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澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

メディアは、スラップに屈することなく、国民の知る権利に奉仕せよ。

(2022年10月28日)
 昨日、統一教会による2度目のスラップ。批判の言論を封じ込めようという2件の名誉毀損損害賠償請求事件の提訴である。

 もっとも、スラップの定義は明確には定まっていない。ここでは、「自分に対する批判の言論を封殺する目的での民事訴訟の提起」という意味で使いたい。私は、まだ各訴状に目を通していない。被告側抗弁の立証手段についても知る機会を得ていない。だから軽々に判決の帰趨について断定的な意見を述べることはできない。それでも、各提訴は、侵害された自らの権利の救済よりは、前回3件の提訴と一体となって、統一教会への批判の言論を萎縮させることを主たる目的とした提訴であると推認させるに十分である。

 前回のスラップは先月29日、3件での合計請求額は6600万円だった。これについては、提訴翌日の下記当ブログを参照いただきたい。

「統一教会は組織防衛のためのスラップに踏み切った」
https://article9.jp/wordpress/?p=20057 (2022年9月30日)

 今回提訴2件の各請求額は、2200万円(対有田芳生事件)と1100万円(対紀藤正樹事件)。これで、全5件の合計額は9900万円となった。

 それぞれの時代にスラップの著名常習者が現れる。かつてはサラ金業界のトップ・武富士だった。武富士ベッタリの弁護士が訴訟代理人となって典型的なスラップを次々と提訴して、みっともない敗訴を重ねた。このときスラップの標的にされたのは、正義感に溢れた記者であり、消費者問題をライフワークとする弁護士であり、「週刊金曜日」であり「同時代社」であった。武富士は、懸命に批判をかわそうとしてスラップという戦術をとって、却って墓穴を掘った。まだ、スラップという用語が日本に定着していなかったころのことである。

 武富士に次いで、スラップ企業として著名になったのがDHCである。DHC・吉田嘉明もスラップの常習者となった。2014年4月発覚の「渡辺喜美への8億円政治資金貸付事件」批判者に対するスラップだけで10件。その合計請求金額は、なんと7億8000万円である。DHCスラップに較べれば、統一教会スラップの規模はまだ小さいと言えなくもない。
 なお、私もDHCスラップの被告とされた一人である。私に対する請求額は6000万円だった。

 武富士も、DHC・吉田嘉明も、そして統一教会も、社会的な指弾を受ける重大な問題を引き起こした。厳しい批判と非難を受ける立場となって、その防衛ないしは反撃の手段としてスラップを濫発したのだ。

 昨日統一教会が、いずれも東京地裁提訴した2件の訴えの内容は、報道の限りで以下のとおりである。
(1) 被告:有田芳生・日本テレビ
  請求金額:2200万円
  名誉毀損文言:「霊感商法をやってきた反社会的集団というのは警察庁も認めている」との番組での発言
  発言の機会:8月19日放送の番組「スッキリ」
(2) 被告:紀藤正樹・TBS
  請求金額:1100万円
  名誉毀損文言:「親が子どもを脱会させたいために暴力団に頼んだという事件もあった。暴力団は親からもらったお金を統一教会に渡している」との発言
  発言の機会:9月9日の番組「生島ヒロシのおはよう一直線」

この提訴について、有田は「取材に基づき反社会的であることは確信している」「教団によるスラップ訴訟には断固として闘っていく」、紀藤は「言論を萎縮させることを狙った訴訟で、許しがたい。今後訴訟の中で真実を明らかにしていく」とのコメントを出している。日本テレビ・TBSは、いずれも「訴状を確認した上で今後の対応を検討する」としている。

 今後訴訟は、それぞれの名誉毀損文言の主要な部分での真実性、あるいは発言者が真実と信じたことの相当性の有無をめぐって進行することになる。

なお、こんな報道が目にはいった。 
 「訴訟については「いくらでも証拠は出せるので負けるわけない」と自信を持つ有田氏だが、『萎縮効果はあります。私や紀藤氏を出演させると訴えられるとなると、テレビは萎縮します』と指摘した」「そういう効果を狙っているのだろう。旧統一教会の顧問弁護士・福本修也氏は『第3弾、第4弾も検討中だ』と意気込んでいる。」(東スポWeb)

 これが、スラップの萎縮効果である。被告となったメディアだけでなく、その周辺メディアにも訴訟リスクを意識させて、言論の自由の自主規制を余儀なくさせる。報道の自由の旗を高く掲げるジャーナリズムには、スラップに萎縮することなく国民の知る権利を擁護される姿勢を堅持されるよう期待したい。

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