す図である。図23の例では、作業車両100が枕地に接近したとき、表示装置に、枕地に到達するまでに要する時間と距離の情報を含むポップアップ通知93が表示される。図23に示すポップアップ通知93は、「枕地まであと5秒」および「14.0m」の文言と、旋回方向が左であることを示すマークとを含む。
制御装置180は、作業車両100が旋回経路P2(または枕地)にどの程度接近したときにポップアップ通知93を表示するかを、作業車両100の速度に応じて変更してもよい。また、作業車両100が旋回経路P2にどの程度接近したときにポップアップ通知93を表示させるかをユーザが設定できるようにしてもよい。
図23の例では、さらに、画面左下に、自動枕地旋回、枕地でのオートクルーズコントロール、およびHMSトリガー(以下、これらの機能を「半自動運転機能」と称することがある。)に関する設定の確認をユーザに促すポップアップ通知94も表示されている。HMSトリガー機能は、枕地で旋回するときに、予め記録された動作シーケンスに従って一連の動作を実行する機能である。図23の例におけるポップアップ通知94は、自動枕地旋回がON、HMSトリガーがOFF、枕地でのオートクルーズコントロールがON、オートクルーズコントロールの設定速度が3km/hであることを示している。ユーザは、表示画面中の特定のアイコンまたはボタンを押したり、運転席に設けられている特定のスイッチを押したりすることにより、これらの半自動運転機能に関する設定を変更することができる。
このように、作業車両100が旋回経路P2に接近したときに表示されるポップアップ通知は、旋回方向、旋回開始地点までの距離および/または時間、自動操舵で旋回するか否か、および旋回時の速度の少なくとも1つの情報を含み得る。ポップアップ通知は、例えば旋回前と旋回後のライン番号などの他の情報を含んでいてもよい。
図23に示す表示画面には、設定画面に遷移するためのアイコン85、自動操舵(オートステア)機能のON/OFFを切り替えるためのアイコン86、オートクルーズコントロール機能が有効(ON)であることを示すインジケータ96、および自動枕地旋回機能が有効(ON)であることを示すインジケータ97が含まれている。制御装置180は、オートクルーズコントロール機能が有効であるとき、インジケータ96を点灯させ、自動枕地旋回機能が有効であるとき、インジケータ97を点灯させる。制御装置180は、旋回経路の曲率に基づいて作業車両100の速度を制限しているとき、操作端末200の表示装置に、速度を制限していることを示す情報を表示させてもよい。例えば、制御装置180は、旋回経路の曲率に基づいて作業車両100の速度を制限しているとき、インジケータ97を点滅させることによって速度を制限していることを表示してもよい。そのような表示により、誤動作ではなく、経路からの逸脱を回避するために減速していることをユーザに知らせることができる。
制御装置180は、作業車両100が旋回経路を含む所定範囲内に進入したとき、ブザー220または操作端末200のスピーカなどの音声出力装置に警告音を発出させてもよい。ポップアップ通知を表示するだけでなく、警告音を発出することにより、ユーザに枕地への接近を効果的に通知することができる。
(実施形態3)
次に、本開示の例示的な第3の実施形態を説明する。
前述のように、半自動運転機能は、枕地旋回機能、オートクルーズコントロール機能、およびHMSトリガー機能を含む。半自動運転が可能な作業車両100は、これらの機能を組み合わせた制御を行う。通常、旋回は枕地で行われるが、作業状況によってはユーザが任意のタイミングで旋回を実施する場合がある。ユーザが任意のタイミングで自動操舵による旋回を指示できる機能を、本明細書において「オンデマンド旋回」と呼ぶ。
ユーザが任意のタイミングで作業車両100を旋回させるときに、HMSトリガー機能およびオートクルーズコントロール機能を常に併用するかはユーザによって異なる。状況に応じて、作業機300で耕耘などの作業を行いながら旋回する場合もあれば、作業機300を停止および上昇させた状態で旋回する場合もある。
そこで、本実施形態では、ユーザによってオンデマンド旋回の操作が行われたときに、制御装置180が、HMSトリガー機能等を使用するか否かをユーザに選択させるためのポップアップを表示装置に表示させる。すなわち、制御装置180は、作業車両100が自動操舵によって複数の主経路の1つに沿って走行している最中にユーザによって旋回を指示する操作が行われたとき、当該操作に応答して、ポップアップを表示装置に表示させる。ポップアップは、予め記録された動作シーケンスに従って一連の動作を作業車両100に実行させるか否かをユーザに選択させるための表示を含む。作業車両100に一連の動作を実行させることが選択された場合、制御装置180は、予め記録された動作シーケンスに従って作業車両100に一連の動作を伴う旋回を実行させる。逆に、作業車両100に一連の動作を実行させないことが選択された場合、制御装置180は、作業車両100に当該一連の動作を伴わない旋回を実行させる。このような動作により、作業領域内で旋回するときに、ユーザが状況に応じてHMSトリガー機能を用いるか否かを選択することが可能になる。
前述のように、一連の動作は、旋回開始時に行われる第1の動作と、旋回終了時に行われる第2の動作とを含み得る。第1の動作は、作業車両100に連結される作業機300の上昇、作業機300への動力出力の停止、作業車両100が備えるデフロック機能の停止、二輪駆動モードから四輪駆動モードへの切り替え、および作業車両100のエンジン回転数の低下のうちの少なくとも1つの動作を含み得る。第2の動作は、作業機300の降下、作業機300への動力出力の開始、デフロック機能の開始、四輪駆動モードから二輪駆動モードへの切り替え、およびエンジン回転数の上昇のうちの少なくとも1つの動作を含み得る。制御装置180は、一連の動作の内容をユーザに設定させるための設定画面を表示装置に表示させることができる。制御装置180は、設定された一連の動作の内容に基づく動作シーケンスを記憶装置170に記憶させる。
以下、本実施形態の作業車両100の動作をより詳細に説明する。本実施形態の作業車両100の構成は実施形態1と同じである。以下、実施形態1とは異なる点を主に説明する。
図24は、本実施形態における作業車両100の動作の例を示す図である。図24において矢印で示されているように、本実施形態における作業車両100は、主経路P1に沿って自動操舵で走行している最中に、ユーザからの操作に応答して自動で旋回するオンデマンド旋回の機能を備える。ユーザは、作業車両100が自動操舵で走行しているときに、例えば操作端末200に表示された画面内の特定のボタンまたはアイコンを押すことにより、オンデマンド旋回を指示することができる。オンデマンド旋回が指示されると、制御装置180は、枕地80における通常の旋回動作と同様の一連の動作を実行するか否かをユーザに選択させるためのポップアップを表示装置に表示させる。ユーザが一連の動作を実行するか否かを選択した後、制御装置180は作業車両100に旋回を実行させる。このオンデマンド旋回においても、図24において点線で示す旋回経路P2に沿って作業車両100が旋回するときと同様に、実施形態1におけるブザー220などの警告装置による経路逸脱通知、および/または実施形態2における曲率に応じた速度制御を行ってもよい。
本実施形態では、制御装置180は、ユーザによる旋回を指示する操作に応答して作業車両100に旋回を実行させた後も自動操舵モードを継続する。これにより、旋回開始後にユーザが特に操作を行うことなく、自動操舵による走行を継続することができる。
図25は、直線状の主経路P1に沿って作業車両100が自動操舵で走行しているときに、表示装置に表示される画面の例を示す図である。この画面には、半自動運転に関する設定を行うためのアイコン85と、オンデマンド旋回を指示するためのアイコン87が含まれている。ユーザがアイコン85を押すと、オンデマンド旋回を含む半自動運転機能に関する設定を行うための設定画面に遷移する。作業車両100が走行しているときにユーザがアイコン87を押すと、オンデマンド旋回の動作が開始される。このとき、予め記録されたHMS動作シーケンスに従って一連の動作を実行するか否かを選択させるポップアップがまず表示される。
図26は、ユーザがアイコン87を押したときに表示されるポップアップ画面の例を示す図である。このポップアップ画面に従い、ユーザは、オンデマンド旋回の動作を設定することができる。この例におけるポップアップは、旋回方向(左/右)を指定する矢印、旋回時の飛ばし列数を指定するための入力ボックス、旋回中のオートクルーズコントールの実行有無(ON/OFF)および実行時の速度を示す表示、旋回後のオートクルーズコントールの実行有無(ON/OFF)および実行時の速度を示す表示、およびHMSトリガーのON/OFFを選択するためのボタンを含む。ユーザは、このポップアップ画面に従って設定を行い、右下のチェックボタン88を押すと、制御装置180は、設定された内容に従って作業車両100を旋回させる。ユーザがキャンセルボタン89を押すと、オンデマンド旋回をキャンセルし、主経路P1に沿った走行を継続する。
図26の例では、オンデマンド旋回の開始時に、ユーザが旋回方向、飛ばし列数、およびHMSトリガー機能を有効にするか否かを指定することができる。さらに、旋回時および旋回後のそれぞれについて、オートクルーズ機能を有効にするか否か、および有効にする場合の速度を変更できるようにしてもよい。このように、ポップアップは、旋回方向および飛ばし列数等の各種の項目をユーザに設定させるための表示を含む。制御装置180は、設定された旋回方向および飛ばし列数等の内容に従って、作業車両100に旋回を実行させる。
図26の例では、旋回時と旋回後の両方でクルーズコントロールがONに設定されている。このような場合、制御装置180は、クルーズコントロール機能が有効である状態でユーザによる旋回を指示する操作に応答して作業車両100に旋回を実行させた後もクルーズコントロール機能を有効にした状態を継続する。この場合、ユーザが全く操作を行うことなく、作業車両100の旋回および旋回後の走行を自動で行うことができる。
オンデマンド旋回に関する設定は、事前に行うことができる。図27は、図25におけるアイコン85を押した後に遷移する画面の例を示している。この例では、作業領域70(フィールド)および枕地80のそれぞれにおける半自動運転に関する設定を行うことができる。この画面に含まれる「フィールド」および「枕地」のいずれかのボタンをユーザが選択して右下のチェックボタンを押すと、選択された領域における半自動運転に関する設定を行うための画面に遷移する。
図28は、枕地での半自動運転に関する設定を行うための画面の例を示す図である。この画面において、ユーザは、HMSトリガー機能、オートクルーズコントロール機能、および経路からの逸脱を通知する場合の経路ずれ量に関する設定を行うことができる。ユーザは、「オートHMSトリガー」のアイコン81を押すことで、旋回時のHMSトリガー機能の有効/無効を切り替えることができる。ユーザはまた、「オートクルーズコントロール」のアイコン82を押すことで、オートクルーズコントロール機能の有効/無効を切り替えることができる。図28の例では、オートクルーズコントロール時の速度、および経路からの逸脱を通知する場合の経路ずれ量もユーザが設定することができる。この画面で設定された内容は、枕地旋回時だけでなく、オンデマンド旋回時にも適用され得る。枕地旋回時とオンデマンド旋回時とで異なる設定が可能であってもよい。
制御装置180は、オンデマンド旋回の指示がユーザから出されたとき、旋回前後の列の間隔に基づき、オンデマンド旋回の経路を作成し、その経路に沿って作業車両100を旋回させる。このとき、旋回前後の列の間隔が短い場合には、既に耕耘などの作業が完了した領域を作業車両100が踏んでしまう場合がある。そのような場合、制御装置180は、表示装置にポップアップなどの警告を表示させ、ユーザに警告してもよい。この機能が実装される場合、制御装置180は、作業領域70のうち、作業車両100による作業が完了した領域を記憶装置170に逐次記憶させる。制御装置180は、作成した経路と作業が完了した領域とが重なるとき、警告を表示装置に表示させる。制御装置180は、さらに、警告を表示装置に表示させるとき、旋回の経路をユーザに変更させることを可能にするユーザインターフェースを表示装置に表示させてもよい。例えば、作業済みの領域を作業車両100が踏まないような旋回経路を、ユーザがポップアップ表示内で選択できるようにしてもよい。
図29Aは、オンデマンド旋回の指示がユーザから出されたときに制御装置180が作成する経路の例を示す図である。この例における作業車両100は、作業機300を用いて耕耘作業を行う。以下の説明において、作業領域70のうち、作業機300によって耕耘作業が完了した領域を「既耕地」と称し、耕耘作業がまだ行われていない領域を「未耕地」と称する。図29Aに示す例では、作業領域70の一部は既耕地71であり、作業領域70の残りは未耕地72である。制御装置180が作成した経路の一部は、既耕地71に重なる。このような経路に沿って作業車両100が走行すると、作業車両100が既耕地71の一部を踏むことになる。枕地においては、このような経路に沿って旋回しても問題がないが、オンデマンド旋回においては、このような経路に沿って旋回すると、作業のやり直しが必要になる可能性がある。そこで、このような場合に、制御装置180は、表示装置にポップアップを表示し、既耕地71を踏まない旋回経路をユーザに選択させる。例えば図29Bにおいて破線矢印で示すような経路をユーザが選択できるようなユーザインターフェースを有するポップアップが表示され得る。
図30Aは、オンデマンド旋回時に既耕地と重なる経路が作成された場合に表示されるポップアップの例を示す図である。この例では、「既耕地を踏む可能性があります。」というメッセージを含むポップアップ95が表示される。図30Aの例では、画面下部のウインドウに、「経路を変更しますか?」というメッセージも表示される。経路を変更する場合、ユーザはチェックボタン98を押す。経路を変更しない場合、ユーザはキャンセルボタン99を押す。ユーザがチェックボタン98を押すと、例えば図30Bに示すように、制御装置180は、変更後の経路の候補を表示装置に表示させる。図30Bの例では、1つの経路の候補が表示されているが、複数の候補が表示されてもよい。あるいは、ユーザがドラッグアンドドロップなどの操作によって経路を編集できるようにしてもよい。図30Bの例では、経路の候補の1つが選択され、画面下部のウインドウに、「この経路に変更しますか?」というメッセージが表示される。ユーザがチェックボタン98を押すと、変更後の経路が決定され、作業車両100が当該経路に沿って旋回を開始する。ユーザがキャンセルボタン99を押すと、変更がキャンセルされる。
このように、制御装置180は、表示装置に旋回経路の候補を表示して、旋回開始後の作業車両100の動きをユーザに確認させることができる。そして、その動きがユーザの意図しない動きである場合は、ユーザが経路を再設定することができる。このような機能により、オンデマンド旋回時に作業車両100が既耕地などの作業済みの領域を踏むことを回避することができる。
以上のように、本実施形態では、ユーザによってオンデマンド旋回の開始の操作が行われたとき、HMSトリガー機能等の半自動運転機能の設定内容の確認および変更を可能にするポップアップが表示装置に表示される。これにより、オンデマンド旋回時にユーザが意図しない半自動運転機能の作動を防いだり、オンデマンド旋回時特有の動作をユーザが任意に設定したりすることができる。さらに、ユーザが旋回時の経路を選択することができるため、オンデマンド旋回時に作業車両100が作業済みの領域を踏むことを防ぐことができる。このため、作業のやり直しの必要性が生じることなく、作業効率を向上させることができる。
(実施形態4)
次に、本開示の第4の実施形態を説明する。
自動操舵で枕地旋回を行う場合、旋回時の経路は、作業幅または旋回可能な半径などの幾何学的な条件に基づいて作成される。しかし、所定の速度以上の速度で作業車両100が枕地に進入し、旋回経路に沿って旋回しようとすると、経路からの逸脱が大きくなる可能性がある。電子制御で変速制御またはブレーキ制御が可能な場合は進入時に減速またはブレーキングを即時に行うことが比較的容易である。しかし、変速制御またはブレーキ制御が油圧で行われる場合のように電子化されていない場合、減速またはブレーキングを即時に行うことは容易ではない。
そこで本実施形態では、作業車両100が自動操舵で枕地に進入するとき、速度が閾値を超えている場合は、自動操舵を解除する。また、枕地に侵入する時点では速度が閾値を超えていなくても、旋回中に速度が閾値を超えた場合、自動操舵を解除する。自動操舵を解除した後はユーザが手動操舵によって作業車両100を走行させる。ユーザが手動で操舵を行うことで、目標経路からの逸脱を抑制することができる。
本実施形態の作業車両100の構成は実施形態1における作業車両100の構成と同じである。以下、実施形態1とは異なる点を主に説明する。
図31は、本実施形態の作業車両100の動作を説明するための図である。図31は、作業車両100が作業領域70内の主経路P1の1つに沿って枕地80に向かって走行している様子を示している。本実施形態における制御装置180は、自動操舵モードにおいて、作業車両100が主経路P1の1つに沿って走行し、旋回経路P2の始点S0、または始点S0から所定距離d2だけ手前の地点S2に到達したとき、作業車両100の速度が閾値を超えているか否かを判断する。図22の例では、作業車両100のキャビンの上に搭載されたGNSSセンサの位置を作業車両100の基準位置とし、基準位置が旋回経路P2の始点S0から所定距離d2だけ手前の地点S2に到達したとき、作業車両100の速度が閾値を超えているか否かが判断される。作業車両100の速度が閾値を超えている場合、制御装置180は自動操舵モードを解除して手動操舵モードに切り替える。作業車両100の速度が閾値を超えていない場合、制御装置180は自動操舵モードを継続して作業車両100が旋回経路に沿って旋回するように作業車両100の操舵を制御する。
作業車両100の速度が閾値を超えているか否かの判断が行われる地点S2と旋回経路P2の始点S0との距離d2は、固定値に限らず、任意の値に設定され得る。距離d2は、作業車両100が所定時間(例えば5秒)の間に進む距離のように、速度によって異なる値に設定されてもよい。あるいは、距離d2は、旋回経路P2の曲率に応じて決定されてもよい。状況に応じて、距離d2はゼロ(0)に設定されてもよい。
距離d2は、予め記憶装置170に記録されたテーブルまたは関数などのデータに基づいて決定され得る。例えば、記憶装置170は、旋回経路P2の曲率と距離d2との対応関係を規定するテーブルまたは関数などのデータを記憶していてもよい。図32Aから図32Cは、旋回経路P2の曲率と距離d2との対応関係を示す関数の例を示している。制御装置180は、図32Aから図32Cのいずれかに示すような関数を規定するデータに基づいて、旋回経路P2の曲率に応じて距離d2を決定してもよい。距離d2は、旋回経路の曲率が大きいほど長くなるように設定され得る。曲率が旋回経路P2上で一定ではない場合は、旋回経路P2において最大の曲率に応じて所定距離を決定してもよい。記憶装置170は、作業車両100の速度と距離d2との対応関係を規定するテーブルまたは関数などのデータを記憶していてもよい。図33Aから図33Cは、作業車両100の速度と距離d2との対応関係を示す関数の例を示している。制御装置180は、図33Aから図33Cのいずれかに示すような関数を規定するデータに基づいて、主経路P1に沿って走行する作業車両100の速度に応じて距離d2を決定してもよい。距離d2は、作業車両100の速度が高いほど長くなるように設定され得る。
自動操舵モードを解除するか否かを判断する速度の閾値についても、固定値に限らず、変更可能であってもよい。例えば、旋回経路P2の曲率に応じて速度の閾値を変化させてもよい。記憶装置170は、旋回経路P2の曲率と速度の閾値との対応関係を規定するテーブルまたは関数などのデータを記憶していてもよい。図34Aから図34Cは、旋回経路P2の曲率と速度の閾値との対応関係を示す関数の例を示している。制御装置180は、図34Aから図34Cのいずれかに示すような関数を規定するデータに基づいて、旋回経路P2の曲率に応じて速度の閾値を決定してもよい。速度の閾値は、旋回経路P2の曲率が大きいほど小さい値に設定され得る。
図35は、本実施形態における制御装置180の動作の例を示すフローチャートである。作業車両100が自動操舵で走行している間、制御装置180は、図35に示す動作を実行する。制御装置180は、作業車両100の位置と次の旋回経路P2の始点S0との距離Dを計算する(ステップS401)。制御装置180は、計算した距離Dが上記の所定距離d2以下であるか否かを判断する(ステップS402)。距離Dが距離d2よりも大きい場合、ステップS401に戻る。距離Dが距離d2以下である場合、制御装置180は、そのときの作業車両100の速度(車速)が閾値を超えているか否かを判断する(ステップS403)。車速が閾値を超えていない場合、制御装置180は、自動操舵モードを継続し、旋回が終了したか否かを判断する(ステップS404)。ステップS404において旋回が終了していない場合、ステップS403に戻る。ステップS404において旋回が終了している場合、ステップS401に戻り、次の旋回経路について同様の動作が実行される。ステップS403において、車速が閾値を超えている場合、制御装置180は、自動操舵モードを解除して手動操舵モードに切り替える(ステップS405)。ステップS405の後、制御装置180は、旋回が終了したか否かを判断する(ステップS406)。ステップS406において旋回が終了していない場合、旋回が終了するまで、ステップS406の判断を一定時間(例えば数ミリ秒から数百ミリ秒程度)毎に繰り返す。ステップS406において旋回が終了している場合、制御装置180は、手動操舵モードから自動操舵モードに切り替える(ステップS407)。その後、ステップS401に戻り、次の旋回経路について同様の動作が実行される。図35に示す動作を実行している間、ユーザが自動操舵モードを解除する操作を行ったり、動作停止の指令が出された場合、動作を終了する。
図35に示す例では、制御装置180は、ステップS403において、車速が閾値を超えていないと判断した場合に、自動操舵モードを継続して作業車両100が旋回経路P2に沿って旋回するように作業車両100の操舵を制御する。その後、制御装置180は、旋回が終了していない限り、再びステップS403の判断を所定時間毎に行う。これは、ユーザによるアクセル操作によって作業車両100の速度が旋回中に増加することがあるからである。制御装置180は、旋回中に作業車両100の速度が閾値を超えたと判断した場合、ステップS405に進み、自動操舵モードを解除して手動操舵モードに切り替える。このように、旋回を開始する前に車速が閾値を超えていない場合であっても、旋回中に車速が閾値を超えた場合、自動操舵が解除される。一旦自動操舵が解除された後はユーザが手動操舵で作業車両100を運転する。ユーザが自ら操作することにより、作業車両100が旋回経路から逸脱することを回避することができる。
上記の例では、制御装置180は、ステップS405において自動操舵モードを解除して手動操舵モードに切り替えた場合、手動操舵モードにおける旋回が終了した後、ステップS407において自動操舵モードに復帰する。この復帰は、自動で行われてもよいし、ユーザの操作に基づいて行われてもよい。制御装置180は、手動操舵モードにおける旋回が終了した後、自動操舵モードに復帰するか否かをユーザに確認するためのポップアップ通知を表示装置に表示させてもよい。その場合、制御装置180は、ユーザの操作に応答して自動操舵モードに復帰する。このポップアップ通知は、例えば図13Bに示すポップアップ通知92と同様の通知である。
図35の例では、制御装置180は、クルーズコントロール機能が有効であるか無効であるかに関わらず、作業車両100の速度が閾値を超えているか否かの判断およびモードの切り替えを実行する。制御装置180は、クルーズコントロール機能が有効である場合のみ、作業車両100の速度が閾値を超えているか否かの判断およびモードの切り替えを実行してもよい。その場合には、自動操舵による旋回中に車速が増加することがないため、ステップS403において車速が閾値を超えていないと判断された場合に、ステップS404に遷移することなく、自動操舵で旋回を実行した後、ステップS401に戻る。
制御装置180は、クルーズコントロール機能が有効である状態でステップS405において自動操舵モードを解除して手動操舵モードに切り替えた場合、手動操舵モードにおける旋回が終了した後、ステップS407において、クルーズコントロール機能を有効にした状態で自動操舵モードに復帰してもよい。そのような動作により、手動操舵で旋回終了後、ユーザが再びクルーズコントロールを有効にする操作を省くことができる。
本実施形態においても、実施形態2と同様、制御装置180は、作業車両100が旋回経路を含む所定範囲内に進入したとき、表示装置に、作業車両100が旋回経路P2に接近したことを示すポップアップ通知を表示させてもよい。そのようなポップアップ通知の例は、図23に示すとおりである。また、実施形態2における旋回経路P2の曲率に応じた速度制限を行ってもよい。
制御装置180は、自動操舵モードから手動操舵モードに切り替えたとき、表示装置に、モードが切り替えられたことを示すポップアップ通知を表示させてもよい。図36は、そのようなポップアップ通知の例を示す図である。この例では、「手動操舵モードに切り替えました。」というメッセージを含むポップアップ通知が表示される。ユーザは、この通知を見て、作業車両100の操舵を手動で制御し、作業車両100が旋回経路から逸脱することを回避することができる。
制御装置180は、作業車両100が旋回経路を含む所定範囲内に進入したとき、ブザー220などの音声出力装置に警告音を発出させてもよい。ユーザは常に表示画面を見ているとは限らないため、警告音によって作業車両100の旋回経路への接近を通知することで、ユーザへの注意喚起をより効果的に行うことができる。制御装置180は、自動操舵モードから手動操舵モードに切り替えたとき、ブザー220などの音声出力装置に警告音を発出させてもよい。これにより、モードが切り替えられたことをユーザに効果的に通知することができる。
(他の実施形態)
以上の実施形態1から4のそれぞれの技術は、矛盾が生じない限りにおいて、他の実施形態の技術と組み合わせることができる。
以上の実施形態において、作業車両100は、無人で自動運転を行う作業車両であってもよい。その場合には、キャビン、運転席、ステアリングホイール、操作端末などの、有人運転にのみ必要な構成要素は、作業車両100に設けられていなくてもよい。無人の作業車両は、自律走行、またはユーザによる遠隔操作によって、前述の各実施形態における動作と同様の動作を実行してもよい。
以上の実施形態における各種の機能を提供する制御システムを、それらの機能を有しない作業車両に後から取り付けることもできる。そのような制御システムは、作業車両とは独立して製造および販売され得る。そのような制御システムで使用されるコンピュータプログラムも、作業車両とは独立して製造および販売され得る。コンピュータプログラムは、例えばコンピュータが読み取り可能な非一時的な記憶媒体に格納されて提供され得る。コンピュータプログラムは、電気通信回線(例えばインターネット)を介したダウンロードによっても提供され得る。
以上のように、本開示は、以下の項目に記載の制御システムおよび作業車両を含む。
[項目a1]
自動操舵運転を行う作業車両の制御システムであって、
前記作業車両の目標経路を記憶する記憶装置と、
測位装置によって特定された前記作業車両の位置、および前記記憶装置に記憶された前記目標経路に基づいて、前記作業車両が前記目標経路に沿って走行するように前記作業車両の操舵を制御する制御装置と、
を備え、
前記目標経路は、並列する複数の主経路と、前記複数の主経路を接続する1つ以上の旋回経路とを含み、
前記制御装置は、前記作業車両が自動操舵によって前記旋回経路の1つに沿って旋回しているとき、前記作業車両の位置が前記旋回経路から基準距離以上離れた場合、警告装置に警告を出力させる、
制御システム。
[項目a2]
前記警告装置は、警告音を前記警告として出力するブザーまたはスピーカを含む、項目a1に記載の制御システム。
[項目a3]
前記制御装置は、前記警告装置に前記警告を出力させてから一定時間が経過した後、前記作業車両の位置が前記旋回経路から前記基準距離以上離れている場合、前記警告よりも高い警告効果を有する警告を前記警告装置に出力させる、項目a1またはa2に記載の制御システム。
[項目a4]
前記制御装置は、前記警告装置に前記警告を出力させた後、前記作業車両の位置が前記旋回経路から前記基準距離に1よりも大きい所定の定数を乗じた値以上離れた場合、前記警告よりも高い警告効果を有する警告を前記警告装置に出力させる、項目a1またはa2に記載の制御システム。
[項目a5]
前記制御装置は、
前記基準距離をユーザに設定させるための設定画面を表示装置に表示させ、
設定された前記基準距離に基づいて、前記作業車両の位置が前記旋回経路から前記基準距離以上離れたか否かを判断する、
項目a1からa4のいずれかに記載の制御システム。
[項目a6]
前記制御装置は、前記作業車両が自動操舵によって前記複数の主経路の1つに沿って走行しているとき、前記作業車両の位置が前記主経路から前記基準距離または前記基準距離とは異なる他の基準距離以上離れた場合、前記警告装置に警告を出力させる、項目a1からa5のいずれかに記載の制御システム。
[項目a7]
前記警告装置は、ポップアップ通知を前記警告として出力する表示装置を含む、項目a1からa6のいずれかに記載の制御システム。
[項目a8]
前記制御装置は、自動操舵モードおよび手動操舵モードを切り替えることが可能であり、
前記ポップアップ通知は、前記自動操舵モードから前記手動操舵モードに切り替えるか否かをユーザに確認する表示を含む、
項目a7に記載の制御システム。
[項目a9]
前記制御装置は、
前記ユーザの操作に応答して前記自動操舵モードから前記手動操舵モードに切り替え、
前記手動操舵モードにおける旋回が終了した後、前記自動操舵モードに復帰する、
項目a8に記載の制御システム。
[項目a10]
前記制御装置は、
前記手動操舵モードにおける旋回が終了した後、前記自動操舵モードに復帰するか否かを前記ユーザに確認するためのポップアップ通知を前記表示装置に表示させ、
前記ユーザの操作に応答して前記自動操舵モードに復帰する、
項目a9に記載の制御システム。
[項目a11]
前記制御装置は、
前記作業車両を、ユーザによって設定された基準速度で走行させるクルーズコントロール機能を備え、
前記クルーズコントロール機能が有効である状態で前記作業車両が前記旋回経路に進入し、前記ユーザが前記ポップアップ通知に従って前記自動操舵モードから前記手動操舵モードに切り替え、前記手動操舵モードにおける旋回が終了した後、前記クルーズコントロール機能を有効にした状態で前記自動操舵モードに復帰する、
項目a9またはa10に記載の制御システム。
[項目a12]
前記制御装置は、前記作業車両の位置が前記旋回経路から前記基準距離以上離れた場合、前記作業車両を停止させる、項目a1からa11のいずれかに記載の制御システム。
[項目a13]
前記制御装置は、前記警告装置に前記警告を出力させる前に、旋回中の前記作業車両の位置と前記旋回経路との偏差の時間変化率、前記作業車両の加速度の大きさ、前記作業車両のピッチ角の時間変化率、および前記作業車両のロール角の時間変化率の少なくとも1つが、それぞれの閾値を超えた場合、前記警告装置に他の警告を出力させる、および/または前記作業車両を減速させる、項目a1からa12のいずれかに記載の制御システム。
[項目a14]
前記制御装置は、
前記警告装置に前記警告を出力させたとき、前記旋回経路を前記記憶装置に記憶させ、
次に前記作業車両が前記旋回経路に隣接する旋回経路に沿って走行する場合、前記旋回経路に到達する前に、前記警告装置に他の警告を出力させる、および/または前記作業車両を減速させる、
項目a1からa13のいずれかに記載の制御システム。
[項目a15]
前記複数の主経路は、圃場内に位置し、
前記1つ以上の旋回経路は、前記圃場の枕地に位置する、
項目a1からa14のいずれかに記載の制御システム。
[項目a16]
項目a1からa15のいずれかに記載の制御システムと、
前記測位装置と、
前記警告装置と、
を備える作業車両。
[項目b1]
自動操舵運転を行う作業車両の制御システムであって、
前記作業車両の目標経路を記憶する記憶装置と、
測位装置によって特定された前記作業車両の位置、および前記記憶装置に記憶された前記目標経路に基づいて、前記作業車両が前記目標経路に沿って走行するように前記作業車両の操舵を制御する制御装置と、
を備え、
前記目標経路は、並列する複数の主経路と、前記複数の主経路を接続する1つ以上の旋回経路とを含み、
前記制御装置は、前記作業車両が自動操舵によって前記旋回経路に沿って旋回するときの速度を、前記旋回経路の曲率に応じて変化させる、
制御システム。
[項目b2]
前記制御装置は、前記旋回経路の曲率が基準値を超える場合、前記作業車両が前記旋回経路に沿って旋回するときの速度を、制限速度以下に制限する、項目b1に記載の制御システム。
[項目b3]
前記制御装置は、前記作業車両が自動操舵によって前記複数の主経路の1つに沿って走行し、前記主経路に接続された旋回経路の始点または前記始点から所定距離だけ手前の地点に到達したとき、前記作業車両の速度が制限速度を超え、かつ前記旋回経路の曲率が基準値を超える場合、前記作業車両の速度を前記制限速度以下に低下させる、項目b1またはb2に記載の制御システム。
[項目b4]
前記記憶装置は、前記曲率と前記制限速度との対応関係を規定するデータをさらに記憶し、
前記制御装置は、前記データに基づいて、前記曲率に応じて前記制限速度を決定し、
前記制限速度は、前記曲率が大きいほど低い、
項目b2またはb3に記載の制御システム。
[項目b5]
前記制御装置は、前記作業車両の走行中、前記旋回経路の曲率を繰り返し計算し、前記曲率の変化率に応じて前記制限速度を変化させる、項目b2からb4のいずれかに記載の制御システム。
[項目b6]
前記制御装置は、
前記作業車両を、ユーザによって設定された基準速度で走行させるクルーズコントロール機能を備え、
前記クルーズコントロール機能が有効である場合に、前記作業車両が前記旋回経路に沿って旋回するときの速度を、前記旋回経路の曲率に応じて変化させる、
項目b1からb5のいずれかに記載の制御システム。
[項目b7]
前記制御装置は、前記クルーズコントロール機能が有効である場合に、
前記基準速度で前記作業車両を前記複数の主経路の1つに沿って走行させ、
前記主経路に接続された旋回経路に沿って前記作業車両を前記旋回経路の曲率に応じて決定される速度で旋回させ、
旋回後、前記旋回経路に接続された他の主経路に沿って、前記作業車両を前記基準速度で走行させる、
項目b6に記載の制御システム。
[項目b8]
前記制御装置は、
前記作業車両の操舵を制御する第1制御回路と、
前記作業車両の速度を制御する第2制御回路と、
を備える、項目b1からb7のいずれかに記載の制御システム。
[項目b9]
前記制御装置は、前記作業車両が前記旋回経路を含む所定範囲内に進入したとき、表示装置に、前記作業車両が前記旋回経路に接近したことを示すポップアップ通知を表示させる、項目b1からb8のいずれかに記載の制御システム。
[項目b10]
前記ポップアップ通知は、旋回方向、旋回開始地点までの距離および/または時間、自動操舵で旋回するか否か、および旋回時の速度の少なくとも1つの情報を含む、項目b9に記載の制御システム。
[項目b11]
前記制御装置は、前記作業車両が前記旋回経路を含む所定範囲内に進入したとき、音声出力装置に警告音を発出させる、項目b1からb10のいずれかに記載の制御システム。
[項目b12]
前記制御装置は、前記旋回経路の曲率に基づいて前記作業車両の速度を制限しているとき、表示装置に、速度を制限していることを示す情報を表示させる、項目b1からb11のいずれかに記載の制御システム。
[項目b13]
前記制御装置は、前記作業車両の速度を制御しているとき、前記表示装置に、速度制御が行われていることを示すインジケータを点灯させ、
前記旋回経路の曲率に基づいて前記作業車両の速度を制限しているとき、前記インジケータを点滅させることによって前記速度を制限していることを示す前記情報を表示させる、
項目b12に記載の制御システム。
[項目b14]
前記複数の主経路は、圃場内に位置し、
前記1つ以上の旋回経路は、前記圃場の枕地に位置する、
項目b1からb13のいずれかに記載の制御システム。
[項目b15]
項目b1からb14のいずれかに記載の制御システムと、
前記測位装置と、
を備える作業車両。
[項目c1]
自動操舵運転を行う作業車両の制御システムであって、
前記作業車両の目標経路、および旋回時に前記作業車両が実行する一連の動作を規定する動作シーケンスを記憶する記憶装置と、
測位装置によって特定された前記作業車両の位置、および前記記憶装置に記憶された前記目標経路に基づいて、前記作業車両が前記目標経路に沿って走行するように前記作業車両の操舵を制御する制御装置と、
を備え、
前記目標経路は、並列する複数の主経路と、前記複数の主経路を接続する1つ以上の旋回経路とを含み、
前記制御装置は、
前記作業車両が自動操舵によって前記旋回経路に沿って旋回するとき、前記動作シーケンスに従って前記作業車両に前記一連の動作を実行させ、
前記作業車両が自動操舵によって前記複数の主経路の1つに沿って走行している最中に、ユーザによって旋回を指示する操作が行われたとき、前記操作に応答して、前記作業車両に前記一連の動作を実行させるか否かを前記ユーザに選択させるためのポップアップを表示装置に表示させ、
前記作業車両に前記一連の動作を実行させることが選択された場合、前記動作シーケンスに従って前記作業車両に前記一連の動作を伴う旋回を実行させ、
前記作業車両に前記一連の動作を実行させないことが選択された場合、前記作業車両に前記一連の動作を伴わない旋回を実行させる、
制御システム。
[項目c2]
前記制御装置は、
自動操舵モードと手動操舵モードとを切り替えることが可能であり、
前記ユーザによる前記旋回を指示する前記操作に応答して前記作業車両に旋回を実行させた後も前記自動操舵モードを継続する、
項目c1に記載の制御システム。
[項目c3]
前記制御装置は、
前記作業車両を、ユーザによって設定された基準速度で走行させるクルーズコントロール機能を備え、
前記クルーズコントロール機能が有効である状態で前記ユーザによる前記旋回を指示する前記操作に応答して前記作業車両に旋回を実行させた後も前記クルーズコントロール機能を有効にした状態を継続する、
項目c1またはc2に記載の制御システム。
[項目c4]
前記ポップアップは、旋回方向および飛ばし列数を前記ユーザに設定させるための表示を含み、
前記制御装置は、設定された前記旋回方向および前記飛ばし列数に従って、前記作業車両に旋回を実行させる、
項目c1からc3のいずれかに記載の制御システム。
[項目c5]
前記一連の動作は、旋回開始時に行われる第1の動作と、旋回終了時に行われる第2の動作とを含み、
前記第1の動作は、前記作業車両に連結される作業機の上昇、前記作業機への動力出力の停止、前記作業車両が備えるデフロック機能の停止、二輪駆動モードから四輪駆動モードへの切り替え、および前記作業車両のエンジン回転数の低下のうちの少なくとも1つの動作を含み、
前記第2の動作は、前記作業機の降下、前記作業機への動力出力の開始、前記デフロック機能の開始、前記四輪駆動モードから前記二輪駆動モードへの切り替え、および前記エンジン回転数の上昇のうちの少なくとも1つの動作を含む、
項目c1からc4のいずれかに記載の制御システム。
[項目c6]
前記制御装置は、前記一連の動作の内容をユーザに設定させるための設定画面を前記表示装置に表示させ、
前記制御装置は、設定された前記一連の動作の内容に基づく前記動作シーケンスを前記記憶装置に記憶させる、
項目c1からc5のいずれかに記載の制御システム。
[項目c7]
前記制御装置は、
前記作業車両による作業が完了した領域を前記記憶装置に記憶させ、
前記ユーザによって前記旋回を指示する操作が行われたとき、前記旋回の経路を作成し、
前記経路と前記作業が完了した前記領域とが重なるとき、警告を前記表示装置に表示させる、
項目c1からc6のいずれかに記載の制御システム。
[項目c8]
前記制御装置は、
前記警告を前記表示装置に表示させるとき、さらに、前記旋回の経路を前記ユーザに変更させることを可能にするユーザインターフェースを前記表示装置に表示させる、
項目c7に記載の制御システム。
[項目c9]
前記複数の主経路は、圃場内に位置し、
前記1つ以上の旋回経路は、前記圃場の枕地に位置する、
項目c1からc8のいずれかに記載の制御システム。
[項目c10]
項目c1からc9のいずれかに記載の制御システムと、
前記測位装置と、
前記表示装置と、
を備える作業車両。
[項目d1]
自動操舵運転を行う作業車両の制御システムであって、
前記作業車両の目標経路を記憶する記憶装置と、
自動操舵モードおよび手動操舵モードを切り替えることが可能であり、前記自動操舵モードにおいて、測位装置によって特定された前記作業車両の位置、および前記記憶装置に記憶された前記目標経路に基づいて、前記作業車両が前記目標経路に沿って走行するように前記作業車両の操舵を制御する制御装置と、
を備え、
前記目標経路は、並列する複数の主経路と、前記複数の主経路を接続する1つ以上の旋回経路とを含み、
前記制御装置は、前記自動操舵モードにおいて、前記作業車両が前記複数の主経路の1つに沿って走行し、前記主経路に接続された旋回経路の始点または前記始点から所定距離だけ手前の地点に到達したとき、前記作業車両の速度が閾値を超えている場合は前記自動操舵モードを解除して前記手動操舵モードに切り替え、前記作業車両の速度が前記閾値を超えていない場合は前記自動操舵モードを継続して前記作業車両が前記旋回経路に沿って旋回するように前記作業車両の操舵を制御する、
制御システム。
[項目d2]
前記制御装置は、前記自動操舵モードを継続して前記作業車両が前記旋回経路に沿って旋回するように前記作業車両の操舵を制御しているとき、前記作業車両の速度が前記閾値を超えた場合、前記自動操舵モードを解除して前記手動操舵モードに切り替える、項目d1に記載の制御システム。
[項目d3]
前記記憶装置は、前記旋回経路の曲率と前記閾値との対応関係を規定する第1データをさらに記憶し、
前記制御装置は、前記第1データに基づいて、前記旋回経路の曲率に応じて前記閾値を決定し、
前記閾値は、前記旋回経路の曲率が大きいほど小さい、
項目d1またはd2に記載の制御システム。
[項目d4]
前記記憶装置は、前記旋回経路の曲率と前記所定距離との対応関係を規定する第2データをさらに記憶し、
前記制御装置は、前記第2データに基づいて、前記旋回経路の曲率に応じて前記所定距離を決定し、
前記所定距離は、前記旋回経路の曲率が大きいほど長い、
項目d1からd3のいずれかに記載の制御システム。
[項目d5]
前記記憶装置は、前記作業車両の速度と前記所定距離との対応関係を規定する第3データをさらに記憶し、
前記制御装置は、前記第3データに基づいて、前記主経路の1つに沿って走行する前記作業車両の速度に応じて前記所定距離を決定し、
前記所定距離は、前記速度が高いほど長い、
項目d1からd3のいずれかに記載の制御システム。
[項目d6]
前記制御装置は、
前記自動操舵モードを解除して前記手動操舵モードに切り替えた場合、前記手動操舵モードにおける旋回が終了した後、前記自動操舵モードに復帰する、
項目d1からd5のいずれかに記載の制御システム。
[項目d7]
前記制御装置は、
前記手動操舵モードにおける旋回が終了した後、前記自動操舵モードに復帰するか否かを前記ユーザに確認するためのポップアップ通知を表示装置に表示させ、
前記ユーザの操作に応答して前記自動操舵モードに復帰する、
項目d6に記載の制御システム。
[項目d8]
前記制御装置は、
前記作業車両を、ユーザによって設定された基準速度で走行させるクルーズコントロール機能を備え、
前記クルーズコントロール機能が有効である場合に、前記作業車両の速度が前記閾値を超えているか否かの判断を実行する、
項目d1からd7のいずれかに記載の制御システム。
[項目d9]
前記制御装置は、
前記クルーズコントロール機能が有効である状態で前記自動操舵モードを解除して前記手動操舵モードに切り替えた場合、前記手動操舵モードにおける旋回が終了した後、前記クルーズコントロール機能を有効にした状態で前記自動操舵モードに復帰する、
項目d8に記載の制御システム。
[項目d10]
前記制御回路は、前記作業車両が前記旋回経路を含む所定範囲内に進入したとき、表示装置に、前記作業車両が前記旋回経路に接近したことを示すポップアップ通知を表示させる、項目d1からd9のいずれかに記載の制御システム。
[項目d11]
前記作業車両が前記旋回経路に接近したことを示す前記ポップアップ通知は、旋回方向、旋回開始地点までの距離および/または時間、自動操舵モードで旋回するか否か、および旋回時の速度の少なくとも1つの情報を含む、項目d10に記載の制御システム。
[項目d12]
前記制御装置は、前記自動操舵モードから前記手動操舵モードに切り替えたとき、表示装置に、モードが切り替えられたことを示すポップアップ通知を表示させる、項目d1からd11のいずれかに記載の制御システム。
[項目d13]
前記制御回路は、前記作業車両が前記旋回経路を含む所定範囲内に進入したとき、音声出力装置に第1の警告音を発出させる、項目d1からd12のいずれかに記載の制御システム。
[項目d14]
前記制御回路は、前記自動操舵モードから前記手動操舵モードに切り替えたとき、音声出力装置に第2の警告音を発出させる、項目d1からd13のいずれかに記載の制御システム。
[項目d15]
前記複数の主経路は、圃場内に位置し、
前記1つ以上の旋回経路は、前記圃場の枕地に位置する、
項目d1からd14のいずれかに記載の制御システム。
[項目d16]
項目d1からd15のいずれかに記載の制御システムと、
前記測位装置と、
を備える作業車両。