人気ブロガーの藤沢数希氏が「銀行はお年寄りから集めたお金で日本国債を買うお仕事」「メガバンクは日本国債と心中する覚悟を決めた!?」と言っている。三菱UFJFGが「12年3月期決算で9813億円の利益を上げ、日本の全上場企業の中で最高の利益を叩き出した」のは、「メガバンクが持っていた日本国債の価格が大きく上がったから」だそうだ。色々と問題があるのだが、せめて決算情報を確認して欲しい。
1. 三菱UFJFGの利益に占める国債の比率は高くない
三菱UFJFGの「平成23年度決算ハイライト」を見てみよう。
利益を上げているのは確かだ。3ページを見ると、経常利益は14,719億円で、税引き後の純利益は9,813億円。
5ページの部門別営業純益を見ると、「市場・その他」がH22年度2,635億円から、3,790億円に増加しているのも確かだ。有価証券の比重が高まっているように思える。
10ページの保有有価証券の状況を見ると、利益において国債の占める割合は18.6%に過ぎない事が分かる。評価損益の合計は8,320億円で、うち国債は1,551億円。国内株式3,217億円、国債以外の国内債券624億円、外国株式が502億円、外国債券が2,606億円。
2. 金利に大きな変化は無く、保有期間も長くは無い
金利は債券価格を表すが、ゼロ金利が続いているので、ここ1年間でメガバンクが保有する国債価格に大きな変化は無い。長期金利は下がっており、普通国債残高の平均残存期間は7年だが、メガバンクの残存期間は短く、生保やゆうちょ銀行の残存期間は長い*1と考えられている。
3. 円高と国債価格は関係あるのか?
藤沢数希氏は「アメリカや欧州の経済が金融危機から立ち直れないなか、比較的安全であると思われている日本円が買われた」と言うが、金利が変化したら債券価格は変化するのは必然だし、外国債券を円建て評価すれば為替レートが影響するのも必然だが、金利変化が無い状態で円高になっても円安になっても国債価格に変化は無い。
4. メガバンクは日本国債と心中する覚悟を決めた?
編集部がつけたタイトルだと思うが、メガバンクの利益に占める国債の貢献は限定的だ。現金を保有するよりは、国債を保有しておくほうが有利だと言う判断で、保有資産に占める国債の比率が増加しているのだと思うが。ただし、それでも国債保有比率は、ゆうちょ銀行よりは低い。三菱UFJFGの総資産に対する国債は25%に達するが、ゆうちょ銀行は74%になっている。
*1残存期間は3~4年程度だと思われる。三菱UFJFGの決算報告書から期間構造を見てみると、満期まで5年以上の国債は12%に過ぎない。満期まで3年未満の国債がほぼ過半となっている。
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