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JP2005218317A - 腸管出血性大腸菌の志賀毒素群遺伝子の検出試薬 - Google Patents

腸管出血性大腸菌の志賀毒素群遺伝子の検出試薬 Download PDF

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JP2005218317A JP2004026996A JP2004026996A JP2005218317A JP 2005218317 A JP2005218317 A JP 2005218317A JP 2004026996 A JP2004026996 A JP 2004026996A JP 2004026996 A JP2004026996 A JP 2004026996A JP 2005218317 A JP2005218317 A JP 2005218317A
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Abstract

【課題】 腸管出血性大腸菌(EHEC)の志賀毒素群遺伝子2型(stx2)の迅速かつ特異的な遺伝子検査試薬を構成するのに好適なオリゴヌクレオチドの組み合わせを提供すること。
【解決手段】 EHECのstx2 RNAに特異的かつ遺伝子型による変異のない位置にある塩基配列と相同的あるいは相補的な配列を有するプライマーを用いることにより、stx2 RNAのみを特異的に増幅させて検出する方法と、stx2 RNAの特定部位に結合するオリゴヌクレオチドによって、前記課題を解決する。
【選択図】 図4

Description

本発明は、臨床検査、公衆衛生、食品検査または食中毒検査における腸管出血性大腸菌の検出試薬に関するものである。
志賀毒素群(Shiga−toxin family:stx)は病原性大腸菌O157をはじめとする腸管出血性大腸菌(EHEC)が産生する強力な毒素である。EHECによる感染症の主な症状ははじめに水様便、その後激しい腹痛と血便を示す。また有症者の一部は溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳症へと重症化し、最悪の場合では死に至る例も報告されている。
EHECの血清型は60種類以上と非常に多彩であるが、検出頻度から見ると最も多いのはO157:H7である。またstxには抗原性の違いから大きく分けて1型(stx1)と2型(stx2)がある。
EHECの検出および同定を行なう方法としてO157抗原検査等が知られているが、EHECの遺伝子や該遺伝子に由来するRNA中の特定の配列を増幅した上で検出する方法が、感度、迅速性、および操作性の点で好適である。特に、一定温度で標的核酸を増幅する方法は検査装置の自動化という点においても好適である。
特開2002−253257号公報
EHECの検出および同定を行なう方法として、stx1およびstx2に由来するRNAを比較的低温(41℃)で特異的に増幅させる方法が報告されている(特開2002−253257号公報)。この方法では、stx1およびstx2に由来するRNAの特定配列を鋳型として、該特定配列に相補的な配列を有する第一のプライマーおよび該特定配列に相同的な配列を有する第二のプライマー(ここで第一または第二のプライマーのいずれか一方のプライマーは5’ 末端側にRNAポリメラーゼのプロモーター配列を付加した配列を有する)を用い、RNA依存性DNAポリメラーゼによりcDNAを生成することによりRNA−DNA2本鎖を形成し、リボヌクレアーゼH作用によりRNA−DNA2本鎖のRNAを分解して1本鎖DNAを生成し、該1本鎖DNAを鋳型としてDNA依存性DNAポリメラーゼにより前記RNA配列または前記RNA配列に相補的な配列からなるRNAを転写可能なプロモーター配列を有する2本鎖DNAを生成し、そして該2本鎖DNAがRNAポリメラーゼ存在下でRNA転写産物を生成し、該RNA転写産物が引き続き前記RNA依存性DNAポリメラーゼによるcDNA合成の鋳型となるようなRNA増幅工程を利用する。さらに、前記RNA増幅工程を、インターカレーター性蛍光色素で標識されたオリゴヌクレオチド存在下(ここで該オリゴヌクレオチドの配列はRNA転写産物の少なくとも一部の配列と相補的であり、該オリゴヌクレオチドがRNA転写産物と相補結合によって、複合体を形成していない場合と比較して蛍光特性が変化するものである)で実施することで、反応液の蛍光強度を測定する方法である。
しかしながら、上記方法は、感度および迅速性において以下の問題点を有する。すなわち、特開2002−253257号公報によれば、初期stx2 RNA量が102コピーの時の検出時間が約17分と、stx1 RNA検出試薬での検出時間(102 コピーのstx1 RNAを約14分で検出)と比較して遅い(実施例1参照)。また、上記方法のうち第二のプライマーには遺伝子型の違いにより塩基配列のミスマッチがあり、ミスマッチのある遺伝子型を保有するEHECは検出時間が遅れるか検出不能と考えられる(図1参照)。
そこで本発明は、遺伝子型の違いによらず迅速性および特異性に優れたstx2 RNA検出試薬を提供することを目的とするものである。
本願発明者らは迅速性および特異性に優れたEHECのstx2 RNA検出試薬を構築するにあたり、鋭意研究を重ね、オリゴヌクレオチドの位置を遺伝子型による変異のない箇所に設計することでミスマッチの問題を解決(図1参照)し、かつ、初期RNA量102コピーのstx2 RNAを約14分で検出が可能な試薬を構築した。
本発明は、試料中に存在するEHECの志賀毒素群遺伝子2型(stx2)の検出において利用するための検出試薬であって、
stx2遺伝子に由来するRNAの特定配列を鋳型として、該特定配列に相同的な配列を有する第一のプライマーおよび該特定配列に相補的な配列を有する第二のプライマー(ここで第一または第二のプライマーのいずれか一方のプライマーは5’ 末端側にRNAポリメラーゼのプロモーター配列を付加した配列を有する)を用い、RNA依存性DNAポリメラーゼによりcDNAを生成することによりRNA−DNA2本鎖を形成し、
リボヌクレアーゼH作用により該RNA−DNA2本鎖のRNAを分解して1本鎖DNAを生成し、
該1本鎖DNAを鋳型としてDNA依存性DNAポリメラーゼにより前記RNA配列または前記RNA配列に相補的な配列からなるRNAを転写可能なプロモーター配列を有する2本鎖DNAを生成し、そして
該2本鎖DNAがRNAポリメラーゼ存在下でRNA転写産物を生成し、該RNA転写産物が引き続き前記RNA依存性DNAポリメラーゼによるcDNA合成の鋳型となる、
といった段階を含んで成るRNA増幅工程を利用した検出法において利用するための検出試薬であり、
ここで該第一のプライマーとして配列番号1に示す配列のうち、少なくとも連続した10塩基からなるオリゴヌクレオチド、又は配列番号1に示す配列のうち、少なくとも連続した10塩基配列からなるオリゴヌクレオチドにおいて1もしくは数個のヌクレオチドが欠失、置換もしくは付加され且つ前記特定配列に相補的な配列に特異的に結合できるオリゴヌクレオチド、又は配列番号1に示す配列のうち、少なくとも連続した10塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと高ストリンジェント条件下でハイブリダイズし且つ前記特定配列に相補的な配列に特異的に結合できるオリゴヌクレオチド、該第二のプライマーとして配列番号2に示す配列のうち、少なくとも連続した10塩基からなるオリゴヌクレオチド、又は配列番号2に示す配列のうち、少なくとも連続した10塩基配列からなるオリゴヌクレオチドにおいて1もしくは数個のヌクレオチドが欠失、置換もしくは付加され且つ前記特定配列に特異的に結合できるオリゴヌクレオチド、又は配列番号2に示す配列のうち、少なくとも連続した10塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと高ストリンジェント条件下でハイブリダイズし且つ前記特定配列に特異的に結合できるオリゴヌクレオチド、を含むことを特徴とする検出試薬に関する。
高ストリンジェント条件とは、例えば以下の実施例に示すような、60mMのTris、17mMの塩化マグネシウム、100〜150mMの塩化カリウム、1mMのDTTの存在下、41〜44℃でのハイブリダイゼーション条件であってよい。
尚、stx2に由来するRNAに対して相補的であるRNAを検出の対象とする場合には、第一のプライマー及び第二のプライマーとして、それぞれ、それらの5’末端と3’末端が逆となるものと相補的なプライマーを用いればよい。
好ましくは、前記RNA増幅工程は前記標的RNAを前記特定配列の5’末端で切断する、該特定配列の5’末端に重複して隣接する領域に対して相補的な配列を有する切断用オリゴヌクレオチドの存在下で実施される。
好適な態様において、前記第一のプライマーは配列番号1の配列のオリゴヌクレオチドである。
好適な態様において、前記第二のプライマーは配列番号2の配列のオリゴヌクレオチドである。
更なる好適な態様において、前記第一のプライマーは配列番号1の配列のオリゴヌクレオチドであり、かつ前記第二のプライマーが配列番号2の配列のオリゴヌクレオチドである。
別の好適な態様において、前記RNA増幅工程はインターカレーター性蛍光色素で標識されたオリゴヌクレオチド存在下で実施され、反応液の蛍光強度を測定することによりEHECの検出が行われる。ここで該オリゴヌクレオチドの配列は前記RNA転写産物の少なくとも一部の配列と相補的であり、該オリゴヌクレオチドの該RNA転写産物との相補結合によって、複合体を形成していない場合と比較して蛍光特性が変化するものである。
好ましくは、前記インターカレーター性色素で標識されたオリゴヌクレオチドは配列番号3に示した少なくとも連続した10塩基以上からなる。以下、本発明を詳細に説明する。
本願発明に係る検出試薬を利用する検出法は腸管出血性大腸菌のstx2 RNAを従来の方法(特開2002−253257号公報)と比較し、遺伝子型の違いによらず迅速にかつ特異的に検出するのに有用である。
本発明において、第一および第二のプライマーは、それぞれ各配列番号として記載した塩基配列の全長を用いることができるが、特定核酸配列等への特異的な結合は10塩基程度あれば十分であるから、各配列の中の少なくとも連続した10塩基以上からなるオリゴヌクレオチドの組み合わせを使用しても良い。
本発明の増幅行程は、逆転写酵素およびRNAポリメラーゼの協奏的作用によって(逆転写酵素およびRNAポリメラーゼが協奏的に作用するような条件下で反応させ)stx2 RNA配列を増幅させるNASBA法、3SR法、TRC法(例えば特開2000−14400号公報参照)等を含む。ここで温度については特に制限はないが35〜50℃が好ましい。
上記本願発明の一態様において、標的RNAは、特定配列の5’末端で切断される必要がある。このように標的RNAを切断する方法としては、特定配列の5’末端に重複して隣接する領域に対して相補的な配列を有するオリゴヌクレオチド(切断用オリゴヌクレオチド)を添加することによって、標的RNAをリボヌクレアーゼH作用等により切断する方法が好ましい。ここで、重複する塩基数は5あるいは6塩基が特に望ましい。該切断用オリゴヌクレオチドは、3’末端側からの伸長反応を抑えるために、3’末端水酸基が化学的に修飾されたもの、例えばアミノ化等されているものを使用することが望ましい。
以上の核酸増幅方法で得られた増幅産物は既知の核酸検出方法で検出することができるが、好適な態様では前記核酸増幅をインターカレーター性蛍光色素で標識されたオリゴヌクレオチド存在下で実施し、反応液の蛍光特性の変化を測定することが望ましい。該オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチド中のリンにリンカーを介してインターカレーター性蛍光色素を結合させたもので、標的核酸(相補的核酸)と2本鎖を形成するとインターカレーター部分が2本鎖部分にインターカレートして蛍光特性が変化するため、分離分析を必要としないことを特徴とする(Ishiguroら、Nucleic Acids Res.24(24)、4992−4997(1996))。
該オリゴヌクレオチドが結合する配列は、stx2 RNAに特異的な配列のいずれであってもよく、特に限定はないが、配列番号3に示した配列中の少なくとも連続した10塩基からなる配列、あるいはその相補配列であることが望ましい。また、該オリゴヌクレオチドをプライマーとした伸長反応を抑えるために該オリゴヌクレオチドの3’末端の水酸基は、化学的に修飾することが望ましく、一例として特開2000−316587号公報に記載の方法が挙げられる。
これにより、EHECのstx2 RNAを、一チューブ内、一定温度、一段階で、迅速および高感度に増幅し、検出することが可能となり、自動化への適用も容易となる。
以下、本願発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
実施例1
特開2002−253257号公報に記載のオリゴヌクレオチドの組み合わせを用いて、腸管出血性大腸菌(EHEC)のstx1 RNAおよびstx2 RNAの様々なコピー数による検出を行なった。
(1) EHECのstx1 RNAの塩基配列228から1558(RNAの塩基番号はCalderwoodら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、84(13)、4364−4368(1997)、GenBank No.M16625に従った)を含む標準RNA1337塩基を試料とし、260 nmの紫外部吸収により定量後、RNA希釈液(10 mM Tris−塩酸緩衝液(pH 8.0)、1 mM EDTA、5 mM DTT、0.25 U/μL RNase inhibitor(タカラバイオ製))を用い105 コピー/5 μLから102 コピー/5 μLとなるよう希釈した。コントロール試験区(陰性)には希釈液のみを用いた。
(2) EHECのstx2 RNAの塩基配列125から1479(RNAの塩基番号はGenBank No.X07865に従った)を含む標準RNA1361塩基を試料とし、260 nmの紫外部吸収により定量後、RNA希釈液(10 mM Tris−塩酸緩衝液(pH 8.0)、1 mM EDTA、5 mM DTT、0.25 U/μL RNase inhibitor(タカラバイオ製))を用い105 コピー/5 μLから102 コピー/5 μLとなるよう希釈した。コントロール試験区(陰性)には希釈液のみを用いた。
(3) 以下の組成の反応液20 μLを0.5 mL容PCRチューブ(Gene Amp Thin−Walled Reaction Tubes、アプライドバイオシステム製)に分注し、これに上記RNA試料5 μLを添加した。なお、第一プライマー・第二プライマー・切断用オリゴヌクレオチドおよびインターカレーター性色素で標識されたオリゴヌクレオチドの組み合わせが表1に示す組み合わせになるよう溶液を調製した。
反応液の組成(各濃度は最終反応液量30 μLにおける濃度)
60 mM Tris−塩酸緩衝液(pH 8.6)
17 mM 塩化マグネシウム
100 mM(stx1用)または150 mM(stx2用) 塩化カリウム
6 U RNase inhibitor
1 mM DTT
各0.25 mMのdATP、dCTP、dGTP、dTTP
3.6 mM ITP
各3.0 mMのATP、CTP、GTP、UTP
0.16 μMの切断用オリゴヌクレオチド
1.0 μMの第一プライマー
1.0 μMの第二プライマー
25 nMのインターカレーター性色素で標識されたオリゴヌクレオチド
13% DMSO
容量調整用蒸留水
(3) 上記の反応液を44℃(stx1用)あるいは41℃(stx2用)で5分間保温後、以下の組成で、かつ、あらかじめ44℃(stx1用)あるいは41℃(stx2用)で2分間保温した酵素液5 μLを添加した。
酵素液の組成(各数値は最終反応液量30 μLにおける値)
2.0 % ソルビトール
3.6 μg 牛血清アルブミン
142 U T7RNAポリメラーゼ(インビトロジェン製)
6.4 U AMV逆転写酵素(ライフサイエンス製)
容量調整用蒸留水
(4) 引き続きPCRチューブを直接測定可能な温度調節機能付き蛍光分光光度計を用い、44℃(stx1用)あるいは41℃(stx2用)で保温して、励起波長470 nm、蛍光波長520 nmで、反応溶液を経時的に測定した。
酵素添加時の時刻を0分として、stx1及びstx2の試料の蛍光強度比(所定時刻の蛍光強度値÷バックグラウンドの蛍光強度値)の経時変化をそれぞれ図2(A)および(B)に示した。また、初期RNA量の対数値と立ち上がり時間(蛍光増加比が陰性の平均値に標準偏差の3倍を加えた値の1.2倍になるまでの時間)との関係の結果をstx1及びstx2の試料それぞれについて図3(C)および(D)に示した。なお、初期RNA量はstx1、stx2ともに102 コピー/試験から105 コピー/試験である。
図2より、stx1 RNAの102 コピーが約14分で、stx2 RNAの102コピーが約17分で検出された。この結果より、特開2002−253257号公報に記載したstx2 RNA検出用のオリゴヌクレオチドの組み合わせを用いるとstx1 RNA検出用と比較して検出時間が遅れることが示された。
Figure 2005218317
表1は本実験系で用いた第一プライマー・第二プライマー・切断用オリゴヌクレオチドおよびインターカレーター性色素で標識されたオリゴヌクレオチドの組み合わせを示す。stx2検出用オリゴヌクレオチドの組み合わせでの、EHECのstx2 RNAにおけるオリゴヌクレオチドの位置は図1に示している。切断用オリゴヌクレオチドの塩基配列のうち、3’末端の水酸基はアミノ化されている。第一プライマーの塩基配列のうち、5’末端側第1番目の「A」から第22番目の「A」までの領域はT7プロモーター領域であり、それに続く23番目の「G」から第28番目の「A」までの領域はエンハンサー配列である。インターカレーター性色素で標識されたオリゴヌクレオチドのうちYO−VT1−S−G(配列番号9)は5'末端側から6塩基目の「C」と7塩基目の「G」との間のリンに、YO−VT2−S−G(配列番号3)は5'末端から12番目の「T」と13番目の「A」との間のリンにそれぞれインターカレーター性色素が標識されており、また3'末端側の水酸基はグリコール基で修飾されている。
切断用オリゴヌクレオチド
VT1−5S(配列番号4)
VT2−5S(配列番号5)
第一プライマー
VT1−5F(配列番号6)
VT2−5F(配列番号7)
第二プライマー
VT1−6R(配列番号8)
VT2−7R(配列番号2)
インターカレーター性色素で標識されたオリゴヌクレオチド
YO−VT1−S−G(配列番号9)
YO−VT2−S−G(配列番号3)
実施例2
本願発明のオリゴヌクレオチドの組み合わせを用いてEHECのstx2 RNAの様々な初期コピー数における検出を行なった。
(1) 実施例1と同様のEHECのstx2 RNAをRNA希釈液(10mM Tris−HCl(pH8.0)、1 mM EDTA、5mM DTT、0.25 U/μL RNase inhibitor(タカラバイオ製))を用い、105 コピー/5μLから102 コピー/5μLまでとなるよう希釈した。コントロール試験区(陰性)には希釈液のみを用いた。
(2) 以下の組成の反応液20 μLをPCR用チューブ(容量0.5 mL;Gene Amp Thin−Walled Reaction Tubes、アプライドバイオシステム製)に分注し、これに上記RNA試料5 μLを添加した。
反応液の組成(各濃度は最終反応液量30 μLにおける濃度)
60 mM Tris−塩酸緩衝液(pH 8.6)
18 mM 塩化マグネシウム
100 mM 塩化カリウム
6 U RNase inhibitor
1 mM DTT
各0.25 mMのdATP、dCTP、dGTP、dTTP
3.6 mM ITP
各3.0 mMのATP、CTP、GTP、UTP
0.16 μMの切断用オリゴヌクレオチド(VT2−12S、配列番号10、3’末端の水酸基はアミノ化されている。)
1.0 μMの第一プライマー(VT2−12F、配列番号11)
1.0 μMの第二プライマー(VT2−7R、配列番号2)
25 nMのインターカレーター性色素で標識されたオリゴヌクレオチド(YO−VT2−S−G、配列番号3、5’末端から12番目の「T」と13番目の「A」との間のリンにインターカレーター性蛍光色素が標識されている。また3’末端の水酸基はグリコール基で修飾されている。)
13% DMSO
容量調整用蒸留水
(3) 上記の反応液を43℃で5分間保温後、以下の組成で、かつ、あらかじめ43℃で2分間保温した酵素液5 μLを添加した。
酵素液の組成(各濃度は最終反応液量30 μLにおける濃度)
2.0% ソルビトール
3.6 μg 牛血清アルブミン
142 U T7RNAポリメラーゼ(インビトロジェン製)
6.4 U AMV逆転写酵素(ライフサイエンス製)
容量調整用蒸留水
(4) 引き続きPCRチューブを直接測定可能な温度調節機能付き蛍光分光光度計を用い、43℃で保温して、励起波長470 nm、蛍光波長520 nmで、反応溶液を経時的に測定した。
酵素添加時の時刻を0分として、試料の蛍光強度比(所定時刻の蛍光強度値÷バックグラウンドの蛍光強度値)の経時変化を図4(A)に示した。また、初期RNA量の対数値と立ち上がり時間(蛍光増加比が陰性の平均値に標準偏差の3倍を加えた値の1.2倍になるまでの時間)との関係の結果を図4(B)に示した。なお、初期RNA量は102 コピー/試験から105 コピー/試験である。
図4より、102 コピーが約14分で検出され、従来の方法(特開2002−253257号公報および実施例1)と比較して迅速な検出が可能となっている。また、本願発明で使用したオリゴヌクレオチドはいずれも遺伝子型による変異のない箇所に設計している(図1参照)ため、特異性においても従来の方法(特開2002−253257号公報)よりも優れていると思われる。
以上の説明のように、本願発明の検出法は腸管出血性大腸菌のstx2 RNAを従来の方法(特開2002−253257号公報)と比較し、遺伝子型の違いによらず迅速にかつ特異的に検出するのに有用である。
本願発明のオリゴヌクレオチドは、配列表に記載した塩基配列(20塩基から23塩基)の物に限られず、これら配列中の少なくとも連続した10塩基以上からなるオリゴヌクレオチドであれば良い。これらは、比較的低温(好ましくは43℃)条件下で、プライマーまたはプローブの標的核酸への特異性を確保するためには10塩基程度の塩基配列があれば十分であることから明らかである。
実施例1および2で使用したstx2 RNA検出用の各オリゴヌクレオチドの結合位置、および3種類のstx2遺伝子(Itoら、Microbial Pathogenesis、8、47−60(1990)およびGenBank No.X07865参照)についてRNA増幅領域およびその周辺の塩基配列を示す。塩基配列のうち「−」で示した位置はGenBank No.X07865の塩基配列と同一であることを示す。本願発明で使用したオリゴヌクレオチドはいずれも遺伝子型による変異のない箇所に設計した。 実施例1で行なったstx1初期RNA量102 コピー/試験から105コピー/試験において、反応時間とRNAの生成とともに増大する蛍光強度比のグラフ(A)、およびstx2 初期RNA量102 コピー/試験から105 コピー/試験において、反応時間とRNAの生成とともに増大する蛍光強度比のグラフ(B)を示す。Negaとは、RNA試料の代わりに希釈液のみを用いたサンプルのことである。stx1 RNAの102 コピーが約14分で、stx2 RNAの102 コピーが約17分でそれぞれ検出され、stx2 RNAの検出時間がstx1 RNAの検出時間と比較し遅れていることが示された。 実施例1で行なったstx1初期RNA量102 コピー/試験から105コピー/試験において、初期RNA量の対数値と立ち上がり時間との間で得られた検量線(C)、およびstx2 初期RNA量102 コピー/試験から105 コピー/試験において、初期RNA量の対数値と立ち上がり時間との間で得られた検量線(D)を示す。 実施例2で行なったstx2初期RNA量102 コピー/試験から105 コピー/試験において、反応時間とRNAの生成とともに増大する蛍光強度比のグラフ(A)と初期RNA量の対数値と立ち上がり時間との間で得られた検量線(B)である。Negaとは、RNA試料の代わりに希釈液のみを用いたサンプルのことである。stx2 RNAの102 コピーが約14分で検出され、従来の方法(特開2002−253257号公報)と比較して検出時間が早くなったことが示された。

Claims (6)

  1. 試料中に存在する腸管出血性大腸菌の志賀毒素群遺伝子2型(stx2)の検出において利用するための検出試薬であって、
    stx2に由来するRNAの特定配列を鋳型として、該特定配列に相同的な配列を有する第一のプライマーおよび該特定配列に相補的な配列を有する第二のプライマーを用い、RNA依存性DNAポリメラーゼによりcDNAを生成することによりRNA−DNA2本鎖を形成し、ここで該第一または第二のプライマーのいずれか一方のプライマーは5’ 末端側にRNAポリメラーゼのプロモーター配列を付加した配列を有するものであり、
    リボヌクレアーゼH作用により該RNA−DNA2本鎖のRNAを分解して1本鎖DNAを生成し、
    該1本鎖DNAを鋳型としてDNA依存性DNAポリメラーゼにより前記RNAの特定配列または前記RNAの特定配列に相補的な配列からなるRNAを転写可能なプロモーター配列を有する2本鎖DNAを生成し、そして
    該2本鎖DNAがRNAポリメラーゼ存在下でRNA転写産物を生成し、該RNA転写産物が引き続き前記RNA依存性DNAポリメラーゼによるcDNA合成の鋳型となる、
    といった段階を含んで成るRNA増幅工程を利用した検出法において利用するための検出試薬であり、ここで該第一のプライマーとして配列番号1に示す配列のうち、少なくとも連続した10塩基からなるオリゴヌクレオチド、又は配列番号1に示す配列のうち、少なくとも連続した10塩基配列からなるオリゴヌクレオチドにおいて1もしくは数個のヌクレオチドが欠失、置換もしくは付加され且つ前記特定配列に相補的な配列に特異的に結合できるオリゴヌクレオチド、該第二のプライマーとして配列番号2に示す配列のうち、少なくとも連続した10塩基からなるオリゴヌクレオチド、又は配列番号2に示す配列のうち、少なくとも連続した10塩基配列からなるオリゴヌクレオチドにおいて1もしくは数個のヌクレオチドが欠失、置換もしくは付加され且つ前記特定配列に特異的に結合できるオリゴヌクレオチド、を含むことを特徴とする、検出試薬。
  2. 前記第一のプライマーが配列番号1の配列のオリゴヌクレオチドであることを特徴とする、請求項1記載の検出試薬。
  3. 前記第二のプライマーが配列番号2の配列のオリゴヌクレオチドであることを特徴とする、請求項1記載の検出試薬。
  4. 前記第一のプライマーが配列番号1の配列のオリゴヌクレオチドで、前記第二のプライマーが配列番号2の配列のオリゴヌクレオチドであることを特徴とする、請求項1の検出試薬。
  5. 前記RNA増幅工程がインターカレーター性蛍光色素で標識されたオリゴヌクレオチド存在下で実施され、反応液の蛍光強度を測定することにより腸管出血性大腸菌の検出が行われ、ここで該オリゴヌクレオチドの配列はRNA転写産物の少なくとも一部の配列と相補的であり、該オリゴヌクレオチドがRNA転写産物と相補結合によって、複合体を形成していない場合と比較して蛍光特性が変化するものである、請求項1〜4のいずれか1項記載の検出試薬。
  6. 前記インターカレーター性色素で標識されたオリゴヌクレオチドが配列番号3に示した少なくとも連続した10塩基以上からなることを特徴とする、請求項5記載の検出試薬。
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