DOL特別レポート 内外の政治や経済、産業、社会問題に及ぶ幅広いテーマを斬新な視点で分析する、取材レポートおよび識者・専門家による特別寄稿。 バックナンバー一覧 この4月、テニス選手・錦織圭による初めての著書、『頂点への道』が刊行された。錦織本人が初めて、自分の軌跡を書き記した一冊だ。 幼少のころから錦織を見続けてきたテニス専門記者のわたしが、小学校の卒業文集に錦織がよせた作文にはじまり、2010年頃から2015年までの5年間の本人の原稿に目を通してみてつくづくと感じたのは、錦織が、「自分の内面との対話」を、さまざまな葛藤や思考の過程をふくめて、率直に書いているということである。 錦織の文章は、外に向けて書かれたものというより、つねに自分に対して問いかけている。(ライター/秋山英宏) 「世界ランク898位」という現実への焦り たとえば、右肘の疲労骨折によって戦線を1年にわたって離れてから、