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JP2004220920A - 光電変換素子 - Google Patents

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JP2004220920A JP2003006914A JP2003006914A JP2004220920A JP 2004220920 A JP2004220920 A JP 2004220920A JP 2003006914 A JP2003006914 A JP 2003006914A JP 2003006914 A JP2003006914 A JP 2003006914A JP 2004220920 A JP2004220920 A JP 2004220920A
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Abstract

【課題】逆電子移動反応が起こらず、耐久性が高く、光電変換効率が高い光電変換素子を提供する。
【解決手段】一対の透明導電性基板の間に半導体微粒子からなる半導体電極および電解質層を有する光電変換素子において、受光面側から透明基板1、導電性配線層2aおよび金属酸化物層2bが順に積層されてなるシート抵抗10Ω/□以下の透明導電性基板を受光面側に用いる。金属酸化物層2bとしては、In−Sn複合酸化物、SnO、TiO、ZnO等を用いる。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、光電変換素子に関し、特に、湿式太陽電池に適用して好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
エネルギー源として石炭や石油などの化石燃料を使用する場合、その結果発生する二酸化炭素のために、地球の温暖化をもたらすと言われている。また、原子力エネルギーを使用する場合には、放射線による汚染の危険性が伴う。環境問題が取り沙汰される現在、これらのエネルギーに依存していくことは大変問題が多い。
【0003】
一方、太陽光を電気エネルギーに変換する光電変換素子である太陽電池は太陽光をエネルギー源としているため、地球環境に対する影響が極めて少なく、より一層の普及が期待されている。
【0004】
太陽電池の材質としては様々なものがあるが、シリコンを用いたものが多数市販されており、これらは大別して単結晶または多結晶のシリコンを用いた結晶シリコン系太陽電池と、非晶質(アモルファス)シリコン系太陽電池とに分けられる。従来、太陽電池には、単結晶または多結晶のシリコン、すなわち結晶シリコンが多く用いられてきた。
【0005】
しかし、結晶シリコン系太陽電池では、光(太陽)エネルギーを電気エネルギーに変換する性能を表す光電変換効率が、アモルファスシリコン系太陽電池に比べて高いものの、結晶成長に多くのエネルギーと時間とを要するため生産性が低く、コスト面で不利であった。
【0006】
また、アモルファスシリコン系太陽電池は、結晶シリコン系太陽電池と比べて光吸収性が高く、基板の選択範囲が広い、大面積化が容易である等の特徴があるが、光電変換効率が結晶シリコン系太陽電池より低い。さらに、アモルファスシリコン系太陽電池は、生産性は結晶シリコン系太陽電池に比べて高いが、製造に真空プロセスが必要であり、設備面での負担は未だに大きい。
【0007】
一方、太陽電池のより一層の低コスト化に向けて、シリコン系材料に代えて有機材料を用いた太陽電池が多く研究されてきた。しかし、この太陽電池の光電変換効率は1%以下と非常に低く、耐久性にも問題があった。
【0008】
こうした中で、非特許文献1に、色素によって増感された多孔質半導体微粒子を用いた安価な太陽電池が報告された。この太陽電池は、増感色素にルテニウム錯体を用いて分光増感した酸化チタン多孔質薄膜を光電極とする湿式太陽電池、すなわち電気化学光電池である。この太陽電池の利点は、安価な酸化チタン等の酸化物半導体を用いることができ、増感色素の光吸収が800nmまでの幅広い可視光波長域にわたっていること、光電変換の量子効率が高く、高いエネルギー変換効率を実現できることである。また、製造に真空プロセスが必要無いため、大型の設備等も必要無い。
【非特許文献1】
Nature(353, p.737−740, 1991)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、この太陽電池を大型化(大面積化)する場合、市販の耐酸化性透明導電性基板ではシート抵抗が高いため、フィルファクターのロスから良好な光電変換効率を実現するのは難しい。従って、太陽電池を大型化するには、透明導電性基板のシート抵抗を低減させるため、導電性の高い金属やカーボンなどの配線を基板上にパターニングする工夫が必要となる。
【0010】
ところが、この太陽電池においては、電解質中にヨウ素などのハロゲン元素を含むため、腐食による配線の溶解や断線、下地金属の溶解による配線の破壊が問題となり、時間と共に著しく特性が劣化する。また、配線材料として耐食性の高い金属を用いた場合でも、配線と電解質とが直接接しているため、半導体に注入され、配線に到達した電子が外部回路に流れる前に電解質を還元する、いわゆる逆電子移動反応が問題となる。
【0011】
従って、この発明が解決しようとする課題は、逆電子移動反応が起こらず、耐久性が高く、光電変換効率が高い光電変換素子を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、この発明は、
受光面側から透明基板、導電性配線層および保護層が順に積層されてなるシート抵抗10Ω/□以下の透明導電性基板を用いた
ことを特徴とする光電変換素子である。
【0013】
透明導電性基板には、複数本の導電性配線層が設置され、集電効率を高めるために少なくとも1本の導電性配線層は光電変換素子の集電部に接合されていることが好ましい。この発明において「透明」とは、波長400〜1200nmの可視〜近赤外領域にかけての光の一部または全域において透過率が10%以上であることと定義する。この導電性配線層を構成する材料は電子伝導性の高い物質が好ましく、その中でも特に電気化学的に安定なものが好ましい。具体的に例示すると、それらに限定されるものでは無いが、Pt、Au、Ru、Os、Ti、Ni、Cr、Cu、Ag、Pd、In、Zn、Mo、AlおよびCからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を含む導電性材料(単体金属、合金等)を用いることが特に好ましい。これらの材料を用いた導電性配線層の厚さに特に制限は無く、厚くするほど高い電子伝導性を実現できるが、逆に厚すぎる場合は表面の凹凸が大きくなり、その上に均一に保護層を製膜することが困難となる。このとき、この保護層の密着性が著しく低減するため、導電性配線層には好ましい厚さが存在する。ここで、材料の種類により達成できるシート抵抗が異なるが、導電性配線層の厚さは通常10〜10000nmであり、特に好ましくは50〜5000nmである。この導電性配線層が占める光電変換素子受光部に対する被覆面積率に特に制限は無いが、0.01%〜50%であることが好ましい。被覆面積率が大きすぎると受光した光を充分に透過できないため、0.1%〜20%であることが特に好ましい。具体的な導電性配線層の幅とその間隔とに特に制限は無く、幅を広くするほど、また、間隔を狭くするほど高い電子伝導性を実現できるが、逆に幅が広すぎる場合や間隔が狭すぎる場合は入射する光の透過率が減少するため好ましい値が存在する。導電性配線層の幅は通常1〜1000μmであり、特に好ましくは10〜500μmである。また、導電性配線層の間隔は通常0.1〜100mmであり、特に好ましくは1〜50mmである。この導電性配線層を透明基板上に形成する方法に特に制限は無く、例えば、蒸着法,イオンプレーティング法、スパッタリング法、CVD法、めっき法、分散塗布法、ディッピング法、スピンナー法等の公知の方法によって製膜可能である。また、基板への密着性を高めるため、導電性配線層と透明基板との間により密着性の高い下地材料を設置することもできる。また、導電性配線層をパターニングする方法に特に制限は無く、例えばレーザー加工、エッチング、リフトオフ等の公知の方法によってパターニング可能である。
【0014】
上記保護層は導電性配線層を電解質から遮断し、逆電子移動反応や導電性配線の腐食を妨げる役割がある。この保護層は電子伝導性(通常の電気伝導による電子伝導性のほか、トンネル効果による電子伝導性も含む)が高く、透明であることが好ましい。これらの条件を満たす限り、保護層の材料としては基本的にはどのような材料を用いてもよく、また、単層構造であっても、少なくとも互いに異なる材料からなる2層を含む多層構造であってもよい。この保護層としては、典型的には金属酸化物層が用いられるが、そのほかにTiN、WN等の金属窒化物層を用いることも可能である。この金属酸化物を具体的に例示すると、例えば、In−Sn複合酸化物(ITO)、SnO(フッ素等がドープされたものも含む)、TiO、ZnO等が挙げられ、これらに限定されるものでは無いが、この中から選ばれる少なくとも1つの金属酸化物を含むことが特に好ましい。この金属酸化物層の厚さに特に制限は無いが、薄すぎる場合は導電性配線層と電解質の遮断性が悪く、厚すぎる場合は透過率が減少してしまうため、好ましい厚さが存在することになる。この厚さは通常1〜5000nmであり、10〜1000nmが特に好ましい。また、耐酸化性を向上させる目的で、必要に応じて上記金属酸化物を積層させることも可能である。
【0015】
透明基板の材質は特に制限されず、透明であれば種々の基材を用いることができる。この透明基板は、光電変換素子外部から侵入する水分やガスの遮断性、耐溶剤性、耐候性等に優れているものが好ましく、具体的には、石英、ガラス等の透明無機基板、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフッ化ビニリデン、テトラアセチルセルロース、ブロム化フェノキシ、アラミド類、ポリイミド類、ポリスチレン類、ポリアリレート類、ポリスルフォン類、ポリオレフィン類等の透明プラスチック基板が挙げられ、これらに限定されるものでは無いが、特に可視光領域の透過率が高い基板を用いるのが好ましい。この透明基板としては、加工性、軽量性等を考慮すると、透明プラスチック基板を用いるのが好ましい。また、この透明基板の厚さは特に制限されず、光の透過率、光電変換素子内部と外部との遮断性等によって自由に選択することができる。
【0016】
半導体微粒子の材料としては、シリコンに代表される元素半導体のほかに、各種の化合物半導体、ペロブスカイト構造を有する化合物等を使用することができる。これらの半導体は、光励起下で伝導帯電子がキャリアーとなり、アノード電流を与えるn型半導体であることが好ましい。これらの半導体は、具体的に例示すると、TiO、ZnO、WO、Nb、TiSrO、SnO等であり、これらのうちTiOが特に好ましい。また、半導体の種類はこれらに限定されるものでは無く、2種類以上混合して用いることもできる。
【0017】
半導体微粒子からなる半導体層(半導体電極)の作製方法には特に制限は無いが、物性、利便性、製造コスト等を考慮した場合、湿式製膜法が好ましく、半導体微粒子の粉末あるいはゾルを水等の溶媒に均一分散したペーストを調製し、透明導電性基板上に塗布する方法が好ましい。塗布方法は特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができ、例えば、ディップ法、スプレー法、ワイヤーバー法、スピンコート法、ローラーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法、また、湿式印刷方法としては、例えば、凸版、オフセット、グラビア、凹版、ゴム版、スクリーン印刷等様々な方法により行うことができる。半導体微粒子の材料として結晶酸化チタンを用いる場合、その結晶型は、アナターゼ型が光触媒活性の点から好ましい。アナターゼ型酸化チタンは市販の粉末、ゾル、スラリーでも良いし、あるいは酸化チタンアルコキシドを加水分解する等の公知の方法によって所定の粒径のものを作っても良い。市販の粉末を使用する際には粒子の二次凝集を解消することが好ましく、塗布液調製時に乳鉢やボールミル等を使用して粒子の粉砕を行うことが好ましい。このとき、二次凝集が解かれた粒子が再度凝集するのを防ぐため、アセチルアセトン、塩酸、硝酸、界面活性剤、キレート剤等を添加することができる。また、増粘の目的でポリエチレンオキシドやポリビニルアルコール等の高分子、セルロース系の増粘剤等、各種増粘剤を添加することもできる。
【0018】
半導体微粒子の粒径に特に制限は無いが、一次粒子の平均粒径で1〜200nmが好ましく、特に好ましくは5〜100nmである。また、この平均粒径の半導体微粒子にこの平均粒径より大きい平均粒径の半導体微粒子を混合し、平均粒径の大きい半導体微粒子により入射光を散乱させ、量子収率を向上させることも可能である。この場合、別途混合する半導体微粒子の平均粒径は20〜500nmであることが好ましい。
【0019】
半導体微粒子からなる半導体層は多くの色素を吸着することができるように表面積の大きいものが好ましい。このため、半導体微粒子層を支持体上に塗設した状態での表面積は、投影面積に対して10倍以上であることが好ましく、100倍以上であることがさらに好ましい。この上限に特に制限はないが、通常1000倍程度である。半導体微粒子層は一般に、その厚さが増大するほど単位投影面積当たりの担持色素量が増えるため光の捕獲率が高くなるが、注入した電子の拡散距離が増すため電荷再結合によるロスも大きくなる。従って、半導体微粒子層には好ましい厚さが存在するが、その厚さは一般的には0.1〜100μmであり、1〜50μmであることがより好ましく、3〜30μmであることが特に好ましい。半導体微粒子は、支持体に塗布した後に粒子同士を電子的にコンタクトさせ、膜強度の向上や基板との密着性を向上させるために焼成することが好ましい。焼成温度の範囲に特に制限は無いが、温度を上げ過ぎると基板の抵抗が高くなってしまい、溶融することもあるため、通常は40〜700℃であり、より好ましくは40〜650℃である。また、焼成時間にも特に制限は無いが、通常は10分〜10時間程度である。焼成後、半導体微粒子の表面積の増大や、半導体微粒子層の不純物を除去し、色素から半導体微粒子への電子注入効率を高める目的で、例えば四塩化チタン水溶液を用いた化学メッキや三塩化チタン水溶液を用いた電気化学的メッキ処理を行っても良い。また、半導体微粒子層のインピーダンスを低減させる目的で導電助剤を添加しても良い。透明導電性基板の支持体にプラスチック基板を用いる場合は、結着剤を含む、半導体微粒子が分散されたペーストを基板上に製膜(塗布)し、例えば50〜120℃の温度での加熱プレスにより基板に半導体微粒子を圧着することも可能である。
【0020】
半導体微粒子に担持させる色素としては、増感作用を示すものであれば特に制限はないが、例えば、ローダミンB、ローズベンガル、エオシン、エリスロシン等のキサンテン系色素、キノシアニン、クリプトシアニン等のシアニン系色素、フェノサフラニン、カブリブルー、チオシン、メチレンブルー等の塩基性染料、クロロフィル、亜鉛ポルフィリン、マグネシウムポルフィリン等のポルフィリン系化合物、その他アゾ色素、フタロシアニン化合物、クマリン系化合物、Ruビピリジン錯化合物、アントラキノン系色素、多環キノン系色素等が挙げられる。この中でも、ルテニウム(Ru)ビピリジン錯化合物は量子収率が高く特に好ましいが、これに限定されるものではなく、単独もしくは2種類以上混合して用いることができる。
【0021】
上記色素の半導体微粒子層への担持方法に特に制限は無く、例えば上記色素をアルコール類、ニトリル類、ニトロメタン、ハロゲン化炭化水素、エーテル類、ジメチルスルホキシド、アミド類、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、3−メチルオキサゾリジノン、エステル類、炭酸エステル類、ケトン類、炭化水素、水等の溶媒に溶解させ、これに半導体微粒子層を浸漬し、もしくは色素溶液を半導体微粒子層に塗布する方法が一般的である。この場合、1半導体微粒子に対する色素分子の仕込み量は好ましくは1〜1000分子であり、1〜100分子がさらに好ましい。また、色素分子が半導体微粒子に対して大過剰に担持された場合、光エネルギーによって励起された電子が半導体微粒子に注入されず、電解質を還元するためエネルギーロスの原因となる。従って、色素分子は半導体微粒子に対して単分子吸着が理想的な状態であり、必要に応じて担持させる温度や圧力を変化させることが可能である。色素同士の会合を低減する目的でデオキシコール酸等のカルボン酸類を添加しても良い。また紫外線吸収剤を併用することもできる。
【0022】
過剰に吸着した色素の除去を促進する目的で、色素が吸着した後にアミン類を用いて半導体微粒子層の表面を処理しても良い。アミン類の例としてはピリジン、4−tert−ブチルピリジン、ポリビニルピリジン等が挙げられ、これらが液体の場合は、そのまま用いても良いし、有機溶媒に溶解して用いても良い。
【0023】
対極は導電性物質であれば任意のものを用いることができるが、絶縁性の物質でも、半導体電極に面している側に導電層が設置されていれば、これも使用可能である。ただし、電気化学的に安定である材料を電極として用いることが好ましく、具体的には、白金、金、カーボン等を用いることが望ましい。また、酸化還元の触媒効果を向上させる目的で、半導体電極に面している側は微細構造で表面積が増大していることが好ましく、例えば、白金であれば白金黒状態に、カーボンであれば多孔質状態になっていることが望まれる。白金黒状態は、白金の陽極酸化法、塩化白金酸処理等によって、また、多孔質状態のカーボンは、カーボン微粒子の焼結や有機ポリマーの焼成等の方法により形成することができる。また、透明導電性基板上に白金等の酸化還元触媒効果の高い金属を配線するか、表面を塩化白金酸処理することにより、透明な対極として使用することもできる。
【0024】
電解質は、ヨウ素(I)と金属ヨウ化物もしくは有機ヨウ化物との組み合わせ、臭素(Br)と金属臭化物あるいは有機臭化物との組み合わせのほか、フェロシアン酸塩/フェリシアン酸塩やフェロセン/フェリシニウムイオン等の金属錯体、ポリ硫化ナトリウム、アルキルチオール/アルキルジスルフィド等のイオウ化合物、ビオロゲン色素、ヒドロキノン/キノン等を用いることができる。上記金属化合物のカチオンとしてはLi、Na、K、Mg、Ca、Cs等、上記有機化合物のカチオンとしてはテトラアルキルアンモニウム類、ピリジニウム類、イミダゾリウム類等の4級アンモニウム化合物が好ましいが、これらに限定されるものでは無く、これらを2種類以上混合して用いることもできる。この中でも、IとLiI、NaIやイミダゾリウムヨーダイド等の4級アンモニウム化合物とを組み合わせた電解質が好適である。電解質塩の濃度は、溶媒に対して0.05〜5Mが好ましく、さらに好ましくは0.2〜1Mである。IやBrの濃度は0.0005〜1Mが好ましく、さらに好ましくは0.0001〜0.1Mである。また、開放電圧、短絡電流を向上させる目的で4−tert−ブチルピリジンやカルボン酸等の各種添加剤を加えることもできる。
【0025】
上記電解質組成物を構成する溶媒として水、アルコール類、エーテル類、エステル類、炭酸エステル類、ラクトン類、カルボン酸エステル類、リン酸トリエステル類、複素環化合物類、ニトリル類、ケトン類、アミド類、ニトロメタン、ハロゲン化炭化水素、ジメチルスルホキシド、スルフォラン、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、3−メチルオキサゾリジノン、炭化水素等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、単独もしくは2種類以上混合して用いることができる。また、溶媒としてテトラアルキル系、ピリジニウム系、イミダゾリウム系4級アンモニウム塩の室温イオン性液体を用いることも可能である。
【0026】
光電変換素子の漏液、電解質の揮発を低減する目的で、上記電解質組成物へゲル化剤、ポリマー、架橋モノマー等を溶解させ、ゲル状電解質として使用することも可能である。ゲルマトリクスと電解質組成物との比率は、電解質組成物が多ければイオン導電率は高くなるが、機械的強度は低下する。また、逆に電解質組成物が少なすぎると機械的強度は大きいがイオン導電率は低下するため、電解質組成物はゲル状電解質の50〜99wt%が望ましく、80〜97wt%がより好ましい。また、上記電解質と可塑剤とを用いてポリマーに溶解させ、可塑剤を揮発除去することで全固体型の光電変換素子を実現することも可能である。
【0027】
光電変換素子の製造方法は特に限定されないが、例えば電解質組成物が液状、もしくは光電変換素子内部でゲル化させることが可能であり、導入前は液状の電解質組成物の場合、色素を担持させた半導体電極と対極とを向かい合わせ、2つの電極が接しないように半導体電極が形成されていない基板部分を封止する。このとき、半導体電極と対極との隙間に特に制限は無いが、通常1〜100μmであり、より好ましくは1〜50μmである。この電極間の距離が長すぎると、導電率の低下から光電流が減少してしまう。封止方法は特に制限されないが、対光性、絶縁性、防湿性を備えた材料が好ましく、種々の溶接法、エポキシ樹脂、紫外線硬化樹脂、アクリル系接着剤、EVA(エチレンビニルアセテート) 、アイオノマー樹脂、セラミック、熱融着フィルム等を用いることができる。また、電解質組成物の溶液を注液する注入口が必要であるが、色素を担持した半導体電極およびそれに対向する部分の対極上でなければ、注入口の場所は特に限定されない。注液方法に特に制限は無いが、予め封止され、溶液の注入口を開けられた上記セルの内部に注液を行う方法が好ましい。この場合、注入口に溶液を数滴垂らし、毛細管現象により注液する方法が簡便である。また、必要に応じて減圧もしくは加熱下で注液の操作を行うこともできる。完全に溶液が注入された後、注入口に残った溶液を除去し、注入口を封止する。この封止方法にも特に制限は無いが、必要であればガラス板やプラスチック基板等を封止剤で貼り付けて封止することもできる。また、ポリマー等を用いたゲル状電解質、全固体型の電解質の場合、色素を担持した半導体電極上で電解質組成物と可塑剤とを含むポリマー溶液をキャスト法により揮発除去させる。可塑剤を完全に除去した後、上記方法と同様に封止を行う。この封止は真空シーラー等を用いて、不活性ガス雰囲気下、もしくは減圧中で行うことが好ましい。封止を行った後、電解質を半導体微粒子層へ充分に含侵させるため、必要に応じて加熱、加圧の操作を行うことも可能である。
光電変換素子はその用途に応じて様々な形状で作製することが可能であり、その形状は特に限定されない。
【0028】
上述のように構成されたこの発明によれば、受光面側から透明基板、導電性配線層および保護層、例えば金属酸化物層が順に積層されてなるシート抵抗10Ω/□以下の透明導電性基板を用いることにより、導電性配線層と電解質とが直接接することが無くなるため、逆電子移動反応が起こらないだけでなく、導電性配線層の腐食を防ぐことが可能になり、高い耐久性と、光電変換効率の優れた光電変換素子の実現が可能となる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1はこの発明の一実施形態による色素増感湿式光電変換素子を示す。
図1に示すように、この色素増感湿式光電変換素子においては、透明基板1の一主面上に導電性配線層/金属酸化物層2を介して増感色素を担持した半導体微粒子層3(半導体電極)が形成されたものと、透明導電性基板4の一主面上に白金または白金触媒層5が形成されたものとが、それらの半導体微粒子層3および白金または白金触媒層5が所定の間隔をおいて互いに対向するように配置されており、それらの間の空間に電解質層(電解液)6が封入されている。この電解質層6は、図示省略した所定の封止部材により封入されている。
【0030】
図2に、透明基板1の一主面上に積層された導電性配線層/金属酸化物層2の詳細を示す。図2に示すように、受光面側から透明基板1、導電性配線層2aおよび金属酸化物層2bが順に積層されてシート抵抗10Ω/□以下の透明導電性基板が構成されている。ここで、導電性配線層2aは、基板全面に連続的に形成された金属酸化物層2bにより完全に覆われている。
【0031】
図3に、色素増感湿式光電変換素子の透明導電性基板を受光面側から見た平面図(投影図)を示す。導電性配線層2aは集電部分7に接合されている。
透明基板1、導電性配線層2a、金属酸化物層2b、半導体微粒子層3、透明導電性基板4および電解質層6の材料は、すでに挙げたものの中から、必要に応じて選択することができる。
【0032】
次に、この色素増感湿式光電変換素子の製造方法について説明する。
すなわち、まず透明基板1を用意する。次に、この透明基板1上にリソグラフィー法、リフトオフ法等により所定パターンの導電性配線層2aを形成する。次に、この導電性配線層2aを覆うように透明基板1の全面に金属酸化物層2bを製膜する。次に、この金属酸化物層2b上に半導体微粒子が分散されたペーストを所定のギャップ(厚さ)に塗布する。次に、所定の温度で所定の時間加熱することにより、半導体微粒子を焼結させる。これによって、金属酸化物層2b上に半導体微粒子層3が形成される。この後、この半導体微粒子層3を色素溶液に浸漬する等して色素を担持させる。
【0033】
一方、別途透明導電性基板4を用意し、その上に白金または白金触媒層5を形成する。
そして、導電性配線層2a、金属酸化物層2bおよび色素を担持した半導体微粒子層3が形成された透明基板1と透明導電性基板4とをそれらの半導体微粒子層3および白金または白金触媒層5が所定の間隔、例えば1〜100μm、好ましくは1〜50μmの間隔をおいて互いに対向するように配置するとともに、所定の封止部材を用いて電解質層6が封入される空間を作り、この空間に予め形成された注液口から電解質層6を注入する。その後、この注液口を塞ぐ。これによって、色素増感湿式光電変換素子が製造される。
【0034】
次に、この色素増感湿式光電変換素子の動作について説明する。
透明基板1側からこの透明基板1を透過して入射した光は、半導体微粒子層3の表面に担持された増感色素を励起して電子を発生する。この電子は、速やかに増感色素から半導体微粒子層3の半導体微粒子に渡される。一方、電子を失った増感色素は、電解質層6のイオンから電子を受け取り、電子を渡した分子は、再び対極の白金または白金触媒層5で電子を受け取る。この一連の過程により、半導体微粒子層3と電気的に接続された、透明基板1、導電性配線層2aおよび金属酸化物層2bを順に積層してなる透明導電性基板と、白金または白金触媒層5と電気的に接続された透明導電性基板4との間に起電力が発生する。このようにして光電変換が行われる。
【0035】
以上のように、この一実施形態によれば、受光面側から透明基板1、導電性配線層2aおよび金属酸化物層2bを順に積層してなる透明導電性基板を用いていることにより、導電性配線層2aと電解質層6とが直接接することが無くなるため、逆電子移動反応が起こらないだけでなく、導電性配線層2aの腐食を防ぐことが可能になり、耐久性が高く、光電変換効率の優れた色素増感湿式光電変換素子、特に色素増感湿式太陽電池を実現することができる。
【0036】
【実施例】
色素増感湿式光電変換素子の実施例について説明する。実施例の条件を、比較例の条件とともに表1にまとめて示す。また、実施例の測定結果を、比較例の測定結果とともに表2にまとめて示す。
【表1】
Figure 2004220920
【表2】
Figure 2004220920
【0037】
実施例1
半導体微粒子としてTiO微粒子を用いた。TiO微粒子が分散されたペーストを荒川裕則「色素増感太陽電池の最新技術」(シーエムシー)p.45−47(2001) を参考にして以下のように作製した。125mlのチタンイソプロポキシドを750mlの0.1M硝酸水溶液に室温で撹拌しながらゆっくり滴下した。滴下が終了したら、この溶液を80℃の恒温槽に移し、8時間撹拌して、白濁した半透明のゾル溶液を得た。このゾル溶液を室温まで放冷し、ガラスフィルターでろ過した後、700mlにメスアップした。得られたゾル溶液をオートクレーブへ移し、220℃で12時間水熱処理を行った後、1時間超音波処理を行うことにより分散処理した。次いでこの溶液をエバポレーターにより40℃で濃縮し、TiOの含有量が20wt%になるように調製した。この濃縮ゾル溶液に、ペースト中のTiOの重量に対して10wt%となるようにポリエチレングリコール(分子量50万)を添加し、遊星ボールミルで均一に混合し、増粘したTiOペーストを得た。
【0038】
受光面側から、透明基板1としてソーダライムガラスからなる厚さ1.1mmの基板、導電性配線層2aとして厚さ450nmのRu層(下地は厚さ50nmのCr層、配線幅200μm、配線間隔5mm)、金属酸化物層2bとして厚さ450nmのITO層および厚さ50nmのSnO層を順に製膜した透明導電性ガラス基板(シート抵抗1Ω/□、30mm□)を用意し、その上に上記のように得られたTiOペーストをブレードコーティング法により大きさ20mm×15mm、ギャップ200μmで塗布した後、450℃に30分間保持し、TiOを透明導電性ガラス基板上に焼結した。
【0039】
次いで、0.5mMのシス−ビス(イソチオシアナート)−N,N−ビス(2,2’ −ジピリジル−4,4’ −ジカルボン酸)−ルテニウム(II)二水和物および20mMのデオキシコール酸を溶解した脱水エタノール溶液に12時間浸漬させ、色素を担持させた。この電極を4−tert−ブチルピリジンのエタノール溶液、脱水エタノールの順で洗浄し、暗所で乾燥させた。
【0040】
対極は、予め1mmの注液口が開けられたフッ素ドープ導電性ガラス基板(シート抵抗10Ω/□)に白金を厚さ100nmスパッタし、その上に塩化白金酸のエタノール溶液を数滴垂らし、385℃に加熱したものを用いた。
【0041】
上記のように形成された色素担持TiO微粒子層、すなわち半導体電極と対極の白金面とを向かい合わせ、その外周を厚さ30μmのEVAフィルムとエポキシ接着剤とによって封止した。
【0042】
一方、メトキシプロピオニトリル3gにヨウ化リチウム(LiI)0.04g、1−プロピル−2.3−ジメチルイミダゾリウムヨーダイド0.479g、ヨウ素(I)0.0381g、4−tert−ブチルピリジン0.2gを溶解させ、電解質組成物を調製した。
【0043】
上記混合溶液を予め準備した素子の注液口に数滴垂らし、減圧することで素子内部に注液し、注液口をEVAフィルム、エポキシ接着剤、ガラス基板で封止し、光電変換素子を得た。
【0044】
実施例2〜18、比較例1〜19
実施例2〜18では、表1に示す導電性配線層および金属酸化物層を設置した透明導電性基板を用いたこと以外は実施例1と同様に光電変換素子を作製した。また、比較例1〜15では、表1に示す導電性配線層を設置し、金属酸化物層を設置しない透明導電性基板を用いたこと以外は実施例1と同様に光電変換素子を作製した。さらに、比較例16〜19では、表1に示す金属酸化物層を設置し、導電性配線層を設置しない透明導電性基板を用いたこと以外は実施例1と同様に光電変換素子を作製した。
【0045】
以上のように作製した実施例1〜18および比較例1〜19の色素増感湿式光電変換素子において、擬似太陽光(AM1.5、100mW/cm)照射時における光電変換効率を作製直後および1ヵ月後に測定した。測定期間内は光電変換素子へ紫外光(UV光)を照射し室温下で保存した。
上記光電変換素子の導電性配線層の状態を目視により確認した。
以上の測定結果を表2に示す。
【0046】
表2から、実施例1〜18の色素増感湿式光電変換素子は、導電性配線層または金属酸化物層無しの透明導電性基板を用いた比較例1〜19の色素増感湿式光電変換素子と比較して、光電変換効率は飛躍的に向上し、導電性配線層2aと金属酸化物層2bとを積層したことによりその耐久性も遥かに優れていることが分かる。
【0047】
以上、この発明の一実施形態および実施例について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施形態および実施例に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
例えば、上述の実施形態および実施例において挙げた数値、構造、形状、材料、原料、プロセスなどはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれらと異なる数値、構造、形状、材料、原料、プロセスなどを用いてもよい。
【0048】
具体的には、例えば、上述の実施例においては、半導体微粒子層を形成した後に色素溶液に浸漬することによりその半導体微粒子に色素を担持させているが、半導体微粒子に予め色素が担持されたペーストを塗布するようにしてもよい。
【0049】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、受光面側から透明基板、導電性配線層および保護層が順に積層されてなるシート抵抗10Ω/□以下の透明導電性基板を用いることにより、逆電子移動反応が起こらず、耐久性が高く、光電変換効率が高い光電変換素子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態による色素増感湿式光電変換素子の要部の断面図である。
【図2】この発明の一実施形態による色素増感湿式光電変換素子の導電性配線層の部分の断面図である。
【図3】この発明の一実施形態による色素増感湿式光電変換素子の要部の平面図である。
【符号の説明】
1…透明基板、2…導電性配線層/金属酸化物層、2a…導電性配線層、2b…金属酸化物層、3…半導体微粒子層、4…透明導電性基板、5…白金または白金触媒層、6…電解質層

Claims (13)

  1. 受光面側から透明基板、導電性配線層および保護層が順に積層されてなるシート抵抗10Ω/□以下の透明導電性基板を用いた
    ことを特徴とする光電変換素子。
  2. 上記保護層は透明かつ導電性を有することを特徴とする請求項1記載の光電変換素子。
  3. 上記保護層は金属酸化物層であることを特徴とする請求項1記載の光電変換素子。
  4. 上記金属酸化物層はIn−Sn複合酸化物、SnO、TiOおよびZnOからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属酸化物からなることを特徴とする請求項3記載の光電変換素子。
  5. 上記金属酸化物層の厚さは10nm以上1000nm以下であることを特徴とする請求項3記載の光電変換素子。
  6. 上記透明導電性基板には複数本の導電性配線層が設置され、少なくとも1本の導電性配線層は光電変換素子の集電部に接合されていることを特徴とする請求項1記載の光電変換素子。
  7. 上記導電性配線層はPt、Au、Ru、Os、Ti、Ni、Cr、Cu、Ag、Pd、In、Zn、Mo、AlおよびCからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を含む導電性材料からなることを特徴とする請求項1記載の光電変換素子。
  8. 上記導電性配線層の厚さは50nm以上5000nm以下であることを特徴とする請求項1記載の光電変換素子。
  9. 上記導電性配線層が占める光電変換素子受光部に対する被覆面積率が0.1%以上20%以下であることを特徴とする請求項1記載の光電変換素子。
  10. 上記導電性配線層の幅は10μm以上500μm以下であることを特徴とする請求項1記載の光電変換素子。
  11. 上記導電性配線層の間隔は1mm以上50mm以下であることを特徴とする請求項1記載の光電変換素子。
  12. 上記透明導電性基板とその対極をなす導電性基板との間に半導体層と電解質層とが設けられ、光電変換によって上記透明導電性基板と上記導電性基板との間に電気エネルギーを発生することを特徴とする請求項1記載の光電変換素子。
  13. 上記光電変換素子は色素増感湿式太陽電池として構成されていることを特徴とする請求項1記載の光電変換素子。
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