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2010年7月29日木曜日

BPの巨額赤字とブロック・ホルダーの機能不全

既に市場では予想されていたことだが、メキシコ湾の原油流出事件の影響を受けて、7月28日にBPが171億5000万ドルの巨額の赤字を計上した。環境問題によって企業収益に大きな損害が出るケースは過去にもあったが、石油メジャーの一角がこれだけの損害を計上したことは、少なからず衝撃がある。

BPの事業自体は好調で、原油流出事故で321億9200万ドルの特別損失を計上したことが巨額赤字につながった。既にBPは、賠償責任の負担のために100億ドルの資産を売却する方針で既に7月21日に、米テキサス州、カナダ西部およびエジプトの石油・ガス資産を独立系石油会社アパッチに70億ドルで売却する事を決定しており、現金でBPは50億ドルを得る。他にもパキスタンの天然ガス田資産ならびに探査ライセンスとベトナムの天然ガス油田・同パイプラインを売却し、約17億ドルの売却資金を確保する予定のようだ。2009年の純利益165億ドルの約2倍の損害にのぼっているが、損失が現在の範囲で収まれば、BPの事業継続に問題は無いであろう。

しかし、今回の原油流出事件では既にBPの手抜き工事が指摘されており、他のBPの施設が同様のリスクを抱えていないかが問題になる。幾らBP言えども、同種の事故が再度おきれば、資金繰りに問題が出る可能性は高い。過去のBPの掘削事業が適切に行われていたとは、今となっては言えない状況だ。批判の多かったトニー・ヘイワードCEOは10月1日付けで引責辞任をすることが決まっているが、事前に経営者の行動を株主が監視できなかった点は、コーポレート・ガバナンスの大きな問題として残るであろう。BPも社外取締役などが監視する体制をとっていたはずだが、今回の事故を見る限り、十分に機能していなかったのは明らかだ。

実際、年金基金や外資系金融機関などのブロック・ホルダーが多い方が、経営者の監視能力が高くなると仮説的に言われている。しかし、実際のところ大抵の事業には、その事業に従事していないと分かりえない専門性がある。BPの場合は、恐らく財務内容が適切であるかは機関投資家は監視することができたのだろうが、安全のために適切に投資を行っていたかは監視できなかった。

今回の事故については、原油掘削事業の安全性についての規制などは見直されて行くと思う。同様に、公的年金基金などのブロック・ホルダーが機能しなかった点については、色々な角度から検討していくべきだ。BPには英米の複数の年金基金が投資を行っており、既に複数の年金基金が虚偽の安全性対策を表明したとしてBPに対して訴訟を検討しているようだ。確かに年金基金は一般投資家と違い、事後的に投資先を訴えることが可能だが、この訴訟の被告はヘイワードCEOや過去のCEOではない。BPのケースを見ている限りは、ブロック・ホルダーが経営者行動に規律を与えるとは言い切れないようだ。

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