作者である谺(こだま)雄二は、七歳のときからハンセン病を生き、今年八二歳になった。本書はこの詩人の一巻選集であると共に、優れた編集の力で精神的な自叙伝にもなっている。 谺の詩には、こんな一節がある。「朝よ、ぼくらにあなたの顔が見えない。/けれど病友(とも)よ、いまは/ホントに真夜中なのだろうか。/火です。ぼくらひとりひとりの/小さな生命の火を寄せあい、かきたて/ついに燃えあがつた焔です。」真に闇を生きた者は、光を外には探さない。それは外部にではなく、内部にこそあることを知っている。また、その焔はけっして消えることがない。 一貫して谺は、「ハンセン病」ではなく、あえて「らい」と書く。そう記すことで、この病を背負いながらも、多くを語ることなく逝かねばならなかった「病友」の生涯を、今によみがえらせようとする。彼にとって、詩を書くとは単に自己の内心を語ることではなかった。むしろ、言葉を奪われた同胞