JP2007059040A5 - - Google Patents
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Description
本発明は、円盤状のディスクを着脱自在にするチャッキング装置およびこのチャッキング装置を搭載したブラシレスモータおよびディスク駆動装置に関する。
近年、大容量を必要とする高画質映像を記録する次世代のDVD(Digital Versatile Disk)として高容量DVDの開発が盛んである。この高容量DVDは、トラックピッチを従来の0.64μmから半分の0.32μmに変更し、そしてこれに対応するように記録再生を行うレーザを従来の波長の長い赤色レーザから波長の短い青紫色レーザに変更することによって記録密度を高め、DVDの高容量化を実現している。さらに高容量DVDを毎分10,000回転以上の高速回転させることにより、記録速度を高め、さらにDVDの高倍速化を実現している。
またこれら高容量DVD等のディスクを保持するために、従来ではディスクの中心貫通孔の内周縁を弾性部材によって付勢された複数の爪形状等の保持部によって保持されるチャッキング装置を搭載したブラシレスモータが採用されていた(このような従来のチャッキング装置の例として、例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、複数の爪にてディスクを保持するチャッキング装置では、半径方向に突き出た爪形状等の保持部のみでディスクの中心貫通孔の内周縁を保持するので、ディスクの中心貫通孔の内周縁を保持する力が個々の保持部毎に異なってくる。その結果、毎分10,000回転以上のような高速回転時において、もしくはディスクのバランス性能が著しく悪い場合において、ディスクの調芯精度が悪化してしまう。このため、次世代DVDである高容量DVDでは、記録再生にエラーを生じてしまう可能性があった。
その上、チャッキング装置では、毎分10,000回転以上のような高速回転においては、少しでもディスクがアンバランスであった場合、保持部とディスクの中心貫通孔の内周縁とが遠心力によって一方向に強く当接してしまう。これに起因して、保持部とディスクとの当接位置が移動してしまい、ディスクの位置が変化してしまう。その結果、回転初期の記録再生位置と回転中の記録再生位置とが異なってしまい、記録再生にエラーを生じてしまう可能性があった。そしてさらに最悪には、ディスクがチャッキング装置から外れてしまう可能性があった。またこの遠心力の影響にて、ディスクと保持部とが共に噛みこんで移動してしまう噛み込み現象が生じてしまう。この噛み込み現象を生じると、その反動にてコーン部が元の位置に戻ろうとする力が強くなり、その力が噛み込み方向の力より強くなった瞬間にディスクを急激にもとの保持位置に戻す。その結果、ディスクが急激に変位するのでディスクの読み取り機能がそのディスクの変位に追従できずに記録再生エラーを生じてしまう可能性がある。またディスクの保持力が弱いとディスクを高速回転させることによってディスクとチャッキング装置との間に振動が発生してしまう。その振動によりディスクが微小変位して回転するので、記録再生にエラーを生じる可能性があった。
したがって、本発明は、上記問題に鑑み、なされたものであり、その目的とするところは、ディスクの中心貫通孔の内周縁に対して周方向全周を均等な力にて保持するチャッキング装置を装着段階にて適正に保持することができ、そして高速回転時においても良好にディスクの保持位置を維持することができるチャッキング装置を提供することである。
本発明の請求項1によれば、所定の回転軸の回りを回転する中心貫通孔を有する円盤状のディスク、を着脱自在に取り付けることができるチャッキング装置であって、前記回転軸と同軸に配置され、前記ディスクを載置する載置面を有するターンテーブル部と、前記ターンテーブル部の上面側に配置され、軸方向下側に向けて拡大する、回転軸に対して傾斜した傾斜面を有し、前記ディスクの前記中心貫通孔の内周面を周方向に略均等な力にて保持する当接部と、該当接部の軸方向上側にあって外縁が該当接部に軸方向上側より接続し前記ディスクを案内する案内部と、を有する、軸方向に移動可能なコーン部と、前記ターンテーブル部と前記コーン部との軸方向の間に配置され、前記コーン部を軸方向上側に向けて付勢する弾性部材と、前記コ−ン部の上面側に配置され、前記コーン部の軸方向の移動を規制する移動規制部と、を備え、前記コーン部の少なくとも前記当接部表面は、前記ディスクの前記中心貫通孔の内周面との間の摩擦係数が、金属材料に対する摩擦係数よりも小さい、樹脂材料にて構成されることを特徴とする。
本発明の請求項1に従えば、コーン部がディスクの中心貫通孔の内周縁に対して均等な力が加わることによってディスクを保持することから、調芯精度を向上させることができる。したがって、高容量DVDのように調芯精度を必要とするディスクに対して好適である。さらにコーン部を樹脂材料にて成形することから、金属材料を加工する場合と比較して安価に製造することができる。またコーン部の少なくとも当接部表面とディスクの中心貫通孔の内周面との間の摩擦係数を金属材料に対する摩擦係数よりも小さい樹脂材料にて成形することから、ディスクとの当接部表面における摩擦力を抑えることができるので、高速回転中のディスクのアンバランスに起因する一方向に向かう遠心力の影響を抑えることができる。したがって、信頼性の高いチャッキング装置を安価にて提供することができる。
本発明の請求項2によれば、請求項1に係り、前記コーン部の表面粗さRyは、略5μm≦Ry≦略20μmの関係を満たすことを特徴とする。
本発明の請求項2に従えば、コーン部の表面粗さRyを略5μm≦Ry≦略20μmの範囲内にすることにより、コーン部の当接部とディスクの内周面との摩擦係数、およびコーン部が軸方向へ移動する際の摩擦係数を低くすることができる。したがって、高速回転中に発生するディスクのアンバランスに起因する一方向に向かう遠心力によって当接部が一方向側に押され、ディスクと当接部との当接力が強くなり、ディスクと当接部とが下側に大きく変位してしまう噛み込み現象を防ぐことができる。したがって、ディスクを高速回転してもディスクの記録再生エラーを生じることなく高い信頼性を維持するチャッキング装置を提供することができる。
本発明の請求項3によれば、請求項1または2に係り、前記ディスクは、ポリカーボネートにて形成され、前記ディスクの前記中心貫通孔と前記コーン部の前記当接部との間の静止摩擦係数μが、略0.15≦μ≦略0.30の関係を満たすことを特徴とする。
本発明の請求項3に従えば、ポリカーボネートにて形成されたディスクとコーン部の当接部との静止摩擦係数μを略0.15以上とすることにより、一定の摩擦力を確保することができる。したがって、ディスクのアンバランスによって発生する一方向への遠心力の影響によるディスクのコーン部に対する上側への変位を抑えることができる。その結果、ディスクがチャッキング装置から飛び出してしまうことを防ぐことができる。またディスクとコーン部の当接部との静止摩擦係数μを略0.30以下となることにより、ディスクとコーン部との噛み込み現象を防ぐことができる。
本発明の請求項4によれば、請求項1乃至3のいずれかに係り、前記コーン部は、ポリアセタールもしくはアセタール樹脂にて成形されることを特徴とする。
本発明の請求項4に従えば、コーン部をポリアセタールもしくはアセタール樹脂にて成形することにより、ディスクの中心貫通孔の内周面とコーン部の当接部との静止摩擦係数を抑えることができる。さらにコーン部を安価に製造することができる。その上、ディスクの着脱を大多数繰り返したとしても、コーン部におけるディスクとの当接部に磨耗がなく、高速回転中のディスクの変位も良好に防ぐことができる。したがって、信頼性の高いチャッキング装置を提供することができる。そして静止摩擦係数を抑えることができるので、噛み込み現象を抑えることができる。
本発明の請求項5によれば、請求項1乃至4のいずれかに係り、前記コーン部における前記当接部の前記傾斜面と前記回転軸との成す角Φは、略12°≦Φ≦略15°の関係を満たすことを特徴とする。
本発明の請求項5に従えば、コーン部の当接部の角Φを略12°≦Φ≦略15°の範囲内とすることにより、中心貫通孔の誤差に対しても良好に調芯できる。そしてディスクを高速回転させた際の遠心力の影響によるディスクの変位を抑えることができる。
本発明の請求項6によれば、請求項5に係り、前記弾性部材のバネ力Fは、略1.2N≦F≦略2.0Nの関係を満たすことを特徴とする。
本発明の請求項6に従えば、バネ力Fを略1.2N≦F≦略2.0Nの範囲とすることにより、ディスクの着脱を円滑に行うことができる。その上、バネ力Fはディスクが高速回転した際に、ディスクのアンバランスに起因する一方向への遠心力による影響に対して生じるその遠心力の軸方向分力に対する抗力として働くのでディスクの位置を変化させずにディスクを保持することができる。
本発明の請求項7によれば、請求項1乃至6のいずれかに記載のチャッキング装置を搭載したブラシレスモータであって、該チャッキング装置が固定され、前記回転軸の回りを一体的に回転する回転部材と、前記回転部材を回転自在に支持する軸受部を有する固定部材と、前記回転部材と一体的に回転するロータマグネットと、前記ロータマグネットと対向し、前記回転軸回りの駆動力を発生するステータと、を備えることを特徴とする。
本発明の請求項7に従えば、モータを高速回転させてもディスクが飛び出さず、且つ噛み込み現象を発生しない、信頼性の高いモータを安価に提供することができる。
本発明の請求項8によれば、請求項7に記載のブラシレスモータを搭載するディスク駆動装置であって、前記ディスクの記録および再生を行うピックアップ機構と、前記ディスクを前記載置面との間に挟むことによって保持するクランプ部材と、前記ディスクを前記載置面まで移動させるディスク移動機構と、前記ピックアップ機構、前記クランプ部材、および前記ディスク移動機構をその内部に収容する筐体と、を備えることを特徴とする。
本発明の請求項8に従えば、高倍速にて記録しても、ディスクが飛び出さず、且つ噛み込み現象による記録再生エラーを発生しない、信頼性の高いディスク駆動装置を提供することができる。
本発明によれば、ディスクの中心貫通孔の内周縁に対して周方向全周を均等な力にて保持するチャッキング装置を装着段階にて適正に保持することができ、そして高速回転時においても良好にディスクの保持位置を維持することができるチャッキング装置を提供することである。
<ブラシレスモータの全体構造>
本発明に係わるブラシレスモータについて、図1を参照して説明する。図1は、本発明のブラシレスモータの実施例の一形態を示した模式断面図である。
本発明に係わるブラシレスモータについて、図1を参照して説明する。図1は、本発明のブラシレスモータの実施例の一形態を示した模式断面図である。
まず固定部材について説明する。
上側に開口した有底円筒状であり、含油焼結にて形成されたスリーブ保持部材10は、下面に円環段部11が設けられている。その円環段部11の上面には、円環ワッシャ20が当接配置されている。そして底部12には、円盤ワッシャ21が当接配置されている。
上側に開口した有底円筒状であり、含油焼結にて形成されたスリーブ保持部材10は、下面に円環段部11が設けられている。その円環段部11の上面には、円環ワッシャ20が当接配置されている。そして底部12には、円盤ワッシャ21が当接配置されている。
またスリーブ保持部10の円筒部13の内周面および円環ワッシャ20の上面に当接するように円筒形状のスリーブ30が固定配置されている。スリーブ30は、油を浸した焼結材料にて成形される。そして円筒部13の上端部には、半径方向外側に延びる延出部14が設けられる。また延出部14の内周側には、内周円環段部15が形成されている。そしてこの内周円環段部15に配置され、スリーブ30の上面を覆うようにワッシャ40が配置されている。このワッシャ40は、スリーブ30からしみ出した油を再びスリーブ30内に戻すために配置される。
またスリーブ保持部10の円筒部13の外周面には、円環状に形成された電機子50が固定されている。さらにこの電機子50の下側には、ブラシレスモータを他の部材と固定するための取付板60が円筒部13の外周面と固定されている。そしてこの取付板60の上面には、ブラシレスモータの回転制御を行う回路基板70が固定されている。
次に回転部材について説明する。
スリーブ30の内周面には、シャフト80が挿通可能に配置される。そしてスリーブ30はシャフト80を回転自在に支持する。そしてシャフト80の上部には、スリーブ保持部10、スリーブ30および電機子50を外囲するように下側に開口する有蓋円筒状のロータホルダ90が固定されている。そしてロータホルダ90の蓋部91におけるスリーブ保持部10の延出部14との軸方向対向面には、円環状の予圧マグネット100が固定されている。さらにロータホルダ90の円筒部92の内周面には、円環形状のロータマグネット110が固定されている。そしてロータマグネット110の内周面と電機子50の外周面とは半径方向に間隙を介して対向配置される。
スリーブ30の内周面には、シャフト80が挿通可能に配置される。そしてスリーブ30はシャフト80を回転自在に支持する。そしてシャフト80の上部には、スリーブ保持部10、スリーブ30および電機子50を外囲するように下側に開口する有蓋円筒状のロータホルダ90が固定されている。そしてロータホルダ90の蓋部91におけるスリーブ保持部10の延出部14との軸方向対向面には、円環状の予圧マグネット100が固定されている。さらにロータホルダ90の円筒部92の内周面には、円環形状のロータマグネット110が固定されている。そしてロータマグネット110の内周面と電機子50の外周面とは半径方向に間隙を介して対向配置される。
ロータホルダ90の蓋部91の上面には、円盤状のディスク(不図示)を調芯し、保持するチャッキング装置120が固定されている。
外部より電機子50に電流を供給することにより、電機子50は磁場を発生し、その磁場とロータマグネット110との相互作用により、回転部材は駆動力を得て、回転駆動する。
<チャッキング装置構造>
本発明の主要部であるチャッキング装置120の構造について図2を参照して説明する。図2は、図1のチャッキング装置120の部分の拡大図である。図2における一点鎖線は回転軸である中心軸を示す。また図3は、日本工業規格に規定されている摩擦係数を測定する方法に沿って測定された面粗度に対する摩擦係数を示すグラフである。また図4は、ディスクのアンバランス荷重別の回転数に対する必要なバネ力を示したグラフである。
本発明の主要部であるチャッキング装置120の構造について図2を参照して説明する。図2は、図1のチャッキング装置120の部分の拡大図である。図2における一点鎖線は回転軸である中心軸を示す。また図3は、日本工業規格に規定されている摩擦係数を測定する方法に沿って測定された面粗度に対する摩擦係数を示すグラフである。また図4は、ディスクのアンバランス荷重別の回転数に対する必要なバネ力を示したグラフである。
図2を参照して、チャッキング装置120は、ディスクを載置するターンテーブル部121、ディスクを保持するコーン部122、このコーン部122を軸方向に付勢にする弾性部材123、およびコーン部122の軸方向移動を規制する移動規制部であるヨーク部124の構成からなる。
ターンテーブル部121にディスクの中心貫通孔の内周縁をコーン部122にて保持しつつ載置する。そしてディスクの上面をクランプ(不図示)によって抑えることによりディスクをさらに保持する。
1)ターンテーブル部
ロータホルダ90の蓋部91の上面に固定されるターンテーブル部121は、中心に貫通孔を有し、シャフト80に圧入によって回転軸と同心に位置決め固定されている。またターンテーブル部121の中央部には、外側から中央に向かい深くなる3つの径の異なった凹部が形成され、外側から順に第1凹部121a、第2凹部121b、第3凹部121cとする。そしてこれら凹部はコーン部122が下側に移動した際に、コーン部122の移動を規制せずにコーン部122を収容する役目を果たす。またターンテーブル部121の外周側上面には、ディスクの載置される載置面となるゴム等の弾力性のある材料にて円環状に形成されたディスクラバー125が固定されている。
ロータホルダ90の蓋部91の上面に固定されるターンテーブル部121は、中心に貫通孔を有し、シャフト80に圧入によって回転軸と同心に位置決め固定されている。またターンテーブル部121の中央部には、外側から中央に向かい深くなる3つの径の異なった凹部が形成され、外側から順に第1凹部121a、第2凹部121b、第3凹部121cとする。そしてこれら凹部はコーン部122が下側に移動した際に、コーン部122の移動を規制せずにコーン部122を収容する役目を果たす。またターンテーブル部121の外周側上面には、ディスクの載置される載置面となるゴム等の弾力性のある材料にて円環状に形成されたディスクラバー125が固定されている。
2)コーン部
ターンテーブル部121の3つの凹部より上側に配置されるコーン部122は、中心に貫通孔を有し、内周に摺動面を有する摺動部122aと半径方向外側に延出し、そしてさらに軸方向上側に延出する連結部122bとディスクを保持する保持部122cとから構成されている。
ターンテーブル部121の3つの凹部より上側に配置されるコーン部122は、中心に貫通孔を有し、内周に摺動面を有する摺動部122aと半径方向外側に延出し、そしてさらに軸方向上側に延出する連結部122bとディスクを保持する保持部122cとから構成されている。
摺動部122aの貫通孔は、中心軸と同心に配置されるようにシャフト80の外周面に挿入される。そしてその貫通孔の内周面であり、シャフト80と摺動する摺動面は、シャフト80の外周面と半径方向に微小間隙を介して対向する。この微小間隙に、摺動剤が充填されているとより円滑にコーン部122の軸方向の移動をすることができる。これによりディスクの着脱を円滑に行うことができる。
保持部122cの上面は、外側に向かうに従い下側に傾斜する傾斜面であり、ディスクを調芯するように案内する案内部122c1と、この案内部122c1のさらに半径方向外側に位置し、角度をより下側に変更して傾斜する傾斜面であり、ディスクを当接し保持する当接部122c2とで形成される。
またコーン部材122は樹脂材料にて形成される。そしてコーン部122の当接部122c2の外周面とディスクの中心貫通孔の内周面との間の静止摩擦係数が、コーン部122が金属材料にて形成された場合における当接部122c2の外周面とディスクの中心貫通孔との間の静止摩擦係数よりも小さい。
当接部122c2の傾斜面と回転軸である中心軸との成す角Φは、12度以上15度以下(好ましくは13.5°)であることが望ましい。この角度範囲にすることにより、ディスクを高速回転させた際の当接部122c2に働く遠心力の影響を低減させることができる。特にこの遠心力によって当接部122c2に軸方向下側に働く分力を低減させることができる。これにより、コーン部122の下側への移動を抑えることができるので、ディスクの変位を抑えることができる。この成す角Φは、極力零度にした方が傾斜することによって遠心力方向に加担する力を抑えることができ、好ましいが、ディスクの種類によってディスクの中心貫通孔の直径がある程度ばらつきがあるので、あらゆるディスクを保持するためには、上記範囲の角度であることが望ましい。この角度以下である場合、ディスクとコーン部の噛み込み現象を引き起こしてしまい、ディスクが変位してしまう可能性がある。さらにディスクの中心貫通孔の直径が大きいものでは、必要な保持力を与えることができない。またこの角度以上である場合、ディスクのアンバランスによる遠心力の影響によってディスクとコーン部122とが相対的に変位してしまい、すなわち、遠心力の影響にて当接部122c2に力が働くことによってコーン部122が下方向に移動し、一方ディスクがコーン部122の上側に移動することによってディスクがチャッキング装置120から飛び出してしまう可能性がある。
そしてさらに当接部122c2の傾斜面の面粗度Ryは、Ry=5μm〜20μm(好ましくは、Ry=10μm〜15μm)の範囲内とする。ここで、面粗度Ryは、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけ抜き取り、この抜き取り部分の山頂線と谷底線との間隔を粗さ曲線の縦倍率の方向に測定した値である。
図3を参照して、面粗度と摩擦力との関係について説明する。図3は、樹脂の上にディスクを載置し、その上に所定重量(図では荷重にて表記)の鐘を乗せ、そして鐘を水平に引っ張り動き出した瞬間の加重を摩擦力として測定した結果のグラフである。
図3のグラフより、面粗度が大きい程、摩擦力が小さくなることが分かる。さらに各鐘の荷重も面粗度が5μm以前では摩擦力が高く、グラフも面粗度を大きくするに従い急激に小さくなっているが、面粗度が5μm以上では、面粗度を大きくするに従い、緩やかに摩擦力が低下している。したがって、面粗度を5μm以上にすることによって安定して低い摩擦力を得ることができる。その結果、当接部122c2とディスクとの摩擦係数を減少させ、ディスクとコーン部122との振動を抑えることができる。そしてこの振動に起因したディスクとコーン部122との当接部122c2とが噛み込んでしまう結果生じるディスクおよび当接部122c2への下側の力が働くことによるディスクが軸方向および径方向に変位してしまう現象を防ぐことができる。またその結果に生じるディスクが急激にもとの位置に戻る現象も抑えることができる。したがって、高速回転中でのディスクの記録再生エラーを防ぐことができる。
また面粗度が20μmより大きい場合、ディスクの着脱の際に、ディスクの中心貫通孔の内周縁とコーン部122の当接部122c2とがお互いに削れてしまい、お互いの接触面が磨耗してしまう。その結果、大多数のディスクの着脱を繰り返すと、ディスクが軸方向に変位してしまう現象が発生する可能性がある。
したがって、当接部122c2の傾斜面の面粗度Ryは、Ry=5μm〜20μm(好ましくは、Ry=10μm〜15μm)の範囲内であることがディスクと安定して低い摩擦力にて当接でき、かつ当接部122c2とディスクの中心貫通孔とが磨耗しないので望ましい。
この当接部122c2の傾斜面の面粗度は、金型成形時とともに形成されることが望ましい。特に金型の当接部122c2の成形位置の面粗度を粗くすることによって、金型成形時とともに当接部122c2の傾斜面の面粗度を形成することができる。これにより、金型成形後に、後加工として、面粗度をRy=5μm〜20μmの範囲内に調整する工程を削除することができ、コーン部122の加工費を抑えることができる。
3)弾性部材
ターンテーブル部121の第2凹部121bの上面に配置され、コーン部122の保持部122cの下側に当接してコーン部122を支持する弾性部材123は、コイルスプリング等の弾性力の富んだ材料にて形成される。本実施例では、コイルスプリングを採用している。
ターンテーブル部121の第2凹部121bの上面に配置され、コーン部122の保持部122cの下側に当接してコーン部122を支持する弾性部材123は、コイルスプリング等の弾性力の富んだ材料にて形成される。本実施例では、コイルスプリングを採用している。
図4は、回転数におけるディスクがチャッキング装置120から回転中に飛び出してしまうバネ力を示したグラフである。
図4を参照して、この弾性部材123のバネ力は1.2N以上2.0N以下(好ましくは1.5N)の範囲内にあることが望ましい。従来は低速回転での使用であったために、ディスクの遠心力による影響が少なく、それに伴い、バネ力も小さくてもよかった。しかしながら、高容量DVDのような毎分10,000回転以上の高速回転を必要とするディスクでは、ディスクのアンバランスに起因する遠心力により、コーン部122の当接部122c2にディスクが強く当接することによって、遠心力の分力が軸方向下側に働く。従来のバネ力は1.2N以下であり、バネ力が小さいので、この遠心力の軸方向下側に働く分力に対しての抗力が弱く、コーン部122が下側に移動し易かった。そのため、ディスクがコーン部122から飛び出してしまう可能性が高かった。そのため、バネ力が1.2Nより小さい場合、上記のようなディスクの飛び出しを引き起こし易い。したがって、バネ力はこの遠心力の軸方向下側に働く分力に対抗するために大きくする必要がある。しかしながら、逆にバネ力が2.0Nより大きい場合、コーン部122の当接部122c2とディスクとの当接力が大きくなりすぎてしまい、ディスクをチャッキング装置120に装着し難い不具合が生じてしまう。したがって、グラフを参照して、バネ力を1.2N以上2.0N以下(好ましくは、1.5N)にすることにより、ディスクの遠心力による当接部122c2の下側への移動を防止することができる。その結果、ディスクの変位や飛び出しのない信頼性の高いモータを提供することができる。
4)ヨーク部
コーン部122の上部に配置された磁性体にて形成されたヨーク部124はシャフト80と圧入固定される。そしてコーン部122の軸方向上側の移動を規制する。そしてクランプ側に搭載されたマグネットとヨーク部との磁気吸引力がクランプ力としてディスクを保持する一因となる。
コーン部122の上部に配置された磁性体にて形成されたヨーク部124はシャフト80と圧入固定される。そしてコーン部122の軸方向上側の移動を規制する。そしてクランプ側に搭載されたマグネットとヨーク部との磁気吸引力がクランプ力としてディスクを保持する一因となる。
5)静止摩擦係数について
ポリカーボネートにて作製されたディスクの中心貫通孔の内周縁とコーン部122の当接部122c2との静止摩擦係数を0.15以上0.30以下(好ましくは0.20付近)にする。これにより、静止摩擦係数を0.15以上にすることによって、ディスクとコーン部122との一定の摩擦力を確保することができ、ディスクの遠心力による影響によって、一方向にディスクが強く当接してコーン部122が軸方向下側に移動したとしてもディスクが相対的に軸方向上側に滑ることを抑えることができる。その結果、ディスクがチャッキング装置120から飛び出すことを防止することができる。さらに静止摩擦係数を0.30以下にすることにより、ディスクの遠心力によって生じるディスクとコーン部122との噛み込み現象を抑えることができる。その結果、ディスクの急激な変位を抑えることができるので、高速回転中におけるディスクの記録再生エラーを防止することができる。
ポリカーボネートにて作製されたディスクの中心貫通孔の内周縁とコーン部122の当接部122c2との静止摩擦係数を0.15以上0.30以下(好ましくは0.20付近)にする。これにより、静止摩擦係数を0.15以上にすることによって、ディスクとコーン部122との一定の摩擦力を確保することができ、ディスクの遠心力による影響によって、一方向にディスクが強く当接してコーン部122が軸方向下側に移動したとしてもディスクが相対的に軸方向上側に滑ることを抑えることができる。その結果、ディスクがチャッキング装置120から飛び出すことを防止することができる。さらに静止摩擦係数を0.30以下にすることにより、ディスクの遠心力によって生じるディスクとコーン部122との噛み込み現象を抑えることができる。その結果、ディスクの急激な変位を抑えることができるので、高速回転中におけるディスクの記録再生エラーを防止することができる。
6)コーン部材料について
図5を参照して、コーン部122の材料について説明する。図5は、常温にてディスクの着脱を30,000回行った試験の前後におけるディスク変位を示した結果である。また図5はコーン部122の材料をポリカーボネート(以下、PCと称する)、ガラス入りのポリカーボネート(以下、PC(ガラス入り)と称する)およびポリアセタール樹脂(以下、POMと称する)とした場合の比較を示す。
図5を参照して、コーン部122の材料について説明する。図5は、常温にてディスクの着脱を30,000回行った試験の前後におけるディスク変位を示した結果である。また図5はコーン部122の材料をポリカーボネート(以下、PCと称する)、ガラス入りのポリカーボネート(以下、PC(ガラス入り)と称する)およびポリアセタール樹脂(以下、POMと称する)とした場合の比較を示す。
図5を参照して、試験前の全ての材料でのディスクの変位はそれぞれ、PCが0mm、POMが0.025mm、PC(ガラス入り)が0.025mmとディスクの変位の差は殆ど見られない。しかしながら、試験後では、PCおよびPC(ガラス入り)のディスクの変位は、それぞれ0.125μm、0.075μmと大幅に増加していることが分かる。これらと比較して、POMでは、試験前後のディスクの変位が0.025mmであり、試験前後に差がないことが分かる。POMは、PCおよびPC(ガラス入り)と比較して低摩擦係数であり、ディスクとの当接力が少なくなるので、ディスクの噛み込み現象を防ぐことができている。したがって、図5の結果に見られるように試験前後のディスクの変位を抑えることができる。よって、コーン部122の材料には、POMを使用することが好適である。
7)貼り合わせディスクとコーン部との関係
図6を参照して、載置面であるラバー125の上面に載置された状態の貼り合わせディスクDとコーン部122との位置関係について説明する。図6は、図2に貼り合わせディスクDを載置した状態を示す軸方向に切った模式断面図である。
図6を参照して、載置面であるラバー125の上面に載置された状態の貼り合わせディスクDとコーン部122との位置関係について説明する。図6は、図2に貼り合わせディスクDを載置した状態を示す軸方向に切った模式断面図である。
貼り合わせディスクDは、ラバー125側の下側ディスク基板D1と下側ディスク基板D1の上面に貼り合わされる上側ディスク基板D2とから構成される。下側ディスク基板D1および上側ディスク基板D2にはそれぞれ中心貫通孔D1a、D2aが形成される。
コーン部122における当接部122c2と案内部122c1との連結部には、径方向外側に向かい突形状の曲面部122c3が形成されている。この曲面部122c3により貼り合わせディスクDの下側ディスク基板D1を案内部122c1から良好に当接部122c2に案内させることができる。
下側ディスク基板D1と上側ディスク基板D2との境界部BLは、曲面部122c3と径方向に重なる状態となる。したがって上側ディスク基板D2は、案内部122c1と径方向に重なり、且つ径方向に近接して配置された状態となる。すなわち、載置面であるラバー125の上面を含む仮想的な平面と当接部122c2とが交わる点C1から回転軸J1に対して垂直な直線と回転軸J1との交わる交線CJ1の半径の大きさは、下側ディスク基板D1の中心貫通孔D1aの半径と略等しいか或いは小さく形成される。そして下側ディスク基板D1の厚み分だけ、交線CJ1から軸方向上側に離れた位置にある第二の仮想的平面である境界部BLと、コーン部122の外周面である局面部122c3とが交わる点C2から回転軸J1に対して垂直な直線と回転軸J1との交わる交線CJ2の半径の大きさは、上側ディスクD2の中心貫通孔D2aの半径よりも、上側ディスク基板D2aが下側ディスク基板D1に対して許容されている径方向位置の最大ずれ量分と同じ、或いはそれ以上、小さく形成される。したがって、当接部122c2には、上側ディスク基板D2が接触することがなく、下側ディスク基板D1を基準として調芯を行うことができる。したがって、下側ディスク基板D1と上側ディスク基板D2との両方が接触することによる調芯精度の低下を防ぐことができる。
さらに下側ディスク基板D1のみで調芯を行い、上側ディスク基板D2は案内部122c1によって接触を防ぐ構造であるので、当接面122c2の回転軸J1との成す角度Φを上側ディスク基板D2の貼りずれを考慮に入れることなく設定することができる。
8)ディスク駆動装置
図7を参照して、本発明のディスク駆動装置の実施例の一形態について説明する。図7はディスク駆動装置の実施例の一形態を軸方向に切った模式断面図である。
図7を参照して、本発明のディスク駆動装置の実施例の一形態について説明する。図7はディスク駆動装置の実施例の一形態を軸方向に切った模式断面図である。
図7を参照して、ディスク駆動装置200は、筐体201と、筐体201内に配置され、着脱自在なディスク202を所定方向に回転させるブラシレスモータ203と、ディスク202の所要の位置に情報を記録および再生するための光ピックアップ機構204と、この光ピックアップ機構204をブラシレスモータ203の回転軸J1と垂直な所定の方向に移動自在とする光ピックアップ移動機構205と、ディスク202を軸方向上側より押圧して保持するクランプ部材206と、ディスク202の挿入および排出を行うトレイ207を備える。
光ピックアップ機構204は、レーザ光によりディスク202に情報の記録および再生を行う機構であり、主には、光源と、光源からのレーザ光をディスク202に導く光学系と、ディスク202の反射光を受光する受光素子等から構成される。
光ピックアップ移動機構206は、光ピックアップ機構204と光ピックアップ移動機構206を連結する歯車列と、この歯車列を駆動させるモータと、から構成される。
クランプ部材206は、回転軸J1と略同位置に配置され、軸方向に移動可能である。そしてディスク202がブラシレスモータ203のチャッキング装置203aに載置され、調芯された状態にて、クランプ部材206が軸方向下側に移動する。そしてディスク202を軸方向上側より押圧してディスク202を保持する。
以上、本発明の実施例の一形態について記載したが、本発明は実施例に限定されることなく権利範囲内において、種々の変形が可能である。
例えば、本発明の実施例では、シャフト80を支持するのは、スリーブ30であったが、これに限定されることなく、ボールベアリングでもよい。
また本発明の実施例において、コーン部122の材料をPOMとしたが、これに限定されることなく、PEEK材(ポリエーテルエーテルケトン)、PPS材(ポリフェニレンファルサイド)、TPE材(熱可塑性エラストマー)、およびナイロン系等の高い摺動性を有する部材にて成形してもよい。
120 チャッキング装置
121 ターンテーブル部
122 コーン部
122c1 案内部
122c2 当接部
123 弾性部材
200 ディスク駆動装置
202 ディスク
203 ブラシレスモータ
204 ピックアップ機構
206 クランプ部材
207 トレイ(ディスク移動機構)
J1 回転軸
Φ 回転軸と当接部とで成す角
121 ターンテーブル部
122 コーン部
122c1 案内部
122c2 当接部
123 弾性部材
200 ディスク駆動装置
202 ディスク
203 ブラシレスモータ
204 ピックアップ機構
206 クランプ部材
207 トレイ(ディスク移動機構)
J1 回転軸
Φ 回転軸と当接部とで成す角
Claims (8)
- 所定の回転軸の回りを回転する中心貫通孔を有する円盤状のディスク、を着脱自在に取り付けることができるチャッキング装置であって、
前記回転軸と同軸に配置され、前記ディスクを載置する載置面を有するターンテーブル部と、
前記ターンテーブル部の上面側に配置され、軸方向下側に向けて拡大する、回転軸に対して傾斜した傾斜面を有し、前記ディスクの前記中心貫通孔の内周面を周方向に略均等な力にて保持する当接部と、該当接部の軸方向上側にあって外縁が該当接部に軸方向上側より接続し前記ディスクを案内する案内部と、を有する、軸方向に移動可能なコーン部と、
前記ターンテーブル部と前記コーン部との軸方向の間に配置され、前記コーン部を軸方向上側に向けて付勢する弾性部材と、
前記コ−ン部の上面側に配置され、前記コーン部の軸方向の移動を規制する移動規制部と、
を備え、
前記コーン部の少なくとも前記当接部表面は、前記ディスクの前記中心貫通孔の内周面との間の摩擦係数が、金属材料に対する摩擦係数よりも小さい、樹脂材料にて構成されることを特徴とするチャッキング装置。 - 前記コーン部の表面粗さRyは、
略5μm≦Ry≦略20μm
の関係を満たすことを特徴とする請求項1に記載のチャッキング装置。 - 前記ディスクは、ポリカーボネートにて形成され、
前記ディスクの前記中心貫通孔と前記コーン部の前記当接部との間の静止摩擦係数μが、
略0.15≦μ≦略0.30
の関係を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載のチャッキング装置。 - 前記コーン部は、ポリアセタールもしくはアセタール樹脂にて成形されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のチャッキング装置。
- 前記コーン部における前記当接部の前記傾斜面と前記回転軸との成す角Φは、
略12°≦Φ≦略15°
の関係を満たすことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のチャッキング装置。 - 前記弾性部材のバネ力Fは、
略1.2N≦F≦略2.0N
の関係を満たすことを特徴とする請求項5に記載のチャッキング装置。 - 請求項1乃至6のいずれかに記載のチャッキング装置を搭載したブラシレスモータであって、
該チャッキング装置が固定され、前記回転軸の回りを一体的に回転する回転部材と、
前記回転部材を回転自在に支持する軸受部を有する固定部材と、
前記回転部材と一体的に回転するロータマグネットと、
前記ロータマグネットと対向し、前記回転軸回りの駆動力を発生するステータと、
を備えることを特徴とするブラシレスモータ。 - 請求項7に記載のブラシレスモータを搭載するディスク駆動装置であって、
前記ディスクの記録および再生を行うピックアップ機構と、
前記ディスクを前記載置面との間に挟むことによって保持するクランプ部材と、
前記ディスクを前記載置面まで移動させるディスク移動機構と、
前記ピックアップ機構、前記クランプ部材、および前記ディスク移動機構をその内部に収容する筐体と、
を備えることを特徴とするディスク駆動装置。
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