JP3688901B2 - バランス補正装置及びこれを備える回転装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、モータ等の回転装置に取り付けられ、その回転時におけるアンバランスを修正するバランス補正装置及びこれを備える回転装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、回転装置である記録ディスク駆動用モータは、例えば図2に示すように構成されている。この記録ディスクはCD−ROMで自由に交換して使用される。
【0003】
図2に示すように、シャーシ等の固定部材1に形成された開口にほぼ円筒状を成す保持部材2の下端部が嵌着され、保持部材2の底面開口部が閉塞板3により閉塞され、スラスト受4が閉塞板3上に載置されて保持部材2内の底部に配設され、滑り軸受5が保持部材2の内側に嵌着されている。
【0004】
更に、保持部材2の外側にはコア7aが嵌着され、このコア7aに巻線7bが巻装されステータ7を構成している。また、シャフト8が滑り軸受5に嵌入され、その下端がスラスト受4に当接し上端部が保持部材2の上方に突出して配設されている。シャフト8の上端部にはアルミニウム等の非磁性材から成るハブ部材9が嵌着され、鉄等の磁性材から成る回転部材であるヨーク部材10がハブ部材9に取り付けられている。
【0005】
このヨーク部材10は、ほぼ円板状の基部とこの基部の周縁に下方に垂下して一体形成された垂下部とにより構成され、その基部の中央部に形成された開口の周りの部分がハブ部材9の下端部に加締めにより取り付けられている。更に、駆動用マグネット11がヨーク部材10の垂下部の内側に嵌入され、ステータ7に相対向する位置に配設されている。
【0006】
また図2に示すように、ハブ部材9の外側にターンテーブル部13が形成され、このハブ部材9の中央にこの上面とほぼ同一面を形成するようにクランプマグネット14が埋設され、このクランプマグネット14により図示しない駆動装置側のディスク押圧手段が磁気吸引されて記録ディスクDが固定される。そして、ステータ7の巻線7bへの電流の通流方向が制御されてステータ7が回転磁界を発生し、この回転磁界と駆動用マグネット11との静磁界との吸引及び反発の繰り返しによって、静止状態のステータ7に対して駆動用マグネット11、ヨーク部材10、ハブ部材9及びシャフト8が回転し、これによりターンテーブル部13及び記録ディスクDが一定方向に回転する。
【0007】
ところで、CD−ROM等の記録ディスクDでは、その記録面と反対側の面に様々な印刷がなされ、印刷に使用されるインクの重量に起因して記録ディスクDの回転時に重量バランスの偏り(アンバランス)を生じ、モータの回転振れの原因となることがある。この背景には、上述したモータの高速化に起因して、微量なインクの重量でさえも影響を及ぼすようになっていることが挙げられる。また、CD−ROMの普及と共に粗悪な形状も含まれるようになり、これが回転振れの原因となることもある。
【0008】
そこで、このようなアンバランスを補正するバランス補正装置がモータの回転部材に搭載されることが行われている。そのバランス補正装置は、従来図2に示すように、ハブ部材9におけるターンテーブル部13の下面とヨーク部材10の基部とで環状空間の収容部16を形成し、この収容部16に複数個の球体17を周方向に移動自在に収容されている。
【0009】
このような構成によると、記録ディスクDを載置した状態でモータが所定の回転速度に到達すると、各球体17がアンバランス位置と対称な位置に移動し、モータのアンバランスが各球体17により補正されて回転振れを防止することができるのである。ところが、従来は各球体17の移動によりある程度までのアンバランス量を補正することはできるが、各球体17は自由な動きを妨げる摩擦等によりアンバランスを補正する位置まで移動できないことがあるため、微少なアンバランス量まで補正することは困難である。即ち、各球体17は適正なアンバランス補正位置に移動できず、摩擦等のために不規則にずれることがあり、再現性がよくないという問題があった。一方、各球体17はモータがバランスされている場合には、各球体17自体がアンバランスを発生することがない位置関係を保ち、例えば、等間隔に配置されるような状態になる筈であるが、そこには位置されずにバランスを乱すという問題もあった。尚、再現性とは、同じ条件でモータを起動及び停止を繰り返した場合に、同じ結果を示す程度をいう。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、従来のバランス補正装置の精度を向上するために、各種対策を検討した。その一つとして、例えば特開平10−83622号公報に記載されているように、モータを装置に対してインシュレータを介して固定(以下、柔支持という)した場合に、その再現性がどうなるかを検討した。これは、振動を抑制すべき対象部分(これではインシュレータ上のモータ部分)を限定することでその重量を軽減し、各球体を動きやすくすると共に、相対的に各球体の重量比を大きくすることで各球体に作用する感度を上げて、バランスの精度及び感度改善を図ったものである。
【0011】
ところが、アンバランスの発生源でありまた本来のアンバランスの補正対象であるディスクDに対し、それでもなおインシュレータで柔支持された可動部分はディスクDに加え、ヨーク部材10、ターンテーブル部13等の回転部分から保持部材2、ステータ7等の非回転部分をあわせたものとなっており、各球体に比べて重量は大きく、バランス調整しずらいものとなっている。結果として、上述の再現性については著しい改善はみられず、精度の大幅な向上は実現に至らなかった。この他に、各球体の移動を円滑にするために、球体及びその当接面(収容部内)の表面の摩擦抵抗を下げるようにすることも検討したが、いずれも所望の精度は得られなかった。
【0012】
この発明が解決しようとする課題は、バランス補正装置自体の軽量化を図ってより再現性の良好な精度の高いバランス補正を行えるようにすることにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記した課題を解決するために、本発明のバランス補正装置は、第1の部材と、前記第1の部材との間に環状空間から成る移動路を形成する第2の部材と、前記移動路に少なくとも周方向に移動自在に収容されたバランス体とを備えて成り、前記第1、第2の部材は、弾性体により、回転部材に対して径方向に揺動自在に、かつ前記回転部材に連動して回転するように支持されることを特徴としている。
【0014】
このようにすれば、バランス体の収容用の移動路を形成する第1、第2の部材を、弾性体により回転部材に対して径方向に揺動自在に支持する構成であるため、これら両部材及び移動路内のバランス体から成るバランス補正装置を軽量化することができる。そして、バランス補正装置だけを容易に軽量化することができ、しかも回転部材に対してバランス補正装置をいわゆる柔支持することで、従来のようにモータ等の回転装置に一体的に組み込まれる構成のバランス補正装置の場合に比べて、微少な振動に対しても敏感に反応してより小さいアンバランス量を補正することが可能になる。
【0015】
このとき、使用する弾性体とは、例えばゴム等から成る環状の中空体や中実体が好ましく、断面形状は円形、楕円形のほか矩形であってもよい。そのため、一般的なOリングを手軽に用いることもできる。また、弾性体は、複数個のゴム片を所定間隔で配置して成るものでもよい。
【0016】
また、本発明のバランス補正装置は、前記第1、第2の部材は、複数の前記弾性体により、前記回転部材の回転軸方向の複数箇所において支持されることを特徴としている。
【0017】
このような構成によれば、回転部材の回転軸方向の複数箇所において第1、第2の部材を支持するため、第1、第2の部材の支持をより安定して行うことができる。
【0018】
また、本発明のバランス補正装置では、前記弾性体は、前記回転部材の外周面または内周面と、前記第1または第2の部材の少なくとも一方の内周面または外周面との間に介在されることを特徴としている。
【0019】
こうすることで、第1、第2の部材を回転部材に対して径方向に揺動自在に支持することができ、しかも弾性体と第1、材2の部材及び回転部材との間の摩擦力により、第1、材2の部材を回転部材に連動して回転するように支持することができる。
【0020】
また、本発明のバランス補正装置は、前記弾性体が、リング状を成すことを特徴としている。
【0021】
この場合、弾性体がリング状を成すことで、その取り扱いが非常に容易になり、組立作業の効率化を図ることが可能になる。
【0022】
また、本発明のバランス補正装置を備える回転装置は、静止部材及びこの静止部材に対して回転自在に設けられた回転部材とにより構成され、第1の部材と、前記第1の部材との間に環状空間から成る移動路を形成する第2の部材と、前記移動路に少なくとも周方向に移動自在に収容されたバランス体とから成るバランス補正装置を備え、前記回転部材に対して径方向に揺動自在に、かつ前記回転部材に連動して回転するように前記第1、第2の部材を支持する弾性体を有することを特徴としている。尚、回転装置の例としては、記録ディスク駆動用モータのような小型精密モータが挙げられる。
【0023】
このような構成によれば、バランス補正装置のみを軽量化することができ、しかもモータ等の回転装置の回転部材に対してバランス補正装置をいわゆる柔支持することで、微少な振動に対しても敏感に反応してより小さいアンバランス量を補正することが可能な回転装置を提供することができる。
【0024】
また、本発明のバランス補正装置を備える回転装置は、複数の前記弾性体により、前記回転部材の回転軸方向の複数箇所において前記第1、第2の部材を支持していることを特徴としている。
【0025】
こうすると、第1、第2の部材の支持をより安定して行うことができ、より小さいアンバランス量を補正することが可能な回転装置を提供することができる。
【0026】
また、本発明のバランス補正装置を備える回転装置では、前記弾性体は、前記回転部材の外周面または内周面と、前記第1または第2の部材の少なくとも一方の内周面または外周面との間に介在されていることを特徴としている。
【0027】
こうすることで、第1、第2の部材を回転部材に対して径方向に揺動自在に支持することができ、しかも弾性体と第1、材2の部材及び回転部材との間の摩擦力により、第1、材2の部材を回転部材に連動して回転するように支持することができ、より小さいアンバランス量を補正することが可能な回転装置を提供することができる。
【0028】
また、本発明のバランス補正装置を備える回転装置は、前記弾性体が、リング状を成すことを特徴としている。
【0029】
この場合、弾性体がリング状を成すことで、その取り扱いが非常に容易になり、組立作業の効率化を図ることが可能で、しかもより小さいアンバランス量を補正することが可能な回転装置を提供することができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
この発明の一実施形態について図1を参照して説明する。尚、本実施形態はバランス補正装置を備えた回転装置としての記録ディスク駆動用モータの例であり、図1はその断面図である。
【0031】
図1において、21はシャーシ等の固定部材、22は固定部材21に形成された開口23に下端部が嵌着されたほぼ円筒状を成す静止部材としての保持部材、24は保持部材22の底面開口部を閉塞する閉塞板、25は閉塞板24上に載置されて保持部材22内の底部に配設されたスラスト受、26は滑り軸受であり、保持部材22の内側に嵌着されている。
【0032】
更に図1において、28は静止部材としてのステータであり、保持部材22の外側に嵌着されたコア28aと、このコア28aに巻装された巻線28bとにより構成されている。29は滑り軸受26に嵌入されその下端がスラスト受25に当接し上端部が保持部材22の上方に突出して配設されたシャフト、30は回転部材としてのバックアイアンである。
【0033】
このバックアイアン30は、鉄等の磁性材から成り、ほぼ円板状の基部30aと、この基部30aの周縁に下方に垂下して一体形成された垂下部30bとにより構成され、その基部30aの中央のボス部30cにシャフト29が貫通して嵌入されている。更に、基部30aの周縁部分には、バックアイアン30の内側に凹陥して段差部30dが形成されている。
【0034】
また図1において、32はバックアイアン30の垂下部30bの内側に嵌入されステータ28に相対向する位置に配設された駆動用マグネット、33は中央のボス部の透孔にシャフト29が嵌入することでシャフト29の上端に固着された小円盤状の支持部材、34は第1の部材としてのターンテーブル、35は断面コ字状を有する第2の部材としての環状樋である。
【0035】
この第1の部材としてのターンテーブル34は、中央部にシャフト29の径よりも大なる口径の透孔34aを有する円径の基部34bと、透孔34aの周りに上方に膨出して一体形成された円筒状のボス部34cと、基部34bの下面の周縁寄りに下方に垂下して一体形成された垂下部34dとにより構成されている。ここで、ボス部34cの内径は支持部材33の外径よりも大きく設定されている。
【0036】
そして、基部34bの下面側であって透孔34aの周縁部はやや肉厚に形成され、この肉厚部と垂下部34dとの間に、環状樋35がその開口を上にして嵌挿されており、これによって環状樋35とターンテーブル34の基部34bの下面との間に断面矩形の環状空間から成る移動路36が形成され、この移動路36内にバランス体として複数個の鋼球等から成る球体37が収容され、各球体37はこの移動路36内を径方向及び周方向に移動する。尚、球体37が移動路36を占有する範囲は、移動路36のほぼ半周程度であることが望ましい。
【0037】
更に図1において、39は支持部材33に接触することなくターンテーブル34のボス部34cの内側に嵌挿された鉄等の磁性材から成るリング状のバックヨーク、40はバックヨーク39上にボス部34cの上面とほぼ同一面を形成するように配設されたクランプマグネット、41はディスクラバーであり、ターンテーブル34の基部34bの上面周縁部に設けられ、このディスクラバー41上にCD−ROM等の記録ディスクが載置され、クランプマグネット40により図示しない駆動装置側のディスク押圧手段が磁気吸引されて記録ディスクが固定されるようになっている。
【0038】
また図1において、43はターンテーブル34のボス部34cの内周面と支持部材33の外周面との間に介在された断面矩形のゴム等から成る環状の第1の弾性体、44はターンテーブル34の垂下部34dの下端内周面とバックアイアン30の段差部30dの外周面との間に介在された断面円形のゴム等から成る環状の第2の弾性体、45は支持部材33の上面とバックヨーク39の下面との間に介在された弾性を有するゴム等から成るリング状の第1の摺接体、46は弾性を有するゴム等から成るリング状の第2の摺接体であり、バックアイアン30の基部30aの上面と環状樋35の下面との間に介在されている。
【0039】
そして、ターンテーブル34、環状樋35、移動路36及び各球体37によりバランス補正装置48が構成され、第1及び第2の弾性体43、44により、バランス補正装置48が径方向に揺動自在に支持される。これら両弾性体43、44及び両摺接体45、46による摩擦力によって、バランス補正装置48がモータのシャフト29やバックアイアン30等の回転部材にすべることなく連動して回転するように支持されている。
【0040】
次に、記録ディスクであるCD−ROMを搭載したときのモータの動作について説明する。
【0041】
まず、記録ディスクの表面の印刷等によりモータにアンバランスが生じている場合には、モータの始動後、記録ディスクを搭載したモータの固有振動数に共振する共振回転数を超えるまでの間、各球体37は移動路36内をそれぞれ回転中心とディスクの重心の延長線上に移動しようとし、より振動を悪化させてしまう。そのため、モータはアンバランスの回転状態にある。
【0042】
そして、共振回転数を越えた回転数では、記録ディスクを搭載したモータにおいて、回転中心に対してアンバランスを相殺する位置に移動路36に収容された各球体37がそれぞれ配置する。このとき、記録ディスクを含めた回転部材のアンバランス量はゼロとなり、モータの回転軸に不要な遠心力は作用せず、しかも回転中心、シャフト29の中心線、モータの重心が一致するため、回転部材は安定して回転する。
【0043】
このとき、バランス補正装置48はユニット化されモータの各構成部材から切り離された構造であるため、アンバランスの発生源であるディスク部に特化するようにしてバランス調整することが可能であり、しかもバランス補正装置48は軽量化できるのでバランス調整感度は高くなり、従来のようにモータ等の回転装置に一体的に組み込まれる構成のバランス補正装置の場合に比べて、微少な振動に対しても敏感に反応してより小さいアンバランス量を補正することが可能になる。例えば、CD−ROM(3.5インチサイズ)を数1000rpmの回転数で回転させた場合に、従来1g・cm程度までのアンバランス量しか補正できなかったものが、上記したような構成によると、それよりも小さい0.2g・cm程度までのアンバランス量を補正できることが検証されている。
【0044】
その理由として、バランス補正装置48はアンバランスの発生源であるディスクに特化してバランス修正できるように記録ディスクとバランス補正装置48のみで一体化させた構造をしており、アンバランスのある位置(ここでは記録ディスク)でバランス修正を行えるのでバランス感度が向上していること、また、従来のようにバランス補正装置が記録ディスクを含む回転部材のすべてに設けられている場合に比べてバランス修正を要する部分(ここでは記録ディスク)だけに設けられるので、そのバランス調整する対象部は軽量化されてバランス調整の感度が高くなり、各球体37は敏感に反応するようになったこと、更にはアンバランスに対してバランス補正装置48が弾性体で支持されているので、この装置本体が径方向に揺動することで各球体37がより敏感に移動してバランス修正機能が有効に作用したためであると推測される。
【0045】
ところで、記録ディスク表面の印刷等に拘わらずモータがバランスしている正常な場合には、モータの始動後記録ディスクを搭載したモータの固有振動数に共振する共振回転数を超えるまでの間は、上記の場合と同様に各球体37は振動を拡大するように一ヶ所に集中するため、モータは不安定な回転となる。しかし、共振回転数を超える回転数では、各球体37は移動路36内を例えばほぼ等間隔になるなど、各球体37自体がアンバランスを発生することがない位置に移動分布し、モータは安定して回転する。
【0046】
従って、上記した実施形態によれば、バランス補正装置48だけを容易に軽量化することができ、しかもモータの回転部材に対してバランス補正装置48をいわゆる柔支持することで、従来のようにモータ等の回転装置に一体的に組み込まれたバランス補正装置の場合に比べて、微少な振動に対しても敏感に反応してより小さいアンバランス量を補正することが可能になり、再現性が良好となる。
【0047】
また、第1及び第2の弾性体43、44により回転軸方向の複数箇所においてバランス補正装置48を支持しているため、バランス補正装置48の支持をより安定して行うことができる。
【0048】
なお、上記した実施形態では、第1及び第2の弾性体43、44により回転軸方向の複数箇所においてバランス補正装置48を径方向に揺動自在に支持し、かつ第1、第2の摺接体45、46による摩擦力によって、バランス補正装置48がモータのバックアイアン30等の回転部材に連動して回転するように支持した場合について説明したが、両弾性体43、44による摩擦力によって、モータのバックアイアン30等の回転部材に連動してバランス補正装置48が回転するようにバランス補正装置48を支持可能であれば、両摺接体45、46を設ける必要はない。
【0049】
また、一方の弾性体だけでバランス補正装置48を径方向に揺動自在に、かつ回転部材に連動して回転するように支持することができれば、弾性体は一方のみ設けるだけでよい。
【0050】
更に、上記した実施形態では、バランス補正装置を備えた回転装置としての記録ディスク駆動用モータを例として説明したが、バランス補正装置48がユニット化されているため、バランス補正装置48単体でもこの発明は成立する。但しそのときのバランス補正装置の構成は、図1に示すものに限定されるものではなく、少なくとも第1、第2の部材から成り、これら両部材によりバランス体を収容する移動路が形成されて、この補正装置自体が被取付部に対して弾性体を介在する等して柔支持されるようにすればよい。
【0051】
また、上記した実施形態では移動路を1つとした場合について説明したが、例えば図1の移動路36を仕切部材により仕切るなどして、複数の移動路を形成しこれら各移動路に球体等のバランス体を収容するようにしてもよい。このとき、各移動路の直径や数、更には各移動路に収容する各球体の径や個数は、モータ等の回転装置の形状や補正すべきアンバランス量に応じて適宜設定すればよい。例えば、内周側の移動路に質量の小さいものを配置して外周側の移動路に質量の大きいものを配置したり、移動路の幅を変更して球体の可動量を変えたりしてもよく、こうすることでアンバランスの補正精度をいっそう向上することが可能になる。
【0052】
更に、各球体37には、耐久性や使用環境等を考慮するとともにアンバランスの補正精度の向上を図るために、上記した鋼球のほかセラミック、ゴム、プラスチック等の比重の小さい非金属材を用いてもよい。
【0053】
また、金属製の各球体37の表面に軟質材を配するようにしてもよく、これにより球体同士が衝突しても衝突音が発生しにくくなり、衝突に伴う騒音を防止することができる。例えば、鋼球を樹脂コーティングした二重構造にしたり、ゴム球であればゴム自体が軟質材となる。
【0054】
更に、上記した実施形態では、バランス体を球体37とした場合について説明したが、バランス体は必ずしも球体である必要はなく、他の転動体であったり液体等の流動体や半流動体等であってもよく、要するにバランス体が隣接する移動路に侵入しない構造にし、かつバランス体が各々の移動路を周方向に移動できるようにすればよく、これにより上記した実施形態と同等の効果を得ることができるのは勿論のこと、球体の場合のような衝突音が発生することもなく静音型のモータの提供が可能になる。
【0055】
また、弾性体は、図1に示すものに限定されるものではなく、断面形状は円形や矩形のほか楕円形であってもよく、具体的には、一般のOリングを手軽に用いることが可能である。また、弾性体は、複数個のゴム片を所定間隔で配置して成るものでもよい。
【0056】
更に、上記した実施形態では、シャフト29が回転するタイプのモータにこの発明を適用した場合について説明したが、その他にシャフトが固定されたタイプのモータにもこの発明を適用することができるのは勿論であり、要するに回転部材を有し、その回転部材に対して弾性体を介して第1、第2の部材を支持することが可能なものであればよい。
【0057】
また、この発明は、上記した実施形態のようにモータに対して適用できるのに留まらず、回転部材を有し回転時にアンバランスを生じ得る全ての回転装置に対しても適用することが可能である。
【0058】
更に、この発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。
【0059】
【発明の効果】
以上のように、請求項1に記載の発明によれば、バランス補正装置だけを容易に軽量化することができ、しかも回転部材に対してバランス補正装置をいわゆる柔支持するため、従来のようにモータ等の回転装置に一体的に組み込まれたバランス補正装置の場合に比べて、微少な振動に対しても敏感に反応してより小さいアンバランス量を補正することが可能になり、再現性が良好となる。る。
【0060】
また、請求項2に記載の発明によれば、回転部材の回転軸方向の複数箇所において第1、第2の部材を支持するため、第1、第2の部材の支持をより安定して行うことができる。
【0061】
また、請求項3に記載の発明によれば、第1、第2の部材を回転部材に対して径方向に揺動自在に支持することができ、しかも弾性体と第1、材2の部材及び回転部材との間の摩擦力により、第1、材2の部材を回転部材に連動して回転するように支持することができる。
【0062】
また、請求項4に記載の発明によれば、弾性体がリング状を成すことで、その取り扱いが非常に容易になり、組立作業の効率化を図ることが可能になる。
【0063】
また、請求項5に記載の発明によれば、微少な振動に対しても敏感に反応してより小さいアンバランス量を補正することが可能で再現性の良好な回転装置を提供することができる。
【0064】
また、請求項6に記載の発明によれば、第1、第2の部材の支持をより安定して行うことができ、より小さいアンバランス量を補正することが可能な回転装置を提供することができる。
【0065】
また、請求項7に記載の発明によれば、第1、材2の部材を回転部材に連動して回転するように支持することができ、より小さいアンバランス量を補正することが可能な回転装置を提供することができる。
【0066】
また、請求項8に記載の発明によれば、取り扱いが非常に容易になり、組立作業の効率化を図ることが可能で、しかもより小さいアンバランス量を補正することが可能な回転装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態の断面図である。
【図2】従来例の断面図である。
【符号の説明】
22 保持部材(静止部材)
28 ステータ(静止部材)
30 バックアイアン(回転部材)
34 ターンテーブル(第1の部材)
35 環状樋(第2の部材)
36 移動路
37 球体(バランス体)
43 第1の弾性体
44 第2の弾性体
48 バランス補正装置
Claims (8)
- 第1の部材と、前記第1の部材との間に環状空間から成る移動路を形成する第2の部材と、前記移動路に少なくとも周方向に移動自在に収容されたバランス体とを備えて成り、
前記第1、第2の部材は、弾性体により、回転部材に対して径方向に揺動自在に、かつ前記回転部材に連動して回転するように支持されることを特徴とするバランス補正装置。 - 前記第1、第2の部材は、複数の前記弾性体により、前記回転部材の回転軸方向の複数箇所において支持されることを特徴とする請求項1に記載のバランス補正装置。
- 前記弾性体は、前記回転部材の外周面または内周面と、前記第1または第2の部材の少なくとも一方の内周面または外周面との間に介在されることを特徴とする請求項1に記載のバランス補正装置。
- 前記弾性体が、リング状を成すことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のバランス補正装置。
- 静止部材及びこの静止部材に対して回転自在に設けられた回転部材とにより構成され、
第1の部材と、前記第1の部材との間に環状空間から成る移動路を形成する第2の部材と、前記移動路に少なくとも周方向に移動自在に収容されたバランス体とから成るバランス補正装置を備え、前記回転部材に対して径方向に揺動自在に、かつ前記回転部材に連動して回転するように前記第1、第2の部材を支持する弾性体を有することを特徴とする回転装置。 - 複数の前記弾性体により、前記回転部材の回転軸方向の複数箇所において前記第1、第2の部材を支持していることを特徴とする請求項5に記載の回転装置。
- 前記弾性体は、前記回転部材の外周面または内周面と、前記第1または第2の部材の少なくとも一方の内周面または外周面との間に介在されていることを特徴とする請求項5に記載の回転装置。
- 前記弾性体が、リング状を成すことを特徴とする請求項5ないし7のいずれかに記載の回転装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP26569698A JP3688901B2 (ja) | 1998-09-03 | 1998-09-03 | バランス補正装置及びこれを備える回転装置 |
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