失意で試される人間力 2011年に亡くなったスティーブ・ジョブズは、20代のわたしにとってはカリスマのひとりでした。コンピュータが広まり始める直前の1980年代末から1990年の初頭にかけて、スティーブ・ジョブズは自ら招いたジョン・スカリーによってアップルから追放され、失意のなかで不死鳥のようにNeXTコンピュータを設立したことがありました。 NeXTのモノトーンのデザインと相まって、失意と逆境のなかのスティーブは、人間的でわたしにはとても魅力的に見えました。どんな人間にも試練は訪れるものです。そこではそれまでの経験のすべてと自分の力のすべてを試されます。そのときになにをするかこそがその人間の底力であり魅力だと思うのです。NeXTでやり直したジョブズは、すべてを捨てる覚悟をもっているんだなと感じました。 シンプルにする スティーブ・ジョブズのもつ価値観のひとつに、「シンプルに整理する」と