JP2004149639A - 光学フィルム及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】非晶性熱可塑性樹脂を押出機に取り付けられたダイからシート状に押し出して冷却ロールに密着する際に、ダイ出口から半溶融状態のフィルムが冷却ロールに接する接点までの距離(エアギャップ)を70mm以下とし、冷却ロールに接したフィルムを、接点の下流側近傍で冷却ロールに対して押圧手段により押圧する。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学用途やディスプレイ分野などに用いられる光学フィルム、より詳細には、押出成形により得られ、透明性に優れ、光学特性(残留位相差、光軸ズレ)に優れ、厚み精度に優れた光学フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、光学用途やディスプレイにおいては、透明性に優れており、光学歪み(複屈折)や光軸ズレが少なく、厚み精度に優れた光学フィルムが求められている。そこで、このような高品位のフィルムを得るためには従来より溶液流延法による製膜法が多用されてきた。しかしながら、溶液流延法は生産性や溶剤コストといった観点からは、溶融押出による製膜法に及ばない。
【0003】
ところで最近、環状オレフィン樹脂を溶融押出法より製膜する際、特定の剥離強度を有するリップ部を備えたダイと平滑化ロールを用いて、高い表面平滑性を実現した光学用フィルムの製造方法が開示されている(特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−280315号公報
【0005】
ところが、上記公報に開示されたような溶融製膜法で光学フィルムを製造しようとした場合、表面平滑性に関しては満足すべきものが得られたとしても、製膜時の変形の不均一、温度変化の不均一からどうしても厚み精度、光学歪み、光軸ズレのいずれにも優れたフィルムを得ることは非常に困難であった。
【0006】
厚み精度が悪いと長さムラ(フレア)が発生しやすくなり、捲重体にしたときに巻き外観が悪化する。また、偏光子を保護するための偏光子保護フィルムに用いたときには、偏光子との接着の際に密着ムラが生じるという問題が生じる。更に、位相差板の原反として用いると、延伸した時に位相差ムラが生じるという問題が生じる。
【0007】
光学歪みは位相差としてフィルムに残留する。残留位相差が大きいと、光学用フィルムとして用いた場合に障害となり、例えば、偏光子の保護フィルムに用いる場合などは、その残留位相差のために偏光性能が低下することになる。また、光軸が揃っていないと残留位相差が低くても、位相差の高い場合と同様の問題を引き起こす。一般的には残留位相差が1nm以上において、光軸のバラツキが問題となり、具体的には位相差が3nm以下においては光軸ズレを±10°以下とすることが望まれる。
【0008】
この光学歪みを低減する手段として、本願発明者らは、非晶性熱可塑性樹脂のガラス転移温度をTgとするとき、押出機に取り付けられたダイからシート状に押し出された非晶性熱可塑性樹脂からなるフィルムが冷却ロールに密着される際に、冷却ロールとフィルムとの接点直前におけるフィルム温度を制御することで、低残留位相差を実現した(特願2002−32800)。
【0009】
一方、押出工程において光軸のズレを抑制するための変形の均一化を行う方法として、ダイから出た樹脂をドローダウンして製膜する際に、エアチャンバー、タッチロール、全面ピニングなどの手段によりフィルムを冷却ロールに押圧する方法が一般的に用いられている。しかしながら、これらの方法を用いた場合、フィルムの透明性を損なう危険性があった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、厚み精度と光学特性に優れ、透明性にも優れたノルボルネン系樹脂からなる光学フィルムを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る光学フィルムは、非晶製熱可塑性樹脂を用いて押出成形された光学フィルムであって、両端部を除いた実質的な厚みバラツキが2μm以下であり、好ましくは残留位相差が3nm以下、光軸ズレが±10°以下であり、好ましくはヘイズ値が1%以下であることを特徴とする。
【0012】
厚みバラツキが2μm以下であるフィルムの場合、長さムラが発生せず、いわゆるフレアのないフィルムが得られるため、捲重体としたときにも巻き皺が発生せず、巻き外観の優れたものとすることができる。また、例えば偏光子の保護フィルムとして用いたときには、偏光子との接着の際に密着ムラが発生しにくく良品率を高めることができる。さらに樹脂フィルムを延伸して得られる位相差板において、延伸後のレターデーション値は厚みの一次関数であるため、フィルムの厚みバラツキが位相差ムラに直接反映することになるが、本発明の光学フィルムを延伸用原反として用いても位相差ムラが生じにくい。
【0013】
残留位相差が3nm以下で光軸ズレが±10°以下の場合には、液晶ディスプレイ等の光学用途に用いた場合にも良品率を高めることができる。即ち、光軸ズレを問題視しなくてもよい例えば残留位相差が1nm以下のフィルムは別として、光軸ズレの存在は液晶ディスプレイにおいて色ムラの原因となり、著しい場合は不良品となってしまう。なお、残留位相差は、複屈折測定装置を用いてフィルム面内の複数点で590nm波長の光にて測定した値の最大値であり、光軸ズレは樹脂の押出方向を光軸ゼロ(本質的にこの方向が遅相軸となることが多い)としたときの各測定点における遅相軸とのなす角度の最大値である。
【0014】
ヘイズが1%以下の場合には、透明性に優れ、光ディスクや液晶ディスプレ−に用いても、問題がない。
【0015】
本発明に係る光学フィルムに用いられる非晶性熱可塑性樹脂とは、殆ど結晶構造をとりえない無定形状態を保つ高分子であり、そのTgは、樹脂によって異なるため特に限定されるものではないが、総じて100℃以上のものである。上記非晶性熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリサルホン、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ノルボルネン系樹脂等が挙げられる。これらの非晶性熱可塑性樹脂は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。これらの樹脂の中でも、ノルボルネン系樹脂は、固有複屈折率が低くかつ光弾性係数が小さいという利点を有し、光学フィルムとして好適である。
【0016】
上記ノルボルネン系樹脂としては、飽和ノルボルネン系樹脂が好ましく、例えば、ノルボルネン系モノマーの開環(共)重合体の水素添加物、ノルボルネン系モノマーと他のオレフィン系モノマーとの付加共重合体、ノルボルネン系モノマー同士の付加共重合体及びこれらの誘導体等が挙げられる。これらのノルボルネン系樹脂は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0017】
上記ノルボルネン系モノマーは、ノルボルネン環を有するものであれば特に限定されないが、耐熱性、低線膨張率等に優れた成形品が得られることから、三環体以上の多環ノルボルネン系モノマーを用いることが好ましい。
上記ノルボルネン系モノマーの具体例としては、例えば、ノルボルネン、ノルボルナジエン等の二環体;ジシクロペンタジエン、ジヒドロキシペンタジエン等の三環体;テトラシクロドデセン等の四環体;シクロペンタジエン三量体等の五環体;テトラシクロペンタジエン等の七環体;これらのメチル、エチル、プロピル、ブチル等のアルキル、ビニル等のアルケニル、エチリデン等のアルキリデン、フェニル、トリル、ナフチル等のアリール等の置換体;さらにこれらのエステル基、エーテル基、シアノ基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、ピリジル基、水酸基、カルボン酸基、アミノ基、無水酸基、シリル基、エポキシ基、アクリル基、メタクリル基等の炭素、水素以外の元素を含有する基、いわゆる極性基を有する置換体等が挙げられ、なかでも、入手が容易であり、反応性に優れ、得られる成形品の耐熱性が優れることから、三環体、四環体及び五環体のノルボルネン系モノマーが好適に用いられる。これらのノルボルネン系モノマーは、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0018】
上記ノルボルネン系モノマーの開環(共)重合体の水素添加物としては、上記ノルボルネン系モノマーを公知の方法で開環重合させた後、残留している二重結合が水素添加されているものが広く用いられる。これは、ノルボルネン系モノマーの単独重合体であっても良いし、異種のノルボルネン系モノマーの共重合体であっても良い。
【0019】
また、上記ノルボルネン系モノマーと他のオレフィン系モノマーとの付加共重合体としては、ノルボルネン系モノマーとα−オレフィンとの共重合体が挙げられる。上記α−オレフィンとしては、炭素数2〜20、好ましくは2〜10のα−オレフィン、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン等が挙げられ、なかでも、共重合性が高いことから、エチレンが好ましく、他のα−オレフィンをノルボルネン系モノマーと共重合させる場合にも、エチレンが存在している方が共重合性が高められる。
【0020】
これらのノルボルネン系樹脂は公知であり、商業的に入手できる。公知のノルボルネン系樹脂の具体例としては、例えば、特開平1−240517号公報に記載されているものが挙げられ、商業的に入手できるノルボルネン系樹脂の具体例としては、例えば、ジェイエスアール社製の商品名「アートン」シリーズ、日本ゼオン社製の商品名「ゼオノア」シリーズ、三井化学社製の商品名「アペル」シリーズ等が挙げられる。
【0021】
本発明で用いられる非晶性熱可塑性樹脂には、本発明の課題達成を阻害しない範囲で必要に応じて、成形中の非晶性熱可塑性樹脂の劣化防止や成形された光学フィルムの耐熱性、耐紫外線性、平滑性等を向上させるために、フェノール系、リン系等の酸化防止剤;ラクトン系等の熱劣化防止剤;ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、アクリロニトリル系等の紫外線吸収剤;脂肪族アルコールのエステル系、多価アルコールの部分エステル系や部分エーテル系等の滑剤;アミン系等の帯電防止剤等の各種添加剤の1種類もしくは2種類以上が添加されていても良い。
【0022】
本発明に係る光学フィルムは、下記する製造方法に従って製造することができる。即ち、本発明に係る光学フィルムの製造方法は、非晶性熱可塑性樹脂を押出機に取り付けられたダイからシート状に押し出して冷却ロールに密着する際に、ダイ出口から半溶融状態のフィルムが冷却ロールに接する接点までの距離(エアギャップ)を70mm以下とし、冷却ロールに接したフィルムを、接点の下流側近傍で冷却ロールに対して押圧手段により押圧することを特徴とし、好ましくは押圧手段が弾性ロールからなるタッチロールであり、樹脂のガラス転移温度をTgとするとき、接点直前でのフィルム温度がTg+80℃以上であり、冷却ロール及びタッチロールの表面温度がTg−50℃以下であることを特徴とする。更に好ましい態様として、タッチロールが、その表面に金属製スリーブを装着されたものであって、より好ましくは、冷却ロール及びタッチロールの表面粗さがRyで0.5μm以下であることを特徴とする。
【0023】
金型出口から冷却ロールまでの接点の距離、すなわちエアギャップが70mm以下の場合はフィルム変形過程において外乱の影響を受けにくく、高い厚み精度を有するフィルムの製膜が可能となる。加えて、フィルムが冷却ロールに密着する際に、接点の下流側近傍において冷却ロールに対して押圧されることにより、フィルムの温度変化が均一になり、厚みのプロファイルが安定してより高い厚み精度を有するフィルムの製膜が可能となる。
【0024】
冷却ロールに対してフィルムを押圧する押圧手段としては、エアナイフ、エアチャンバー、静電ピニング、タッチロール等の方法が採用できるが、その際に、幅方向の温度、圧力が均一であることが望ましい。
ダイから押し出されたフィルムの冷却ロールとの接点直前におけるフィルム温度をTg+80℃以上とすることにより、この状態で非晶性熱可塑性樹脂からなるフィルムが変形されたとしても、フィルムに生じる応力は著しく小さくなる。これは、非晶性熱可塑性樹脂は、樹脂の温度が高温になればなるほど、変形した時に応力を発生しないためである。従って、製膜時において樹脂に変形を与える際に、適切な温度制御を行うことにより発生する樹脂の応力は小さくなり、残留位相差が発生し難くなる。
【0025】
冷却ロールとフィルムとの接点直前におけるフィルム温度をTg+80℃以上とする具体的な方法については、特に限定されず、例えば金型の温度を制御する方法などが考えられる。この場合、金型温度を上げ過ぎると樹脂によっては熱劣化するが、熱劣化しない程度の温度条件を採用することにより、上記残留位相差を満足できる光学フィルムを確実に得ることができる。
また、冷却ロールとフィルムとの接点直前におけるフィルム温度がたとえ、Tg+80℃以上である場合でも幅方向に温度バラツキがあると樹脂の変形に対する応力にバラツキが生じるために樹脂によっては残留位相差がばらつく恐れがあり、一部分への応力の集中による光軸のズレが生じる恐れもある。そのため冷却ロールとフィルムとの接点直前におけるフィルム温度の幅方向のバラツキは10℃以下であることが好ましい。
【0026】
更に、接点以降でTg−50℃以下、より好ましくはTg−100℃以下のタッチロールと冷却ロールにて狭圧することにより、フィルム温度をTg以下に急冷して、歪みが残る時間を極小化することにより、フィルム中の残留位相差を3nm以下とすることができる。
【0027】
タッチロールと冷却ロールが両方とも剛性の金属ロールの場合は、樹脂の微少な厚みムラを吸収できずに、ロールとフィルムとの密着が十分でなくなり、厚みムラやフレアの原因となる。エアナイフやエアチャンバーなどのエアを用いた手段がエアギャップ内に空気漏れなどの悪影響を及ぼすのに対し、タッチロールは、エアギャップには全く影響を及ぼさない。さらに静電ピニングがフィルムを両面で冷却できないのに対し、タッチロールの場合は容易に冷却可能である。
【0028】
冷却ロールの材質は特に限定されず、例えば、炭素鋼、ステンレス鋼などが挙げられる。一方、タッチロールの材質としては、特に限定されるものではないが、シリコーン、フッ素系樹脂等の柔軟な材料挙げられ、複数の材質のものが積層された多層のものでもよい。なお、多層の場合はその中に1以上の柔軟な層を有するものであって、ロール表面が弾性を示すことが必要である。表面の平滑性や熱伝動性を考慮すると、例えばゴムロール表面に金属製のスリーブなどを装着したものが好ましく、この場合、フィルムが冷却ロールに対して均等に押圧されることにより、光軸のバラツキを抑えることができる。
【0029】
金属スリーブの材質は特に限定されず、炭素鋼やステンレス鋼、電鋳法で製造されたニッケル等が挙げられる。また、その表面にクロム等でメッキするなど、多層構造でもよい。また、金属スリーブの厚みは特に限定されず、所定の圧力を加えたとき冷却ロールとフィルムとが密着するのに十分は柔軟性があればよく、例えばニッケルを用いた場合には100μm〜1mm程度であればよい。
【0030】
フィルムの平滑性と透明性を確保するために、タッチロールと冷却ロールの表面粗さをJIS B 0601に定義されるRyで0.5μm以下、好ましくは0.3μmにすることが好ましい。タッチロールの表面粗さを小さくする方法としては、表面を研磨したり、表面にメッキを施したり、金属スリーブや研磨した硬化樹脂製スリーブを装着してもよい。表面に金属スリーブを装着したタッチロールの場合は、表面がゴムの場合に比べて表面性が格段に優れるものとなるので特に好ましい。
【0031】
タッチロールの形状は通常は円筒状であるが、中央部が端部に比べて若干太いクラウン形状でも問題はない。タッチロールの幅も特に限定されず、必要な製品幅が確保できるものであればよい。各ロールの外径についても特に限定されず、どちらが大きくてもよく、同じ大きさでも良い。
タッチロールの冷却ロールに対する押圧力は、冷却ロールとフィルムが完全に密着する圧力以上であればよく、更に樹脂の流動性などによって適宜決められればよい。
【0032】
本発明において、端部とはダイから押し出されたフィルムの全幅のうち、両側それぞれの10%のことを指す。また、厚みバラツキとは端部を除く全幅内での厚みの最大値から最小値を減じたものである。
【0033】
押出機に取り付けられたダイ出口のクリアランスAは均一であることが望ましいが誤差として、フィルムの平均厚みに対する請求項1規定の厚みバラツキの比率と同等以下で有ればよい。また最終厚みBに対して、B/Aの値は特に限定されないが40以下であればよい。
【0034】
このようにして得られるフィルムは、光ディスクや液晶ディスプレイといった光学分野において使用可能であり、例えば、光ディスクの保護フィルム、偏光子の保護フィルム等に活用できる。また、厚みバラツキが小さいことから、位相差板の延伸前原反として用いても、位相差ムラの小さい位相差板を得ることが可能である。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る具体的な実施例を説明することにより、本発明を明らかにする。なお、評価項目とその測定方法は以下の通りである。
〔厚みバラツキ〕
セイコーEM社製の厚み測定器「計っ太郎」を用いて、フィルムの幅方向に10mmピッチ全点の測定を、押出方向に100mmピッチで5回繰り返し、全測定値の最大値と最小値の差を厚みバラツキとした。
〔残留位相差と光軸ズレ〕
王子計測機器社製の複屈折測定装置「KOBRA21SDH」を使用して、上記厚みバラツキと同様に測定を繰り返した。測定波長は590nmとし、レターデーションの最大値と遅相軸の押出方向に対するズレ角度の最大値を求めた。
〔ヘイズ〕
村上色彩社製の変角全光線透過率計「HG−200」を用いて測定した。
【0036】
(実施例1)
熱可塑性飽和ノルボルネン計樹脂(日本ゼオン社製「ゼオノア1600」、TG=168℃)を幅1800mmのTダイが取り付けられた単軸押出機より、エアギャップ65mmに設定された冷却ロール上に押し出し、冷却ロールとの接点の下流側でタッチロールにより押圧しながら引き取り、平均厚み40μm、幅1600mmのフィルムを製造した。接点直前のフィルム温度は250℃であった。
なお、冷却ロールは表面粗さRy=0.2μm、表面温度を100℃に温調し、タッチロールは厚み5mm、硬度90°のシリコーンゴムで鉄芯ロールを被覆した表面粗さRy=0.4μmのゴムロールを用い、表面温度を100℃に温調した。得られたフィルムについて上記測定を実施した結果、厚みバラツキは1.7μm、残留位相差は2.8nm、光軸ズレは9°、ヘイズは0.1%であった。
【0037】
(実施例2)
タッチロールとして、実施例1で用いたロールのシリコーンゴム表面を被覆する厚み200μmのニッケル製スリーブ(Ry=0.4μm)を使用したこと、冷却ロールとタッチロールの表面温度を50℃に温調したこと以外は実施例と同様にしてフィルムを製造した。得られたフィルムを評価した結果、厚みバラツキは1.8μm、残留位相差は1.2nm、光軸ズレは9°、ヘイズは0.1%であった。
【0038】
(実施例3)
フィルムと冷却ロールとの接点直前のフィルム温度が220℃となるように樹脂温を低くして押し出した以外は実施例1と同様にしてフィルムを製造した。その評価結果は、厚みバラツキが1.8μm、残留位相差が3.5nm、光軸ズレが8°、ヘイズが0.1%であった。
【0039】
(比較例1)
エアギャップを180mmとしたこと以外は実施例1と同様にしてフィルムを得た。その評価結果は、厚みバラツキが4.6μm、残留位相差が3.8nm、光軸ズレが8°、ヘイズが0.1%であった。
【0040】
(比較例2)
冷却ロール、タッチロールの表面温度を150℃に温調したこと以外は実施例1と同様二してフィルムを得た。厚みバラツキは1.7μm、残留位相差は3.3nm、光軸ズレは8°、ヘイズは0.1%であった。
【0041】
(比較例3)
タッチロールの表面粗さRyが2μmのシリコーンゴムロールを用いたこと以外は実施例1と同様二してフィルムを製造した。得られたフィルムの厚みバラツキは1.7μm、残留位相差は2.5nm、光軸ズレは8°、ヘイズは1.5%であった。
【0042】
(比較例4)
日本ゼオン社の光学用押出ノルボルネンフィルム「品番:ZF−14−60、ロット:28003T」を評価した。なお、製品幅1340mmのうち両端部を除く1300mmを評価した。 その結果は厚みバラツキが3.1μm、残留位相差が3.4nm、光軸ズレが35°、ヘイズが0.1%であった。
【0043】
【発明の効果】
本発明の構成は叙上の通りであり、エアギャップを小さくし、タッチロール等の押圧手段によりフィルムを冷却ロールに対して押圧することで、高い厚み精度を達成することができる。また、冷却ロールとの接点直前でのフィルムの温度制御と、タッチロール、冷却ロールによる急速冷却によって低残留位相差と光軸ズレの揃ったフィルムができ、更に表面平滑性に優れたタッチロール、冷却ロールを用いることで表面性の優れたフィルムを容易に製造することができる。従って、得られるフィルムは光ディスクや液晶ディスプレイ等の光学分野において、非常に有効なフィルムとして活用できる。
Claims (10)
- 非晶性熱可塑性樹脂を用いて押出成形された光学フィルムであって、両端部を除いた実質的な厚みバラツキが2μm以下であることを特徴とする光学フィルム。
- フィルムの残留位相差が3nm以下、光軸ズレが±10°以下であることを特徴とする請求項1記載の光学フィルム。
- フィルムのヘイズ値が1%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学フィルム。
- 非晶性熱可塑性樹脂がノルボルネン系樹脂からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学フィルム。
- 非晶性熱可塑性樹脂を押出機に取り付けられたダイからシート状に押し出して冷却ロールに密着する際に、ダイ出口から半溶融状態のフィルムが冷却ロールに接する接点までの距離(エアギャップ)を70mm以下とし、冷却ロールに接したフィルムを、接点の下流側近傍で冷却ロールに対して押圧手段により押圧することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
- 押圧手段が弾性ロールからなるタッチロールであり、樹脂のガラス転移温度をTgとするとき、接点直前でのフィルム温度がTg+80℃以上であり、冷却ロール及びタッチロールの表面温度がTg−50℃以下であることを特徴とする請求項5記載の光学フィルムの製造方法。
- タッチロールが、その表面に金属製スリーブを装着されたものであることを特徴とする請求項6記載の光学フィルムの製造方法。
- 冷却ロール及びタッチロールの表面粗さがRyで0.5μm以下であることを特徴とする請求項6又は7記載の光学フィルムの製造方法。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学フィルムが、偏光子の少なくとも片面に積層されてなることを特徴とする偏光板。
- 位相差板の延伸前原反用である請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学フィルム。
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