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澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

「法と民主主義」11月号紹介。憲法学者の解散命令慎重論と、実務家の積極論。

(2022年11月2日)
 「法と民主主義」(略称「法民」)は、日本民主法律家協会(略称「日民協」)の活動の基幹となる月刊法律雑誌です(年10回刊)。毎月、編集委員会を開き、全て会員の手で作っています。憲法、司法、教育、原発、国際情勢、天皇制、地方自治、沖縄問題、ジャーナリズム、戦争と平和等々の、情勢に即応したテーマで、法理論と法律家運動の実践を結合した内容を発信しています。
 法律家だけでなく、広くジャーナリストや市民の方々からもご好評をいただいています。定期購読も、1冊からのご購入も可能です(1冊1000円)。
 よろしくお願いします。

 法と民主主義最新号・2022年11月号【第573号】の(目次と記事)は以下のとおりです。

特集?●大学・学問の軍事動員の危機を考える

◆特集にあたって … 編集委員会・米倉洋子
◆「軍事立国」と学術の論理 … 広渡清吾
◆経済安全保障推進法の狙いと危険性 … 井原 聰
◆国際卓越研究大学とは何か? … 小森田秋夫
◆国立大学法人化がもたらした諸問題 … 光本 滋
◆日本学術会議の存在理由 ── 任命拒否と軍事研究をめぐって … 杉田 敦
◆岡山大学における軍事研究、自衛隊との共同防災訓練について … 野田隆三郎

特集?●緊急特集第2弾・「統一教会問題」

◆特集にあたって … 編集委員会・丸山重威
◆宗教団体に保障される信教の自由の限界
── 旧統一教会問題を中心として … 芹澤 齊
◆旧統一協会による被害の救済と予防のために … 河田英正
◆憲法24条改憲を狙う政治・宗教右派の動き … 清末愛砂

◆司法をめぐる動き〈78〉
 ・国葬住民監査請求と訴訟の動向 … 稲 正樹
 ・9月の動き … 司法制度委員会
◆メディアウオッチ2022●《統一協会問題》
 問われているジャーナリズム 宗教団体の政治関与と言論封殺 … 丸山重威
◆改憲動向レポート〈№45〉
 統一協会と超濃厚接触政党「自民党」の「壊憲」「改憲」 … 飯島滋明
◆インフォメーション
 ・第52回司法制度研究集会のご案内
 ・安倍元首相の国葬強行に抗議し、国会での徹底検証を求める法律家団体の声明
◆時評●社会投企、ジェンダー・バランス、ウクライナ侵略 … 新倉 修
◆ひろば●「彼ら」による改憲策動を葬り去るために … 平松真二郎

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 特集?が、他誌にはない重厚で貴重な執筆者と論稿だが、当ブログでは、特集?《緊急特集第2弾・「統一教会問題」》をご紹介したい。

 本誌先月号は、《緊急特集・「国葬」と「統一教会問題」》を取りあげ、以下の4本の論稿を掲載し好評を博した。

◆「安倍国葬」は日本国憲法上で許されない … 石村 修
◆日本史のなかの「国葬」問題 … 宮間純一
◆統一協会の伝道手法とその破壊力 … 郷路征記
◆インタビュー●統一教会とは何か ─ 自民党との極まった癒着を問う … 有田芳生

 本号の3論稿は、これに続いてテーマを統一教会問題しぼったものとなっています。憲法研究者と実務法律家がそれぞれの立場を鮮明にしているのが興味深いところ。

 芹澤齊・青山学院大学名誉教授は、憲法学者として、問題をこう整理しています。

 「本稿は、旧統一教会と信者の関係が形成される順に、?入信勧誘並びに信者生活の続行と霊感商法の関係、?それに密接にかかわる信者の負担――主として経済的負担――の問題、?それらの負担が信者の家庭生活、特に子どもに及ぼす憲法上の権利侵害問題、?個人の信教の自由と宗教団体の信教の自由の一般的関係、最後に?宗教法人解散請求の問題に触れることとしたい。」

 そして今もっとも注目の集まる解散命令問題については、次のような見解を述べておられます。
 
 「宗教法人とは、ある宗教団体が一定の要件を充足して所轄庁から『法人格』を認証された場合の資格であり、その『公益性』のゆえに税制上の優遇措置その他の特恵的地位を享受することができる。このことは逆に、宗教法人格取得の要件に明白に反するような活動をした宗教法人はその資格剥奪を意味する解散が認められる場合もあるということである。」「裁判所が解散を命ずることができる事由として、第81条第2項1号には『法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと』が定められている。」
 「この解散命令を許容する事由は一般的基準としては極めてあいまい不明確であって、だからこそ解散命令が判例法上認められたのは、刑事事件の有罪判決が確定していたオウム真理教団と明覚寺の2例に過ぎないのである。旧統一教会の場合、前記の2例と同等か、またはそれらに準ずるといえるかは微妙であろう」
 「この要件の不明確さに関連して、旧統一教会に対してしばしば浴びせられる『反社会的団体ないし組織』という非難の言葉があるので一言しておきたい。多くの人々から非難される活動=『反社会的』活動として宗教団体規制が正当化されるならば、それは将来にわたって大きな禍根を残すことになろう。なぜなら、規制要件があいまい不明確であるということは、濫用の危険があるということを意味する。そして、これらの漠然不明確な概念の濫用は政権に批判的な表現活動を行う組織や団体に向けられる虞が極めて強いということは歴史が示しているからである」
 「したがって、筆者は、このような不明確な概念の下での解散命令には反対である。もし旧統一教会の解散がどうしても必要だというのであれば、解散事由の要件をもっと明確にし、要件該当性の有無がもっと客観的に行いうる法改正がなされてしかるべき後に解散命令が出されるべきであろう

 原理原則を大切にする、いかにも憲法学者らしい立場。それに対して、河田英正(弁護士「霊感商法被害救済全国弁連共同代表」)論稿は、被害救済と予防に携わる実務家として、解散命令発動積極説となっています。

 「被害救済と予防の観点からの『積極論』」と、「要件曖昧故の権力の恣意的発動を招きかねないとする『慎重論』」。本誌がこの問題についてのそれぞれの立場からの、噛み合った論争の出発点となれば、編集委員会の一員としてありがたいと思います。

 なお、「法民」のホームページは、下記のURL。
 https://www.jdla.jp/houmin/index.html

 そして、お申し込みは下記URLから。よろしくお願いします。
 https://www.jdla.jp/houmin/form.html 

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