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JP4701532B2 - Hiv−1rnaの増幅および検出法 - Google Patents

Hiv−1rnaの増幅および検出法 Download PDF

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JP4701532B2 JP2001129210A JP2001129210A JP4701532B2 JP 4701532 B2 JP4701532 B2 JP 4701532B2 JP 2001129210 A JP2001129210 A JP 2001129210A JP 2001129210 A JP2001129210 A JP 2001129210A JP 4701532 B2 JP4701532 B2 JP 4701532B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、臨床検査、診断におけるHIV−1 RNAの増幅および検出用のオリゴヌクレオチドに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ヒト免疫不全ウイルス(HIV:Human Immunodeficiency Virus)はヒト後天性免疫不全症候群(AIDS:AcquiredImmunodeficiency Syndrome)の病原体である。HIVには、全世界に広がっているHIV−1、アフリカ西海岸を中心に流行しているHIV−2というサブタイプが知られている。HIV−2の塩基配列は、サル免疫不全ウイルス(SIV:Simian Immunodeficiency Virus)に近く、人畜共通の感染の可能性が考えられる。しかし、一般にHIV−2感染の臨床症状は、HIV−1感染のそれに比べて軽症なことが多い。
【0003】
HIV−1に感染するとHIV−1の構造蛋白や調節蛋白に対する抗体産生が誘導される。HIV−1は、T細胞のうち、CD4+リンパ球を主要な標的免疫細胞とする。その結果、免疫システムに多様な異常が発生し、HIV−1感染が進行すれば、B細胞が刺激されて高γグロブリン血症が起こり、自己抗体や免疫複合体が出現する。さらに白血球や血小板の減少が顕著になる。HIV−1感染による免疫不全が高度になると、結核やニューモシスチス・カリニ肺炎などの日和見感染症を合併し、AIDS発症と診断される。
【0004】
HIV−1感染の診断には、ウイルス抗原に対して抗体が反応すれば着色するEIA(Enzymo−Immuno Assay)法が利用できる。疑似陽性の場合にはウエスタンブロット法と呼ばれる、ウイルス粒子の諸抗原を電気泳動したブロットに血清を加えて抗体が特定のウイルス抗原に反応すれば、陽性と確定診断する。ただし、このような抗体を検出する方法では抗体が産生される前の感染初期の段階での診断は不可能である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、従来法では感染初期の診断が不可能なことや、複雑な操作と長時間を要し、また短時間で試料中に存在する極微量のHIV−1を検出することは困難であり、より迅速かつ高感度な検出法の出現が望まれている。特にHIV−1 RNAを定量することは病態の進行や抗HIV薬の薬効を知る上では重要である。さらには、検査をより簡便にするためには、自動化された検査装置の開発が望まれている。
【0006】
検出を高感度で行うためには、検出および同定しようとする遺伝子や該遺伝子に由来するRNA中の特定の配列を増幅した上で検出することが好適である。HIV−1ウイルスのようにゲノム核酸がRNAである場合、特定配列の増幅法としては、逆転写―ポリメレースチェインリアクション(RT−PCR)法が知られている。この方法は、逆転写工程で標的RNAのcDNAを合成し、引き続いてcDNAの特定配列の両末端部に相補的および相同な一組のプライマー(アンチセンスプライマーは逆転写工程と共用でよい)と熱耐性DNAポリメレース存在下で、熱変性、プライマー・アニール、伸長反応からなるサイクルを繰り返し行うことによって特定DNA配列を増幅する方法である。
【0007】
しかし、RT−PCR法は、2段階の操作(逆転写工程およびPCR工程)、および、急激な昇温・降温を繰り返す煩雑な操作が必要であり、またそのことが自動化への障害として挙げられる。
【0008】
特定RNA配列の増幅法としては、逆転写酵素およびRNAポリメレースの協奏的作用によって特定RNA配列を増幅するNASBA法や3SR法等が知られている。この方法は、標的RNAを鋳型とし、プロモーター配列を含むプライマー、逆転写酵素、及びリボヌクレエースHにより、プロモーター配列を含む2本鎖DNAを合成し、該2本鎖DNAを鋳型としてRNAポリメレースにより、標的RNAの特定塩基配列を含むRNAを合成し、該RNAが引き続きプロモーター配列を含む2本鎖DNA合成の鋳型となる連鎖反応を行うものである。このようにNASBA法や3SR法は一定温度での核酸増幅が可能であり、自動化へ適している方法だと考えられる。
【0009】
しかし、これらの増幅法は比較的低温(例えば41℃)で反応を行うために、標的RNAが分子内構造を形成し、プライマーの結合を阻害し、反応効率を低下させる可能性が考えられる。したがって、増幅反応の前に標的RNAの熱変性を行うことで、標的RNAの分子内構造を壊し、プライマーの結合効率を向上させるための操作が必要であった。
【0010】
そこで本願発明は、比較的低温かつ一定温度(35℃〜50℃、好ましくは41℃)で、HIV−1のゲノムRNAの分子内構造フリー領域に対して結合するオリゴヌクレオチドを、核酸増幅法で使用されるオリゴヌクレオチドプライマーとして提供することで、それを利用した簡便、迅速かつ高感度なHIV−1 RNAの増幅および検出方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するためになされた本願請求項1の発明は、試料中に存在するHIV−1に由来するRNAの特定配列を鋳型として、該特定配列に相補的な配列を有する第一のプライマーおよび該特定配列に相同的な配列を有する第二のプライマー(ここで一方のプライマーは、5’側にRNAポリメレースのプロモーター配列を付加した配列を有するプライマーである)を用い、RNA依存性DNAポリメレースによりcDNAを合成し、リボヌクレエースHによってRNA・DNA二本鎖のRNAを分解して1本鎖DNAを生成し、該1本鎖DNAを鋳型としてDNA依存性DNAポリメレースにより、前記特定配列または前記特定配列に相補的な配列からなるRNAを転写可能なプロモーター配列を有する2本鎖DNAを生成し、そして該2本鎖DNAがRNAポリメレース存在下でRNA転写産物を生成し、該RNA転写産物が引き続き前記RNA依存性DNAポリメレースによるcDNA合成の鋳型となるようなRNA増幅工程において、第一のプライマーとして、配列番号1から配列番号7のいずれかからなるオリゴヌクレオチドが利用され、第二のプライマーとして、配列番号8から配列番号20のいずれかからなるオリゴヌクレオチドが利用されることを特徴とする、HIV−1由来のRNA増幅工程である。
【0012】
本願請求項2の発明は、請求項1の発明に係わり、前記特定配列と重複(1から10塩基)して5’末端側に隣接する領域に対して相補的な配列を有する第三のオリゴヌクレオチドを添加し、前記HIV−1由来のRNAを特定配列の5’末端領域で切断(リボヌクレエースHによる)して核酸増幅初期の鋳型とすることを含み、第一のプライマーとして、配列番号1から配列番号7のいずれかからなるオリゴヌクレオチドが利用され、
(1)第二のプライマーとして、配列番号8からなるオリゴヌクレオチドを利用した場合には、第三のオリゴヌクレオチドとして、配列番号21と配列番号22のいずれかからなるオリゴヌクレオチドが利用され、
(2)第二のプライマーとして、配列番号9からなるオリゴヌクレオチドを利用した場合には、第三のオリゴヌクレオチドとして、配列番号22から配列番号26のいずれかからなるオリゴヌクレオチドが利用され、
(3)第二のプライマーとして、配列番号10からなるオリゴヌクレオチドを利用した場合には、第三のオリゴヌクレオチドとして、配列番号22から配列番号28のいずれかからなるオリゴヌクレオチドが利用され、
(4)第二のプライマーとして、配列番号11からなるオリゴヌクレオチドを利用した場合には、第三のオリゴヌクレオチドとして、配列番号22から配列番号29のいずれかからなるオリゴヌクレオチドが利用され、
(5)第二のプライマーとして、配列番号12からなるオリゴヌクレオチドを利用した場合には、第三のオリゴヌクレオチドとして、配列番号22から配列番号29のいずれかからなるオリゴヌクレオチドが利用され、
(6)第二のプライマーとして、配列番号13からなるオリゴヌクレオチドを利用した場合には、第三のオリゴヌクレオチドとして、配列番号23から配列番号30のいずれかからなるオリゴヌクレオチドが利用され、
(7)第二のプライマーとして、配列番号14からなるオリゴヌクレオチドを利用した場合には、第三のオリゴヌクレオチドとして、配列番号23から配列番号30のいずれかからなるオリゴヌクレオチドが利用され、
(8)第二のプライマーとして、配列番号15からなるオリゴヌクレオチドを利用した場合には、第三のオリゴヌクレオチドとして、配列番号24から配列番号30のいずれかからなるオリゴヌクレオチドが利用され、
(9)第二のプライマーとして、配列番号16からなるオリゴヌクレオチドを利用した場合には、第三のオリゴヌクレオチドとして、配列番号25から配列番号30のいずれかからなるオリゴヌクレオチドが利用され、
(10)第二のプライマーとして、配列番号17からなるオリゴヌクレオチドを利用した場合には、第三のオリゴヌクレオチドとして、配列番号27から配列番号31のいずれかからなるオリゴヌクレオチドが利用され、
(11)第二のプライマーとして、配列番号18からなるオリゴヌクレオチドを利用した場合には、第三のオリゴヌクレオチドとして、配列番号31と配列番号32のいずれかからなるオリゴヌクレオチドが利用され、
(12)第二のプライマーとして、配列番号19からなるオリゴヌクレオチドを利用した場合には、第三のオリゴヌクレオチドとして、配列番号32と配列番号33のいずれかからなるオリゴヌクレオチドが利用され、又は、
(13)第二のプライマーとして、配列番号20からなるオリゴヌクレオチドを利用した場合には、第三のオリゴヌクレオチドとして、配列番号33からなるオリゴヌクレオチドが利用されることを特徴とする、HIV−1由来のRNAの増幅工程である。
【0013】
本願請求項3の発明は、請求項1、2のいずれかの増幅工程を、増幅により生じるRNA転写産物に特異的に結合可能であり、かつ、インターカレーター性蛍光色素で標識されたオリゴヌクレオチドプローブ(ただし、前記該標識されたオリゴヌクレオチドは、前記第一のプライマーおよび第二のプライマーとは異なる配列である)存在下で実施し、反応液の蛍光特性の変化を測定することを特徴とする、HIV−1の検出工程である。
【0014】
本願請求項4の発明は、請求項3の発明に係わり、前記オリゴヌクレオチドプローブが、前記RNA転写産物の少なくとも一部の配列と相補結合するように設計され、複合体を形成していない場合と比較して蛍光特性が変化するものであることを特徴とする、検出工程である。
【0015】
そして、本願請求項5の発明は、請求項4の発明に係わり、前記オリゴヌクレオチドプローブの配列が、配列番号34の配列中の少なくとも連続した10塩基以上からなるオリゴヌクレオチド、またはその相補的な配列からなるオリゴヌクレオチドであることを特徴とする。以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明は、試料中のHIV−1 RNAを増幅するための核酸増幅工程や、核酸増幅工程によって生成したRNA転写産物の検出法を提供するものである。本発明の増幅工程には、PCR法、NASBA法、3SR法等を含むが、中でも逆転写酵素およびRNAポリメレースの協奏的作用によって(逆転写酵素およびRNAポリメレースが協奏的に作用するような条件下で反応させ)HIV−1の特定RNA配列を増幅するNASBA法、3SR法等の一定温度核酸増幅法が好ましい。
【0017】
例えばNASBA法では、試料中に存在するHIV−1 RNAの特定配列を鋳型として、RNA依存性DNAポリメレースによりcDNAを合成し、リボヌクレエースHによってRNA・DNA二本鎖のRNAを分解して1本鎖DNAを生成し、該1本鎖DNAを鋳型としてDNA依存性DNAポリメレースにより、前記特定配列または前記特定配列に相補的な配列からなるRNAを転写可能なプロモーター配列を有する2本鎖DNAを生成し、そして該2本鎖DNAがRNAポリメレース存在下でRNA転写産物を生成し、該RNA転写産物が引き続き前記RNA依存性DNAポリメレースによるcDNA合成の鋳型となるようなRNA増幅工程であるが、本発明では、HIV−1 RNAの特定部位に結合可能である、配列番号1から配列番号7のいずれかからなるオリゴヌクレオチドからなる第一のプライマーと、配列番号8から配列番号20のいずれかからなるオリゴヌクレオチドからなる、増幅されるHIV−1 RNA配列の一部と相同的な配列を有する第二のプライマー(ここで第一、第二のプライマーのいずれか一方は、その5’ 末端側にRNAポリメレースのプロモーター配列を含む)を用いることを特徴とする。
【0018】
本願発明の態様の一例では、前記記載の増幅工程において、第一のプライマーとして、配列番号1から配列番号7のいずれかからなるオリゴヌクレオチドが利用され、第二のプライマーとして、配列番号8から配列番号20のいずれかからなるオリゴヌクレオチドが利用されることを特徴とする(ここで第一、第二のプライマーのいずれか一方は、その5’ 末端側にRNAポリメレースのプロモーター配列を含む)。なお、RNA依存性DNAポリメレース、DNA依存性DNAポリメレース、リボヌクレエースHは特に限定しないが、これらの活性のすべてを有しているAMV逆転写酵素が好ましい。また、RNAポリメレースについても特に限定するものではないが、T7ファージRNAポリメレース、SP6ファージRNAポリメレースが好ましい。
【0019】
上記増幅工程では、HIV−1 RNA配列の中で特定配列とする領域の5’末端領域と重複(1から10塩基)して隣接する領域に対し相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドを添加し、前記HIV−1 RNAを特定配列の5’末端領域で切断(リボヌクレースHによる)して核酸増幅初期の鋳型とすることにより、特定配列が5’末端に位置していないHIV−1 RNAをも増幅可能となる。この切断のためのオリゴヌクレオチドとしては、例えば、配列番号21から33のオリゴヌクレオチドを使用することが出来る。なお、この切断用オリゴヌクレオチドは、3’末端からの伸長反応を抑えるために3’水酸基が化学的に修飾(例えばアミノ化)されたものであることが望ましい。
【0020】
また前記のような、特定配列と重複(1から10塩基)して隣接する領域に対し相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドを添加し、前記HIV−1 RNAを特定配列の5’末端領域で切断(リボヌクレースHによる)して核酸増幅初期の鋳型とする場合、第一のプライマーとして、配列番号1から配列番号7のいずれかからなるオリゴヌクレオチドが利用され、
(1)第二のプライマーとして、配列番号8からなるオリゴヌクレオチドを利用した場合には、第三のオリゴヌクレオチドとして、配列番号21と配列番号22のいずれかからなるオリゴヌクレオチドが利用され、
(2)第二のプライマーとして、配列番号9からなるオリゴヌクレオチドを利用した場合には、第三のオリゴヌクレオチドとして、配列番号22から配列番号26のいずれかからなるオリゴヌクレオチドが利用され、
(3)第二のプライマーとして、配列番号10からなるオリゴヌクレオチドを利用した場合には、第三のオリゴヌクレオチドとして、配列番号22から配列番号28のいずれかからなるオリゴヌクレオチドが利用され、
(4)第二のプライマーとして、配列番号11からなるオリゴヌクレオチドを利用した場合には、第三のオリゴヌクレオチドとして、配列番号22から配列番号29のいずれかからなるオリゴヌクレオチドが利用され、
(5)第二のプライマーとして、配列番号12からなるオリゴヌクレオチドを利用した場合には、第三のオリゴヌクレオチドとして、配列番号22から配列番号29のいずれかからなるオリゴヌクレオチドが利用され、
(6)第二のプライマーとして、配列番号13からなるオリゴヌクレオチドを利用した場合には、第三のオリゴヌクレオチドとして、配列番号23から配列番号30のいずれかからなるオリゴヌクレオチドが利用され、
(7)第二のプライマーとして、配列番号14からなるオリゴヌクレオチドを利用した場合には、第三のオリゴヌクレオチドとして、配列番号23から配列番号30のいずれかからなるオリゴヌクレオチドが利用され、
(8)第二のプライマーとして、配列番号15からなるオリゴヌクレオチドを利用した場合には、第三のオリゴヌクレオチドとして、配列番号24から配列番号30のいずれかからなるオリゴヌクレオチドが利用され、
(9)第二のプライマーとして、配列番号16からなるオリゴヌクレオチドを利用した場合には、第三のオリゴヌクレオチドとして、配列番号25から配列番号30のいずれかからなるオリゴヌクレオチドが利用され、
(10)第二のプライマーとして、配列番号17からなるオリゴヌクレオチドを利用した場合には、第三のオリゴヌクレオチドとして、配列番号27から配列番号31のいずれかからなるオリゴヌクレオチドが利用され、
(11)第二のプライマーとして、配列番号18からなるオリゴヌクレオチドを利用した場合には、第三のオリゴヌクレオチドとして、配列番号31と配列番号32のいずれかからなるオリゴヌクレオチドが利用され、
(12)第二のプライマーとして、配列番号19からなるオリゴヌクレオチドを利用した場合には、第三のオリゴヌクレオチドとして、配列番号32と配列番号33のいずれかからなるオリゴヌクレオチドが利用され、又は、
(13)第二のプライマーとして、配列番号20からなるオリゴヌクレオチドを利用した場合には、第三のオリゴヌクレオチドとして、配列番号33からなるオリゴヌクレオチドが利用されることが好ましい。この場合においても、第三のオリゴヌクレオチド(切断用オリゴヌクレオチド)は、3’末端からの伸長反応を抑制するために3’末端水酸基が化学的に修飾(例えばアミノ化)されたものであることが望ましい。
【0021】
以上のような核酸増幅工程で得られた増幅産物は既知の核酸検出方法で検出することができるが、前記増幅工程をインターカレーター性蛍光色素で標識されたオリゴヌクレオチドプローブ存在下で実施し、反応液の蛍光特性の変化を測定することが好ましい。このオリゴヌクレオチドプローブとしては、オリゴヌクレオチド中のリンにリンカーを介してインターカレーター性蛍光色素を結合させたものが例示できる。この好適なプローブでは、標的核酸(相補的核酸)と2本鎖を形成するとインターカレーター部分が2本鎖部分にインターカレートして蛍光特性が変化するため、分離分析を必要としないからである(Ishiguro,T.ら(1996)Nucleic Acids Res.24(24)4992−4997)。
【0022】
前記プローブの配列は、RNA転写産物の少なくとも一部に対して相補的な配列を有すれば特に限定しないが、例えばRNA増幅工程において第一のプライマーとして配列番号1から配列番号7、第二のプライマーとして配列番号8から配列番号20のいずれかの組合せを使用した場合には、配列番号34の少なくとも連続した10塩基からなる配列、あるいはその相補配列が好ましい。また、プローブをプライマーとした伸長反応を抑えるためにプローブの3’末端の水酸基は化学的に修飾(例えばグリコール酸付加)することが好ましい。
【0023】
上記のようなプローブ共存下で増幅工程を行うことにより、HIV−1 RNAを、一チューブ内、一定温度、一段階で増幅し検出することが可能となり、自動化への適用も容易となる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0025】
実施例 1
本願発明によるオリゴヌクレオチドの組み合わせを用いて、標的HIV-1 RNAの様々な初期コピー数における検出を行った。
【0026】
(1)HIV−1 RNAの塩基配列のうち、コア蛋白(gag)の構造遺伝子を含む1628ntのRNAを標準RNAとした。標準RNAはACCRUNTM315(商品名)、HIV−1 RNA Positive Contorol、Series 400(BBI(Boston Biomedica,Inc.)製)よりHIV−1 RNAを定法により抽出後、RT−PCR法を用いてgag領域の塩基配列を含む2本鎖DNAを調製し、これを鋳型としたインビトロ転写により合成、精製したRNAである。
【0027】
(2)標準RNAを、260nmの紫外部吸収により定量後、RNA希釈液(10mM Tris−HCl (pH8.0)、0.1mM EDTA、1mMDTT、0.5U/μl RNase Inhibitor(宝酒造(株)製)を用い105コピー/5μl、104コピー/5μl、103コピー/5μl、102コピー/5μl、10コピー/5μlとなるよう希釈した。コントロール試験区(Nega)にはRNA希釈液のみを用いた。
【0028】
(3)以下の組成の反応液20.8μlを0.5ml容PCRチューブ(Gene Amp Thin−Walled Reaction Tubes(パーキンエルマー社製))に分注し、これに上記所定濃度のRNA試料5μlを添加した。
【0029】
反応液の組成(各濃度は最終反応液量30μlにおける濃度)
60mM Tris−塩酸緩衝液(pH8.6)
13mM 塩化マグネシウム
115mM 塩化カリウム
39U RNase Inhibitor
1mM DTT
各0.25mMのdATP、dCTP、dGTP、dTTP
3.6mM ITP
各3.0mMのATP、CTP、GTP、UTP
1.0μMの第一のプライマー(配列番号1)
1.0μMの第二のプライマー(配列番号15)(ここで、第二のプライマーの塩基配列の5’ 末端側にはT7プロモーター配列(配列番号35)を付加したものを使用した(配列番号35において、5’末端一番目の「A」から22番目の「A」までの部分はT7プロモーター配列であり、それに続く23番目の「G」から28番目の「A」までの部分はエンハンサー配列である))。
【0030】
0.16μMの第3のオリゴヌクレオチド(配列番号27)
25nMのインターカレーター性蛍光色素(図1)で標識されたオリゴヌクレオチド(配列番号34)(配列番号34のうち、5’末端から14番目の「T」と15番目の「T」の間にインターカレーター性蛍光色素が導入されている。また3’末端の水酸基はグリコール酸で修飾されている。)
13% DMSO
容量調整用蒸留水
(4)上記の反応液を41℃で5分間保温後、以下の組成で、かつ、あらかじめ41℃で2分間保温した酵素液4.2μlを添加した。
【0031】
酵素液の組成(各濃度は最終反応液量30μlにおける濃度)
1.7% ソルビトール
3μg 牛血清アルブミン
142U T7RNAポリメレース(GIBCO社製)
8U AMV逆転写酵素(宝酒造(株)製)
容量調整用蒸留水
(5)引き続きPCRチューブを直接測定可能な温度調節機能付き蛍光分光光度計を用い、41℃で保温して、励起波長470nm、蛍光波長510nmで、反応溶液を経時的に測定した。酵素添加時の時刻を0分として、試料の蛍光増加比(所定時刻の蛍光強度値÷バックグラウンドの蛍光強度値)の経時変化を図2に示した。なお、初期RNA量は10コピー/30μlから105コピー/30μlである。
【0032】
図2より、得られた蛍光プロファイルは、標的RNAの初期濃度に依存した。
また、10コピー/30μlが約10分で検出された。蛍光強度比が1.2を超えた時間を検出時間として縦軸に、RNAの初期濃度を横軸にプロットすると、直線関係が得られた(図3)。図3を検量線として用いることで、未知試料中に存在するHIV−1 RNAの定量が可能であることが示された。以上より、本法により、HIV−1 RNAの迅速・高感度かつ定量可能な検出が可能であることが示された。
【0033】
実施例 2
本願発明によるオリゴヌクレオチドの組み合わせを用いて、HIV陽性血清からの核酸抽出物中のHIV−1 RNAの検出を行った。
【0034】
(1)HIV陽性血清には、ACCRUNTM315(商品名)、HIV−1 RNA Positive Contorol、Series 500(BBI(Boston Biomedica,Inc.)製)を用いた。陽性血清300μlよりHIV−1 RNAを定法により抽出後、RNA希釈液(10mM Tris−HCl (pH8.0)、0.1mM EDTA、1mM DTT、0.5U/μl RNase Inhibitor(宝酒造(株)製))により、推定RNA量が103コピー/5μlとなるよう希釈した。標準RNAは実施例1と同様のものを使用した。標準RNAの濃度は103コピー/5μlとした。
【0035】
(2)以下の組成の反応液20.8μlを0.5ml容PCRチューブ(Gene Amp Thin−Walled Reaction Tubes(パーキンエルマー社製))に分注し、これに上記所定濃度のRNA試料5μlを添加した。
【0036】
反応液の組成(各濃度は最終反応液量30μlにおける濃度)
60mM Tris−塩酸緩衝液(pH8.6)
13mM 塩化マグネシウム
115mM 塩化カリウム
39U RNase Inhibitor
1mM DTT
各0.25mMのdATP、dCTP、dGTP、dTTP
3.6mM ITP
各3.0mMのATP、CTP、GTP、UTP
1.0μMの第一のプライマー(配列番号2)
1.0μMの第二のプライマー(配列番号13)(ここで、第二のプライマーの塩基配列の5’末端側にはT7プロモーター配列(配列番号35)を付加したものを使用した(配列番号35において、5’末端一番目の「A」から22番目の「A」までの部分はT7プロモーター配列であり、それに続く23番目の「G」から28番目の「A」までの部分はエンハンサー配列である))。
【0037】
0.16μMの第3のオリゴヌクレオチド(配列番号26)
25nMのインターカレーター性蛍光色素(図1)で標識されたオリゴヌクレオチド(配列番号34)(配列番号34のうち、5’ 末端から14番目の「T」と15番目の「T」の間にインターカレーター性蛍光色素が導入されている。また3’末端の水酸基はグリコール酸で修飾されている。)
13% DMSO
容量調整用蒸留水
(3)上記の反応液を41℃で5分間保温後、以下の組成で、かつ、あらかじめ41℃で2分間保温した酵素液4.2μlを添加した。
【0038】
酵素液の組成(各濃度は最終反応液量30μlにおける濃度)
1.7% ソルビトール
3μg 牛血清アルブミン
142U T7RNAポリメレース(GIBCO社製)
8U AMV逆転写酵素(宝酒造(株)製)
容量調整用蒸留水
(4)引き続きPCRチューブを直接測定可能な温度調節機能付き蛍光分光光度計を用い、41℃で保温して、励起波長470nm、蛍光波長510nmで、反応溶液を経時的に測定した。酵素添加時の時刻を0分として、試料の蛍光増加比(所定時刻の蛍光強度値÷バックグラウンドの蛍光強度値)の経時変化を図4に示した。
【0039】
図4より、HIV陽性血清から抽出されたRNA(推定103コピー/30μl)が検出された。また、対照の標準RNA(RNA濃度103コピー/30μl)と検出時間が同等であった。
【0040】
以上のことから、本法により、HIV陽性血清抽出物からHIV−1 RNAの迅速・高感度な検出が可能であることが示された。
【0041】
【発明の効果】
以上の説明のように、本願発明は、比較的低温かつ一定温度(35℃〜50℃、好ましくは41℃)で、HIV−1のゲノムRNAの分子内構造フリー領域に対して結合するオリゴヌクレオチドであって、核酸増幅法で使用されるオリゴヌクレオチドプライマーを提供することで、それを利用した簡便、迅速かつ高感度なHIV−1 RNAの検出方法を提供する。
【配列表】
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【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1、実施例2で用いたインターカレーター性蛍光色素で標識されたオリゴヌクレオチドのインターカレーター性蛍光色素部分の化学構造である。B1〜B3は核酸塩基を示す。
【図2】実施例1で行った初期RNA量105コピー/30μlから10コピー/30μlにおいて、反応時間とRNAの生成とともに増大する蛍光増加率のグラフである。NegaはRNA試料の代わりに希釈液のみを用いた。
【図3】実施例1の結果から、蛍光強度比が1.2を超えた時間を検出時間として縦軸に、RNAの初期濃度を横軸にプロットして得られた検量線である。
【図4】実施例2で行ったHIV陽性血清からの核酸抽出物中のHIV−1 RNAの検出結果から得られた、反応時間と蛍光増加率とのグラフである。

Claims (4)

  1. 試料中に存在するHIV−1に由来するRNAの特定配列を鋳型として、該特定配列に相補的な配列を有する第一のプライマーおよび該特定配列に相同的な配列を有する第二のプライマー(ここで第二のプライマーは、5’側にRNAポリメレースのプロモーター配列を付加した配列を有するプライマーである)を用い、RNA依存性DNAポリメレースによりcDNAを合成し、リボヌクレエースHによってRNA・DNA二本鎖のRNAを分解して本鎖DNAを生成し、該本鎖DNAを鋳型としてDNA依存性DNAポリメレースにより、前記特定配列または前記特定配列に相補的な配列からなるRNAを転写可能なプロモーター配列を有する本鎖DNAを生成し、そして該本鎖DNAがRNAポリメレース存在下でRNA転写産物を生成し、該RNA転写産物が引き続き前記RNA依存性DNAポリメレースによるcDNA合成の鋳型となるようなRNA増幅方法において、(ア)第一のプライマーとして配列番号1のオリゴヌクレオチドが利用され、第二のプライマーとして配列番号15のオリゴヌクレオチドが利用される、又は、(イ)第一のプライマーとして配列番号2のオリゴヌクレオチドが利用され、第二のプライマーとして配列番号13のオリゴヌクレオチドが利用される、のいずれかであり、前記(ア)の場合には配列番号27のオリゴヌクレオチドを第三のオリゴヌクレオチドとして添加し、前記(イ)の場合には配列番号26のオリゴヌクレオチドを第三のオリゴヌクレオチドとして添加し、リボヌクレエースHによりHIV−1由来のRNAを特定塩基配列の5’末端領域で切断して核酸増幅初期の鋳型とする、HIV−1由来のRNAの増幅方法
  2. 請求項1の増幅方法を、増幅により生じるRNA転写産物に特異的に結合可能であり、かつ、インターカレーター性蛍光色素で標識されたオリゴヌクレオチドプローブ(ただし、前記標識されたオリゴヌクレオチドは、前記第一のプライマーおよび第二のプライマーとは異なる配列である)存在下で実施し、反応液の蛍光特性の変化を測定することを特徴とする、HIV−1由来のRNAの検出方法
  3. 前記オリゴヌクレオチドプローブは、前記RNA転写産物の少なくとも一部の配列と相補結合するように設計され、複合体を形成していない場合と比較して蛍光特性が変化するものであることを特徴とする、請求項2に記載の検出方法
  4. 前記オリゴヌクレオチドプローブの配列が、配列番号34の配列であることを特徴とする、請求項3に記載の検出方法。
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