JP2016117932A - 圧延h形鋼及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
また、本発明者らはフェライトとパーライトの硬さ及び粒径を制御することにより、as−roll(圧延のまま)でも高強度低YRかつ溶接性にも優れた圧延H形鋼及びその製造方法について提案している(例えば、特許文献6)。
本発明の圧延H形鋼は、高温で熱間圧延を行った後、加速冷却を施すことなく空冷してフェライト・パーライトに変態させ、更に徐冷することによってVCの析出を促進させる製造方法によって得られ、V量の抑制を可能にしたものである。
本発明の要旨は以下のとおりである。
C:0.15〜0.25%、
Si:0.05〜0.50%、
Mn:0.70〜1.50%、
V:0.03%以上0.06%未満、
N:0.001〜0.004%、
Ti:0.003〜0.015%
を含有し、
Nb:0.010%以下、
Al:0.06%以下、
O:0.0035%以下
に制限し、
Ti/N:3.0〜15.0
を満足し、残部がFe及び不可避不純物からなり、
下記式(1)によって求められるCeqが0.42以下であり、
金属組織がフェライト・パーライトからなり、
フェライト粒径が15.0〜50.0μmであり、
下記式(2)によって求められるフェライト/パーライト硬さ比が0.60以下であることを特徴とする圧延H形鋼。
Ceq=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14 ・・・(1)
フェライト/パーライト硬さ比=(フェライト硬さ)/(パーライト硬さ)・・・(2)
式(1)のC、Mn、Si、Ni、Cr、Mo、Vは、各元素の含有量[質量%]であり、元素を含有しない場合は0として計算する。
Cu:0.30%以下、
Ni:0.20%以下、
Mo:0.30%以下、
Cr:0.05%以下
の1種又は2種以上を含有することを特徴とする上記[1]に記載の圧延H形鋼。
[3] 更に、質量%で、
REM:0.010%以下、
Ca:0.0050%以下
の一方又は双方を含有することを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の圧延H形鋼。
t650/550[s]=10{0.645/(V+0.209)} ・・・ (3)
式(3)のVは、V元素の含有量[質量%]である。
次に、V含有量を低減し、C、Si及びMnの含有量の最適化と変態後の徐冷によってVCの析出を促進させ、引張強度の向上に大きく寄与するパーライト硬さを向上させた。その結果、降伏強度の上昇に比べて引張強度が顕著に上昇し、圧延H形鋼の引張強度を550MPa以上とし、YRを0.80以下にすることができた。
t650/550[s]=10{0.645/(V+0.209)} ・・・ (3)
式(3)のVは、V元素の含有量[質量%]である。
t650/550[s]≧10{0.645/(V+0.209)} ・・・ (4)
式(4)のVは、V元素の含有量[質量%]である。
図3及び図4は本発明者らの検討の結果の一例を示すものである。図3はフェライト粒径とYRの相関を示している。図4はフェライト/パーライトの硬さ比とYRの相関を示している。図3及び図4から、結晶粒径の微細化及び硬さ比の上昇に伴いYRが上昇することがわかる。したがって、YRを低下させるためには、結晶粒径の過剰な微細化を防止し、フェライト・パーライトの硬さ比の上昇を抑制することが必要である。
まず、本発明の圧延H形鋼の成分組成について説明する。なお、各元素の含有量の「%」は「質量%」を意味する。
Cは、鋼の強化に有効な元素である。本発明では、硬質相であるパーライトの生成及びVCの析出促進によって引張強度を高めるために、C含有量の下限値を0.15%以上とする。好ましくはC含有量を0.17%以上、より好ましくは0.19%以上とする。一方、C含有量が0.25%を超えると、溶接熱影響部の硬度が上昇し、靱性が低下する。したがって、C含有量の上限を0.25%以下とする。好ましくはC含有量を0.22%以下、より好ましくは0.20%以下とする。
Siは、脱酸元素であり、また、強度の上昇にも寄与する元素である。引張強度を上昇させるために、本発明では、Si含有量の下限を0.05%以上とする。好ましくはSi含有量を0.10%以上、より好ましくは0.15%以上とする。一方、Si含有量が0.50%を超えると、溶接部では島状マルテンサイトが生成し、靭性を低下させるため、上限を0.50%以下とする。溶接熱影響部の靱性の低下を抑制するには、Si含有量の上限を0.45%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.40%以下とする。
Mnは、高強度化に寄与する元素であり、特に、パーライトの硬化に寄与する元素である。引張強度を上昇させるために、本発明では、Mnを0.70%以上含有する。Mn含有量の下限は、好ましくは0.80%以上、より好ましくは1.00%以上、更に好ましくは1.20%以上とする。一方、1.50%を超えるMnを添加すると、母材及び溶接熱影響部の靱性、割れ性などを損なう。したがって、Mn含有量の上限を1.50%以下とする。Mn含有量の上限は、好ましくは、1.40%以下、より好ましくは1.30%以下とする。
Vは、炭化物を生成する元素であり、析出強化によりフェライト・パーライトの強度を向上させる重要な元素である。特に本発明において、Vは降伏強度の過剰な上昇を抑制し、かつ引張強度の向上に顕著に寄与するため、0.03%以上を添加する。好ましくは、0.04%以上のVを添加する。一方、Vは高価な元素であり、0.06%以上のVを添加すると、合金コストが上昇するため、V含有量の上限を0.06%未満とする。
Nは、窒化物を形成する元素である。VNの生成によるフェライト粒径の微細化及びVC析出量の減少を抑制するため、N含有量の上限を0.004%以下とし、好ましくは0.003%以下とする。N含有量の下限値は少ないほど好ましいが、0.001%未満とすることが困難であるため、0.001%以上とする。
Tiは、VNよりも高温で析出するTiNを生成する元素である。後述するように、本発明では、VNの生成を防止するため、N含有量の3倍以上のTiを添加する。Ti含有量は、N含有量の下限値を0.001%未満とすることが困難であるため、0.003%以上とする。一方、Tiを過剰に添加すると粗大なTiNが生成し、靭性を低下させてしまう。このため、Ti含有量の上限を0.015%以下とする。Ti含有量は、好ましくは0.013%以下、より好ましくは0.010%以下とする。
本発明では、VNの生成を防止するため、Ti/Nを3.0以上とし、N含有量の3.0倍以上のTiを添加する。これは、TiNの生成によってNを固定するため、TiとNの含有量を原子%でほぼ同等にするという観点から、質量数がNの約3倍であるTiの含有量を、質量%でNの含有量の3.0倍以上とするものである。Ti/Nの上限は、N含有量の下限値(0.001%)と、Ti含有量の上限値(0.015%)から15.0以下とする。
Nbは、強度及び靭性を高める元素であるが、析出強化やフェライト粒径の微細化によって降伏強度を上昇させ、YRを大きく向上させてしまう。このため、本発明では、Nb含有量を0.010%以下に制限する。好ましくはNb含有量を0.005%以下とする。Nbは含有しなくてもよいが、強度及び靭性を高めるためにNbを含有する場合、その含有量は0.002%以上であることが好ましく、0.003%以上であることがより好ましい。
Alは、脱酸元素であり、0.01%以上を添加することが好ましい。しかし、0.06%を超えてAlを添加すると、粗大な介在物の形成によって靭性が低下するため、0.06%以下に制限する。Al含有量は、好ましくは0.05%以下、より好ましくは0.04%以下とする。
Oは、不純物である。酸化物の生成を抑制して靭性を確保するため、O含有量の上限を0.0035%以下に制限する。HAZ靭性を向上させるには、O含有量を0.0015%以下にすることが好ましい。O含有量を0.0005%未満にしようとすると、製造コストが高くなるため、O含有量は0.0005%以上が好ましい。
Ceqは、焼入れ性の指標であり、下記式(1)で求めることができる。Ceqは、強度を確保するために高めることが好ましい。しかし、Cepが0.42を超えると、特に溶接部の靱性が低下するとともに溶接時に割れが生じる。このため、Cepは0.42以下とし、0.40以下とすることが好ましい。Ceqの下限は特に限定しないが、必須的に含まれるC、Mn、Si、V含有量の下限値から0.27となる。
ここで、C、Mn、Si、Ni、Cr、Mo、Vは、各元素の含有量[質量%]であり、元素を含有しない場合は0として計算する。
Cuは、強度の向上に寄与する元素であり、0.01%以上を添加することが好ましい。Cu含有量は、より好ましくは0.05%以上、更に好ましくは0.10%以上である。一方、0.30%を超えるCuを添加すると、強度が過剰に上昇し、低温靭性が低下することがある。このため、Cu含有量の上限を0.30以下%とすることが好ましい。より好ましくはCu含有量の上限を0.20%以下とする。
Niは、強度及び靭性を高めるために有効な元素であり、0.01%以上を添加することが好ましい。Ni含有量は、より好ましくは0.05%以上、更に好ましくは0.10%以上である。一方、Niは高価な元素であり、合金コストの上昇を抑制するため、上限を0.20%以下とすることが好ましく、0.15%以下とすることがより好ましい。
Moは、強度の向上に寄与する元素である。しかし、0.30%を超えてMoを添加すると、Mo炭化物(Mo2C)を析出し、溶接熱影響部の靱性を劣化させることがある。このため、Mo含有量は0.30%以下に制限することが好ましく、0.25%以下がより好ましい。Mo含有量の下限は、0.01%以上が好ましい。
Crも強度の向上に寄与する元素である。しかし、0.05%を超えてCrを添加すると、炭化物を生成し、靭性を損なうことがある。このため、Cr含有量の上限を0.05%以下に制限することが好ましい。Cr含有量のより好ましい上限は0.03%以下である。Cr含有量の下限は0.01%以上が好ましい。
(Ca:0.0050%以下)
REMおよびCaは、脱酸元素であり、硫化物の形態の制御にも寄与するため、添加してもよい。しかし、REMおよびCaの酸化物は、溶鋼中で容易に浮上するため、鋼中に含有されるREMの上限は0.010%以下、Caの上限は0.0050%以下とする。REMおよびCaは、それぞれ0.0005%以上を添加することが好ましい。
本発明の圧延H形鋼は、熱間圧延後、空冷して製造されるため、金属組織は、フェライト・パーライトとなる。フェライト・パーライト以外に、マルテンサイトとオーステナイトとの混成物(Martensite-Austenite Constituent、MA)が生成することがあるが、面積率で5%未満である。本発明の圧延H形鋼金属組織は、フェライト・パーライトからなり、フェライト・パーライトの面積率は95%以上である。
フェライト粒径は、特に、降伏強度に影響する。フェライト粒径が微細化すると、降伏強度が高くなる。したがって、降伏比を低下させるため、フェライト粒径の下限を15.0μm以上とし、18.0μm以上とすることが好ましい。降伏比を低下させるためには、フェライト粒径は大きいほど好ましいが、50.0μmを超えることはないため、上限を50.0μm以下とする。フェライト粒径は、40.0μm以下であってもよい。
フェライト/パーライト硬さ比は、フェライトの硬さをパーライトの硬さで除した比である。フェライトの硬さ及びパーライトの硬さは、ビッカース硬さである。フェライト硬さ及びパーライト硬さは、金属組織を観察しながら、JIS Z 2244のマイクロビッカース硬さ試験に準拠して測定する。YRを低減させるためには、降伏強度に寄与するフェライトの硬さの上昇を抑制し、引張強度に寄与するパーライトの硬さを向上させることが必要である。本発明ではYR≦0.80とするために、フェライト/パーライト硬さ比を0.60以下とし、好ましくは0.50以下とする。
図5に示すH形鋼の金属組織の観察および機械試験は、H形鋼の幅方向断面におけるフランジの板厚(tf)の外側から1/4の位置((1/4)tf)かつフランジ幅(F)の外側から1/6の位置((1/6)F)から試料を採取して行う。
フランジの機械的性質はフランジ幅方向、厚み方向で変動する。図5の(1/4)tfかつ(1/6)Fの位置において、金属組織および機械特性を評価するのは、(1/6)Fの位置が圧延時に最も温度の低いフランジ先端とフランジ中央の中間近くであり、かつJIS、EN、ASTMなどで強度試験の規格部位とされることもある位置であるため、(1/4)tfかつ(1/6)Fの位置がH形鋼の平均的な組織及び材質を示すと判断したためである。
製鋼工程では、上述のように、溶鋼の化学成分を調整した後、鋳造し、鋼片を得る。鋳造は、生産性の観点から、連続鋳造が好ましい。また、鋼片の厚みは、生産性の観点から、200mm以上とすることが好ましく、偏析の低減や、熱間圧延における加熱温度の均質性などを考慮すると、350mm以下が好ましい。
鋼片の加熱温度は、1100〜1350℃とする。加熱温度が1100℃未満であると、変形抵抗が高くなる。Vなど、析出物を形成する元素を十分に固溶させるため、鋼片の加熱温度の下限は1150℃以上とすることが好ましい。特に、板厚が薄い場合は、累積圧下率が大きくなるため、1200℃以上に加熱することが好ましい。一方、加熱温度が1350℃を超えると、素材である鋼片の表面の酸化物が溶融して加熱炉内が損傷することがある。加熱温度は、鋼片の表面の酸化促進に起因する歩留まりの低下を抑制するために、1300℃以下であることが好ましい。
熱間圧延は、常法で行えばよいが、鋼片を加熱した後、未再結晶域での圧延を行わないことが好ましい。未再結晶域での圧延を行うと、フェライトの核生成頻度が増加し、結晶粒径が微細化する。圧延H形鋼の形状精度等を考慮すれば、熱間圧延の仕上温度は、フェライト変態の開始温度であるAr3以上とすることが好ましい。本発明では、熱間圧延の仕上温度は、フェライト粒径の過剰な微細化を抑制するために800℃以上とする。なお、鋼片の厚みと製品の厚みに応じて、熱間圧延の前に粗圧延を行っても良い。
t650/550[s]=10{0.645/(V+0.209)} ・・・ (3)
式(3)のVは、V元素の含有量[質量%]である。
なお、図7(b)に示す例では、H形鋼を三段重ねた場合を例に挙げて説明したが、重ねる段数は特に限定されない。
空冷は、図7(a)または図7(b)に示すように、H形鋼を並べて徐冷することにより、650〜550℃の温度域を、表3および表4に示す保持時間で保持した。
表1および表2に示した成分は、製造後のH形鋼から採取した試料を化学分析して求めた。
更に、JIS Z 3158に準拠したy形溶接割れ試験方法によって溶接性を評価した(y割れ試験)。
更に、JIS Z 2244のマイクロビッカース硬さ試験に準拠し、フェライトの硬さ及びパーライトの硬さを測定し、フェライト/パーライトの硬さ比を求めた。
結果を表3および表4に示す。
機械特性の目標値は、常温の降伏点(YP)又は0.2%耐力が385MPa以上、引張強度(TS)が550MPa以上、かつTS/YPで計算される降伏比(YR)が0.80以下、伸びが14.0%以上であり、母材および溶接部のシャルピー吸収エネルギー(衝撃値)が70J/cm2以上である。
No.20ではCが、22ではSiが、24ではMnが、26ではVが、不足したために強度が低下した例である。
No.21、23、25、27、33は合金成分元素を過剰に添加、もしくはCeqが大きいため、焼入れ性が上昇し、母材および/又は溶接部のシャルピー衝撃吸収エネルギーが低下した例である。
No.28はNbを過剰に添加したため、結晶粒が微細化し、YRが0.8以上となった例である。
No.32は窒素元素の含有量が多いため、フェライト粒径が微細化し、YRが0.8以上となり、割れが発生した例である。
No.34は仕上げ温度が低いため、フェライト粒径が微細化してしまい、YRが0.80以上となった例である。
No.35はNに対してTiの添加量が不足しており、VNによりフェライト粒径が微細化したためにYRが0.80以上となり、割れが発生した例である。
No.36は650〜550℃の温度域における保持時間が不足しており、フェライト/パーライトの硬さ比が0.60を超えた結果、YRが0.80以上となった例である。
2a 水冷装置
3 仕上圧延機
Claims (4)
- 質量%で、
C:0.15〜0.25%、
Si:0.05〜0.50%、
Mn:0.70〜1.50%、
V:0.03%以上0.06%未満、
N:0.001〜0.004%、
Ti:0.003〜0.015%
を含有し、
Nb:0.010%以下、
Al:0.06%以下、
O:0.0035%以下
に制限し、
Ti/N:3.0〜15.0
を満足し、残部がFe及び不可避不純物からなり、
下記式(1)によって求められるCeqが0.42以下であり、
金属組織がフェライト・パーライトからなり、
フェライト粒径が15.0〜50.0μmであり、
下記式(2)によって求められるフェライト/パーライト硬さ比が0.60以下であることを特徴とする圧延H形鋼。
Ceq=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14 ・・・(1)
フェライト/パーライト硬さ比=(フェライト硬さ)/(パーライト硬さ)・・・(2)
(式1)のC、Mn、Si、Ni、Cr、Mo、Vは、各元素の含有量[質量%]であり、元素を含有しない場合は0として計算する。 - 更に、質量%で、
Cu:0.30%以下、
Ni:0.20%以下、
Mo:0.30%以下、
Cr:0.05%以下
の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の圧延H形鋼。 - 更に、質量%で、
REM:0.010%以下、
Ca:0.0050%以下
の一方又は双方を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の圧延H形鋼。 - 請求項1〜3の何れか1項に記載の圧延H形鋼の製造方法であって、請求項1〜3の何れか1項に記載の成分からなる鋼片を1100〜1350℃に加熱し、仕上げ温度800℃以上で熱間圧延した後空冷し、650〜550℃の温度域での保持時間を下記式(3)で求められるt650/550[s]以上とすることを特徴とする圧延H形鋼の製造方法。
t650/550[s]=10{0.645/(V+0.209)} ・・・ (3)
式(3)のVは、V元素の含有量[質量%]である。
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