オッペンハイマー監督が『アクト・オブ・キリング』に続き、インドネシアにおける虐殺を追ったドキュメンタリー映画『ルック・オブ・サイレンス』のパンフレットに原稿を書きました。 何度も繰り返し出てくるジャンピング・ビーン(トビマメ)についての考察です。 トビマメたちの沈黙 町山智浩(映画評論家) 『ルック・オブ・サイレンス』には何度も、飛び跳ねる豆の映像がインサートされる。あれがもしメキシコ原産のいわゆる「トビマメ」だとすると、豆の中には蛾の卵が産みつけられているはずだ。孵化した幼虫は豆の中身を食べて成長する。これを手のひらなどで温めると、幼虫が痙攣して豆が飛び跳ねる。 オッペンハイマー監督は、これを本編の主人公アディに重ね合わせる。アディは、自分の兄を殺した男たちに検眼をしながら、兄を殺した状況を「尋問」する。残虐行為を聞いてもアディの表情は固く変わらない。幼虫を閉じ込めたトビマメの殻のよ