「ビルにお別れを言いに行ってきた」 散歩好きの友人が、解体が決まった有楽町の三信ビル(昭和5年建設)について熱く語っていたのを、つい最近のことのように思い出す。早いものであれから2年。三信ビルがあった場所は更地になっている。同じく昭和モダンのオフィスビル建築のメッカであった丸の内界隈も、再開発によってガラリと景色が変わった。 歴史を感じさせる古びたビルが、東京の街から次々と消えていくのは名残惜しい。 とは言ってみたものの、同潤会アパートの跡地に建てられた表参道ヒルズにももはや違和感はないし、渋谷のハチ公前広場の斜向かいにあるQFRONT(TSUTAYAの入っているビル)に至っては、以前あそこに何があったかもう思い出せない(本書を読んで、映画館があったことが判明)。人間忘れっぽいもので、案外あっさりと新しい環境に慣れてしまうものなのかもしれない。 だが本書を読んで、東京という町の移り変わりの