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JP2016021891A - 走行作業機及びそれに用いられる自動操舵システム - Google Patents

走行作業機及びそれに用いられる自動操舵システム Download PDF

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Abstract

【課題】人為操舵と自動操舵とを取り入れながらも、運転者に負担を掛けずに効率的な作業走行が可能となる走行作業機及びそれに用いられる自動操舵システムの提供。【解決手段】走行作業機及びそれに用いられる自動操舵システムは、自機位置を示す測位データを出力する測位ユニット5と、走行機体1が自動操舵で作業走行するための目標走行経路を算定する経路算定部81と、測位データと目標走行経路とを用いて走行機体1が目標走行経路に沿うように走行するための自動操舵データを出力する操舵データ出力部82と、自動操舵データに基づいて走行機体1を操舵するための操舵信号を生成する自動操舵部83と、人為操舵走行から自動操舵走行への移行時または自動操舵走行の途中で、これから走行すべき目標走行経路の少なくとも一部の目標走行経路区間を人為操作入力に基づいて調整する目標走行経路調整部87とを備えている。【選択図】図1

Description

本発明は、測位ユニットを備え、設定された目標走行経路に沿って自動操舵される自動操舵機能と人為的に操舵する人為操舵機能とを有する走行作業機及びそれに用いられる自動操舵システムに関する。
GPS装置により計測される位置情報に基づいて、ティーチング経路生成手段により生成されたティーチング経路に対して平行な目標経路を生成し、該目標経路上を自律的に走行する農用作業車としての田植機が、特許文献1から知られている。この田植機では、オペレータにより自動旋回操作具が操作されることにより、次の目標経路へ向けて自動的に旋回し、かつ、旋回動作の終了後に引き続き、次の目標経路上を自律的に走行する。さらに、目標経路を生成するためには、まずティーチング作業を実行して基準線が設定されるが、その際、田植機に設けられたGPSアンテナ101の位置を基準として田植機の車体位置を計測するようにしており、運転者がティーチング開始時にティーチングSWを押下し、その押下した時のGPSアンテナの位置を開始点とし、またティーチング終了時にティーチングSWを押下し、その押下した時のGPSアンテナの位置を終了点とする。この開始点と終了点とを結ぶ線が基準線として生成され、この基準線と作業幅(植付幅×植付条数)に基づいて目標経路が生成される。目標経路が生成されると、田植機は、ティーチング後にある一つの目標経路上を自律走行しながら植付作業を完了し植付終了位置まで到達した後に、自動的に旋回走行し、旋回後次の目標経路上を自律的に走行する。これによって、ティーチング後の全ての走行は自立走行で行われる。その際、目標経路方向と進行方向が異なっている場合には自律走行は許可されず、田植機は作業を停止して走行を停止する。
特開2008−131880号公報(図8、図10)
特許文献1による農用作業車では、直線状の作業走行及び枕地での旋回走行のいずれもが自律走行(自動操舵走行)されるが、田植機などのように、隣り合う作業領域の位置合わせに正確さが要求されるような作業の場合、枕地での自律走行での旋回において正確な位置合わせをするためには、高度な自機位置検出技術及び自動操舵制御技術が要求され、コスト負担が大きい。逆にコストを抑えた場合、正確な位置合わせができないと、作業及び走行が枕地旋回の毎に停止するという不都合が生じる。また、枕地旋回走行を人為操作で行う場合では、正確な位置合わせができていないうちに自動操舵に切り替えると、制御ハンチングの繰り返しなどにより正確に目標走行経路上に到達するまでの時間がかかり過ぎるという問題が生じる。正確な位置合わせができるまで人為操舵を行う場合には、運転者の技量が要求され、運転者の技量が低ければ、自動操舵に切り替えるまでの時間がかかり過ぎるという問題が生じる。このことから、運転者に人為操舵から自動操舵への移行タイミングを決定させることは、運転者に負担を与えることになる。
このような実情に鑑み、人為操舵と自動操舵とを取り入れながらも、運転者に負担を掛けずに効率的な作業走行が可能となる走行作業機及びそれに用いられる自動操舵システムが望まれている。
上記課題を解決するため、本発明による走行作業機は、走行機体と、前記走行機体の特定位置である自機位置を示す測位データを出力する測位ユニットと、前記走行機体が自動操舵で作業走行するための目標走行経路を算定する経路算定部と、前記測位データと前記目標走行経路とを用いて前記走行機体が前記目標走行経路に沿うように走行するための自動操舵データを出力する操舵データ出力部と、前記操舵データ出力部から出力される前記自動操舵データに基づいて前記走行機体を操舵する自動操舵部と、人為操舵走行から自動操舵走行への移行時または自動操舵走行の途中で、これから走行すべき目標走行経路の少なくとも一部の目標走行経路区間を人為操作入力に基づいて調整する目標走行経路調整部とを備えている。
また、本発明による走行作業機に用いられる自動操舵システムは、目標走行経路に沿って作業路面を自動走行するように走行機体を操舵する自動操舵システムであって、前記走行機体の特定位置である自機位置を示す測位データを出力する測位ユニットと、前記測位データと前記目標走行経路とを用いて前記走行機体が前記目標走行経路に沿うように走行するための自動操舵データを出力する操舵データ出力部と、前記操舵データ出力部から出力される前記自動操舵データに基づいて前記走行機体を操舵する自動操舵部と、人為操舵走行から自動操舵走行への移行時または自動操舵走行の途中で、これから走行すべき目標走行経路の少なくとも一部の目標走行経路区間を人為操作入力に基づいて調整する目標走行経路調整部とを備えている。
この構成によれば、人為操舵による走行から自動操舵による目標走行経路に沿う走行に移行する際に、走行機体の姿勢が設定されている目標走行経路がかなりずれている場合、つまり走行機体の目標走行経路に対する位置ずれまたは向きずれあるいはその両方が大きい場合、作業品質に大きな影響を与えない限りにおいて、これから走行すべき目標走行経路の一部の目標走行経路区間ないしは全ての目標走行経路の位置を調整することが可能となる。この目標走行経路の調整により、制御ハンチングなどにより自動操舵への移行が遅延することや、また自動操舵が停止してしまうことが回避される。また、運転者が手動操舵によって走行機体を目標走行経路に近づけるための負担がなくなる。
これから走行しようとする目標走行経路を運転者が調整して、当該目標走行経路に対する走行機体の位置ずれや向きずれの問題が解消される。しかしながら、この修正を通じて、修正された目標走行経路とそれ以降の目標走行経路との位置関係がずれることになる。このような位置関係のずれは、先の目標走行経路に対して行った修正量に依存するので、適正なアルゴリズムを用いると、自動的に調整することができる。このことから、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記目標走行経路調整部には、人為操作入力に基づいて調整された目標走行経路区間から以降の目標走行経路を前記目標走行経路区間の調整量に基づいて自動調整する自動調整部が備えられている。
目標走行経路に対する走行機体の姿勢ずれは、位置ずれと向きずれである。したがって、このような姿勢ずれを解消するために、本発明の好適な実施形態の1つでは、人為操作入力に基づく前記目標走行経路の調整は、元の前記目標走行経路の平行移動または元の前記目標走行経路の回転移動あるいはその両方によって行われるように構成されている。これにより、目標走行経路に対する走行機体の姿勢ずれは適正に補われる。
目標走行経路に対する走行機体の姿勢ずれは、測位ユニットからの測位データと、設定されている目標走行経路の位置情報から、制御側では検知することができる。このため、目標走行経路に対する走行機体の姿勢ずれは、種々の方法で、運転者に報知することができる。目標走行経路に対する走行機体の姿勢ずれを運転者に報知する好適な方法は視覚的に行うことであり、また目標走行経路の修正も視覚的なモデルを通じて行うことが好適である。このことから、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記測位データに基づいて算定される前記目標走行経路に対する前記走行機体の向きと位置に関する情報をディスプレイに表示する表示データ生成部と、前記人為操作入力を行うための操作入力デバイスとが備えられ、前記走行すべき目標走行経路の調整は前記ディスプレイと前記操作入力デバイスとを通じて行われる。
運転者に対する姿勢ずれの視覚的な報知と、視覚的なモデルを用いた目標走行経路の調整に関する本発明で提案される具体的な実施形態は、前記表示データ生成部は、前記走行機体の向きと位置に関する情報として、少なくとも前記目標走行経路区間を含む前記目標走行経路と、前記目標走行経路区間に対する前記走行機体の向きと位置とを示すシンボルとを含む情報画面を生成し、前記操作入力デバイスによる入力信号に応答して前記ディスプレイ上での前記目標走行経路が調整されることである。この形態により、運転者は、走行機体の向きと位置とを示すシンボルを見ながら、同じディスプレイの画面を通じて目標走行経路を調整することができ、調整作業は容易なものとなる。
本発明の基本的な構成を説明する模式図である。 基準経路と目標走行経路とを生成する制御の基本的な流れを説明する模式図である。 基準経路と目標走行経路とを生成する制御を説明するための説明図である。 目標走行経路を修正する制御の基本的な流れを説明する模式図である。 本発明の実施形態の1つである乗用田植機の側面図である。 本発明の実施形態の1つである乗用田植機の平面図である。 乗用田植機の動力伝達系を示す模式図である。 乗用田植機のパワーステアリング装置を示す模式図である。 乗用田植機に搭載された制御系を示す機能ブロック図である。 自動操舵走行時にディスプレイに表示される画面の一例を示す画面図である。
本発明による走行作業機及びそれに用いられる自動操舵システムの具体的な実施形態を説明する前に、図1から図4を用いて、本発明の基本原理を説明する。図1では、本発明を特徴付けている基本的な機能が、機能ブロック図の形で示されている。図2と図3とでは、基準経路と目標走行経路とを生成する技術が模式的に示されている。図4は、目標走行経路を修正する制御の基本的な流れが示されている。ここでは、走行作業機として、田植機や播種機(直播機とも呼ばれる)などの直線またはほぼ直線状の作業走行を繰り返す植播系圃場作業機が想定されている。この作業機は、圃場を自走する走行機体1と、走行機体1の後部に昇降可能に取り付けられている圃場作業装置2とからなる。この作業機には、特に本発明に関係する制御系として、測位データを出力する測位ユニット5、状態検出手段6、機器制御ユニット7、演算制御ユニット8が備えられている。これらの測位ユニット5、状態検出手段6、機器制御ユニット7、演算制御ユニット8は車載LANで接続されており、相互にデータ交換可能である。演算制御ユニット8からの指令に基づいて機器制御ユニット7は、走行機体1や圃場作業装置2に装備された動作機器に対して、油圧制御信号や電子制御信号を与えるものである。
状態検出手段6は、各種センサやスイッチからなる状態検出器群60からの検出信号を検出信号処理部61で処理して走行機体1及び圃場作業装置2の各種状態を示す状態信号として出力され、主に演算制御ユニット8に与えられる。なお、ここでは、状態検出器群60のうち、目標走行経路を人為的に修正するための操作入力デバイス200が、特に図示されている。操作入力デバイス200は、ソフトウエアとしてまたはハードウエアとし構成される平行移動調整具201と回転移動調整具202が含まれている。なお、平行移動調整具201と回転移動調整具202とは単一の調整具で構成することも可能である。
測位ユニット5は、GNSS(Global Navigation Satellite System)を用いて緯度や経度などの方位を検出する衛星航法用モジュール50を備えており、その構成は、カーナビゲーションシステムなどで用いられている測位ユニットに類似している。測位ユニット5には、瞬間的な植播系圃場作業機の動き(方向ベクトルなど)や向きを検出するため、及び衛星航法用モジュール50を補完するためにジャイロ加速度センサなどを有する慣性航法用モジュール51が備えられている。機器制御ユニット7は、エンジンを含む走行機体1に設けられている走行動作機器やステアリング装置における操舵動作機器を制御するとともに、圃場作業装置2に設けられている昇降用機器などの作業動作機器を制御する。
演算制御ユニット8には、オペレーションプログラムやアプリケーションブログラムや各種データを格納する情報格納部80、基準経路生成部81aを含む経路算定部81、操舵データ出力部82、自動操舵部83、姿勢ずれ算定部84、自動操舵管理部85が構築されている。情報格納部80には、作業対象となっている圃場の地図位置や当該圃場の境界線を規定する畦の位置データなどの圃場情報や、実施されるべき圃場作業に関する機器設定データ、例えば作業幅などの作業情報が格納可能である。
また、経路算定部81は、自動操舵走行における目標走行経路を算定する機能を有する。目標走行経路を算定するアルゴリズムは種々知られおり、本発明では特定のアルゴリズムを限定していないが、ここでは、図2と図3で示されたアルゴリズムを一例として示しておく。このため、経路算定部81には、状態検出手段6から入力される、走行機体1及び圃場作業装置2の各種状態を示す状態信号から(図2のステップ#01参照)、作業開始イベントと作業終了イベントとを検知する機能が備えられている。作業開始イベント検知機能は、人為操舵による走行時に、入力された1つの状態信号または複数の状態信号の組み合わせに基づいて、圃場作業装置2を用いた作業走行の開始を表す作業開始イベントを検知する機能である。作業終了イベント検知機能は、入力された1つの状態信号または複数の状態信号の組み合わせに基づいて、圃場作業装置2を用いた作業走行の終了を表す作業終了イベントを検知する機能である。作業開始イベント及び作業終了イベントは一種の制御フラグであり、作業開始イベント及び作業終了イベントには、これらが検知された時点での自機位置が付与される(図2のステップ#02参照)。この自機位置は、測位ユニット5からの測位データから取得される。
なお、種々の状態信号から作業開始イベントまたは作業終了イベントを検知するアルゴリズムとして種々のものが提案される。例えば、圃場作業機が、作業開始時には圃場表面に下降し、作業終了時には圃場表面から上昇するという特性を有する場合、圃場作業装置2の上昇姿勢から下降姿勢への下降操作を示す状態信号に基づいて作業開始イベントを検知し、圃場作業装置2の下降姿勢から上昇姿勢への上昇操作を示す状態信号に基づいて作業終了イベントを検知することである。また、圃場作業装置2が苗植付機構とフロートを有する苗植作業装置である植播系圃場作業機における最も簡単のものは、苗植付機構の植付クラッチの入り操作または前記フロートの着水を示す状態信号に基づいて作業開始イベントを検知し、植付クラッチの切り操作またはフロートの離水を示す状態信号に基づいて作業終了イベントを検知することである。さらには、複数の状態信号を入力パラメータとして予め学習させておいた決定プログラムに基づいて作業開始イベントまたは作業終了イベントを検知することも可能である。
経路算定部81に含まれている基準経路生成部81aは、人為操舵による走行軌跡の内、作業開始イベントと作業終了イベントとで規定される走行軌跡部分を作業走行軌跡とし、当該作業走行軌跡をティーチング経路とも呼ばれる基準経路として生成する(図2のステップ#03参照)。この基準経路が実質的に直線と想定される場合、もしくは直線とみなすべき場合には、作業開始イベントが得られた自機位置(図1及び図2では第1基準点P1として示されている)と作業終了イベントが得られた自機位置(図1及び図2では第2基準点P2として示されている)とを通る直線が基準経路となる。また、基準経路が非直線の場合、作業開始イベントと作業終了イベントとの間で取得された測位データによって補間することで、非直線の基準経路の生成が可能である。
経路算定部81は、基準経路以降において自動操舵での作業走行の目標となる走行経路である目標作業経路を算定する。その算定処理にあたって、算定のための外部条件として、情報格納部80から、圃場情報や作業情報を取得する(図2のステップ#04参照)。圃場情報には圃場の外形や内部の障害物などを示す地図情報などが含まれる。作業情報には、圃場作業装置2によって規定される作業幅などが含まれる。基準経路生成部81aで生成された基準経路を作業幅に対応する距離分だけ平行移動させて、順次目標走行経路を算定する(図2のステップ#05参照)。各目標走行経路の長さは、圃場の外形と設定される枕地の寸法に依存する。また、圃場の向き合う畦が平行でない場合、全ての目標走行経路を平行とはならないケースがある。そのようなケースでは、いくつかの目標走行経路を単なる基準経路の平行移動ではなく、回転移動も付加することになる。
なお、この植播系圃場作業機の走行経路として、圃場作業装置2を用いて圃場作業(田植や播種など)を行いながら長い距離を直進走行する走行経路(直線状走行経路)と、その走行経路の端部で行われる圃場作業を伴わないで方向転換走行(180°旋回)するために人為操舵される走行経路(方向転換非作業走行経路)が設定される。ここでは、基準経路を生成するために、人為操舵での作業走行を経て、枕地でUターン旋回を行った後、走行機体1は、最初の目標走行経路に対して、自動操舵で走行することになる。その際、操舵データ出力部82は、測位ユニット5から得られた測位データ(自機の位置と向き)と走行すべき目標走行経路とから、操舵データを生成して、自動操舵部83に出力する(図2のステップ#06参照)。自動操舵部83は、操舵データに基づいて目標走行経路に沿うように、機器制御ユニット7を介して、走行機体1を自動操舵する(図2のステップ#07参照)。
この植播系圃場作業機では、直線状の走行経路は自動操舵で走行され、枕地旋回などの旋回をともなう走行経路は人為操舵で走行される。したがって、直線状の作業走行経路から方向転換非作業走行経路への移行時には、自動操舵から人為操舵への切り替え、また、直線状の作業走行経路から方向転換非作業走行経路への移行時には、人為操舵から自動操舵への切り替えが必要となる。特に本発明では、人為操舵による枕地旋回走行から、経路算定部81で算定された目標走行経路に沿って走行する自動操舵走行への移行を効率よく行うための技術が提案されている。これを実現するために、姿勢ずれ算定部84と目標走行経路調整部87とが備えられている。
姿勢ずれ算定部84は、測位ユニット5からの測位データに基づいて、経路算定部81によって算定された目標走行経路に対する走行機体1の位置ずれ(図1においてΔLで示されている)と向きずれ(図1においてΔθで示されている)を算定する。目標走行経路調整部87は、例えば、ディスプレイ64aに表示された、走行機体1のシンボルと目標走行経路とを見ながら、運転者が、操作入力デバイス200を用いて修正対象となる目標走行経路を平行移動または回転移動あるいはその両方の移動させることで、走行機体1の姿勢ずれが小さくなるように目標走行経路を修正することを可能にする。その際、走行機体1の現走行の自動操舵の目標となっている目標走行経路の修正は人為調整部98aによって管理されるが、目標走行経路調整部87には、過剰な移動に対しては規制が働く修正規制機能が備えられている。さらに、人為的に修正された目標走行経路に続く目標走行経路の修正は、修正された目標走行経路の修正量に基づいて自動調整部98bによって自動的に行われる。この自動調整部98bによる自動調整アルゴリズムは本発明で特に限定されていないが、その一つは、修正された目標走行経路の修正量を、これに続く全ての目標走行経路に割り振る手法である。割り振り量は、全て一定にしてもよいし、近くの目標走行経路ほど、修正量を大きくし、最も遠くの目標走行経路の修正量がほぼゼロになるようにしてもよい。以下、この姿勢ずれの算定処理及び目標走行経路の修正処理における処理の流れとデータの流れを図1と図4を用いて説明する。この説明は、人為操舵による枕地旋回から次の自動操舵への移行を例としているが、自動操舵中においても実質的には同様である。
枕地に差し掛かると、直線状の作業走行が終了し、人為操舵による旋回走行が開始され、次の目標走行経路を目指して枕地旋回走行が行われ、目標走行経路の領域に入ると、つまり枕地を出ると、圃場作業装置2を作業状態に操作し、作業走行が開始される(図4のステップ#11参照)。
ここで、姿勢ずれ算定部84は、設定されている目標走行経路の向きと位置のデータ、及び測位ユニット5から刻々と入力されてくる測位データとから目標走行経路に対する走行機体1の位置ずれ:ΔLと向きずれ:Δθとを算定する(図4のステップ#12参照)。算定された位置ずれと向きずれは、例えば、走行機体1の姿勢を表すシンボルと目標走行経路とともにディスプレイ64aに表示される(図10参照)。算定された位置ずれと向きずれは音声で報知してもよい。
ここで運転者は、算定された位置ずれと向きずれが無視できるものかどうか判定する(図4のステップ#13参照)。あるいは、目標走行経路調整部87が、前もって設定された判定しきい値に基づいて判定し、その判定結果を視覚的または聴覚的に報知してもよい。
調整が必要であると判定された場合、操作入力デバイス200を用いて、目標走行経路の調整処理が行われる(図4のステップ#14参照)。例えば、図1に模式的に示されているように、操作入力デバイス200を用いて、調整前の目標走行経路区間(これから走行しようとする目標走行経路)を最適な位置に移動(回転移動または平行移動あるいはその両方)させる。もし、操作入力デバイス200がディスプレイ64aに装着されたタッチパネルなら、手の指先で目標走行経路をクリックアンドドラッグして移動させることができる。もちろん、音声入力を用いて目標走行経路を移動させてもよい。人為調整部87aを用いた調整が終了すると、その修正量に基づいて自動調整部87bがそれ以降の目標走行経路区間(人為的に調整された目標走行経路より後の目標走行経路)を移動させ、その位置や向きを調整する(移動)。全ての目標走行経路の調整量を示す調整データは経路算定部81に転送され、目標走行経路の修正が行われる(図4のステップ#15参照)。また、処理の流れは、再び姿勢ずれ算定に戻って、処理が繰り返される(図4のステップ#16参照)。
調整が不要であると判定された場合、通常の自動操舵処理が実行される(図4のステップ#17参照)。つまり、操舵データ出力部82が自動操舵部83に操舵データを出力し、自動操舵部83が受け取った操舵データに基づいて、機器制御ユニット7を介して走行機体を自動操舵する(図4のステップ#18参照)。
次に、図面を用いて、本発明による走行作業機及びそれに用いられる自動操舵システムの具体的な実施形態の1つを説明する。
この実施形態では、走行作業機は、植播系圃場作業機の一例である乗用田植機として構成されており、基本的には、図1から図4を用いて説明した、本発明の基本原理、及び基本的な制御機能部を備えている。図5は、この実施形態において、走行作業機の一例として採用された乗用田植機の側面図であり、図6は平面図である。走行機体1は、車体フレーム10の下部に左右一対の前輪11a及び左右一対の後輪11bを備えている。走行機体1の後部に、粉粒体タンク12aが備えられた粉粒体供給装置12が配備されている。走行機体1の後方に、車体横方向に並んだ6つの苗植付機構21、及び車体横方向に並んだ6つの粉粒体供給部22が備えられた水田作業装置2が連結されている。つまりこの実施形態では、圃場作業装置2として水田作業装置2が走行機体1に支持されている。この乗用田植機は、水田作業装置2を下降作業状態に下降させた状態で走行機体1を走行させることにより、苗植作業と施肥作業とを行うものである。
走行機体1は、車体前部に配備されたエンジン31、エンジン31からの駆動力を入力して変速する走行用かつ作業用のトランスミッション32を備え、エンジン31からの駆動力をトランスミッション32から前輪11a及び後輪11bに伝達して前輪11a及び後輪11bを駆動して走行するように、四輪駆動車に構成している。エンジン31は、エンジンボンネット31aと後カバー31bとによって覆われている。走行機体1は、車体後部に配備された運転座席33aを有した運転部33を備えている。運転者は運転部33に搭乗して操縦する。前輪11aを操向操作するステアリングハンドル33bが運転座席33aの前方に配備され、ステアリングハンドル33bを支持するステアリングポスト33cと運転座席33aとの間に上方が開放されたフロア30が形成されている。ステアリングポスト33cの周辺に操縦パネル33dが設けられている。走行機体1の後部に、粉粒体タンク13に粉粒体を供給する作業や、水田作業装置2に苗供給する作業などに使用する作業用スペース34を設けている。作業用スペース34には、運転座席33aの両横側方と後方とにわたって位置する作業用ステップ34a、及び運転座席33aの両横側方に位置する手摺35を備えている。さらに、走行機体1の前部には、左右一対の予備苗載せ台39が設けられている。
エンジンボンネット31aの先端位置に支柱状となるセンターマスコット47が備えられている。また、水田作業装置(圃場作業装置の一例)2は6条植え用に構成され、左右両側部には、作用姿勢と格納姿勢とに切換自在にマーカ装置48が備えられている。マーカ装置48は、それ自体はよく知られており、図6で示すように、水田作業装置2に対して前後向き姿勢の揺動軸を中心に揺動自在に支持されたマーカアーム48aと、このマーカアーム48aの揺動端に回転自在に支持され、外周に複数の突起が形成されたマーカリング48bとで構成されている。
マーカアーム48aが作用姿勢に設定されることによりマーカリング48bの外周が圃場面に接触し、走行機体1の走行に伴い回転する形態で圃場面に対して次の走行の中心となる凹状のマークが連続的に形成される。従って、自動操舵をOFFにして人為操舵で苗植付け作業を行う場合には、マーカリング48bによって圃場面に凹状のマークを形成しておくことにより、走行機体1を旋回させた後に苗植付作業を継続する場合には、センターマスコット47を、圃場面のマークに照準する形態でステアリング操作を行うことにより、既植苗の列を基準にして最適となる位置に対する苗の植付が可能となる。
図5に示すように、水田作業装置2は、車体フレーム10から後方に上下揺動するように延出されたリンク機構36に支持され、リンク機構36を昇降シリンダ37によって揺動操作することにより、接地フロート23が圃場面に下降して接地した下降作業状態と、接地フロート23が圃場面から高く上昇した上昇非作業状態とにわたって昇降操作できるようになっている。
水田作業装置2は、リンク機構36に前端側が支持された作業部フレーム24を備えている。作業部フレーム24は、エンジン31からの駆動力が回転軸38を介して伝達されるフィードケース25、車体横方向に所定間隔を隔てて並んだ3つの植付駆動ケース26を備えている。3つの植付駆動ケース26それぞれの後端部の両横側に苗植付機構21を装着している。作業部フレーム24の前部の上方に、苗載台28を下端側ほど後方に位置する傾斜姿勢で設けている。作業部フレーム24の下部に、車体横方向に所定間隔を隔てて並ぶ3つの接地フロート23を装備している。6つの苗植付機構21それぞれの横付近に1つずつ位置する状態で車体横方向に並んだ6つの対地作業部としての粉粒体供給部22を、3つの接地フロート23に振り分けて支持している。
水田作業装置2は、リンク機構36に前端側が支持された作業部フレーム24を備えている。作業部フレーム24は、エンジン31からの駆動力が回転軸38を介して伝達されるフィードケース25、車体横方向に所定間隔を隔てて並んだ3つの植付駆動ケース26を備えている。3つの植付駆動ケース26それぞれの後端部の両横側に苗植付機構21を装着している。作業部フレーム24の前部の上方に、苗載台28を下端側ほど後方に位置する傾斜姿勢で設けている。作業部フレーム24の下部に、車体横方向に所定間隔を隔てて並ぶ3つの接地フロート23を装備している。6つの苗植付機構21それぞれの横付近に1つずつ位置する状態で車体横方向に並んだ6つの対地作業部としての粉粒体供給部22を、3つの接地フロート23に振り分けて支持している。
各苗植付機構21は、2つの植付アーム21aを備え、フィードケース25から植付駆動ケース26に伝達される駆動力によって駆動され、2つの植付アーム21aそれぞれに備えてある植付爪の先端が上下に長い回動軌跡を描きながら上下に往復移動する苗植運動を行なう。圃場作業の1つである苗植付作業においては、各苗植付機構21は、2つの植付アーム21aによって交互に、苗載台28の下端部において苗載台上のマット状苗から一株分の植付苗を取出して、取出した植付苗を圃場に下降搬送し、接地フロート23によって整地された泥土部に植え付ける。
苗載台28には、図6に示すように6つの苗植付機構21に供給するためのマット状苗を車体横方向に並べて載置する6つの苗載置部28aを備えている。苗載台28は、作業部フレーム24に備えられた支持部及び支柱24aに車体横方向に往復移動するように支持されている。苗載台28は、苗載台28とフィードケース25とにわたって設けられた横送り機構により、苗植付機構21の苗植運動に連動させて車体横方向に往復移送されて、マット状苗を苗植付機構21に対して車体横方向に往復移送する。これにより、各苗植付機構21が苗載台28に載置されたマット状苗の下端部の横一端側から他端側に向けて植付苗を取出していく。
苗載台28の6つの苗載置部28aそれぞれに、縦送りベルト28bを装備している。各苗載置部28aの縦送りベルト28bは、苗載台28が横移送の左右のストロークエンドに到達すると、苗載台28とフィードケース25とにわたって設けてある縦送り駆動機構27(図7参照)によって設定ストロークだけ回転駆動され、苗植付機構21によって取出される苗の縦方向での長さに相当する長さだけマット状苗を苗植付機構21に向けて縦送りする。
図7は、水田作業装置2を駆動するための伝動構造を示す概略図である。回転軸38からフィードケース25に入力された駆動力がフィードケース25に内装されたミッションによって植付出力軸25aに伝達され、この植付出力軸25aから3つの植付駆動ケース26それぞれの前端部に入力されるように構成している。各植付駆動ケース26において、植付駆動ケース26に入力された駆動力が、端数条植クラッチ29を有した伝動機構によって一対の苗植付機構21に伝達されるように構成している。
従って、左端の植付駆動ケース26に内装された端数条植クラッチ29は、入り切り操作されることにより、6つの苗植付機構21のうちの一部である、左端の苗植付機構21と、左端の苗植付機構21に隣り合った苗植付機構21との2つの苗植付機構21への伝動が入り切りし、左端側2条用の苗植付機構21を、苗植運動を行なう作業状態と、苗植運動を停止する非作業状態とに切り換える。
右端の植付駆動ケース26に内装された端数条植クラッチ29は、入り切り操作されることにより、6つの苗植付機構21のうちの一部である、右端の苗植付機構21と、右端の苗植付機構21に隣り合った苗植付機構21との2つの苗植付機構21への伝動を入り切りし、右端側2条用の苗植付機構21Rを、苗植運動を行なう作業状態と、苗植運動を停止する非作業状態とに切り換える。
中央の植付駆動ケース26に内装された端数条植クラッチ29は、入り切り操作されることにより、6つの苗植付機構21のうちの一部である、左端側2条用の苗植付機構21Lと、右端側2条用の苗植付機構21Rとの間の2つの苗植付機構21への伝動を入り切りし、中央2条用の苗植付機構21Nを、苗植運動を行なう作業状態と、苗植運動を停止する非作業状態とに切り換える。
縦送り駆動機構27は、フィードケース25の前部から横外向きに延出された縦送り出力軸271と、苗載台28の裏面側に回転操作できるように支持された苗載台横方向の縦送り駆動軸272とを備えている。縦送り出力軸271は、回転軸38からフィードケース25に入力された駆動力によって回転駆動され、縦送り出力軸271に支持してある左右一対の伝動アーム273を回転駆動する。縦送り駆動軸272に受動アーム274を一体回転するように支持し、縦送り駆動軸272の3箇所に端数条縦送りクラッチ20が装備されている。
図7で模式的に示されているだけであるが、トランスミッション32には、変速装置32aが備えられており、変速操作レバーの操作を通じて走行機体1の速度を変更することができる。さらに、トランスミッション32から左右一対の後輪11bに動力を伝達する動力伝達系に、左右一対のサイドクラッチ11Bが設けられている。例えば、枕地での旋回時には、旋回内側の後輪11bへの動力伝達が遮断されるようにサイドクラッチ11Bが遮断される。
図8に模式的に示されているだけであるが、ステアリングハンドル33bと、前輪11aとは、電動パワーステアリング装置40を介して連動連結している。詳述すると、ステアリングハンドル33bのハンドルシャフト41には、ステアリングハンドル33bの回動トルクを検出するトルクセンサ42が設けられている。このトルクセンサ42の検出結果に基づいてステアリングハンドル33bを回動させるアシスト力を付与するための電動モータ43が電磁クラッチ44及びギヤ機構45を介してハンドルシャフト41に連動連結されている。このハンドルシャフト41と操向輪としての前輪11aとは、図示されていないピットマンアーム、ナックルアーム、タイロッド等の連係機構を介して連動されている。トルクセンサ42の検出信号は、機器制御ユニット7に入力される。機器制御ユニット7は、トルクセンサ42の検出結果等に基づいて制御信号を生成し、モータ制御回路7Aを介して電動モータ43、及び電動モータ43の出力の伝動の入り切りを行う電磁クラッチ44を駆動制御する。なお、自動操舵時には、機器制御ユニット7からの制御信号により、電動モータ43が制御され、トルクセンサ42の検出信号とは関係なく、ステアリングハンドル33bが自動的に操作される。
さらに、図8に模式的に示されているだけであるが、リンク機構36の昇降シリンダ37は、機器制御ユニット7からの制御信号に基づき、ソレノイド制御回路7Bを介して駆動制御される。昇降シリンダ37の上昇にともなって苗植付作業や施肥作業が停止され、昇降シリンダ37の下降にともなって苗植付作業や施肥作業が開始される。なお、この昇降シリンダ37の操作は、ステアリングハンドル33bの周辺に設けられた作業操作具の一種である昇降レバー49の上昇位置への操作または下降位置への操作によって行われる。
走行機体1の自動操舵時に必要となる自機位置は、測位ユニット5からの測位データから求められる。測位ユニット5には、GNSSモジュールとして構成されている衛星航法用モジュール50と、ジャイロ加速度センサと磁気方位センサを組み込んだジャイロモジュールとして構成されている慣性航法用モジュール51が含まれている。図9に示すように、この衛星航法用モジュール50には、GPS信号やGNSS信号を受信するための衛星用アンテナ5Aが接続されている。衛星用アンテナ5Aは、電波受信感度が良好となる箇所、この実施形態では、図5に示すように、手摺35の上部領域に接続部5Cを介して取り付けられている。
図9には、この乗用田植機に装備されている制御系が示されている。この制御系は、図1から図4を用いて説明された目標経路の算定と、算定された目標走行経路に基づく自動操舵とに関する基本原理を流用している。図9の機能ブロック図には、図1における制御系の機能ブロック図では示されていなかったいくつかの機能部が示されている。例えば、演算制御ユニット8の各機能部とデータ交換可能に接続している、作業設定部86、この乗用田植機を用いた圃場作業に関して運転者に与える種々の支援を管理する運転支援ユニット89、外部から有線または無線等で入力される信号を処理する入力信号処理部65、報知処理ユニット64などである。運転支援ユニット89には、運転者に有益な情報を生成する報知情報生成機能を実現するため、警告報知部89aや表示データ生成部88などが構築されている。
報知処理ユニット64は、運転者または外部に報知するために運転支援ユニット89の警告報知部89aで生成された警告情報、表示データ生成部88で生成された案内情報や作業状況情報を示す表示データを入力し、報知デバイスに出力する。報知処理ユニット64に接続されている報知デバイスとしては、画像情報を表示するディスプレイ64aや音声情報を発するスピーカ64bが代表的であるが、ブザーやランプも含まれる。ディスプレイ64aはタッチパネル66を装備しており、タッチパネル66を通じて入力された情報は、入力信号処理部65を介して、その情報を必要とする機能部に送られる。
報知処理ユニット64は、自動操舵部83とデータ交換しており、例えば、自動操舵での走行時には自動操舵中であることを、また人為操舵での走行時には人為操舵中であることを示すフラグ信号を受けることで、その内容を、ディスプレイ64aを通じて表示するとともに、スピーカ64bを通じての報知も行うことができる。
表示データ生成部88で生成された表示データは、報知処理ユニット64を介してディスプレイ64aに表示される。自動操舵中にディスプレイ64aに表示される画面100の一例が図10に示されている。この画面100は、複数の表示領域に区分けされており、上側の左端に作業日時や作業実績などを表示する作業情報領域110、上側の中央に目標走行経路に対する実機(走行機体1)のずれを表示するずれ情報領域120、上側の右端に車速を示す車速情報領域130が配置されている。画面100の上側以外の大きな領域は、圃場における実機の位置を示す実機位置情報領域150となっている。実機位置情報領域150の左端の小さな領域は、自動操舵または人為操舵の操舵種別を示す操舵状態情報領域140となっている。実機位置情報領域150の右端には、この実施形態では、以下に詳しく説明するが、目標走行ライン修正のための操作入力デバイス200として機能するソフトウエアボタン群210が配置されている。画面のさらに右側にはメカニカルボタン群220が配置されている。
実機位置情報領域150には、実機周辺の圃場の作業状態及び、目標走行経路(図10では複数の縦に延びた点線で示され、符号TLが付与されている)と、実機を示す実機シンボルSYが表示されている。なお、分かりやすくするため、目標走行経路のうち、実際の走行しようとしている目標走行経路だけは、太い実線で描画され、符号103が付与されている。さらに、作業状態に関する情報として、既に苗植付が完了した領域は各植付苗を点描化して表示される(実際は緑でカラー表示される)ことで、未作業領域と視覚的に明確に区別して表されている。このような植付苗跡を示す植付苗跡表示データも表示データ生成部88で生成される。なお、この植付苗跡の表示は、点描以外に線状の植付条を示す線で表示してもよい。また、図10では確認できないが、走行機体1の実際に走行した経路、つまり走行軌跡を、画面100に表示することもできる。この走行軌跡と目標走行経路とを比べることで、自動操舵の精度をチェックすることができる。走行軌跡は、測位ユニット5からの測位データに基づいて、表示データ生成部88で生成可能である。また、実機シンボルSYは矢印状で示されており、尖鋭方向が進行方向、より詳しくは、実機の向きを表している。実機(走行機体1)の向きと、目標走行経路の向きとの間の偏差(ずれ)をより視覚的に分かりやすくするため、実機シンボルSYの中心から進行方向に延びた指針161とその向きの角度範囲を示す向き目盛162が上書き表示されている。また向き偏差の許容範囲を示す境界線163も表示されている。向き偏差のデジタル値は、ずれ情報領域120に表示されている。運転者は、この画面100を通じて、実機の目標走行経路からのずれを明確に知ることができる。
目標走行経路の修正のための操作入力デバイス200として機能するソフトウエアボタン群210として、上から順に、修正対象となる目標走行経路(図10では太線で示された目標走行経路TL)を左移動させる左移動ボタン211、右移動させる右移動ボタン212、修正対象となる目標走行経路を左回転させる左回転ボタン213、右回転させる右回転ボタン214が並んでいる。これらのボタンを操作することで目標走行経路を修正することができ、完了ボタン215を操作することで、人為修正が完了して、次に自動修正処理が実行される。この処理は、キャンセルボタン216を操作することで、調整処理を繰り返すことができる。つまり、この実施形態では、平行移動調整具201として、左移動ボタン211と右移動ボタン212とが用意されており、回転移動調整具202として、左回転ボタン213と右回転ボタン214とが用意されている。
状態検出手段6の構成そのものは、各種センサやスイッチ(ボタンなどを含む)からなる状態検出器群と、この状態検出器群からの検出信号を処理するセンサECUとして良く知られたものと実質的には同じである。ただし、この実施形態においては、演算制御ユニット8やその他のユニットでの利用に適応するような信号に変換する機能や、複数の検出信号から特定の状態信号を生成する機能を有する。状態検出手段6から出力される状態信号の代表的なものは、エンジン回転数、車輪回転数、燃料残量、苗残量、肥料残量、変速位置、水田作業装置(圃場作業装置)2の姿勢(上昇状態や下降状態)、苗植付機構21が苗植付運動を行っている作業状態、苗植付機構21が苗植付運動を行っていない非作業状態、などを特定する信号である。これらの状態信号のうちで、この実施形態で採用される状態信号を出力するために必要な検出信号を生成するセンサやスイッチは、ここでは図示されていないが、状態検出器群として装備されている。
なお、入力信号処理部65も、外部から入力される信号を処理する機能部であるので、状態検出手段6と統合化することも可能である。また、状態検出手段6や入力信号処理部65から出力された各種データは、表示データ生成部88や警告報知部89aで処理され、報知処理ユニット64を介してディスプレイ64aやスピーカ64bで報知される。
運転支援ユニット89が作り出す機能には、走行機体1の操縦支援や水田作業装置2の操作支援だけではなく、圃場作業に必要な資材の補給支援機能も含まれている。乗用田植機において、それ自体は公知であるが、苗や肥料の残量を検出する残量検出ユニット(図示されていない)や資材詰まりなどの資材補給不能を検出する補給不能検出ユニット(図示されていない)が備えられている。運転支援ユニット89は、状態検出手段6を通じて送られてくる資材残量が閾値レベルを下回ると、そのことを報知する。また、運転支援ユニット89は、状態検出手段6を通じて補給不能が検知されると、その旨の報知情報を生成して報知処理ユニット64を通じて報知する。その際、自動操舵がONされておれば、自動操舵の停止を指令し、さらには走行機体1の停止を指令するように構成してもよい。
運転支援ユニット89は、目標走行経路の位置情報と自機位置の情報(測位データ)と状態信号(上昇・下降操作状態や植付クラッチの切り・入り操作状態など)とから、目標走行経路の走行時に水田作業装置2が非作業状態であることや目標走行経路外の走行時に水田作業装置2が非作業状態であることを検知することができる。これらのことは異常事態であるので、これを検知すると、運転支援ユニット89は、警告報知部89aの機能を用いて警告を報知する。また、目標走行経路外の走行時には、作業走行ができない旨、つまり植付作業の禁止を報知することも有益である。
さらに、運転支援ユニット89は、姿勢ずれ算定部84からの得られる実機の向き(走行機体1の目標走行経路に対する角度)や目標走行経路からの位置ずれに基づいて走行機体1の向きが許容角度を超えている場合や、走行機体1の位置ずれが許容距離を超えている場合には、警告報知部89aの機能を用いてその旨の警告を報知すること可能である。
作業設定部86は、圃場作業装置としての水田作業装置2を用いてこれから行おうとする圃場の境界形状、走行開始地点、走行終了地点、苗などの補給地点などを設定する。設定されたデータは、自動操舵時の目標となる走行経路を算定するために経路算定部81に与えられる。
演算制御ユニット8に構築されている、情報格納部80、基準経路生成部81aを含む経路算定部81、操舵データ出力部82、自動操舵部83、姿勢ずれ算定部84、目標走行経路調整部87、表示データ生成部88、警告報知部89aの機能説明には、図1から図4を用いて説明された内容が援用される。その要点だけを繰り返せば、水田作業装置2を用いて苗植付作業を行う際に、最初の人為操舵による苗植付作業走行時に、基準経路生成部81aは、水田作業装置2の下降操作に基づいて作業走行の開始を表す作業開始イベントを検知し、枕地に達することによる水田作業装置2の上昇操作に基づいて作業走行の終了を表す作業終了イベントを検知する。さらに、基準経路生成部81aは、作業開始イベントが行われた自機位置と作業終了イベントが行なわれた自機位置とから基準経路を生成する。経路算定部81は、当該基準経路に基づいて、その以降の目標走行経路を算定する。これにより、枕地での人為操舵による旋回走行を終えると、自動操舵で目標走行経路に沿った作業走行を行うことになる。しかしながら、その時、実際の走行機体1と目標走行経路との間に、向き及び位置に関して相当なずれがあれば、自動操舵では走行機体1がスムーズに目標走行経路に沿わないという不都合が生じる。この不都合を避けるため、運転者は、目標走行経路調整部87による制御機能の下で、図10で示すようなディスプレイ64aの画面100を見ながら、走行機体1ではなく、目標走行経路を修正する。これにより、人為操舵による枕地での旋回走行から自動操舵による作業走行への移行時に生じやすい制御ハンチング等の不都合が回避される。
なお、自動操舵での直線状の作業走行中に何らかの要因で、緊急避難的に作業走行経路を外れなければならないことが起こり得る。そのような時には、ステアリングハンドル33bの操作量、軸トルク、前輪切れ角などは自動制御時にはあり得ない異常値になる。このことを利用して、そのような異常値が生じた場合、自動操舵部83に自動操舵の動作停止を中断する指令が与えられる。これにより、異常時の迅速な処理が可能となる。
なお、この実施形態では、図5に示されているように、昇降レバー49に、自動操舵を強制的に禁止または許可する人為操作具91が設けられている。この実施形態では、人為操作具91は、自動操舵禁止用人為操作具と自動操舵許可用人為操作具との2つの機能を有する2状態切替操作具である。人為操作具91は、運転部33の適当な配置可能であり、ステアリングハンドル33bや非図示の主変速レバーなどに取り付けてもよい。
本発明による走行作業機及びそれに用いられる自動操舵システムでは、走行機体1に対する操舵制御だけでなく、圃場作業装置2を構成する種々の動作機器の機器制御の記録化が可能である。したがって、そのような制御情報の動作履歴データをデータベース化して記録することにより、有益な営農情報が得られる。特に、測位ユニット5による測位データまたは情報格納部80に格納されている地図データあるいはその両方と、圃場作業履歴データとがリンクされることにより圃場における微細区画単位での農作業管理に寄与することができる。
〔別実施形態〕
(1)上述した実施形態では、測位ユニットとして、GPSなどを用いた衛星航法に、ジャイロ加速度センサなどのセンサを用いた慣性航法の一部の機能を補完させるものが用いられているが、本発明は、この方式に限定されているわけではない。自機位置を満足できる精度で検出できる測位デバイスであれば他の方式を採用してもよい。
(2)上述した実施形態では、経路算定部81は、作業開始イベント及び作業終了イベントの検知を通じて基準経路を生成し、この基準経路に基づいて目標走行経路を算定する構成を採用していた。これに代えて、圃場の地図情報に基づいて目標走行経路を算定するアルゴリズムや、圃場の各コーナ点をティーチングして目標走行経路を算定するアルゴリズムなどを採用してもよい。また、経路算出アルゴリズムを演算制御ユニット内に構築した場合、経路算出アルゴリズムが複雑になれば要求される演算能力が高くなるという問題が生じる。この問題を回避するため、経路算出演算は、外部のコンピュータに行わせるクラウドネットワーク方式を採用してもよい。同様に、情報格納部80も外部のコンピュータ内に構築し、必要に応じて植播系圃場作業機からアクセスするような構成にしてもよい。そのためには、植播系圃場作業機にインターネットなどデータ通信回線に接続可能な通信ユニットが備えられか、あるいは運転者によって持ち込まれる。
(3)状態信号から作業開始イベントや作業終了イベントを検知する際、当該状態信号を入力から所定の遅延を設けて、作業開始イベントや作業終了イベントの発生時点とみなしてもよい。
(4)図1や図9で示された機能ブロックは、説明目的で記載されているので、特に演算制御ユニット8に構築されている各機能部は、任意に統合することまたは任意に分割することが可能であり、本発明はその機能の区分けを限定しているわけでない。
(5)本発明による走行作業機及びそれに用いられる自動操舵システムには、GNSS機能と地図データ収納機能が備えられているので、これを利用して、作業対象となる作業地への自動操舵あるいは走行経路案内を行う構成を採用することも可能である。
本発明は、乗用田植機だけでなく、各種作業装置を装備した自動走行可能な農用作業機など種々の走行作業機にも適用可能である。
1 :走行機体
2 :作業装置(水田作業装置)
5 :測位ユニット
6 :状態検出手段
7 :機器制御ユニット
8 :演算制御ユニット
33 :運転部
33b :ステアリングハンドル
50 :衛星航法用モジュール
51 :慣性航法用モジュール
60 :状態検出器群
61 :検出信号処理部
64 :報知処理ユニット
65 :入力信号処理部
66 :タッチパネル
80 :情報格納部
81 :経路算定部
82 :操舵データ出力部
83 :自動操舵部
84 :姿勢ずれ算定部
87 :自動走行経路調整部
87a :人為調整部
87b :自動調整部
88 :表示データ生成部
89 :運転支援ユニット
200 :操作入力デバイス
201 :平行移動調整具
202 :回転移動調整具
211 :左移動ボタン
212 :右移動ボタン
213 :左回転ボタン
214 :右回転ボタン

Claims (10)

  1. 走行機体と、
    前記走行機体の特定位置である自機位置を示す測位データを出力する測位ユニットと、
    前記走行機体が自動操舵で作業走行するための目標走行経路を算定する経路算定部と、
    前記測位データと前記目標走行経路とを用いて前記走行機体が前記目標走行経路に沿うように走行するための自動操舵データを出力する操舵データ出力部と、
    前記操舵データ出力部から出力される前記自動操舵データに基づいて前記走行機体を操舵する自動操舵部と、
    人為操舵走行から自動操舵走行への移行時または自動操舵走行の途中で、これから走行すべき目標走行経路の少なくとも一部の目標走行経路区間を人為操作入力に基づいて調整する目標走行経路調整部と、
    を備えた走行作業機。
  2. 前記目標走行経路調整部には、人為操作入力に基づいて調整された目標走行経路区間から以降の目標走行経路を前記目標走行経路区間の調整量に基づいて自動調整する自動調整部が備えられている請求項1に記載の走行作業機。
  3. 人為操作入力に基づく前記目標走行経路の調整は、元の前記目標走行経路の平行移動または元の前記目標走行経路の回転移動あるいはその両方によって行われる請求項1または2に記載の走行作業機。
  4. 前記測位データに基づいて算定される前記目標走行経路に対する前記走行機体の向きと位置に関する情報をディスプレイに表示する表示データ生成部と、前記人為操作入力を行うための操作入力デバイスとが備えられ、前記走行すべき目標走行経路の調整は前記ディスプレイと前記操作入力デバイスとを通じて行われる請求項1から3のいずれか一項に記載の走行作業機。
  5. 前記表示データ生成部は、前記情報として、少なくとも前記目標走行経路区間を含む前記目標走行経路と、前記目標走行経路区間に対する前記走行機体の向きと位置とを示すシンボルとを含む情報画面を生成し、前記操作入力デバイスによる入力信号に応答して前記ディスプレイ上での前記目標走行経路が調整される請求項4に記載の走行作業機。
  6. 目標走行経路に沿って作業路面を自動走行するように走行機体を操舵する自動操舵システムであって、
    前記走行機体の特定位置である自機位置を示す測位データを出力する測位ユニットと、
    前記走行機体が自動操舵で作業走行するための目標走行経路を算定する経路算定部と、
    前記測位データと前記目標走行経路とを用いて前記走行機体が前記目標走行経路に沿うように走行するための自動操舵データを出力する操舵データ出力部と、
    前記操舵データ出力部から出力される前記自動操舵データに基づいて前記走行機体を操舵する自動操舵部と、
    人為操舵走行から自動操舵走行への移行時または自動操舵走行の途中で、これから走行すべき目標走行経路の少なくとも一部の目標走行経路区間を人為操作入力に基づいて調整する目標走行経路調整部と、
    を備えた自動操舵システム。
  7. 前記目標走行経路調整部には、人為操作入力に基づいて調整された目標走行経路区間から以降の目標走行経路を前記目標走行経路区間の調整量に基づいて自動調整する自動調整部が備えられている請求項6に記載の自動操舵システム。
  8. 人為操作入力に基づく前記目標走行経路の調整は、元の前記目標走行経路の平行移動または元の前記目標走行経路の回転移動あるいはその両方によって行われる請求項6または7に記載の自動操舵システム。
  9. 前記測位データに基づいて算定される前記目標走行経路に対する前記走行機体の向きと位置に関する情報をディスプレイに表示する表示データ生成部と、前記人為操作入力を行うための操作入力デバイスとが備えられ、前記走行すべき目標走行経路の調整は前記ディスプレイと前記操作入力デバイスとを通じて行われる請求項6から8のいずれか一項に記載の自動操舵システム。
  10. 前記表示データ生成部は、前記情報として、少なくとも前記目標走行経路区間を含む前記目標走行経路と、前記目標走行経路区間に対する前記走行機体の向きと位置とを示すシンボルとを含む情報画面を生成し、前記操作入力デバイスによる入力信号に応答して前記ディスプレイ上での前記目標走行経路が調整される請求項9に記載の自動操舵システム。
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