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JP2007197305A - 多孔質カーボン配列体及びその製造方法 - Google Patents

多孔質カーボン配列体及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】反応物質の流通性が良く、反応物質や電子を最短距離で輸送でき、比表面積が高く、触媒を高分散で担持させることが可能な多孔質カーボン配列体及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】連続したメソ孔を有し、かつ、単分散である球状のカーボン粒子が規則配列している多孔質カーボン配列体。シリカを含む単分散球状メソ多孔体を規則配列させる配列工程と、前記単分散球状メソ多孔体の少なくともメソ孔内にカーボンを析出させるカーボン析出工程と、前記単分散球状メソ多孔体を除去する除去工程とを備えた多孔質カーボン配列体の製造方法。
【選択図】図8

Description

本発明は、多孔質カーボン配列体及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、吸着剤、触媒、触媒担体、電気二重層キャパシタ、センサー、電極、黒色基調で構造色を発する被膜等に用いられる多孔質カーボン配列体及びその製造方法に関する。
カーボン多孔体は、熱安定性、水熱安定性、化学的耐久性、脂溶性等に優れているために、吸着剤、リチウム二次電池等の各種電気化学デバイス、エネルギー又は水素の貯蔵材料などへの応用が期待されている。従来、この種の用途には、主として、活性炭の使用が検討されていたが、活性炭は、形状が不規則であり、細孔分布が広いという欠点がある。そのため、活性炭に代わるカーボン多孔体の合成に関する研究が盛んである。例えば、非特許文献1には、メソポーラスシリカを鋳型とするカーボン多孔体の製造方法が開示されている。このようにして合成されるカーボン多孔体は、メソポーラスシリカの形状が転写されるので、使用するシリカの形状に応じて様々な形状をとることが可能である。
この種のカーボン多孔体を各種分野で応用する際には、カーボン多孔体の集合体を作る必要がある。不定形のシリカを鋳型に用いた不定形のカーボン多孔体は、充填性が低いので、集合体の作製には、一般に、圧粉成形などの手段が用いられる。しかしながら、圧粉成形を行うと、カーボン多孔体の細孔が壊れる場合がある。
そこでこの問題を解決するために、従来から種々の提案がなされている。
例えば、非特許文献2には、
(1) 球状シリカの配列体を作製し、
(2) 球状シリカの粒界にフェノール樹脂を含浸させて低温で反応させ、
(3) HFによりシリカを除去し、段階的に1000℃までの昇温を行う、
多孔質カーボン配列体の製造方法が開示されている。同文献には、このような方法によって、球状シリカを除去することにより得られるマクロ孔が規則配列した多孔質カーボン配列体(いわゆる、「インバースオパールカーボン」)が得られる点が記載されている。
また、非特許文献3には、
(1) 規則配列した大きな球状ポリスチレン粒子(約300nm)の隙間に小さな球状シリカ粒子(10nm前後)が充填された配列体を作製し、
(2) 焼成により、ポリスチレン粒子を除去してマクロ孔を形成し、
(3) 球状シリカ粒子で構成されるマクロ孔を囲む壁内にジビニルベンゼンなどのカーボン源を充填し、焼成によりカーボン源をカーボン化させ、
(4) HFによりシリカを溶解させる、
多孔質カーボン配列体の製造方法が開示されている。同文献には、このような方法によって、球状ポリスチレンを除去することにより得られるマクロ孔が規則配列しており、かつ、マクロ孔を囲むカーボン壁内に球状シリカを除去することにより得られるメソ孔がある多孔質カーボン配列体(バイモーダルなインバースオパールカーボン)が得られる点が記載されている。
さらに、非特許文献4には、
(1) 球状ポリスチレン粒子を配列させて、その隙間にシリカの前駆体を含浸させ、
(2) 500℃熱処理によりポリスチレン粒子を除去し、マクロ孔を持つシリカ(インバースオパール構造)を合成し、
(3) スクロースのようなカーボン前駆体のマクロ孔への含浸、及び、100℃→160℃加熱による前駆体のポリマー化を複数回繰り返すことにより、マクロ孔の内壁にポリマをコートし、
(4) フッ酸でシリカを除去し、
(5) 800℃程度の熱処理によりポリマをカーボン化させる、
多孔質カーボン配列体の製造方法が開示されている。同文献には、このような方法によって、マクロ孔を持つ中空の球状カーボン粒子が規則配列した多孔質カーボン配列体が得られる点が記載されている。また、同文献には、同様のプロセスにより、中実の球状カーボンが規則配列した多孔質カーボン配列体が得られる点が記載されている。
また、一般に工業製品の色は、色素や染料、顔料物質で着色されており、これら着色材料が可視光領域の特定波長を強く吸着することで、人間の目は特定の色を認識する。一方、着色材料によらず、物質に照射された光の屈折、回折、散乱又は干渉などの光の方向変更によって分光された光を、特定の有彩光色として認識することもできる。このような有彩光色の代表が、構造色又は干渉色と言われる色であり、自然界では特定の蝶の翅や孔雀の羽、宝石のオパールの輝きに見られる。この構造色は、翅などが微細構造を持つことで引き起こされる光学現象に由来しており、観察角度によって色が変化するという特徴がある。また、その構造が壊れない限り、鮮やかな色を保つことが可能であるため、ここ数年、産業分野でも注目を集めている。特に、色素などの着色材料で着色した塗膜は、使用経年下で耐候劣化により退色しやすいため、構造色で発色させた塗膜が産業上、非常に有用であると考えられる。
構造色による発色を実現させる検討の中で、単分散球状微粒子を最密充填させる方法は簡便であるため、一般に広く検討されている。
例えば、特許文献1には、単分散酸化チタン粒子を基材上に堆積させた単分散酸化チタン粒子薄膜が開示されている。同文献には、酸化チタン粒子の粒径を制御することによって、単分散酸化チタン薄膜の外観色調を調節できる点が記載されている。
また、特許文献2には、被記録材の撥液性面上の一部に、光を透過する性質を有する固体微粒子を規則配列させ、撥液性面の色が標準色票明度6以下、彩度8以下の黒色あるいは暗色である記録物が開示されている。同文献には、撥液性面を黒色又は暗色にすることによって、印刷面手前からの照明光や裏面からの外光が遮光され、微粒子配列凝集物からの干渉光以外の光が目に入り難くなり、色彩に関するコントラストが高まる点が記載されている。
さらに、特許文献3には、ナイロン製の平滑な下地シートにナイロン製のメッシュ材を密着させて基材シートとし、黒色染料で着色されたポリメチルメタクリレートを含むエマルジョンを基材シートに流し込むことにより得られるカラーシートが開示されている。同文献には、基材シート表面にメッシュ材等を用いて深堀区分けを設け、深堀区分けに単分散粒子を含むエマルジョンを流し込むと、亀裂の発生を防止できる点が記載されている。
A.B.Fuertes, J.Mater.Chem., 2003, 13, 3085-3088 H.Take, et.al., Jpn.Appl.Phys., 2004, 43, 4453-4457 G.S.Chai, et. al, Adv.Mater., 2004, 16, 2057-2061 Z.Zhou, et.al., J.Mater.Chem., 2005, 15, 2569-2574 特開2001−206719号公報 特開2001−239661号公報 特開2004−276492号公報
球状のカーボン粒子の規則配列体、あるいは、球状のマクロ孔が規則配列したインバースオパールカーボンを各種用途に用いるためには、これらには、
(1) 反応物質(例えば、水素、酸素など)の流通性が良いこと、
(2) 反応物質や電子が最短距離で輸送されること、
(3) 比表面積が高いこと、
(4) 触媒担体として使用する場合には、触媒(例えば、貴金属など)を高分散で担持できること、
などの特性を備えていることが望まれる。
しかしながら、非特許文献2に開示されているインバースオパールカーボン、あるいは、非特許文献4に開示されている中実又は中空のカーボン粒子の規則配列体は、規則配列したマクロ孔のみがあり、カーボン内部にはメソ孔がない。そのため、反応物質の流通性には優れているが、低比表面積である。また、カーボン表面に貴金属触媒を担持させても、容易に貴金属微粒子がシンタリングを起こす。
一方、非特許文献3に開示されているバイモーダルなインバースオパールカーボンは、規則配列したマクロ孔に加えて、カーボン壁にはメソ孔が存在する。しかしながら、メソ孔は、互いに孤立しており、連結孔ではない。そのため、比表面積は高いが、反応物質や電子の輸送距離が長くなる。
また、構造色発色のために用いられる単分散球状粒子は、特許文献1、2に記載されているように、白色であることが一般的である。そのため、白色基調で構造色を実現することは可能であるが、黒色基調で構造色を観察できる例は少ない。産業上、黒は重厚で高級感が感じられるため、古来より好んで用いられ、非常に需要が高い。その中でも、黒色基調でツヤはあるがギラつかないような構造色を示す被膜は、製品に高級感、立体感などの付加価値を持たせることが可能であり、実現が望ましいが、様々な困難がある。最も大きな問題は、前述のように従来の単分散球状粒子はほとんど白色であり、黒色のものが少ないということである。
この問題を解決するために、特許文献3に記載されているように、有機の単分散球状粒子を黒色染料で着色することも考えられる。しかしながら、粒子を分散させる溶媒の種類によっては、着色に用いた染料が溶出し、分離する可能性がある。また、構造が壊れない限り、構造色の退色は無いものと思われるが、着色に用いた染料自体が劣化する可能性は十分に考えられる。さらに、染料・顔料などで着色することなく、黒色基調で構造色を発色することが可能な被膜が提案された例は、従来にはない。
本発明が解決しようとする課題は、反応物質の流通性が良く、反応物質や電子を最短距離で輸送でき、比表面積が高く、触媒を高分散で担持させることが可能な多孔質カーボン配列体及びその製造方法を提供することにある。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、黒色基調で構造色を発色し、耐候退色のおそれが無く、かつ、熱的安定性、水熱安定性、化学的耐久性、脂溶性等に優れた被膜として用いることが可能な多孔質カーボン配列体及びその製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明に係る多孔質カーボン配列体は、連続したメソ孔を有し、かつ、単分散である球状のカーボン粒子が規則配列しているものからなる。この場合、多孔質カーボン配列体は、連続したメソ孔を有し、かつ、単分散である球状のカーボン粒子のみからなるものでも良い。あるいは、球状の空隙が規則配列したインバースオパール状のカーボン壁をさらに備え、前記カーボン粒子は、前記空隙内にあるものでも良い。
また、本発明に係る多孔質カーボン配列体の製造方法は、シリカを含む単分散球状メソ多孔体を規則配列させる配列工程と、前記単分散球状メソ多孔体の少なくともメソ孔内にカーボンを析出させるカーボン析出工程と、前記単分散球状メソ多孔体を除去する除去工程とを備えていることを要旨とする。この場合、前記カーボン析出工程は、メソ孔内にのみカーボンを析出させるものでも良く、あるいは、メソ孔内と単分散球状メソ多孔体の粒界の双方にカーボンを析出させるものでも良い。
単分散球状メソ多孔体を規則配列させ、メソ孔内にカーボンを析出させ、さらに単分散球状メソ多孔体を除去すると、連続したメソ孔を有する単分散球状カーボン粒子が規則配列している多孔質カーボン配列体が得られる。あるいは、単分散球状メソ多孔体を規則配列させ、メソ孔内及び単分散球状メソ多孔体の粒界にカーボンを析出させ、さらに単分散球状メソ多孔体を除去すると、インバースオパールカーボンの空隙内に、連続したメソ孔を有する単分散球状カーボン粒子が挿入された多孔質カーボン配列体が得られる。
得られた多孔質カーボン配列体は、カーボン粒子が規則配列しており、その周囲にマクロ孔があるので、反応物質の流通性に優れている。また、カーボン粒子は、連続したメソ孔を有しているので、比表面積が高く、反応物質や電子を最短距離で輸送できる。さらに、このような多孔質カーボン配列体を触媒担体として用いる場合、触媒微粒子をカーボン粒子のメソ孔内に担持させることができるので、触媒を高分散で担持させることができ、かつ、触媒粒子のシンタリングも抑制することができる。さらに、得られた多孔質カーボン配列体は、単分散球状カーボン粒子が規則配列しているので、黒色基調で構造色を発現させる被膜として用いることができる。
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
本発明に係る多孔質カーボン配列体は、連続したメソ孔を有し、かつ、単分散である球状のカーボン粒子が規則配列しているものからなる。
「連続したメソ孔を有する」とは、カーボン粒子の表面から内部に向かってメソ孔が互いに連結していることを言う。メソ孔の連結構造は、特に限定されるものではなく、反応物質がカーボン粒子の表面上の1点から内部を通って、他の表面上の1点に輸送可能なものであれば良い。特に、カーボン粒子は、球の中心から表面に向かってカーボンロッドが枝分かれしつつ放射状に伸びる内部構造を有し、その隙間が、中心から表面に向かって放射状に伸びる細孔を形成しているものが好ましい。細孔の利用効率を向上させるためには、放射状に伸びる細孔の割合は、高いほど良い。後述する方法を用いると、細孔の大部分がその中心から表面に向かって放射状に伸びているカーボン粒子を含む配列体が得られる。
「単分散」とは、次の(1)式で表される単分散度が、10%以下であることをいう。高い充填性を得るためには、単分散度は、小さいほど良い。後述する方法を用いると、単分散度が10%以下、あるいは、5%以下であるカーボン粒子を含む配列体が得られる。
単分散度=(粒子径の標準偏差/平均粒子径)×100(%) ・・・(1)
「球状」とは、同一条件下で製造された複数個(好ましくは、20個以上)の粒子を顕微鏡観察した場合において、各粒子の真球度の平均値が、13%以下であることをいう。また、「真球度」とは、各粒子の外形の真円からのずれの程度を表す指標であって、粒子の表面に接する最小の外接円の半径(r)に対する、外接円と粒子表面の各点との半径方向の距離の最大値(Δrmax)の割合(=Δrmax×100/r(%))で表される値をいう。カーボン粒子が規則配列した配列体を得るためには、カーボン粒子の真球度は、小さいほど良い。後述する方法を用いると、真球度が7%以下、あるいは、3%以下であるカーボン粒子を含む配列体が得られる。
「カーボン粒子が規則配列している」とは、x方向、y方向及びz方向にカーボン粒子が周期的に配列していることを言う。カーボン粒子の規則配列状態は、特に限定されるものではないが、最密充填構造が好ましい。
配列体を構成するカーボン粒子は、中実粒子であって、全体に連続したメソ孔を有するものであっても良く、あるいは、中空粒子であって、シェルに連続したメソ孔を有するものであっても良い。
さらに、配列体は、このようなカーボン粒子のみからなるものでも良い。あるいは、配列体は、球状の空隙が規則配列したインバースオパール状のカーボン壁をさらに備え、空隙内にカーボン粒子があるものでも良い。この場合、カーボン粒子の大きさは、空隙の大きさとほぼ同等でも良く、あるいは、空隙より小さくても良い。
本発明に係る多孔質カーボン配列体は、後述するように、単分散球状メソ多孔体をテンプレートとして用いて合成される。そのため、配列体に含まれるカーボン粒子の平均粒径、比表面積、及び、細孔分布は、いずれも、使用するテンプレートでほぼ決まる。
具体的には、後述する方法を用いることによって、平均粒径が10nm以上2μm以下である単分散球状カーボン粒子が規則配列している多孔質カーボン配列体が得られる。また、その比表面積が900m/g以上である多孔質カーボン配列体が得られる。さらに、その細孔分布が0.5nm以上2.0nm以下にピークを持つ多孔質カーボン配列体が得られる。
次に、本発明に係る多孔質カーボン配列体を合成するためのテンプレートとして用いられる単分散球状メソ多孔体の製造方法について説明する。
本発明に係る多孔質カーボン配列体は、シリカを含む単分散球状メソ多孔体を規則配列させ、球状メソ多孔体の少なくともメソ孔内にカーボンを析出させ、球状メソ多孔体を除去することにより得られる。
そのため、所定の平均粒径を有し、球状単分散で、かつ、所定のメソ孔構造を有するカーボン粒子(例えば、メソ孔が中心から表面に向かって放射状に伸びているカーボン粒子)が規則配列した配列体を合成するためには、このような構造を有する球状メソ多孔体をテンプレートに用いる必要がある。
この場合、球状メソ多孔体は、シリカのみからなるものであっても良く、あるいは、シリカ以外の金属元素Mの酸化物を含んでいても良い。金属元素Mは、特に限定されるものではないが、2価以上の金属アルコキシドを製造可能なものが好ましい。金属元素Mが2価以上の金属アルコキシドを製造可能なものであると、金属元素Mの酸化物を含むメソポーラスシリカを容易に製造することができる。このような金属元素Mとしては、具体的には、Al、Ti、Mg、Zrなどがある。特に、Alを含む球状メソ多孔体は、後述する有機物を重合させるための固体酸としても機能するという利点がある。
球状メソ多孔体に含まれるシリカの含有量は、相対的に多い方が好ましい。シリカの含有量が相対的に多くなるほど、球状メソ多孔体の除去が容易化する。球状メソ多孔体中のシリカの含有量は、具体的には、20wt%以上が好ましく、さらに好ましくは、50wt%以上、さらに好ましくは、80wt%以上である。
シリカを含む球状メソ多孔体は、界面活性剤を鋳型として、シリカ原料を含む原料を3次元的に重合させることにより得られる。具体的には、
(1)水に適量の界面活性剤とシリカ原料(及び必要に応じて他の原料)とを加え、塩基性条件下でシリカ原料(及び必要に応じて添加された他の原料)を加水分解させ、
(2)溶液から生成物を分離し、界面活性剤を除去すること、
により得られる(例えば、特開平10−328558号公報、特開2004−2161号公報等参照)。
この時、溶液中の界面活性剤の濃度、シリカ原料の濃度、及び、両者の比率を最適化すると、メソ孔がその中心から外側に向かって放射状に配置された球状メソ多孔体が得られる。さらに、溶液中に特定種類のアルコール及び/又は親水性ポリマを加えると、2μm以下の微少粒径を有し、かつ、粒度分布の狭い球状メソ多孔体が得られる。
シリカ原料には、
(1) テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン等のテトラアルコキシシラン(シラン化合物)、
(2) トリメトキシシラノール、トリエトキシシラノール、トリメトキシメチルシラン、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、トリエトキシ−3−グリシドキシプロピルシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、γ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のトリアルコキシシラン(シラン化合物)、
(3) ジメトキシジメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジエトキシ−3−グリシドキシプロピルメチルシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン等のジアルコキシシラン(シラン化合物)、
(4) メタケイ酸ナトリウム(NaSiO)、オルトケイ酸ナトリウム(NaSiO)、二ケイ酸ナトリウム(NaSi)、四ケイ酸ナトリウム(NaSi)、水ガラス(NaO・nSiO、n=2〜4)等のケイ酸ナトリウム、
(5) カネマイト(NaHSi・3HO)、二ケイ酸ナトリウム結晶(α、β、γ、δ−NaSi)、マカタイト(NaSi)、アイアライト(NaSi17・xHO)、マガディアイト(NaSi1417・xHO)、ケニヤイト(NaSi2041・xHO)等の層状シリケート、
(6) Ultrasil(Ultrasil社)、Cab−O−Sil(Cabot社)、HiSil(Pittsburgh Plate Glass社)等の沈降性シリカ、コロイダルシリカ、Aerosil(Degussa−Huls社)等のフュームドシリカ、
などを用いることができる。
これらの中でも、テトラアルコキシシランは、加水分解により生ずるシラノール結合の数が多くなり、強固な骨格を形成することができるので、シリカ原料として好適である。
なお、これらのシリカ原料は、単独で用いても良く、あるいは、2種以上を組み合わせて用いても良い。但し、2種以上のシリカ原料を用いると、メソポーラスシリカの製造時の反応条件が複雑化する場合がある。このような場合には、シリカ原料は、単独で使用するのが好ましい。
また、金属元素Mを含む原料には、
(1) アルミニウムブトキシド(Al(OC))、アルミニウムエトキシド(Al(OC))、アルミニウムイソプロポキシド(Al(OC))等のAlを含むアルコキシド類、及び、アルミン酸ナトリウム、塩化アルミニウム等の塩類、
(2) チタンイソプロポキシド(Ti(Oi−C))、チタンブトキシド(Ti(OC))、チタンエトキシド(Ti(OC))等のTiを含むアルコキシド、
(3) マグネシウムメトキシド(Mg(OCH))、マグネシウムエトキシド(Mg(OC))等のMgを含むアルコキシド、
(4) ジルコニウムイソプロポキシド(Zr(Oi−C))、ジルコニウムブトキシド(Zr(OC))、ジルコニウムエトキシド(Zr(OC))等のZrを含むアルコキシド、
などを用いることができる。
また、界面活性剤は、次の(2)式で表されるものが好ましい。
CH−(CH)−N(R)(R)(R)X ・・・(2)
(但し、R、R、Rは、炭素数が1〜3であって、同一又は異なるアルキル基、Xはハロゲン原子、nは8〜21の整数。)
(1)式で表される界面活性剤の中でも、アルキルトリメチルアンモニウムハライド(例えば、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムハライド、オクタデシルトリメチルアンモニウムハライド、ノニルトリメチルアンモニウムハライド、デシルトリメチルアンモニウムハライド、ウンデシルトリメチルアンモニウムハライド、ドデシルトリメチルアンモニウムハライド等)が好ましく、特に、アルキルトリメチルアンモニウムブロミド又はアルキルトリメチルアンモニウムクロリドが好ましい。
メソ孔がその中心から外側に向かって放射状に配置した球状メソ多孔体を得るためには、溶液中のシリカ原料(及び必要に応じて添加される他の原料)の濃度は、0.005mol/L以上0.05mol/L以下が好ましく、さらに好ましくは、0.007mol/L以上0.045mol/L以下、さらに好ましくは、0.009mol/L以上0.04mol/L以下である。
同様に、溶液中の界面活性剤の濃度は、0.005mol/L以上0.04mol/L以下が好ましく、さらに好ましくは、0.007mol/L以上0.03mol/L以下、さらに好ましくは、0.008mol/L以上0.018mol/L以下である。
さらに、界面活性剤/シリカ原料(及び必要に応じて添加される他の原料)の比率(モル比)は、0.1以上3以下が好ましく、さらに好ましくは、0.2以上2.7以下、さらに好ましくは、0.3以上2.5以下である。
溶液中にアルコールを添加する場合、アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール等の1価のアルコール、エチレングリコール等の2価のアルコール、グリセリン等の3価のアルコールのいずれでも良い。この場合、2μm以下の微少粒径を有し、かつ、粒度分布の狭い球状メソ多孔体が得るためには、アルコールの添加量は、水の容量100に対して5〜80が好ましく、さらに好ましくは、7〜70、さらに好ましくは、10〜60である。
アルコールに加えて又はアルコールに代えて、溶液中に親水性ポリマを添加する場合、親水性ポリマは、ポリビニルアルコール又はポリエチレングリコールが好ましい。この場合、親水性ポリマの分子量は、200〜50000が好ましく、さらに好ましくは、300〜30000である。また、2μm以下の微少粒径を有し、かつ、粒度分布の狭いメソポーラスシリカが得るためには、溶液中の親水性ポリマの濃度は、0.1〜20重量%が好ましく、さらに好ましくは、0.5〜10重量%である。
これらの原料を含む溶液には、溶液を塩基性とし、シリカ原料等を加水分解させるために、塩基性物質を加える。塩基性物質としては、具体的には、水酸化ナトリウム、アンモニア水等がある。塩基性物質の添加量は、原料の種類や濃度、作製しようとする球状メソ多孔体の特性等に応じて最適な添加量を選択する。一般に、塩基性物質の添加量が少なすぎる場合には、収率が極端に低下する。一方、塩基性物質の添加量が多すぎる場合には、多孔体の形成が困難となる場合がる。塩基性物質の添加量は、具体的には、塩基性物質のアルカリ当量を原料中のケイ素及び金属元素Mのモル数で除した値で、塩基性物質が強塩基である場合は、0.1〜0.9が好ましく、さらに好ましくは、0.2〜0.5、塩基性物質が弱塩基の場合は、0.2〜5が好ましく、さらに好ましくは、1〜3である。
シリカ原料として、テトラアルコキシシラン等のシラン化合物を用いる場合には、これをそのまま出発原料として用いる。
一方、シリカ原料としてシラン化合物以外の化合物を用いる場合には、予め、水(又は、必要に応じてアルコールが添加されたアルコール水溶液)にシリカ原料を加えて、水酸化ナトリウム等の塩基性物質を加える。塩基性物質の添加量は、シリカ原料中のケイ素原子と等モル程度の量とするのが好ましい。シラン化合物以外のシリカ原料を含む溶液に塩基性物質を加えると、シリカ原料中に既に形成されているSi−(O−Si)結合の一部が切断され、均一な溶液が得られる。溶液中に含まれる塩基性物質の量は、球状メソ多孔体の収量や気孔率に影響を及ぼすので、均一な溶液が得られた後、溶液に希薄酸溶液を加え、溶液中に存在する過剰の塩基性物質を中和させる。希薄酸溶液の添加量は、シリカ原料中のケイ素原子に対して1/2〜3/4倍モルに相当する量が好ましい。
必要に応じて予備処理が行われたシリカ原料に対し、所定量の水及び界面活性剤、並びに、必要に応じて、金属元素Mを含む原料、アルコール及び/又は親水性ポリマを加え、これにさらに塩基性物質を加えて、塩基性条件下で加水分解を行う。これにより、界面活性剤がテンプレートとして機能し、その内部に界面活性剤を含むケイ素含有酸化物(以下、これを「前駆体」という。)が得られる。
次に、溶液から得られた前駆体を分離し、この前駆体から界面活性剤を除去すれば、シリカを含み、平均粒径が50nm〜2.0μmであり、単分散で、かつ、細孔が放射状に形成された球状メソ多孔体(単分散球状メソポーラスシリカ)が得られる。
界面活性剤を除去する方法としては、具体的には、
(1) 前駆体を大気中又は不活性雰囲気下において、所定温度(300〜1000℃、好ましくは、400〜700℃)で所定時間(30分以上、好ましくは、1時間以上)焼成する焼成方法、
(2) 前駆体を界面活性剤の良溶媒(例えば、少量の塩酸を含むメタノール)中に浸漬し、所定の温度(例えば、50〜70℃)で加熱しながら攪拌し、前駆体中の界面活性剤を抽出するイオン交換法、
などがある。
次に、本発明に係る多孔質カーボン配列体の製造方法について説明する。
本発明に係る多孔質カーボン配列体の製造方法は、配列工程と、カーボン析出工程と、除去工程とを備えている。
[1. 配列工程]
配列工程は、シリカを含む単分散球状メソ多孔体を規則配列させる工程である。
単分散球状メソ多孔体は、規則配列していれば良く、その配列は、必ずしも最密充填である必要はない。また、その理由の詳細は不明であるが、単分散球状メソ多孔体の規則配列体が最密充填構造でない場合であっても、後述する除去工程において球状メソ多孔体を除去すると、カーボン粒子が最密充填構造となるように再配列する場合がある。単分散球状メソ多孔体を規則配列させる方法には、具体的には、以下のようなものがある。
第1の方法は、電気泳動を利用した配列方法であって、単分散球状メソ多孔体を分散させた分散液に電極を浸漬し、電極間に直流電界を印加する方法である。このような方法により、単分散球状メソ多孔体とは反対電荷を有する電極表面に、単分散球状メソ多孔体の規則配列体を析出させることができる。
単分散球状メソ多孔体を分散させる分散媒には、通常、水を用いるが、アセトニトリルなどの他の極性溶媒を用いても良い。分散液中の単分散球状メソ多孔体の濃度は、特に限定されるものではなく、配列体に要求される規則性の程度、作業効率等に応じて、最適な濃度を選択する。一般に、希薄な分散液を用いるほど、規則性の高い配列体が得やすいが、濃度が低すぎると、作業効率が低下する。通常、分散液には、濃度1〜10wt%程度のものを用いる。
単分散球状メソ多孔体を分散させた溶液に電極を浸漬し、電極間に直流電界を印加すると、一方の電極表面に単分散球状メソ多孔体の規則配列体が析出する。例えば、シリカを主成分とする単分散球状メソ多孔体は、一般に、水溶液中においてマイナスの電荷を帯びる。従って、この場合には、規則配列体は、正極上に析出する。一方、単分散球状メソ多孔体にある種の化合物(例えば、TMPyP(α、β、γ、δ−テトラキス(1−メチルピリジニウム−4−イル)ポルフィンP−トルエンスルホネート(α、β、γ、δ-Tetrakis(1-methylpyridinium-4-yl)porphine P-Toluensulfonate))など)を担持させると、メソ多孔体は、溶媒中においてプラスの電荷を帯びる。従って、この場合には、規則配列体は、負極上に析出する。
電極間距離及び印加電圧は、配列体に要求される規則性の程度、作業効率等に応じて、最適な条件を選択する。一般に、電極間に発生する電界が大きくなるほど、析出速度が増すので高い作業効率が得られるが、電界が大きくなりすぎると、配列体の規則性が低下する場合がある。
メソ多孔体の分散液に電極を浸漬し、電極間に直流電界を印加すると、一方の電極表面にメソ多孔体の規則配列体が析出する。析出後、電極を取り出して乾燥させると、所定の厚さを有するメソ多孔体の規則配列体が得られる。なお、得られた配列体は、電極から剥離させて使用しても良く、あるいは、電極から剥離させることなくそのままの状態で使用しても良い。
単分散球状メソ多孔体の規則配列体を得る第2の方法は、単分散球状メソ多孔体をコロイド結晶化させる方法であって、一定の間隔を有する基板間に単分散球状メソ多孔体を分散させた分散液を注入する方法である。このような方法により、単分散球状メソ多孔体が規則配列した状態で自己集積する。
単分散球状メソ多孔体を分散させる分散媒には、通常、水を用いるが、必要に応じて有機溶媒を用いることもできる。分散液中の単分散球状メソ多孔体の濃度は、特に限定されるものではなく、配列体に要求される規則性の程度、作業効率等に応じて、最適な濃度を選択する。一般に、希薄な分散液を用いるほど、規則性の高い配列体が得やすいが、濃度が低すぎると、作業効率が低下する。通常、分散液には、濃度0.05〜15wt%程度のものを用いる。濃度は、さらに好ましくは、1〜10wt%である。
基板には、表面が親水性であるものを用いる。このような基板としては、具体的には、オゾンプラズマ処理又は濃硫酸若しくは濃硝酸処理を行ったガラス又は石英基板などがある。
基板の間隔は、メソ多孔体が自己集積可能な間隔であればよい。一般に、基板の間隔が狭くなりすぎると、基板間にメソ多孔体が入り込めない。一方、基板の間隔が広くなりすぎると、メソ多孔体を自己集積させるのが困難となる。通常、基板の間隔は、メソ多孔体の平均粒径の10〜200倍とする。
一定の間隔を有する基板間に分散液を注入し、基板を直立させ、あるいは、適当な角度で傾けると、メソ多孔体が沈降する。この時、メソ多孔体は、その表面電荷によって互いに反発し合いながら沈降するので、規則配列した状態で自己集積する。この状態で放置すると、分散媒がほぼ完全に揮発する。あるいは、一定の間隔(例えば、数十μm程度)を有する2枚の基板を水平に置き、上の基板に穴を開けて穴に管(例えば、直径数mm程度)を固定し、管から分散液を注入しても良い。このような方法によってもメソ多孔体の規則配列体を得ることができる。
分散媒を完全に揮発させると、所定の厚さを有するメソ多孔体の規則配列体が得られる。なお、得られた配列体は、基板から剥離させた状態で使用しても良く、あるいは、一方又は双方の基板を剥離させることなくそのままの状態で使用しても良い。また、カーボン析出方法として、後述する気相蒸着法を用いる場合、規則配列体が基板で挟持された状態のまま、カーボンを析出させても良い。
単分散球状メソ多孔体の規則配列体を得るその他の方法としては、単分散球状メソ多孔体を分散させた分散液を基板表面にディップコート、スピンコート等を用いて塗布する方法などがある。
[2. カーボン析出工程]
カーボン析出工程は、規則配列した単分散球状メソ多孔体の少なくともメソ孔内にカーボンを析出させる工程である。メソ孔内にカーボンを析出させる方法には、具体的には、以下のような方法がある。
[2.1 カーボン析出方法(1)]
カーボンを析出させる第1の方法は、カーボン前駆体をメソ孔内に充填し、これをカーボン化させる方法であり、充填工程と、重合工程と、炭化工程とを備えている。
[2.2.1 充填工程]
充填工程は、単分散球状メソ多孔体の少なくともメソ孔内にカーボン前駆体を充填する工程である。
「カーボン前駆体」とは、炭素源となるものであり、熱分解によって炭素を生成可能なものであればよい。このようなカーボン前駆体としては、具体的には、
(1) 常温で液体であり、かつ、熱重合性のポリマー前駆体(例えば、フルフリルアルコール、アニリン等)、
(2) 炭水化物の水溶液と酸の混合物(例えば、スクロース(ショ糖)、キシロース(木糖)、グルコース(ブドウ糖)などの単糖類、あるいは、二糖類、多糖類と、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸などの酸との混合物)、
(3) 2液硬化型のポリマー前駆体の混合物(例えば、フェノールとホルマリン等)、
などがある。
これらの中でも、ポリマー前駆体は、溶媒で希釈することなくメソ孔内に含浸させることができるので、相対的に少数回の含浸回数で、相対的に多量の炭素をメソ孔内に生成させることができる。また、重合開始剤が不要であり、取り扱いも容易であるという利点がある。
液体状のカーボン前駆体又はカーボン前駆体を溶解させた溶液を吸着させる場合、メソ多孔体の規則配列体を所定量の液体又は溶液に浸漬するだけで良い。メソ多孔体は、極めて吸着特性に優れているので、規則配列体を液体又は溶液に浸漬するだけで、メソ孔内に液体又は溶液を含浸させることができる。
液体又は溶液のカーボン前駆体を用いる場合、1回当たりの液体又は溶液の吸着量は、多いほど良く、メソ孔全体が液体又は溶液で満たされる量が好ましい。
また、カーボン前駆体として炭水化物の水溶液と酸の混合物を用いる場合、酸の量は、有機物を重合させることが可能な最小量とするのが好ましい。
さらに、カーボン前駆体として、2液硬化型のポリマー前駆体の混合物を用いる場合、その比率は、ポリマー前駆体の種類に応じて、最適な比率を選択する。
配列工程で得られたメソ多孔体の規則配列体を、液体又は溶液のカーボン前駆体に浸漬する場合、メソ多孔体の規則配列体を予め焼成するのが好ましい。
焼成は、メソ多孔体のメソ孔が孤立又は消滅せず、かつ、メソ多孔体同士が互いに融着してカーボン前駆体の吸着に耐えうる強度が得られる条件下で行う。一般に、焼成温度が低すぎると、十分な強度が得られない。一方、焼成温度が高すぎると、メソ孔が孤立又は消滅する。例えば、シリカを主成分とするメソ多孔体の場合、焼成は、通常、800℃前後で行う。
また、液体又は溶液のカーボン前駆体をメソ孔内に充填させる場合において、充填方法を最適化すると、微構造の異なる多孔質カーボン配列体が得られる。充填方法としては、具体的には、以下のような方法がある。
第1の方法は、連続したメソ孔を有する中実のカーボン粒子が規則配列した多孔質カーボン配列体を得る方法である。すなわち、第1の方法は、単分散球状メソ多孔体の規則配列体を、液体状のカーボン前駆体又はカーボン前駆体を溶解させた溶液に浸漬する第1含浸工程と、単分散球状メソ多孔体の規則配列体を洗浄する洗浄工程と、規則配列体を乾燥させる乾燥工程とを備えている。
カーボン前駆体の液体又はこれを溶解させた溶液に、単分散球状メソ多孔体の規則配列体を浸漬すると、メソ孔内にカーボン前駆体が吸着する。単分散球状メソ多孔体の粒界には、余分なカーボン前駆体が残っているので、次に、これを適当な洗浄液(例えば、エタノールなど)で洗浄する。さらに、乾燥によって規則配列体に含まれる洗浄液を除去すれば、メソ孔内にのみカーボン前駆体が充填された規則配列体が得られる。
なお、1回の含浸処理によりメソ孔内に導入されるカーボン前駆体の量が相対的に少ない場合、生成するカーボン粒子の粒径は、相対的に小さくなる。相対的に大きな粒径を有するカーボン粒子を得るためには、メソ孔内に吸着させるカーボン前駆体の量を増加させれば良く、そのためには、含浸、洗浄及び乾燥を複数回繰り返せば良い。
第2の方法は、インバースオパールカーボンの空隙内に、連続したメソ孔を有するカーボン粒子が挿入された多孔質カーボン配列体を得る方法である。すなわち、第2の方法は、単分散球状メソ多孔体の規則配列体を、液体状のカーボン前駆体又はカーボン前駆体を溶解させた溶液に浸漬する第1含浸工程と、単分散球状メソ多孔体の規則配列体を洗浄する洗浄工程と、規則配列体を乾燥させることなく、規則配列体を液体状のカーボン前駆体又はカーボン前駆体を溶解させた溶液に浸漬する第2含浸工程とを備えている。
カーボン前駆体の液体又はこれを溶解させた溶液に、単分散球状メソ多孔体の規則配列体を浸漬させると、メソ孔内にカーボン前駆体が吸着する。この場合、上述したように、必要に応じて、含浸、洗浄及び乾燥を複数回繰り返しても良い。これらの工程を複数回繰り返すと、メソ孔内に吸着させるカーボン前駆体の量を多くすることができる。
次に、規則配列体を適当な洗浄液で洗浄する。これにより、メソ多孔体の粒界に残った余分なカーボン前駆体が除去されると同時に、メソ多孔体の表面側のメソ孔内には、洗浄液が残留する。
さらに、規則配列体を乾燥させることなく、規則配列体を液体又は溶液のカーボン前駆体に浸漬すると、カーボン前駆体は、洗浄液が残留しているメソ孔内には充填されず、メソ多孔体の粒界にのみ充填される。この場合、メソ孔多孔体の粒界に充填されたカーボン前駆体は、インバースオパール状のカーボン壁となる。また、メソ孔内に充填されたカーボン前駆体は、球状のカーボン粒子となる。
[2.1.2 重合工程]
重合工程は、メソ孔内に吸着させたカーボン前駆体を重合させる工程である。
例えば、カーボン前駆体が、ポリマー前駆体、炭水化物の水溶液と酸の混合物、又は、2液硬化型のポリマー前駆体の混合物である場合、カーボン前駆体の重合は、これを吸着させた規則配列体を所定温度で所定時間加熱することにより行う。最適な重合温度及び重合時間は、カーボン前駆体の種類により異なるが、通常、重合温度は50℃〜400℃、重合時間は5分〜24時間である。
[2.1.3 炭化工程]
炭化工程は、重合させたカーボン前駆体をメソ孔内又はメソ多孔体の粒界において炭化させる工程である。
カーボン前駆体の炭化は、非酸化雰囲気中(例えば、不活性雰囲気中、真空中など)において、規則配列体を所定温度に加熱することにより行う。加熱温度は、具体的には、500℃以上1200℃以下が好ましい。加熱温度が500℃未満であると、カーボン前駆体の炭化が不十分となる。一方、加熱温度が1200℃を超えると、シリカと炭素が反応するので好ましくない。加熱時間は、加熱温度に応じて、最適な時間を選択する。
なお、メソ孔内に生成させる炭素量は、メソ多孔体を除去した時に、カーボン粒子が形状を維持できる量以上であればよい。従って、1回の充填工程、重合工程及び炭化工程で生成する炭素量が相対的に少ない場合には、これらの工程を複数回繰り返すのが好ましい。この場合、繰り返される各工程の条件は、それぞれ、同一であっても良く、あるいは、異なっていても良い。
また、充填、重合及び炭化の各工程を複数回繰り返す場合、各炭化工程は、相対的に低温で炭化処理を行い、最後の炭化処理が終了した後、さらにこれより高い温度で、再度、炭化処理を行っても良い。最後の炭化処理を、それ以前の炭化処理より高い温度で行うと、複数回に分けて細孔内に導入されたカーボンが一体化しやすくなる。
[2.2 カーボン析出方法(2)]
カーボンを析出させる第2の方法は、メソ孔内に、直接、カーボンを析出させる方法である。すなわち、第2の方法は、気相蒸着法を用いて単分散球状メソ多孔体の少なくともメソ孔内にカーボンを析出させる方法である。
具体的には、不飽和結合を有する重合性のガス(例えば、アセチレン、プロピレン等)を炭素源として用いて、これを不活性ガス(N、アルゴン、ヘリウム等)で希釈して、メソ多孔体の規則配列体を設置した流通型反応管に流し、所定温度で所定時間加熱する(いわゆる「熱CVD法」)。これにより、メソ孔内への炭素源の吸着と同時に重合と炭化が起こる。同様の方法で、液体の炭素源を不活性ガスでバブリングし、一工程でメソ孔内に炭素を析出させることもできる。加熱温度は、ガスの種類に応じて、最適な温度を選択する。
第2の方法において、カーボンの析出は、メソ多孔体の表面側から生じる。従って、析出時間が相対的に短い場合、メソ多孔体の表面近傍のメソ孔にのみカーボンが析出するので、中空のカーボン粒子が得られる。一方、析出時間が相対的に長い場合、メソ孔の中心部までカーボンが析出するので、中実のカーボン粒子が得られる。
[3. 除去工程]
除去工程は、少なくともメソ孔内にカーボンが生成したメソ多孔体・カーボン複合体から、メソ多孔体を除去する工程である。これにより、本発明に係る多孔質カーボン配列体が得られる。
メソ多孔体の除去方法としては、具体的には、
(1) 複合体を水酸化ナトリウム中で加熱する方法、
(2) 複合体をフッ化水素酸水溶液でエッチングする方法、
などがある。
多孔質カーボン配列体中のカーボン粒子の配列状態は、単分散球状メソ多孔体の配列状態がそのまま維持される場合と、メソ多孔体を除去する際にカーボン粒子が再配列する場合とがある。例えば、メソ多孔体の規則配列体が最密充填でない場合であっても、メソ多孔体を除去する際にカーボン粒子が再配列し、最密充填構造を有する多孔質カーボン配列体が得られる場合がある。
次に、本発明に係る多孔質カーボン配列体及びその製造方法の作用について説明する。
メソポーラスシリカを鋳型として合成されるカーボン多孔体は、鋳型の形状がほぼそのまま維持される。そのため、鋳型が不定形である場合には、カーボン多孔体も不定形となる。このような不定形のカーボン多孔体を用いて集合体を作製するには、圧粉成形などの手段を用いる必要がある。しかしながら、圧粉成形により集合体を作製すると、カーボン多孔体の細孔が壊れるという問題があった。
一方、球状シリカや球状ポリスチレン粒子の分散液を所定の条件下で処理すると、球状粒子の規則配列体(いわゆる、「コロイド結晶」)が得られることが知られている。従って、球状シリカを鋳型に用いて球状のカーボン多孔体を作製し、これを規則配列させることができれば、カーボン多孔体の細孔を壊すことなく、球状カーボン多孔体の規則配列体が得られると考えられる。
球状のカーボン粒子をコロイド結晶化するためには、まず、カーボン粒子を高い分散状態にすることが必要である。コロイド結晶を作製するための分散媒には、通常、水溶液が用いられるが、カーボン多孔体は、表面が疎水性であるので、水溶液中では高い分散状態は得られない。カーボン多孔体を高い分散状態にするためには、カーボン表面を親水化処理するか、あるいは、疎水溶媒を用いる必要がある。しかしながら、親水化処理には、煩雑な操作が必要である。一方、疎水溶媒の使用は、安全上の問題がある。
さらに、球状シリカを鋳型に用いて合成された球状カーボン多孔体の表面は、表面の平滑さに劣る。そのため、従来のコロイド結晶化の手法をそのまま球状カーボン多孔体に適用しても、球状カーボン多孔体の規則配列体は得られない。
これに対し、単分散球状メソ多孔体は、一般に、その表面が親水性であるので、その規則配列体を比較的容易に作製することができる。この規則配列体に含まれるメソ多孔体の少なくともメソ孔内にカーボンを析出させ、メソ多孔体を除去すると、連続したメソ孔を有する単分散球状カーボン粒子が規則配列した多孔質カーボン配列体が得られる。
得られた多孔質カーボン配列体は、カーボン粒子が規則配列しており、その周囲にマクロ孔があるので、反応物質の流通性に優れている。また、カーボン粒子は、連続したメソ孔を有しているので、比表面積が高く、反応物質や電子を最短距離で輸送できる。さらに、このような多孔質カーボン配列体を触媒担体として用いる場合、触媒微粒子をカーボン粒子のメソ孔内に担持させることができるので、触媒を高分散で担持させることができ、かつ、触媒粒子のシンタリングも抑制することができる。
さらに、本発明に係る方法は、圧粉成形が不要であるので、配列体を作製する際にカーボン粒子内の細孔構造を壊すことがない。しかも、同一の規則配列体を鋳型として用いた場合であっても、カーボン析出条件を変更するだけで、様々なタイプの多孔質カーボン配列体を作製することができる。
例えば、カーボン前駆体の含浸、洗浄及び乾燥を所定回数繰り返し、カーボン前駆体の重合及び炭化を行うと、連続したメソ孔を有する中実の単分散球状カーボン粒子が最密充填に配列した多孔質カーボン配列体が得られる。このような微構造を有する多孔質カーボン配列体は、高密度にカーボン粒子が充填されているので、特に、キャパシタなどの貯蔵材料として好適である。
また、例えば、単分散球状メソ多孔体のメソ孔及び粒界にカーボン前駆体を充填し、カーボン前駆体の重合及び炭化を行うと、インバースオパールカーボンの空隙内に、連続したメソ孔を有する中実の単分散球状カーボン粒子が挿入された多孔質カーボン配列体が得られる。このような微構造を有する多孔質カーボン配列体は、適度な間隔でカーボン粒子が配列しており、ガスや電子の拡散が容易であるので、特に、吸着材、燃料電池などの各種電気化学デバイス等の担体として好適である。
また、例えば、気相蒸着法を用いてカーボンを析出させると、シェル部分に連続したメソ孔を有する中空の単分散球状メソ多孔体が規則配列した多孔質カーボン配列体が得られる。このような微構造を有する多孔質カーボン配列体は、中空のコア部分に他の機能物質(例えば、チタニアなど)を保持させることができるので、光触媒作用など、通常のカーボンでは発現しない新たな機能を持たせることができる。
単分散球状メソ多孔体を適当な基板表面に規則配列させ、カーボンの析出及び単分散球状メソ多孔体の除去を行う方法を用いると、基板表面に、連続したメソ孔を有する単分散球状カーボン粒子が規則配列した被膜を形成することができる。得られた被膜は、黒色のカーボン粒子を含み、かつ、規則配列した粒子が格子面を形成するので、黒色基調で、構造色を発色する。すなわち、単色の黒ではなく、角度によっては赤、青、緑など異なる色に観察される。
さらに、被膜に含まれる単分散球状カーボン粒子は、電子伝導性を有することに加えて、連続したメソ孔を有し、高い比表面積(1000m2/g以上)を有しているので、蒸気圧に応じて容易に水蒸気を吸着する。そのため、従来の被膜では全く効果が期待できなかった静電気除去作用を発現させることも可能である。
[1. 単分散球状メソポーラスシリカの合成]
[1.1 合成例1]
水800g及びメタノール800gの混合溶液に対して、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド(界面活性剤)7.04g及び1規定水酸化ナトリウム9.12gを添加した。これにテトラメトキシシラン(シリカ原料)5.28gを添加して攪拌した。攪拌を続けたところ、テトラメトキシシランは完全に溶解し、白色粉末が析出した。
室温でさらに8時間攪拌し、一晩放置した後、ろ過と脱イオン水による洗浄を3回繰り返して、白色粉末を得た。この白色粉末を熱風乾燥機で3日間乾燥した後、550℃で焼成することにより界面活性剤を含む有機成分を除去し、多孔体を得た。
図1に製造した粒子のSEM写真、図2に窒素吸着等温線、図3にBJH法による細孔分布曲線を示す。図1より、粒子は約500nmの単分散球状粒子であることがわかる。また、図2、3より、2nmの非常に均一なメソ細孔が存在していることが示された。さらに、比表面積の値は、1200(m2/g)であった。
[1.2 合成例2]
水400g及びメタノール400gの混合溶液に対して、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド(界面活性剤)3.52g及び1規定水酸化ナトリウム2.28gを添加した。これにテトラメトキシシラン(シリカ原料)1.32gを添加し攪拌した。攪拌を続けたところ、テトラメトキシシランは完全に溶解し、白色粉末が析出した。
室温でさらに8時間攪拌し、一晩放置した後、ろ過と脱イオン水による洗浄を3回繰り返して、白色粉末を得た。この白色粉末を熱風乾燥機で3日間乾燥した後、550℃で焼成することにより界面活性剤を含む有機成分を除去し、多孔体を得た。図4に製造した粒子のSEM写真を示す。粒子は、500nmの単分散球状粒子であった。
[2. 単分散球状メソポーラスシリカ配列体の作製]
[2.1 作製例1]
[1.1]で得られたシリカ粉末をイオン交換水に5wt%濃度で混合し、2時間超音波にて分散させた。その分散液中に電極に繋いだ2枚のITOガラスを間隔5mmで配置し、10Vで5分間通電させた。分散液からITOガラスを引き上げ、乾燥させた後、ガラス基板から注意深く配列体を剥離させた。図5に、得られた配列体のSEM写真を示す。粒子が規則正しく最密充填に配列していることがわかる。
[2.2 作製例2]
[1.1]で得られたシリカ粉末をイオン交換水に10wt%濃度で分散させ、5時間超音波にて分散させた。その分散液をガラスセル又は石英セル中に注入し、室温で自己集積により粒子を配列させた。ガラスセル又は石英セルは、オゾンプラズマ処理を行った2枚のガラス又は石英の基板を30μmの間隔で保持したものからなり、30°程度傾けた状態で粒子の注入を行った。室温で24時間放置後、ガラス基板から注意深く配列体を剥離させた。図6に、得られた配列体のSEM写真を示す。粒子が規則正しく最密充填に配列していることがわかる。
なお、後述するように、カーボン導入法としてCVD蒸着法を用いた場合には、セルに入れた状態でカーボン化の処理を行った。
[2.3 作製例3]
[1.2]で得られたシリカ粉末をイオン交換水に1wt%濃度で混合し、2時間超音波にて分散させた。その分散液中に電極に繋いだ2枚のITOガラスを間隔5mmで配置し、10Vで10分間通電させた。分散液からITOガラスを引き上げ、乾燥させた後、ガラス基板から注意深く配列体を剥離させた。図7に、得られた配列体のSEM写真を示す。粒子が規則正しく最密充填に配列していることがわかる。
[3. 多孔質カーボン配列体の作製]
[3.1 実施例1]
[2.1]で得られたメソポーラスシリカ配列体を空気中、800℃で6時間焼成を行った。この操作により、隣接する球状シリカ粒子の一部が融着し、配列体の強度を増加させることができる。次に、焼成後の配列体をフルフリルアルコール溶液に24時間浸漬し、引き上げた。引き上げ後、エタノールにて余分なフルフリルアルコールを洗浄し、室温で十分に乾燥させた。配列体を150℃で24時間加熱して、細孔中のフルフリルアルコールを重合させ、さらに窒素気流中、900℃で6時間焼成し、完全にカーボン化させた。得られた配列体を5%のHF溶液に、室温で5時間浸漬し、シリカ成分を完全に溶解させた。さらにこれを洗浄し、目的の多孔質カーボン配列体を得た。
図8に、得られた多孔質カーボン配列体のSEM写真を示す。約300nmの球状粒子が最密充填に配列していることがわかる。得られたカーボン粒子の粒径は、鋳型に用いたシリカ粒子よりも小さかった。カーボン粒子の粒径は、配列体の状態で細孔中に含浸させるフルフリルアルコール量を変化させることで制御可能である。つまり、含浸時間及び/又は含浸回数を増やすことにより、大きな粒径のカーボン粒子を得ることができる。
図9に多孔質カーボン配列体の窒素吸着等温線の測定結果、図10にDFT法により解析した細孔分布曲線を示す。図9、10より、1nm前後の細孔構造が存在していることが示唆された。また、BJH法による比表面積は、1310m2/gと、大きな値を示した。
[3.2 実施例2]
[2.2]で得られたメソポーラスシリカ配列体を空気中、800℃で6時間焼成を行った。この配列体をフルフリルアルコール溶液に24時間浸漬し、引き上げた。引き上げ後、配列体をエタノールで洗浄し、室温で十分に乾燥させた。これらの操作を再度繰り返した後、配列体を150℃で24時間加熱し、細孔中のフルフリルアルコールを重合させ、さらに窒素気流中、900℃で6時間焼成し、完全にカーボン化させた。得られた配列体を5%のHF溶液に、室温で6時間浸漬し、シリカ成分を完全に溶解させた。さらにこれを洗浄し、目的の多孔質カーボン配列体を得た。
図11に、得られた多孔質カーボン配列体のSEM写真を示す。約400nmの球状粒子が最密充填に配列していることがわかる。
また、図12に多孔質カーボン配列体の窒素吸着等温線の測定結果、図13にDFT法により解析した細孔分布曲線を示す。図12、13より、1nm前後の細孔構造を保持していることが示唆された。比表面積は、1390m2/gであった。
[3.3 実施例3]
[2.3]で得られたメソポーラスシリカ配列体を空気中、800℃で6時間焼成を行った。この配列体をフルフリルアルコール溶液に12時間浸漬し、引き上げた。引き上げ後、エタノールにて余分なフルフリルアルコールを洗浄した。次いで、配列体を乾燥させることなく、再度、フルフリルアルコール溶液に3時間浸漬した。配列体を150℃で24時間加熱し、細孔中及び粒界のフルフリルアルコールを重合させ、さらに窒素気流中、900℃で6時間焼成し、完全にカーボン化させた。得られた配列体を5%のHF溶液に、室温で5時間浸漬し、シリカ成分を完全に溶解させた。さらにこれを洗浄し、目的の多孔質カーボン配列体を得た。
図14に、得られた多孔質カーボン配列体のSEM写真を示す。100nm前後の球状粒子がインバースオパール状のカーボン壁の中に規則的に配列していることがわかる。実施例2では、粒子間に残った余分なフルフリルアルコールをエタノールで洗浄し、室温での乾燥を十分に行っているために、2回目の浸漬時にも、フルフリルアルコールを細孔内へ導入することが可能である。これに対し、実施例3では、エタノール洗浄を行った後、乾燥を行っていない。この場合、細孔中にエタノールが残存しているので、2回目の浸漬時には、フルフリルアルコールは、細孔内ではなく粒子間に導入される。また、その後で乾燥、洗浄を行うことなく重合処理を行うので、粒子間のフルフリルアルコールが残存し、そのままカーボン化される。そのため、実施例3の方法では、非常に特徴的な形状を持つ多孔質カーボン配列体を得ることができる。
[3.4 実施例4]
図15に、熱CVD装置の概略構成図を示す。図15において、熱CVD装置10は、石英管12と、石英管12の周囲に配置されたヒータ14と、石英管12内にカーボン源16aの蒸気を供給するためのバブラ16とを備えている。バブラ16には、キャリアガス供給源(図示せず)からキャリアガスを導入するための第1の配管18と、カーボン源16aの蒸気を含むキャリアガスを石英管12の一端に導入するための第2の配管20が接続されている。第1の配管18及び第2の配管20は、それぞれ、第1のコック22及び第2のコック24を介して、バイパス管26で連結されている。さらに、石英管12の他端には、未反応のカーボン源16aを含むキャリアガスを排出するための第3の配管28が接続されている。
図15に示す熱CVD装置10を用いて、以下の手順によりカーボンの析出を行った。なお、析出工程の雰囲気は、すべて窒素雰囲気とした。
バブラ16に、カーボン源16aとしてアセトニトリルを入れた。次に、[2.2]で得られた単分散球状メソポーラスシリカ配列体30を、石英基板間に配列させた状態のままアルミナ製ボート32上に載せ、これを石英管12内に配置した。次に、第1のコック22及び第2のコック24を、窒素ガスが第1の配管18→バイパス管26→第2の配管20に流れるように開き、1L/minの流量で窒素ガスを流した。試料に吸着した水を蒸発させるために、ヒータ14により試料30を150℃まで昇温し、150℃で10時間維持した。
次に、第1のコック22及び第2のコック24を、窒素ガスが第1の配管18→バブラ16→第2の配管20に流れるように開き、アセトニトリルを蒸気蒸発させながら、試料30を900℃まで昇温した。その後、900℃で3時間維持し、熱CVD反応を進行させた。CVD反応後、第1のコック22及び第2のコック24を、再び、窒素ガスが第1の配管18→バイパス管26→第2の配管20に流れるように開き、1L/minの流量で窒素ガスを流しながら室温まで冷却した。得られたメソポーラスシリカ−炭素複合体を5%HF水溶液中に3時間浸漬し、メソポーラスシリカを溶解除去した。
図16(a)に、得られた多孔質カーボン配列体のSEM写真、図16(b)に、カーボン粒子の拡大SEM写真を示す。図16より、熱CVD処理を用いると、元のシリカ粒子と比較して粒径を小さくすることなく、中空の球状カーボン粒子の規則配列体が得られることがわかる。
実施例1〜4で得られた多孔質カーボン配列体について、EDX装置を用いて元素分析を行った。表1に、その結果を示す。表1より、HF処理により鋳型となるシリカがほとんど完全に溶解し、ほぼカーボンのみからなる規則配列体が得られていることがわかる。
Figure 2007197305
[4. 多孔質カーボン配列体の光学特性]
[4.1. ブラッグ条件反射による角度分解反射スペクトル]
構造色を観察するためには、反射光がブラッグ反射の条件を満足することが必要である。単分散球状粒子が密に配列して規則構造を形成すると、粒子が結晶面を形成する。この結晶面による可視光の反射が、(2)式に示すブラッグの条件式を満たす場合に、その反射波長が強められる。
mλ=2d(n2−sin2θ) ・・・(2)
(2)式で、mは回折の次数を表す自然数、θは入射光が格子面の法線となす角、dは格子面間隔、nは粒子配列構造の平均屈折率である。逆に、粒子が規則配列構造を形成している場合には、θを連続的に変化させた際に、θの変化に伴い、連続的にシフトするピークを観察することができる。
図17に、実施例4で得られた多孔質カーボン配列体に白色光を入射させたときの角度分解反射スペクトルを示す。図17より、光の入射角度に伴い、反射ピークが連続的に変化していることがわかる。図17の結果は、多孔質カーボン配列体に含まれる単分散球状粒子が規則配列構造を形成していることを示している。
[4.2. 表面2次回折による反射スペクトル]
表面2次回折による反射は、物材機構の金井らによって報告(Langmuir 19(2003)1684)されているもので、ブラッグ回折のようなミラー反射条件ではなく、入射光と反射光を同方向で観察するものである。このような条件おいて、反射光強度が(3)式を満たす場合に、ピークとしてλを観察することができる。
√6/2asinθ=mλ ・・・(3)
(3)式において、aは規則配列体の格子定数である。試料が規則配列している場合、光の入射角度に伴い、連続的にシフトする反射ピークを観察することができる。
図18に、表面2次回折による反射スペクトルの測定方法を示す。同軸ケーブル43を用いて入射光41と反射光42が、サンプル44に対して同方向になるように配置し、サンプル44を入射光に対して角度θで傾斜するように配置した。角度θを連続的に変化させて得られる反射ピークを測定した。
図19に、実施例4で得られた多孔質カーボン配列体の表面2次回折による反射スペクトルを示す。図19より、光の入射角度に伴い、反射ピークが連続的に変化していることがわかる。図19の結果は、多孔質カーボン配列体に含まれる単分散球状粒子が規則配列構造を形成していることを示している。
[4.3. 構造色変化]
図20に、実施例4で得られた多孔質カーボン配列体の観察角度を変えて撮影した外観写真を示す。多孔質カーボン配列体は、観察角度θ(上述した光の入射角度と同義)が低角側から高角側に変化するに伴い、青→緑→薄緑→赤と変化した。図20より、多孔質カーボン配列体は、カーボン粒子特有の黒色であるが、規則配列構造に基づいた明瞭な構造色変化を示すことがわかる。
[5. 多孔質カーボン配列体の水蒸気吸着特性]
図21に、実施例4で得られた多孔質カーボン配列体の水蒸気吸着等温線の測定結果を示す。図21より、相対蒸気圧0.4付近から水蒸気の吸着が開始していることがわかる。
単分散球状カーボン粒子は、比表面積が900(m2/g)以上であり、中心から表面に向かって放射状に伸びたナノロッド間に細孔を有している。単分散球状カーボン粒子は、比表面積が大きいので、多くの水蒸気を内部を吸着することが可能である。しかも、中心から表面に向かって放射状に伸びるナノロッド間に細孔が形成されているため、球内部のへの物質拡散路が短くなり、上記の拡散速度が速い。つまり、大量の水を素早く吸着/脱着することができる。この吸着特性は、配列体を形成した後でも低下しないため、この単分散球状カーボン多孔体の配列体を含む被膜においても、同様の水蒸気吸着機能を発揮させることができる。そのため、これを含む被膜は、通常の被膜では得られない高い静電気除去効果を期待することができる。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
本発明に係る多孔質カーボン配列体は、吸着剤、触媒、触媒担体、電気二重層キャパシタ、センサー、電極、液体クロマトグラフィー用充填剤、黒色基調で構造色を発する被膜等に用いることができる。
単分散球状メソポーラスシリカ粒子(合成例1)のSEM写真である。 単分散球状メソポーラスシリカ粒子(合成例1)の窒素吸着等温線である。 単分散球状メソポーラスシリカ粒子(合成例1)のBJH法による細孔分布曲線である。 単分散球状メソポーラスシリカ粒子(合成例2)のSEM写真である。 単分散球状メソポーラスシリカ配列体(作製例1)のSEM写真である。 単分散球状メソポーラスシリカ配列体(作製例2)のSEM写真である。 単分散球状メソポーラスシリカ配列体(作製例3)のSEM写真である。 多孔質カーボン配列体(実施例1)の低倍率SEM写真(図8(a))及び高倍率SEM写真(図8(b))である。 多孔質カーボン配列体(実施例1)の窒素吸着等温線である。 多孔質カーボン配列体(実施例1)のDFT法による細孔分布曲線である。 多孔質カーボン配列体(実施例2)の高倍率SEM写真(図11(a))及び低倍率SEM写真(図11(b))である。 多孔質カーボン配列体(実施例2)の窒素吸着等温線である。 多孔質カーボン配列体(実施例2)のDFT法による細孔分布曲線である。 多孔質カーボン配列体(実施例3)の低倍率SEM写真(図14(a)及び高倍率SEM写真(図14(b))である。 熱CVD装置の概略構成図である。 多孔質カーボン配列体(実施例4)の低倍率SEM写真(図16(a))及び高倍率SEM写真(図16(b))である。 多孔質カーボン配列体(実施例4)のブラッグ条件反射による角度分解反射スペクトルである。 表面2次回折の測定方法を示す模式図である。 多孔質カーボン配列体(実施例4)の表面2次回折による反射スペクトルである。 多孔質カーボン配列体(実施例4)の構造色変化を示す外観写真である。 多孔質カーボン配列体(実施例4)の水蒸気吸着等温線である。

Claims (17)

  1. 連続したメソ孔を有し、かつ、単分散である球状のカーボン粒子が規則配列している多孔質カーボン配列体。
  2. 前記カーボン粒子は、最密充填構造となるように規則配列している請求項1に記載の多孔質カーボン配列体。
  3. 前記カーボン粒子は、中実である請求項1又は2に記載の多孔質カーボン配列体。
  4. 前記カーボン粒子は、中空である請求項1又は2に記載の多孔質カーボン配列体。
  5. 前記カーボン粒子の平均粒径は、10nm以上2μm以下である請求項1から4までのいずれかに記載の多孔質カーボン配列体。
  6. その比表面積が900m/g以上である請求項1から5までのいずれかに記載の多孔質カーボン配列体。
  7. その細孔分布が0.5nm以上2nm以下にピークを持つ請求項1から6までのいずれかに記載の多孔質カーボン配列体。
  8. 球状の空隙が規則配列したインバースオパール状のカーボン壁をさらに備え、
    前記カーボン粒子は、前記空隙内にある請求項1から7までのいずれかに記載の多孔質カーボン配列体。
  9. 黒色基調で、構造色を発色させるための被膜として用いられる請求項1から8までのいずれかに記載の多孔質カーボン配列体。
  10. シリカを含む単分散球状メソ多孔体を規則配列させる配列工程と、
    前記単分散球状メソ多孔体の少なくともメソ孔内にカーボンを析出させるカーボン析出工程と、
    前記単分散球状メソ多孔体を除去する除去工程と
    を備えた多孔質カーボン配列体の製造方法。
  11. 前記配列工程は、前記単分散球状メソ多孔体を分散させた分散液に電極を浸漬し、前記電極間に直流電界を印加することによって、前記単分散球状メソ多孔体とは反対電荷を有する電極表面に前記単分散球状メソ多孔体の規則配列体を析出させるものである請求項10に記載の多孔質カーボン配列体の製造方法。
  12. 前記配列工程は、一定の間隔を有する基板間に前記単分散球状メソ多孔体を分散させた分散液を注入し、前記単分散球状メソ多孔体シリカを自己集積させるものである請求項10に記載の多孔質カーボン配列体の製造方法。
  13. 前記カーボン析出工程は、
    前記単分散球状メソ多孔体の少なくともメソ孔内にカーボン前駆体を充填する充填工程と、
    前記カーボン前駆体を重合させる重合工程と、
    重合させた前記カーボン前駆体を炭化させる炭化工程と
    を備えている請求項10から12までのいずれかに記載の多孔質カーボン配列体の製造方法。
  14. 前記充填工程は、
    前記単分散球状メソ多孔体の規則配列体を、液体状の前記カーボン前駆体又は前記カーボン前駆体を溶解させた溶液に浸漬する第1含浸工程と、
    前記単分散球状メソ多孔体の規則配列体を洗浄する洗浄工程と、
    前記規則配列体を乾燥させる乾燥工程と
    を備えている請求項13に記載の多孔質カーボン配列体の製造方法。
  15. 前記充填工程は、
    前記単分散球状メソ多孔体の規則配列体を、液体状の前記カーボン前駆体又は前記カーボン前駆体を溶解させた溶液に浸漬する第1含浸工程と、
    前記単分散球状メソ多孔体の規則配列体を洗浄する洗浄工程と、
    前記規則配列体を乾燥させることなく、前記規則配列体を液体状の前記カーボン前駆体又は前記カーボン前駆体を溶解させた溶液に浸漬する第2含浸工程と
    を備えている請求項13に記載の多孔質カーボン配列体の製造方法。
  16. 前記充填工程、前記重合工程、及び、前記炭化工程を複数回繰り返す請求項13から15までのいずれかに記載の多孔質カーボン配列体の製造方法。
  17. 前記カーボン析出工程は、気相蒸着法を用いて前記単分散球状メソ多孔体の少なくともメソ孔内にカーボンを析出させるものである請求項10から12までのいずれかに記載の多孔質カーボン配列体の製造方法。
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