JP2011246768A - 高張力鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の高張力鋼板は、C:0.01〜0.06質量%を含有し、さらにMn、Cr、Mo、V、Nb、B、Ti、N、Si、Al、P、Sを含有するとともに、下記式(1)、(2)で表されるKPおよびKVがそれぞれ2.4≦KP≦4.5、およびKV≦0.060を満足し、鋼組織の90面積%以上がベイナイトであり、ベイナイト組織の平均結晶粒径が5〜20μmであり、旧オーステナイト粒の平均アスペクト比が5.0以上であることを特徴とする。
KP=[Mn]+1.5×[Cr]+2×[Mo] ・・・(1)
KV=[V]+[Nb] ・・・(2)
【選択図】なし
Description
KP=[Mn]+1.5×[Cr]+2×[Mo] ・・・(1)
KV=[V]+[Nb] ・・・(2)
(但し、[ ]は各元素の含有量(質量%)を表す。)
Cは溶接時におけるHAZ部の耐溶接割れ性と母材強度を両立させ、且つ大入熱HAZ靭性を改善するために重要な元素である。Cが0.06%を超えると高冷却速度側で低温変態ベイナイトでなく、マルテンサイトが生成するようになり、耐溶接割れ性および大入熱HAZ靭性が改善されない。またCが0.01%未満では必要最小限の母材強度が得られない。そこでC量は0.01〜0.06%と定めた。C量の下限は、好ましくは0.020%であり、より好ましくは0.024%である。C量の上限は、好ましくは0.050%以下であり、より好ましくは0.045%以下である。
Mnは焼入れ性を改善する作用を有するとともに、ベイナイトブロックを微細化して母材靭性を改善する効果を発揮する。Mn量が1.25%未満であると、所望の焼入れ性改善作用が発揮されず、母材強度が不足する。一方、Mn量が2.5%を超えて過剰になるとHAZ部の耐溶接割れ性が劣化することになる。そこでMn量を1.25〜2.5%と定めた。Mn量の下限は、好ましくは1.35%であり、より好ましくは1.45%(特に1.50%)である。Mn量の上限は、好ましくは2.3%であり、より好ましくは2.0%である。
Crは本発明において重要な元素であり、焼入れ性を改善するだけでなく、Bによる焼入れ性の改善効果を安定的に確保する作用を有する。また、ベイナイトブロックの微細化を達成し、母材靭性を改善する効果も発揮する。Cr量が0.1%未満ではこれらの効果が有効に発揮されず、一方、Cr量が2.0%を超えて過剰になるとHAZ部の耐溶接割れ性が劣化する。そこでCr量を0.1〜2.0%と定めた。Cr量の下限は、好ましくは0.20%であり、より好ましくは0.40%(特に0.50%)である。Cr量の上限は、好ましくは1.5%であり、より好ましくは1.4%である。
Moは、Mo、NbおよびBの複合効果によって焼入れ性を改善する作用を有する。こうした効果を有効に発揮させるためには、Mo量は0.01%以上含有させる必要がある。一方、Moが1.5%を超えて過剰になるとHAZの耐溶接割れ性が劣化する。そこでMo量は0.01〜1.5%と定めた。Mo量の下限は、好ましくは0.10%、より好ましくは0.13%である。Mo量の上限は、好ましくは1.3%であり、より好ましくは1.0%である。
本発明において、上記したMn、Cr、Moの含有量を個々に制御するのみならず、これら元素の含有量によって定まるKPを制御することも重要である。KPの値が2.4未満では上記した焼入れ性改善効果を十分に発揮することができず、擬ポリゴナルフェライトやフェライトが生成しやすくなり、570MPa以上の母材強度を得ることができなくなる。一方、KPの値が4.5を超えて大きくなると大入熱HAZ靭性が低下する。そこでKPは2.4以上4.5以下と定めた。KPの下限は、好ましくは2.6であり、より好ましくは2.8である。KPの上限は、好ましくは4.3であり、より好ましくは4.0である。
Vは少量の添加で焼入れ性および焼戻し軟化抵抗を高める作用を有する元素である。このような作用を有効に発揮させるため、V量は0.01%以上とすることが好ましく、より好ましくは0.02%以上である。Nbも少量の添加で焼入れ性を高め、母材強度の向上に寄与する元素であるため、Nb量は0.001%以上と定めた。Nb量の下限は、好ましくは0.005%であり、より好ましくは0.006%である。一方、V量およびNb量が過剰になると大入熱HAZ靭性が低下する。そこでV量は0.040%以下、Nb量は0.030%以下と定めた。V量の上限は、好ましくは0.035%であり、より好ましくは0.030%である。Nb量の上限は、好ましくは0.025%であり、より好ましくは0.022%である。
本発明において、上記したVとNbは、個々の含有量を制御するのみならず、これら元素の含有量によって定まるKVの値を制御することも重要である。上記の通り、これらの元素が過剰になりすぎると、大入熱HAZ靭性を低下させるためである。そこでKVは0.060以下と定めた。KVは好ましくは0.055以下であり、より好ましくは0.040以下である。
Bは焼入れ性を改善する作用を有する元素であり、低冷却速度でベイナイトを生成しやすくすると共に、極低Cとし、同時に適量のMn、Cr、Moを添加することで小入熱溶接時におけるHAZ部の耐溶接割れ性と母材強度を高める作用を発揮する。このような作用を有効に発揮させるためB量を0.0006%以上と定めた。B量の下限は、好ましくは0.0008%であり、より好ましくは0.0010%である。一方、B量が過剰になるとかえって焼入れ性が低下し、母材靭性と溶接性が不足する。そこでB量は0.005%以下と定めた。B量の上限は、好ましくは0.004%、より好ましくは0.003%、さらに好ましくは0.0015%(特に0.0012%)である。
Tiは、Nと窒化物を形成して大入熱溶接時におけるHAZ部のオーステナイト粒を微細化し、HAZ靭性の改善に寄与する点で有用である。そこでTi量を0.005%以上と定めた。Ti量の下限は、好ましくは0.008%であり、より好ましくは0.010%である。一方、Ti量が過剰になるとかえってHAZ靭性が低下する。そこでTi量は0.05%以下と定めた。Ti量の上限は、好ましくは0.040%以下であり、より好ましくは0.030%以下である。
Nは上記した通り、Tiと窒化物を形成して大入熱溶接時におけるHAZ靭性改善に寄与する点で有用である。このような作用を有効に発揮させるため、N量は0.002%以上と定めた。N量の下限は、好ましくは0.0030%であり、より好ましくは0.0035%である。ただし、NはBと結合して固溶Bを減少させ、Bの焼入れ性向上作用を阻害し、母材の靭性および大入熱HAZ靭性を低下させる作用も有しており、Nの含有量が0.010%を超えるとその作用が顕著になる。そこでN量は、0.010%以下とする。N量の上限は、好ましくは0.0090%であり、より好ましくは0.0080%である。
Siは脱酸剤として有用な元素であるが、0.5%を超えて含有すると溶接性および母材靭性が低下する。そこでSi量は0.5%以下とする。Si量の上限は好ましくは0.40%以下であり、より好ましくは0.35%以下である。
Alは脱酸元素であるとともに、Nを固定して固溶Bを確保することでBに基づく焼入れ性向上作用を高める元素であるが、0.07%を超えて含有すると母材靭性が低下する。そこでAl量は0.07%以下とする。Al量の上限は、好ましくは0.060%であり、より好ましくは0.040%以下である。
PおよびSは、靭性等の物性に悪影響を及ぼす有害な不純物元素であるため、P量は0.02%以下、S量は0.01%以下に抑制する。P量の上限は、好ましくは0.015%、より好ましくは0.010%であり、S量の上限は、好ましくは0.007%、より好ましくは0.005%である。
Cuは固溶強化および析出強化により母材強度を向上させると共に、焼入れ性向上作用を有する元素である。このような効果を有効に発揮させるため、Cu量は0.10%以上含有させることが好ましく、より好ましくは0.20%以上である。一方、Cu量が過剰になると大入熱HAZ靭性が低下する。そこでCu量は2.0%以下とすることが好ましい。Cu量の上限は、より好ましくは1.5%であり、さらに好ましくは0.5%である。
Niは、母材靭性向上に有用な元素である。このような効果を有効に発揮させるため、Ni量は0.10%以上とすることが好ましく、より好ましくは0.20%以上である。一方、Ni量が過剰になるとスケール疵が発生しやすくなるため、Ni量は5.0%以下とすることが好ましい。Ni量の上限は、より好ましくは4%以下であり、さらに好ましくは3%以下である。
Zr、Ca、MgおよびREMはいずれも、介在物を微細化させる作用を有するため、母材靭性の安定化およびHAZ靭性の向上に寄与する元素である。このような効果を有効に発揮させるためCa、MgおよびREMは合計で0.0005%以上含有させることが好ましく、より好ましくは0.0010%以上である。またZr量は好ましくは0.002%以上であり、より好ましくは0.005%以上である。一方、これらの含有量が過剰になると介在物が粗大化することによりHAZ靭性が劣化する。そこでCa、MgおよびREMの含有量は合計で0.010%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.008%以下であり、さらに好ましくは0.005%以下である。またZr量は好ましくは0.020%以下であり、より好ましくは0.015%以下であり、さらに好ましくは0.010%以下である。なお、本発明においてREMは、周期律表3族に属するスカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)およびランタノイド系列希土類元素(原子番号57〜71)の元素のいずれをも用いることができる。
得られた各鋼板のt/4位置(t:板厚)からJIS4号試験片を採取し、JIS Z2241に従って引張試験を行い、引張強度(TS)を測定した。
得られた各鋼板のt/4位置(t:板厚)からJIS4号試験片を3本採取し、JIS Z2242に従って−5℃でシャルピー衝撃試験を行い、シャルピー吸収エネルギー(vE-5)を測定した。なお、表3、4にはこれらの値の平均値および最小値をそれぞれ示した。
各鋼板のt/4位置(t:板厚)の圧延方向に平行な断面を鏡面研磨した試験片を、2%ナイタール液でエッチングを行い、観察視野:200μm×150μmの範囲を、光学顕微鏡を用いて400倍で観察して10視野について写真撮影をした。これら10視野についてMedical Cybernetics社製「Image−Pro Plus」を用いて画像解析を行い、組織中の旧オーステナイト粒の平均アスペクト比、およびベイナイト分率を測定した。この際、フェライト、擬ポリゴナルフェライト、およびMA以外のラス状組織はベイナイトとみなした。
(i)HAZ靭性の測定
得られた鋼板に、最高加熱温度:1400℃、800〜500℃の冷却時間Tc:120秒の条件の熱サイクル(入熱量15kJ/mmで溶接を行った場合のHAZの熱履歴に相当)を与えた後、JIS4号試験片を採取して、−5℃でシャルピー衝撃試験を行って、シャルピー吸収エネルギー(vE-5)を求めた。
JIS Z3158に記載のy形溶接割れ試験法に基づいて、入熱1.7kJ/mmで被覆アーク溶接を行い、ルート割れ防止予熱温度を測定した。断面割れ率が0となる割れ停止予熱温度で耐溶接割れ性を評価した。なお、割れ停止予熱温度が50℃以上となる場合は全て不合格であると評価し、表3、4において「−」で示した。
Claims (5)
- C :0.01〜0.06%(質量%の意味。以下、化学成分組成について同じ。)、
Mn:1.25〜2.5%、
Cr:0.1〜2.0%、
Mo:0.01〜1.5%、
V:0.040%以下(0%を含む)、
Nb:0.001〜0.030%、
B :0.0006〜0.005%、
Ti:0.005〜0.05%、
N :0.002〜0.010%、
Si:0.5%以下(0%を含まない)、
Al:0.07%以下(0%を含まない)、
P :0.02%以下(0%を含まない)、
S :0.01%以下(0%を含まない)を含有し、残部が鉄および不可避不純物であり、
下記式(1)、(2)で表されるKPおよびKVがそれぞれ2.4≦KP≦4.5、およびKV≦0.060を満足するとともに、
鋼組織の90面積%以上がベイナイトであり、残部がマルテンサイトとオーステナイトよりなる混合組織(MA組織)、フェライト、擬ポリゴナルフェライトであり、
ベイナイト組織の平均結晶粒径が5〜20μmであり、
旧オーステナイト粒の平均アスペクト比が5.0以上であることを特徴とする高張力鋼板。
KP=[Mn]+1.5×[Cr]+2×[Mo] ・・・(1)
KV=[V]+[Nb] ・・・(2)
(但し、[ ]は各元素の含有量(質量%)を表す。) - 更に、Cu:2.0%以下(0%を含まない)を含有する請求項1に記載の高張力鋼板。
- 更に、Ni:5.0%以下(0%を含まない)を含有する請求項1または2に記載の高張力鋼板。
- 更に、Zr、Ca、Mg、およびREMよりなる群から選択される1種以上を、Ca、Mg、およびREMの合計含有量が0.010%以下(0%を含まない)であり、Zr量が0.020%以下(0%を含まない)となるように含有する請求項1〜3のいずれかに記載の高張力鋼板。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の高張力鋼板を製造する方法であって、
Ac3〜1300℃に加熱して熱間圧延を行うにあたり、加熱温度をT(℃)とする時、T/20−8(%)以上の圧下率で未再結晶域圧延を実施し、前記圧延後0.5〜50℃/秒の冷却速度で冷却することを特徴とする高張力鋼板の製造方法。
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